表示装置の検査方法、検査装置及び評価方法
【課題】表示装置の表示むらを高精度で検査する。
【解決手段】色むら及び/又は輝度むらを含む表示むらについての検査を行う表示装置の検査方法であって、むら領域22と周辺部分21、23との色及び/又は輝度の変化の大きさと、面内におけるむら領域22の幾何学的な大きさとの両者を用いて解析することを特徴とする表示装置の検査方法。
【解決手段】色むら及び/又は輝度むらを含む表示むらについての検査を行う表示装置の検査方法であって、むら領域22と周辺部分21、23との色及び/又は輝度の変化の大きさと、面内におけるむら領域22の幾何学的な大きさとの両者を用いて解析することを特徴とする表示装置の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子などの表示素子の色むら及び/又は輝度むらの検査方法、検査装置、及び評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、液晶表示素子、カラーCRT等の表示素子の量産工程における色むらの検査は、限度見本との比較による官能検査が主として行われてきた。人が直接視認するので実際の使用状態に近い検査であって簡便な手法である。これを従来例1と呼ぶ。一方、色むらの客観的な検査方法の一つに面内での比較を行う方法がある。
【0003】例えば、色むらを検査する場合に、画面全体を白色に表示し、カラー撮像素子などを用いて面内の各部分の色あいを測定し、面内における白色との最大色差(ΔEuv* 又はΔEab* )が幾つ以下であればよいというような検査手法が提案されている。画面上の数点の色、明るさを測定し、そのばらつき、最大−最小の差などを規格化して用いる。例えば、特開平1−225296号公報、特開平3−101583号公報、特開平3−291093号公報に示された手法である。これを従来例2と呼ぶ。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】両者を比較すると、従来例1の官能検査では微妙なむらを検出できることもあるが、検査員による個人差や疲労具合等によるばらつきが大きく客観的な検査を連続して行うことが困難である。一方、従来例2のカラー撮像素子などを用いて面内の各部分の色を測定して、検査する方法は、ばらつきを抑えて、安定した検査が期待できるものの、例えば白との色度差が同じであれば、赤い部分と青い部分が混在していてもむらとして検出できない。また、面内における最大色差が同じであっても、その分布具合によってむらに対する人の感じ方が変わる問題もある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、表示むら、すなわち色むら及び/又は輝度むらに対する人の視覚特性を測定した。その結果、視覚特性においては、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量が主要なパラメータであることを確認した。本発明では、色の違い(ΔE* )のみではなく、さらにその空間的変化及び面内における平均値に着目し、ΔE* の空間的変化と視角との関係をにおける色むら及び/又は輝度むらの新しい評価方法、検査方法を提供する。本発明において表示むらとは具体的には、輝度むらまたは色むらであり、さらに、輝度むらと色むらとが混在したものを含むものとする。
【0006】すなわち、請求項1は、表示装置の表示画像を撮像手段によって撮像し、撮像画像を形成し、表示画像の表示むらの検査を行う表示装置の検査方法において、撮像画像に存在する表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとを用いて数値演算することを特徴とする表示装置の検査方法を提供する。この場合、表示画像を人の感じる色及び/又は輝度に相当する中間画像にいったん変換し、その中間画像の空間微分の要素により検査を行うようにする。ここで、幾何学的大きさとは色むらの領域の面内における周期的な位置をも含むものとする。
【0007】請求項2は、表示むらとして輝度むらを対象とし、輝度むらの尺度として、明度指数(L* )を用い、明度指数をパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1記載の表示装置の検査方法を提供する。
【0008】請求項3は、表示むらとして色むらを対象とし、色むらの尺度として、色度(u’、v’、又はそれらの組み合わせ)又は色空間座標(u* 、v* 、又はそれらの組み合わせ、又はa* 、b* 、又はそれらの組み合わせ)の関数を用い、それをパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置の検査方法を提供する。
【0009】請求項4は、撮像手段の解像度に応じた空間オペレータによる縦微分の画像、横微分の画像の和を算出して数値演算することを特徴とする請求項1、2又は3記載の表示装置の検査方法を提供する。
【0010】請求項5は、表示装置の表示むらの評価方法であって、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとの両者をパラメータとする複数のむらパターンを準備し、個々のむらパターンごとに表示装置に表示することを特徴とする表示装置の評価方法を提供する。そして、個々のむらパターンを被験者、または被験者に代わる検査装置が検知しうるか否かの結果を得て、数値処理により表示むらに対する被験者等の検知能力を定量化する。
【0011】請求項6は、撮像手段と、コンピュータとが備えられ、表示装置の表示画像を撮像手段により撮像して得た撮像画像を用いて、表示むらの検査が行われる表示装置の検査装置において、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとが数値演算に用いられ、あらかじめ準備された基準値と対比されて、表示むらの判定が行われることを特徴とする表示装置の検査装置を提供する。
【0012】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の度数分布を求め、その統計データの関数を用いることが好ましい。これを本発明の第1の態様と呼ぶ。
【0013】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の対象面内の度数分布のばらつきを表す値を用いることが好ましい。この際、ばらつきを表す値として、度数分布の標準偏差を用いることがさらに好ましい。これを本発明の第2の態様と呼ぶ。
【0014】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の対象面内の平均値及び/又は最大値を用いることが好ましい。これを本発明の第3の態様と呼ぶ。
【0015】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の対象面内の平均値及び最大値を用いて、両者に係数をかけて、総和をとることが好ましい。これを本発明の第4の態様と呼ぶ。
【0016】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、縦微分の正の成分のみの画像、負の成分のみの画像、絶対値の画像、横微分の正の成分のみの画像、負の成分のみの画像、絶対値の画像のそれぞれに対して解析を行うことにより、むらの種類、原因ごとの検査を行うことが好ましい。これを本発明の第5の態様と呼ぶ。
【0017】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、表示画像の領域分けを行い、各々の領域ごとの検査を行うことが好ましい。さらに、各領域ごとにおける、表示むらの種類、原因について判定することが好ましい。より精度の高い表示むらの検査を行うことができる。これを本発明の第6の態様と呼ぶ。また、上記の第1〜第6の態様のいずれかを実行する表示装置の検査装置を構成することができる。
【0018】本発明では、検査対象となる表示装置の表示画面を撮像し、その撮像画像を用いる検査方法であって、色むら及び/又は輝度むらの強さを、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量を用いて検査しているので、人の感覚と合った客観的、かつ安定した表示むらの検査が安定して可能となる。
【0019】本発明では表示むらに関する人の視覚特性を調べるために、被験者に対して様々なレベルの色の変化量を設定したむらパターン群を表示し、個々のむらパターンに対して被験者がむらを検知しうるか否かを調べた。
【0020】図1に本発明の構成を示す。横軸は空間的な位置の変化に対応し、面内におけるX軸位置とする。縦軸は色差を示す。画面の左側の領域を青、右側を赤とし、その境界部を次第に色変化を呈するように設けた様子を示す模式図(分図(A)〜(D))である。分図(A)における色変化の勾配が最も急であり、(B)、(C)、(D)の順に緩やかになる。分図(E)は画面の色表示を模式的に示したもので、周辺部分21、23の間にあるむら領域22で色の変化が徐々に起きている様子を示す。
【0021】つまり、色むらを人が認識する際には、境界部の幅と高さが重要であり、色差があってもその変化が緩やかであると人は視認しにくい。また、色差が小さくてもその変化の幅が狭い(急な勾配)であるときには視認できる。この本発明の表示装置の評価方法を用いて被験者に心理物理測定を行った結果を図11に示す。
【0022】このグラフの縦軸は表示むら部分と表示むら(以下むらと略記する。)でない部分について色をパラメータとして測定を行った。グラフの縦軸はむら部分とむらでない部分の色度の差、つまり色差を示し、横軸はそのむら部分を視認する際の視角、これは実質的に見ることのできる幾何学的な幅に相当する。そして、グラフ上の各点は被験者がむらを識別できる限界を示す。
【0023】つまり、むらの変化量、すなわち輝度差もしくは色差が少ない場合にそのむらが離れている場合には視認しにくい。逆にむらの変化量が大きければ、離れていても視認できる。なお、被験者は色覚正常者で視力1.0であった。表示画像は対角が約2.6インチサイズ、横52cm、縦39cm、画素は640×480マトリックスサイズのものを用いた。画面を矩形で3分割し、左右で色を変え、その画面の中心部に色が変化する勾配を設定する。その色の変化領域を画面上のほぼ中心領域に固定して表示させ、それを0.8m離れた場所から被験者が視認して試験を行った。
【0024】この実験の結果を示す図11のグラフより、むらの知覚はむら部分とむらでない部分の色度差と、色度の変化している幅である視角の関係が一定の値になったときに起こることが確認された。これは、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量がある値になったときに人が色むらに気付くことを意味する。
【0025】本発明の一例では検査対象をカラー撮像した中間画像を用い、色むら又は輝度むらの強さを、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量を用いて検査を行った。そのため、多数の人が気付く、気付かないといった人の感覚にあった色むら又は輝度むらの検査を連続して安定に行うことが可能となった。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例について説明する。例1においては、表示装置の表示画面に色の変化量を様々に変えた表示パターンを提示し、被験者がむらを検知しうるか否かを試験した。画面は左側(赤)から右側(黒)に色変化があるように設定した。その結果を分析して図11のグラフを得た。さらに、本例における人の検出限度を以下の式(1)に定めた。
【0027】
【数1】
検出限度=(色度差−定数)/視野角 ・・・(1)
【0028】本例の被験者(20代男性2名)の場合、上記式(1)中の定数は5、検出限度は85程度が得られた。式(1)より、視角が0ラジアン近傍を除き、通常、人が視認できるようなある範囲の視角に相当するむらに対しては、色の変化量によりむらの検査ができる。
【0029】例えば、視野角0.1ラジアン以上の範囲では、ほぼ色度差/視野角が85となった。これが通常の人の検出限度であると近似できた。また、式(1)による検出限度を他の方法で求めた色の変化量、例えばフィルタリング結果等に換算して判定基準とすることもできる。
【0030】また、判定基準を式(1)による検出限度を基準として、例えば、検出限度の2倍であるとか、検出限度にばらつきを加えたものというような、検出限度を変数とした検査方式により検査することもできる。
【0031】図2に本発明の例2である透過型液晶表示素子の色むら検査の構成図を示す。被検査物1である透過型液晶表示素子の表示面は一様な色に表示されており、撮像手段2であるカラーCCDカメラで撮像される。撮像手段2はカラーCCDカメラに限定されず、例えば輝度むらの検査だけならば、モノクロのCCDカメラでもよいし、その他の撮像素子であってもよい。
【0032】本例における撮像条件としては、1画素の大きさが液晶表示素子上で0.3mm程度である。図3に本発明におけるデータ処理の流れをフローチャートとして示す。図2の構成であって、カラーCCDカメラ2で撮像された表示画像のRGBの輝度信号は、符号3の画像処理装置によって取り込んだ中間画像を演算、処理して、中間画像の各画素の明度指数(L* )又は色度座標(u* 、v* 、a*、b* 等)が求められる。
【0033】例えば、輝度むらを測定したい場合又は色の変化があまりない場合は、各画素の明度指数をその画素の値とし、明度指数による画像を作る。また、色の変化を伴う色むらを検査したい場合は、検査したい被検査物の特性による検査式による値をパラメータに用いて各画素の値とする。
【0034】検査式の1つの例としては、被検査物上の各点に相当するCCDカメラの各画素の色度座標が、図4R>4に示すようなu* 、v* 座標上に座標点4として分布しているような場合には、例えば最小自乗法等によりu* 、v* 座標上に回帰直線5を求め、その直線上に適当な原点を設ける。
【0035】そして、各画素に相当する各点をその直線上に射影し、原点から各直線上の点までの距離によりスカラー値とし、さらにそのスカラー値とL* との間でu* 、v* の場合と同様の方法で、色度座標、明度指数の要素を含むスカラー値を求め、各画素の値とし、色を表す画像を作る。
【0036】このように求めた画像に対して、輝度又は色の変化量を求める手段として、さらに例3としては、図5に示すような、縦方向に微分的な働きを持つ7×7の空間オペレータによるフィルタリングを施し、絶対値を求めた画像Aと、図6に示すような、横方向に微分的な働きを持つ7×7の空間オペレータによるフィルタリングを施し、絶対値を求めた画像Bの和により検査を行った。もちろん輝度又は色の変化量を求める手段として、別のオペレータを用いて実現することもできる。
【0037】ここで、L* は明度指数として明るさを表し、u* v* 又はa* b* は色を表す。輝度むらは、u* v* 又はa* b* が一定の値であり、L* のみが変化するような場合を意味する。一般に、この際に、ΔE* =ΔL* が成立する。本発明で輝度の差はΔE* 又はΔL* 、輝度の変化はdE* /dxもしくは、dL* /dxとなる。
【0038】また、カラーCCDカメラで、フルカラー画像を撮像した場合、RGBの各輝度に相当するディジタル値が得られる。このRGBの各ディジタル値を座標変換したものをXYZとする。同じ照明下で、白一色の画面を同様にして処理して得たものがXn Yn Zn である。さらに、このXYZ、Xn Yn Zn を座標変換して求めたものがCIELAB色空間もしくはCIELUV色空間である。
【0039】いくつかの色むらサンプルに対して、本例により検査を行い、また、同じサンプルに対して人による官能検査を行った結果を対比して示したのが図7である。図7の横軸は、人による検査結果を点数化したもの、縦軸は本発明による検査値を表す。本例においては、相関はr2 =0.90と高い相関を示した。
【0040】もちろん、空間オペレータは上記オペレータに限定されず、また7×7にも限定されない。本発明の例4として、図5及び図6と類似の9×9の空間オペレータを用い、図7とは別のサンプル群に対して、人による検査結果と本発明による検査値を比較したところ、図8のような結果を得た。図の見方は図7と同様で、本例における人による検査結果と本発明による検査値の相関はr2 =0.84である。
【0041】本例においては、色むらの発現する位置とその大きさを固定し、表示画像上の色の変化量のみで検査する例を示した。さらに、表示素子の表示面内の色むらの分布具合を第2パラメータとして検査に含めたい場合には、表示画像上の色の変化量の分布具合、例えば面内に変化量がある値以上の面積が何%以上あるかというような指標、又は変化量がある値以上の部分が単位面積あたり何%以上あるかというような指標で色むらの検査を行う。
【0042】以上の例においては、完成されたLCD表示素子の検査の場合を示したが、表示部のカラー発色機能部の測定を行う以外に、バックライトと偏光板を組み合わせて、液晶表示素子のセルのギャップ等の検査を間接的に行うことが可能となった。つまり、表示画像に現れるものならばその表示特性を検査することによって構造上の欠点を検出できる。
【0043】また、本発明の例5として、図9のフローチャートに示す色むらの検査方法を示す。上述した各例においては、各画素ごとに色を表すスカラー値を求めて、中間画像とし、その中間画像を空間微分した画像データにより評価を行った。
【0044】本例では、各空間微分画像を合成して、1つの画像として評価を行う。例えば、明度指数(L* )の変化量、色度の1軸(u* )の変化量、色度の他の1軸(v* )の変化量をそれぞれ独立に求め、各画素ごとに例えばaL* +bu* +cv* (a,b,cはそれぞれ係数)やaL* 2 +bu* 2 +cv*2のような検査式により検査を行う。
【0045】また、図10に構成を示す例6においては、検査すべき対象の色むらに特徴的な波長のみを選択透過する波長選択フィルタを通して被検査物の表示画面を撮像し、上述した各例と同様の検査方法によって検査することもできる。また、上述した各例では赤〜黒における色変化を対象としたが、同様に青から黒、緑から黒、青から緑、赤から緑といった各色の組み合わせの場合にも同様に適用できる。
【0046】次に本発明の例6として、表示装置の面全体における総合的な判断手法について説明する。表示装置の表示面の輝度むら及び/又は色むらについては、その変化量(近傍における微分値)の平均値(もしくは面全体における総和)が人の表示装置に対する視認性と高い相関関係を持つことがわかった。
【0047】具体的には、各画素のむらを示す勾配値の面内における平均を算出する。その結果を図12に示す。縦軸はむらの面内平均値であり、横軸は1対比較法による官能評価結果を対応し、グラフ上の各データ点を得た。相関はr2 ≒0.7となった。
【0048】また、表示むらの検出の際、単独に存在するむらよりも、近傍に2つ存在する方が目立つ傾向にある。また、似たような表示むらが連続してあると、さらに目に付きやすいことがわかった。例えば、LCDに用いられるガラス基板自身の微妙なうねりに起因するむらは縞模様のような周期性を強く呈する傾向にある。この場合には、画像データにメディアンやスムーシングフィルタなどのバンドパスフィルタをかけることで評価できるようになる。
【0049】図13に本発明による検査値(grad値)の面内のヒストグラムの説明図を示す。符号13が平均値、符号14が最大値、符号15が標準偏差値、符号16が二値化閾値を意味する。図13で、むらがないパネルの値は0だけとなり、むらが多いほど右側に広がったグラフとなる。本例では、この図に示す面内の最大値(MAX.)、平均値(AVE.)、標準偏差(STD.)、判別分析法による二値化閾値(THD.)の4種を算出し、評価パラメータとする。
【0050】MAX.は面内で最も強いむら部分の明るさの変化量を表し、AVE.は局所的な強いむらがあっても大きな値となるが、全体的にむらが強い場合、あるいは面内におけるむら部分のしめる割合が大きい場合(むらが細かい周期である場合など)に大きな値となる。
【0051】またSTD.はむらの不規則性を表し、強いむらと弱いむらが混在する場合に大きくなることが考えられるが、強いむらがある場合、全体的にむらが強い場合、あるいは多い場合は全体の値が大きくなり、その影響でこの値も大きくなる。THD.はむらの背景からの鮮明さ、区別しやすさを表し、統計的にむらと背景を区別する場合の閾値を表すが、やはり全体的にむらが強い場合は大きな値となる。
【0052】これらの4つのパラメータは互いに独立ではなく、MAX.を除く3パラメータは全体的なむらの強さを表している。ただし、これらの値は被検物の明るさが異なる場合は結果の値に影響があるため、各値をそれぞれ原画像の全面の平均輝度で割ることにより補正している。
【0053】表1に本発明で得た上記の各パラメータと人による官能検査との相関を示す。人の評価は、被験者(20代〜40代の男女11名)に対する1対比較法のデータを基にしている。ヒストグラムの標準偏差と人の評価との関係を図14に、MAX.とAVE.を標準化した2つの独立変数を用い、人による評価を従属変数として重回帰分析を行った結果より求めた式(2)の結果をYとする。
【0054】
【数2】
Y=a×(MAX.)+b×(AVE.) ・・・・(2)
a=1 ・・・・(2A)
b=1.6 ・・・・(2B)
【0055】これらの係数は、両変数を標準化した場合に対するものである。標準化していない場合には、これらの係数はa=1 、b=19程度となる。このYの値と人の評価との関係を図15に示す。
【0056】表1には各パラメータの標準誤差も併せて示す。標準誤差は、人による評価のばらつきに対して、各パラメータがどの程度の誤差を持つかを評価するために式(3)により求めた。
【0057】
【数3】パラメータの標準誤差=((人の評価との標準誤差)2+ (再現性の標準誤差)2)0.5 ・・・(3)
【0058】被験者の個人差と再現性より同様に計算した人のばらつきは0.44であり、表1のYをはじめ、AVE.、STD.、THD.は人のばらつきに比べかなり小さな誤差に抑えられている。
【0059】
【表1】
【0060】また、官能評価によって得た別のサンプルに対して、度数分布の標準偏差及び上記Yを求めた結果を図16、図17に示す。相関は標準偏差がr2 =0.86、Yがr2 =0.87となる。これらのデータに関して重回帰分析により標準化後の係数a、bを求めたところ、a=1 、b=3.4となり、相関はr2 =0.91となる。
【0061】以上の実施例においては、主に面内に生じる不規則な表示むらに関しての評価を行っているが、本発明による検査値の例はこれに限らず、例えばむらの種類ごとの評価もできる。図18に示すように表示画面を領域17、18、19、20、21に分ける。そして、 各々の領域ごとにヒストグラムを算出し、 パラメータを求め評価を行うことにより、 液晶注入口周辺に特異的に起こるむら、 周辺部に額縁状に特異的に起こるむらなどの評価ができる。
【0062】また、パッチ状に明るさが変わっている領域の評価に関しては、ヒストグラムのパラメータに関して、 平均は高くなるがばらつきは低いという特徴を持つことが考えられ、AVE./STD.という評価指標を用いると、図19に示すような評価(r2 =0.60)が可能となる。
【0063】また、本発明では原画像に図5のようなフィルタを作用させ絶対値を求め、さらに原画像に図6のようなフィルタを作用させ絶対値を求めたものを足しあわせて検査値としているが、図20のフローチャートに示すように、原画像に図5のようなフィルタを作用させ絶対値を求めた段階の画像に関してヒストグラムを算出し、評価することにより横方向に筋状に特異的に生じるむらの、原画像に図6のようなフィルタを作用させ絶対値を求めた段階の画像に関してヒストグラムを算出し、評価することにより縦方向に筋状に特異的に生じるむらの評価を可能としている。
【0064】また、図5又は図6のフィルタを作用させて絶対値を求める前の画像に関してヒストグラムを求めることにより、目では捕らえにくいレベルの傾斜むらを評価することも可能としている。
【0065】
【発明の効果】本発明により色むら及び/又は輝度むらに関して、人の感覚にあった客観的検査が可能となり、量産工場における検査の自動化が可能になった。そして、欠点の検出が高確度で早くできるようになったので、量産工場の各工程へのフィードバックが早くなり、全体の製造歩留を向上できた。また、出荷される製品の高品質化に大きく寄与した。また、本発明はその効果を損しない範囲で種々の応用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す模式図。
【図2】本発明の1つの実施例を示す構成図。
【図3】本発明の1つの実施例を示すフローチャート。
【図4】色の違いの尺度である、色度の関数を求める手段の実施例の説明図。
【図5】横方向の輝度又は色の変化量を求めるオペレータの一例の模式図。
【図6】縦方向の輝度又は色の変化量を求めるオペレータの一例の模式図。
【図7】本発明の1つの実施例における検査結果と人による検査結果の関係を示すグラフ。
【図8】本発明の別の実施例における検査結果と人による検査結果の関係を示すグラフ。
【図9】本発明の別の実施例を示すフローチャート。
【図10】本発明のさらに別の実施例を示す構成図。
【図11】人の色むらに対する知覚特性を示すグラフ。
【図12】面内において検出された表示むらの傾きの面内平均値と人による官能検査との相関を示すグラフ。
【図13】本発明による検査値の面内のヒストグラムの説明図。
【図14】本発明による検査値の面内のヒストグラムの標準偏差と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図15】本発明による検査値の面内のヒストグラムの最大値と平均値より求めた評価値と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図16】本発明による検査値の面内のヒストグラムの標準偏差と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図17】本発明による検査値の面内のヒストグラムの最大値と平均値より求めた評価値と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図18】本発明における領域分けの説明図。
【図19】本発明によるパッチ状むらの評価と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図20】むらの種類ごとに検査を行う本発明のフローチャート。
【符号の説明】
1:被検査物
2:カラーCCDカメラ
3:画像処理装置
4:各画素の(u* 、v* )座標点
5:回帰直線
6:波長選択フィルタ
21、23:周辺部分
22:むら領域
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子などの表示素子の色むら及び/又は輝度むらの検査方法、検査装置、及び評価方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、液晶表示素子、カラーCRT等の表示素子の量産工程における色むらの検査は、限度見本との比較による官能検査が主として行われてきた。人が直接視認するので実際の使用状態に近い検査であって簡便な手法である。これを従来例1と呼ぶ。一方、色むらの客観的な検査方法の一つに面内での比較を行う方法がある。
【0003】例えば、色むらを検査する場合に、画面全体を白色に表示し、カラー撮像素子などを用いて面内の各部分の色あいを測定し、面内における白色との最大色差(ΔEuv* 又はΔEab* )が幾つ以下であればよいというような検査手法が提案されている。画面上の数点の色、明るさを測定し、そのばらつき、最大−最小の差などを規格化して用いる。例えば、特開平1−225296号公報、特開平3−101583号公報、特開平3−291093号公報に示された手法である。これを従来例2と呼ぶ。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】両者を比較すると、従来例1の官能検査では微妙なむらを検出できることもあるが、検査員による個人差や疲労具合等によるばらつきが大きく客観的な検査を連続して行うことが困難である。一方、従来例2のカラー撮像素子などを用いて面内の各部分の色を測定して、検査する方法は、ばらつきを抑えて、安定した検査が期待できるものの、例えば白との色度差が同じであれば、赤い部分と青い部分が混在していてもむらとして検出できない。また、面内における最大色差が同じであっても、その分布具合によってむらに対する人の感じ方が変わる問題もある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、表示むら、すなわち色むら及び/又は輝度むらに対する人の視覚特性を測定した。その結果、視覚特性においては、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量が主要なパラメータであることを確認した。本発明では、色の違い(ΔE* )のみではなく、さらにその空間的変化及び面内における平均値に着目し、ΔE* の空間的変化と視角との関係をにおける色むら及び/又は輝度むらの新しい評価方法、検査方法を提供する。本発明において表示むらとは具体的には、輝度むらまたは色むらであり、さらに、輝度むらと色むらとが混在したものを含むものとする。
【0006】すなわち、請求項1は、表示装置の表示画像を撮像手段によって撮像し、撮像画像を形成し、表示画像の表示むらの検査を行う表示装置の検査方法において、撮像画像に存在する表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとを用いて数値演算することを特徴とする表示装置の検査方法を提供する。この場合、表示画像を人の感じる色及び/又は輝度に相当する中間画像にいったん変換し、その中間画像の空間微分の要素により検査を行うようにする。ここで、幾何学的大きさとは色むらの領域の面内における周期的な位置をも含むものとする。
【0007】請求項2は、表示むらとして輝度むらを対象とし、輝度むらの尺度として、明度指数(L* )を用い、明度指数をパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1記載の表示装置の検査方法を提供する。
【0008】請求項3は、表示むらとして色むらを対象とし、色むらの尺度として、色度(u’、v’、又はそれらの組み合わせ)又は色空間座標(u* 、v* 、又はそれらの組み合わせ、又はa* 、b* 、又はそれらの組み合わせ)の関数を用い、それをパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置の検査方法を提供する。
【0009】請求項4は、撮像手段の解像度に応じた空間オペレータによる縦微分の画像、横微分の画像の和を算出して数値演算することを特徴とする請求項1、2又は3記載の表示装置の検査方法を提供する。
【0010】請求項5は、表示装置の表示むらの評価方法であって、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとの両者をパラメータとする複数のむらパターンを準備し、個々のむらパターンごとに表示装置に表示することを特徴とする表示装置の評価方法を提供する。そして、個々のむらパターンを被験者、または被験者に代わる検査装置が検知しうるか否かの結果を得て、数値処理により表示むらに対する被験者等の検知能力を定量化する。
【0011】請求項6は、撮像手段と、コンピュータとが備えられ、表示装置の表示画像を撮像手段により撮像して得た撮像画像を用いて、表示むらの検査が行われる表示装置の検査装置において、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとが数値演算に用いられ、あらかじめ準備された基準値と対比されて、表示むらの判定が行われることを特徴とする表示装置の検査装置を提供する。
【0012】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の度数分布を求め、その統計データの関数を用いることが好ましい。これを本発明の第1の態様と呼ぶ。
【0013】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の対象面内の度数分布のばらつきを表す値を用いることが好ましい。この際、ばらつきを表す値として、度数分布の標準偏差を用いることがさらに好ましい。これを本発明の第2の態様と呼ぶ。
【0014】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の対象面内の平均値及び/又は最大値を用いることが好ましい。これを本発明の第3の態様と呼ぶ。
【0015】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、撮像画像の空間微分の要素の対象面内の平均値及び最大値を用いて、両者に係数をかけて、総和をとることが好ましい。これを本発明の第4の態様と呼ぶ。
【0016】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、縦微分の正の成分のみの画像、負の成分のみの画像、絶対値の画像、横微分の正の成分のみの画像、負の成分のみの画像、絶対値の画像のそれぞれに対して解析を行うことにより、むらの種類、原因ごとの検査を行うことが好ましい。これを本発明の第5の態様と呼ぶ。
【0017】また、請求項1、2、3又は4記載の表示装置の検査方法において、表示画像の領域分けを行い、各々の領域ごとの検査を行うことが好ましい。さらに、各領域ごとにおける、表示むらの種類、原因について判定することが好ましい。より精度の高い表示むらの検査を行うことができる。これを本発明の第6の態様と呼ぶ。また、上記の第1〜第6の態様のいずれかを実行する表示装置の検査装置を構成することができる。
【0018】本発明では、検査対象となる表示装置の表示画面を撮像し、その撮像画像を用いる検査方法であって、色むら及び/又は輝度むらの強さを、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量を用いて検査しているので、人の感覚と合った客観的、かつ安定した表示むらの検査が安定して可能となる。
【0019】本発明では表示むらに関する人の視覚特性を調べるために、被験者に対して様々なレベルの色の変化量を設定したむらパターン群を表示し、個々のむらパターンに対して被験者がむらを検知しうるか否かを調べた。
【0020】図1に本発明の構成を示す。横軸は空間的な位置の変化に対応し、面内におけるX軸位置とする。縦軸は色差を示す。画面の左側の領域を青、右側を赤とし、その境界部を次第に色変化を呈するように設けた様子を示す模式図(分図(A)〜(D))である。分図(A)における色変化の勾配が最も急であり、(B)、(C)、(D)の順に緩やかになる。分図(E)は画面の色表示を模式的に示したもので、周辺部分21、23の間にあるむら領域22で色の変化が徐々に起きている様子を示す。
【0021】つまり、色むらを人が認識する際には、境界部の幅と高さが重要であり、色差があってもその変化が緩やかであると人は視認しにくい。また、色差が小さくてもその変化の幅が狭い(急な勾配)であるときには視認できる。この本発明の表示装置の評価方法を用いて被験者に心理物理測定を行った結果を図11に示す。
【0022】このグラフの縦軸は表示むら部分と表示むら(以下むらと略記する。)でない部分について色をパラメータとして測定を行った。グラフの縦軸はむら部分とむらでない部分の色度の差、つまり色差を示し、横軸はそのむら部分を視認する際の視角、これは実質的に見ることのできる幾何学的な幅に相当する。そして、グラフ上の各点は被験者がむらを識別できる限界を示す。
【0023】つまり、むらの変化量、すなわち輝度差もしくは色差が少ない場合にそのむらが離れている場合には視認しにくい。逆にむらの変化量が大きければ、離れていても視認できる。なお、被験者は色覚正常者で視力1.0であった。表示画像は対角が約2.6インチサイズ、横52cm、縦39cm、画素は640×480マトリックスサイズのものを用いた。画面を矩形で3分割し、左右で色を変え、その画面の中心部に色が変化する勾配を設定する。その色の変化領域を画面上のほぼ中心領域に固定して表示させ、それを0.8m離れた場所から被験者が視認して試験を行った。
【0024】この実験の結果を示す図11のグラフより、むらの知覚はむら部分とむらでない部分の色度差と、色度の変化している幅である視角の関係が一定の値になったときに起こることが確認された。これは、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量がある値になったときに人が色むらに気付くことを意味する。
【0025】本発明の一例では検査対象をカラー撮像した中間画像を用い、色むら又は輝度むらの強さを、むらに相当する部分と周辺部分との色の変化量を用いて検査を行った。そのため、多数の人が気付く、気付かないといった人の感覚にあった色むら又は輝度むらの検査を連続して安定に行うことが可能となった。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例について説明する。例1においては、表示装置の表示画面に色の変化量を様々に変えた表示パターンを提示し、被験者がむらを検知しうるか否かを試験した。画面は左側(赤)から右側(黒)に色変化があるように設定した。その結果を分析して図11のグラフを得た。さらに、本例における人の検出限度を以下の式(1)に定めた。
【0027】
【数1】
検出限度=(色度差−定数)/視野角 ・・・(1)
【0028】本例の被験者(20代男性2名)の場合、上記式(1)中の定数は5、検出限度は85程度が得られた。式(1)より、視角が0ラジアン近傍を除き、通常、人が視認できるようなある範囲の視角に相当するむらに対しては、色の変化量によりむらの検査ができる。
【0029】例えば、視野角0.1ラジアン以上の範囲では、ほぼ色度差/視野角が85となった。これが通常の人の検出限度であると近似できた。また、式(1)による検出限度を他の方法で求めた色の変化量、例えばフィルタリング結果等に換算して判定基準とすることもできる。
【0030】また、判定基準を式(1)による検出限度を基準として、例えば、検出限度の2倍であるとか、検出限度にばらつきを加えたものというような、検出限度を変数とした検査方式により検査することもできる。
【0031】図2に本発明の例2である透過型液晶表示素子の色むら検査の構成図を示す。被検査物1である透過型液晶表示素子の表示面は一様な色に表示されており、撮像手段2であるカラーCCDカメラで撮像される。撮像手段2はカラーCCDカメラに限定されず、例えば輝度むらの検査だけならば、モノクロのCCDカメラでもよいし、その他の撮像素子であってもよい。
【0032】本例における撮像条件としては、1画素の大きさが液晶表示素子上で0.3mm程度である。図3に本発明におけるデータ処理の流れをフローチャートとして示す。図2の構成であって、カラーCCDカメラ2で撮像された表示画像のRGBの輝度信号は、符号3の画像処理装置によって取り込んだ中間画像を演算、処理して、中間画像の各画素の明度指数(L* )又は色度座標(u* 、v* 、a*、b* 等)が求められる。
【0033】例えば、輝度むらを測定したい場合又は色の変化があまりない場合は、各画素の明度指数をその画素の値とし、明度指数による画像を作る。また、色の変化を伴う色むらを検査したい場合は、検査したい被検査物の特性による検査式による値をパラメータに用いて各画素の値とする。
【0034】検査式の1つの例としては、被検査物上の各点に相当するCCDカメラの各画素の色度座標が、図4R>4に示すようなu* 、v* 座標上に座標点4として分布しているような場合には、例えば最小自乗法等によりu* 、v* 座標上に回帰直線5を求め、その直線上に適当な原点を設ける。
【0035】そして、各画素に相当する各点をその直線上に射影し、原点から各直線上の点までの距離によりスカラー値とし、さらにそのスカラー値とL* との間でu* 、v* の場合と同様の方法で、色度座標、明度指数の要素を含むスカラー値を求め、各画素の値とし、色を表す画像を作る。
【0036】このように求めた画像に対して、輝度又は色の変化量を求める手段として、さらに例3としては、図5に示すような、縦方向に微分的な働きを持つ7×7の空間オペレータによるフィルタリングを施し、絶対値を求めた画像Aと、図6に示すような、横方向に微分的な働きを持つ7×7の空間オペレータによるフィルタリングを施し、絶対値を求めた画像Bの和により検査を行った。もちろん輝度又は色の変化量を求める手段として、別のオペレータを用いて実現することもできる。
【0037】ここで、L* は明度指数として明るさを表し、u* v* 又はa* b* は色を表す。輝度むらは、u* v* 又はa* b* が一定の値であり、L* のみが変化するような場合を意味する。一般に、この際に、ΔE* =ΔL* が成立する。本発明で輝度の差はΔE* 又はΔL* 、輝度の変化はdE* /dxもしくは、dL* /dxとなる。
【0038】また、カラーCCDカメラで、フルカラー画像を撮像した場合、RGBの各輝度に相当するディジタル値が得られる。このRGBの各ディジタル値を座標変換したものをXYZとする。同じ照明下で、白一色の画面を同様にして処理して得たものがXn Yn Zn である。さらに、このXYZ、Xn Yn Zn を座標変換して求めたものがCIELAB色空間もしくはCIELUV色空間である。
【0039】いくつかの色むらサンプルに対して、本例により検査を行い、また、同じサンプルに対して人による官能検査を行った結果を対比して示したのが図7である。図7の横軸は、人による検査結果を点数化したもの、縦軸は本発明による検査値を表す。本例においては、相関はr2 =0.90と高い相関を示した。
【0040】もちろん、空間オペレータは上記オペレータに限定されず、また7×7にも限定されない。本発明の例4として、図5及び図6と類似の9×9の空間オペレータを用い、図7とは別のサンプル群に対して、人による検査結果と本発明による検査値を比較したところ、図8のような結果を得た。図の見方は図7と同様で、本例における人による検査結果と本発明による検査値の相関はr2 =0.84である。
【0041】本例においては、色むらの発現する位置とその大きさを固定し、表示画像上の色の変化量のみで検査する例を示した。さらに、表示素子の表示面内の色むらの分布具合を第2パラメータとして検査に含めたい場合には、表示画像上の色の変化量の分布具合、例えば面内に変化量がある値以上の面積が何%以上あるかというような指標、又は変化量がある値以上の部分が単位面積あたり何%以上あるかというような指標で色むらの検査を行う。
【0042】以上の例においては、完成されたLCD表示素子の検査の場合を示したが、表示部のカラー発色機能部の測定を行う以外に、バックライトと偏光板を組み合わせて、液晶表示素子のセルのギャップ等の検査を間接的に行うことが可能となった。つまり、表示画像に現れるものならばその表示特性を検査することによって構造上の欠点を検出できる。
【0043】また、本発明の例5として、図9のフローチャートに示す色むらの検査方法を示す。上述した各例においては、各画素ごとに色を表すスカラー値を求めて、中間画像とし、その中間画像を空間微分した画像データにより評価を行った。
【0044】本例では、各空間微分画像を合成して、1つの画像として評価を行う。例えば、明度指数(L* )の変化量、色度の1軸(u* )の変化量、色度の他の1軸(v* )の変化量をそれぞれ独立に求め、各画素ごとに例えばaL* +bu* +cv* (a,b,cはそれぞれ係数)やaL* 2 +bu* 2 +cv*2のような検査式により検査を行う。
【0045】また、図10に構成を示す例6においては、検査すべき対象の色むらに特徴的な波長のみを選択透過する波長選択フィルタを通して被検査物の表示画面を撮像し、上述した各例と同様の検査方法によって検査することもできる。また、上述した各例では赤〜黒における色変化を対象としたが、同様に青から黒、緑から黒、青から緑、赤から緑といった各色の組み合わせの場合にも同様に適用できる。
【0046】次に本発明の例6として、表示装置の面全体における総合的な判断手法について説明する。表示装置の表示面の輝度むら及び/又は色むらについては、その変化量(近傍における微分値)の平均値(もしくは面全体における総和)が人の表示装置に対する視認性と高い相関関係を持つことがわかった。
【0047】具体的には、各画素のむらを示す勾配値の面内における平均を算出する。その結果を図12に示す。縦軸はむらの面内平均値であり、横軸は1対比較法による官能評価結果を対応し、グラフ上の各データ点を得た。相関はr2 ≒0.7となった。
【0048】また、表示むらの検出の際、単独に存在するむらよりも、近傍に2つ存在する方が目立つ傾向にある。また、似たような表示むらが連続してあると、さらに目に付きやすいことがわかった。例えば、LCDに用いられるガラス基板自身の微妙なうねりに起因するむらは縞模様のような周期性を強く呈する傾向にある。この場合には、画像データにメディアンやスムーシングフィルタなどのバンドパスフィルタをかけることで評価できるようになる。
【0049】図13に本発明による検査値(grad値)の面内のヒストグラムの説明図を示す。符号13が平均値、符号14が最大値、符号15が標準偏差値、符号16が二値化閾値を意味する。図13で、むらがないパネルの値は0だけとなり、むらが多いほど右側に広がったグラフとなる。本例では、この図に示す面内の最大値(MAX.)、平均値(AVE.)、標準偏差(STD.)、判別分析法による二値化閾値(THD.)の4種を算出し、評価パラメータとする。
【0050】MAX.は面内で最も強いむら部分の明るさの変化量を表し、AVE.は局所的な強いむらがあっても大きな値となるが、全体的にむらが強い場合、あるいは面内におけるむら部分のしめる割合が大きい場合(むらが細かい周期である場合など)に大きな値となる。
【0051】またSTD.はむらの不規則性を表し、強いむらと弱いむらが混在する場合に大きくなることが考えられるが、強いむらがある場合、全体的にむらが強い場合、あるいは多い場合は全体の値が大きくなり、その影響でこの値も大きくなる。THD.はむらの背景からの鮮明さ、区別しやすさを表し、統計的にむらと背景を区別する場合の閾値を表すが、やはり全体的にむらが強い場合は大きな値となる。
【0052】これらの4つのパラメータは互いに独立ではなく、MAX.を除く3パラメータは全体的なむらの強さを表している。ただし、これらの値は被検物の明るさが異なる場合は結果の値に影響があるため、各値をそれぞれ原画像の全面の平均輝度で割ることにより補正している。
【0053】表1に本発明で得た上記の各パラメータと人による官能検査との相関を示す。人の評価は、被験者(20代〜40代の男女11名)に対する1対比較法のデータを基にしている。ヒストグラムの標準偏差と人の評価との関係を図14に、MAX.とAVE.を標準化した2つの独立変数を用い、人による評価を従属変数として重回帰分析を行った結果より求めた式(2)の結果をYとする。
【0054】
【数2】
Y=a×(MAX.)+b×(AVE.) ・・・・(2)
a=1 ・・・・(2A)
b=1.6 ・・・・(2B)
【0055】これらの係数は、両変数を標準化した場合に対するものである。標準化していない場合には、これらの係数はa=1 、b=19程度となる。このYの値と人の評価との関係を図15に示す。
【0056】表1には各パラメータの標準誤差も併せて示す。標準誤差は、人による評価のばらつきに対して、各パラメータがどの程度の誤差を持つかを評価するために式(3)により求めた。
【0057】
【数3】パラメータの標準誤差=((人の評価との標準誤差)2+ (再現性の標準誤差)2)0.5 ・・・(3)
【0058】被験者の個人差と再現性より同様に計算した人のばらつきは0.44であり、表1のYをはじめ、AVE.、STD.、THD.は人のばらつきに比べかなり小さな誤差に抑えられている。
【0059】
【表1】
【0060】また、官能評価によって得た別のサンプルに対して、度数分布の標準偏差及び上記Yを求めた結果を図16、図17に示す。相関は標準偏差がr2 =0.86、Yがr2 =0.87となる。これらのデータに関して重回帰分析により標準化後の係数a、bを求めたところ、a=1 、b=3.4となり、相関はr2 =0.91となる。
【0061】以上の実施例においては、主に面内に生じる不規則な表示むらに関しての評価を行っているが、本発明による検査値の例はこれに限らず、例えばむらの種類ごとの評価もできる。図18に示すように表示画面を領域17、18、19、20、21に分ける。そして、 各々の領域ごとにヒストグラムを算出し、 パラメータを求め評価を行うことにより、 液晶注入口周辺に特異的に起こるむら、 周辺部に額縁状に特異的に起こるむらなどの評価ができる。
【0062】また、パッチ状に明るさが変わっている領域の評価に関しては、ヒストグラムのパラメータに関して、 平均は高くなるがばらつきは低いという特徴を持つことが考えられ、AVE./STD.という評価指標を用いると、図19に示すような評価(r2 =0.60)が可能となる。
【0063】また、本発明では原画像に図5のようなフィルタを作用させ絶対値を求め、さらに原画像に図6のようなフィルタを作用させ絶対値を求めたものを足しあわせて検査値としているが、図20のフローチャートに示すように、原画像に図5のようなフィルタを作用させ絶対値を求めた段階の画像に関してヒストグラムを算出し、評価することにより横方向に筋状に特異的に生じるむらの、原画像に図6のようなフィルタを作用させ絶対値を求めた段階の画像に関してヒストグラムを算出し、評価することにより縦方向に筋状に特異的に生じるむらの評価を可能としている。
【0064】また、図5又は図6のフィルタを作用させて絶対値を求める前の画像に関してヒストグラムを求めることにより、目では捕らえにくいレベルの傾斜むらを評価することも可能としている。
【0065】
【発明の効果】本発明により色むら及び/又は輝度むらに関して、人の感覚にあった客観的検査が可能となり、量産工場における検査の自動化が可能になった。そして、欠点の検出が高確度で早くできるようになったので、量産工場の各工程へのフィードバックが早くなり、全体の製造歩留を向上できた。また、出荷される製品の高品質化に大きく寄与した。また、本発明はその効果を損しない範囲で種々の応用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を示す模式図。
【図2】本発明の1つの実施例を示す構成図。
【図3】本発明の1つの実施例を示すフローチャート。
【図4】色の違いの尺度である、色度の関数を求める手段の実施例の説明図。
【図5】横方向の輝度又は色の変化量を求めるオペレータの一例の模式図。
【図6】縦方向の輝度又は色の変化量を求めるオペレータの一例の模式図。
【図7】本発明の1つの実施例における検査結果と人による検査結果の関係を示すグラフ。
【図8】本発明の別の実施例における検査結果と人による検査結果の関係を示すグラフ。
【図9】本発明の別の実施例を示すフローチャート。
【図10】本発明のさらに別の実施例を示す構成図。
【図11】人の色むらに対する知覚特性を示すグラフ。
【図12】面内において検出された表示むらの傾きの面内平均値と人による官能検査との相関を示すグラフ。
【図13】本発明による検査値の面内のヒストグラムの説明図。
【図14】本発明による検査値の面内のヒストグラムの標準偏差と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図15】本発明による検査値の面内のヒストグラムの最大値と平均値より求めた評価値と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図16】本発明による検査値の面内のヒストグラムの標準偏差と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図17】本発明による検査値の面内のヒストグラムの最大値と平均値より求めた評価値と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図18】本発明における領域分けの説明図。
【図19】本発明によるパッチ状むらの評価と人の評価との相関関係を示すグラフ。
【図20】むらの種類ごとに検査を行う本発明のフローチャート。
【符号の説明】
1:被検査物
2:カラーCCDカメラ
3:画像処理装置
4:各画素の(u* 、v* )座標点
5:回帰直線
6:波長選択フィルタ
21、23:周辺部分
22:むら領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】表示装置の表示画像を撮像手段によって撮像し、撮像画像を形成し、表示画像の表示むらの検査を行う表示装置の検査方法において、撮像画像に存在する表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとを用いて数値演算することを特徴とする表示装置の検査方法。
【請求項2】表示むらとして輝度むらを対象とし、輝度むらの尺度として、明度指数(L*)を用い、明度指数をパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1記載の表示装置の検査方法。
【請求項3】表示むらとして色むらを対象とし、色むらの尺度として、色度(u’、v’又はそれらの組み合わせ)又は色空間座標(u* 、v* 、又はそれらの組み合わせ、又はa* 、b* 、又はそれらの組み合わせ)の関数を用い、それをパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置の検査方法。
【請求項4】撮像手段の解像度に応じた空間オペレータによる縦微分の画像と、横微分の画像の和を算出して数値演算することを特徴とする請求項1、2又は3記載の表示装置の検査方法。
【請求項5】表示装置の表示むらの評価方法であって、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとをパラメータとする複数のむらパターンを準備し、個々のむらパターンごとに表示装置に表示することを特徴とする表示装置の評価方法。
【請求項6】撮像手段と、コンピュータとが備えられ、表示装置の表示画像を撮像手段により撮像して得た撮像画像を用いて表示むらの検査が行われる表示装置の検査装置において、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとが数値演算に用いられ、あらかじめ準備された基準値と対比されて、表示むらの判定が行われることを特徴とする表示装置の検査装置。
【請求項1】表示装置の表示画像を撮像手段によって撮像し、撮像画像を形成し、表示画像の表示むらの検査を行う表示装置の検査方法において、撮像画像に存在する表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとを用いて数値演算することを特徴とする表示装置の検査方法。
【請求項2】表示むらとして輝度むらを対象とし、輝度むらの尺度として、明度指数(L*)を用い、明度指数をパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1記載の表示装置の検査方法。
【請求項3】表示むらとして色むらを対象とし、色むらの尺度として、色度(u’、v’又はそれらの組み合わせ)又は色空間座標(u* 、v* 、又はそれらの組み合わせ、又はa* 、b* 、又はそれらの組み合わせ)の関数を用い、それをパラメータとした撮像画像の空間微分の要素を用いることを特徴とする請求項1又は2記載の表示装置の検査方法。
【請求項4】撮像手段の解像度に応じた空間オペレータによる縦微分の画像と、横微分の画像の和を算出して数値演算することを特徴とする請求項1、2又は3記載の表示装置の検査方法。
【請求項5】表示装置の表示むらの評価方法であって、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとをパラメータとする複数のむらパターンを準備し、個々のむらパターンごとに表示装置に表示することを特徴とする表示装置の評価方法。
【請求項6】撮像手段と、コンピュータとが備えられ、表示装置の表示画像を撮像手段により撮像して得た撮像画像を用いて表示むらの検査が行われる表示装置の検査装置において、表示むらを呈するむら領域と周辺部分との変化の大きさと、むら領域の幾何学的な大きさとが数値演算に用いられ、あらかじめ準備された基準値と対比されて、表示むらの判定が行われることを特徴とする表示装置の検査装置。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図13】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
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【図13】
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【図10】
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【図14】
【図15】
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【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開平10−96681
【公開日】平成10年(1998)4月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−204997
【出願日】平成9年(1997)7月30日
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【公開日】平成10年(1998)4月14日
【国際特許分類】
【出願日】平成9年(1997)7月30日
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
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