説明

表面保護フィルム

【課題】離型剤の使用や基材層へのコロナ処理工程が無くとも、巻回体から容易に展開することができ、且つプリズムシートのような表面に凹凸を有する被着体へ適度な粘着力を示す表面保護フィルムを提供すること。
【解決手段】特定構造を有する水添ブロック共重合体(a)、特定構造を有する水添ブロック共重合体(b)及び粘着付与樹脂(c)を含み、前記水添ブロック共重合体(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の質量比が(a)/(b)=90/10〜10/90であり、前記樹脂組成物中の粘着付与樹脂(c)の含有量が、前記水添ブロック共重合体(a)、前記水添ブロック共重合体(b)および該粘着付与樹脂(c)の合計質量に対して1〜50質量%である樹脂組成物からなる粘着剤層と、基材層を備える表面保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤層が適度な粘着力を有する、基材層と粘着剤層からなる表面保護フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より金属板、合成樹脂板、ガラス板等の各種材料の表面を汚染や損傷から保護する方法として、いわゆる表面保護フィルムで被覆する技術が用いられている。これらの表面保護フィルムは一般的に基材層と粘着剤層を含む積層構造を有しており、該粘着剤層はアクリル系粘着剤やエラストマー系粘着剤等を基材層に塗布、または基材層と共押出することで製造されている。このような表面保護フィルムは、通常、長尺のフィルムをロール状に巻き取った巻回体として製造され、保護フィルムとして使用する際には展開させ被着体へ貼りつける。
【0003】
液晶ディスプレイ等に用いられるプリズムシートは、上記した表面保護フィルムを貼りつけることで、埃や汚れの付着または損傷から保護されている。プリズムシートの様な表面に凹凸を有する被着体は粘着剤層との接触面積が小さいので、粘着剤層には高い粘着力が求められる。ところが、高い粘着力を有する表面保護フィルムは、巻回体とした場合、内側の基材層背面に対しても強く粘着し、展開する際に基材の変形や粘着剤層の剥離が起きてしまい、表面保護フィルムとしての機能を損なうことがある。
【0004】
これに対し、粘着力を制御する手法も試みられている。特許文献1の組成物ではスチレン系エラストマーのジブロック体の配合量を増量することで、粘着力を高めることを開示されている。特許文献2の保護フィルムでは、粘着剤層にポリオレフィンを配合することで粘着力を調整することが開示されている。また、特許文献3のように離型剤層を設けたり、特許文献4のように基材層をコロナ処理することで、表面保護フィルムを基材層から剥離しやすくする手法も提案され、特許文献4ではコロナ処理により巻回体からの巻き出し性を改良できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−194923号公報
【特許文献2】特開2010−126711号公報
【特許文献3】国際公開第2010/084783号パンフレット
【特許文献4】特開2009−191208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に係る組成物では粘着剤層の粘着力が強くなりすぎる傾向があり、巻回体からの巻き出しが困難になる恐れがある。特許文献2では、ポリオレフィンを配合することで粘着剤層が硬くなる傾向があり、巻回体からの巻き出し性は良好であるがプリズムシートへの粘着力はやや劣る傾向となる。
特許文献3に係る表面保護フィルムでは離型剤が粘着剤層に移行し、さらにプリズム表面に付着することでプリズムシートを汚染する恐れがあり、特許文献4の方法では、表面保護フィルムの製造コストが増大するという問題があった。
【0007】
しかして、本発明の目的は、離型剤の使用や、基材層へのコロナ処理が無くとも巻回体から容易に展開でき、且つプリズムシートのような表面に凹凸を有する被着体へ十分な粘着力を示す表面保護フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、2種の特定のスチレン系エラストマーを含有する組成物を表面保護フィルムの粘着剤層に用いることで、上記課題を解決する表面保護フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、
〔1〕芳香族ビニル化合物単位を主としてなる重合体ブロック(A)を少なくとも2個と、共役ジエン化合物単位を主としてなる重合体ブロック(B)を少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる、重合体ブロック(A)の含有量が5〜35質量%、水素添加後の重合体ブロック(B)のガラス転移温度が−45℃以上30℃以下である水添ブロック共重合体(a)、
芳香族ビニル化合物単位を主としてなる重合体ブロック(C)を少なくとも2個と、共役ジエン化合物単位を主としてなる重合体ブロック(D)を少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる、重合体ブロック(C)の含有量が5〜35質量%、水素添加後の重合体ブロック(D)のガラス転移温度が−45℃未満である水添ブロック共重合体(b)、
及び粘着付与樹脂(c)を含み、
前記水添ブロック共重合体(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の質量比が(a)/(b)=90/10〜10/90であり、粘着付与樹脂(c)の含有量が、前記水添ブロック共重合体(a)、前記水添ブロック共重合体(b)および該粘着付与樹脂(c)の合計質量に対して1〜50質量%である樹脂組成物からなる粘着剤層と、基材層を備える表面保護フィルム、
〔2〕基材層がポリオレフィン系樹脂からなる上記〔1〕の表面保護フィルム、
〔3〕さらに水添ジブロック共重合体(d)を樹脂組成物中の合計質量に対して30質量%以下の範囲で含有する、上記〔1〕または〔2〕の表面保護フィルムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、巻回体からの展開性に優れ、且つプリズムシートのような表面に凹凸を有する被着体への適度な粘着力を有する表面保護フィルムを提供できる。また、当該表面保護フィルムは高温(55℃)における粘着力にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表面保護フィルムは基材層と粘着剤層を備え、粘着剤層は水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)および粘着付与樹脂(c)を含有する樹脂組成物からなる。以下、各成分について説明する。
【0011】
[水添ブロック共重合体(a)]
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いられる水添ブロック共重合体(a)は、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロック(A)と共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(B)とから構成され、重合体ブロック(A)を少なくとも2個、重合体ブロック(B)を少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる、重合体ブロック(A)の含有量が5〜35質量%、水素添加後の重合体ブロック(B)のガラス転移温度が−45℃以上30℃以下である水添ブロック共重合体である。
【0012】
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物単位を主として構成されている。ここで「主として」とは、芳香族ビニル化合物単位が、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%であることを意味する。
該重合体ブロック(A)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、t−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセナフチレン等が挙げられる。
該重合体ブロック(A)は、前記した芳香族ビニル化合物の1種に由来する構造単位のみを含んでいてもよいし、2種以上に由来する構造単位を含んでいてもよい。その中でも、重合体ブロック(A)は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンに由来する構造単位から構成されていることが好ましく、スチレンに由来する構造単位から構成されていることがより好ましい。
【0013】
該重合体ブロック(A)は、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量含有していてもよい。このとき、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(A)の質量に基づいて20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、メチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0014】
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物単位を主として構成されている。ここで「主として」とは、共役ジエン化合物単位が、80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは100質量%であることを意味する。
該重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。
該重合体ブロック(B)は、前記した共役ジエン化合物の1種に由来する構造単位のみを含んでいてもよいし、2種以上に由来する構造単位を含んでいてもよい。その中でも、重合体ブロック(B)は、ブタジエン、イソプレン、またはブタジエンおよびイソプレンの混合物から構成されていることが好ましく、イソプレン、またはブタジエンおよびイソプレンの混合物から構成されていることがより好ましい。
【0015】
該重合体ブロック(B)は、共役ジエン化合物に由来する構造単位と共に他の共重合性単量体に由来する構造単位を少量有していてもよい。このとき、他の共重合性単量体に由来する構造単位の割合は、重合体ブロック(B)の質量に基づいて20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
他の共重合性単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、t−ブチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセナフチレン等の芳香族ビニル化合物や、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、メチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0016】
水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(A)の含有量は5〜35質量%であり、好ましくは6〜30質量%、より好ましくは7〜24質量%である。重合体ブロック(A)の含有量が5質量%未満である場合、調製した樹脂組成物を粘着剤層とする表面保護フィルムのタック(膠着)が強くなりすぎ、一方、35質量%を超えると調製した樹脂組成物の粘度が高くなり、成形加工性が低下する。
なお、水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(A)の含有量は、例えばH−NMR測定により得られたスペクトルから算出することができる。
【0017】
水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(B)の共役ジエン化合物単位の結合形態について、例えばブタジエンの場合は1,2−結合または1,4−結合、イソプレンの場合は1,2−結合、3,4−結合または1,4−結合をとることができる。重合体ブロック(B)中の1,2−結合と3,4−結合の含有量は45モル%以上である。重合体ブロック(B)の1,2−結合と3,4−結合の含有量が45モル%未満である場合は、調製した樹脂組成物を粘着剤層とする表面保護フィルムの粘着力が低下し、被着体へ十分に粘着しない場合がある。
また、重合体ブロック(B)のガラス転移温度は、−45℃以上30℃以下であり、好ましくは−43℃以上10℃以下、より好ましくは−40℃以上0℃以下である。ガラス転移温度が−45℃未満または30℃を超えると、調製した樹脂組成物を粘着剤層に有する表面保護フィルムの粘着力が低下し、被着体へ十分に粘着しない。
なお、本明細書において、ガラス転移温度は、示差走査型熱量計にて昇温速度10℃/分で−120℃から100℃まで昇温し、測定曲線の変曲点の温度を読みとりガラス転移温度とした。
【0018】
重合体ブロック(B)の水素添加率、すなわち重合体ブロック(B)を構成する共役ジエン化合物単位に由来する炭素−炭素二重結合の水素添加率は、耐熱性および耐候性を向上させる観点から、70%以上であることが好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上である。
なお、水素添加率は、重合体ブロック(B)中の共役ジエン化合物単位に由来する炭素−炭素二重結合の含有量を、H−NMR測定にて得られたスペクトルから算出できる。
【0019】
重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)の結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれでもよい。
【0020】
水添ブロック共重合体(a)の具体例としては、重合体ブロック(A)をAと、重合体ブロック(B)をBとしたときに、〔A−B−A〕で表されるトリブロック共重合体、〔A−B−A−B〕で表されるテトラブロック共重合体、AとBとが5個以上直鎖状に結合しているポリブロック共重合体、(A−B)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは3以上の整数を表す)、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、〔A−B−A〕で表されるトリブロック共重合体が好ましい。
ここで、本明細書においては、同種の重合体ブロックが2価のカップリング剤等を介して直線状に結合している場合、結合している重合体ブロック全体は一つの重合体ブロックとして取り扱う。これに従い、上記例示も含め、本来厳密には〔A−X−A〕と表記されるべき重合体ブロックは、特に単独の重合体ブロック(A)と区別する必要がある場合を除き、全体として重合体ブロック(A)と表示する。例えば、2価のカップリング剤残基を含み、厳密には〔A−B−X−B−A〕と表記されるべきブロック共重合体は、〔A−B−A〕と表記し、トリブロック共重合体として扱う。
【0021】
水添ブロック共重合体(a)の重量平均分子量は、好ましくは50,000〜220,000であり、より好ましくは70,000〜200,000、さらに好ましくは90,000〜180,000の範囲内である。水添ブロック共重合体(a)の重量平均分子量が50,000未満であると、粘着剤層の強度が低下するため剥離時に糊残りが生じ、一方、220,000より大きいと、調製した樹脂組成物の成形加工性が低下する場合がある。
なお、本明細書において重量平均分子量とは、水添ブロック共重合体(a)または水添ブロック共重合体(b)について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、標準ポリスチレン検量線に基づき求めた換算値である。
【0022】
[水添ブロック共重合体(b)]
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いられる水添ブロック共重合体(b)は、芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロック(C)と共役ジエン化合物からなる重合体ブロック(D)とから構成され、重合体ブロック(C)を少なくとも2個、重合体ブロック(D)を少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる、重合体ブロック(C)の含有量が5〜35質量%、水素添加後の重合体ブロック(D)のガラス転移温度が−45℃未満である水添ブロック共重合体である。
【0023】
水添ブロック共重合体(b)の重合体ブロック(C)は、水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(A)と同様のものを用いることができる。
【0024】
また、水添ブロック共重合体(b)の重合体ブロック(D)は、水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(B)と同様のものを用いることができる。
【0025】
水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(C)の含有量は5〜35質量%であり、好ましくは10〜34質量%、より好ましくは15〜33質量%である。重合体ブロック(C)の含有量が5質量%未満であると、粘着剤層の強度が低下するため、被着体から剥離させる際に糊残りが生じ、一方、35質量%を超えると、調製した樹脂組成物の粘度が高くなり、成形加工性が低下する。
【0026】
水添ブロック共重合体(b)における重合体ブロック(D)の1,2−結合と3,4−結合の含有量は、好ましくは45モル%未満であり、より好ましくは40モル%以下であり、さらに好ましくは15モル%以下である。
水添ブロック共重合体(b)の重合体ブロック(D)のガラス転移温度は−45℃未満であり、好ましくは−60℃以上−45℃未満である。重合体ブロック(D)のガラス転移温度が−45℃以上であると、調製した樹脂組成物を粘着剤層とする表面保護フィルムの、巻回体からの展開性が低下する。
【0027】
重合体ブロック(D)の水素添加率、すなわち重合体ブロック(D)を構成する共役ジエン化合物単位に由来する炭素−炭素二重結合の水素添加率は、耐熱性および耐候性に優れるという観点から、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0028】
重合体ブロック(C)および重合体ブロック(D)の結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれでもよい。
【0029】
水添ブロック共重合体(b)の具体例としては、重合体ブロック(C)をCと、重合体ブロック(D)をDとしたときに、〔C−D−C〕で表されるトリブロック共重合体、〔C−D−C−D〕で表されるテトラブロック共重合体、CとDとが5個以上直鎖状に結合しているポリブロック共重合体、(C−D)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは3以上の整数を表す)、およびこれらの混合物などが挙げられる。これらの中でも、〔C−D−C〕で表されるトリブロック共重合体が好ましい。
【0030】
水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量は、好ましくは50,000〜150,000であり、より好ましくは60,000〜140,000であり、さらに好ましくは80,000〜120,000の範囲内である。水添ブロック共重合体(b)の重量平均分子量が50,000未満であると、粘着剤層の強度が低下するため剥離時に糊残りが生じ、一方、150,000より大きいと、調製した樹脂組成物の成形加工性が低下する場合がある。
【0031】
[水添ブロック共重合体の製造]
水添ブロック共重合体(a)及び水添ブロック共重合体(b)の製造方法は特に制限されず、公知の方法で製造することができ、例えば、アニオン重合やカチオン重合などのイオン重合法、シングルサイト重合法、ラジカル重合法などのいずれの方法も用いることができる。これらの中でもアニオン重合法が好ましい。アニオン重合法による場合は、例えば下記(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)アルキルリチウム化合物を重合開始剤として芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物、芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法。
(ii)アルキルリチウム化合物を重合開始剤として芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングさせる方法。
(iii)ジリチウム化合物を重合開始剤として共役ジエン化合物、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法。
【0032】
上記のアルキルリチウム化合物としては、例えばメチルリチウム、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、ペンチルリチウムなどが挙げられる。カップリング剤としては、例えばジビニルベンゼン、ジクロロメタン、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジブロモベンゼン、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。ジリチウム化合物としては、例えばナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼンなどが挙げられる。
上記のアルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物等の重合開始剤およびカップリング剤の使用量は、目的とする水添ブロック共重合体(a)および水添ブロック共重合体(b)の所望とする重量平均分子量により適宜決定される。通常は、アルキルリチウム化合物、ジリチウム化合物などの開始剤は、重合に用いる芳香族ビニル化合物および共役ジエン化合物などの重合性単量体の合計100質量部あたり0.01〜2質量部の割合で用いられる。カップリング剤を使用する場合は、前記重合性単量体の合計100質量部あたり0.001〜10質量部の割合で用いられる。
上記のアニオン重合は、溶媒の存在下で行なうのが好ましい。溶媒としては、重合開始剤に対して不活性で、重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限はない。例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、トルエン、ベンゼン、キシレン等の飽和脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素が挙げられる。
また、重合反応は、上記した(i)〜(iii)のいずれの方法による場合も、通常0〜80℃、好ましくは10〜70℃の温度で、0.5〜50時間、好ましくは1〜30時間行なうことができる。
【0033】
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(B)、および水添ブロック共重合体(b)の重合体ブロック(D)のガラス転移温度はそれぞれを構成する共役ジエン化合物の種類、および1,2−結合および3,4−結合の含有量(ビニル化度)により制御することができ、一般的にビニル化度が高いほど、ガラス転移温度は上昇する。同じビニル化度であればイソプレンから構成されているとガラス転移温度は高くなり、ブタジエンおよびイソプレンの混合物、ブタジエンの順にガラス転移温度は低下する。
水添ブロック共重合体(a)の重合体ブロック(B)、および水添ブロック共重合体(b)の重合体ブロック(D)の1,2−結合および3,4−結合の含有量を制御するには、重合の際に共触媒としてルイス塩基を添加する方法を用いる。
【0034】
ルイス塩基としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等のアミン類等が挙げられる。これらのルイス塩基は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ルイス塩基の添加量は、重合体ブロック(B)および重合体ブロック(D)を構成する共役ジエン化合物単位のビニル化度をどの程度制御するかにより決定され、ルイス塩基の添加量を増やすことで、得られる重合体ブロック(B)および重合体ブロック(D)のビニル化度は高くなる。そのため、ルイス塩基の添加量に厳密な意味での制限はないが、重合開始剤として用いられるアルキルリチウム化合物又はジリチウム化合物に含有されるリチウム1グラム原子あたり、通常0.1〜1,000モル、好ましくは1〜100モルの範囲内で用いる。
【0035】
上記方法により重合を行なった後、重合反応液に含まれるブロック共重合体を、該ブロック共重合体の貧溶媒(メタノール等)に注いで凝固させるか、又は重合反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥させることにより、水素添加されていないブロック共重合体を得ることができる。
【0036】
[ブロック共重合体の水素添加反応]
続いて、上記で得られたブロック共重合体を水素添加反応に付すことによって、水添ブロック共重合体(a)および水添ブロック共重合体(b)を製造できる。
水素添加反応は、ラネーニッケル;Pt、Pd、Ru、Rh、Ni等の金属をカーボン、アルミナ、珪藻土等の担体に担持させた不均一系触媒;遷移金属化合物とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等との組み合わせからなるチーグラー系触媒;メタロセン系触媒等の水素添加触媒の存在下、上記で得られたブロック共重合体を反応系において不活性な溶媒に溶解させ、水素と反応させることにより行なうことができる。
水素添加反応は、水素圧力を通常0.1〜20MPa、好ましくは0.5〜15MPa、反応温度を通常20〜250℃、好ましくは50〜150℃、反応時間を通常0.1〜100時間、好ましくは1〜50時間の範囲で行なう。
なお、上記で得られたブロック共重合体を含む重合反応液からブロック共重合体を単離せず、該重合反応液をそのまま水素添加反応に付すこともできる。この方法による場合、水素添加反応液をメタノール等の貧溶媒に注いで凝固させるか、又は水素添加反応液をスチームと共に熱水中に注いで溶媒を共沸によって除去(スチームストリッピング)した後、乾燥することにより、水添ブロック共重合体(a)および水添ブロック共重合体(b)を得ることができる。
【0037】
このようにして得られた水添ブロック共重合体(a)または水添ブロック共重合体(b)は、通常、粒状、粉状であり、それぞれそのまま用いることもできるし、必要に応じて、従来公知の方法を用いてペレット化することもできる。
ペレット化の方法としては、例えば、一軸又は二軸押出機から水添ブロック共重合体(a)または水添ブロック共重合体(b)をストランド状に押出して、ダイ部前面に設置された回転刃により、水中で切断する方法;一軸又は二軸押出機から水添ブロック共重合体(a)または水添ブロック共重合体(b)をストランド状に押出して、水冷又は空冷した後、ストランドカッターにより切断する方法等が挙げられる。
【0038】
[粘着付与樹脂(c)]
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いる粘着付与樹脂(c)としては、ロジン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、脂肪族系石油樹脂、脂環式系石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂またはこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。なお、耐候性や糊残りの観点から、水素添加された粘着付与樹脂を用いることが好ましい。
上記粘着付与樹脂(c)の軟化点は、好ましくは85〜160℃であり、より好ましくは100〜150℃であり、さらに好ましくは105〜145℃である。粘着付与樹脂(c)の軟化点が85℃未満だと、調製した樹脂組成物を粘着剤層に有する表面保護フィルムの高温(55℃)での粘着力が低下し、160℃より高いと調製した樹脂組成物の成形加工性が低下する場合がある。
【0039】
[樹脂組成物]
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いる樹脂組成物中、水添ブロック共重合体(a)および水添ブロック共重合体(b)の配合量は、質量比として、水添ブロック共重合体(a)/水添ブロック共重合体(b)=90/10〜10/90であり、80/20〜20/80が好ましく、75/25〜25/75がより好ましい。水添ブロック共重合体(a)の配合量が90/10より多いと、該樹脂組成物を粘着剤層に用いた表面保護フィルムの粘着力が高すぎ、巻回体からの展開力が低下してしまい、一方配合量が10/90より少ないと、表面保護フィルムに十分な粘着性を付与できない。
【0040】
また、粘着付与樹脂(c)の配合量は、水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)および粘着付与樹脂(c)の合計質量に対して1〜50質量%であり、3〜40質量%であることが好ましく、5〜30質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましい。粘着付与樹脂(c)の配合量が1質量%未満である場合は、該樹脂組成物を粘着剤層に用いた保護フィルムは十分な粘着力を持たず、一方50質量%を超えると粘着付与樹脂がブリードし、被着体を汚染する。
【0041】
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いる樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂を少量添加してもよい。他の熱可塑性樹脂としては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体の金属イオン架橋樹脂(アイオノマー)、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のアセタール系樹脂、ポリメチルメタアクリレート系樹脂等のアクリル系樹脂などが挙げられる。
芳香族ビニル化合物からなる重合体ブロックと共役ジエン化合物からなる重合体ブロックを有するブロック共重合体の水素添加物、すなわち、水添ジブロック共重合体(d)を添加してもよい。水添ジブロック共重合体(d)の芳香族ビニル化合物は、水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(A)と同様のものを用いることができ、共役ジエン化合物は、水添ブロック共重合体(a)における重合体ブロック(B)と同様のものを用いることができる。水添ジブロック共重合体(d)において、芳香族ビニル化合物からなるブロックの含有量は好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは10〜34質量%であり、重量平均分子量は、好ましくは10,000〜200,000であり、より好ましくは20,000〜150,000である。水添ブロック共重合体(d)における共役ジエン化合物単位に由来する炭素−炭素二重結合の水素添加率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。 水添ジブロック共重合体(d)を含有させる場合、その量は、表面保護フィルムの粘着剤層の表面膠着防止の観点から、上記樹脂組成物100質量部あたり30質量部以下が好ましく、20質量部以下であることがより好ましい。
【0042】
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いる樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーとしては、タルク、クレー、マイカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等が挙げられる。無機フィラーを添加する場合、その量は、樹脂組成物100質量部あたり20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0043】
また、本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いる樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて他の添加剤、例えば熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、撥水剤、防水剤、親水性付与剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、透光性調整剤、蛍光剤、摺動性付与剤、透明性付与剤、アンチブロッキング剤、金属不活性化剤、防菌剤等をさらに添加してもよい。熱安定剤としては、例えばリン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ヒドロキシル系熱安定剤等が挙げられる。これらの中でも、ラクトン系熱安定剤が好ましい。熱安定剤を添加する場合、その量は、粘着剤層からのブリードを抑制する観点から、樹脂組成物100質量部あたり3質量部以下が好ましく、2質量部以下がより好ましい。
【0044】
本発明の表面保護フィルムの粘着剤層に用いる樹脂組成物は、水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)、粘着付与樹脂(c)および必要に応じて他の成分を、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー、コニカルブレンダー等の混合機を用いて混合することにより、またはその混合後、一軸又は二軸押出機、ニーダー等により溶融混練することにより製造できる。溶融混練時の温度は適宜設定することができるが、通常150〜300℃であり、好ましくは160〜250℃である。
得られた樹脂組成物は、本発明の表面保護フィルムを押出成形で容易に製造する観点から、ペレット化するのが好ましい。
【0045】
[基材層]
本発明の表面保護フィルムにおける基材層の材質は特に制限されない。表面保護フィルムの性能や価格の観点からポリオレフィン系樹脂が好ましく、中でもポリプロピレン(ホモプロピレン、ブロックプロピレン、ランダムプロピレン)、プロピレン−エチレン共重合体、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体がより好ましい。基材層の構成は、一層でもよく、二層以上の多層構成でもよい。二層以上からなる場合、材質の異なる2種類以上のポリオレフィン系樹脂を用いてもよい。
該基材層には、本発明の目的を損なわない範囲内で、必要に応じて添加剤、例えば熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、撥水剤、防水剤、親水性付与剤、導電性付与剤、熱伝導性付与剤、電磁波シールド性付与剤、透光性調整剤、蛍光剤、摺動性付与剤、透明性付与剤、アンチブロッキング剤、金属不活性化剤、防菌剤等をさらに添加してもよい。添加剤の含有量は、基材層からのブリードを抑制する観点から、上記樹脂組成物100質量部あたり10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0046】
[表面保護フィルムの製造]
本発明の表面保護フィルムの製造方法は特に限定はなく、例えば押出機による基材層と樹脂組成物の共押出し成形法や、基材層に樹脂組成物を塗工する方法などが挙げられる。
【0047】
本発明の表面保護フィルムを構成する粘着剤層の厚みは、1μm以上100μm以下であることが好ましく、5μm以上50μm以下であることがより好ましい。一方、基材層の厚みは500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例等により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されない。なお、実施例および比較例中の表面保護フィルムの作製および各物性の測定は、以下のようにして行なった。
【0049】
(1)スチレン含有量、水素添加率、1,2−結合及び3,4−結合量の測定
水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)または水添時ブロック共重合体(d)を重クロロホルム溶媒に溶解し、日本電子社製「Lambda−500」を用いて、50℃でH−NMRを測定した。得られたスペクトルから、スチレン含有量、水素添加率、1,2−結合及び3,4−結合量(ビニル化度)を算出した。
(2)ガラス転移温度
セイコー電子工業社製、示差走査型熱量計「DSC6200」を用い、水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)または水添ジブロック共重合体(d)を精秤し、10℃/分の昇温速度にて−120℃から100℃まで昇温し、測定曲線の変曲点の温度を読みとり、ガラス転移温度とした。
(3)重量平均分子量
東ソー社製、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)「GPC−8020」(カラム:TSKgel G4000HXL)にて、溶媒にテトラヒドロフランを用い、測定温度40℃、流量1.0mL/分にて測定し、標準ポリスチレン検量線を用いて水添ブロック共重合体(a)、水添ブロック共重合体(b)または水添ジブロック共重合体(d)の重量平均分子量を算出した。
【0050】
(4)展開力
平滑なアクリル板に、下記実施例および比較例で得られた表面保護フィルムを基材層が表面になるように貼り付け、被着体とした。別途用意した同種の表面保護フィルム試験片を幅25mmに裁断し、2kgゴムローラーを用いて20mm/分の速度で被着体の基材層に圧着し、23±2℃、湿度(50±5)%の雰囲気下で30分放置した。その後、JIS Z 0237に準拠し、表面保護フィルム間の180°剥離強度を300mm/分の剥離速度で測定し、展開力とした。展開力が3.0N/25mm未満であるものを良(○)、3.0N/25mm以上であるものを不良(×)とした。
(5)粘着強度
(4)において、アクリル板の代わりに厚さ110μm、プリズムのピッチが50μm、高さが35μmであるアクリル樹脂からなるプリズムシートに、下記実施例および比較例で得られた表面保護フィルムを幅25mmに裁断し、基材層が表面になるように、2kgゴムローラーを用いて20mm/分の速度で被着体の基材層に圧着して被着体を作製し、剥離強度を測定して粘着強度とした。粘着強度が0.10N/25mm以上であるものを良(○)、0.10N/25mm未満であるものを不良(×)とした。
(6)高温接着性
各実施例および比較例で得られた表面保護フィルムを(5)と同じプリズムシートに、(5)と同様の方法で圧着した後、55℃の恒温槽で24時間放置した。恒温槽から取り出した後、表面保護フィルムの粘着力が低下することでプリズムシートから剥離し、浮いているかを確認した。プリズムシートからの浮きがないものを良(○)、少しでも浮きがあるものを不良(×)とした。
【0051】
[水添ブロック共重合体(a)の製造]
水添ブロック共重合体(a−1)の製造条件を表1に示す。具体的操作を以下述べる。
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン80L、開始剤としてsec−ブチルリチウム0.16L、ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.4Lを仕込み、50℃に昇温した後、スチレン0.52Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン10.0Lおよびブタジエン11.1Lの混合液を加えて4時間重合を行い、さらにスチレン1.55Lを加えて3時間重合反応を行った。得られた重合反応液をメタノール80L中に注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、1,2−結合及び3,4−結合の含有量(ビニル化度)が65モル%のポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体を得た。
続いて、得られたポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体15kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリ(イソプレン/ブタジエン)−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(a−1))を得た。
得られた水添ブロック共重合体(a−1)のガラス転移温度は−30℃、スチレン含有量は12質量%、水素添加率は86%、重量平均分子量は117,000であった。
【0052】
水添ブロック共重合体(a−2)〜(a−5)の製造条件を表1に示す。
開始剤としてsec−ブチルリチウム、ルイス塩基としてテトラヒドロフランまたはN,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、モノマーとしてスチレン、イソプレンおよび/またはブタジエンを用い、添加量を適宜変更し、水添ブロック共重合体(a−1)と同様の方法にて重合反応および水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(a−2)〜(a−5)を製造した。
得られた水添ブロック共重合体(a−2)〜(a−5)のビニル化度、ガラス転移温度、スチレン含有量、水素添加率、重量平均分子量を表1に示す。
【0053】
[水添ブロック共重合体(b)の製造]
水添ブロック共重合体(b−1)の製造条件を表1に示す。具体的操作を以下述べる。
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン80L、開始剤としてsec−ブチルリチウム0.22Lを仕込み60℃に昇温した後、スチレン1.55Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン18.7Lを加えて4時間重合を行い、さらにスチレン1.55Lを加えて3時間重合反応を行った。得られた重合反応液をメタノール80L中に注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより1,2−結合および3,4−結合の含有量(ビニル化度)が4モル%のポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体を得た。
続いて、得られたポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体20kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレントリブロック共重合体の水素添加物(水添ブロック共重合体(b−1))を得た。
得られた水添ブロック共重合体(b−1)のガラス転移温度は−56℃、スチレン含有量は18質量%、水素添加率は89%、重量平均分子量は101,000であった。
【0054】
水添ブロック共重合体(b−2)〜(b−5)の製造条件を表1に示す。
開始剤にsec−ブチルリチウム、ルイス塩基にテトラヒドロフラン、モノマーにスチレン、イソプレンまたはブタジエンを用い、添加量を適宜変更し、水添ブロック共重合体(b−1)と同様の方法にて重合反応および水素添加反応を行い、水添ブロック共重合体(b−2)〜(b−5)を製造した。
得られた水添ブロック共重合体(b−2)〜(b−5)のビニル化度、ガラス転移温度、スチレン含有量、水素添加率、重量平均分子量を表1に示す。
【0055】
[水添ジブロック共重合体(d)の製造]
窒素置換し、乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン80L、開始剤としてsec−ブチルリチウムを0.49L、ルイス塩基としてテトラヒドロフランを0.23L仕込み、60℃に昇温した後、スチレン3.84Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン37.5Lを加えて4時間重合反応を行った。得られた重合反応液をメタノール80L中に注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥することにより、1,2−結合および3,4−結合含有量(ビニル化度)が38%のポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体を得た。
続いて、得られたポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体20kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間水素添加反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥することにより、ポリスチレン−ポリイソプレンジブロック共重合体の水素添加物(水添ジブロック共重合体(d))を得た。
得られた水添ジブロック共重合体(d))のガラス転移温度は−50℃、スチレン含有量は13質量%、水素添加率は92%、重量平均分子量は70,000であった。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1〜12、および比較例1〜6
水添ブロック共重合体(a−1)〜(a−5)、水添ブロック共重合体(b−1)〜(b−5)、粘着付与樹脂(c)として「リガライトR1125」(イーストマンケミカル社製、脂環式系石油樹脂)、「クリスタレックス5140」(イーストマンケミカル社製、芳香族炭化水素樹脂)、水添ジブロック共重合体(d)、酸化防止剤「イルガノックス1010」(BASF社製)を表2に示した割合で混合し、二軸押出機を用いて200℃で溶融混練することで樹脂組成物を得た。
基材層として「PC684S」(ブロックポリプロピレン、サンアロマー社製)を厚み30μm、粘着剤層として上記樹脂組成物を厚み10μmとなるように、Tダイ押出法にて共押出し、表面保護フィルムを得た。これら実施例および比較例で得られた表面保護フィルムの物性測定結果を表2に示す。
【0058】
【表2】

【0059】
表1より、実施例1〜12で得られた表面保護フィルムは、適度な展開力を有し、プリズムシートに対する粘着強度、高温接着力にも優れる。
これに対し、比較例1及び2で得られた表面保護フィルムは、プリズムシートに対する粘着強度に優れるものの、展開力に劣る。比較例3〜5で得られた表面保護フィルムはプリズムシートに対する粘着強度、および高温接着性に劣る。
比較例6で得られた表面保護フィルムは、粘着剤層に含まれる水添ブロック共重合体(b−5)のスチレン含有量が低すぎるため、巻回体からの展開力に劣る。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の表面保護フィルムは、巻回体からの展開性、表面に凹凸を有する被着体への粘着性、および高温(55℃)における接着性に優れ、液晶ディスプレイ等に用いられるプリズムシートの表面保護フィルムとして好適に使用できる。また、運搬、加工、養生の際に汚れおよび/または傷つきの防止を必要とする金属板、樹脂板、ガラス板などの被着体の表面保護フィルムとして広く使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物単位を主としてなる重合体ブロック(A)を少なくとも2個と、共役ジエン化合物単位を主としてなる重合体ブロック(B)を少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる、重合体ブロック(A)の含有量が5〜35質量%、水素添加後の重合体ブロック(B)のガラス転移温度が−45℃以上30℃以下である水添ブロック共重合体(a)、
芳香族ビニル化合物単位を主としてなる重合体ブロック(C)を少なくとも2個と、共役ジエン化合物単位を主としてなる重合体ブロック(D)を少なくとも1個有するブロック共重合体を水素添加して得られる、重合体ブロック(C)の含有量が5〜35質量%、水素添加後の重合体ブロック(D)のガラス転移温度が−45℃未満である水添ブロック共重合体(b)、
及び粘着付与樹脂(c)を含み、
前記水添ブロック共重合体(a)と前記水添ブロック共重合体(b)の質量比が(a)/(b)=90/10〜10/90であり、前記樹脂組成物中の粘着付与樹脂(c)の含有量が、前記水添ブロック共重合体(a)、前記水添ブロック共重合体(b)および該粘着付与樹脂(c)の合計質量に対して1〜50質量%である樹脂組成物からなる粘着剤層と、基材層を備える表面保護フィルム。
【請求項2】
基材層がポリオレフィン系樹脂からなる請求項1に記載の表面保護フィルム。
【請求項3】
さらに水添ジブロック共重合体(d)を樹脂組成物中の合計質量に対して30質量%以下の範囲で含有する、請求項1または2に記載の表面保護フィルム。

【公開番号】特開2012−255071(P2012−255071A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128341(P2011−128341)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】