表面処理された天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法
【課題】優れた触媒反応活性を示し、低コストで生産できる、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法を提供する。
【解決手段】天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法に関し、特定の前処理を通じて天然セルロース繊維の表面の表面積を向上させ、欠陥を形成した後、前記天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持する。
【解決手段】天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法に関し、特定の前処理を通じて天然セルロース繊維の表面の表面積を向上させ、欠陥を形成した後、前記天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の前処理を通じて天然セルロース繊維の表面積を向上させ、表面に欠陥を形成した後、前記天然セルロース繊維の表面に高分散状態で金属触媒ナノ粒子を担持して製造することによって、触媒反応活性が向上し、低コストで生産できる、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の触媒分野の主な研究動向を詳察すると、物理的および化学的に安定し、かつ対象となる反応に適した均一な分布の気孔を有する表面積が大きな支持体を製造することが第1の分野であり、触媒粒子をナノ規模に最小化すると同時に、高分散状態で担持することによって、最小のコストで最大の活性を示す触媒を製造することが第2の分野である。そのうち、本発明の対象は第1の分野であり、バイオ素材を原料として気孔度に優れ、表面積が大きく、ナノ触媒の担持が容易な触媒支持体を製造することである。
【0003】
文献を詳察すると、多様なバイオ素材を原料として用いて特定の前処理工程を経て炭素材料に加工する過程が提示されている。O. Ioannidouなどが公開した文献(Renewable and Sustainable Energy Reviews 11(2007)1966-2005)では多様な農業廃棄物(Agricultural residues)を用いて活性炭素に加工する過程について開示している。同氏らが言及した資料で使用した農業廃棄物としては、小麦(wheat)、トウモロコシわら(corn straw)、オリーブの種(olive stones)、バガス(bagasse)、カバノキ(birch wood)、ススキ(miscanthus)、ヒマワリ殻(sunflower shell)、松ぼっくり(pinecone)、菜種(rapeseed)、綿花かす(cotton residues)、オリーブかす(olive residues)、(pine rayed)、(eucalyptus maculata)、サトウキビの絞りかす(sugar cane bagasse)、アーモンド殻(almond shells)、桃の種(peach stones)、ブドウの種(grape seeds)、麦わら(straw)、オート麦の外皮(oat hulls)、トウモロコシ茎葉(corn stover)、アプリコットの種(apricot stones)、綿花茎(cotton stalk)、さくらんぼの種(cherry stones)、落花生の殻(peanut hull)、ナッツ殻(nut shells)、もみ殻(rice hulls)、トウモロコシの穂軸(corn cob)、トウモロコシの外皮(corn hulls)、ヘーゼルナッツ殻(hazelnut shells)、ピーカン殻(pecan shells)、もみ殻(rice husks)、稲わら(rice straw)などが挙げられ、活性化過程を経て表面積がそれぞれ数百〜数千m2/gの材料に加工する過程を提示している。同氏らの資料において重要なのは、加工された材料の特性が原料物質によって大きく異なって現れるので、使用目的に応じて適した材料が互いに異なるという点である。また、同氏らはリグニンを多く含む材料であるほど活性化処理後にマイクロポア(macropore)を多く有する特性があり、繊維質(cellulose)を多く含む材料であるほど活性化処理後にミクロポア(micropore)を多く有する特性があると開示している。
【0004】
へネケンのような繊維状バイオ素材は、特有の繊維状束構造によって物理的/化学的耐久性を有する触媒支持体としての使用が勧められる。しかし、へネケンは前述した通り、セルロース成分を多量含有する材料であって、根本的にミクロポアを多く有するようになるので、触媒反応に用いるためにはミクロポアよりはメソポア(mesopore)を有するように加工する過程が重要であり、そのためには特定の表面処理工程が要求される。
【0005】
本発明者らは、へネケンのような繊維状バイオ素材を原料として用いて物理的/化学的耐久性を有する触媒支持体、特に自らセルロース成分を多く有しているため、多数のミクロポアを有するバイオ素材を対象として、これらを触媒反応に適した触媒支持体に加工する研究を重ねた。このような研究を重ねた結果、へネケンを原料物質として用い、これに電子ビーム処理−高温での熱処理過程−化学的表面処理過程を経て表面積が広く、均一な気孔分布を有し、表面に官能基(functional group)が導入されることによって、金属触媒の高分散担持が容易なセルロース触媒支持体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、天然セルロース繊維を触媒担持体として用いるために特定の前処理を通じて表面積が広く、均一な気孔分布を有し、表面に官能基を置換させた天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子を高分散担持させることによって、多様な触媒反応に応用できる、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階(段階1)と、前記段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階(段階2)と、前記段階2で熱処理した天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造する段階(段階3)と、前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持させる段階(段階4)とを含む天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体と、前記セルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持された金属触媒ナノ粒子とを含む天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒を提供する。
【0009】
以下、本発明による天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法を段階別に具体的に説明する。
【0010】
段階1は、天然セルロース繊維から低温で酸化される不純物を除去するために電子ビーム処理を行う段階である。
【0011】
本発明において、前記天然セルロース繊維としてはヘネケン繊維を用いることができる。
【0012】
本発明の一実施例において、電子ビームの照射は前処理をしていないヘネケン繊維をポリエチレンビニール袋に入れ、電子ビーム加速器で10〜500kGyの範囲の電子ビームを照射できる。電子ビーム加速器としては最大加速エネルギー1.0MeVの電子ビーム加速器を用いることができる。電子ビームを照射する時は、ビニール袋の入口を少し開放して電子ビームの照射中に発生する水分およびオゾンが除去され得るようにしてヘネケン繊維に対するこれらの影響を最小化することが好ましい。
【0013】
段階2は、前記段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維から不純物を除去し、表面積および気孔度を向上させるために熱処理する段階である。
【0014】
本発明の一実施例において、段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維を数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さの短い繊維に切断する。その後、切断された天然セルロース繊維を水素:窒素=1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、500〜1500℃で、好ましくは500〜1000℃で、より好ましくは700℃で0.5〜2時間維持することで、炭化した状態に製造できる。この過程で天然セルロース繊維が有している不純物成分が除去されることにより、繊維自らの壁厚が減少し、不純物(主にワックス、脂肪成分)が存在していた空間は内部気孔で維持されることができる。
【0015】
段階3は、前記段階2で熱処理した天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換するために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造する段階である。より詳しくは、段階3では熱処理した天然セルロース繊維の表面にCO−、CH−、O−C=O、CO2、CO3などの酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造できる。
【0016】
本発明の一実施例において、天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理する過程は、段階2で熱処理された天然セルロース繊維を0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vの掃引速度(sweep rate)を50mV/sにして10〜60回繰り返し処理する。その後、100〜150℃の30%硝酸溶液(または14Nの硝酸溶液)に浸漬した後、10分〜20時間処理するか、硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液、または98%の硫酸と70%の硝酸を3:1の体積比で混合した溶液に前記天然セルロース繊維を浸漬し、50〜70℃でリフラックスさせながら、5分〜6時間処理できる。このように処理された天然セルロース繊維を蒸留水で十分に洗浄し、ろ過した後、110℃で12時間乾燥させて最終的に触媒支持体として用いられるセルロース触媒支持体を得ることができる。
【0017】
段階4は、前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持させる段階である。
【0018】
前記段階1〜3で前処理して製造されたセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子としては、白金ナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子またはモリブデンナノ粒子を用いることができる。このような白金ナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子、モリブデンナノ粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持させるためには化学気相蒸着法または含浸法を用いることができる。
【0019】
本発明の一実施例において、化学気相蒸着法を用いてセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を担持させる段階は、以下の通り実行され得る。まず、前記段階1〜3で前処理して製造されたセルロース触媒支持体を加熱炉(Furnace)の中央に位置する石英管の中央に位置させ、100〜120℃で6〜10Torrの圧力で30〜120分間維持して石英管内部の不純物を除去した後、これに窒素(50〜300sccm)を流しながら、1時間以上維持する。化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子のために、石英管内部の温度を10℃/分の昇温速度で80〜300℃まで変化させ、反応温度に到達する時点で気相の金属前駆体物質を流し始めることで、セルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されるようにする。金属前駆体は、オーブン(heating oven)内に設置された気化器(vaporator)内に予め注入して用い、その例として、白金前駆体(MeCpPtMe3)の場合には60〜80℃で加熱させ、反応温度に到達する時点で連結管のコックを開放することで、気相の金属前駆体が反応器内部のセルロース触媒支持体まで伝達されるようにする。また、具体的な他の例として、金属前駆体としてニッケル前駆体(Ni(CO)4)を用いる場合、気化器の内部にNi(CO)4を入れ、温度を35℃に維持しながら、N2を流すことで、気相のニッケル前駆体(Ni(CO)4)が反応器内部のセルロース触媒支持体まで伝達されるようにする。セルロース触媒支持体は、反応温度(80〜300℃)で30分〜24時間まで維持し、反応時間が増加するほどセルロース触媒支持体の表面に担持された金属触媒ナノ粒子の量が増加する。金属前駆体としては、これ以外にも白金の場合、Pt(Me)3(Cp)、Pt(Tfacac)2、Pt(Me)(CO)(Cp)、Pt(Me)2(COD)、[PtMe3(acac)]2(acac;acetylacetonato ligand)、PtCl2(CO)2、Pt(PF3)4、Pt(acac)2、Pt(C2H4)3などを用いることができ、ニッケルの場合、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)またはニッケルカルボニル(Ni(CO)4)を用いることができ、コバルトの場合はCo(CO)3NOまたはCo(NO3)2、モリブデニウム場合にはMo(CO)6を用いることができる。本発明において、化学気相蒸着法を用いる場合の長所は、反応時間が増加しても金属触媒ナノ粒子の大きさが増加したり、分散度が減少したりせず、一定のナノ規模を維持しながら、担持量のみ効果的に増加させることができるという点にある。
【0020】
本発明の一実施例において、含浸法を用いてセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を担持させる段階は、以下の通り実行され得る。まず、前記段階1〜3で前処理して製造されたセルロース触媒支持体に金属触媒ナノ粒子を担持するための金属前駆体としては、前述した金属前駆体を用いることができる。前述した金属前駆体を溶解させた水溶液(0.1〜1mol)に前記セルロース触媒支持体を沈殿させ、5分〜3時間超音波を加え、続いてセルロース触媒支持体が沈殿された状態で12時間維持する。セルロース触媒支持体が沈殿されたスラリ状の溶液をろ過した後、100〜120℃のオーブンで12時間以上乾燥させた後、再び400〜600℃の窒素雰囲気の加熱炉で2〜6時間焼成することによって、最終的にセルロース触媒支持体の表面に担持された触媒を得ることができる。
【0021】
また、本発明は、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体と、前記セルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持された金属触媒ナノ粒子とを含む、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒を提供する。
【0022】
前記天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体は、天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階と、前記電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階および前記熱処理した天然セルロース繊維の表面に置換された酸化基を形成するために酸性溶液で化学処理する段階とを含む前処理過程を経て製造され得る。
【0023】
前記セルロース触媒支持体を製造するための前処理段階は、本発明による天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法で説明した段階1〜段階3の前処理段階と同一の条件で行われる。
【0024】
前記セルロース触媒支持体の表面に白金触媒ナノ粒子が担持された触媒の場合、テトラリンまたはベンゼンの水素化反応、メタノールおよびエタノール、その他、フェノールなどの酸化反応などに効果的である。
【0025】
前記セルロース触媒支持体の表面にニッケル触媒ナノ粒子、モリブデン触媒ナノ粒子が担持された触媒の場合、脱硫、脱硝、脱金属反応などに非常に効果的に用いることができる。
【0026】
前記セルロース触媒支持体の表面にコバルト触媒ナノ粒子が担持された触媒の場合、脱硫、脱硝、脱金属反応において助触媒として使用されることができ、燃料電池用白金触媒に助触媒として使用されることができ、フィッシャー・トロプシュ(Fisher-Tropsch)反応用触媒、炭化水素の酸化反応および部分酸化反応用触媒、改質反応、エタノールなどのアミン化反応用触媒、水素化反応用触媒、水性ガス置換反応用触媒などとして使用されることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明はヘネケンのような繊維状バイオ素材を原料として用いて物理的/化学的耐久性を有する触媒支持体、特に、自らセルロース成分を多く有しているため、多数のミクロポアを有するバイオ素材を対象として、これらを触媒反応に適した触媒支持体として前処理する方法を提供することによって、このような特定の前処理を通じて表面積が広く、均一な気孔分布を有し、表面に官能基を置換させた天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子を高分散担持させることによって、多様な触媒反応に応用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1における電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維原試料の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図2】実施例1における10kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図3】実施例1における100kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図4】実施例1における150kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図5】実施例1における200kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図6】実施例1における500kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図7】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を500℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図8】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を700℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図9】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を1000℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図10】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を1500℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図11】試験例4で電子ビーム処理−熱処理を経たヘネケン繊維を化学的処理を経た後、エックス線光電子分光法(XPS)を用いて表面に置換された官能基を分析した結果を示すグラフである。
【図12】実施例2における化学的処理を経たヘネケン繊維に対してそれぞれNi触媒を含浸法を用いて担持し、ニッケル触媒の担持状態を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【図13】実施例2における化学的処理を経ていないヘネケン繊維に対してそれぞれNi触媒を含浸法を用いて担持し、ニッケル触媒の担持状態を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【図14】実施例1で製造されたセルロース触媒支持体に担持されたニッケル触媒と比較例1で製造されたアルミナに担持されたニッケル触媒をそれぞれ用いてアセチレン(C2H2)の熱分解反応を行い、その結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の理解を促進するために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
ヘネケン繊維を用いたセルロース触媒支持体の製造およびこれを触媒支持体として用いたニッケルナノ触媒の製造
(1)ヘネケン繊維から不純物成分を除去するために電子ビーム処理する段階
ヘネケン繊維から低温で酸化される不純物を除去するために電子ビーム処理を行った。電子ビームの照射は、前処理をしていないヘネケン繊維をポリエチレンビニール袋に入れ、電子加速器(ELV−4タイプ、EB−TECH Co.,Ltd)で10〜500kGyの範囲の電子ビームを照射した。電子ビームを照射する時にはビニール袋の入口を少し開放して電子ビームの照射中に発生する水分およびオゾンが除去され得るようにしてヘネケン繊維に対するこれらの影響を最小化した。最大加速エネルギー1.0MeVの電子ビーム加速器を用い、試料の電子ビーム照射は電流を4.95mAに設定し、コンベアベルトを10m/minの速度で一定に移動させ、空気中で照射した。
【0031】
(2)前記段階1で電子ビーム処理されたヘネケン繊維を特定の熱処理条件で処理して不純物を除去し、表面積および気孔度を向上させる段階
前記段階1で電子ビーム処理されたヘネケン繊維を、不純物を除去し、表面積および気孔度を向上させるために特定の熱処理条件で熱処理を行った。電子ビーム処理されたヘネケン繊維を数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さの短い繊維に切断する。切断されたヘネケン繊維は、水素:窒素=1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、続いて500〜1500℃で1時間維持することで、ヘネケン繊維を炭化させた。
【0032】
(3)前記段階2で熱処理を経たヘネケン繊維を特定の化学的処理を経て表面に官能基を導入することで、金属ナノ触媒の担持を容易にする段階
前記段階2で熱処理されたヘネケン繊維を0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した。硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液にヘネケン繊維を浸漬し、60℃でリフラックスさせながら、10分間処理した。処理された試料は蒸留水で十分に洗浄し、ろ過した後、110℃で12時間乾燥させて最終的に触媒支持体として用いられるセルロース触媒支持体を製造した。
【0033】
(4)前記段階1から3までの前処理段階を順次経て製造されたセルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法を用いて金属ナノ触媒を担持する段階
前記段階1から3までの前処理段階を順次経たセルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法によりニッケルナノ触媒を担持するためには、段階3までの前処理過程を経たセルロース支持体を加熱炉の中央に位置する石英管の中央に位置させ、110℃で6Torrの圧力で30分間維持して、石英管内部の不純物を除去した後、これに窒素(100sccm)を流しながら、1時間以上維持した。その後、気化器の内部にNi(CO)4を入れ、温度を35℃に維持しながら、N2を流すことで、気相のニッケル前駆体(Ni(CO)4)が反応器内部のセルロース触媒支持体まで伝達されるようにしてセルロース触媒支持体の表面にニッケルナノ触媒が担持された触媒を得た。反応時間が増加するほどセルロース触媒支持体の表面に担持されたニッケルナノ触媒の量が増加することが分かった。
【0034】
[実施例2]
ヘネケン繊維を用いたセルロース触媒支持体の製造およびこれを触媒支持体として用いたニッケルナノ触媒の製造
実施例1において段階1から3までの前処理段階を順次経て製造されたセルロース触媒支持体の表面に下記のように含浸法を用いてニッケルナノ触媒を担持させたことを除けば、同様に行ってニッケルナノ触媒を製造した。
【0035】
段階3までの前処理過程を経たセルロース触媒支持体を金属前駆体(Ni(CO)4)を溶解させた水溶液(1mol)に沈殿させ、1時間超音波を加え、続いて触媒支持体が沈殿された状態で12時間維持した。セルロース触媒支持体が沈殿されたスラリ状の溶液をろ過し、100〜120℃のオーブンで12時間以上乾燥させた後、再び400〜600℃の窒素雰囲気の加熱炉で3時間焼成することで、最終的にセルロース触媒支持体の表面にニッケルナノ触媒が担持された触媒を得た。
【0036】
[比較例1]
商用のガンマアルミナ(γ−Al2O3)を触媒支持体として用い、初期含浸法を用いたアルミナ担持ニッケル触媒の製造
(1)ガンマアルミナにニッケル前駆体を初期含浸法で担持する段階
ガンマアルミナ(γ−Al2O3、97%、Strem)を支持体として用い、ニッケル前駆体としては、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)を用いてこれを蒸留水に溶解させ、1molの前駆体水溶液を製造した。その後、110℃のオーブンで12時間以上乾燥した状態のアルミナを用い、初期含浸法を用いてアルミナ担持ニッケル触媒を製造した。
【0037】
(2)乾燥および焼成過程を通じた酸化物状態の金属触媒の製造段階
初期含浸法によってニッケル前駆体を担持した触媒を110℃のオーブンで12時間以上乾燥させ、450℃の加熱炉で窒素雰囲気を維持しながら、4時間処理することで、最終的に酸化物状態のアルミナ担持ニッケル触媒を得た。
【0038】
[試験例1]
電子ビームの強度によるヘネケン繊維の表面形状の変化
実施例1の段階1でヘネケン繊維を処理するための電子ビームの強度(電子ビームの照射量10〜500KGy)によるヘネケン繊維の表面変化を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、その結果を図1〜図6に示した。
【0039】
図1に示すように、ヘネケン繊維の原試料は自ら気孔を有しているが、内部チャネルの大きさが2〜5μm程度であることが分かる。図2〜図6に示すように、ヘネケン繊維に対して処理した電子ビームの強度が増加するほど内部チャネルの直径が約10μmまで増加し、相対的に均一な形態を示すようになることが分かる。
【0040】
[試験例2]
熱処理条件によるヘネケン繊維の表面積の変化
実施例1の段階2で電子ビーム処理(それぞれ10kGyと100kGyの2種類の電子ビームの強度で処理)後のヘネケン繊維を用いて多様な条件で熱処理を実施し、結果的に得られた試料に対してBET表面積を測定し、その結果を表1に示した。実施例1の段階2で示すように、熱処理は水素と窒素を1:1の体積比で流しながら実施し、熱処理温度は500〜1500℃まで変化させた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、電子ビーム処理のみを経たヘネケン繊維は5〜6m2/gの小さな表面積を有するのに対し、これを500℃で熱処理する場合、ヘネケン繊維の表面積が230〜263m2/g程度で大きく増加することが分かる。これは、熱処理によってチャネル内部および気孔内部の不純物が除去され、高温でも安定した成分のみ残留しながら、表面積が大きく増加したためである。ヘネケン繊維の表面積は、熱処理温度が増加するほど増加することが確認された。しかし、1000℃を超える場合には、表面積が突然減少する傾向を示し、これは高温によってヘネケン繊維の内部構造をなしている成分が一部除去されるためである。このような影響により、1500℃の高温で処理した場合にはヘネケン繊維の表面積が50m2/g程度に過ぎないことが分かる。
【0043】
[試験例3]
熱処理条件によるヘネケン繊維の形状変化
実施例1の段階1と段階2を経て熱処理を完了したヘネケン繊維に対して走査電子顕微鏡(SEM)分析を行い、その結果を図7〜図10に示した。
【0044】
図7は、500℃で窒素と水素を1:1の体積比で流しながら、1時間熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真である。図8は、同一の条件で温度を700℃にして熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真であり、図9は、1000℃で熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真であり、図10は、1500℃で熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真である。図7〜図10に示すように、繊維の断面を見れば、熱処理温度を増加させるほどヘネケン繊維の内部チャネルをなす骨格の壁が次第に薄くなる現象を観察でき、繊維の側面も熱処理温度が増加するほど表面の屈曲が大きくなることが分かる。このような現象は、試験例2で前述したように、熱処理温度の増加によってヘネケン繊維が自ら有している不純物が除去されるためであると判断される。
【0045】
[試験例4]
化学処理条件によるヘネケン繊維の特性変化
実施例1の段階1および2を通じて電子ビーム処理および熱処理過程を経たヘネケン繊維を段階3で前述したように、化学的処理を行い、結果的に得られたヘネケン繊維に対して表面に置換された酸化基(CO−、CH−、O−C=O、CO2、およびCO3など)の形成程度を比較するために、エックス線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy)を行い、その結果を図11に示した。
【0046】
図11において、セルロース触媒支持体の構造内に存在するC1s結合に対するO1s結合の量を定量的に比較するために、化学的処理時間の増加によるO1s/C1s比の変化をグラフで示した。図11に示すように、処理時間の増加によって酸化基の量がほぼ比例的に増加することが分かり、このような結果から酸処理を通じてヘネケン繊維の表面に効果的に欠陥(defect)が形成されることを確認することができた。
【0047】
[試験例5]
セルロース触媒支持体の化学的表面処理前/後のSEM分析
実施例1の段階1および2を経たヘネケン繊維に対して段階3の化学的処理をしていない状態(図12)と化学的処理を経た状態(図13)とに分けて試料を準備し、実施例2のように、含浸法を用いてセルロース支持体に担持されたニッケル触媒を製造した後、それぞれの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で分析し、その結果を図12および図13に示した。ここで使用した化学的処理条件は、まずセルロース触媒支持体を0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した。硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液にセルロース支持体を浸漬し、60℃でリフラックスさせながら、10分間処理した。処理された試料は蒸留水で十分に洗浄し、ろ過した後、110℃で12時間乾燥させて最終的に触媒支持体として用いられるセルロース触媒支持体を得た。
【0048】
図12に示すように、セルロース触媒支持体は化学的処理をしていない場合にはニッケル触媒粒子が支持体の表面で互いに凝集する現象が現れ、従って、分散度が非常に減少し、粒子同士で互いに重なることにより、触媒反応活性点が減少するので、触媒反応活性も大きく低下することが確認される。反面、化学的処理を経た図13に示された試料の場合には支持体の表面にニッケル粒子が均一に担持されることが分かり、これは化学的処理を通じて支持体の表面にCO−またはCH−グループなどの官能基が置換されるので、このような欠陥に金属触媒粒子が選択的に結合しながら、高分散状態で担持されるためである。
【0049】
[試験例6]
セルロース触媒支持体の担持触媒および商用触媒を用いた触媒反応実験
実施例1と比較例1で製造された触媒をそれぞれ用いて、アセチレンの熱分解反応を行い、その結果を比較して図14に示した。
【0050】
アセチレンの熱分解反応は250℃で行い、50℃間隔で昇温させながら行った。実施例1で製造されたセルロース触媒支持体に担持されたニッケル触媒の場合、250℃では初期反応活性が47%程度で示され、初期に反応活性が急激に減少して1時間経過後には約14%の反応転換率を示し、これは熱分解反応の特性上、初期に触媒の表面にアセチレンの熱分解によるコック物質が生成されて触媒の表面を覆うためである。このような反応活性はその後、順次減少して、反応時間が12時間経過した時は約5%の反応転換率を示す。反応温度を300℃に昇温させた時には、アセチレン転換率値が初期に100%近く示され、1時間以内に37%程度まで減少した。しかし、実施例1で製造されたセルロース触媒支持体に担持されたニッケル触媒の場合には反応時間1時間経過後も、反応時間約12時間経過後も23%程度の反応活性を持続的に維持することが分かる。
【0051】
一方、比較例1で製造した商用触媒であるNi/Al2O3を用いた場合には300℃では反応が殆ど進行されず、350℃で反応を行う場合、初期に一時的に反応活性が現れるが、1時間経過後には7%程度に減少し、その後、非常に低い反応転換率を示す。反応温度を350℃以上に増加させた場合、反応活性が増加せず、反応が殆ど進行されない結果を示す。
【0052】
このような結果から、セルロース支持体はアセチレンの熱分解反応のような触媒反応において既存のアルミナ支持体に比べて触媒反応をより一層大きく促進させることが分かり、また長時間の反応結果からコックの生成による触媒の非活性化が徐々に進行されることが分かる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の前処理を通じて天然セルロース繊維の表面積を向上させ、表面に欠陥を形成した後、前記天然セルロース繊維の表面に高分散状態で金属触媒ナノ粒子を担持して製造することによって、触媒反応活性が向上し、低コストで生産できる、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の触媒分野の主な研究動向を詳察すると、物理的および化学的に安定し、かつ対象となる反応に適した均一な分布の気孔を有する表面積が大きな支持体を製造することが第1の分野であり、触媒粒子をナノ規模に最小化すると同時に、高分散状態で担持することによって、最小のコストで最大の活性を示す触媒を製造することが第2の分野である。そのうち、本発明の対象は第1の分野であり、バイオ素材を原料として気孔度に優れ、表面積が大きく、ナノ触媒の担持が容易な触媒支持体を製造することである。
【0003】
文献を詳察すると、多様なバイオ素材を原料として用いて特定の前処理工程を経て炭素材料に加工する過程が提示されている。O. Ioannidouなどが公開した文献(Renewable and Sustainable Energy Reviews 11(2007)1966-2005)では多様な農業廃棄物(Agricultural residues)を用いて活性炭素に加工する過程について開示している。同氏らが言及した資料で使用した農業廃棄物としては、小麦(wheat)、トウモロコシわら(corn straw)、オリーブの種(olive stones)、バガス(bagasse)、カバノキ(birch wood)、ススキ(miscanthus)、ヒマワリ殻(sunflower shell)、松ぼっくり(pinecone)、菜種(rapeseed)、綿花かす(cotton residues)、オリーブかす(olive residues)、(pine rayed)、(eucalyptus maculata)、サトウキビの絞りかす(sugar cane bagasse)、アーモンド殻(almond shells)、桃の種(peach stones)、ブドウの種(grape seeds)、麦わら(straw)、オート麦の外皮(oat hulls)、トウモロコシ茎葉(corn stover)、アプリコットの種(apricot stones)、綿花茎(cotton stalk)、さくらんぼの種(cherry stones)、落花生の殻(peanut hull)、ナッツ殻(nut shells)、もみ殻(rice hulls)、トウモロコシの穂軸(corn cob)、トウモロコシの外皮(corn hulls)、ヘーゼルナッツ殻(hazelnut shells)、ピーカン殻(pecan shells)、もみ殻(rice husks)、稲わら(rice straw)などが挙げられ、活性化過程を経て表面積がそれぞれ数百〜数千m2/gの材料に加工する過程を提示している。同氏らの資料において重要なのは、加工された材料の特性が原料物質によって大きく異なって現れるので、使用目的に応じて適した材料が互いに異なるという点である。また、同氏らはリグニンを多く含む材料であるほど活性化処理後にマイクロポア(macropore)を多く有する特性があり、繊維質(cellulose)を多く含む材料であるほど活性化処理後にミクロポア(micropore)を多く有する特性があると開示している。
【0004】
へネケンのような繊維状バイオ素材は、特有の繊維状束構造によって物理的/化学的耐久性を有する触媒支持体としての使用が勧められる。しかし、へネケンは前述した通り、セルロース成分を多量含有する材料であって、根本的にミクロポアを多く有するようになるので、触媒反応に用いるためにはミクロポアよりはメソポア(mesopore)を有するように加工する過程が重要であり、そのためには特定の表面処理工程が要求される。
【0005】
本発明者らは、へネケンのような繊維状バイオ素材を原料として用いて物理的/化学的耐久性を有する触媒支持体、特に自らセルロース成分を多く有しているため、多数のミクロポアを有するバイオ素材を対象として、これらを触媒反応に適した触媒支持体に加工する研究を重ねた。このような研究を重ねた結果、へネケンを原料物質として用い、これに電子ビーム処理−高温での熱処理過程−化学的表面処理過程を経て表面積が広く、均一な気孔分布を有し、表面に官能基(functional group)が導入されることによって、金属触媒の高分散担持が容易なセルロース触媒支持体を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、天然セルロース繊維を触媒担持体として用いるために特定の前処理を通じて表面積が広く、均一な気孔分布を有し、表面に官能基を置換させた天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子を高分散担持させることによって、多様な触媒反応に応用できる、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階(段階1)と、前記段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階(段階2)と、前記段階2で熱処理した天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造する段階(段階3)と、前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持させる段階(段階4)とを含む天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体と、前記セルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持された金属触媒ナノ粒子とを含む天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒を提供する。
【0009】
以下、本発明による天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法を段階別に具体的に説明する。
【0010】
段階1は、天然セルロース繊維から低温で酸化される不純物を除去するために電子ビーム処理を行う段階である。
【0011】
本発明において、前記天然セルロース繊維としてはヘネケン繊維を用いることができる。
【0012】
本発明の一実施例において、電子ビームの照射は前処理をしていないヘネケン繊維をポリエチレンビニール袋に入れ、電子ビーム加速器で10〜500kGyの範囲の電子ビームを照射できる。電子ビーム加速器としては最大加速エネルギー1.0MeVの電子ビーム加速器を用いることができる。電子ビームを照射する時は、ビニール袋の入口を少し開放して電子ビームの照射中に発生する水分およびオゾンが除去され得るようにしてヘネケン繊維に対するこれらの影響を最小化することが好ましい。
【0013】
段階2は、前記段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維から不純物を除去し、表面積および気孔度を向上させるために熱処理する段階である。
【0014】
本発明の一実施例において、段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維を数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さの短い繊維に切断する。その後、切断された天然セルロース繊維を水素:窒素=1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、500〜1500℃で、好ましくは500〜1000℃で、より好ましくは700℃で0.5〜2時間維持することで、炭化した状態に製造できる。この過程で天然セルロース繊維が有している不純物成分が除去されることにより、繊維自らの壁厚が減少し、不純物(主にワックス、脂肪成分)が存在していた空間は内部気孔で維持されることができる。
【0015】
段階3は、前記段階2で熱処理した天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換するために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造する段階である。より詳しくは、段階3では熱処理した天然セルロース繊維の表面にCO−、CH−、O−C=O、CO2、CO3などの酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造できる。
【0016】
本発明の一実施例において、天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理する過程は、段階2で熱処理された天然セルロース繊維を0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vの掃引速度(sweep rate)を50mV/sにして10〜60回繰り返し処理する。その後、100〜150℃の30%硝酸溶液(または14Nの硝酸溶液)に浸漬した後、10分〜20時間処理するか、硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液、または98%の硫酸と70%の硝酸を3:1の体積比で混合した溶液に前記天然セルロース繊維を浸漬し、50〜70℃でリフラックスさせながら、5分〜6時間処理できる。このように処理された天然セルロース繊維を蒸留水で十分に洗浄し、ろ過した後、110℃で12時間乾燥させて最終的に触媒支持体として用いられるセルロース触媒支持体を得ることができる。
【0017】
段階4は、前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持させる段階である。
【0018】
前記段階1〜3で前処理して製造されたセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子としては、白金ナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子またはモリブデンナノ粒子を用いることができる。このような白金ナノ粒子、ニッケルナノ粒子、コバルトナノ粒子、モリブデンナノ粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持させるためには化学気相蒸着法または含浸法を用いることができる。
【0019】
本発明の一実施例において、化学気相蒸着法を用いてセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を担持させる段階は、以下の通り実行され得る。まず、前記段階1〜3で前処理して製造されたセルロース触媒支持体を加熱炉(Furnace)の中央に位置する石英管の中央に位置させ、100〜120℃で6〜10Torrの圧力で30〜120分間維持して石英管内部の不純物を除去した後、これに窒素(50〜300sccm)を流しながら、1時間以上維持する。化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子のために、石英管内部の温度を10℃/分の昇温速度で80〜300℃まで変化させ、反応温度に到達する時点で気相の金属前駆体物質を流し始めることで、セルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されるようにする。金属前駆体は、オーブン(heating oven)内に設置された気化器(vaporator)内に予め注入して用い、その例として、白金前駆体(MeCpPtMe3)の場合には60〜80℃で加熱させ、反応温度に到達する時点で連結管のコックを開放することで、気相の金属前駆体が反応器内部のセルロース触媒支持体まで伝達されるようにする。また、具体的な他の例として、金属前駆体としてニッケル前駆体(Ni(CO)4)を用いる場合、気化器の内部にNi(CO)4を入れ、温度を35℃に維持しながら、N2を流すことで、気相のニッケル前駆体(Ni(CO)4)が反応器内部のセルロース触媒支持体まで伝達されるようにする。セルロース触媒支持体は、反応温度(80〜300℃)で30分〜24時間まで維持し、反応時間が増加するほどセルロース触媒支持体の表面に担持された金属触媒ナノ粒子の量が増加する。金属前駆体としては、これ以外にも白金の場合、Pt(Me)3(Cp)、Pt(Tfacac)2、Pt(Me)(CO)(Cp)、Pt(Me)2(COD)、[PtMe3(acac)]2(acac;acetylacetonato ligand)、PtCl2(CO)2、Pt(PF3)4、Pt(acac)2、Pt(C2H4)3などを用いることができ、ニッケルの場合、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)またはニッケルカルボニル(Ni(CO)4)を用いることができ、コバルトの場合はCo(CO)3NOまたはCo(NO3)2、モリブデニウム場合にはMo(CO)6を用いることができる。本発明において、化学気相蒸着法を用いる場合の長所は、反応時間が増加しても金属触媒ナノ粒子の大きさが増加したり、分散度が減少したりせず、一定のナノ規模を維持しながら、担持量のみ効果的に増加させることができるという点にある。
【0020】
本発明の一実施例において、含浸法を用いてセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を担持させる段階は、以下の通り実行され得る。まず、前記段階1〜3で前処理して製造されたセルロース触媒支持体に金属触媒ナノ粒子を担持するための金属前駆体としては、前述した金属前駆体を用いることができる。前述した金属前駆体を溶解させた水溶液(0.1〜1mol)に前記セルロース触媒支持体を沈殿させ、5分〜3時間超音波を加え、続いてセルロース触媒支持体が沈殿された状態で12時間維持する。セルロース触媒支持体が沈殿されたスラリ状の溶液をろ過した後、100〜120℃のオーブンで12時間以上乾燥させた後、再び400〜600℃の窒素雰囲気の加熱炉で2〜6時間焼成することによって、最終的にセルロース触媒支持体の表面に担持された触媒を得ることができる。
【0021】
また、本発明は、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体と、前記セルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持された金属触媒ナノ粒子とを含む、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒を提供する。
【0022】
前記天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体は、天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階と、前記電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階および前記熱処理した天然セルロース繊維の表面に置換された酸化基を形成するために酸性溶液で化学処理する段階とを含む前処理過程を経て製造され得る。
【0023】
前記セルロース触媒支持体を製造するための前処理段階は、本発明による天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法で説明した段階1〜段階3の前処理段階と同一の条件で行われる。
【0024】
前記セルロース触媒支持体の表面に白金触媒ナノ粒子が担持された触媒の場合、テトラリンまたはベンゼンの水素化反応、メタノールおよびエタノール、その他、フェノールなどの酸化反応などに効果的である。
【0025】
前記セルロース触媒支持体の表面にニッケル触媒ナノ粒子、モリブデン触媒ナノ粒子が担持された触媒の場合、脱硫、脱硝、脱金属反応などに非常に効果的に用いることができる。
【0026】
前記セルロース触媒支持体の表面にコバルト触媒ナノ粒子が担持された触媒の場合、脱硫、脱硝、脱金属反応において助触媒として使用されることができ、燃料電池用白金触媒に助触媒として使用されることができ、フィッシャー・トロプシュ(Fisher-Tropsch)反応用触媒、炭化水素の酸化反応および部分酸化反応用触媒、改質反応、エタノールなどのアミン化反応用触媒、水素化反応用触媒、水性ガス置換反応用触媒などとして使用されることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明はヘネケンのような繊維状バイオ素材を原料として用いて物理的/化学的耐久性を有する触媒支持体、特に、自らセルロース成分を多く有しているため、多数のミクロポアを有するバイオ素材を対象として、これらを触媒反応に適した触媒支持体として前処理する方法を提供することによって、このような特定の前処理を通じて表面積が広く、均一な気孔分布を有し、表面に官能基を置換させた天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子を高分散担持させることによって、多様な触媒反応に応用できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】実施例1における電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維原試料の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図2】実施例1における10kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図3】実施例1における100kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図4】実施例1における150kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図5】実施例1における200kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図6】実施例1における500kGy電子ビーム処理の強度によるヘネケン繊維の表面形状を走査電子顕微鏡で観察した写真である。
【図7】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を500℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図8】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を700℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図9】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を1000℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図10】電子ビーム処理を経たヘネケン繊維を1500℃の温度で熱処理した後の表面形状の変化を走査電子顕微鏡(SEM)で分析した写真である。
【図11】試験例4で電子ビーム処理−熱処理を経たヘネケン繊維を化学的処理を経た後、エックス線光電子分光法(XPS)を用いて表面に置換された官能基を分析した結果を示すグラフである。
【図12】実施例2における化学的処理を経たヘネケン繊維に対してそれぞれNi触媒を含浸法を用いて担持し、ニッケル触媒の担持状態を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【図13】実施例2における化学的処理を経ていないヘネケン繊維に対してそれぞれNi触媒を含浸法を用いて担持し、ニッケル触媒の担持状態を走査電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真である。
【図14】実施例1で製造されたセルロース触媒支持体に担持されたニッケル触媒と比較例1で製造されたアルミナに担持されたニッケル触媒をそれぞれ用いてアセチレン(C2H2)の熱分解反応を行い、その結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の理解を促進するために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは当業者にとって明白であり、このような変形および修正が添付された特許請求の範囲に属することも当然である。
【実施例】
【0030】
[実施例1]
ヘネケン繊維を用いたセルロース触媒支持体の製造およびこれを触媒支持体として用いたニッケルナノ触媒の製造
(1)ヘネケン繊維から不純物成分を除去するために電子ビーム処理する段階
ヘネケン繊維から低温で酸化される不純物を除去するために電子ビーム処理を行った。電子ビームの照射は、前処理をしていないヘネケン繊維をポリエチレンビニール袋に入れ、電子加速器(ELV−4タイプ、EB−TECH Co.,Ltd)で10〜500kGyの範囲の電子ビームを照射した。電子ビームを照射する時にはビニール袋の入口を少し開放して電子ビームの照射中に発生する水分およびオゾンが除去され得るようにしてヘネケン繊維に対するこれらの影響を最小化した。最大加速エネルギー1.0MeVの電子ビーム加速器を用い、試料の電子ビーム照射は電流を4.95mAに設定し、コンベアベルトを10m/minの速度で一定に移動させ、空気中で照射した。
【0031】
(2)前記段階1で電子ビーム処理されたヘネケン繊維を特定の熱処理条件で処理して不純物を除去し、表面積および気孔度を向上させる段階
前記段階1で電子ビーム処理されたヘネケン繊維を、不純物を除去し、表面積および気孔度を向上させるために特定の熱処理条件で熱処理を行った。電子ビーム処理されたヘネケン繊維を数十〜数百μmの細い繊維に分離した後、これを液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さの短い繊維に切断する。切断されたヘネケン繊維は、水素:窒素=1:1の雰囲気で500〜1500℃まで5〜20℃/分の昇温速度で加熱した後、続いて500〜1500℃で1時間維持することで、ヘネケン繊維を炭化させた。
【0032】
(3)前記段階2で熱処理を経たヘネケン繊維を特定の化学的処理を経て表面に官能基を導入することで、金属ナノ触媒の担持を容易にする段階
前記段階2で熱処理されたヘネケン繊維を0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した。硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液にヘネケン繊維を浸漬し、60℃でリフラックスさせながら、10分間処理した。処理された試料は蒸留水で十分に洗浄し、ろ過した後、110℃で12時間乾燥させて最終的に触媒支持体として用いられるセルロース触媒支持体を製造した。
【0033】
(4)前記段階1から3までの前処理段階を順次経て製造されたセルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法を用いて金属ナノ触媒を担持する段階
前記段階1から3までの前処理段階を順次経たセルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法によりニッケルナノ触媒を担持するためには、段階3までの前処理過程を経たセルロース支持体を加熱炉の中央に位置する石英管の中央に位置させ、110℃で6Torrの圧力で30分間維持して、石英管内部の不純物を除去した後、これに窒素(100sccm)を流しながら、1時間以上維持した。その後、気化器の内部にNi(CO)4を入れ、温度を35℃に維持しながら、N2を流すことで、気相のニッケル前駆体(Ni(CO)4)が反応器内部のセルロース触媒支持体まで伝達されるようにしてセルロース触媒支持体の表面にニッケルナノ触媒が担持された触媒を得た。反応時間が増加するほどセルロース触媒支持体の表面に担持されたニッケルナノ触媒の量が増加することが分かった。
【0034】
[実施例2]
ヘネケン繊維を用いたセルロース触媒支持体の製造およびこれを触媒支持体として用いたニッケルナノ触媒の製造
実施例1において段階1から3までの前処理段階を順次経て製造されたセルロース触媒支持体の表面に下記のように含浸法を用いてニッケルナノ触媒を担持させたことを除けば、同様に行ってニッケルナノ触媒を製造した。
【0035】
段階3までの前処理過程を経たセルロース触媒支持体を金属前駆体(Ni(CO)4)を溶解させた水溶液(1mol)に沈殿させ、1時間超音波を加え、続いて触媒支持体が沈殿された状態で12時間維持した。セルロース触媒支持体が沈殿されたスラリ状の溶液をろ過し、100〜120℃のオーブンで12時間以上乾燥させた後、再び400〜600℃の窒素雰囲気の加熱炉で3時間焼成することで、最終的にセルロース触媒支持体の表面にニッケルナノ触媒が担持された触媒を得た。
【0036】
[比較例1]
商用のガンマアルミナ(γ−Al2O3)を触媒支持体として用い、初期含浸法を用いたアルミナ担持ニッケル触媒の製造
(1)ガンマアルミナにニッケル前駆体を初期含浸法で担持する段階
ガンマアルミナ(γ−Al2O3、97%、Strem)を支持体として用い、ニッケル前駆体としては、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)を用いてこれを蒸留水に溶解させ、1molの前駆体水溶液を製造した。その後、110℃のオーブンで12時間以上乾燥した状態のアルミナを用い、初期含浸法を用いてアルミナ担持ニッケル触媒を製造した。
【0037】
(2)乾燥および焼成過程を通じた酸化物状態の金属触媒の製造段階
初期含浸法によってニッケル前駆体を担持した触媒を110℃のオーブンで12時間以上乾燥させ、450℃の加熱炉で窒素雰囲気を維持しながら、4時間処理することで、最終的に酸化物状態のアルミナ担持ニッケル触媒を得た。
【0038】
[試験例1]
電子ビームの強度によるヘネケン繊維の表面形状の変化
実施例1の段階1でヘネケン繊維を処理するための電子ビームの強度(電子ビームの照射量10〜500KGy)によるヘネケン繊維の表面変化を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、その結果を図1〜図6に示した。
【0039】
図1に示すように、ヘネケン繊維の原試料は自ら気孔を有しているが、内部チャネルの大きさが2〜5μm程度であることが分かる。図2〜図6に示すように、ヘネケン繊維に対して処理した電子ビームの強度が増加するほど内部チャネルの直径が約10μmまで増加し、相対的に均一な形態を示すようになることが分かる。
【0040】
[試験例2]
熱処理条件によるヘネケン繊維の表面積の変化
実施例1の段階2で電子ビーム処理(それぞれ10kGyと100kGyの2種類の電子ビームの強度で処理)後のヘネケン繊維を用いて多様な条件で熱処理を実施し、結果的に得られた試料に対してBET表面積を測定し、その結果を表1に示した。実施例1の段階2で示すように、熱処理は水素と窒素を1:1の体積比で流しながら実施し、熱処理温度は500〜1500℃まで変化させた。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すように、電子ビーム処理のみを経たヘネケン繊維は5〜6m2/gの小さな表面積を有するのに対し、これを500℃で熱処理する場合、ヘネケン繊維の表面積が230〜263m2/g程度で大きく増加することが分かる。これは、熱処理によってチャネル内部および気孔内部の不純物が除去され、高温でも安定した成分のみ残留しながら、表面積が大きく増加したためである。ヘネケン繊維の表面積は、熱処理温度が増加するほど増加することが確認された。しかし、1000℃を超える場合には、表面積が突然減少する傾向を示し、これは高温によってヘネケン繊維の内部構造をなしている成分が一部除去されるためである。このような影響により、1500℃の高温で処理した場合にはヘネケン繊維の表面積が50m2/g程度に過ぎないことが分かる。
【0043】
[試験例3]
熱処理条件によるヘネケン繊維の形状変化
実施例1の段階1と段階2を経て熱処理を完了したヘネケン繊維に対して走査電子顕微鏡(SEM)分析を行い、その結果を図7〜図10に示した。
【0044】
図7は、500℃で窒素と水素を1:1の体積比で流しながら、1時間熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真である。図8は、同一の条件で温度を700℃にして熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真であり、図9は、1000℃で熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真であり、図10は、1500℃で熱処理した場合のヘネケン繊維に対する走査電子顕微鏡写真である。図7〜図10に示すように、繊維の断面を見れば、熱処理温度を増加させるほどヘネケン繊維の内部チャネルをなす骨格の壁が次第に薄くなる現象を観察でき、繊維の側面も熱処理温度が増加するほど表面の屈曲が大きくなることが分かる。このような現象は、試験例2で前述したように、熱処理温度の増加によってヘネケン繊維が自ら有している不純物が除去されるためであると判断される。
【0045】
[試験例4]
化学処理条件によるヘネケン繊維の特性変化
実施例1の段階1および2を通じて電子ビーム処理および熱処理過程を経たヘネケン繊維を段階3で前述したように、化学的処理を行い、結果的に得られたヘネケン繊維に対して表面に置換された酸化基(CO−、CH−、O−C=O、CO2、およびCO3など)の形成程度を比較するために、エックス線光電子分光法(X-ray photoelectron spectroscopy)を行い、その結果を図11に示した。
【0046】
図11において、セルロース触媒支持体の構造内に存在するC1s結合に対するO1s結合の量を定量的に比較するために、化学的処理時間の増加によるO1s/C1s比の変化をグラフで示した。図11に示すように、処理時間の増加によって酸化基の量がほぼ比例的に増加することが分かり、このような結果から酸処理を通じてヘネケン繊維の表面に効果的に欠陥(defect)が形成されることを確認することができた。
【0047】
[試験例5]
セルロース触媒支持体の化学的表面処理前/後のSEM分析
実施例1の段階1および2を経たヘネケン繊維に対して段階3の化学的処理をしていない状態(図12)と化学的処理を経た状態(図13)とに分けて試料を準備し、実施例2のように、含浸法を用いてセルロース支持体に担持されたニッケル触媒を製造した後、それぞれの表面を走査電子顕微鏡(SEM)で分析し、その結果を図12および図13に示した。ここで使用した化学的処理条件は、まずセルロース触媒支持体を0.5molの硫酸水溶液に浸漬した後、−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した。硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液にセルロース支持体を浸漬し、60℃でリフラックスさせながら、10分間処理した。処理された試料は蒸留水で十分に洗浄し、ろ過した後、110℃で12時間乾燥させて最終的に触媒支持体として用いられるセルロース触媒支持体を得た。
【0048】
図12に示すように、セルロース触媒支持体は化学的処理をしていない場合にはニッケル触媒粒子が支持体の表面で互いに凝集する現象が現れ、従って、分散度が非常に減少し、粒子同士で互いに重なることにより、触媒反応活性点が減少するので、触媒反応活性も大きく低下することが確認される。反面、化学的処理を経た図13に示された試料の場合には支持体の表面にニッケル粒子が均一に担持されることが分かり、これは化学的処理を通じて支持体の表面にCO−またはCH−グループなどの官能基が置換されるので、このような欠陥に金属触媒粒子が選択的に結合しながら、高分散状態で担持されるためである。
【0049】
[試験例6]
セルロース触媒支持体の担持触媒および商用触媒を用いた触媒反応実験
実施例1と比較例1で製造された触媒をそれぞれ用いて、アセチレンの熱分解反応を行い、その結果を比較して図14に示した。
【0050】
アセチレンの熱分解反応は250℃で行い、50℃間隔で昇温させながら行った。実施例1で製造されたセルロース触媒支持体に担持されたニッケル触媒の場合、250℃では初期反応活性が47%程度で示され、初期に反応活性が急激に減少して1時間経過後には約14%の反応転換率を示し、これは熱分解反応の特性上、初期に触媒の表面にアセチレンの熱分解によるコック物質が生成されて触媒の表面を覆うためである。このような反応活性はその後、順次減少して、反応時間が12時間経過した時は約5%の反応転換率を示す。反応温度を300℃に昇温させた時には、アセチレン転換率値が初期に100%近く示され、1時間以内に37%程度まで減少した。しかし、実施例1で製造されたセルロース触媒支持体に担持されたニッケル触媒の場合には反応時間1時間経過後も、反応時間約12時間経過後も23%程度の反応活性を持続的に維持することが分かる。
【0051】
一方、比較例1で製造した商用触媒であるNi/Al2O3を用いた場合には300℃では反応が殆ど進行されず、350℃で反応を行う場合、初期に一時的に反応活性が現れるが、1時間経過後には7%程度に減少し、その後、非常に低い反応転換率を示す。反応温度を350℃以上に増加させた場合、反応活性が増加せず、反応が殆ど進行されない結果を示す。
【0052】
このような結果から、セルロース支持体はアセチレンの熱分解反応のような触媒反応において既存のアルミナ支持体に比べて触媒反応をより一層大きく促進させることが分かり、また長時間の反応結果からコックの生成による触媒の非活性化が徐々に進行されることが分かる。
【0053】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階(段階1)と、
前記段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階(段階2)と、
前記段階2で熱処理した天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造する段階(段階3)と、
前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持させる段階(段階4)と
を含む天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項2】
前記段階1で天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階は、天然セルロース繊維に対して10〜500kGyの範囲の電子ビームを照射して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項3】
前記段階2で天然セルロース繊維を熱処理する段階は、天然セルロース繊維を液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さに切断した後、500〜1500℃まで昇温させて0.2〜2時間熱処理して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項4】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理する段階は、0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬させて−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した後、100〜150℃の30%硝酸溶液(または14Nの硝酸溶液)に浸漬させて10分〜20時間化学処理して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項5】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理する段階は、0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬させて−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した後、硝酸と硫酸の混合溶液に前記天然セルロース繊維を浸漬させ、50〜70℃でリフラックスさせながら、5分〜6時間化学処理して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項6】
前記硝酸と硫酸の混合溶液は、硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液または98%の硫酸と70%の硝酸を3:1の体積比で混合した溶液であることを特徴とする請求項5記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項7】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理した後、洗浄し、乾燥させる段階を更に行ってセルロース触媒支持体を製造することを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項8】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理して表面に置換された酸化基は、CO−、CH−、O−C=O、CO2、またはCO3であることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項9】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子は白金粒子であり、白金粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するための白金前駆体として、MeCpPtMe3、Pt(Me)3(Cp)、Pt(Tfacac)2、Pt(Me)(CO)(Cp)、Pt(Me)2(COD)、[PtMe3(acac)]2、PtCl2(CO)2、Pt(PF3)4、Pt(acac)2およびPt(C2H4)3からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項10】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子はニッケル粒子であり、ニッケル粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するためのニッケル前駆体として、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)またはニッケルカルボニル(Ni(CO)4)を用いることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項11】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子はコバルト粒子であり、コバルト粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するためのコバルト前駆体として、Co(CO)3NOまたはCo(NO3)2を用いることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項12】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子はモリブデン粒子であり、モリブデン粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するためのモリブデン前駆体として、Mo(CO)6を用いることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項13】
前記段階4で化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持させる過程は、前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体を石英管の中央に位置させ、石英管の内部温度を100〜120℃に維持した状態で6〜10Torrの圧力で30〜120分間維持して石英管内の不純物を除去する段階と、
前記セルロース触媒支持体が位置する反応器の内部温度を80〜300℃の温度に昇温させる段階と、
目的とする反応温度に到達させた後、気相の金属前駆体を真空状態の石英管の内部に流すことで、セルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子が担持される段階と
を経て行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項14】
前記段階4で含浸法を用いて金属触媒ナノ粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持させる過程は、セルロース触媒支持体を金属前駆体を溶解させた水溶液に沈殿させ、超音波処理した後、乾燥させ、窒素雰囲気下で焼成させて行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項15】
天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体と、
前記セルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持された金属触媒ナノ粒子と
を含む、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項16】
前記天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体は、天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階と、
前記電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階と、
前記熱処理した天然セルロース繊維の表面に置換された酸化基を形成するために酸性溶液で化学処理する段階と
を含む前処理過程を経て製造されることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項17】
前記金属触媒ナノ粒子は白金触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面に白金触媒ナノ粒子が担持された触媒は、テトラリンまたはベンゼンの水素化反応またはアルコールの酸化反応に用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項18】
前記金属触媒ナノ粒子はニッケル触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面にニッケル触媒ナノ粒子が担持された触媒は、脱硫、脱硝または脱金属反応に用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項19】
前記金属触媒ナノ粒子はモリブデン触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面にモリブデン触媒ナノ粒子が担持された触媒は、脱硫、脱硝または脱金属反応に用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項20】
前記金属触媒ナノ粒子はコバルト触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面にコバルト触媒ナノ粒子が担持された触媒は、脱硫、脱硝、脱金属反応において助触媒、燃料電池用白金触媒の助触媒、フィッシャー・トロプシュ反応用触媒、炭化水素の酸化反応および部分酸化反応用触媒、改質反応用触媒、アミン化反応用触媒、水素化反応用触媒または水性ガス置換反応用触媒として用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項1】
天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階(段階1)と、
前記段階1で電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階(段階2)と、
前記段階2で熱処理した天然セルロース繊維の表面に酸化基を置換させるために酸性溶液で化学処理してセルロース触媒支持体を製造する段階(段階3)と、
前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子を化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持させる段階(段階4)と
を含む天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項2】
前記段階1で天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階は、天然セルロース繊維に対して10〜500kGyの範囲の電子ビームを照射して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項3】
前記段階2で天然セルロース繊維を熱処理する段階は、天然セルロース繊維を液体窒素に含浸させた状態で1〜2mmの長さに切断した後、500〜1500℃まで昇温させて0.2〜2時間熱処理して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項4】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理する段階は、0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬させて−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した後、100〜150℃の30%硝酸溶液(または14Nの硝酸溶液)に浸漬させて10分〜20時間化学処理して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項5】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理する段階は、0.1〜0.5molの硫酸水溶液に浸漬させて−0.15〜1.3Vの掃引速度は50mV/sにし、10〜60回処理した後、硝酸と硫酸の混合溶液に前記天然セルロース繊維を浸漬させ、50〜70℃でリフラックスさせながら、5分〜6時間化学処理して行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項6】
前記硝酸と硫酸の混合溶液は、硝酸(14M、50ml)と硫酸(98%、50ml)の混合溶液または98%の硫酸と70%の硝酸を3:1の体積比で混合した溶液であることを特徴とする請求項5記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項7】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理した後、洗浄し、乾燥させる段階を更に行ってセルロース触媒支持体を製造することを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項8】
前記段階3で天然セルロース繊維を酸性溶液で化学処理して表面に置換された酸化基は、CO−、CH−、O−C=O、CO2、またはCO3であることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項9】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子は白金粒子であり、白金粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するための白金前駆体として、MeCpPtMe3、Pt(Me)3(Cp)、Pt(Tfacac)2、Pt(Me)(CO)(Cp)、Pt(Me)2(COD)、[PtMe3(acac)]2、PtCl2(CO)2、Pt(PF3)4、Pt(acac)2およびPt(C2H4)3からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項10】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子はニッケル粒子であり、ニッケル粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するためのニッケル前駆体として、硝酸ニッケル(Ni(NO3)2)またはニッケルカルボニル(Ni(CO)4)を用いることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項11】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子はコバルト粒子であり、コバルト粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するためのコバルト前駆体として、Co(CO)3NOまたはCo(NO3)2を用いることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項12】
前記段階4でセルロース触媒支持体の表面に担持される金属触媒ナノ粒子はモリブデン粒子であり、モリブデン粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持するためのモリブデン前駆体として、Mo(CO)6を用いることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項13】
前記段階4で化学気相蒸着法を用いて金属触媒ナノ粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持させる過程は、前記段階3で製造されたセルロース触媒支持体を石英管の中央に位置させ、石英管の内部温度を100〜120℃に維持した状態で6〜10Torrの圧力で30〜120分間維持して石英管内の不純物を除去する段階と、
前記セルロース触媒支持体が位置する反応器の内部温度を80〜300℃の温度に昇温させる段階と、
目的とする反応温度に到達させた後、気相の金属前駆体を真空状態の石英管の内部に流すことで、セルロース触媒支持体の表面に金属触媒ナノ粒子が担持される段階と
を経て行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項14】
前記段階4で含浸法を用いて金属触媒ナノ粒子をセルロース触媒支持体の表面に担持させる過程は、セルロース触媒支持体を金属前駆体を溶解させた水溶液に沈殿させ、超音波処理した後、乾燥させ、窒素雰囲気下で焼成させて行われることを特徴とする請求項1記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒の製造方法。
【請求項15】
天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体と、
前記セルロース触媒支持体の表面に化学気相蒸着法または含浸法を用いて担持された金属触媒ナノ粒子と
を含む、天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項16】
前記天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持され得るように前処理されて製造されたセルロース触媒支持体は、天然セルロース繊維を電子ビーム処理する段階と、
前記電子ビーム処理された天然セルロース繊維を熱処理する段階と、
前記熱処理した天然セルロース繊維の表面に置換された酸化基を形成するために酸性溶液で化学処理する段階と
を含む前処理過程を経て製造されることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項17】
前記金属触媒ナノ粒子は白金触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面に白金触媒ナノ粒子が担持された触媒は、テトラリンまたはベンゼンの水素化反応またはアルコールの酸化反応に用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項18】
前記金属触媒ナノ粒子はニッケル触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面にニッケル触媒ナノ粒子が担持された触媒は、脱硫、脱硝または脱金属反応に用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項19】
前記金属触媒ナノ粒子はモリブデン触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面にモリブデン触媒ナノ粒子が担持された触媒は、脱硫、脱硝または脱金属反応に用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【請求項20】
前記金属触媒ナノ粒子はコバルト触媒ナノ粒子であり、前記セルロース触媒支持体の表面にコバルト触媒ナノ粒子が担持された触媒は、脱硫、脱硝、脱金属反応において助触媒、燃料電池用白金触媒の助触媒、フィッシャー・トロプシュ反応用触媒、炭化水素の酸化反応および部分酸化反応用触媒、改質反応用触媒、アミン化反応用触媒、水素化反応用触媒または水性ガス置換反応用触媒として用いられることを特徴とする請求項15記載の天然セルロース繊維の表面に金属触媒ナノ粒子が担持されたセルロース触媒。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−101880(P2011−101880A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252245(P2010−252245)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(508107087)コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(508107087)コリア インスティチュート オブ エナジー リサーチ (6)
【Fターム(参考)】
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