説明

表面性状測定装置、その接触子モデル生成方法、及びプログラム

【課題】高精度で3次元接触子モデルを生成可能な表面性状測定装置、その接触子モデル生成方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】表面性状測定装置は、被測定物に先端が接触可能な接触子24と、接触子24を互いにX軸、Y軸、Z軸に沿って移動させる制御部41とを備える。制御部41は、接触子24を被測定物の表面に倣うように駆動すると共に接触子24の先端位置を疑似測定点Piとして取得する。制御部41は、基準ワーク4を接触子24で倣い測定して3次元接触子モデルM2を算出する。制御部41は、接触子24を、Z軸を中心として回転駆動する。制御部41は、回転駆動される接触子24の複数の回転位置のそれぞれにおいて、接触子24をX軸方向及びZ軸方向に沿って移動させて基準ワーク4を倣い測定して疑似測定点Piを取得し、取得された疑似測定点Piに基づいて3次元接触子モデルM2を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触子を用いて変位測定を行う3次元測定機などの表面性状測定装置、その接触子モデル生成方法、及び接触子モデル生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
接触式プローブ(接触子)を使用した接触測定方式においては、一般に接触子の先端は、球であると仮定し、その中心の位置を測定点として与える。この場合の測定点は、接触子が被測定物に接触している位置とは異なる為、被測定物の実形状に対して誤差を含んでいる。従って、そのような測定点をここでは疑似測定点と呼ぶ。疑似測定点と真の測定点との間の誤差は、接触子の形状を理想的な球と考え、先端球の半径分オフセットすることで解消し、被測定物の実形状により近い座標値を得ることができる。
【0003】
しかしながら、求めるべき被測定物上の位置は、接触子の形状に依存しており、高精度な測定点取得のためには、接触子の形状を考慮する必要がある。近年の測定精度の向上に伴い、接触子の形状を理想的な球としたこれまでの補正処理では、十分な精度が得られなくなってきているという実情もあり、新たな接触子形状を考慮した高精度な測定点取得方法の開発が望まれている。
【0004】
このようなことから、特許文献1には、校正の基準となる形状が既知の基準ワークを測定して求めた接触子の形状誤差データを用いて、接触子の形状誤差に起因した被測定物の測定誤差を補正するようにした表面性状測定装置が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1に開示の技術は、接触子をXYZの三軸方向に駆動して基準ワークを倣い測定するものである。一般に、測定精度は駆動する軸の数が増えるほど劣化する。したがって、三軸駆動では、誤差の影響が大きくなって十分に高い精度で接触子モデルを生成することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−357415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高精度で3次元接触子モデルを生成可能な表面性状測定装置、その接触子モデル生成方法、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る表面性状測定装置は、被測定物に先端が接触可能な接触子と、前記接触子を互いに直交する水平方向の第1軸及び第2軸並びに垂直方向の第3軸に沿って移動させる接触子駆動手段と、前記接触子駆動手段によって前記接触子を前記被測定物の表面に倣うように駆動すると共に前記接触子の先端位置を疑似測定点として取得する疑似測定点取得手段と、前記取得された疑似測定点と前記接触子の先端形状を規定する3次元接触子モデルとに基づいて前記被測定物の表面形状を算出する演算手段と、基準形状を持つ基準ワークを前記接触子で倣い測定して前記3次元接触子モデルを算出する接触子モデル算出手段とを備えた表面性状測定装置において、前記接触子駆動手段は、前記接触子を、前記第3軸を中心として回転駆動するものであり、前記接触子モデル算出手段は、前記回転駆動される接触子の複数の回転位置のそれぞれにおいて、前記接触子駆動手段で前記接触子を前記第1軸方向及び第3軸方向に沿って移動させて前記基準ワークを倣い測定して前記疑似測定点を取得し、取得された疑似測定点に基づいて前記3次元接触子モデルを算出することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る表面性状測定装置の接触子モデル生成方法は、被測定物に先端が接触可能な接触子と、前記接触子を互いに直交する水平方向の第1軸及び第2軸並びに垂直方向の第3軸に沿って移動させる接触子駆動手段と、前記接触子駆動手段によって前記接触子を前記被測定物の表面に倣うように駆動すると共に前記接触子の先端位置を疑似測定点として取得する疑似測定点取得手段と、前記取得された疑似測定点と前記接触子の先端形状を規定する3次元接触子モデルとに基づいて前記被測定物の表面形状を算出する演算手段とを備えた表面性状測定装置の接触子モデル生成方法であって、前記接触子を、前記第3軸を中心として回転させ、前記接触子の複数の回転位置のそれぞれにおいて、前記接触子駆動手段で前記接触子を前記第1軸方向及び第3軸方向に沿って移動させて前記基準ワークを倣い測定して前記疑似測定点を取得し、取得された疑似測定点に基づいて前記3次元接触子モデルを算出することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る表面性状測定装置の接触子モデル生成プログラムは、被測定物に先端が接触可能な接触子と、前記接触子を互いに直交する水平方向の第1軸及び第2軸並びに垂直方向の第3軸に沿って移動させる接触子駆動手段と、前記接触子駆動手段によって前記接触子を前記被測定物の表面に倣うように駆動すると共に前記接触子の先端位置を疑似測定点として取得する疑似測定点取得手段と、前記取得された疑似測定点と前記接触子の先端形状を規定する3次元接触子モデルとに基づいて前記被測定物の表面形状を算出する演算手段とを備えた表面性状測定装置の接触子モデル生成プログラムであって、コンピュータに、前記接触子を、前記第3軸を中心として回転させ、前記接触子の複数の回転位置のそれぞれにおいて、前記接触子駆動手段で前記接触子を前記第1軸方向及び第3軸方向に沿って移動させて前記基準ワークを倣い測定して前記疑似測定点を取得し、取得された疑似測定点に基づいて前記3次元接触子モデルを算出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高精度で3次元接触子モデルを生成可能な表面性状測定装置、その接触子モデル生成方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る表面性状測定装置の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る表面性状測定装置のスタイラス23、及び接触子24を示す拡大図である。
【図3】第1実施形態に係る表面性状測定装置の演算処理装置本体31の構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】ステップS101の動作を説明するための図である。
【図6】擬似測定点Piを示す図である。
【図7】2次元接触子モデルM1iを示す図である。
【図8】ステップS103の動作を説明するための図である。
【図9】ステップS105の動作を説明するための図である。
【図10】ステップS105の動作を説明するための図である。
【図11】3次元接触子モデルM2を示す図である。
【図12】ステップS105の動作を説明するフローチャートである
【図13】ステップS205の動作を説明するための図である。
【図14】ステップS205の動作を説明するための図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る表面性状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図16】ステップS304、S305における、「3次元擬似測定点P1ij」を説明するための図である。
【図17】基準形状M4(M4A、M4B、M4C)を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
[第1実施形態]
(第1実施形態に係る表面性状測定装置の構成)
先ず、図1を参照して、第1実施形態に係る表面性状測定装置の構成を説明する。図1は、第1実施形態に係る表面性状測定装置(形状測定装置)の外観斜視図である。
【0015】
この表面性状測定装置は、測定機本体1と、駆動制御装置1aを介して測定機本体1に接続された演算処理装置2とから構成される。測定機本体1は、基台3と、この基台3上に設けられて基準ワーク4(既知の基準形状を持つ被測定物)を載置するテーブル5と、このテーブル5に載置された基準ワーク4の表面の変位を検出する変位検出装置6と、これらを操作するための操作部7とを備えて構成されている。テーブル5は、基台3上を図中X軸方向(左右方向)、及び図中Y軸方向(紙面と直交する方向)に移動可能に構成されている。また、テーブル5は、基準ワーク4の載置面を任意の姿勢に調整可能な傾斜調整機能付きの構成を有している。
【0016】
変位検出装置6は次のように構成されている。即ち、基台3には上方に延びるコラム21が立設されており、このコラム21にスライダ22が上下動可能に装着されている。スライダ22にはスタイラス23が装着されている。スタイラス23は、水平(X軸、Y軸)、垂直(Z軸)方向に駆動可能に構成されており、その先端には接触子24が設けられている。すなわち、スタイラス23は、テーブル5に対して相対移動可能に構成されている。接触子24は、その先端が被測定物に接触可能に構成されている。
【0017】
接触子24は、図2に示すように、スタイラス23先端の下面から下方に延び且つテーブル5に対する垂直方向(Z軸方向)を回転軸として回転可能に構成されている。接触子24の回転駆動も含め、コラム21、スライダ22、及びスタイラス23で接触子駆動手段を構成している。
【0018】
上記スライダ22、スタイラス23を移動させ、接触子24を基準ワーク4の表面を走査(トレース)することによって、X軸方向の各位置における表面の高さZが測定データ(擬似測定点Pi)として得られるようになっている。また、テーブル5で基準ワーク4をY軸方向に移動させることにより、X軸方向に延びるスキャンライン(測定経路)を切り替えることができる。
【0019】
演算処理装置2は、変位検出装置6で得られた擬似測定点Piを取り込む。演算処理装置2は、演算処理を実行する演算処理装置本体31、及び操作部32、表示画面33を有する。また、演算処理装置2は、操作部7と同様に測定機本体1の動作を制御可能に構成されている。
【0020】
次に、図3を参照して、演算処理装置本体31の構成について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係る演算処理装置本体31の構成を示すブロック図である。
【0021】
演算処理装置本体31は、図3に示すように、主に、制御部(CPU:Central Processing Unit)41、RAM(Random Access Memory)42、ROM(Read Only Memory)43、HDD(Hard Disk Drive)44、表示制御部45を有する。演算処理装置本体31において、操作部32から入力されるコード情報及び位置情報は、I/F46aを介して制御部41に入力される。制御部41は、ROM43に格納されたマクロプログラム及びHDD44からI/F46bを介してRAM42に格納された各種プログラムに従って、各種の処理を実行する。
【0022】
制御部41は、測定実行処理に従って、I/F46cを介して測定機本体1を制御する。HDD44は、各種制御プログラムを格納する記録媒体である。RAM42は、各種プログラムを格納する他、各種処理のワーク領域を提供する。また、制御部41は、表示制御部45を介して表示画面33に測定結果等を表示する。
【0023】
制御部41は、HDD44から各種プログラムを読み出し、そのプログラムを実行することにより、後述する図4及び図12に示す動作を実行する。制御部41は、コラム21、スライダ22及びスタイラス23を制御して、接触子24を互いに直交する水平方向のX軸及びY軸並びに垂直方向のZ軸に沿って移動させる。制御部41は、測定時に、接触子24を被測定物の表面に倣うように駆動すると共に接触子24の先端位置を疑似測定点Piとして取得する。制御部41は、取得された疑似測定点Piと接触子24の先端形状を規定する3次元接触子モデルM2とに基づいて被測定物の表面形状を算出する。制御部41は、基準形状を持つ基準ワーク4を接触子24で倣い測定して3次元接触子モデルM2を算出する。
【0024】
また、制御部41は、図示しないスタイラス23内部の駆動機構を制御して接触子24を、Z軸を中心として回転駆動させる。制御部41は、回転駆動される接触子24の複数の回転位置のそれぞれにおいて、接触子24をX軸方向及びZ軸方向に沿って移動させて基準ワーク4を倣い測定して疑似測定点Piを取得し、取得された疑似測定点Piに基づいて3次元接触子モデルM2を算出する。
【0025】
また、制御部41は、接触子24の各回転位置において、取得された疑似測定点Piに基づき2次元接触子モデルM1iを算出し、算出された接触子24の各回転位置における2次元接触子モデルMiを合成して3次元接触子モデルM2を算出する。
【0026】
また、制御部41は、仮想空間内で、初期値として与えられた3次元接触子モデルM0又は算出された3次元接触子モデルを疑似測定点Piに配置し、3次元接触子モデルと基準ワーク4との接触状況を調べ、接触状況に基づいて3次元接触子モデルを修正する処理を繰り返す。
【0027】
(第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作)
次に、図4を参照して第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作について説明する。図4は、第1実施形態に係る表面性状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【0028】
先ず、制御部41は、スタイラス23をX軸方向に走査して、擬似測定点Piを取得する(ステップS101)。例えば、図5に示すように、スタイラス23は、接触子24が基準ワーク4の表面(ワーク面S0)に接するように、X軸方向に走査される。擬似測定点Piは、図6に示すように、基準ワーク4への接触時における接触子24の所定位置を示す点である。複数の擬似測定点Piを結ぶ線分は、ワーク面S0から所定距離をもって、擬似測定面S1を構成する。
【0029】
次に、制御部41は、擬似測定点Piに基づき、2次元接触子モデルM1iを生成する(ステップS102)。2次元接触子モデルM1iは、図7に示すように、離散的な点列の集合として表される。
【0030】
続いて、制御部41は、接触子24をZ軸方向を中心に所定角度回転させる(ステップS103)。接触子24は、図8に示すように、基準ワーク4を横断した後、所定位置にて回転する。
【0031】
次に、制御部41は、接触子24が180°回転したか否かを判断する(ステップS104)。ここで、制御部41は、接触子24が180°回転していないと判断すると(ステップS104、N)、再びステップS101からの制御を実行する。すなわち、制御部41は、接触子24が180°回転するまで、接触子24の各回転位置において、取得された擬似測定点Piに基づき2次元接触子モデルM1iを算出する。
【0032】
一方、制御部41は、接触子24が180°回転したと判断すると(ステップS104、Y)、算出された接触子24の各回転位置における2次元接触子モデルM1iを合成して、3次元接触子モデルM2を生成する(ステップS105)。
【0033】
3次元接触子モデルM2は、図9に示すように、複数の平面(平面−1、平面−2、平面−3、…、平面−i、…)を表す複数の2次元接触子モデルM1iを重ね合わせることで生成される。例えば、図10に示すように、2次元接触子モデルM1iの頂点ciの座標と、2次元接触子モデルM1iの頂点cjの座標とが異なる場合がある。この場合、2次元接触子モデルM1i、又は2次元接触子モデルM1jの座標系を平行移動させ、頂点ciと頂点cjとを頂点cの座標に合わせる。このような工程を経て生成された3次元接触子モデルM2は、図11に示すように、離散的な点列の集合として表される。以上で、制御部41の動作は終了する。
【0034】
次に、図12を参照して、上述したステップS105の詳細について説明する。図12は、図4のステップS105を示すフローチャートである。
【0035】
先ず、制御部41は、仮想空間内で、擬似測定面S1とワーク面S0とを同一の座標系で表す(図6参照)。すなわち、制御部41は、擬似測定面S1とワーク面S0の位置合わせを行う(ステップS201)。例えば、球を擬似測定面S1に当てはめ、その球の中心位置に基準ワーク4の中心があるものとする。
【0036】
続いて、制御部41は、初期値としての初期3次元接触子モデルM0の入力を受け付ける(ステップS202)。ここで、初期3次元接触子モデルM0は、例えば、接触子24の公称値によって決定される。次に、制御部41は、初期3次元接触子モデルM0を擬似測定面S1の擬似測定点Piに配置する(ステップS203)。
【0037】
続いて、制御部41は、初期3次元接触子モデルM0とワーク面S0の接触状況を確認する(ステップS204)。次に、制御部41は、その接触状況に基づき、初期3次元接触子モデルM0を修正する(ステップS205)。ここで、図13に示すように、初期3次元接触子モデルM0が、ワーク面S0に食い込んでいる場合、初期3次元接触子モデルM0は、ワーク面S0に接触するように修正される。また、図14に示すように、初期3次元接触子モデルM0が、ワーク面S0から離れている場合、初期3次元接触子モデルM0は、ワーク面S0に接触するように修正される。
【0038】
次に、制御部41は、修正した値が所定値未満であるか否かを判断する(ステップS206)。ここで、制御部41は、修正した値が所定値未満でないと判断した場合(ステップS206、N)、再びステップS203からの動作を実行する。なお、続く、ステップS203からの動作において、制御部41は、上記ステップS206までの処理で算出された3次元接触子モデルを用いる。
【0039】
一方、制御部41は、ステップS206において、修正した値が所定値未満であると判断した場合(ステップS206、Y)、その動作を終了する。なお、ステップS203〜S206の処理を繰り返し実行することにより、3次元接触子モデルの形状は、所定値に収束する。
【0040】
(第1実施形態に係る表面性状測定装置の効果)
次に、第1実施形態に係る表面性状測定装置の効果について説明する。第1実施形態に係る表面性状測定装置は、スタイラス23のX軸方向の走査、及び接触子24のZ軸方向を中心とする回転、すなわち2軸駆動のみにより、3次元接触子モデルM2を生成するこができる。したがって、3軸駆動によって3次元接触子モデルを生成する装置よりも、第1実施形態に係る表面性状測定装置は、誤差の要因となる駆動軸が少ないので、高精度で3次元接触子モデルM2を生成することができる。
【0041】
ここで、3軸駆動の表面性状測定装置の場合、3次元接触子モデルを生成する際に用いられるワークは、球(半球)状の形状に限られる。一方、第1実施形態に係る表面性状測定装置は2軸駆動であるので、3次元接触子モデルの生成に用いる基準ワーク4は、球(半球)状に限られず、半円柱、三角柱状であってもよい。すなわち、第1実施形態に係る表面性状測定装置においては、校正測定が多様化でき、その使い勝手は向上する。
【0042】
[第2実施形態]
(第2実施形態に係る表面性状測定装置の構成)
次に、第2実施形態に係る表面性状測定装置の構成について説明する。第2実施形態に係る表面性状測定装置においては、制御部41のみが第1実施形態と異なる。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
第2実施形態において、制御部41は、接触子24の各回転位置において、取得された疑似測定点Piを接触子24の回転位置に応じて座標変換して得られた3次元疑似測定点P1ijから3次元接触子モデルM2を算出する。
【0044】
(第2実施形態に係る表面性状測定装置の動作)
次に、図15を参照して、第2実施形態に係る表面性状測定装置の動作について説明する。図15は、第2実施形態に係る表面性状測定装置の動作を示すフローチャートである。
【0045】
先ず、制御部41は、スタイラス23をX軸方向に走査して、擬似測定点Piを取得する(ステップS301)。次に、制御部41は、接触子24をZ軸方向を中心に所定角度回転させる(ステップS302)。
【0046】
続いて、制御部41は、接触子24が180°回転したか否かを判断する(ステップS303)。ここで、制御部41は、接触子24が180°回転していないと判断した場合(ステップS303、N)、再びステップS301からの制御を実行する。
【0047】
一方、制御部41は、接触子24が180°回転していると判断した場合(ステップS303、Y)、取得された擬似測定点Piを接触子24の回転位置に応じて座標変換して、3次元擬似測定点P1ijを生成する(ステップS304)。次に、制御部41は、全ての3次元擬似測定点P1ijに基づき、基準形状M4を生成する(ステップS305)。なお、3次元擬似測定点P1ij、及び基準形状M4の詳細については、後述する。
【0048】
続いて、制御部41は、基準形状M4に基づき、3次元接触子モデルM2を生成する(ステップS306)。以上で、制御部41の動作は終了する。
【0049】
次に、図16及び図17を参照して、ステップS304、S305における、「3次元擬似測定点P1ij」、及び「基準形状M4」を説明する。
【0050】
図16に示すように、実際の測定において、基準ワーク4上の同一経路で、スタイラス23をX軸方向に走査して、測定[A]、[B]が行われる。測定[A]、[B]において、接触子24はα°回転する。
【0051】
一方、図16に示すように、接触子24の回転がない測定を想定すると、実際の測定[A]、[B]は、測定[A’]、[B’]に変換される。すなわち、測定[A’]、[B’]において、接触子24は、回転しない。また、測定[A’]においてスタイラス23は、X軸方向に走査され、測定[B’]においてスタイラス23は、X軸方向からα°の角度をもつ方向に走査される。測定[A]、[B]における擬似測定点Piを、上記のような測定[A’]、[B’]に変換した場合に対応する値が、「3次元擬似測定点P1ij」である。
【0052】
制御部41は、上記の3次元擬似測定点P1ijに基づき、図17に示すような基準形状M4(M4A、M4B、M4C)を生成し、3次元接触子モデルM2を生成する。
【0053】
例えば、図17に示すように、実際の基準ワーク4Aが半円柱である場合、3次元擬似測定点P1ijに基づき生成される基準形状M4Aは半球となる。また、実際の基準ワーク4Bが三角柱である場合、基準形状M4Bは円錐となる。また、実際の基準ワーク4Cが半球である場合、基準形状M4Cは半球となる。
【0054】
(第2実施形態に係る表面性状測定装置の効果)
第2実施形態に係る表面性状測定装置は、第1実施形態と略同様の構成を有し、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0055】
[その他の実施形態]
以上、表面性状測定装置の実施形態を説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。例えば、本発明は、輪郭測定機、粗さ測定機にも適応可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…測定機本体、2…演算処理装置、3…基台、4…ワーク、5…テーブル、6…変位検出装置、7…操作部、21…コラム、22…スライダ、23…スタイラス、24…接触子、31…演算処理装置本体、32…操作部、33…表示画面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物に先端が接触可能な接触子と、
前記接触子を互いに直交する水平方向の第1軸及び第2軸並びに垂直方向の第3軸に沿って移動させる接触子駆動手段と、
前記接触子駆動手段によって前記接触子を前記被測定物の表面に倣うように駆動すると共に前記接触子の先端位置を疑似測定点として取得する疑似測定点取得手段と、
前記取得された疑似測定点と前記接触子の先端形状を規定する3次元接触子モデルとに基づいて前記被測定物の表面形状を算出する演算手段と、
基準形状を持つ基準ワークを前記接触子で倣い測定して前記3次元接触子モデルを算出する接触子モデル算出手段と
を備えた表面性状測定装置において、
前記接触子駆動手段は、前記接触子を、前記第3軸を中心として回転駆動するものであり、
前記接触子モデル算出手段は、前記回転駆動される接触子の複数の回転位置のそれぞれにおいて、前記接触子駆動手段で前記接触子を前記第1軸方向及び第3軸方向に沿って移動させて前記基準ワークを倣い測定して前記疑似測定点を取得し、取得された疑似測定点に基づいて前記3次元接触子モデルを算出する
ことを特徴とする表面性状測定装置。
【請求項2】
前記接触子モデル算出手段は、前記接触子の各回転位置において、前記取得された疑似測定点に基づき2次元接触子モデルを算出し、算出された前記接触子の各回転位置における2次元接触子モデルを合成して3次元接触子モデルを算出する
ことを特徴とする請求項1記載の表面性状測定装置。
【請求項3】
前記接触子モデル算出手段は、前記接触子の各回転位置において、前記取得された疑似測定点を前記接触子の回転位置に応じて座標変換して得られた3次元疑似測定点から前記3次元接触子モデルを算出する
ことを特徴とする請求項1記載の表面性状測定装置。
【請求項4】
前記接触子モデル算出手段は、仮想空間内で、初期値として与えられた3次元接触子モデル又は算出された3次元接触子モデルを前記疑似測定点に配置し、前記3次元接触子モデルと前記基準ワークとの接触状況を調べ、前記接触状況に基づいて前記3次元接触子モデルを修正する処理を繰り返す
ことを特徴とする請求項1記載の表面性状測定装置。
【請求項5】
被測定物に先端が接触可能な接触子と、
前記接触子を互いに直交する水平方向の第1軸及び第2軸並びに垂直方向の第3軸に沿って移動させる接触子駆動手段と、
前記接触子駆動手段によって前記接触子を前記被測定物の表面に倣うように駆動すると共に前記接触子の先端位置を疑似測定点として取得する疑似測定点取得手段と、
前記取得された疑似測定点と前記接触子の先端形状を規定する3次元接触子モデルとに基づいて前記被測定物の表面形状を算出する演算手段と
を備えた表面性状測定装置の接触子モデル生成方法であって、
前記接触子を、前記第3軸を中心として回転させ、
前記接触子の複数の回転位置のそれぞれにおいて、前記接触子駆動手段で前記接触子を前記第1軸方向及び第3軸方向に沿って移動させて前記基準ワークを倣い測定して前記疑似測定点を取得し、取得された疑似測定点に基づいて前記3次元接触子モデルを算出する
ことを特徴とする表面性状測定装置の接触子モデル生成方法。
【請求項6】
被測定物に先端が接触可能な接触子と、
前記接触子を互いに直交する水平方向の第1軸及び第2軸並びに垂直方向の第3軸に沿って移動させる接触子駆動手段と、
前記接触子駆動手段によって前記接触子を前記被測定物の表面に倣うように駆動すると共に前記接触子の先端位置を疑似測定点として取得する疑似測定点取得手段と、
前記取得された疑似測定点と前記接触子の先端形状を規定する3次元接触子モデルとに基づいて前記被測定物の表面形状を算出する演算手段と
を備えた表面性状測定装置の接触子モデル生成プログラムであって、
コンピュータに
前記接触子を、前記第3軸を中心として回転させ、
前記接触子の複数の回転位置のそれぞれにおいて、前記接触子駆動手段で前記接触子を前記第1軸方向及び第3軸方向に沿って移動させて前記基準ワークを倣い測定して前記疑似測定点を取得し、取得された疑似測定点に基づいて前記3次元接触子モデルを算出させる
ことを特徴とする表面性状測定装置の接触子モデル生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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