説明

【課題】 パウチ容器内の液体若しくは粉粒体を、迅速かつこぼさずに他の容器へ移し替える。
【解決手段】 2つの側面部2aおよび2bと底面部3とを有し、密封形成された有底袋状のパウチ容器1において、先端部5aを切断することで内容物を排出する出口6が形成される先細りのノズル部5を、前記2つの側面部2aおよび2bが接合された上縁部4bの端部に突設する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体又は粉粒体等を内容物として保持する袋に関し、特に、内容物を他の容器に詰め替えるための袋に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、衣料用洗剤、食器用洗剤、衣料用柔軟剤等の、液体若しくは粉粒体の内容物の詰め替え用容器として、袋状の容器(以下パウチ容器という)が知られており、袋状に密封された容器の上端に設けられたシール部(接合部)を水平にカットして、中央部に形成された出口から内容物を注ぎ出すタイプのものが一般的である。
【0003】しかしながら、シャンプー、リンス、トリートメント、全身洗浄料などの高粘度液体を詰め替える場合、詰め替え時間を短くすると共に、内容物の液体を最後まで出し切るためにパウチ容器を絞り出す作業が必要になるが、上述したタイプのパウチ容器は、液体をこぼし易く、詰め替えに時間がかかる等の不都合な点があった。また、粉粒体の場合も同様であった。
【0004】これに対し、詰め替え作業を容易にするために、液体が移入される受け方容器の入口内に挿入可能な出口を備えた詰め替え用パウチ容器として、特開平7-285562号公報には、液体用パウチ容器の上端接合部に非接合突出部を設け、その側端縁から一定間隔をおいた位置に孔または切り込みを設けたものが開示されている。
【0005】また、実開昭57-85436号に記載されたものには、略円筒状に形成された液体用パウチ容器の側面接合部に、先端を切除して出口を形成する突出部を設けたものが開示されている。また、特開平7-2260号に記載されたものには、袋の1つの角に外郭に沿って注出口が設けられたパウチ容器が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平7-285562号公報に記載されたものでは、受け方容器の入口内に挿入可能な出口を形成するために、パウチ容器の上端接合部を一端から他端まで切り取る必要があり、また、途中に孔または切り込みが設けてあるため、1回の動作では上端接合部を取り去ることができず、作業が煩雑であるという問題点があった。また、形成された出口の付近には、上端が出口と略同じ高さの接合部が残っているため、やはり出口を受け方容器の入口内に挿入し難いという問題点があった。
【0007】また、実開昭57-85436号に記載されたものでは、パウチ容器の側面接合部に突出部が形成されているため、内容物がとび出さないように突出部を上に向けて出口を形成しようとすると、パウチ容器の円筒状に形成された側面部が下になり、安定して保持することができないという問題点があった。また、出口を受け方容器の入口内に挿入する際に内容物をこぼさずに行うのが困難であるといった問題点があり、実用的ではなかった。
【0008】また、特開平7-2260号に記載されたものでは、パウチ容器の上縁部の角部を切り欠いて吐出用ノズルが形成されているため、切欠き付近に内容物がたまりやすく、内容物の絞り出し作業において内容物が残留しやすいという問題点があった。より具体的には、上縁部と切欠き部との交点に内容物が残留しやすい。本発明はこのような従来の問題点に鑑み、液体若しくは粉粒体の内容物を円滑に残らず排出でき、他の容器に容易に移すことのできる袋を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】このため、請求項1に係る発明では、2つの側面部と底面部とを有し、密封形成された袋であるパウチ容器において、先端部を切断することで内容物を排出する出口が形成される先細りのノズル部を、前記2つの側面部が接合された上縁部の端部に突設する。
【0010】このような構成としたことにより、内容物を移入する受け方容器の入口へノズル部を挿入するのが容易になる。この点、請求項2に係る発明のように、前記2つの側面部が接合された縁部を含んで前記パウチ容器を対称に2分する対称縦断面における、前記ノズル部の形状は、側面部を形成するシートの状態で、先細り角度αが20°〜70°の角度で収束に向かう先細り形状であるようにすれば、ノズル部の挿入が容易であると共に、内容物の排出が円滑に行われる。
【0011】また、請求項3に係る発明では、前記ノズル部を、前記側面部のパウチ底辺と直交する基準線Lと先細り角の2等分線とのなす角度βを10°〜60°傾斜させて配設して、出口を形成したノズル部を受け方容器の入口へ挿入する際に液体がこぼれないようにする。また、請求項4に係る発明では、前記ノズル部は、その先細り角の2等分線と30°〜80°の角度γをなし、且つ前記対称縦断面に直交する切断面で前記先端部を切断するように設けた切断誘導部を有するものとして、出口の形成を容易にする。
【0012】この切断誘導部は、請求項5に係る発明では、前記ノズル部の外縁端部に切欠きを設けた。
【0013】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明のパウチ容器の一形態を示す斜視図である。図1(a)に示すように、パウチ容器1は、縦長の略長方形の側面部2aと、側面部2aと対称に設けられた側面部2bと、底面部3とを有して有底袋状に密封形成されており、2つの側面部2aと2bとが側縁部4a,4aと上縁部4bとで接合され、上縁部4bの端部には、先細り形状のノズル部5が突設してある。そして、図1(b)に示すように、ノズル部5の先端部5aを切断することにより、内容物を排出する出口6が形成されるようになっている。尚、2つの側縁部4a,4aと上縁部4bとで縁部4が構成される。
【0014】このパウチ容器1は、出口6を形成後、パウチ容器1全体を傾けて、ノズル部5を介し、出口6から内容物である液体や粉粒体をカップやボトルなどの受け方容器に排出して詰め替えるため等に用いられる。ノズル部5は、上縁部4bから突出させて先細り形状に形成してあるので、先端部5aを一回の動作によって切り取ることができ、内容物を排出する出口6を容易に形成できる。また、パウチ容器1から排出される内容物を移入する受け方容器が、入口の小さいボトル状のものであっても、先細りのノズル部5を受け方容器の入口に容易に挿入できるので、内容物をこぼすことなく迅速に詰め替え作業を行なうことができる。
【0015】また、絞り出し作業時には、パウチ容器1を折りたたむ等の動作を行なうが、ノズル部を突出させて設けてあるため、側面部2aおよび2b等がノズル部5先端に形成された出口6に干渉することがなく、容易に絞り出し作業を行なうことができる。特に、図2に示すように、縁部4を含んで内容物が収納されていないシート状のパウチ容器1を対称に2分する対称縦断面Aにおけるノズル部5の形状が、20°〜70°の先細り角度αで収束に向かうような先細り形状にすれば、ノズル部5の方へ内容物が流れるようにパウチ容器1を傾けることにより、内容物の圧力で出口6が自然に開口し、内容物の流動性がよくなる。これにより、内容物が排出され易くなり、最後まで容易に絞り出すことができる。この点、先細り角度αのより好ましい範囲は、30°〜60°である。
【0016】これに対し、先細り角度αが20°より小さいと、内容物の圧力で出口6が開き難くなり、排出され難くなる。また、先細り角度αが70°より大きくなると、ノズル部5を受け方容器の入口に挿入し難くなる。また、ノズル部5が曲線を持つ先細り形状である場合の先細り角度αは、図5に示すように、切断誘導部である切欠き7から図2における底辺8に平行に引いた線とノズル部の内側の線とが交わる部位7a,7bとで各々ノズル部の内側の線に接するように引いた2つの線L’,L”が交わる角度とする。また、その2等分線を引くことで、β,γも定まる。
【0017】また、切欠きがない場合は、ノズル部の上縁部4bから上方への吐出長さの80%の位置(内縁で測って)に、上記底辺8に平行な線を引き、上記と同様に、α,β,γを定める。また、パウチ底辺8と直交する基準線Lと先細り角度の2等分線とのなす角度βが10°〜60°の角度βを有するように傾斜させて配設すれば、出口6が形成されたノズル部5を、内容物をこぼさないで受け方容器の入口に挿入することができる。角度βが上述した範囲内の値であれば、例えば図3に示すように、ノズル部5が縁部4から側方へ突出した形状としてもよい。
【0018】これに対し、角度βが10°より小さいと、ノズル部5を受け方容器の入口に挿入する際に、内容物をこぼし易くなる。また、角度βが60°よりも大きいと、ノズル部5を受け方容器の入口に挿入したときに、パウチ容器1が倒立した状態にはならず、内容物を排出し難くなる。さらに、出口6は、ノズル部5の2等分線Mと30°〜80°の角度γをなし、且つ対称縦断面Aに直交する切断面Bで先端部5aを切断して形成すれば、出口6が鋭角に尖った形状となり、内容物をこぼすことなく受け方容器の入口にノズル部5を挿入することができる。
【0019】これに対し、角度γが30°より小さいと、ノズル部5を受け方容器の入口に挿入する際に内容物をこぼし易くなる。また、角度γが80°より大きいと、受け方容器の入口内に挿入されるノズル部5の長さが短くなり、内容物をパウチ容器1から絞り出す作業が困難になる。そして、対称縦断面Aと切断面Bとの交線の長さnが、このパウチ容器1から内容物を注入される受け方容器の入口の内径よりも短くなるようにすれば、ノズル部5の挿入がさらに容易になる。内容物の排出を容易にするためには、切断面Bをなるべく大きくする必要があり、ノズル部5を受け方容器の入口に入れ易くするためには交線の長さnを短くする必要がある。このため、ノズル部5外縁の接合部5bの幅を、側面部2aと2bとが接合された縁部4の幅wよりも、強度的に許容される範囲で狭く形成してもよい。尚、前記交線の長さnについて、閉口状態のときのノズル切断面の長さが受け方容器の入り口の内径より短くなるようにすれば挿入が極めて容易となるが、開口状態のときのノズル切断面の長さが受け方容器の入り口の内径より短ければ、挿入可能である。
【0020】また、図4に示すように、ノズル部5に、先端部5aを所定の面で切断するのを容易にする切断誘導部として、ノズル部5の外縁である接合部5bに切欠き7を設ければ、上述した切断面Bで出口6を容易に形成することができる。切断誘導部としては、上述した切欠き7の他、切断面Bにおける切断のみを容易にした1軸延伸ポリプロピレン等の異方性材料でノズル部5の先端部5aを形成するようにしてもよい。また、切断面Bに沿ったレーザーカットを設ける構成、すなわち、パウチ容器のフィルム部材として、レーザー吸収性の異なる材料を積層したものを用い、レーザー光の照射によりレーザー吸収性の強い層のみを溶融蒸発させてハーフカットを形成する手法により、スリット状の切り溝を設ける構成としてもよい。また、切断面Bに沿った線をノズル部5に印刷しておき、これに沿って先端部5aをハサミ等で切断するようにしてもよい。
【0021】上述したパウチ容器1は、内容物が液体の場合、 200 cp 〜100000cpの粘度を有するものであれば排出が容易であり、すべての内容物を無駄なく受け方容器に移入することができる。内容物の液体の粘度が 200 cp を下回ると、ノズル部5の出口6近傍の外縁から液体が垂れ易くなり、周囲が汚れるおそれがある。また、粘度が100000cpを上回ると、パウチ容器1から液体を円滑に排出するのが困難になる。
【0022】尚、このパウチ容器1の内容物としては、液体に限らず、粉粒体でもよい。パウチ容器1の各部を形成する材料としては、軟質の樹脂製フィルム状部材、特に複数の樹脂層および金属層を積層したフィルム状部材が好ましく用いられる。積層する材料は特に限定されないが、例えば、機械的強度および耐湿性に優れた、延伸ナイロン(ONy)、延伸ポリプロピレン(OPP)、アルミニウム(Al)、および、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を順に積層したものなどを、ONy層がパウチ容器1の外側になるようにして用いることができる。
【0023】また、パウチ容器1は、その全体を1枚のフィルム状部材で形成することもできるが、複数のフィルム状部材を組み合わせて形成してもよい。例えば 側面部2aとノズル部5の側面部2a側部分とを1枚のフィルム部材で、同様に、側面部2bとノズル部5の側面部2b側部分とを他のフィルム部材で、また、底面部3をさらに他のフィルム部材で形成し、これら3枚のフィルム状部材を一体に接合してパウチ容器1を構成してもよい。
【0024】全体を1枚のフィルム状部材で形成すれば、材料の管理などが容易になり、安価に製造することができる。一方、複数のフィルム状部材を用いれば、様々なデザインのパウチ容器を容易に形成することができる。本発明の液体用パウチ容器の効果を確認するために、上述の例と同様の3枚のフィルム状部材を用いた構成のパウチ容器1を、側面部2aおよび2bとノズル部5とには、外側から、各々の厚さが、ONy:15μm 、OPP:25μm 、Al:7μm 、および、LLDPE: 100μm 、を順に積層したフィルム状部材を用い、また、底面部3は、同様に、ONy:15μm 、Al:7μm 、および、LLDPE: 100μm 、を順に積層したフィルム状部材を用いて製作した。
【0025】具体的形状を図5に示す。このパウチ容器1では、上述した角度αを45°、角度βを30°、角度γを60°とし、また、切断誘導部として、ノズル部5の外縁である接合部に切欠き7を設けた。このパウチ容器1に粘度8000cpの頭髪用リンスを内容物として充填して密封し、その後、ノズル部5の先端部5aを切欠き7を用いて手で切除し、出口6を形成した。そして、ノズル部5を内径が24mmの受け方容器であるボトルの入口に挿入し、内容物のリンスを移し替えたところ、こぼすことなく容易に移し替えることができた。
【0026】尚、図5からわかるように、角部に適当なアールをつけることで、液体の移し替えをよりスムーズにすることができる。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、上述した請求項1に係る発明によれば、袋の2つの側面部が接合された上縁部の端部に先細りのノズル部を突設したことにより、液体若しくは粉粒体の内容物を移入する受け方容器の入口へノズル部を挿入するのが容易になり、内容物をこぼさずに移し替えることができるという効果がある。
【0028】また、請求項2に係る発明によれば、ノズル部の挿入が容易であると共に、内容物の排出が円滑に行われ、作業時間が短縮されるという効果がある。また、請求項3に係る発明によれば、出口を形成したノズル部を受け方容器の入口へ挿入する際に内容物がこぼれず、周囲を汚すことなく容易に内容物を移し替えることができるという効果がある。
【0029】また、請求項4〜請求項5に係る発明によれば、内容物をこぼすことなく排出できる角度の出口を容易かつ確実に形成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態である図2の断面図を持つパウチ容器の斜視図
【図2】 パウチ容器の対称縦断面における断面図
【図3】 ノズル部の他の形状を示す断面図
【図4】 ノズル部の拡大図
【図5】 パウチ容器の具体例を示す図
【符号の説明】
1 パウチ容器
2a,2b 側面部
3 底面部
4 縁部
4a 側縁部
4b 上縁部
5 ノズル部
5a ノズル部の先端部
5b ノズル部外縁の接合部
6 出口
7 切欠き
8 底辺
A 対称縦断面
B 切断面
L 基準線
M ノズル部の2等分線

【特許請求の範囲】
【請求項1】2つの側面部と底面部とを有し、密封形成された袋において、先端部を切断することで内容物を排出する出口が形成される先細りのノズル部を、前記2つの側面部が接合された上縁部の端部に突設したことを特徴とする袋。
【請求項2】前記2つの側面部が接合された縁部を含んで前記袋を対称に2分する対称縦断面における、前記ノズル部の形状は、シート状での側面部において先細り角度(α)が20°〜70°の角度で収束に向かう先細り形状であることを特徴とする請求項1に記載の袋。
【請求項3】前記ノズル部は、袋底辺と直交する基準線(L)と先細り角の2等分線とのなす角度(β)を10°〜60°傾斜させて配設されたことを特徴とする請求項2に記載の袋。
【請求項4】前記ノズル部は、その先細り角の2等分線と30°〜80°の角度(γ)をなし、且つ前記対称縦断面に直交する切断面で前記先端部を切断するように設けた切断誘導部を有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の袋。
【請求項5】前記切断誘導部は、前記ノズル部の外縁端部の切欠きであることを特徴とする請求項4に記載の袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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