説明

被締結体の基礎への設置工法

【課題】 被締結体(ガイドウェイ側壁)に対して相対的に精度よくアンカーを設置でき、設置後の調整工事も円滑に行うことができる被締結体の基礎への設置工法を提供する。
【解決手段】 基礎への被締結体の設置工法において、被締結体の固定に必要な穴径に調節代3Aを加えた穴径を有する締結穴3を設けた被締結体2を基礎1へ予め仮固定し、前記締結穴3を介して基礎1へ締結ボルトの固定用穴4を形成し、その固定用穴4を用いて前記基礎1へ被締結体2を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被締結体の基礎への設置工法に係り、特に、磁気浮上方式の鉄道の被締結体(ガイドウェイ側壁)を基礎へ締結するボルトの周囲にほぼ均等に調整代を確保することができるガイドウェイ側壁の路盤への設置工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は従来の被締結体を基礎に配置する方法を示す模式図である。
【0003】
まず、図6(a)に示すように、基礎101にアンカーボルトを固定するための穴102を形成する。
【0004】
次に、図6(b)に示すように、その穴102にアンカーボルト103を植設する。
【0005】
次に、図6(c)に示すように、被締結体104を固定する。すなわち、植設されたアンカーボルト103を被締結体104に設けられている締結穴105に通し、ナット106で締めつけて、基礎101に被締結体104を固定する。
【0006】
図7はかかる従来の磁気浮上式鉄道のガイドウェイの例を示す模式図、図8は図7のA部拡大断面図である(下記特許文献1参照)。
【0007】
これらの図において、201はガイドウェイ、202は路盤、203はアンカーボルト、204はガイドウェイ側壁、205はガイドウェイ側壁の脚部の取付部、206は貫通穴、207は球体中子を有する偏芯スペーサ、211は浮き上がり防止板、212は厚めの座金、213,214はスプリングワッシャ、215はナット、221,221′は第1の偏芯貫通穴、222は球体中子、223は第2の偏芯貫通穴である。
【0008】
ここで、従来のガイドウェイ側壁の路盤への設置工法では、ガイドウェイ側壁204の脚部の取付部205の貫通穴206に、球体中子222を有する偏芯スペーサ207を介して、予め路盤202に植設されたアンカーボルト203を貫通させ固定することにより、路盤202に被締結体としてのガイドウェイ側壁204を固定するようにしている。
【特許文献1】特開2004−256055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した従来のガイドウェイ側壁の路盤への設置工法では、ガイドウェイ側壁を基礎へ締結するアンカーの周囲にほぼ均等に調整代を確保してすることは非常に困難であった。すなわち、上記したように、従来はガイドウェイ側壁を設置する前に、路盤の設計通りの位置にアンカーボルトを設置して(埋め込んで)おく必要がある。しかし、このアンカーボルトの設置時点で施工誤差が発生してしまう。なお、ここでは、単一のガイドウェイ側壁を複数個のアンカーボルトで締結することにする。
【0010】
次に、ガイドウェイ側壁を設計通りの位置に設置するが、ここでも施工誤差は発生する。その結果、ガイドウェイ側壁の締結穴内でのアンカーボルトの位置がまちまちになってしまうという問題があった。
【0011】
次に、従来のガイドウェイ側壁を路盤へ取り付ける他の方法について説明する。
【0012】
図9は従来のガイドウェイ側壁を路盤へ取り付ける方法の他の例を示す模式図、図10はそのガイドウェイ側壁の締結穴からみたアンカーボルトの位置を示す平面図である。ここでは、単一のガイドウェイ側壁を6箇所のアンカーボルトで締結する場合について説明する。
【0013】
これらの図に示すように、路盤301には上記したような方法で雌ネジ303が形成されたアンカー302が植設される。ガイドウェイ側壁304を設計位置に設置した後、座金308が装着された雄ネジ305が形成されたボルト306をガイドウェイ側壁304の締結穴305の上方から入れて、雌ネジ303が形成されたアンカー302に螺合させて、路盤301上にガイドウェイ側壁304を固定する。この場合も、植設されたアンカー302の設置誤差とガイドウェイ側壁304の設置誤差により、図10に示すように、ガイドウェイ側壁304に設けた締結穴305の中心とアンカー302の位置がずれてしまうという問題があった。
【0014】
特に、ガイドウェイ側壁304は、位置を調整する際に、図10に示すように、締結穴305内のアンカー302の位置がまちまちであると、ガイドウェイ側壁304の位置調整が困難になるといった問題があった。
【0015】
すなわち、本発明の課題は、要約すると、
(1)アンカー設置時点に誤差が発生する。
【0016】
(2)側壁の設置時点でも誤差が発生する。
【0017】
(3)上記の2つの誤差が競合し、締結穴内でのボルトの位置がまちまちになる。
【0018】
(4)その結果、設計で想定した通りに側壁の調整余裕が確保できない。つまり、側壁の調整方向と調整量が制約される。
【0019】
本発明は、上記状況に鑑みて、被締結体(ガイドウェイ側壁)を基礎へ締結するボルトの周囲にほぼ均等に調整代を確保することができ、設置後の調整工事も円滑に行うことができる被締結体の基礎への設置工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕基礎への被締結体の設置工法において、被締結体の固定に必要な穴径に調節代を加えた穴径を有する締結穴を設けた被締結体を基礎へ予め仮固定し、前記締結穴を介して基礎へ締結ボルトの固定用穴を形成し、前記締結ボルトの固定用穴を用いて、前記基礎へ被締結体を締結ボルトで固定することを特徴とする。
【0021】
〔2〕複数の締結ボルトで路盤に配置される被締結体の設置工法において、路盤に、被締結体の固定に必要な穴径に調整代を加えた穴径を有する締結穴が形成された被締結体を配置し、前記締結ボルトの締結穴を介して、前記路盤に所定の穴径の締結ボルトの固定用穴を前記締結穴の中心に合わせて形成し、前記締結ボルトの固定用穴に定着材を介して雌ネジが形成されたアンカーを前記締結穴の中心に合わせて固定し、前記被締結体の締結穴を介して前記雌ネジが形成されたアンカーに雄ネジを有する前記締結ボルトを螺合して、前記被締結体を前記路盤に締結することを特徴とする。
【0022】
〔3〕上記〔2〕記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記被締結体の締結穴と前記締結ボルトとの係合を行う球面スペーサを具備することを特徴とする。
【0023】
〔4〕被締結体の路盤への設置工法において、路盤に、被締結体の固定に必要な穴径に調整代を加えた穴径を有する締結穴が形成された被締結体を配置し、前記締結用アンカーボルトの締結穴を介して、前記路盤に所定の穴径の締結用アンカーボルトの固定用穴を形成し、前記締結用アンカーボルトの固定用穴に定着材を介して内部に雌ネジが形成されたアンカーを固定し、前記締結用アンカーボルトの締結穴を介して前記アンカーの内部の雌ネジに雄ネジが形成された座金が装着されたボルトで前記締結用アンカーボルトと締結し、前記被締結体を路盤に締結することを特徴とする。
【0024】
〔5〕上記〔4〕記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記締結用アンカーボルトの締結穴と前記締結用アンカーボルトとの係合を行う球面スペーサを具備することを特徴とする。
【0025】
〔6〕上記〔2〕から〔5〕の何れか一項記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記被締結体がガイドウェイ側壁であることを特徴とする。
【0026】
〔7〕上記〔2〕から〔6〕の何れか一項記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記路盤が磁気浮上方式の鉄道を含む鉄道の軌道であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
【0028】
(1)被締結体(ガイドウェイ側壁)を締結する締結ボルトを被締結体の締結穴に対して高い精度で正確に配置することができる。
【0029】
(2)被締結体(ガイドウェイ側壁)の設置後、被締結体(ガイドウェイ側壁)の位置調整を行う場合には、所定の調整量が確保できる。
【0030】
(3)ガイドウェイ側壁設置後の調整工事を円滑に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
基礎への被締結体の設置工法において、被締結体の固定に必要な穴径に調節代を加えた穴径を有する締結穴を設けた被締結体を基礎へ予め仮固定し、前記締結穴を介して基礎へ締結ボルトの固定用穴を形成し、前記締結ボルトの固定用穴を用いて、前記基礎へ被締結体を締結ボルトで固定する。よって、被締結体(ガイドウェイ側壁)を基礎へ締結するボルトの周囲にほぼ均等に調整代を確保することができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0033】
図1は本発明の第1実施例を示す基礎への被締結体の設置工法を示す模式図である。
【0034】
なお、本発明では複数の締結ボルトで基礎に配置される被締結体を対象とすることを前提とする。
【0035】
まず、図1(a)に示すように、基礎1に、被締結体の固定に必要な穴径に調整代3Aを加えた大きめの穴径を有する締結穴3が形成された被締結体2を配置する。この被締結体2は、動かないように仮固定(配置)しておき、以降の工程においてもそのまま据え置くようにする。
【0036】
次に、図1(b)に示すように、被締結体2の締結ボルトの締結穴3を介して、削孔機(図示なし)を用いて、基礎1に所定の穴径の締結ボルトの固定用穴4を形成する。
【0037】
次に、図1(c)に示すように、締結ボルトの固定用穴4に定着材5を注入する。そこに、被締結体2の厚さ+ナット厚以上の突出長さを有する全ネジボルト6を建て込み、定着材5により接着させる。
【0038】
次に、図1(d)に示すように、被締結体2から突出した部分の全ネジボルト6をワッシャ7とナット8で締結する。
【0039】
図2〜図5は本発明の第2実施例を示す路盤への被締結体の設置工法を示す模式図である。ここでは、複数の締結ボルトで路盤に配置される磁気浮上方式の鉄道のガイドウェイ側壁を被締結体とした設置工法について説明する。
【0040】
まず、図2に示すように、路盤11上に、締結ボルトを固定する穴径に調整代を加えた大きめの穴径を有する締結穴14が形成された磁気浮上式鉄道のガイドウェイ側壁12を配置する。ここでは、そのガイドウェイ側壁12の、地上コイル(図示なし)が配置されるコイル面側Aの脚部の取付部13′と、地上コイル(図示なし)とは反対側の背面側Bの脚部の取付部13″にそれぞれ締結ボルトの締結穴14を形成する。因みに、ガイドウェイ側壁12の締結穴14の直径は、例えば120mmである。
【0041】
次に、図3に示すように、ガイドウェイ側壁12の締結穴14を介して、削孔機(図示なし)を用いて、路盤11に所定の穴径(例えば、75mm)の締結ボルトの固定用穴15を形成する。
【0042】
次に、図4に示すように、締結ボルトの固定用穴15に定着材16を注入し、そこに、ガイドウェイ側壁12の締結穴14を介して、雌ネジ18が形成された雌ネジ加工のアンカー17(例えば、外径は64mm、内径は42mm)を固定する。
【0043】
次いで、図5に示すように、ガイドウェイ側壁12の締結穴14を介して内部に雌ネジ18が形成されたアンカー17に、雄ネジ20を有する締結ボルト19(例えば、直径は42mm)を螺合して、ガイドウェイ側壁12を路盤11に締結する。なお、19Aは締結ボルト19のヘッド、21は下部ブロック(例えば、高さは55mm)、22は上部ブロック(例えば、高さが55mm)、23,23′は第1の偏芯貫通穴、24は浮上がり防止板、25は厚めの座金、26は平座金、27はバネ座金、28は特殊球面座金、29は偏芯スペーサ(例えば、直径は80mm)である。かかる構造は、上記した特許文献1に開示されたものと同様の機能を有しており、がたつきがない固定を行うことができる。
【0044】
なお、上記実施例では、締結ボルト19を、内部に雌ネジ18が形成されたアンカー17へ螺合させるようにしたが、これに代えて、ガイドウェイ側壁12の締結穴14を基準にして形成された締結ボルトの固定用穴15に、図6〜図8に示すように、アンカーボルトを植設して、そのアンカーボルトにナットを螺合させることにより、ガイドウェイ側壁12を路盤11に締結するようにしてもよい。
【0045】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の被締結体の基礎への設置工法は、磁気浮上方式の鉄道のガイドウェイ側壁の構築方法として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施例を示す基礎への被締結体の設置工法を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施例を示す路盤への被締結体の設置工法(その1)を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す路盤への被締結体の設置工法(その2)を示す模式図である。
【図4】本発明の第2実施例を示す路盤への被締結体の設置工法(その3)を示す模式図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す路盤への被締結体の設置工法(その4)を示す模式図である。
【図6】従来の被締結体を基礎に配置する方法を示す模式図である。
【図7】従来の磁気浮上式鉄道のガイドウェイの例を示す模式図である。
【図8】図7のA部拡大断面図である。
【図9】従来のコンクリートブロックを路盤へ取り付ける方法の他の例を示す模式図である。
【図10】図9のコンクリートブロックの締結穴からみたアンカーボルトの位置を示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基礎
2 被締結体
3,14 被締結体の締結穴(調整代を加えた大きめの穴径)
3A 調整代
4,15 締結ボルトの固定用穴
5,16 定着材
6 全ネジボルト
7 ワッシャ
8 ナット
11 路盤
12 ガイドウェイ側壁
13′,13″ ガイドウェイ側壁の脚部の取付部
17 雌ネジ加工のアンカー
18 雌ネジ
19 締結ボルト
19A 締結ボルトのヘッド
20 雄ネジ
21 下部ブロック
22 上部ブロック
23,23′ 第1の偏芯貫通穴
24 浮上がり防止板
25 厚めの座金
26 平座金
27 バネ座金
28 特殊球面座金
29 偏芯スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎への被締結体の設置工法において、
(a)被締結体の固定に必要な穴径に調節代を加えた穴径を有する締結穴を設けた被締結体を基礎へ予め仮固定し、
(b)前記締結穴を介して基礎へ締結ボルトの固定用穴を形成し、
(c)前記締結ボルトの固定用穴を用いて、前記基礎へ被締結体を締結ボルトで固定することを特徴とする被締結体の基礎への設置工法。
【請求項2】
複数の締結ボルトで路盤に配置される被締結体の設置工法において、
(a)路盤に、被締結体の固定に必要な穴径に調整代を加えた穴径を有する締結穴が形成された被締結体を配置し、
(b)前記締結ボルトの締結穴を介して、前記路盤に所定の穴径の締結ボルトの固定用穴を前記締結穴の中心に合わせて形成し、
(c)前記締結ボルトの固定用穴に定着材を介して雌ネジが形成されたアンカーを前記締結穴の中心に合わせて固定し、
(d)前記被締結体の締結穴を介して前記雌ネジが形成されたアンカーに雄ネジを有する前記締結ボルトを螺合して、前記被締結体を前記路盤に締結することを特徴とする被締結体の路盤への設置工法。
【請求項3】
請求項2記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記被締結体の締結穴と前記締結ボルトとの係合を行う球面スペーサを具備することを特徴とする被締結体の路盤への設置工法。
【請求項4】
複数の締結用アンカーボルトで路盤に配置される被締結体の設置工法において、
(a)路盤に、被締結体の固定に必要な穴径に調整代を加えた穴径を有する締結穴が形成された被締結体を配置し、
(b)前記締結用アンカーボルトの締結穴を介して、前記路盤に所定の穴径の締結用アンカーボルトの固定用穴を形成し、
(c)前記締結用アンカーボルトの固定用穴に定着材を介して内部に雌ネジが形成されたアンカーを固定し、
(d)前記締結用アンカーボルトの締結穴を介して前記アンカーの内部の雌ネジに雄ネジが形成された座金が装着されたボルトで前記締結用アンカーボルトと締結し、前記被締結体を路盤に締結することを特徴とする被締結体の路盤への設置工法。
【請求項5】
請求項4記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記締結用アンカーボルトの締結穴と前記締結用アンカーボルトとの係合を行う球面スペーサを具備することを特徴とする被締結体の路盤への設置工法。
【請求項6】
請求項2から5の何れか一項記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記被締結体がガイドウェイ側壁であることを特徴とする被締結体の路盤への設置工法。
【請求項7】
請求項2から6の何れか一項記載の被締結体の路盤への設置工法であって、前記路盤が磁気浮上方式の鉄道を含む鉄道の軌道であることを特徴とする被締結体の路盤への設置工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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