説明

被覆装置

【課題】容易に被覆できる被覆装置の提供。
【解決手段】被覆ネット100は、ネット部101、チューブ挿入部103、及びチューブ105を有している。チューブ105の内部に水を溜めることによって、チューブ105の内部の水がおもりとなり、被覆ネット100を固定することができる。つまり、ネット部101をピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易にネット部101を固定することができる。また、ネット部101を容易に左右均等に引っ張ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を被覆する被覆装置に関し、特に、植物を容易に被覆できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
茶葉を生産するにあたって、茶木の成長段階の所定期間、茶木を被覆資材で被覆することがある。茶木を被覆することによって、茶葉による光合成を適度に抑制し、うまみ成分であるアミノ酸がカテキン、ビタミン類等の苦味渋味成分に変化することを抑制する。茶木を被覆する方法の一つに、茶木に、直接、被覆資材を固定する「直がけ」がある。
【0003】
従来の被覆装置である茶木の直がけに使用する被覆資材について図9を用いて説明する。図9Aに示すように、被覆資材1は、茶木を被覆するためのシート3及び被覆部3を茶木に固定するためのピンチ5を有している。なお、ピンチ5は、慣例として、シート3の左右の端部に約2m間隔で取り付けられる。茶木を被覆するにあたっては、シート3を茶木の天面をかぶせて、ピンチ5を枝条に挟んで、シート3を固定する。
【0004】
シート3を被覆する際に、張力が強いと新芽がシート3に押さえつけられるため、シート3自体の熱による葉焼けなどが懸念される。このため、図9Bに示すように、張力はできるだけ弱いほうがよい。しかし、風の強い地域では、シート3で新芽が擦られることによる傷害が発生する。よって、このような地域では、図9Cに示すように、張力を強くしなければならない。
【0005】
なお、ピンチ5を枝条に固定する際に、固定位置を天面に近くするとシート3の張力は弱まり、天面から遠くするとシート3の張力は強くなる。また、より張力を上げるためには、シート3にピンチ5を配置する間隔を狭くする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社団法人農山漁村文化協会編、「茶大百科 2 栽培の基礎/栽培技術/生産者事例」、第1刷、社団法人農山漁村文化協会、2008年3月25日、p.331
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の被覆部材1には、以下に示すような改善すべき点がある。被覆部材1のシート3にはピンチ5が2m間隔で取り付けられている。したがって、一つの被覆部材1を茶木に固定しようとすると、複数のピンチ5を取り付ける必要がある。通常、被覆部材1の長さは50m程度である。さらに、数十〜数百の茶木の畝に対して、被覆部材1を固定しなければならない。したがって、茶木にピンチ5を取り付けに必要とする作業量が非常に多い、という改善すべき点がある。
【0008】
また、ピンチ5を固定する位置を調整することによって、シート3を展張する力を調整する必要がある。しかし、複数のピンチ5が存在する中、各ピンチ5で展張する力を一定にすることは非常に難しい、という改善すべき点がある。
【0009】
そこで、本発明は、容易に被覆できる被覆装置を提供することを目的とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0011】
本発明に係る被覆装置は、物体を被覆する被覆部であって、平面形状を有する被覆部、前記被覆部の周縁に沿って設けられ、所定の重さを有する被覆状態維持部であって、前記被覆部の周縁に設けられるもの、を有する。
【0012】
これにより、所定の重みにより被覆部を固定することができる。よって、被覆部をピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易に被覆部を固定することができる。
【0013】
本発明に係る被覆装置では、前記被覆状態維持部は、前記周縁のうち、対向して位置する2つの側縁に沿って設けられていること、を特徴とする。これにより、被覆部を容易に引っ張ることができる。
【0014】
本発明に係る被覆装置では、 前記被覆状態維持部は、所定の重さを有する紐状物体を有すること、を特徴とする。これにより、容易に紐状物体を被覆状態維持部に配置することができる。
【0015】
本発明に係る被覆装置では、前記紐状物体は、金属を用いて生成されること、を特徴とする。これにより、紐状物体を容易に生成することができる。また、比重の重い金属を用いることによって、紐状物体の大きさを小さくすることができる。
【0016】
本発明に係る被覆装置では、 前記紐状物体は、屈曲性を有すること、を特徴とする。これにより、紐状物体を配置したとしても、被覆部の屈曲性、柔軟性を維持することができる。よって、被覆装置をコンパクトに収納することができる。
【0017】
本発明に係る被覆装置では、前記紐状物体は、複数の塊状の金属が連続して直線状に配置されているものであること、を特徴とする。これにより、所定の重量を有し、屈曲性を有する紐状物体を容易に生成することができる。
【0018】
本発明に係る被覆装置では、前記被覆状態維持部は、前記側縁に沿って配置される複数の前記紐状物体を有すること、を特徴とする。これにより、側縁を引っ張る重さを容易に調整することができる。
【0019】
本発明に係る被覆装置では、前記被覆状態維持部は、複数の前記紐状物体が一体として構成された統合紐状物体を有すること、を特徴とする。これにより、複数の紐状物体を配置する場合に比して、作業量を減少できる。
【0020】
本発明に係る被覆装置では、前記被覆は、織物であり、前記紐状物体は、前記側縁に沿って配置される織物の縦糸又は横糸として、前記織物に配置されること、を特徴とする。これにより、被覆状態維持部を織物に容易に配置することができる。
【0021】
本発明に係る被覆装置は、前記物体を被覆する被覆部であって、平面形状を有する被覆部、内部に液体を収納する液体収納部、を有する。
【0022】
これにより、液体の重みにより被覆部を固定することができる。よって、被覆部をピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易に被覆部を固定することができる。
【0023】
本発明に係る被覆装置では、前記液体収納部は、前記被覆部の周縁に設けられていること、を特徴とする。これにより、被覆部を容易に引っ張ることができる。
【0024】
本発明に係る被覆装置では、前記液体収納部は、さらに、前記周縁として、対向して位置する2つの側縁に沿って設けられていること、を特徴とする。これにより、被覆部を左右から引っ張ることができる。よって、各液体収納部に同じ重さの液体を収納すれば、均等な力で左右から引っ張ることができる。
【0025】
本発明に係る被覆装置では、前記液体収納部は、さらに、前記液体が流れる液体管路部、前記液体管路を保持する管路保持部、を有すること、を特徴とする。これにより、液体管路に液体を流通させるだけで、被覆部を固定するができる。よって、被覆部の固定に要する作業量を激減させることができる。
【0026】
本発明に係る被覆装置では、前記管路保持部は、前記被覆部の端部を折り返して環状にすることによって形成されること、を特徴とする。これにより、容易に管路保持部を形成することができる。
【0027】
本発明に係る被覆装置では、前記管路保持部は、前記被覆部の側縁の全面に形成されていること、を特徴とする。これにより、液体管路部の長さのうち、被覆部の端部の長さだけ、被覆部によって被覆される。よって、被覆部として遮光性を有する素材を使用すれば、液体管路部を紫外線等の劣化原因から保護することができる。よって、液体管路部の使用可能期間を容易に延長することができる。
【0028】
本発明に係る被覆装置では、前記液体収納部は、さらに、前記液体を注入するための液体注入部、前記液体を排出するための液体排出部、を有すること、を特徴とする。これにより、必要に応じて、液体を容易に注入、排出することができる。したがって、収納の際等、液体収納部の内部に液体が必要でない場合には液体を排出することができるので、収納時の重量を減らすことができる。
【0029】
本発明に係る被覆装置では、前記液体収納部は、さらに、前記液体を注入する際に、前記液体管路内に存在する気体排出するための気体排出部、を有すること、を特徴とする。これにより、容易に液体収納部の全体に容易に液体を満たすことができる。
【0030】
本発明に係る被覆装置では、前記物体としてお茶の木を被覆すること、を特徴とする。これにより、茶木の被覆に必要とされる作業量、作業時間を激減させることができる。
【0031】
ここで、請求項における構成要素と実施例の構成要素との対応関係を示す。被覆部はネット部101に、液体収納部はチューブ挿入部103及びチューブ105に、それぞれ対応する。液体管路部はチューブ105に、管路保持部はチューブ挿入部103に、それぞれ対応する。液体注入部は端部T1L、T1Rに、液体排出部は端部T1L、T1R、T3L、T3Rに、気体排出部は端部T3L、T3Rに、それぞれ対応する。
【0032】
また、被覆部はネット部201に、被覆状態維持部は被覆状態維持部A21、A23、チューブ挿入部103及びチューブ105に、統合紐状物体は統合重量性横糸303に、それぞれ対応する。

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る被覆装置の実施例1における実現形態である被覆ネット100を示す図である。
【図2】被覆ネット100の使用方法を示す図である。
【図3】被覆ネット100の使用方法を示す図である。
【図4】被覆ネット100の使用方法を示す図である。
【図5】被覆ネット100の使用方法を示す図である。
【図6】被覆装置のその他の実施例を示す図である。
【図7】被覆装置のその他の実施例を示す図である。
【図8】被覆装置のその他の実施例を示す図である。
【図9】従来の被覆装置を示す図である。
【図10】本発明に係る被覆装置の実施例2における実現形態である被覆ネット200を示す図である。
【図11】被覆ネット200の一部の拡大図である。
【図12】重量性横糸203の一部断面図である。
【図13】被覆ネット200の使用方法を示す図である。
【図14】被覆装置のその他の実施例を示す図である。
【図15】被覆装置のその他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0035】
第1 構成
本発明に係る被服部材の一実施例である茶木を被覆する被覆ネット100について図1を用いて説明する。被覆ネット100は、茶葉による光合成を適度に抑制し、うまみ成分であるアミノ酸がカテキン、ビタミン類等の苦味渋味成分に変化することを抑制するために使用される。茶葉による光合成を適度に抑制することによって、うま味と苦味渋味とのバランスがとれた茶葉を作ることが可能となる。
【0036】
被覆ネット100は、ネット部101、チューブ挿入部103、及びチューブ105を有している。
【0037】
ネット部101は、遮光ネットにより構成されている。適切な透過率を有する遮光ネットを使用することによって、適切に茶葉の光合成を抑制することができる。また、遮光ネットを使用することによって、防霜対策、防風対策、防寒対策をも施すことができる。なお、遮光ネットについては、一般に使用されているものを使用すればよい。
【0038】
チューブ挿入部103は、チューブ挿入部103L及びチューブ挿入部103Rによって構成されている。チューブ挿入部103L、103Rは、ネット部101において対抗して位置する側縁S1、S3に、それぞれ形成されている。チューブ挿入部103L、103Rをネット部101の両側縁S1、S3にそれぞれ形成することによって、チューブ挿入部103内に配置するチューブ105に水を満たすことによって、左右から均等な力でネット部101を引っ張ることができる。したがって、茶木を被覆した被覆ネット100が所定の位置からずれることを防止することができる。
【0039】
また、チューブ挿入部103L、103Rは、ネット部101の側縁S1、S3の全体にわたって形成されている。したがって、チューブ挿入部103L、103Rにそれぞれチューブ105L、105R(後述)を挿入した場合、チューブ105L、105Rは、側縁S1、S3の全体にわたって被覆される。これにより、太陽光等、劣化の原因要素からチューブ105L、150Rを保護することができる。
【0040】
なお、被覆ネット100では、チューブ挿入部103L、103Rは、それぞれ遮光ネットの長軸方向の端部を中心軸方向に折り返し、内側の所定の位置で遮光ネットと接合することによって、形成される。したがって、遮光ネットの長軸方向の端部と内側の遮光ネットとの接合部分によって側縁S1、S3が形成される。
【0041】
このとき、ネット部101の側縁S1から側縁S3までの距離Wは、茶木の天面の幅WTより左右に所定の長さLだけ長い長さとしている。このように、距離Wを茶木の天面の幅WTより長くすることによって、ネット部101を容易に左右に引っ張ることができる。
【0042】
また、遮光ネットの長軸方向の端部を中心軸方向に折り返し、内側の遮光ネットと接合することから、チューブ挿入部103L、103Rは、環状構造を有することになる。
【0043】
チューブ105は、チューブ105L、チューブ105Rにより構成されている。チューブ5L、チューブ105Rは、内部に水を留保しないときは平面状となり、内部に水を貯留するときには断面円形状の環状構造を有している。
【0044】
また、チューブ105Lは、開放されている左右両端部T1L、T3Lを有している。端部T1L、T3Lは、ともに所定の留め具によって水の流通を止めることができる。チューブ105Lの内部に水を溜めることによって、チューブ105Lの内部の水がおもりとなり、被覆ネット100を固定することができる。つまり、ネット部101をピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易にネット部101を固定することができる。また、ネット部101を容易に左右均等に引っ張ることができる。
【0045】
なお、チューブ105Lの内径については、被覆ネット100を所定の位置に保持するために必要となる重量に基づき、適切に決定すればよい。以上は、チューブ105Rについても同様である。
【0046】
チューブ105L、105Rは、内部に水が存在するときには膨らんで環状となる一方、内部に水が存在しないときには平面状になる。このため、収納の際に、被覆ネット100を環状に巻き取って収納する場合であっても、チューブ105L、105Rがかさばらないので、被覆ネット100をコンパクトに収納することができる。
【0047】
第2 使用方法
つぎに、被覆ネット100の使用方法について図2〜図5を用いて説明する。
【0048】
図2に示すように、被覆ネット100を使用しようとする使用者は、茶木の天面上に環状にまとめられた被覆ネット100を配置する。
【0049】
図3に示すように、使用者は、被覆ネット100を茶木に沿って矢印a1方向へ広げる。
【0050】
図4に示すように、使用者は、被覆ネット100を広げ終えると、被覆ネット100の左右の側縁S1、S3に沿って配置されているチューブ105L、105Rのそれぞれの端部T1L、T1Rに水を注入するためのホースをセットする。そして、チューブ105L、105Rへの水の注入を開始する。
【0051】
注入された水がチューブ105L、105Rのそれぞれの端部T3L、T3Rから流れ出てきたところで、図5に示すように、端部T3L、T3Rを所定の留め具107で封止する。このように、チューブ105L、105Rのそれぞれの端部T3L、T3Rから水が流れ出てきたところで、端部T3L、T3Rを封止することによって、容易にチューブ105L、105Rの全体に容易に液体を満たすことができる。
【0052】
留め具107は、チューブ105L、105Rを左右から挟み込み、チューブ105L、105Rの断面を圧縮し、断面の圧縮状態を維持する。これにより、チューブ105L、105R内の水の流れを遮断し、端部T3L、T3Rからの水の流出を防止する。
【0053】
さらに、水の注入を続け、使用者は、端部T1L、T1Rから水があふれ出る等、所定量の水がチューブ105内に注入されたと判断すると、水の注入を中止し、端部T1L、T1Rを所定の留め具107を用いて封止する。これにより、チューブ105内に水を溜めることができる。また、左右から均等にネット部101を引っ張ることができる。
【0054】
このように、被覆ネット100は、簡単な作業で、茶木を左右均等な力で被覆することができる。よって、少ない人員で被覆作業を行うことができる。したがって、
【0055】
また、被覆ネット100を収納しようとする使用者は、チューブ105L、105Rのそれぞれの端部T1L、T3L、T1R、T3Rを封止している留め具107を取り外す。これにより、チューブ105L、105R内の水を排出する。
【0056】
チューブ105L、105Rからある程度水が流れ出たところで、被覆ネット100を環状に巻き取っていく。これにより、容易に被覆ネット100を回収することができるとともに、コンパクトな状態で被覆ネットを回収することができる。

【実施例2】
【0057】
前述の実施例1における被覆ネット100は、ネット部101の両側縁S1、S3にそれぞれ形成されたチューブ挿入部103L、103Rにチューブ105を挿入し、チューブ105の内部に水を溜めることによって、チューブ105の内部の水をおもりとすることによって固定するものであった。本実施例に係る被覆ネット200は、水に変えて金属をおもりとして用いるものである。
【0058】
本発明に係る被服部材の一実施例である茶木を被覆する被覆ネット200について図10を用いて説明する。なお、被覆ネット200を茶木に使用する目的については、被覆ネット100と同様、うまみ成分が苦味渋味成分へ変化することを抑制することにある。
【0059】
被覆ネット200は、ネット部201及び重量性横糸203を有している。ネット部201は、縦糸、横糸が織られた織物によって構成されている。また、ネット部201は、遮光ネットにより構成されている。適切な透過率を有する遮光ネットを使用することによって、適切に茶葉の光合成を抑制することができる。さらに、遮光ネットを使用することによって、防霜対策、防風対策、防寒対策をも施すことができる。なお、遮光ネットについては、一般に使用されているものを使用すればよい。なお、遮光ネットにおける透過率は、縦糸、横糸の配置及びその量によって決定すればよい。
【0060】
ネット部201は、対抗して位置する側縁S21、S23に沿って形成される被覆状態維持部A21、A23を有している。ネット部201における被覆状態維持部A21の一部の拡大図を図11に示す。被覆状態維持部A21には、側縁S21に沿って3本の重量性横糸203が平行に配置されている。重量性横糸203は、ネット部201を形成する横糸の一部として配置される。したがって、重量性横糸203をネット部201に配置するにあたっては、通常の横糸に換えて重量性横糸203を用いるようにすればよい。
【0061】
このように、通常の横糸に換えて重量性横糸203を用いることによって、被覆ネット200を製造するにあたって、新しい製造装置を容易にする必要がない。よって、被覆ネット200の製造コストを低く抑えることができる。また、製造方法を変更する必要がないので、容易に被覆ネット200を製造することができる。
【0062】
重量性横糸203の内部構造を図12に示す。重量性横糸203は、金属チェーン203a及び被覆部203bを有している。金属チェーン203aは、繊維状の紐状物R203に、複数の金属の塊状物B203が連続して直線状に配置されている。繊維状の紐状物R203に塊状物B203として形成された金属を連続して配置するにあたっては、例えば、ボールチェーンの製造方法を用いればよい。このように、紐状物にR203に塊状物B203を配置することによって、重量性横糸203の屈曲性を担保することができる。したがって、ネット部201に重量性横糸203を配置しても、被覆ネット200の使用・収納の際に必要となる柔軟性を維持することができる。
【0063】
被覆部203bは、金属チェーン203aの周囲を被覆する。このように、金属チェーン203aを被覆することによって、摩擦抵抗を軽減することによって、容易に重量性横糸203aを配置することができる。
【0064】
組紐の技術を用いて金属チェーン203aを被覆するように所定の糸を組み上げたもの被覆部203bとして用いている。これにより、重量性横糸203を配置する際の抵抗を低減することが可能となる。
【0065】
このように、重量性横糸203を側縁S21、S23に沿って配置することによって、使用の際にその重みによりネット部201を固定することができる。よって、被覆ネットピンチ等によって固定する場合に比して、作業量が激減し、容易に被覆部を固定することができる。また、屈曲性、柔軟性を有する重量性横糸203を配置することによって、被覆ネット200を収納する際に、従来の被覆ネットと同様に、ロール状に巻き取ることが可能となる。よって、従来の被覆ネットと比しても、被覆ネット200は、コンパクトに収納できるという収納性を損なうことがない。
【0066】
被覆ネット200の使用方法については、実施例1における被覆ネット100と同様である。図13に、被覆ネット200を茶木に沿って矢印a1方向へ広げている状態を示す。
【0067】
[その他の実施例]
(1)チューブ105内の水 : 前述の実施例1においては、チューブ105内に水を満たすとしたが、チューブ105内を流通するものであれば例示のものに限定されない。例えば、水以外の液体であってもよい。また、液体以外の流通性のある物質であってもよい。
【0068】
(2)遮光ネット : 前述の実施例1においては、被覆部101を遮光ネットにより構成するとしたが、遮光以外の機能を有するものであってもよい。
【0069】
(3)チューブ挿入部103 : 前述の実施例1においては、チューブ挿入部103を側縁S1、S3の全体にわたって形成するとしたが、チューブ105を保持できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、図6に示すように、所定の間隔をおいて環状のチューブ挿入部113を複数設けるようにしてもよい。
【0070】
また、前述の実施例1においては、チューブ挿入部103は、ネット部101を構成する遮光ネットの端部を中心軸方向に折り返し、遮光ネット自身と接合することによって形成するとしたが、ネット部101の側縁に形成されるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、遮光ネットとは異なる材質によってチューブ挿入部103を形成し、両者を接合するようにしてもよい。この場合、図7に示すように、チューブ挿入部123を樹脂等により形成し、所定の間隔でネット部101の側縁S1、S3に接合し、配置するようにしてもよい。
【0071】
さらに、チューブ挿入部103を側縁S1、S3に沿って形成するとしたが、ネット部101の周縁全体に沿って形成するようにしてもよい。
【0072】
(4)チューブ105 : 前述の実施例1においては、チューブ105は、内部に水を貯留している状態と貯留していない状態で形状が異なるものとしたが、樹脂パイプのように、常に固定した断面形状を有するもの、いわゆる水道ホースのように通常は固定した断面形状を有し、外部から圧力があれば断面形状がり変形するもの等としてもよい。
【0073】
また、前述の実施例1においては、チューブ105の内部に水を貯留するものとしたが、内部に液体を収納できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、図8に示すように、遮光ネットの端部S11から、端部S11を矢印a8方向へ折り返し遮光ネット自身に接合した際に側縁となる側縁S1までの間の領域A1に防水加工を施し、端部S11と遮光ネット自身とを圧着することによって接合して液体収納部を形成する等、チューブ105を用いずに液体収納部を形成するようにしてもよい。
【0074】
(5)端部T1L、T1R、T3L、T3R : 前述の実施例1では、端部T1L、T1Rから水を注入し、端部T1L、T1R、T3L、T3Rから排出するとしたが、いずれか一方の端部からのみ注入し、他方の端部からのみ排出するようにしてもよい。
【0075】
また、端部T3L、T3Rから、チューブ105の内部に存在する気体を排出するとしたが、端部T1L、T1R、T3L、T3Rとはことなる位置に別途、気体排出弁等の気体排出部を設けるようにしてもよい。
【0076】
(6)留め具107 : 前述の実施例1では、留め具107は、チューブ105L、105Rを左右から挟み込み、チューブ105L、105Rの断面を圧縮し、断面の圧縮状態を維持する留め具10を用いて、チューブ105の内部に水を封止することとしたが、チューブ105の内部に水を封止できるものであれば、例示のものに限定されない。また、留め具107等の道具を用いずとも、チューブ105を所定の位置で結ぶ等によって水を封止するようにしてもよい。
【0077】
(7)被覆ネット100の使用対象 : 前述の実施例1では、被覆ネット100を茶木に使用するとしたが、被覆が必要なものであれば例示のものに限定されない。紫外線、ホコリ等からの保護が必要なもの、例えば、土木工事に使用する資材、工場における機械部品等であってもよい。
【0078】
(8)重量性横糸203の配置数 : 前述の実施例2においては、ネット部201における被覆状態維持部A21の側縁S21に沿って3本の重量性横糸203を配置するとしたが、1本、2本、又は4本以上の重量性横糸203を配置するようにしてもよい。重量性横糸203の数は、茶木が配置されている環境における風の強さ等を勘案し、適当に決めればよい。
【0079】
また、前述の実施例2においては、3本の重量性横糸203を平行に配置するとしたが、例示のものに限定されない。例えば、図14に示すように、3本の重量性横糸203を一つにまとめ、3本まとめて被覆部材によって被覆した統合重量性横糸303を用いるようにしてもよい。この場合、3本の重量性横糸203を一つにまとめるにあたっては、例えば、3本の重量性横糸203を包含する被覆部303bを用いる。また、所定の位置にバンド等を用いて、3本の重量性横糸203を一つにまとめるようにしてもよい。
【0080】
さらに、図15に示すように、1本の統合重量性横糸303を側縁S21、S23のそれぞれ沿って配置するようにすればよい。さらに、複数の統合重量性横糸303を側縁S21、S23のそれぞれ沿って配置するようにしてもよい。
【0081】
(9)重量性横糸203の配置位置 : 前述の実施例2においては、ネット部201では、重量性横糸203を側縁S21、S23全体に沿って配置したが、各側縁S21、S23の一部に配置するようにしてもよい。また、各側縁S21、S23の一部に断続的に、複数配置するようにしてもよい。
【0082】
(10)ネット部201 : 前述の実施例1においては、ネット部201は織物からなるとしたが、不織布等、織物でないものであってもよい。この場合、重量性横糸203を配置するには、例えば接着剤を用いて側縁S21、S23に沿って固定するようにすればよい。また、2枚の不織布等によって重量性横糸203を挟み込むようにして、重量性横糸203を所定の位置に固定するようにしてもよい。
【0083】
(11)重量性横糸203の配置方法 : 前述の実施例2においては、重量性横糸203を織物の横糸として配置するとしたが、縦糸として配置するようにしてもよい。
【0084】
(12)重量性横糸203の構成 : 前述の実施例2においては、複数の塊状の金属を連続的に直線状に配置することによって重量性横糸203を生成するとしたが、所定の重量を有し、屈曲性を有するものであれば例示のものに限定されない。例えば、屈曲性を有するチューブに砂や金属粉を充填することによって、重量性横糸203を生成するようにしてもよい。

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る被覆装置は、例えば、茶木を被覆する被覆ネットとして用いることができる。

【符号の説明】
【0086】
100・・・・・被覆ネット
101・・・・・ネット部
103・・・・・チューブ挿入部
105・・・・・チューブ
200・・・・・被覆ネット
201・・・・・ネット部
203・・・・・重量性横糸
303・・・・・統合重量性横糸





【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を被覆する被覆部であって、平面形状を有する被覆部、
前記被覆部の周縁に沿って設けられ、所定の重さを有する被覆状態維持部であって、前記被覆部の周縁に設けられるもの、
を有する被覆装置。
【請求項2】
請求項1に係る被覆装置において、
前記被覆状態維持部は、
前記周縁のうち、対向して位置する2つの側縁に沿って設けられていること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項3】
請求項2に係る被覆装置において、
前記被覆状態維持部は、
所定の重さを有する紐状物体を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項4】
請求項3に係る被覆装置において、
前記紐状物体は、
金属を用いて生成されること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項5】
請求項4に係る被覆装置において、
前記紐状物体は、
屈曲性を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項6】
請求項5に係る被覆装置において、
前記紐状物体は、
複数の塊状の金属が連続して直線状に配置されているものであること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項7】
請求項3〜請求項6に係る被覆装置のいずれかにおいて、
前記被覆状態維持部は、
前記側縁に沿って配置される複数の前記紐状物体を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項8】
請求項7に係る被覆装置において、
前記被覆状態維持部は、
複数の前記紐状物体が一体として構成された統合紐状物体を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項9】
請求項3〜請求項8に係る被覆装置のいずれかにおいて、
前記被覆部は、
織物であり、
前記紐状物体は、
前記側縁に沿って配置される織物の縦糸又は横糸として、前記織物に配置されること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項10】
請求項1に係る被覆装置において、
前記状態維持部は、
内部に液体を収納する液体収納部、
を有すること、
を特徴とする被覆装置
【請求項11】
請求項10に係る被覆装置において、
前記液体収納部は、
前記被覆部の周縁に設けられていること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項12】
請求項11に係る被覆装置において、
前記液体収納部は、さらに、
前記周縁として、対向して位置する2つの側縁に沿って設けられていること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項13】
請求項9〜請求項12に係る被覆装置のいずれかにおいて、
前記液体収納部は、さらに、
前記液体が流れる液体管路部、
前記液体管路を保持する管路保持部、
を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項14】
請求項13に係る被覆装置において、
前記管路保持部は、
前記被覆部の端部を折り返して環状にすることによって形成されること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項15】
請求項14に係る被覆装置において、
前記管路保持部は、
前記被覆部の側縁の全面に形成されていること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項16】
請求項9〜請求項15に係る被覆装置のいずれかにおいて、
前記液体収納部は、さらに、
前記液体を注入するための液体注入部、
前記液体を排出するための液体排出部、
を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項17】
請求項16に係る被覆装置において、
前記液体収納部は、さらに、
前記液体を注入する際に、前記液体管路内に存在する気体を排出するための気体排出部、
を有すること、
を特徴とする被覆装置。
【請求項18】
請求項1〜請求項17に係る被覆装置のいずれかにおいて、
前記物体としてお茶の木を被覆すること、
を特徴とする被覆装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−223989(P2011−223989A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57464(P2011−57464)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(000185178)小泉製麻株式会社 (3)
【出願人】(591155242)鹿児島県 (56)
【Fターム(参考)】