説明

被転写体に模様を転写する転写方法とこの方法に使用する転写用シート

【課題】立体形状の被転写体の表面に広い面積で密着させて、綺麗に模様を転写する。優れた耐久性を実現しながら、模様を綺麗に転写する。
【解決手段】転写方法は、被転写体1の表面に転写用シート2を密着させて、転写用シート2のインク層24を被転写体1に転写する。転写方法は、転写用シート2として、破断時伸度を30%以上として弾性回復率を10%以下とするウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に、伸縮できる離型層22を介してインク層24を設けると共に、インク層24を、微細な無数の凸部24Aを設けて凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けてなる伸縮インク層とする転写用シート2を使用する。転写方法は、転写用シート2を被転写体1の表面に密着してインク層24を被転写体1に転写し、インク層24と離型層22を被転写体1の表面に付着して基材シート21のウレタンエラストマーシートを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力差を利用して転写用シートの模様を、ステアリングホイール等の立体的な被転写体の表面に転写する方法と、この方法に使用する転写用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
高級車には、木製のステアリングホイールが使用される。木製のステアリングホイールは、高級な木材を円形に加工して内部に金属製の芯材を埋設している。この構造のステアリングホイールは、天然木に独特の美しい木目柄の模様を表面に装飾する。天然木として、メープルやウォールナットを使用している。これ等の天然木は、美しい木目柄のものとそうでないものとがある。極めて美しい木目柄である一級品の天然木を使用して製作されるステアリングホイールと、三級品の天然木を使用して製作されるステアリングホイールでは、製造工程は同じであっても、ステアリングホイールとしての商品価値は著しく異なる。三級品の天然木を使用して、一級品のステアリングホイールとするために、天然木の表面に、美しい木目柄を転写する転写方法が提案されている。
【0003】
転写方法として、水圧転写法で模様を付着する方法(特許文献1参照)と、転写用シートを使用して表面に木目柄を転写する真空成形法とが開発されている。
【特許文献1】特開2001-27790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水圧転写法は、水面にインクを木目柄に浮かせてこれをステアリングホイール表面に付着させる。この方法は、転写フィルムのようにシワによる模様の品質低下がない。ただ、この方法はステアリングホイールの表面に綺麗に木目柄を付着するのは極めて難しい。また、この方法は、転写フィルムに比較して木目柄を安定して付着するのが難しく、剥がれないように綺麗に木目柄を転写するのが難しい。このため、能率よく高級なステアリングホイールを安価に量産できない欠点がある。
【0005】
また、水圧転写法の最大の欠点は、転写環境に水を使用するので、水濡れを嫌う素材には使用できない。たとえば、木材の表面に模様を水圧転写すると木材が吸湿して綺麗な模様にできない欠点がある。
【0006】
これに対して、転写用シートを使用する真空成形法は、水を使用しないで模様を転写できる。模様を転写する従来の転写用シートは、基材シートとして、塩化ビニル系樹脂やポリオレフイン系樹脂、ポリエステル系樹脂シートを使用している。基材シートの表面には、アクリル系等の離型層を介してインク層を印刷している。この転写用シートを使用して、例えばステアリングホイールに模様を転写すると、転写用シートを円形ステアリングホイールの全周に密着できず、ステアリングホイール表面の一部にしか模様を転写できない。さらに、この転写用シートは、ステアリングホイールに広い面積で接触させると、一部でシワができ、模様が不連続になって綺麗な模様を転写できない。このため、従来の転写用シートは、ステアリングホイールのように円柱状の被転写体の表面に、綺麗に模様を転写できない。
【0007】
転写用シートは、基材シートに伸縮性のあるシートを使用して、被転写体の広い面積に密着できる。しかしながら、この転写用シートは、被転写体の広い面積に密着させるために伸長すると、インク層の模様に亀裂ができて、綺麗な模様で転写できなくなる。この欠点は、軟質バインダーに染料を添加して伸縮性のあるインクを使用して解消できる。しかしながら、このインクを使用するインク層は、充分な耐久性を実現できない。車のステアリングホイールのように、温度が大幅に変化すると共に、強い太陽光線に照射される厳しい環境で使用される被転写体にあっては、とくに優れた耐久性が要求され、この特性を実現できないものは現実には全く使用できない。
【0008】
本発明の第1の目的はこのような欠点を解決すること、すなわち、ステアリングホイール等のように、立体形状の被転写体の表面に広い面積で密着されて、綺麗に模様を転写できる転写方法と転写用シートを提供することにある。
また、本発明の他の大切な目的は、優れた耐久性を実現しながら、模様を綺麗に転写できる転写方法と転写用シートを提供することにある。
【0009】
さらに、被転写体の表面に転写用シートのインク層を転写する場合、被転写体の形状によっては、転写用シートの合せ目ができる。たとえば、ステアリングホイールの全周に転写用シートを密着してインク層を転写する場合、図1の断面図に示すように、裏面では転写用シート2の合せ目Sができる。合せ目Sは、転写用シート2の継目であるから、わずかに境界ができて、被転写体1であるステアリングホイール30の表面を表出させる。この状態で、合せ目Sが目だつと、転写の品質が著しく低下する。この欠点は、被転写体のボディーカラーを、模様の類似色に着色して少なくできる。しかしながら、この構造によっても、合せ目が目だつのを解消はできない。それは、図1に示すように、合せ目Sから表出するボディーカラーと転写されたインク層の模様を外部から見るとき、外光が反射される状態が著しく異なるからである。合せ目の表面は、外光をボディーカラーで反射するのに対し、転写用シートから転写された模様部分は、外光を模様に透過させて被転写体のボディーカラーで反射し、さらに模様を透過する光で外部から見る色を特定する。このように、被転写体のボディーカラーを直接に見る色と、転写された模様を介してボディーカラーを見る色とは異なる色となるので、ボディーカラーを模様の類似色としても、合せ目を目だたないようにはできない。
【0010】
この弊害は、転写されるインク層を厚くして、模様が外光を透過させないようにして解消できる。ただ、転写されるインク層を厚くすると、基材シートを伸縮するときに亀裂が発生して綺麗に転写できなくなってしまう。本発明者等は、インク層を厚くするのに代わって、インク層に隠ぺいインク層を積層する転写用シートでもって、合せ目を目だたなくする技術を開発した。この転写用シートは、隠ぺいインク層で被転写体の表面色を隠ぺいして、合せ目が目だつのを少なくできる。この転写用シートは、転写される状態でインク層の裏面に隠ぺいインク層を積層する。隠ぺいインク層の上にインク層を転写して、ボディーカラーを模様に類似する色に着色して、合せ目を目だたなくできる。しかしながら、この構造の転写用シートは、被転写体に転写するときに、隠ぺいインク層に亀裂が発生し、この亀裂が合せ目と同じように目だって品質を著しく低下する弊害がある。とくに、基材シートを伸縮させて被転写体の表面にインク層を転写する転写用シートでは、隠ぺいインク層が伸長されて亀裂が発生する。
【0011】
本発明の第2の目的は、さらにこの欠点を解決することにある。すなわち、本発明の他の大切な目的は、合せ目のできる被転写体に、合せ目を目だたないようにインク層を転写できる転写方法と転写用シートとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1の被転写体に模様を転写する転写方法は、被転写体1の表面に転写用シート2を密着させて、転写用シート2のインク層24を被転写体1に転写する。この転写方法は、転写用シート2として、破断時伸度を30%以上として弾性回復率を10%以下とするウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に、伸縮できる離型層22を介してインク層24を設けると共に、このインク層24を、微細な無数の凸部24Aを設けて凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けてなる伸縮インク層とする転写用シート2を使用する。転写方法は、この転写用シート2を被転写体1の表面に密着してインク層24を被転写体1に転写し、インク層24と離型層22を被転写体1の表面に付着してウレタンエラストマーシートからなる基材シート21を除去する。
【0013】
本発明の請求項2の被転写体に模様を転写する転写方法は、被転写体1の表面に転写用シート2を密着させて、転写用シート2のインク層24を被転写体1に転写する。この転写方法は、転写用シート2として、破断時伸度を30%以上として弾性回復率を10%以下とするウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に、伸縮できる離型層22を介してインク層24を設けると共に、このインク層24を、微細な無数の凸部24Aを設けて凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けてなる伸縮インク層とし、さらにこの伸縮インク層の表面に積層して隠ぺいインク層25を設けてなる転写用シート2を使用する。転写方法は、この転写用シート2を被転写体1の表面に密着して隠ぺいインク層25とインク層24を被転写体1に転写し、隠ぺいインク層25とインク層24と離型層22を被転写体1の表面に付着してウレタンエラストマーシートからなる基材シート21を除去する。
【0014】
本発明の転写方法は、転写用シート2のインク層24の微細な凸部24Aの外径(D)を、50μm以下、好ましくは、30μm以下とすることができる。
【0015】
本発明の転写方法は、転写用シート2のインク層24を、凸部24Aの間に設けている薄膜伸縮部24Bの塗膜厚(t)を、凸部24Aの塗膜厚(h)の1/10以下としてなる伸縮インク層とすることができる。
【0016】
本発明の転写方法は、インク層24を、顔料粒子26をバインダーに分散させてなるインクを塗布してなる伸縮インク層とすることができる。
【0017】
本発明の転写方法は、被転写体1の表面に密着する転写用シート2を80〜120℃に加熱して、インク層24を被転写体1に転写することができる。
【0018】
本発明の転写方法は、転写用シート2の基材シート21であるウレタンエラストマーシートに、ポリエチレン系の樹脂、ビニル系の樹脂、顔料、フィラー等の添加材を添加することができる。このウレタンエラストマーシートは、添加材の含有量を10重量%以下とする。添加剤の含有量が増加すると、伸縮性が低下するからである。
【0019】
本発明の転写方法は、転写用シート2として、離型層22とウレタンエラストマーシートからなる基材シート21との間に、アクリル樹脂とメラミン樹脂とポリエステルポリオール樹脂の少なくともひとつを含む離型処理層23を設けているシートを使用することができる。
【0020】
本発明の請求項11の被転写体に模様を転写する転写用シートは、被転写体1の表面に密着させて、離型層22を介して表面に設けているインク層24を被転写体1の表面に転写する。この転写用シートは、破断時伸度が30%以上であって弾性回復率が10%以下であるウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に、伸縮できる離型層22を介してインク層24を設けている。このインク層24は、微細な無数の凸部24Aを設けて、凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けてなる伸縮インク層としている。転写用シートは、被転写体1の表面に密着されてインク層24を被転写体1の表面に転写し、インク層24と離型層22を被転写体1の表面に付着させてウレタンエラストマーシートからなる基材シート21を除去する。
【0021】
本発明の請求項12の被転写体に模様を転写する転写用シートは、被転写体1の表面に密着させて、離型層22を介して表面に設けているインク層24を被転写体1の表面に転写する。この転写用シートは、破断時伸度が30%以上であって弾性回復率が10%以下であるウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に、伸縮できる離型層22を介してインク層24を設けている。このインク層24は、微細な無数の凸部24Aを設けて、凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けてなる伸縮インク層としている。さらに、この転写用シートは、伸縮インク層の表面に積層して隠ぺいインク層25を設けている。転写用シートは、被転写体1の表面に密着されて隠ぺいインク層25とインク層24を積層して被転写体1の表面に転写し、隠ぺいインク層25とインク層24と離型層22を被転写体1の表面に付着させてウレタンエラストマーシートからなる基材シート21を除去する。
【0022】
本発明の転写用シートは、インク層24の微細な凸部24Aの外径(D)を、50μm以下、好ましくは、30μm以下とすることができる。
【0023】
本発明の転写用シートは、インク層24を、凸部24Aの間に設けている薄膜伸縮部24Bの塗膜厚(t)を、凸部24Aの塗膜厚(h)の1/10以下としてなる伸縮インク層とすることができる。
【0024】
本発明の転写用シートは、インク層24を、顔料粒子26をバインダーに分散させてなるインクを塗布してなる層とすることができる。
【0025】
本発明の転写用シートは、基材シート21のウレタンエラストマーシートに、ポリエチレン系の樹脂、ビニル系の樹脂、顔料、フィラーの少なくともひとつを含む添加材を添加することができる。このウレタンエラストマーシートは、添加材の充填量を10重量%以下とする。
【0026】
本発明の転写用シートは、離型層22とウレタンエラストマーシートからなる基材シート21との間に、アクリル樹脂とメラミン樹脂とポリエステルポリオール樹脂の少なくともひとつを含む離型処理層23を設けることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、たとえばステアリングホイールのように、立体形状の被転写体の表面に広い面積で密着して、綺麗に模様を転写できる特徴がある。それは、本発明が、転写用シートを、伸縮できるウレタンエラストマーシートからなる基材シートの表面に、伸縮できる離型層を介してインク層を設け、さらにこのインク層を、微細な無数の凸部を設けて凸部の周囲に薄膜伸縮部を設けてなる伸縮インク層としているからである。とくに、ウレタンエラストマーシートからなる基材シートに設けている伸縮インク層は、ウレタンエラストマーシートからなる基材シートが伸縮されるときに、凸部の周囲に設けている薄膜伸縮部を伸縮させる。薄膜伸縮部は凸部に比べて充分に薄いので、亀裂や割れを発生させることなく伸縮する。とくに、この構造の伸縮インク層は、顔料粒子をバインダーに分散させているインクを使用して、薄膜伸縮部を亀裂や割れを防止して伸縮させる。それは、顔料粒子を分散させているバインダーが薄膜伸縮部となり、あるいは薄膜伸縮部においてはバインダーに分散される顔料粒子の混合率が低くなり、薄膜伸縮部のバインダーが伸縮するからである。この伸縮インク層は、顔料粒子を伸縮させることなく、薄膜伸縮部のバインダーを伸縮させて、インク層をウレタンエラストマーシートからなる基材シートと一緒に伸縮できる。このため、染料に比べて優れた耐久性の顔料を使用しながら、基材シートのウレタンエラストマーシートと一緒にインク層を伸縮して、被転写体の表面に密着できる。とくに、本発明は、伸縮性の離型層を介して伸縮インク層をウレタンエラストマーシートからなる基材シートの表面に設けているので、基材シートのウレタンエラストマーシートが伸縮するとき、伸縮インク層は伸縮性の離型層を介して伸縮される。このとき伸縮性の離型層は、基材シートのウレタンエラストマーシートと伸縮インク層との間にあって両層の緩衝層として作用する。このため、基材シートのウレタンエラストマーシートの伸縮は伸縮性の離型層を介してインク層を伸縮させ、伸縮インク層を伸縮しやすい部分で伸縮させて、伸縮時におけるインク層の亀裂や割れを有効に防止する。したがって、本発明は、立体的に凹凸のある被転写体の表面に綺麗な模様を転写しながら、優れた耐久性を実現できる理想的な特性を実現する。また、水を使用しないで被転写体の表面に模様を転写するので、天然木等のように吸湿性のある被転写体の表面にも、水を使用することなく、綺麗な模様を能率よく安価に転写できる特徴がある。
【0028】
さらに、本発明の請求項2の転写方法と請求項12の転写用シートは、インク層を被転写体の表面に転写して、模様の合せ目ができる状態となっても、この合せ目を目だたないようにできる特徴がある。それは、本発明の転写用シートが、伸縮性のあるウレタンエラストマーシートからなる基材シートの表面に、伸縮できる離型層を介して、微細な無数の凸部を設けて凸部の周囲に薄膜伸縮部を設けて伸縮インク層とするインク層を設け、さらにこの独特の構造の伸縮インク層の表面に隠ぺいインク層を積層しているからである。この転写用シートは、被転写体に密着されて基材シートを伸縮させるときに、インク層に設けている無数の凸部周囲にある薄膜伸縮部を伸縮させる。インク層の薄膜伸縮部は凸部に比べて充分に薄いので、凸部にくらべて伸縮しやすい。薄膜伸縮部は、凸部の周囲にあってインク層に均一に分散している。さらに、インク層に隠ぺいインク層を積層しているので、隠ぺいインク層は、凸部に積層される部分よりも薄膜伸縮部に積層される部分で効果的に伸縮される。この状態で伸縮される隠ぺいインク層は、均一に分散される薄膜伸縮部で収縮部分が分散される。このため、基材シートと一緒に隠ぺいインク層が伸縮されると、隠ぺいインク層は薄膜伸縮部の部分で局部的に収縮される。隠ぺいインク層がインク層の薄膜伸縮部で伸縮される領域は極めて微細な領域にあって、均一に分散する。インク層の薄膜伸縮部が微細な凸部の周囲に設けられるからである。微細な無数の領域に分散して伸縮される隠ぺいインク層は、基材シートと一緒に伸縮されても、外部に目だつ亀裂が発生しない。このため、この発明は、隠ぺいインク層の亀裂が目だたないように被転写体に転写できる。被転写体に綺麗に転写される隠ぺいインク層は、被転写体に転写するときに、インク層に合せ目ができても、これを目だたないようにできる優れた特徴がある。とくに、この発明は、インク層で隠ぺいインク層に亀裂が発生するのを防止するので、隠ぺいインク層の亀裂を防止するために、転写用シートに専用の層を設ける必要がなく、転写用シートを簡単な構造で安価に製造しながら、模様を綺麗に被転写体に転写できる特徴を実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための被転写体に模様を転写する転写方法とこの方法に使用する転写用シートを例示するものであって、本発明は転写方法と転写用シートを以下のものに特定しない。
【0030】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0031】
図2と図3は転写用シート2の断面図を示す。図2の転写用シート2は、図において上から順番に、ウレタンエラストマーシートの基材シート21/離型処理層23/離型層22/インク層24を積層して設けており、図3の転写用シート2は、上から順番に、ウレタンエラストマーシートの基材シート21/離型処理層23/離型層22/インク層24/隠ぺいインク層25を積層して設けている。
【0032】
基材シート21は、転写時の加熱で溶融せず、破断時伸度が常温で30%以上、好ましくは20%以上で、かつ弾性回復率が10%以下のウレタンエラストマーシートとする。基材シート21のウレタンエラストマーシートには、好ましくは日本マタイ株式会社製の「エスマーURS」を使用する。このウレタンエラストマーシートの基材シート21は、転写時の加熱で溶融せず、常温で真空成形される際、局部的な伸延に対して、耐屈曲性や引き裂き性に優れた特性がある。
【0033】
基材シートであるウレタンエラストマーシート21の破断時伸度を30%以上とするのは、破断時伸度がこれより小さいと、ステアリングホイールのような円柱状の被転写体の全面にインク層24を転写できないからである。また、基材シートのウレタンエラストマーシートは、単に破断時伸度が大きいのみのものは好ましくない。それは、凹凸のあるステアリングホイール等の被転写体が、伸長する部分では充分に延びて被転写体の立体曲面に密着するが、たとえばステアリングホイールのように円柱状の被転写体にあっては、その裏面のように、収縮させる部分では収縮しないで、シワになって、綺麗な模様を転写できないからである。したがって、基材シート21のウレタンエラストマーシートは、破断時伸度のみでなく、弾性回復率を10%以下とすることも大切である。このウレタンエラストマーシートからなる基材シートは、破断時伸度と弾性回復率を前述の範囲とするものであれば、必ずしも前述のウレタンエラストマーシートとする必要はなく、転写時の加熱で溶融せず、破断時伸度が常温で30%以上で、かつ弾性回復率が10%以下とする他のエラストマー基材シートも使用できる。
【0034】
離型処理層23は、ウレタンエラストマーシートの基材シート21と離型層22との間に設けられる。この離型処理層23は、基材シート21であるウレタンエラストマーシートの表面エネルギーを低くして剥離しやすくする。とくに、基材シートのウレタンエラストマーシートは表面エネルギーが大きく、ウレタン系のインク層24との接着力が極めて強くなって、スムーズな剥離を難しくする性質がある。ウレタン系のインク層24の表面に離型層22を設けて、さらに、この離型層22と基材シート21であるウレタンエラストマーシートとの間に、基材シートであるウレタンエラストマーシートの表面エネルギーを低下させる離型処理層23を設ける転写用シート2は、離型処理層23と離型層22の2層でもって、インク層24の剥離を簡単かつ容易に、しかもスムーズにできるようにする。ただ、転写用シートは、ウレタンエラストマーシートからなる基材シートと離型層との間に、必ずしも離型処理層を設ける必要はない。とくに、製造されてから使用されるまでの期間が短い転写用シートは、ウレタンエラストマーシートからなる基材シートとインク層の間に離型処理層を設けることなく、被転写体に密着して離型層と基材シートのウレタンエラストマーシートとの界面を剥離できる。
【0035】
転写用シート2の離型処理層23は、熱硬化アクリル変性樹脂である。ただ、この離型処理層には、メラミン樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、シリコン樹脂等も使用できる。離型処理層23は、原料樹脂を有機溶媒で希釈して、ロールコーターでウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に塗布される。塗布した後、加熱乾燥して基材シート21の表面に離型処理層23が積層して設けられる。ただし、離型処理層は、有機溶媒で希釈された原料樹脂を、基材シートであるウレタンエラストマーシートの表面にグラビア塗工して設けることもできる。
【0036】
離型処理層23を設ける転写用シート2は、離型処理層23の膜厚を0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上とする。離型処理層23の膜厚が薄すぎると、基材シート21であるウレタンエラストマーシートの表面エネルギーを低下させる作用が弱くなるからである。さらに、離型処理層23の膜厚は、20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とする。離型処理層23が厚すぎると、転写用シート2の製造コストが高くなることに加えて、被転写体の表面に密着させるとき転写用シート2を伸長させると、離型処理層23が割れやすくなるからである。
【0037】
離型層22は、ウレタン系のインク層24を剥離しやすくする。また、この離型層22は、エラストマー基材シート21とインク層24との間にあって、エラストマー基材シート21の伸縮でインク層24の亀裂や割れを防止する伸縮性を有する。離型層22は、この特性を実現するために、ビニル系の樹脂を使用される。ただし、離型層は、ビニル系の樹脂に他の樹脂を混合することもできる。ビニル系の樹脂に混合される樹脂は、たとえば、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、シリコン樹脂、ワックス系樹脂等のひとつ又は複数である。ビニル系の樹脂に他の樹脂を混合する離型層は、ビニル樹脂の混合量を、30重量%以上、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上とする。ビニル系の樹脂の混合量が少なくなると、スムーズな剥離性が低下するからである。
【0038】
離型層22は、離型処理層23と同じように、原料樹脂を有機溶媒で希釈して、ロールコーターで離型処理層23の表面に、あるいは離型処理層のない転写用シートにあっては、基材シート21であるウレタンエラストマーシートの表面に塗布される。塗布した後、加熱乾燥してビニル系の離型層が設けられる。
【0039】
離型層22は、その膜厚を0.1μm以上、好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上とする。離型層22の膜厚が薄すぎると、スムーズに剥離できなくなると共に、基材シート21であるウレタンエラストマーシートとインク層24との緩衝層としての作用が低下して、基材シート21であるウレタンエラストマーシートが伸縮するときにインク層24の亀裂や割れを有効に防止できなくなるからである。さらに、離型層22の膜厚は、たとえば20μm以下、好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下とする。離型層22が厚すぎると、転写用シート2の製造コストが高くなるからである。
【0040】
インク層24は、図4ないし図8に示すように、微細な無数の凸部24Aを設け、この凸部26の周囲に薄膜伸縮部24Bを設けて伸縮インク層としている。伸縮インク層は、凸部24Aの外径(D)を50μm以下、好ましくは30μm以下、さらに好ましくは25μm以下としている。さらに、伸縮インク層の凸部24Aは、外径(D)を10μm以上、好ましくは15μm以上としている。この伸縮インク層は、隣接する凸部24Aの中心間隔(L)を、凸部24Aの外径(D)よりも大きく、たとえば外径(D)の1.2倍〜2倍としている。
【0041】
凸部24Aの周囲に設けている薄膜伸縮部24Bは、その塗膜厚(t)を、凸部24Aの塗膜厚(h)の1/10以下としている。薄膜伸縮部24Bは、図4と図5に示すように、もっとも薄い部分の塗膜厚(t)をほとんど0μmとすることもできる。隣接する凸部24Aの間に設けられる薄膜伸縮部24Bの間隔であって、凸部24Aの塗膜厚(h)の1/10以下となる部分の間隔(d)は、たとえば凸部24Aの外径(D)の1/3よりも大きく、好ましくは1/2よりも大きくする。この間隔(d)が狭すぎると、インク層24の伸縮性が低下して、基材シート21であるウレタンエラストマーシートを伸長するときに、インク層24に亀裂や割れが発生しやすくなる。
【0042】
伸縮インク層は、図4と図5に示すように、顔料粒子26をバインダーに分散させてなるインクを塗布して設けられる。顔料粒子26の平均粒子径は、たとえば0.1μmよりも大きく、好ましくは1μmよりも大きく、かつ10μm以下のものを使用する。
【0043】
無数の微細な凸部24Aのあるインク層24は、離型層22の表面にグラビア印刷して設けられる。グラビア印刷は、6色以上の凸部24Aでフルカラーの模様を表現する。ただし、インク層は、5色以下の凸部24Aのカラー模様とすることもできる。凸部24Aでカラー模様を表現するインク層24は、コンピュータ処理した文様データで、銅製で表面をクロームメッキしてなる版胴を作り、ウレタン系のインクを使用して、グラビア印刷して解像度の高い微細な模様が印刷される。ただ、インク層24は、グラビア印刷に代わって、オフセット印刷、スクリーン印刷して設けることもできる。インク層24は、各々のカラーの凸部24Aを特定の配列で離型層22の表面に塗布して、カラー模様とする。凸部24Aの間には、インクの付着されない、あるいはインクのほとんど付着されない薄膜伸縮部24Bができる。
【0044】
隠ぺいインク層25は、図5に示すように、インク層24の表面に積層して設けられる。隠ぺいインク層25は、被転写体の表面に転写されて、被転写体のボディーカラーを隠ぺいする。この隠ぺいインク層25は、微粉末の顔料粒子又は反射粒子を、バインダーに分散させている。微粉末は、平均粒子径を0.3μmよりも大きく、好ましくは0.5μmよりも大きく、さらに好ましくは1μmよりも大きくする粉末である。微粉末の平均粒子径が小さすぎると、被転写体のボディーカラーを隠ぺいする作用が小さくなるからである。また、微粉末は、平均粒子径を15μmよりも小さく、好ましくは10μmよりも小さくする粉末である。微粉末の平均粒子径が大きすぎると、隠ぺいインク層25の膜厚が厚くなって、亀裂が発生しやすくなるからである。
【0045】
隠ぺいインク層25の微粉末は、光を反射して微粉末のボディーカラーを隠ぺいし、あるいは顔料で着色してボディーカラーを隠ぺいする。光を反射させる微粉末は、アルミニウム等の金属粉末で、この微粉末は、外光を反射させて被転写体のボディーカラーを隠ぺいする。顔料は、ベンガラ等の無機の粉末や有機の粉末で、インク層24の裏面を被転写体のボディーカラーに着色して、被転写体のボディーカラーを隠ぺいする。隠ぺいインク層25は、光を反射し、あるいはインク層24の裏面を着色された層として被転写体のボディーカラーを隠ぺいするが、この隠ぺいインク層25は、必ずしも被転写体のボディーカラーを完全に隠ぺいする必要はない。したがって、隠ぺいインク層25には、光を多少は透過させる層も使用できる。
【0046】
隠ぺいインク層25は、膜厚を0.5μmよりも厚く、好ましくは1μmよりも厚く、さらに好ましくは3μmよりも厚くしている。隠ぺいインク層25の膜厚が薄すぎると、隠ぺい作用が低下するからである。また、隠ぺいインク層25の膜厚は、厚すぎると伸縮して亀裂が発生しやすくなるので、30μmよりも薄く、好ましくは20μmよりも薄く、さらに好ましくは15μmよりも薄くしている。
【0047】
隠ぺいインク層25は、ウレタン系のバインダーに微粉末を分散してなるウレタン系のインクを、インク層24の表面に薄膜に積層して設けられる。隠ぺいインク層25は、グラビア印刷してインク層の表面に設けることができる。グラビア印刷で設けられる隠ぺいインク層25は、図に示すように、均一な膜厚となるように設けられる。ただ、隠ぺいインク層は、ロールコーターでインク層の表面に積層して設けることもできる。
【0048】
図2の転写用シート2は、真空成形法でステアリングホイール等の被転写体の表面に密着されてインク層24を被転写体に転写し、図3の転写用シート2は、インク層24と隠ぺいインク層25を被転写体に転写する。インク層24と隠ぺいインク層25の転写は、破断時伸度の大きいウレタンエラストマーシートの基材シート21を、転写前に加熱軟化させることなく、真空ポンプ等で減圧して、立体曲面の被転写体の表面に被覆させる。この状態で、転写用シートは、被転写体であるステアリングホイールの円形リング全周を被覆せず、約240度程度まで被覆する。その後、ホットエアーを供給すると共に、加熱ランプ等で赤外線を照射する。この状態で、ステアリングホイールと転写用シート2は急速に加熱され、ウレタンエラストマーシートの基材シート21の伸延度が上昇される。伸びやすくなったウレタンエラストマーシートの基材シート21は、ホットエアーと真空ポンプの減圧力の差圧により、ステアリングホイールのより広い面積に密着する。さらにこの状態で、伸びた転写用シート2は弾性回復力により、元に戻ろうとしてステアリングホイールの下部に沿う部分で収縮する。したがって、転写用シート2は、ステアリングホイールの下部の裏面まで、しわがよることなく密着される。ホットエアーと加熱ランプで加熱されて、接着剤層が接着力を発現し、インク層24と隠ぺいインク層25をステアリングホイールに接着する。その後、冷却してステアリングホイールからウレタンエラストマーシートの基材シート21を剥がせば、離型層22と離型処理層23との界面で剥離されて、インク層24と隠ぺいインク層25と離型層22が被転写体の表面に転写される。このように転写用シート2の基材シート21に常温での伸度が高く、かつ弾性回復性が高いウレタンエラストマーシートを使用することで、立体曲面の表から裏面まで全面にわたってしわや亀裂を起こさずに転写用シート2のインク層24の凸部24Aによる絵柄を転写できる。
【0049】
また、加熱してステアリングホイールに転写されるインク層24は、加熱転写されるときに凸部24Aを熱で押しつぶすようにして、カラードットを目だたなくできる。凸部24Aが熱で押し潰されると、薄膜伸縮部24Bが狭くなって隣接する凸部24Aの境界が目だたなくなるからである。この方法で転写された模様は、ステアリングホイール等の表面に転写された状態で、カラードットを目だたなくして、本物の木目模様と見間違う高品質な仕上がりにできる。
【0050】
接着剤層は被転写体であるステアリングホイールの表面に塗布して設けられるが、転写用シートの被転写体との対向面に設けることもできる。接着剤層は、加熱されて接着力を発現してインク層24や隠ぺいインク層25をステアリングホイールの表面に付着させる。したがって、この接着剤層には、例えば、ホットメルト系接着剤、熱賦括型のアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等が使用される。
【0051】
以上の転写用シート2は、エンボス加工面のような凸凹面でもきれいに密着、転写できる。また、転写用シート2は、真空ポンプを運転して、下面を減圧する圧力差のみで、ステアリングホイールのほぼ全面に密着できるが、ホットエアーや加熱ランプで加熱して、基材シート21のウレタンエラストマーシートの伸延度をさらに上昇して、ステアリングホイールの全面に密着できる。加熱時間を保持することによって、接着剤層の接着力を発現できる。その後、冷却し、ステアリングホイールから基材シート21のウレタンエラストマーシートを剥がせばインク層24を転写し、またはインク層24と隠ぺいインク層25を転写できる。
【0052】
以上の転写用シート2は、図9ないし図11に示す転写装置で被転写体1の表面に転写される。これ等の図に示す転写装置は、被転写体1をステアリングホイール30として、ステアリングホイール30の全周にインク層を、またはインク層と隠ぺいインク層を転写する。この明細書において、ステアリングホイールの全周とは、ステアリングホイールを半径方向に切断した円柱断面の全周を意味する。
【0053】
図に示す装置は、転写用シート2を、裏面側と表面側の圧力差を利用して、ステアリングホイール表面の全周に密着させる。この装置は、図9に示すように、ステアリングホイール30の上方に転写用シート2を配設し、これを図10に示すように圧力差でステアリングホイール30に密着させる。この転写用シート2は、ステアリングホイール30の外形よりも大きくする。
【0054】
また、図10に示すように、ステアリングホイール30の上面に転写用シート2を配設して圧力差で密着させる装置は、転写用シート2の伸縮がステアリングホイール30の表面で部分的に異なる。転写用シート2は、大きく伸長させる部分ではインク層を転写して設けられる模様の薄い色となり、伸縮の少ない部分では模様の色が濃くなって濃淡ができる。また、転写用シート2をステアリングホイール30の全周に密着させるのに高度な技術を要し、ステアリングホイール30にインク層の転写されない部分を目だたない程度に小さくするのが難しい。
【0055】
図12ないし図14の転写装置は、さらに改良した装置であって、これ等の転写装置が、ステアリングホイール30の表面に木目模様等を転写する具体例を以下に示す。ただし、図12ないし図14に示す装置と、図9ないし図11に示す装置において、同じ番号を付している部材は、同じ働きをして転写用シートをステアリングホイールに転写する。
【0056】
図の被転写体1であるステアリングホイール30は、細長い円柱をリング状に連結してなる円形リング31と、この円形リング31に連結しているスポーク32と、このスポーク32を介して中心に連結しているボス33を備える。ステアリングホイール30は、円形リング31の全周、すなわち円形リング31の断面の360度に木目等の模様転写するのは極めて難しい。図12ないし図14において、ステアリングホイール30は、下縁部分の転写が難しい。全周に転写用シート2を密着させるのが難しいからである。ステアリングホイール30の全周に模様を転写できる方法は、極めて複雑な立体曲面をなす被転写体の表面に美しい模様を転写できる。
【0057】
図12ないし図14に示す転写装置は、転写用シート2の裏面側を真空に減圧する。裏面側の圧力が低下した転写用シート2は、大気圧である表面側の圧力で押圧されて、ステアリングホイール30の表面に密着される。これ等の図は、真空成形法で転写用シート2をステアリングホイール30の表面に転写する。
【0058】
以上の転写装置は、ステアリングホイール30をセットするセット台3と、このセット台3を内部に配置している本体ケース4と、この本体ケース4のセット台3にセットする転写用シート2で気密チャンバを設ける蓋ケース5と、本体ケース4の気密チャンバ内を減圧する真空ポンプ6と、セット台3にセットしている転写用シート2を加熱する加熱ランプ7と、気密チャンバを開閉する開閉機構8とを備える。
【0059】
セット台3は、ステアリングホイール30を脱着できるように水平な姿勢でセットする。図のセット台3は、ステアリングホイール30の中心のボス33をネジ止めして固定している。このボス33は、円形リング31の内側に保護カバー34を設けている。保護カバー34は、外径をステアリングホイール30の内形よりも小さい円盤状として、ステアリングホイール30のボス33とスポーク32の中心部分をカバーしている。この保護カバー34は、ステアリングホイール30の内側に、転写用シート2が無理に吸い込まれて破損するのを防止する。
【0060】
図のセット台3は、上下機構9を介して本体ケース4に連結している。上下機構9は、セット台3を上下に往復運動させる。図のセット台3は中心に上下軸10を固定し、この上下軸10を上下方向に往復運動できるように本体ケース4に連結している。さらに、この上下軸10は、下端にシリンダー等の往復運動機構11を連結している。往復運動機構11は、上下軸10を介してセット台3を上下に往復運動させて、転写用シート2をより広い面積でステアリングホイール30に密着させる。
【0061】
本体ケース4は、上方を開口する箱形で、周囲に周壁4Aを突出して設けている。周壁4Aは上面を転写用シート2の密着面としている。この本体ケース4は、周壁4A上面の密着面に転写用シート2を隙間なく密着させて、周壁4Aと転写用シート2とで囲まれる内側を気密チャンバとしている。さらに、本体ケース4は、気密チャンバの空気を排気して減圧するために、ステアリングホイール30の円形リング31の下縁から内側に遍在する位置に沿って吸入開口12を設けている。吸入開口12は真空ポンプ6に連結される。図の本体ケース4は、ステアリングホイール30の円形リング31の下面と内周面との間に沿う形状のスリット状としている。
【0062】
蓋ケース5は、下方を開口している箱形で、周囲には下方に突出して凸条5Aを設けている。凸条5Aは、その下面を本体ケース4の周壁4Aの上面に密着する。したがって、蓋ケース5の凸条5Aと本体ケース4の周壁4Aは、同じ平面形状として、蓋ケース5で本体ケース4の開口部を気密に密閉する。凸条5Aは、その下面を、周壁4Aの密着面に沿う平滑な平面としている。
【0063】
さらに、図の蓋ケース5は、天板5Bの内面に、転写用シート2を加熱する加熱ランプ7を固定している。加熱ランプ7は、転写用シート2に上面から赤外線を放射して、転写用シート2を短時間で設定温度に加熱する。
【0064】
蓋ケース5は、開閉機構8を連結している。図の開閉機構8は、図12に示すように蓋ケース5を上昇させて、蓋ケース5の凸条5Aと本体ケース4の周壁4Aを離して開口する。この状態で、ステアリングホイール30がセット台3に脱着され、また転写用シート2がセットされる。蓋ケース5を降下させて、転写用シート2をステアリングホイール30に密着して転写する。降下した蓋ケース5は、本体ケース4の開口部を閉塞して、気密チャンバを密着する。
【0065】
以上の転写装置は、図12ないし図14に示すようにして、以下の工程で転写用シート2の模様をステアリングホイール30に転写する。
(1) 図12に示すように、開閉機構8が蓋ケース5を上昇して、凸条5Aを周壁4Aから離して本体ケース4の上方開口部を開口する。
(2) セット台3にステアリングホイール30がセットされる。図のステアリングホイール30は、ボス33をネジ止して、セット台3にセットされる。このとき、セット台3は上昇位置にある。
(3) 図15に示すように、転写用シート2が、ステアリングホイール30の外周に沿ってU曲される状態でセットされる。
【0066】
(4) その後、開閉機構8が蓋ケース5を降下させる。降下する蓋ケース5は、凸条5Aを周壁4Aに密着させて、本体ケース4の内部を密閉された気密チャンバとし、気密チャンバ内にステアリングホイール30を配設する。
(5) 真空ポンプ6が気密チャンバ内の空気を排気する。気密チャンバが減圧されると、図13に示すように、転写用シート2がステアリングホイール30の表面に沿って密着される。
(6) 加熱ランプ7で転写用シート2を加熱すると共に、蓋ケース5の内部に加熱されたホットエアーを供給する。加熱された転写用シート2はより柔軟で伸長しやすくなり、ステアリングホイール30の表面に広い面積で密着される。さらに、図14に示すように、セット台3を上下に往復運動させて、転写用シート2をステアリングホイール30の下面まで密着させる。この状態で、真空ポンプ6はさらに気密チャンバの空気を排気する。気密チャンバが減圧される状態で、セット台3が上下に移動されて、加熱された転写用シート2はステアリングホイール30の全周に密着される。この状態でステアリングホイール30に密着される転写用シート2は、非転写部が極減されて、全周に密着される。
(7) 加熱状態にある転写用シート2は、ステアリングホイール30の全周に密着されて、表面の模様をステアリングホイール30の表面に転写する。転写用シート2は、図16及び図18に示すように、加熱されて熱溶融する凸部24Aからなるインク層24を設けている。この転写用シート2は、加熱状態でステアリングホイール30の表面に押圧して密着させるので、図17及び図19に示すように、凸部24Aが溶融、拡大して、薄膜伸縮部24Bを減少する状態でステアリングホイール30に模様を転写する。図17は、ステアリングホイール30の表面にインク層24を転写する状態を、図19は、ステアリングホイール30の表面にインク層24と隠ぺいインク層25を転写する状態をそれぞれ示している。ただし、転写用シートは、加熱されて凸部24Aを溶融することなくステアリングホイールに転写できるもの、たとえば、熱賦活性のある接着剤からなる凸部24Aのものも使用できる。
(8) 模様が転写された後、真空ポンプ6の運転を停止して気密チャンバを大気圧とする。この状態になると、転写用シート2はステアリングホイール30に密着しなくなる。この状態で、セット台3が上昇され、また開閉機構8が蓋ケース5を上昇して、蓋ケース5を本体ケース4から離して、本体ケース4の上を開口する。
(9) 模様を転写した転写用シート2を除去して、ステアリングホイール30をセット台3から外して、本体ケース4から取り出す。
【実施例1】
【0067】
以下の実施例は、被転写体1をステアリングホイール30とする。ステアリングホイール30は、全周にインク層を転写するのが極めて難しい立体形状をしている。したがって、ステアリングホイール30の全周にインク層を転写できる転写方法と転写用シートは、他のあらゆる立体形状の被転写体にインク層を転写できる。したがって、以下の実施例は、転写がもっとも難しいステアリングホイール30を被転写体1として、木目模様のインク層を転写する。
【0068】
ステアリングホイール30として、ウレタン発泡成型品(全周タイプ)のステアリングホイールを使用する。ステアリングホイール30は、転写するに先だって、表面をインク層の木目模様と同じ色の塗料を塗布して着色している。ステアリングホイール表面の着色は、木目模様のように模様はないが、木目模様と同じ色の塗料をスプレーし、あるいは刷毛で塗布して設けられる。さらに、ステアリングホイール30は、あらかじめ、ウレタン発泡成形部分の表面に接着剤層27を設ける。接着剤層27は、ポリウレタン系エマルジョン接着剤(三木理研製、E−05−039)をスプレーコーティングして設ける。
【0069】
転写用シート2は、基材シート21のウレタンエラストマーシートの表面に、順番に離型処理層23、離型層22、インク層24を設けている。基材シート21は、ウレタンエラストマーシート(エスマーURS:日本マタイ株式会社製、厚さ50μm、破断時伸度680%、弾性回復率10%)である。このウレタンエラストマーシートからなる基材シート21の表面に、熱硬化アクリル変性樹脂の離型処理層23を設ける。離型処理層23は、有機溶媒に希釈して、ロールコーターでウレタンエラストマーシートの基材シート21の表面に塗布し、その後加熱乾燥して設けられる。この離型処理層23の膜厚は、1μmである。さらに、離型処理層23の上に、ビニル樹脂の離型層22を設ける。離型層22は、離型処理層23と同じように、有機溶媒で希釈した樹脂原料を、ロールコーターで離型処理層23の表面に塗布し、その後加熱乾燥して設けられる。離型層22の膜厚は、0.5μmである。さらに、この離型層22の表面に、ウレタン樹脂のバインダーに顔料を添加しているインクを使用し、凸部24Aの平均高さを10μm、平均外径(D)を30μm、隣接する凸部24Aの中心間隔(L)を100μmとして、凸部24Aの間に薄膜伸縮部24Bを設け、凸部24Aをカラードットとして木目模様のインク層24を設ける。このインク層24はグラビア印刷して設けている。
【0070】
ステアリングホイール30として、ウレタン発砲成型品のステアリングホイールを使用する。あらかじめ、ポリウレタン系エマルジョン接着剤(三木理研製、E−05−039)を、ステアリングホイール30の表面にスプレーコーティングして設けている。
【0071】
図12に示すように、ステアリングホイール30をセット台3の定位置にセットした後、吸入開口12がステアリングホイール30の背面となるように、吸引用カバー治具をセットする。その後、転写用シート2を、インク層をステアリングホイール30に向けて、ステアリングホイール30の外周に沿ってセットする。転写用シート2は、ステアリングホイール30に沿う細長い形状であって、図15に示すように、転写するステアリングホイール30の転写部分36をカバーする幅を有する。転写用シート2は、幅を10cmとする細長い帯状で、長さをステアリングホイール30の転写部分36の全長より長く裁断している。この転写用シート2は、約10%伸びるようにテンションをかけながら、ステアリングホイール30の外側にU曲して巻き付けられる。巻き付けられた転写用シート2は、図15に示すように、両端部をクリップ等の仮止具35でステアリングホイール30にセットされる。クリップは転写部分36の外側で転写用シート2をステアリングホイール30に仮止めする。
【0072】
その後、図13に示すように、蓋ケース5を降下させた後、真空ポンプ6で気密チャンバの空気を排気する。空気は、吸引用カバー治具を介して排気される。吸引用カバー治具は、ステアリングホイール30の形状に合わせたスリットの吸入開口12を有し、この吸入開口12から空気を排気する。テンションをかけて、弾性的に伸長している転写用シート2は、弾性回復力で復元しようとする力と、減圧力の両方で、ステアリングホイール30の裏面まで密着する。この状態において、気密チャンバは、真空度を約60トールとして排気される。この状態で、転写用シート2は、図13に示すように、ステアリングホイール30の円形リング31の約240度に沿う程度まで密着する。
【0073】
その後、蓋ケース5の内部に、110℃に加熱して5気圧に加圧したホットエアーの圧縮空気が供給される。さらに加熱ランプ7が赤外線を放射して、釜内温度を80℃とし、この状態を3分間保持する。この状態で接着剤は硬化される。ホットエアーの圧縮空気は、加熱して伸びやすくなった転写用シート2の上面をステアリングホイール30の表面に押圧する。この状態で、転写用シート2は、ステアリングホイール30の円形リング31の裏面まで、全周の360度にしわや空気溜まりを発生させずに密着する。
【0074】
その後、冷却して、ウレタンエラストマーシートの基材シート21をステアリングホイール30から剥すと、インク層24と離型層22とをステアリングホイール30の表面に残して、離型層22と離型処理層23の界面からスムーズに剥離される。転写用シート2に設けたインク層24の木目文様は、柄伸びや色が薄くなることもなく、ステアリングホイール30の裏面まで1本の木を曲げたように、同心円状に柾目模様が綺麗に揃っており、つなぎ目もわからず、本物と見間違う高品質な仕上がりとなる。また、インク層24の凸部24Aは溶融して拡開され、薄膜伸縮部24Bが減少してなくなり、印刷ドットが識別できない、本物の木目と見間違う高品質な仕上がりとなる。
【実施例2】
【0075】
転写用シート2として、ウレタンエラストマーシートの基材シート21の表面に、順番に離型処理層23、離型層22、インク層24、隠ぺいインク層25を設けるシートを使用する以外、実施例1と同様にして、被転写体1のステアリングホイール30に、木目模様のインク層24を転写する。この実施例で使用する転写用シート2は、インク層24の表面に、ロールコーターで隠ぺいインク層25を設けている。隠ぺいインク層25は、平均粒子径を1〜3μmとするアルミニウムの微粉末をウレタン系のバインダーに添加して、ロールコーターで膜厚が10μmとなるようにインク層24に積層して設けたものである。
【0076】
この実施例は、実施例1と同様に、転写用シート2に設けたインク層24の木目文様を、本物と見間違う高品質な仕上がりに転写できる。すなわち、転写された木目模様は、柄伸びや色が薄くなることもなく、ステアリングホイールの裏面まで1本の木を曲げたように、同心円状に柾目模様が綺麗に揃った模様となる。とくに、この実施例で転写される木目模様は、ステアリングホイールの裏面にできる、幅を0.5mm以下とするわずかな合せ目をほとんど目だたなくできる。それは、インク層24の裏面に隠ぺいインク層25を積層しているからである。さらに、隠ぺいインク層25は、微細な凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けている独特のインク層24によって、伸縮時の亀裂が防止され、基材シートと一緒に伸縮してステアリングホイールの表面に転写される。すなわ、隠ぺいインク層25とインク層24の両方が綺麗に転写されて、インク層24にできるわずかな合せ目を、ほとんど識別できないように綺麗に木目模様が転写される。
【実施例3】
【0077】
以下の工程で、ステアリングホイール30に木目模様を転写する。
転写用シート2の離型処理層23を、実施例1の熱硬化アクリル変性樹脂からメラミン樹脂に変更する以外、実施例1と同様にして転写用シート2を製作し、この転写用シート2を使用して、被転写体1のステアリングホイール30にインク層24を転写する。インク層24は、6色カラーのカエデ縮れ杢(カーリー杢)文様の木目模様とする。
【0078】
ステアリングホイール30として、ウレタン発泡成型品(全周タイプ)のステアリングホイールを使用する。あらかじめ、ウレタン発泡成形部分の表面に接着剤層を設ける。接着剤層は、ポリウレタン系エマルジョン接着剤(三木理研製、E−05−039)をスプレーコーティングして設ける。
【0079】
図12に示すように、ステアリングホイール30をセット台3の定位置にセットした後、吸引用カバー治具を取り付ける。吸引用カバー治具は、吸入開口12をステアリングホイール30の背面とするようにセットする。
【0080】
その後、転写用シート2を、インク層をステアリングホイール30に向けて、ステアリングホイール30の外周に沿ってセットする。転写用シート2は、ステアリングホイール30に沿う細長い形状であって転写するステアリングホイール30の全周をカバーする幅を有する。転写用シート2は、幅を8cmとする細長い帯状としている。転写用シート2の長さは、ステアリングホイール30の全周より長く裁断されている。この転写用シート2は、弾性的に約10%伸びるように、テンションをかけながら、ステアリングホイール30の外側にU曲して巻き付られる。巻き付けた転写用シート2は、両端部をクリップ等の仮止具でステアリングホイール30にセットする。
【0081】
その後、図13に示すように、蓋ケース5を降下させた後、真空ポンプ6で気密チャンバの空気を排気する。空気は、吸引用カバー治具を介して排気される。吸引用カバー治具は、ステアリングホイール30の形状に合わせたスリットの吸入開口12を有し、この吸入開口12から空気を排気する。テンションをかけて、弾性的に伸長している転写用シート2は、弾性回復力で復元しようとする力と、減圧力の両方で、ステアリングホイール30の裏面まで密着する。この状態において、気密チャンバは、真空度を約60トールとして排気される。この状態で、転写用シート2は、図13に示すように、ステアリングホイール30の円形リング31の約240度に沿う程度まで密着する。
【0082】
さらに続いて、蓋ケース5の内部に、110℃に加熱して5気圧に加圧したホットエアーの圧縮空気を供給し、加熱ランプ7で赤外線を放射して、釜内温度を80℃とし、この状態を3分間保持する。この状態で接着剤は硬化される。ホットエアーの圧縮空気は、加熱して伸びやすくなった転写用シート2の上面をステアリングホイール30の表面に押圧する。この状態で、転写用シート2は、ステアリングホイール30の円形リング31の裏面まで、全周の360度にしわや空気溜まりを発生させずに密着する。
【0083】
その後、冷却して、ウレタンエラストマーシートの基材シート21をステアリングホイール30から剥すと、インク層24と離型層22とをステアリングホイール30の表面に残して、離型層22と離型処理層23の界面からスムーズに剥離される。転写用シート2に設けたインク層24の木目文様は、ステアリングホイール30の全周にわたって、柄伸びや色が薄くなることもなく、裏面まで縮れ杢模様が放射状にきれいにそろっており、つなぎ目もわからず、本物と見間違う仕上がりが得られる。
【実施例4】
【0084】
転写用シート2として、ウレタンエラストマーシートの基材シート21の表面に、順番に離型処理層23、離型層22、インク層24、隠ぺいインク層25を設けるシートを使用する以外、実施例3と同様にして、被転写体1のステアリングホイール30に、木目模様のインク層24を転写する。この実施例で使用する転写用シート2は、インク層24の表面に、ロールコーターで隠ぺいインク層25を設けている。隠ぺいインク層25は、平均粒子径を0.5〜3μmとするベンガラの微粉末をウレタン系のバインダーに添加して、ロールコーターで膜厚が10μmとなるようにインク層24に積層して設けたものである。
【0085】
この実施例は、実施例3と同様に、転写用シート2に設けたインク層24の木目文様を、本物と見間違う高品質な仕上がりに転写できる。すなわち、転写された木目模様は、柄伸びや色が薄くなることもなく、ステアリングホイール30の裏面まで1本の木を曲げたように、同心円状に柾目模様が綺麗に揃った模様となる。とくに、この実施例で転写される木目模様は、ステアリングホイールの裏面にできる、幅を0.5mm以下とするわずかな合せ目をほとんど目だたなくできる。それは、インク層24の裏面に隠ぺいインク層25を積層しているからである。さらに、隠ぺいインク層25は、微細な凸部24Aの周囲に薄膜伸縮部24Bを設けている独特のインク層24によって、伸縮時の亀裂が防止され、基材シートと一緒に伸縮してステアリングホイールの表面に転写される。すなわ、隠ぺいインク層25とインク層24の両方が綺麗に転写されて、インク層24にできるわずかな合せ目を、ほとんど識別できないように綺麗に木目模様が転写される。
【比較例1】
【0086】
水圧転写して、ステアリングホイールの表面にカエデ縮れ杢(カーリー杢)柄の木目模様を転写する。この方法で製造されたステアリングホイールは、正面部分の木目模様を少ない歪で転写できる。ただ、裏面のつなぎ目においては、カエデ縮れ杢(カーリー杢)柄がつながらない不連続な木目模様となり、一目で天然木ではない印刷による木目と区別される。
【0087】
以上は、被転写体をステアリングホイールとする実施例を詳述したが、本発明
の転写方法と転写用シートは、図20に示すように、アンダーカット状の被転写体1の表面にも模様を転写できる。アンダーカット状の被転写体1も、転写用シート2の一部を伸長し、また一部を収縮させて、表面に転写用シート2を密着して転写するからである。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】ステアリングホイールの全周に転写用シートを密着してインク層を転写する状態を示す拡大断面図である。
【図2】本発明の一実施例にかかる転写用シートの概略断面図である。
【図3】本発明の他の実施例にかかる転写用シートの概略断面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる転写用シートのインク層の拡大断面図である。
【図5】本発明の他の実施例にかかる転写用シートのインク層の拡大断面図である。
【図6】本発明の一実施例にかかる転写用シートのインク層の拡大平面図である。
【図7】転写用シートのインク層の他の一例を示す拡大平面図である。
【図8】転写用シートのインク層の他の一例を示す拡大平面図である。
【図9】本発明の転写方法に使用する転写装置の一例を示す概略断面図である。
【図10】図9に示す転写装置でステアリングホイールに模様を転写する工程を示す概略断面図である。
【図11】図9に示す転写装置がステアリングホイールに模様を転写する工程を示す概略断面図である。
【図12】本発明の転写方法に使用する転写装置の他の一例を示す概略断面図である。
【図13】図9に示す転写装置がステアリングホイールに模様を転写する工程を示す概略断面図である。
【図14】図9に示す転写装置がステアリングホイールに模様を転写する工程を示す概略断面図である。
【図15】ステアリングホイールに転写用シートをセットする状態を示す平面図である。
【図16】本発明の一実施例にかかる転写用シートの拡大断面図である。
【図17】図16に示す転写用シートでステアリングホイールに模様を転写した状態を示す拡大断面図である。
【図18】本発明の他の実施例にかかる転写用シートの拡大断面図である。
【図19】図18に示す転写用シートでステアリングホイールに模様を転写した状態を示す拡大断面図である。
【図20】アンダーカット状の被転写体に模様を転写する状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0089】
1…被転写体
2…転写用シート
3…セット台
4…本体ケース 4A…周壁
5…蓋ケース 5A…凸条
5B…天板
6…真空ポンプ
7…加熱ランプ
8…開閉機構
9…上下機構
10…上下軸
11…往復運動機構
12…吸入開口
21…基材シート
22…離型層
23…離型処理層
24…インク層 24A…凸部
24B…薄膜伸縮部
25…隠ぺいインク層
26…顔料粒子
27…接着剤層
30…ステアリングホイール
31…円形リング
32…スポーク
33…ボス
34…保護カバー
35…仮止具
36…転写部分
S…合せ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体(1)の表面に転写用シート(2)を密着させて、転写用シート(2)のインク層(24)を被転写体(1)に転写する方法であって、
転写用シート(2)として、破断時伸度を30%以上として弾性回復率を10%以下とするウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)の表面に、伸縮できる離型層(22)を介してインク層(24)を設けると共に、このインク層(24)を、微細な無数の凸部(24A)を設けて凸部(24A)の周囲に薄膜伸縮部(24B)を設けてなる伸縮インク層とする転写用シート(2)を使用し、
この転写用シート(2)を被転写体(1)の表面に密着してインク層(24)を被転写体(1)に転写し、インク層(24)と離型層(22)を被転写体(1)の表面に付着してウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)を除去する被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項2】
被転写体(1)の表面に転写用シート(2)を密着させて、転写用シート(2)のインク層(24)を被転写体(1)に転写する方法であって、
転写用シート(2)として、破断時伸度を30%以上として弾性回復率を10%以下とするウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)の表面に、伸縮できる離型層(22)を介してインク層(24)を設けると共に、このインク層(24)を、微細な無数の凸部(24A)を設けて凸部(24A)の周囲に薄膜伸縮部(24B)を設けてなる伸縮インク層とし、さらにこの伸縮インク層の表面に積層して隠ぺいインク層(25)を設けてなる転写用シート(2)を使用し、
この転写用シート(2)を被転写体(1)の表面に密着して隠ぺいインク層(25)とインク層(24)を被転写体(1)に転写し、隠ぺいインク層(25)とインク層(24)と離型層(22)を被転写体(1)の表面に付着してウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)を除去する被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項3】
転写用シート(2)のインク層(24)が、微細な凸部(24A)の外径(D)を50μm以下とする請求項1または2に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項4】
転写用シート(2)のインク層(24)が、微細な凸部(24A)の外径(D)を30μm以下とする請求項1または2に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項5】
転写用シート(2)のインク層(24)が、凸部(24A)の間に設けている薄膜伸縮部(24B)の塗膜厚(t)を、凸部(24A)の塗膜厚(h)の1/10以下としてなる伸縮インク層である請求項1ないし4のいずれかに記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項6】
インク層(24)が、顔料粒子(26)をバインダーに分散させてなるインクを塗布してなる伸縮インク層である請求項1または2に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項7】
被転写体(1)の表面に密着する転写用シート(2)を80〜120℃に加熱して、インク層(24)を被転写体(1)に転写する請求項1または2に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項8】
転写用シート(2)の基材シート(21)であるウレタンエラストマーシートが、ポリエチレン系の樹脂、ビニル系の樹脂、顔料、フィラーの少なくともひとつの添加材を含む請求項1または2に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項9】
基材シート(21)であるウレタンエラストマーシートが10重量%以下の添加材を含む請求項8に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項10】
転写用シート(2)として、離型層(22)とウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)との間に、アクリル樹脂とメラミン樹脂とポリエステルポリオール樹脂の少なくともひとつを含む離型処理層(23)を設けているシートを使用する請求項1または2に記載される被転写体に模様を転写する転写方法。
【請求項11】
被転写体(1)の表面に密着させて、離型層(22)を介して表面に設けているインク層(24)を被転写体(1)の表面に転写する転写用シートであって、
破断時伸度が30%以上であって弾性回復率が10%以下であるウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)の表面に、伸縮できる離型層(22)を介してインク層(24)を設けると共に、このインク層(24)を、微細な無数の凸部(24A)を設けて、凸部(24A)の周囲に薄膜伸縮部(24B)を設けている伸縮インク層としており、
被転写体(1)の表面に密着されてインク層(24)を被転写体(1)の表面に転写し、インク層(24)と離型層(22)を被転写体(1)の表面に付着させてウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)を除去するようにしてなる被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項12】
被転写体(1)の表面に密着させて、離型層(22)を介して表面に設けているインク層(24)を被転写体(1)の表面に転写する転写用シートであって、
破断時伸度が30%以上であって弾性回復率が10%以下であるウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)の表面に、伸縮できる離型層(22)を介してインク層(24)を設けると共に、このインク層(24)を、微細な無数の凸部(24A)を設けて、凸部(24A)の周囲に薄膜伸縮部(24B)を設けている伸縮インク層とし、
さらに、この伸縮インク層の表面に積層して隠ぺいインク層(25)を設けており、
被転写体(1)の表面に密着されて隠ぺいインク層(25)とインク層(24)を積層して被転写体(1)の表面に転写し、隠ぺいインク層(25)とインク層(24)と離型層(22)を被転写体(1)の表面に付着させてウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)を除去するようにしてなる被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項13】
転写用シート(2)のインク層(24)が、微細な凸部(24A)の外径を50μm以下としている請求項11または12に記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項14】
転写用シート(2)のインク層(24)が、微細な凸部(24A)の外径を30μm以下としている請求項11または12に記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項15】
転写用シート(2)のインク層(24)が、凸部(24A)の間に設けている薄膜伸縮部(24B)の塗膜厚(t)を、凸部(24A)の塗膜厚(h)の1/10以下としてなる伸縮インク層である請求項11ないし14のいずれかに記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項16】
インク層(24)が、顔料粒子(26)をバインダーに分散させてなるインクを塗布してなる層である請求項11または12に記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項17】
基材シート(21)のウレタンエラストマーシート(21)が、ポリエチレン系の樹脂、ビニル系の樹脂、顔料、フィラーの少なくともひとつの添加材を含む請求項11または12に記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項18】
基材シート(21)のウレタンエラストマーシートが10重量%以下の添加材を含む請求項18に記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。
【請求項19】
離型層(22)とウレタンエラストマーシートからなる基材シート(21)との間に、アクリル樹脂とメラミン樹脂とポリエステルポリオール樹脂の少なくともひとつを含む離型処理層(23)を設けている請求項11または12に記載される被転写体に模様を転写する転写用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−276407(P2007−276407A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109141(P2006−109141)
【出願日】平成18年4月11日(2006.4.11)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度 経済産業省 地域新生コンソーシアム研究開発事業委託研究 産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505468934)株式会社リアライズ (5)
【出願人】(599049808)株式会社フジコー (4)
【Fターム(参考)】