説明

裁断装置、および、裁断システム

【課題】多段積みされた裁断対象を精度良く検査して裁断できる裁断装置等を提供する。
【解決手段】多段積みされた裁断対象Bkを裁断する断裁刃部31と、多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定するために、裁断対象側からの光を受光する受光素子(35)と、を備え、受光素子が、裁断対象の大きさに応じて断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裁断対象を検査する裁断装置、および、裁断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、本や冊子等の印刷物が製本機で丁合いされた後、不要な部分を切り捨てる裁断が行われる。この裁断される後に、所定の位置で裁断されているか否かの検査が行われている。例えば、特許文献1には、断裁本を所定位置に搬送する搬送手段と、所定位置に搬送された断裁本の仕上げ幅不良を検出する光電センサと、所定位置における断裁本有無を判定するための断裁本有無検出センサと、仕上げ幅不良信号と断裁本有信号とによって、仕上げ幅不良の断裁本を排出する排出機構とが設けられた断裁不良検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−322286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1はコンベア上を搬送されている本の状態を検査しているため、本が多段積みされた状態では搬送中に荷崩したり、ずれたりする可能性があり正確に検査することが難しかった。
【0005】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、多段積みされた裁断対象を精度良く検査して裁断できる裁断装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、多段積みされた裁断対象を裁断する断裁刃部と、前記多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定するために、前記裁断対象側からの光を受光する受光素子と、を備え、前記受光素子が、前記裁断対象の大きさに応じて前記断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置されることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の裁断装置において、前記受光素子が、前記断裁刃部を保持する保持部に設置されたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の裁断装置において、前記断裁刃部の裁断動作と連動する位置に設置された発光素子を更に備え、前記受光素子が、前記発光素子の光の反射光を受光することを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の裁断装置において、前記受光素子と前記発光素子とが一体化したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、請求項3または請求項4に記載の裁断装置において、前記発光素子からの光を前記受光素子に反射する反射部材を更に備えたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、裁断装置の断裁刃部により裁断される裁断対象を、当該裁断対象が多段積みされた状態で検査する裁断システムにおいて、前記裁断対象の大きさに応じて前記断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置され、前記裁断対象側からの光を受光する受光素子と、前記受光素子からの出力に応じて、前記多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定する良否判定手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多段積みされた裁断対象を裁断する断裁刃部と、多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定するために、裁断対象側からの光を受光する受光素子と、を備え、受光素子が、裁断対象の大きさに応じて断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置されたことにより、裁断対象の大きさに合わせて断裁刃部を取り替え等が行われても、多段積みされた裁断対象を精度良く検査して裁断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る裁断システムの概要構成例を示す模式図である。
【図2】図1の制御装置の概要構成の一例を示すブロック図である。
【図3】図1の裁断装置の断裁刃部および保持部の概要構成例を示す模式図である。
【図4】図1の裁断装置の断裁ステージにおける反射部材の設置位置の一例を示す模式図である。
【図5】無線綴じ製本工程を示す模式図である。
【図6】図1の裁断装置に裁断対象を供給する動作例を示すフローチャートである。
【図7】図1の制御装置における裁断対象の検査の動作例を示すフローチャートである。
【図8】多段積みされた裁断対象を測定する様子の一例を示す模式図である。
【図9】多段積みされた裁断対象を測定する様子の一例を示す模式図である。
【図10】図1の裁断装置の断裁ステージにおける反射部材と、裁断対象の位置関係の一例を示す模式図である。
【図11】図1の裁断装置の断裁ステージにおける反射部材と、裁断対象の位置関係の一例を示す模式図である。
【図12】図1の裁断装置の断裁ステージにおける反射部材の設置位置の変形例を示す模式図である。
【図13】図1の裁断装置における発光・受光素子部の設置位置の変形例を示す模式図である。
【図14】図1の裁断装置における受光素子および発光素子の設置位置の変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、裁断システムに対して本発明を適用した場合の実施形態である。
【0015】
[1.裁断システムおよび制御装置10の構成および機能概要]
(1.1 裁断システム1の構成および機能)
【0016】
まず、本発明の一実施形態に係る裁断システムの構成および概要機能について、図1を用いて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る裁断システム1の概要構成例を示す模式図である。
【0018】
図1に示すように、裁断システム1は、裁断システム1を制御する制御装置10(裁断対象検査装置の一例)と、多段積みされた裁断対象Bkを搬送する搬送装置20と、多段積みされた裁断対象Bkを裁断する裁断装置30と、を備えている。
【0019】
制御装置10と、搬送装置20と、裁断装置30とは、データを送受信するためのケーブルにより接続されていて、搬送装置20や裁断装置30等は、制御装置10により制御される。
【0020】
制御装置10は、コントローラ(例えば、プログラマブルロジックコントローラ)として、搬送装置20による裁断対象Bkの搬送や、裁断装置30による裁断対象Bkの裁断を制御する。
【0021】
搬送装置20は、裁断対象Bkを搬送する搬送部21と、制御装置10からの指令に従い搬送装置20を制御する制御部22とを有する。そして搬送装置20は、製本機で丁合され、糊付けされ、表紙が付けられた印刷物等の裁断対象Bkを多段積みされた状態で、搬送部21のコンベア等により裁断装置30まで搬送する。
【0022】
裁断装置30は、裁断対象Bkを裁断する断裁刃部31と、多段積みされた裁断対象Bkを上方から押さえつける押さえ板部32と、制御装置10からの指令に従い裁断装置30を制御する制御部33と、裁断対象Bkを載せる断裁ステージ34と、レーザを発光して受光する発光・受光素子部35と、を有する。さらに、裁断装置30は、裁断対象Bkが断裁ステージ34に搬送されたか否かをセンシングする位置センサ(図示せず)を有する。
【0023】
断裁刃部31は、本の天・地・小口の三方向を裁断する断裁刃を有する。断裁刃部31は、エンコーダ付きの駆動部(図示せず)により、裁断対象Bkの方に下降され、多段積みされた裁断対象Bkを裁断する。この駆動部のエンコーダにより、裁断対象Bkを押さえるために、断裁刃部31がどれだけ下降したかの位置が検出される。制御部33は、エンコーダの情報を読み取り、データを制御装置10に送信する。
【0024】
押さえ板部32は、エンコーダ付きの駆動部(図示せず)により、多段積みされた裁断対象Bkを押さえつける。駆動部のエンコーダにより、裁断対象Bkを押さえるために、押さえ板部32がどれだけ下降したかの位置が検出される。制御部33は、エンコーダの情報を読み取り、データを制御装置10に送信する。
【0025】
断裁ステージ34には、発光・受光素子部35を再帰反射する反射部材34aが設置されている。反射部材34aは、発光・受光素子部35からのレーザ光Lを、発光・受光素子部35に反射させる。
【0026】
発光・受光素子部35(受光素子の一例)は、半導体レーザ等のレーザ光Lを照射する発光素子と、光位置センサ(PSD(Position Sensitive Detector))、フォトダイオード等の光を受光する受光素子が一体化された素子である。発光・受光素子部35は、発光素子からレーザ光Lを反射部材34a等で反射させて、受光素子によりセンシングする素子であり、発光・受光素子部35から反射部材34aまでの距離を測定する変位センサ、または在荷センサである。発光・受光素子部35は、地側、天側、および、小口側の各々の断裁刃部31の付近に設置され、多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定するために、裁断対象側からの光を受光する。そして、発光・受光素子部35は、裁断対象Bkの大きさに応じて断裁刃部31の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置される。また、図1に示すように、発光・受光素子部35は、レーザ光Lが、多段積みされた裁断対象Bkの側面の全体をカバーでき、裁断対象Bkの側面を対角方向に向かうように設置されている。
【0027】
(1.2 制御装置10の構成および機能)
次に、制御装置10の構成および機能について、図2を用いて説明する。
図2は、制御装置10の概要構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
図2に示すように、裁断対象検査装置として機能する制御装置10は、例えば、パーソナルコンピュータやプログラマブルロジックコントローラ等であり、通信部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14と、入出力インターフェース部15と、システム制御部16とを備えている。そして、システム制御部16と入出力インターフェース部15とは、システムバス17を介して接続されている。
【0029】
通信部11は、制御部22と、制御部33等とのデータや信号の送受信を行う。
【0030】
記憶部12は、例えば、ハードディスクドライブ等からなり、オペレーティングシステム、制御用のプログラムや画像処理用のプログラム等を記憶する。
【0031】
表示部13は、例えば、液晶表示素子またはEL(Electro Luminescence)素子等によって構成されている。表示部13には、裁断システム1の制御するための入力情報や画像処理の結果等が表示される。
【0032】
操作部14は、例えば、キーボードおよびマウス等によって構成されている。ユーザは、操作部14を使用して、裁断システム1を制御するための入力情報を入力する。
【0033】
入出力インターフェース部15は、通信部11および記憶部12とシステム制御部16とのインターフェースである。
【0034】
システム制御部16は、例えば、CPU16aと、ROM16bと、RAM16cとを有する。システム制御部16は、CPU16aが、ROM16bや、RAM16cや、記憶部12に記憶された各種プログラムを読み出して実行する。
【0035】
(1.3 裁断装置の断裁刃部および保持部の構成)
次に、裁断装置30の断裁刃部および保持部の構成について、図3を用いて説明する。
図3は、裁断装置30の断裁刃部および保持部の概要構成例を示す模式図である。
【0036】
図3に示すように、断裁刃部31を保持する保持部36は、断裁刃部31をボルト等により固定する。そして、断裁刃部31は、裁断対象の大きさ(例えば、裁断対象BkのサイズがA4、B5)に応じて、交換される。また、保持部36は、送りねじ37に連結されていて、ハンドル38を回すことにより、図中左右方向に移動する。そして、保持部36に保持された断裁刃部31は、裁断対象Bkの大きさに応じて裁断位置が調整される。
【0037】
発光・受光素子部35を取り付ける取付部材39は、保持部36に固定される。そして、発光・受光素子部35が、取付部材39により、断裁刃部31の近傍の外側に取り付けられる。また、発光・受光素子部35からのレーザ光Lが、切断される前の裁断対象Bkの外側に沿って照射されるように、発光・受光素子部35は、取付部材39により設置される。すなわち、裁断対象Bkの裁断余白から1、2ミリ程外側にレーザ光Lが照射できる位置に、発光・受光素子部35は設置される。取付部材39は、保持部36の外側に取り付けられ、発光・受光素子部35が、内側の断裁刃部31に近づけられるような形状(例えばL字形状)をしている。
【0038】
反射部材34aは、裁断対象Bkの外側に1、2ミリほどの位置に、反射部材34aの中心が来るように、断裁ステージ34に設置される。
【0039】
(1.4 裁断装置の断裁ステージにおける反射部材の設置位置)
次に、裁断装置30の断裁ステージ34における反射部材34aの設置位置について、図4を用いて説明する。
図4は、裁断装置30の断裁ステージ34における反射部材34aの設置位置の一例を示す模式図である。
【0040】
図4に示すように、反射部材34aは、裁断対象Bkの大きさ(例えば、裁断対象BkのサイズがA4、B5)に応じて、裁断対象Bkの設置が予定される位置に設置される。反射部材34aは、1サイズの裁断対象Bkに対して、背側と地側との隅における地側寄りと、地側と小口側との隅における小口側寄りと、小口側と天側との隅における天側寄りとの3箇所設置される。
【0041】
[2.裁断システムの動作]
次に、本発明の1実施形態に係る裁断システムの動作について図5から図10を用いて説明する。
【0042】
(2.1 製本工程)
まず、裁断対象が本等の印刷物である場合における製本工程について図5を用いて説明する。なお、製本工程の一例として無線綴じについて説明する。
図5は、無線綴じ製本工程を示す模式図である。
【0043】
図4に示すように、無線綴じ製本工程は、印刷された折丁をページ順に集積する”(1)丁合い工程”と、丁合した折丁の背に切れ込みを入れる”(2)ミーリング工程”と、切れ込みを入れた背部に接着剤を塗布する”(3)塗布工程”と、塗布した接着剤に表紙を貼り付ける”(4)表紙付け工程”と、折部や余白を切断して本を所定のサイズにする”(5)断裁工程”と、を有する。なお、(5)の断裁工程は、(4)の表紙付け工程により表紙付けされた印刷物が、多段積みされた状態で行われる。(5)の断裁工程について、次の”裁断対象の供給”および”裁断対象の検査”で詳細に説明する。なお、裁断対象の一例である印刷物は、無線綴じ製本に限らず、平とじ製本や中綴じ製本でもよい。
【0044】
(2.2 裁断対象の供給)
次に、多段積みされた裁断対象を裁断装置30に供給する動作について図6を用いて説明する。
図6は、裁断装置30に裁断対象Bkを供給する動作例を示すフローチャートである。
【0045】
図6に示すように、裁断システム1は、多段積みされた裁断対象を受け入れる(ステップS1)。具体的には、図1に示すように、表紙付けされた印刷物(裁断対象Bk)が多段積みされた状態で、搬送装置20に供給される。なお、図1に示すように、印刷物の向きは、揃えて多段積みする。
【0046】
次に、裁断システム1は、裁断対象を整える(ステップS2)。具体的には、本束等の多段積みされた裁断対象Bkは、搬送装置20の側壁やガイドを利用し、整列される。
【0047】
次に、裁断システム1は、裁断装置30に裁断対象Bkを供給する(ステップS3)。具体的には、整列された裁断対象Bkは、裁断装置30の断裁ステージ34上に搬送される。裁断対象Bkが断裁ステージ34に搬送されると、位置センサによりセンシングされ、制御装置10に信号が送信される。
【0048】
(2.3 裁断対象の検査)
次に、裁断対象の検査について図7から図12を用いて説明する。
図7は、制御装置10における裁断対象Bkの検査の動作例を示すフローチャートである。図8および図9は、多段積みされた裁断対象を測定する様子の一例を示す模式図である。図10から図12は、裁断装置30の断裁ステージ34における反射部材34aと、裁断対象Bkの位置関係の一例を示す模式図である。
【0049】
図7に示すように、制御装置10は、搬送装置20から供給された多段積みされた裁断対象Bkの固定を確認する(ステップS5)。具体的には、制御装置10のシステム制御部16は、裁断装置30の断裁ステージ34上に搬送された裁断対象Bkの束を、押さえ板部32により上面から押さえるように指令の信号を裁断装置30の制御部33に送信する。そして、裁断装置30の制御部33は、駆動部により押さえ板部32を下降させ、駆動部のエンコーダや位置センサで機械位置情報を検出し所定の位置で停止させる。裁断装置30の制御部33は、裁断対象Bkの押さえが終了した信号を制御装置10に送信する。制御装置10のシステム制御部16は、裁断対象Bkの押さえが終了した信号を制御装置10から受信して、多段積みされた裁断対象Bkの押さえを確認する。このように制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象が固定されたか否かを検出する固定検出手段の一例として機能する。
【0050】
次に、制御装置10は、断裁刃部31の位置情報を検出する(ステップS6)。具体的には、制御装置10のシステム制御部16は、駆動部のエンコーダや位置センサで断裁刃部31の機械位置情報を検出する。
【0051】
次に、制御装置10は、レーザ光を照射させる(ステップS7)。具体的には、制御装置10のシステム制御部16は、断裁刃部31の位置が、所定の位置にあるか確認後、各発光・受光素子部35の発光素子からレーザ光Lを照射させる。図1または図8に示すように、反射部材34aに向けて、レーザ光Lが照射される。
【0052】
次に、制御装置10は、レーザ光を受光させる(ステップS9)。具体的には、各発光・受光素子部35の受光素子が、発光・受光素子部35の発光素子から照射されたレーザ光Lの反射光を受光し、信号を制御装置10のシステム制御部16に出力する。図8に示すように、多段積みされた裁断対象Bkがずれていない場合、発光・受光素子部35の受光素子は、反射部材34aで反射したレーザ光Lを受光する。また、図9に示すように、多段積みされた裁断対象Bkの裁断対象Bk2がずれている場合、発光・受光素子部35の受光素子が受光する光の光量が、ゼロまたは少なくなったり、受光する光の位置が大きく変位したりする。
【0053】
次に、制御装置10は、位置情報を算出する(ステップS9)。具体的には、制御装置10のシステム制御部16は、各発光・受光素子部35から受光した光量や変位の信号に応じて、多段積みされた裁断対象Bkがずれた位置にいるか否かの位置情報や、多段積みされた裁断対象Bkの高さ方向の位置情報や、水平方向にずれた距離の位置情報を算出する。なお、制御装置10のシステム制御部16は、発光・受光素子部35が受光した光量に応じた信号を出力する場合、この信号から、位置情報として光量を算出してもよい。また、光量に応じて光がある(所定の光量より多い)場合、信号を出力し、光が無い(所定以下の)場合、信号を出力しない、ON-OFF型のセンサの場合、制御装置10のシステム制御部16は、OFFの信号、すなわち、光が無い場合、多段積みされた裁断対象Bkがずれた位置にいるとの位置情報を算出してもよい。
【0054】
次に、制御装置10は、位置情報を記憶する(ステップS10)。具体的には、制御装置10のシステム制御部16は、記憶部12に、算出した位置情報を記憶する。なお、例えば、裁断が初回の場合や、基準位置を出すために裁断装置30の断裁ステージ34上で、多段積みされた裁断対象Bkが整えられた場合において、多段積みされた裁断対象Bkを、裁断装置30の断裁ステージ34上に設定した場合は、制御装置10のシステム制御部16は、算出した位置情報を、基準位置の基準位置情報として記憶する。また、制御装置10のシステム制御部16は、この場合、発光・受光素子部35の信号を基準の信号(基準光量)として記憶してもよい。
【0055】
次に、制御装置10は、裁断可能か否かを判定する(ステップS11)。制御装置10のシステム制御部16は、位置情報の位置が基準位置から所定値以上ずれている場合、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定し、裁断が不可能と判定する。制御装置10のシステム制御部16は、地側、小口側、および天側の発光・受光素子部35からの位置情報が1つでも、所定値以上ずれていたら、裁断が不可能と判定する。
【0056】
一方、この段差の量が所定値より等しいか低い場合、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが良と判定し、裁断が可能と判定する。制御装置10のシステム制御部16は、地側、小口側、および天側の全ての発光・受光素子部35からの位置情報が、所定値より等しいか低い場合、裁断が可能と判定する。
【0057】
位置情報の位置が基準位置から水平方向に、所定値以上ずれている場合や高さ方向に、所定値以上ずれている場合、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定し、裁断が不可能と判定してもよい。また、発光・受光素子部35が受光した光量が基準光量より小さい場合や、信号の出力が無い、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定し、裁断が不可能と判定してもよい。
【0058】
次に、裁断可能の場合(ステップS11;YES)、制御装置10は裁断指令を送信する(ステップS13)。具体的には、制御装置10のシステム制御部16は、裁断装置30の制御部33に裁断指令を送信する。そして、裁断装置30の制御部33は、断裁刃部31の断裁刃を下降させ、裁断対象Bk1、Bk2、Bk3をまとめて裁断する。切断した断裁片(不要部)は自由落下もしくはエアー等で回収溝へ排出される。
【0059】
裁断不可能の場合(ステップS11;NO)、制御装置10のシステム制御部16は、断裁前に裁断装置30を停止させる指令の信号を裁断装置30の制御部33に送信する(ステップS12)。裁断装置30は裁断の動作を停止する。
【0060】
次に、ステップS11における裁断可能か否かの判定について、図10および図11を用いて説明する。
【0061】
図10に示すように、裁断対象Bkが、基準位置にある場合、反射部材34a1、34a2、34a3(特に反射部材の中心部)は、裁断対象Bkに重ならず、レーザ光Lの光路が遮られなくレーザ光Lを反射するので、発光・受光素子部35は、レーザ光Lを受光でき、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが良と判定する。
【0062】
一方、図10に示すように、裁断対象Bk(裁断対象Bk1、Bk2、Bk3の少なくとも1つ)が、地側にずれた場合、反射部材34a1が、レーザ光Lの光路上、裁断対象Bkと重なり、地側の発光・受光素子部35は、反射したレーザ光Lを受光できず、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定する。また、裁断対象Bkが、天側にずれた場合、反射部材34a3が、レーザ光Lの光路上、裁断対象Bkと重なり、天側の発光・受光素子部35は、反射したレーザ光Lを受光できず、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定する。また、裁断対象Bkが、小口側および地側にずれた場合、反射部材34a2が、レーザ光Lの光路上、裁断対象Bkと重なり、小口側の発光・受光素子部35は、反射したレーザ光Lを受光できず、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定する。
【0063】
また、図11に示すように、裁断対象Bkが、反射部材34a2付近を中心に反時計回りにずれた場合、反射部材34a3が、レーザ光Lの光路上、裁断対象Bkと重なり、天側の発光・受光素子部35は、反射したレーザ光Lを受光できず、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定する。また、裁断対象Bkが、反射部材34a2付近を中心に時計回りにずれた場合、反射部材34a1が、レーザ光Lの光路上、裁断対象Bkと重なり、地側の発光・受光素子部35は、反射したレーザ光Lを受光できず、制御装置10のシステム制御部16は、多段積みされた裁断対象Bkが不良と判定する。
【0064】
以上、本実施形態によれば、多段積みされた裁断対象Bk1、Bk2、Bk3を裁断する断裁刃部31と、多段積みされた裁断対象Bk1、Bk2、Bk3の良否を、裁断前に判定するために、裁断対象側からの光を受光する受光素子(発光・受光素子部35)と、を備え、受光素子が、裁断対象の大きさに応じて断裁刃部31の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置されたことにより、裁断対象Bkの大きさに合わせて断裁刃部31を取り替えたり、送りねじ37により断裁刃部31間の距離が調整されても、多段積みされた裁断対象Bk1、Bk2、Bkを精度良く検査して裁断できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、自動的に多段積みされた裁断対象の良否判定ができ、省力化でき、人の目視に比べ、客観的に判定でき、生産性の向上が図られる。
【0066】
また、本実施形態によれば、断裁前に裁断動作を停止させ、多段積みされた裁断対象の位置を修正することが可能となり不良品の発生を抑制することができる。
【0067】
また、発光・受光素子部35(受光素子の一例)が、断裁刃部31を保持する保持部36に設置された場合、断裁刃部31を交換しても、発光・受光素子部35の位置がずれないため、裁断装置30は、多段積みされた裁断対象Bk1、Bk2、Bkを精度良く検査して裁断できる。
【0068】
また、発光・受光素子部35が、取付部材39により、裁断対象の大きさに応じて断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置される場合、裁断対象Bkの裁断余白から1、2ミリ程外側にレーザ光Lが照射できる位置に、発光・受光素子部35を設置させやすくなる。
【0069】
裁断装置30が、断裁刃部31の裁断動作と連動する位置に設置された発光・受光素子部35を更に備え、発光・受光素子部35の受光素子が、発光素子のレーザ光Lの反射光を受光する場合、発光・受光素子部35の発光素子の光により、正確に裁断対象Bk1、Bk2、Bk3のずれを検出できる。
【0070】
また、受光素子と発光素子とが一体化した発光・受光素子部35の場合、発光素子と受光素子とに分離された場合に比べ、裁断装置30への設置が少なくなり、メンテナンスが楽になる。
【0071】
また、発光素子からの光を受光素子に反射する反射部材34aを、裁断装置30に設置した場合、反射部材34aと裁断対象Bkとが重なっているか否かの判定が、反射部材34aによりレーザ光Lの反射の有無で判定できるため、判定が明確になり、裁断装置30は、精度良く検査して裁断できる。特に、反射部材34aが再帰反射する反射部材の場合、入射角と反射角が等しいという光学的な精度が要求されないため、裁断装置30への設置が容易になる。
【0072】
また、制御装置10のシステム制御部16が、多段積みされた裁断対象が押さえ板部32により固定されたか否かを検出し、固定されたと検出された後に、レーザ光Lを照射して受光する場合、裁断対象の姿勢が安定した状態で検査するので、安定した検査結果を得ることができる。
【0073】
次に、断裁ステージ34における反射部材34aの設置位置の変形例について図12を用いて説明する。
図12は、裁断装置30の断裁ステージ34における反射部材34aの設置位置の変形例を示す模式図である。
【0074】
図12に示すように、反射部材34a1、34a2、34b3が、裁断対象Bkの範囲内に収まるように、断裁ステージ34上に設置されてもよい。多段積みされた裁断対象Bkがずれていない場合、発光・受光素子部35の受光素子は、反射部材34aで反射したレーザ光Lを受光できない。多段積みされた裁断対象Bkがずれている場合、発光・受光素子部35の受光素子が受光する光の光量が増加する。従って、ステップS9において、制御装置10のシステム制御部16は、ON-OFF型のセンサの場合、制御装置10のシステム制御部16は、ONの信号、すなわち、光がある場合、多段積みされた裁断対象Bkがずれた位置にいるとの位置情報を算出してもよい。
【0075】
次に、発光・受光素子部35の設置位置の変形例について図13を用いて説明する。
図13は、裁断装置30における発光・受光素子部35の設置位置の変形例を示す模式図である。
【0076】
図13に示すように、2つの発光・受光素子部35が、地側、小口側、天側の各断裁刃部31の付近に設置されてもよい。各発光・受光素子部35は、おおよそ垂直方向、断裁ステージ34に向けて設置される。断裁ステージ34には、反射部材34aが2つの発光・受光素子部35に対応して、設置される。裁断対象Bkが回転したり、水平方向にずれたりして、2本のレーザ光Lの少なくとも1つが裁断対象Bkに遮られることにより、裁断対象Bkのずれが検出される。なお、反射部材34aは再帰反射する反射部材であるので、各発光・受光素子部35の設置の向きに関して高い精度は要求されない。
【0077】
次に、裁断装置30における受光素子および発光素子の設置位置の変形例について図14を用いて説明する。
図14は、裁断装置30における受光素子および発光素子の設置位置の変形例を示す模式図である。
【0078】
図14に示すように、発光・受光素子部35が、発光素子35aと、受光素子35bとの2つに分かれ設置されてもよい。発光素子35aと、受光素子35bとは、反射部材34bに対して、入射角と反射角が等しい位置に設置される。なお、反射部材34bは再帰反射する反射部材でなくてもよい。
【0079】
なお、裁断装置30に、反射部材の代わりにLEDや蓄光素材等の発光体を断裁ステージ34に設定してもよい。この場合、発光・受光素子部35の代わりに、受光素子が設置される。蓄光素材の場合、受光素子による測定前に照明装置から光を当て、照明装置の光を消して、受光素子が光の検出の有無を測定してもよい。
【0080】
また、上述した実施形態は、裁断対象として、板状のプラスティックや金属等でも適用可能である。
【符号の説明】
【0081】
1:裁断システム
10:制御装置
30:裁断装置
31:断裁刃部
34a:反射部材
35:発光・受光素子部(受光素子、発光素子)
35a:発光素子
35b:受光素子
Bk、Bk1、Bk2、Bk3:裁断対象
L:レーザ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段積みされた裁断対象を裁断する断裁刃部と、
前記多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定するために、前記裁断対象側からの光を受光する受光素子と、
を備え、
前記受光素子が、前記裁断対象の大きさに応じて前記断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置されたことを特徴とする裁断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の裁断装置において、
前記受光素子が、前記断裁刃部を保持する保持部に設置されたことを特徴とする裁断装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の裁断装置において、
前記断裁刃部の裁断動作と連動する位置に設置された発光素子を更に備え、
前記受光素子が、前記発光素子の光の反射光を受光することを特徴とする裁断装置。
【請求項4】
請求項3に記載の裁断装置において、
前記受光素子と前記発光素子とが一体化したことを特徴とする裁断装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の裁断装置において、
前記発光素子からの光を前記受光素子に反射する反射部材を更に備えたことを特徴とする裁断装置。
【請求項6】
裁断装置の断裁刃部により裁断される裁断対象を、当該裁断対象が多段積みされた状態で検査する裁断システムにおいて、
前記裁断対象の大きさに応じて前記断裁刃部の裁断位置が調整される調整動作に連動する位置に設置され、前記裁断対象側からの光を受光する受光素子と、
前記受光素子からの出力に応じて、前記多段積みされた裁断対象の良否を、裁断前に判定する良否判定手段と、
を備えることを特徴とする裁断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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