説明

装飾用粘着シート

【課題】優れた消臭性能及び防汚性能を長期間に亘って持続することができる装飾用粘着シートを提供する。
【解決手段】コーティング層2、基材シート1及び粘着剤層3がこの順序で積層一体化されてなる装飾用粘着シートであって、上記コーティング層2が、バインダー樹脂100重量部、所定の複合水酸化物縮合珪酸塩1.5〜200重量部、アミン化合物1.5〜200重量部、酸化チタン1.5〜200重量部及び界面活性剤を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭性能及び防汚性能を有する装飾用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
生活環境の向上に伴い、生活空間の快適性を向上させるべく、生活空間における不快臭を除去することに関心が高まっている。特に、近年の住居環境は高気密性であり、住居空間に不快臭がこもり易くなっており、不快臭の除去に対する要求は益々強くなっている。又、一般家庭においては、タバコ臭、生ごみ臭、ペット臭などの様々な不快臭の発生原因が存在し、様々な種類の不快臭に対して消臭効果のある消臭剤が求められている。
【0003】
更に、床材、壁材などの建材から発生するホルムアルデヒドなどの化学物質は、臭気として認識されない濃度レベルであっても、人の目、鼻、皮膚などに対して様々な症状を引き起こすことが報告されている。
【0004】
特に、化学物質過敏症の者に対しては日常生活に支障をきたすほどの悪影響を及ぼすことが明らかとなっている。そのため、建材からホルムアルデヒドなどの化学物質を放散させないように改良することは勿論のこと、建材から放散されたホルムアルデヒドなどの化学物質を吸着、除去できるような装飾用粘着シートが求められている。
【0005】
そこで、特許文献1及び特許文献2では、光触媒酸化チタンの酸化力を用いて、原因となる物質を分解、除去して消臭、防汚機能を持たせた繊維について開示があるものの、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、酢酸などの化学物質に対しては効果が低いといった問題点を有していた。
【0006】
又、特許文献3では、ヒドラジン誘導体及びコバルトフタロシアニン錯体を含有する消臭組成物で不織布シートなどの担持体を処理してなる消臭剤が開示され、特許文献4では、所定の塩化ビニル系又はスチレン系重合体のエマルジョン、水溶性高分子、及び、アジピン酸ヒドラジド又はグルタル酸ヒドラジドを含有する水性塗料組成物が開示されており、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド、酢酸などの化学物質に対する消臭効果は有効であるものの、消臭効果の持続期間が短いといった問題点を有していた。
【0007】
【特許文献1】特許3022192号公報
【特許文献2】特許3952602号公報
【特許文献3】特許3764872号公報
【特許文献4】特許3831793号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた消臭性能及び防汚性能を長期間に亘って持続することができる装飾用粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の装飾用粘着シートは、コーティング層、基材シート及び粘着剤層がこの順序で積層一体化されてなる装飾用粘着シートであって、上記コーティング層が、バインダー樹脂100重量部、下記式(1)で表される複合水酸化物縮合珪酸塩1.5〜200重量部、アミン化合物1.5〜200重量部、酸化チタン1.5〜200重量部及び界面活性剤を含有することを特徴とする。
【化1】

【0010】
本発明の装飾用粘着シートAには、図1に示したように、装飾用粘着シートの機械的強度を担保し、被着体に貼着させる際の作業性を向上させる目的で基材シート1を有している。この基材シート1としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニル系樹脂シート、アクリル系樹脂シート、プロピレン系樹脂シートなどの合成樹脂シートが挙げられ、曲率の大きな曲面を有する被着体への貼着が良好であることから、塩化ビニル系樹脂シートが好ましい。
【0011】
そして、上記塩化ビニル系樹脂シートを構成する塩化ビニル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0012】
なお、上記塩化ビニルモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、特に限定されず、例えば、酢酸ビニルモノマー、エチレンモノマーなどが挙げられる。
【0013】
又、上記塩化ビニル系樹脂シートには、その柔軟性を向上させる目的で、アジピン酸ポリエステル系可塑剤が含有されるのが好ましい。
【0014】
そして、上記塩化ビニル系樹脂シートに含有されるアジピン酸ポリエステル系可塑剤としては、特に限定されず、アジピン酸エステルモノマーを単独重合又は共重合してなるアジピン酸ポリエステル樹脂、アジピン酸エステルモノマーとこれと共重合可能な他のモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0015】
又、上記アジピン酸エステルモノマーは、アジピン酸をアルコール類でエステル化してなるものである。上記エステル化に用いられるアルコール類としては、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどが挙げられる。
【0016】
そして、上記アジピン酸ポリエステル系可塑剤の市販品としては、例えば、旭電化社から市販されている、商品名「アデカサイザーPN−250」、「アデカサイザーPN−260」、「アデカサイザーPN−280」、「アデカサイザーPN−310」、「アデカサイザーPN−350」、「アデカサイザーPN−400」、「アデカサイザーPN−446」、「アデカサイザーPN−606」、「アデカサイザーPN−650」、「アデカサイザーPN−1030」、「アデカサイザーPN−1430」、「アデカサイザーPN−3030」、「アデカサイザーPN−3130」などが挙げられる。これらのアジピン酸ポリエステル系可塑剤は、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【0017】
なお、可塑剤としては、上記アジピン酸ポリエステル系可塑剤以外に、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸などの二塩基酸をエステル化してなる二塩基酸エステルモノマーを重合してなる可塑剤や、一塩基酸をエステル化してなる一塩基酸エステルモノマーを重合してなる可塑剤なども市販されているが、塩化ビニル系樹脂シートには、これらの可塑剤の中でも、後述する粘着剤層への移行が発生しにくいアジピン酸ポリエステル系可塑剤を用いるのが好ましい。
【0018】
即ち、上記アジピン酸ポリエステル系可塑剤は、塩化ビニル系樹脂シートから粘着剤層3へ移行しにくく、(1)塩化ビニル系樹脂シートの柔軟性が失われて、装飾用粘着シートの曲面への追従性が低下する、(2)粘着剤層が軟化されることにより、装飾用粘着シートの被着体に対する適度な粘着力が損なわれる、(3)粘着剤層が軟化されて凝集力が低下し、装飾用粘着シートを被着体から剥離させた際に被着体の表面に糊残りが生じるなどの問題を生じさせにくいため、塩化ビニル系樹脂シート中にアジピン酸ポリエステル系可塑剤が含有されてなる装飾用粘着シートは、被着体への適度な粘着力を有し、被着体から剥離させた際に被着体の表面に糊残りを生じにくいと共に、曲面への追従性に優れたものとなる。
【0019】
そして、上記アジピン酸ポリエステル系可塑剤の重量平均分子量は1700〜2500が好ましく、1800〜2400がより好ましい。これは、アジピン酸ポリエステル系可塑剤の重量平均分子量が小さいと、アジピン酸ポリエステル系可塑剤が粘着剤層へ移行し、(1)塩化ビニル系樹脂シートの柔軟性が失われて、装飾用粘着シートの曲面への追従性が低下する、(2)粘着剤層が軟化されることにより、装飾用粘着シートの被着体に対する適度な粘着力が損なわれる、(3)粘着剤層が軟化されて凝集力が低下し、装飾用粘着シートを被着体から剥離させた際に被着体の表面に糊残りが生じるなどの問題が生じることがあるからである。一方、アジピン酸ポリエステル系可塑剤の重量平均分子量が大きいと、アジピン酸ポリエステル系可塑剤の粘度が高くなり、塩化ビニル系樹脂シートの製膜時において、塩化ビニル系樹脂シートを構成する樹脂組成物が均一に混練しにくくなって、塩化ビニル系樹脂シートの製膜が困難になることがあるからである。
【0020】
ここで、上記アジピン酸ポリエステル系可塑剤の重量平均分子量は、光散乱法により測定された値をいう。なお、光散乱法とは、溶液中の分子に光が衝突した際に発生する光の散乱の強度が、その分子の質量に比例することを利用した重量平均分子量の分析方法である。上記光散乱法による重量平均分子量の測定には、光散乱光度計などが用いられる。
【0021】
そして、上記塩化ビニル系樹脂シート中におけるアジピン酸ポリエステル系可塑剤の含有量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、5〜100重量部が好ましく、10〜90重量部がより好ましく、15〜70重量部が特に好ましい。これは、上記塩化ビニル系樹脂シート中におけるアジピン酸ポリエステル系可塑剤の含有量が少ないと、塩化ビニル系樹脂シートの柔軟性が低下し、特に冬場などの低温条件下では、装飾用粘着シートに縮みが生じて装飾性が低下し、或いは、装飾用粘着シートの曲面への追従性が低下して装飾用粘着シートを被着体に貼着させる際の作業性が低下することがあるからである。一方、アジピン酸ポリエステル系可塑剤の含有量が多いと、塩化ビニル系樹脂シートが柔らかくなり過ぎて、特に夏場などの高温条件下では装飾用粘着シートに延びが生じて装飾性が低下し、或いは、被着体に対する位置決めが困難となって装飾用粘着シートを被着体に貼着させる際の作業性が低下することがあるからである。
【0022】
更に、上記塩化ビニル系樹脂シートには、その製膜時における変色を防止する目的で、下記式(1)で示されるアルキル錫メルカプト化合物が含有されるのが好ましい。
【0023】
(R1)n−Sn−(SCH2CH2COOR2)4-n ・・・式(1)
(式中、nは1又は2、R1は炭素数1〜8のアルキル基、R2は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルキル基の誘導体)
【0024】
上記式(1)において、R1は炭素数1〜8のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基などが挙げられる。なお、上記式(1)において、nの値が2である場合、2つのR1は互いに同一でなくてもよい。
【0025】
又、上記式(1)において、R2は炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数1〜8のアルキル基の誘導体である。炭素数1〜8のアルキル基としては、上記R1と同様のものが挙げられ、その誘導体としては、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基などが挙げられる。なお、上記式(1)において複数個存在するR2は、互いに同一でなくてもよい。
【0026】
更に、上記塩化ビニル系樹脂シートには、その製膜時における変色を防止する目的で、有機亜リン酸エステルが含有されるのが好ましい。
【0027】
上記塩化ビニル系樹脂シートの製膜方法としては、特に限定されず、例えば、溶液キャスティング法、カレンダー成形法などが挙げられ、溶液キャスティング法が好ましい。
【0028】
上記基材シート1の厚みは、薄いと、装飾用粘着シートに腰がなくなり、装飾用粘着シートの取扱性が低下し、厚いと、装飾用粘着シートの柔軟性が低下して、装飾用粘着シートの曲面への追従性が低下することがあるので、20〜110μmが好ましく、50〜90μmがより好ましい。
【0029】
そして、基材シートの一面にはコーティング層2が積層一体化されている。このコーティング層2は、バインダー樹脂、複合水産難燃性物縮合珪酸塩、アミン化合物、酸化チタン及び界面活性剤を含有している。
【0030】
コーティング層2を構成しているバインダー樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどの水溶性樹脂、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂などが挙げられる。なお、装飾用粘着シートAの柔軟性を調整し、或いは、基材シート1に対するコーティング層2の密着性を向上させるために、コーティング層2に可塑剤やカップリング剤などの添加剤を添加してもよい。
【0031】
又、コーティング層2を構成している複合水酸化物縮合珪酸塩は、キブサイト構造の水酸化アルミニウム八面体層の空位(ベーカント)にリチウムイオン及びマグネシウムイオンを入れて基本骨格とし、その中間層に縮合ケイ酸イオンが導入されたものであり、下記式(1)で表される構造を有している。
【0032】
【化2】


(式(1)中、mは0≦m<5の範囲にある数、xは0≦x<1の範囲にある数、yは2≦y≦4の範囲にある数を示す)
【0033】
なお、上記複合水酸化物縮合珪酸塩としては、例えば、[Al2(Li0.90・Mg2+0.10)・(OH)62(Si372-1.10・3H2O(粒子径:0.3〜1.0μm)が戸田工業社から商品名「OPTIMA−LSA」にて市販されている。
【0034】
そして、上記複合水酸化物縮合珪酸塩は、ホルムアルデヒドなどの化学物質の吸着性に優れており、空気中に放散されたホルムアルデヒドなどの化学物質を良好に吸着、除去する。
【0035】
又、複合水酸化物縮合珪酸塩の粒子径は、大きいと、装飾用粘着シートの表面にざらつき感が生じ、或いは、装飾用粘着シートの意匠性が低下することがあるので、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が特に好ましい。なお、複合水酸化物縮合珪酸塩の粒子径は、レーザ回折散乱粒子径分布測定法によって測定されたものをいう。
【0036】
コーティング層2中における複合水酸化物縮合珪酸塩の含有量は、少ないと、装飾用粘着シートの消臭性能が低下し、多いと、装飾用粘着シートの表面にざらつき感が生じ、或いは、装飾用粘着シートの意匠性が低下するので、バインダー樹脂100重量部に対して1.5〜200重量部に限定され、20〜70重量部が好ましい。
【0037】
そして、コーティング層2を構成しているアミン化合物としては、装飾用粘着シートの消臭性能に優れていることから、ヒドラジン誘導体が好ましい。ヒドラジン誘導体としては、例えば、ヒドラジン系化合物と脂肪族系化合物との反応生成物、ヒドラジン系化合物と芳香族系化合物との反応生成物などのヒドラジン誘導体などが挙げられる。
【0038】
ヒドラジン系化合物としては、特に限定されず、例えば、ヒドラジン、セミカルバジド、カルボノヒドラジドなどが挙げられる。
【0039】
又、ヒドラジン系化合物と反応させる脂肪族系化合物としては、特に限定されず、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
【0040】
アミン化合物としては、ヒドラジン及びセミカルバジドからなる群より選ばれる1種以上の化合物と、炭素数が8〜16である、脂肪族モノカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族モノカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上の化合物との反応生成物や、ヒドラジン及びセミカルバジドからなる群より選ばれる1種以上の化合物と、炭素数が8〜16である、モノグリシジル誘導体及びジグリシジル誘導体からなる群より選ばれる1種以上の化合物との反応生成物が好ましく、このようなアミン化合物を用いることによって、装飾用粘着シートの消臭性能をより優れたものとすることができる。
【0041】
上記反応生成物としては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジドなどが挙げられる。
【0042】
又、アミン化合物の粒子径は、大きいと、装飾用粘着シートの表面にざらつき感が生じ、或いは、装飾用粘着シートの意匠性が低下するので、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下が特に好ましい。なお、アミン化合物の粒子径は、レーザ回折散乱粒子径分布測定法に準拠して測定されたものをいう。
【0043】
ヒドラジン誘導体の25℃、105Paにおける水に対する溶解度は、高いと、清掃時などにおいて水と接触した際にヒドラジン誘導体がコーティング層中から流出し、装飾用粘着シートの消臭性能が低下することがあるので、5g/リットル以下が好ましい。
【0044】
そして、コーティング層2中におけるアミン化合物の含有量は、少ないと、装飾用粘着シートの消臭性能が低下し、多いと、装飾用粘着シートにざらつき感がでたり或いは風合いを損ねるので、バインダー樹脂100重量部に対して1.5〜200重量部に限定され、20〜70重量部が好ましい。
【0045】
又、酸化チタンとしては、ルチル型、アナターゼ型の何れの酸化チタンでもよく、更に、板チタン石でもよい。酸化チタンとしては、活性が高いことから、アナターゼ型の酸化チタンが好ましい。
【0046】
酸化チタンの粒子径は、大きいと、装飾用粘着シートの表面にざらつき感が生じ、或いは、装飾用粘着シートの意匠性が低下することがあるので、1μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.05μm以下が特に好ましい。なお、酸化チタンの粒子径は、レーザ回折散乱粒子径分布測定法に準拠して測定されたものをいう。
【0047】
更に、コーティング層2中における酸化チタンの含有量は、少ないと、装飾用粘着シートの防汚性能が低下し、多いと、装飾用粘着シートにざらつき感がでたり或いは風合いを損ねるので、バインダー樹脂100重量部に対して1.5〜200重量部に限定され、20〜70重量部が好ましい。
【0048】
そして、界面活性剤としては、特に限定されず、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。
【0049】
上記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられ、具体的には、例えば、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ステアラミドメチルピリジウムクロライドなどが挙げられる。
【0050】
又、上記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0051】
そして、上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレンアルコールエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ソルビトールエステルのポリオキシエチレンエーテルなどが挙げられる。
【0052】
又、コーティング層2中における界面活性剤の含有量は、少ないと、コーティング層と基材との密着性が不足することがあり、多いと、装飾用粘着シートの風合いを損ねるとなることがあるので、バインダー樹脂100重量部に対して1〜5重量部が好ましい。
【0053】
そして、基材シート1の他面には粘着剤層3が積層一体化されている。このような粘着剤層3を構成している粘着剤としては、特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などが挙げられ、光や酸素に対して安定性に優れていることから、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0054】
又、粘着剤層3の厚さは、薄いと、装飾用粘着シートの被着体への粘着力が不充分となることがあり、厚いと、装飾用粘着シートを被着体ら剥離させる際に粘着剤層が凝集破壊を生じて被着体の表面に糊残りを生じることがあるので、10〜50μmが好ましい。
【0055】
次に、装飾用粘着シートの製造方法の一例について説明する。先ず、樹脂バインダーを水に溶解してなるバインダー水溶液、或いは、樹脂バインダーを水に分散させてなるバインダー分散液を作製する。なお、以下においては、バインダー水溶液とバインダー分散液を総称してバインダー液という。
【0056】
そして、バインダー液中に、上記式(1)で示される複合水酸化物縮合珪酸塩、アミン化合物、酸化チタン及び界面活性剤を添加し均一に攪拌混合して塗工液を作製する。次に、この塗工液を基材シートの一面に塗布して乾燥させることによって、基材シートの一面にコーティング層を形成する。
【0057】
なお、基材シートの一面に塗工液を塗布する方法は、公知の方法が採用でき、グラビアコーターなどを用いたロールコート法、バーコート法、ディップ法、スプレー法、刷毛塗り法などが挙げられる。又、塗工液の乾燥方法としては、加熱乾燥などの強制乾燥、自然乾燥の何れでもよく、加熱乾燥としては、例えば、熱風乾燥法、赤外線乾燥法、遠赤外線乾燥法などが挙げられる。
【0058】
次に、基材シートの他面にリバースコータ法やホットメルトコート法などの汎用の方法により粘着剤を塗布、乾燥させて粘着剤層を形成して装飾用粘着シートAを製造することができる。
【0059】
そして、装飾用粘着シートAは、曲面を含めた任意の被着体上に粘着剤層3によって貼着させて用いられ、空気中に放散されたホルムアルデヒドなどの化学物質を円滑に吸着、除去する。
【0060】
更に、装飾用粘着シートAは、そのコーティング層2が防汚性能を有するので、長期間に亘る使用にあっても、コーティング層2の表面に汚れが付着するのを概ね防止することができる。
【0061】
よって、装飾用粘着シートAのコーティング層2の消臭性能を長期間に亘って確実に発揮させることができ、空気中のホルムアルデヒドなどの化学物質を確実に吸着、除去することができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の装飾用粘着シートは、コーティング層、基材シート及び粘着剤層がこの順序で積層一体化されてなる装飾用粘着シートであって、上記コーティング層が、バインダー樹脂100重量部、下記式(1)で表される複合水酸化物縮合珪酸塩1.5〜200重量部、アミン化合物1.5〜200重量部、酸化チタン1.5〜200重量部及び界面活性剤を含有するので、空気中に存在するホルムアルデヒドなどの化学物質を円滑に吸収、除去し優れた消臭性能を発揮する。
【0063】
そして、本発明の装飾用粘着シートのコーティング層は優れた防汚性能をも有しており、長期間に亘る使用によっても、コーティング層の表面に汚れが付着しにくく、よって、本発明の装飾用粘着シートは、その消臭性能を長期間に亘って確実に発揮すると共に美麗な状態を長期間に亘って維持することができる。
【0064】
更に、本発明の装飾用粘着シートは、優れた柔軟性を有していることから、様々な曲面にも円滑に且つ美麗に貼着することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
(実施例1、2、比較例1〜8)
塩化ビニル樹脂(鐘淵化学社製 商品名「PSH10」)100重量部、アジピン酸ポリエステル系可塑剤(旭電化社製 商品名「アデカサイザーPN−446」、重量平均分子量:1800)30重量部、アルキル錫メルカプト化合物(勝田化工社製 商品名「TM−181FSJ」、モノメチル錫トリス(ノルマルオクチル−3−メルカプトプロピオネート){(CH3)−Sn− (SCH 2CH 2COOC817)3}及びジメチル錫ビス(ノルマルオクチル−3−メルカプトプロピオネート){(CH3)2−Sn− (SCH 2CH 2COOC817)2}の混合物)5重量部、有機亜リン酸エステル(勝田化工社製)2重量部及びベンゾフェノン系紫外線吸収剤(旭電化社製 商品名「Mark1413」)4重量部を均一に混練し、溶液キャスティング法により、厚み80μmの透明な塩化ビニル樹脂シートを得た。
【0066】
得られた塩化ビニル樹脂シートの一面に木目模様の印刷をし、塩化ビニル樹脂シートの一面に、表面層として上記塩化ビニル樹脂シートを積層一体化させて基材シートを作製した。
【0067】
表1に示した所定量の複合水酸化物縮合珪酸塩A([Al2(Li0.90・Mg2+0.10)・(OH)62(Si372-1.10・3H2O)(戸田工業社製 商品名「OPTIMA−LSA」、粒子径:0.3〜1.0μm)、複合水酸化物縮合珪酸塩B(Li2Mg0.10Al4・(OH)12.20(CO30.04(SO40.90・4H2O)(水澤化学工業社製 商品名「ミズカラック」、粒子径:0.5〜1.5μm)、合成ハイドロタルサイト(Mg4.5Al3・(OH)13CO3・3.5H2O)(協和化学社製 商品名「DHT−4A」、粒子径:0.8 〜1.5μm)、セバシン酸ジヒドラジド(大塚化学社製 粒子径:1〜3μm、25℃、105Paにおける水に対する溶解度:4g/リットル)、可視光応答型酸化チタン(石原産業社製 商品名「フォトペークMPT−623」、粒子径:15〜20μm)及び非イオン性界面活性剤(信越化学社製 商品名「メトローズSM」)を水100重量部に加えた後に攪拌機によって攪拌し、更に、表1に示した所定量のアクリル系バインダー樹脂(日本触媒社製 商品名「ユーダブルE−10」)を加えて攪拌して均一な塗工液を得た。
【0068】
この塗工液を基材シートの一面にロールコーターを用いて塗布して130℃にて10分間に亘って乾燥し、基材シートの一面にコーティング層を積層一体化した。
【0069】
次に、アクリル系粘着剤(積水化学工業社製 商品名「NM2」)100重量部を酢酸エチルに溶解させてアクリル系粘着剤溶液を作製し、このアクリル系粘着剤溶液にイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製 商品名「コロネートL−28E」)2重量部を添加して均一になるように攪拌した。
【0070】
続いて、表面にシリコーン系樹脂離型剤により離型処理が施された離型シートを用意し、この離型シートの離型処理面に、コンマコーターを用いて上記アクリル系粘着剤溶液を塗布して乾燥させて酢酸エチルを除去することによって、基材シートの他面に厚み30μmの粘着剤層を積層一体化した。
【0071】
そして、上記離型シートの離型処理面に形成させた粘着剤層を上記基材シートの他面に重ね合わせて転写させることによって、コーティング層、基材シート及び粘着剤層がこの順序に積層一体化されてなる装飾用粘着シートを得た。なお、粘着剤層上には、離型シートが剥離可能に積層されていた。
【0072】
得られた装飾用粘着シートについて、ホルムアルデヒド除去性能、アンモニア除去性能、除去性能の持続耐久性、防汚性能及び装飾性を下記の要領で評価し、その結果を表1に示した。
【0073】
(ホルムアルデヒド除去性能)
装飾用粘着シートから一辺が10cmの平面正方形状の試験片を複数枚切り出した。そして、複数枚の試験片を内容量2リットルのアクリル製の容器の内面全面に貼付した後、容器内に濃度が200ppmとなるようにホルムアルデヒドガスを注入した。
【0074】
アクリル製の容器内にホルムアルデヒドを注入してから48時間経過後に、アクリル製の容器内のホルムアルデヒドガスの残存濃度A(ppm)を測定した。そして、下記式に基づいて除去率を算出し、下記基準に基づいて評価した。
除去率(%)=100×(200−A)/200
【0075】
◎:除去率が95%以上であった。
○:除去率が90%以上で且つ95%未満であった。
×:除去率が90%未満であった。
【0076】
(アンモニア除去性能)
ホルムアルデヒドガスに代えてアンモニアガスをアクリル製の容器に注入したこと以外は、上記ホルムアルデヒド除去性能の測定と同様にしてアンモニアガスの除去率(%)を算出し、上記の基準により評価を行った。
【0077】
(除去性能の持続耐久性)
装飾用粘着シートのホルムアルデヒド除去性能の測定を上述と同様の要領で行って除去率を算出し、この除去率を「洗浄前の除去率」とした。次に、上記装飾用粘着シートを水道水で3回洗浄して乾燥させた後、上記と同様の要領でホルムアルデヒド除去性能の測定を行って除去率を算出し、この除去率を「洗浄後の除去率」とした。そして、洗浄前後の除去率から持続率を下記式に基づいて算出し、下記に基づいて評価した。
持続率(%)=(洗浄後の除去率)/(洗浄前の除去率)×100
◎:持続率が95%以上であった。
○:持続率が90%以上で且つ95%未満であった。
×:持続率が90%未満であった。
【0078】
(防汚性能)
装飾用粘着シートに醤油を滴下して24時間経過後に、洗浄布(クレシア社製 商品名「JKワイパー150−S」)を用いて拭き取り試験を行い、下記基準により評価を行った。
◎:水拭きにより汚れの痕跡がなくなった。
○:水拭きでは汚れが落ちないが、合成洗剤原液を洗浄布に含ませて丁寧に拭き取った
後、水で拭き取り、乾拭きをすることによって汚れの痕跡がなくなった。
×:水拭きでは汚れが落ちないが、合成洗剤原液を洗浄布に含ませて丁寧に拭き取った
後、水で拭き取り、乾拭きをしたが汚れの痕跡が残った。
【0079】
(装飾性評価)
装飾用粘着シートに48時間に亘って日光を照射し、装飾用粘着シートに印刷された木目の鮮明さを目視観察し、下記基準により、装飾用粘着シートの装飾性を評価した。
◎:装飾用粘着シートに印刷された木目が非常に鮮明である。
○:装飾用粘着シートに印刷された木目が鮮明である。
×:装飾用粘着シートに印刷された木目が鮮明でない。
【0080】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の装飾用粘着シートを示した模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0082】
1 基材シート
2 コーティング層
3 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング層、基材シート及び粘着剤層がこの順序で積層一体化されてなる装飾用粘着シートであって、上記コーティング層が、バインダー樹脂100重量部、下記式(1)で表される複合水酸化物縮合珪酸塩1.5〜200重量部、アミン化合物1.5〜200重量部、酸化チタン1.5〜200重量部及び界面活性剤を含有することを特徴とする装飾用粘着シート。
【化1】


(式(1)中、mは0≦m<5の範囲にある数、xは0≦x<1の範囲にある数、yは2≦y≦4の範囲にある数を示す)
【請求項2】
アミン化合物は、25℃、105Paにおける水に対する溶解度が5g/リットル以下であるヒドラジン誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の装飾用粘着シート。
【請求項3】
基材シートは、塩化ビニル系樹脂を含有することを特徴とする請求項1に記載の装飾用粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2010−65101(P2010−65101A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231104(P2008−231104)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】