説明

製品情報の刻印方法

【課題】デバイスの裏面に製品情報を形成するに際し、その効率を高めて生産性を向上させる。
【解決手段】分割予定ラインによって区画されて複数のデバイスが表面に形成されたウェーハWの裏面W2を研削してウェーハWを所望の厚さに形成する裏面研削工程を遂行した後、ウェーハWをデバイスに分割する前に、ウェーハWの裏面W2にレーザー光211aを照射して個々のデバイスの裏面に製品情報30を刻印する刻印工程を遂行し、ウェーハWの段階で製品情報の刻印を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを構成するデバイスの裏面に製品情報を刻印する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスは、分割予定ラインによって区画されてウェーハの表面に複数形成される。そして、ウェーハの裏面が研削されて所定の厚さに形成され、プローバーによって各デバイスの良/不良が検査され、不良品デバイスにマークが付された後に、分割予定ラインを切削等してダイシングすることによって、個々のデバイスが形成される。良品デバイスの裏面には、そのデバイスの機能、製品番号、ロット番号等の製品情報が刻印される(例えば特許文献1、2参照)。そして、その製品情報によって、その後の組立工程が管理される。
【0003】
【特許文献1】特開平5−121573号公報
【特許文献2】特開平5−166949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウェーハがデバイスに分割された後に、個々のデバイスごとに製品情報を刻印するのは手間がかかり、生産性が低いという問題がある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、デバイスの裏面に製品情報を形成する場合において、その効率を高めて生産性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、デバイスの裏面に製品情報を刻印する製品情報刻印方法に関し、分割予定ラインによって区画されて複数のデバイスが表面に形成されたウェーハの裏面を研削してウェーハを所望の厚さに形成する裏面研削工程と、ウェーハの裏面にレーザー光を照射して個々のデバイスの裏面に製品情報を刻印する刻印工程とから少なくとも構成されることを特徴とする。
【0007】
裏面研削工程において、ウェーハの裏面は、粒径が1μm以下の砥粒で構成された研削砥石によって研削されることが望ましい。また、刻印工程の前に、ウェーハの裏面から歪層を除去するCMPまたはドライポリッシュが施され裏面が鏡面に仕上げられる鏡面加工工程が遂行されることが望ましい。刻印工程の後に、分割予定ラインに沿ってウェーハを個々のデバイスに分割する分割工程が遂行される。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ウェーハを個々のデバイスに分割する前に、ウェーハの状態でウェーハを構成するデバイスの裏面に製品情報を刻印するため、個々のデバイスに分割した後に刻印する場合と比較すると、効率が良く、生産性が向上する。
【0009】
また、裏面に製品情報を刻印する前にウェーハの裏面が鏡面加工されると、各デバイスの抗折強度が高まると共に、製品情報が見えやすくなる。裏面が鏡面加工された段階では、内部の銅イオン等のゲッタリング効果が弱くなるが、製品情報を刻印することによってゲッタリング効果が高くなり、デバイスの品質を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すウェーハWの表面には、縦横に形成された分割予定ラインSに区画されて複数のデバイスDが形成されている。このウェーハWの表面W1には、裏面W2に研削に先立って保護テープTが貼着される。
【0011】
次に、例えば図2に示す研削装置1のチャックテーブル10において、保護テープTを下にしてウェーハWを保持し、ウェーハの裏面W2を露出させた状態とする。
【0012】
図2に示した研削装置1は、ウェーハWを保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持されたウェーハを研削する研削手段11と、研削手段11を上下方向に研削送りする研削送り手段12とを備えている。
【0013】
チャックテーブル10は、回転可能であると共に、ジャバラ100の伸縮を伴って水平方向に移動可能となっている。
【0014】
研削手段11は、垂直方向の軸心を有するスピンドル110がハウジング111によって回転可能に支持され、スピンドル110の上端部にモータ112が連結されると共にスピンドル110の下端部に形成されたホイールマウント113に研削ホイール114が装着されて構成される。研削ホイール114の下面には、研削砥石115が固着されている。研削砥石115は、例えば、粒径が1μm以下の砥粒がボンド剤によって固められて構成される。
【0015】
研削送り手段12は、垂直方向に配設されたボールネジ120と、ボールネジ120と平行に配設された一対のガイドレール121と、ボールネジ120の上端に連結されたパルスモータ122と、ボールネジ120の螺合すると共に側部がガイドレール121に摺接しハウジング111を支持する支持部123とから構成される。
【0016】
図3に示すように、チャックテーブル10にウェーハWが保持されると、チャックテーブル10が回転することによりウェーハWが回転すると共に、スピンドル110の回転に伴い研削ホイール114が回転しながら、図2に示した研削送り手段12によって駆動されて研削手段11が下降し、回転する研削砥石115がウェーハWの裏面W2に接触し、裏面W2が研削される(裏面研削工程)。
【0017】
そして、研削によりウェーハWが所望の厚さに形成されると、チャックテーブル10からウェーハWを保護テープTと共に取り外し、次に、例えば図4に示すレーザー加工装置2に搬送し、レーザー加工装置2の保持テーブル20において、裏面W2が露出した状態で研削後のウェーハWを保持する。
【0018】
図4に示したレーザー加工装置2は、ウェーハWを保持する保持テーブル20と、保持テーブル20に保持されたウェーハに対してレーザー光を照射して加工を施すレーザー光照射手段21とを備えている。
【0019】
保持テーブル20は、支持板200に対して回転可能及びY軸方向に移動可能に支持されていると共に、加工送り手段22によってX軸方向に加工送りされる構成となっている。加工送り手段22は、保持テーブル20とレーザー光照射手段21とを相対的にX軸方向に加工送りするもので、X軸方向に配設されたボールネジ220と、ボールネジ220と平行に配設された一対のガイドレール221と、ボールネジ220の一端に連結されたモータ222と、内部のナットがボールネジ220に螺合すると共に下部がガイドレール221に摺接する移動板223と、移動板223上に設けた位置調整手段224と、位置調整手段224によって駆動されてY軸方向に移動可能な回動手段225とを備えており、モータ222に駆動されてボールネジ220が回動するのに伴い、移動板223、位置調整手段224及び回動手段225が、ガイドレール221にガイドされてX軸方向に移動する構成となっている。
【0020】
位置調整手段224は、移動板223上においてY軸方向に配設されたボールネジ224aと、ボールネジ224aと平行に配設された一対のガイドレール224b、ボールネジ224aの一端に連結されたパルスモータ224cと、内部のナットがボールネジ224aに螺合すると共に下部がガイドレール224bに摺接する移動板224dとから構成され、パルスモータ224cによって駆動されてボールネジ224aが回動するのに伴い、移動板224d及び回動手段225がガイドレール224bにガイドされてY軸方向に移動する構成となっている。
【0021】
保持テーブル20は、回動手段225に連結されており、回動手段225に備えた図示しないパルスモータによって駆動されて所望の角度回動可能となっている。
【0022】
レーザー光照射手段21は、ハウジング210によって加工ヘッド211が支持されて構成されている。加工ヘッド211は、下方に向けてレーザー光を照射する機能を有し、照射されるレーザー光の出力は、出力調整手段212によって調整される。レーザー光は、発振手段213によって発振してパルスレーザ光となる。発振手段213は、周波数設定手段214に設定された周波数にしたがってパルスレーザ光を発振させることができる。
【0023】
ハウジング210の側部には、赤外線によりウェーハを撮像する赤外線カメラ230を備えたアライメント手段23が固定されている。このアライメント手段23は、ウェーハWの分割予定ラインを検出する機能を有する。
【0024】
レーザー光照射手段21及びアライメント手段23は、Z軸方向送り手段24によってZ軸方向に移動可能となっている。Z軸方向送り手段24は、壁部240と、壁部240の一方の面においてZ軸方向に配設されたボールネジ241と、ボールネジ241と平行に配設された一対のガイドレール242と、ボールネジ241の一端に連結されたパルスモータ243と、内部のナットがボールネジ241に螺合すると共に側部がガイドレール242に摺接する支持部244とから構成される。支持部244はレーザー光照射手段21のハウジング210を支持しており、パルスモータ243に駆動されてボールネジ241が回動するのに伴い支持部244がガイドレール242にガイドされて昇降し、支持部244に支持されたレーザー光照射手段21も昇降する構成となっている。
【0025】
Z軸方向送り手段24及びレーザー光照射手段21は、Y軸方向送り手段25によってY軸方向に移動可能となっている。Y軸方向送り手段25は、保持テーブル20とレーザー光照射手段21とを相対的にY軸方向に割り出し送りするもので、Y軸方向に配設されたボールネジ250と、ボールネジ250と平行に配設されたガイドレール251と、ボールネジ250の一端に連結されたパルスモータ252と、内部のナットがボールネジ250に螺合すると共に下部がガイドレール251に摺接する移動基台253とから構成される。移動基台253は、Z軸方向送り手段24を構成する壁部240と一体に形成されており、パルスモータ252に駆動されてボールネジ250が回動するのに伴い、移動基台253及び壁部240がガイドレール251にガイドされてY軸方向に移動し、Z軸方向送り手段24及びレーザー光照射手段21がY軸方向に移動する構成となっている。
【0026】
保持テーブル20においては、保護テープTを下にしてウェーハWを保持し、ウェーハWの裏面W2を露出させた状態とする。そして、保持テーブル20がX軸方向に移動し、ウェーハWを赤外線カメラ230の直下に位置させた状態で、ウェーハWの裏面W2側から赤外線による撮像を行う。
【0027】
例えば、図5に示すように、表面に形成された分割予定ラインSの中央線から一定距離Lだけ離れた位置の刻印領域3にレーザー光を照射して製品情報を刻印する場合は、赤外線カメラ230による撮像によって取得した表面の画像と、予め撮像してアライメント手段23に記憶させた表面の画像とのマッチングを行うことにより分割予定ラインSを検出し、その中央線Soから距離LだけY軸方向に離れた位置に加工ヘッド211を位置させる。
【0028】
そしてその状態で、保持テーブル20をX軸方向及びY軸方向に移動させながら、図6に示すように加工ヘッド211からウェーハWの裏面W2に向けてレーザー光211aを照射し、文字やマーク等からなる製品情報30を刻印する(刻印工程)。このとき、保持テーブル20が、図4に示した加工送り手段22の駆動によりX軸方向に移動し、位置調整手段224の駆動によりY軸方向に移動することにより、製品情報30を構成する文字やマーク等が刻印される。
【0029】
加工ヘッド211から照射されるレーザー光としては、例えば波長が355nmのYAGレーザーを用い、平均出力は5ワット、繰り返し周波数は20キロヘルツ、スポット径は100μmとする。
【0030】
1つのデバイスに製品情報30が刻印された後は、隣り合う分割予定ラインの間隔ずつレーザー光照射手段21をY軸方向に移動させるか、または保持テーブル20をY軸方向に移動させながら、順次各デバイスに製品情報30の刻印を行う。一列のデバイスへの刻印が終了した後は、保持テーブル20を分割予定ラインの間隔分だけX軸方向に移動させ、同様の刻印を行う。これを順次行うことで、すべてのデバイスに製品情報30が形成される。
【0031】
このようにして、デバイスに分割される前のウェーハの状態で製品情報を刻印すると、デバイスが一定間隔で整列状態となって配置されているため、個々のデバイスに分割した後に刻印する場合と比較して効率が良く、生産性が向上する。
【0032】
すべてのデバイスDの裏面に製品情報の刻印が行われた後は、例えば、引き続き図4に示したレーザー加工装置2を用いて、ウェーハWの分割予定ラインSにレーザー光を照射して裏面から表面に貫通する溝を形成し、個々のデバイスに分割する。
【0033】
分割予定ラインSの検出は、製品情報の刻印時と同様に、赤外線カメラ230によるウェーハWの裏面側からの撮像と、アライメント手段23によるパターンマッチングによって行う。そして、検出された分割予定ラインと加工ヘッド211のY座標が一致した状態で保持テーブル20をX軸方向に移動させながら、検出した分割予定ラインに加工ヘッド211からレーザー光を照射することにより、1本の分割予定ラインに溝が形成される。また、保持テーブル20のX軸方向の移動と共に、Y軸方向送り手段25によって隣り合う分割予定ライン間の間隔分ずつ加工ヘッド211をY軸方向に移動させながら各分割予定ラインにレーザー光を照射することにより、同方向のすべての分割予定ラインに溝が形成される。更に、保持テーブル20を90度回転させてから同様にレーザー光を照射すると、すべての分割予定ラインに表裏を貫通する溝が形成され、個々のデバイスに分割される。このようにして、裏面に製品情報が刻印されたデバイスが形成される(分割工程)。
【0034】
なお、分割工程には、図4に示したレーザー加工装置2以外の装置、例えば切削装置等を用いることもできるが、レーザー加工装置2を用いれば、ウェーハの搬送が不要であり、生産性が高い。
【0035】
上記説明した例では、裏面研削工程終了直後に刻印工程を遂行することとしたが、裏面研削工程の後であって刻印工程の前に、ウェーハの裏面から歪層を除去して裏面を鏡面に仕上げる鏡面加工工程を遂行してもよい。鏡面加工工程は、例えばCMP(化学的機械的研磨)、ドライポリッシングによって行われる。
【0036】
裏面研削工程の後に鏡面加工工程が遂行された状態では、裏面の歪層が除去されているため、ウェーハ内部の銅イオン等のゲッタリング効果が低下し、デバイスの品質が低下するおそれがある。特に、裏面研削工程において、ウェーハの厚さが100μm以下、50μm以下というように極めて薄く形成されると、ゲッタリング効果を喪失するおそれがある。
【0037】
しかし、ウェーハの裏面が鏡面加工されても、その後に刻印工程が遂行され、裏面に製品情報が刻印されると、それによってゲッタリング効果が高くなり、デバイスの品質が向上する。また、鏡面加工された面に製品情報が刻印されると、鏡面と製品情報とのコントラストが明確となり、鏡面加工されていない面に製品情報を刻印する場合と比較して、製品情報が見えやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】ウェーハ及び保護テープを示す斜視図である。
【図2】研削装置の一例を示す斜視図である。
【図3】ウェーハの裏面を研削する状態を示す斜視図である。
【図4】レーザー加工装置の一例を示す斜視図である。
【図5】分割予定ラインと刻印領域との位置関係の一例を示す説明図である。
【図6】ウェーハの裏面に製品情報を刻印する状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
W:ウェーハ
W1:表面 S:分割予定ライン D:デバイス
W2:裏面
T:保護テープ
1:研削装置
10:チャックテーブル 100:ジャバラ
11:研削手段
110:スピンドル 111:ハウジング 112:モータ 113:ホイールマウント
114:研削ホイール 115:研削砥石
12:研削送り手段
120:ボールネジ 121:ガイドレール 122:パルスモータ 123:支持部
2:レーザー加工装置
20:保持テーブル 200:支持板
21:レーザー光照射手段
210:ハウジング 211:加工ヘッド 212:出力調整手段 213:発振手段
214:周波数設定手段
22:加工送り手段
220:ボールネジ 221:ガイドレール 222:モータ 223:移動板
224:位置調整手段 225:回動手段
23:アライメント手段 230:赤外線カメラ
24:Z軸方向送り手段
240:壁部 241:ボールネジ 242:ガイドレール 243:パルスモータ
244:支持部
25:Y軸方向送り手段
250:ボールネジ 251:ガイドレール 252:パルスモータ 253:移動基台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスの裏面に製品情報を刻印する製品情報刻印方法であって、
分割予定ラインによって区画されて複数のデバイスが表面に形成されたウェーハの裏面を研削して該ウェーハを所望の厚さに形成する裏面研削工程と、
該ウェーハの裏面にレーザー光を照射して個々のデバイスの裏面に製品情報を刻印する刻印工程と
から少なくとも構成される製品情報刻印方法。
【請求項2】
前記裏面研削工程において、前記ウェーハの裏面は、粒径が1μm以下の砥粒で構成された研削砥石によって研削される
請求項1に記載の製品情報刻印方法。
【請求項3】
前記刻印工程の前に、前記ウェーハの裏面から歪層を除去するCMPまたはドライポリッシュが施され該裏面が鏡面に仕上げられる鏡面加工工程が遂行される
請求項1または2に記載の製品情報刻印方法。
【請求項4】
前記刻印工程の後に、前記分割予定ラインに沿って前記ウェーハを個々のデバイスに分割する分割工程が遂行される
請求項1、2または3に記載の製品情報刻印方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−178886(P2008−178886A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−12394(P2007−12394)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】