説明

製品情報の印字方法および表示パネル

【課題】表示パネルに、任意な情報を簡単に印字することができ、かつ表示パネルの製品品質を落とすことなく、さらにシート基板からの分断前にも印字することができるようにする。
【解決手段】2枚の基板(第1の基板2−1と第2の基板2−2)が周辺シール部3によって貼り合わされる表示パネル1において、周辺シール部3の外側にマーキング用のダミーシール部4を設ける。ダミーシール部4は、例えば、周辺シール部3に対応する位置にシール材を塗布するシール印刷工程において、予め定めておいたダミー印刷部分(ダミーシール部4に対応する位置)にシール材を塗布することによって形成する。そして、2枚の基板が貼り合わされた後、その2枚の基板間に形成されていうるダミーシール部4を印字エリアとしてレーザによるマーキングを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルなどの表示パネルにおける製品情報の形成方法およびその方法を用いて製品情報が印字された表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
表示パネルにおける製品情報(ロット番号等)を印字する方法として、従来では、表示パネルの側面や表面に、インク等で印刷形成する方法がある(以下、インク形成方法という。)。また、レーザ光を用いて表示パネルの表面に製品情報を印字する方法(以下、レーザマーキング方法という。)も知られている。
【0003】
特許文献1には、表示機能への影響を防止しつつロット番号などの製品情報を記録することができる電気光学装置が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−303843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のインク形成方法では、情報量が限られるとともに、カラーマーキングを行うと、マーキングが剥がれるといった問題があり、また、剥がれたマーキングが表示パネルに再付着するという問題もある。
【0006】
また、従来のレーザマーキング方法では、マーキングによる情報量を多くすることができるとともにマーキングが剥がれるといった問題はないが、ガラス基板表面に印字する場合には、基板表面に傷をつけ、微少なガラス片が異物となって飛散し、異物不良が生じるという問題がある。
【0007】
特許文献1には、このような問題を解決するために、例えば、電気光学装置の表示領域外であって、偏光板や反射板などの光学素子の面上や、基板上に光学素子を形成しない場合には基板の外側の面上(液晶を狭持する面とは逆の面上)に、レーザやインクジェット印刷などによってロット番号などを記録する方法が開示されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、電気光学装置の表示機能への影響を防止することはできても、以下に示すような問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1には、複数の電気光学装置が形成されているシート基板(母基板)から分断した後に装着される偏光板や反射板に対し製品情報を印字する例が記載されているが、この方法では分断前の製造工程に関する製品情報を利用することができないという問題がある。
【0010】
また、特許文献1には、偏光板や反射板などの最外面上に記録する他に、遮光膜や反射膜や有色膜等を利用して、それらをフォトリソグラフィやエッチングによりパターニングする例が記載されているが、この方法は作業が煩雑であり、任意な情報を印字することが難しく、コストがかかるという問題がある。
【0011】
また、特許文献1には、基板上に光学素子を形成しない場合に、基板の外側の面上に製品情報を印字する例が記載されているが、ガラス基板の面上にレーザ光を照射して印字すれば、微少なガラス片が異物となって飛散し、異物不良が生じるという従来の問題が解決されない。なお、ガラス基板が最外面であれば、異物不良という問題は生じないかもしれないが、表面に凹凸がつけば、ガラス強度が落ちたり、汚れやそりの原因になるという問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、任意の情報を簡単に印字することができ、かつ表示パネルの製品品質を落とすことなく、さらに分断前にも印字することが可能な表示パネルにおける製品情報の印字方法およびその方法を用いて製品情報が印字された表示パネルを提供することを目的とする。
【0013】
ここで、表示パネルの製品品質を落とさないとは、具体的には、いずれの工程においても表示パネルの外面上に凹凸をつけたり、異物不良となる飛散物を発生させたりすることがないことをいう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による製品情報の印字方法は、第1の基板と第2の基板とが周辺シール部(例えば、周辺シール部3)によって貼り合わされる表示パネルにおける製品情報の印字方法であって、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせる前に、周辺シール部が形成される位置よりも外側の位置にダミーシール部(例えば、ダミーシール部4)を形成し、第1の基板と第2の基板とを貼り合わせた後に、貼り合わせた基板間に形成されているダミーシール部を印字エリアとして、レーザ光による印字を行うことを特徴とする。
【0015】
また、本発明による表示パネルは、第1の基板と第2の基板とが周辺シール部によって貼り合わされる表示パネルであって、2枚の基板間で周辺シール部が形成される位置よりも外側の位置に、レーザ光による印字エリアとするダミーシール部を設けたことを特徴とする表示パネル。
【0016】
また、ダミーシール部は、周辺シール部を形成するためのシール樹脂またはカラーフィルタを形成するためのカラーレジストによって形成されてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2枚の基板間で周辺シール部が形成される位置よりも外側の位置に形成されたダミーシール部を印字エリアとしてレーザ光による印字を行うので、表示パネルに、任意の情報を簡単に印字することができ、かつ表示パネルの製品品質を落とすことなく、さらにシート基板からの分断前にも印字することができる。そのことにより、表示パネルの製造履歴管理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1に、本発明による表示パネルの一例を示す。ここでは、表示パネルとして、TFT(Thin Film Transistor )型液晶表示パネルを例にする。図1(a)は、本実施の形態に係る表示パネル1の平面図である。図1(b)は、表示パネル1の側面図である。表示パネル1は、互いに対向する一対の基板(例えば、ガラス基板)2−1、2−2を有し、それら基板が液晶を封止するための周辺シール部3によって貼り合わされている。すなわち、第1の基板2−1と第2の基板2−2とは、周辺シール部3を形成するシール材(例えば、エポキシ樹脂)によって周囲が互いに接着されることによって貼り合わされている。以下、液晶を封止するために形成された周辺シール部3のことを本シールと呼ぶ場合がある。
【0019】
なお、図示省略しているが、第1の基板2−1(ここではアレイ基板)の液晶側表面(第2の基板2−2に対向する面)には、信号ライン、走査ライン、TFT、画素電極等が形成され、さらにその上にラビング処理された配向膜が形成されている。同じく、第2の基板2−2(ここでは対向基板)の液晶側表面(第1の基板2−1に対向する面)には、コモン電極等が形成され、さらにその上にラビング処理された配向膜が形成されている。
【0020】
なお、表示パネル1がSTN(Super Twisted Nematic )型表示パネルである場合には、第2の基板2−2は、例えば走査電極等が配されたコモン基板に相当し、第1の基板2−2は、例えば信号電極等が配されたセグメント基板に相当する。
【0021】
本発明では、2枚の基板が周辺シール部3によって貼り合わされる表示パネル1において、周辺シール部3の外側にマーキング用のダミーシール部4を設ける。ダミーシール部4は、周辺シール部3の外側であって、2枚の基板間に位置する部位であればどこに設けてもよい。また、ダミーシール部4は、1箇所に限らず複数箇所に設けてもよい。
【0022】
また、ダミーシール部4を形成する部材は、レーザ光を用いて印字可能な部材であればどのような部材であってもよいが、製造工程に余計なプロセスを追加させないために、シール材(シール樹脂)を用いることがより好ましい。以下、マーキング用に形成されたダミーシール部4のことをダミーシールと呼ぶ場合がある。ダミーシール部4は、例えば、シール印刷工程において、予め定めておいたダミー印刷部分(ダミーシール部4に対応する位置)にレーザ光の吸収率の高い顔料を混入したシール材を塗布することによって形成すればよい。このような場合には、本シールと同様の工程上でダミーシール部4を形成することができる。なお、表示パネル1が有機ELパネルである場合には、有機EL封止用のシール材を用いればよい。
【0023】
そして、2枚の基板が貼り合わされた後、その2枚の基板間に形成されているダミーシール部4を印字エリアとしてレーザ光によるマーキング(印字)を行う。具体的には、レーザ光の焦点距離を表示パネル1の内層部分(基板間)に形成されているダミーシール部4に調整し、予め登録しておいた印字内容(数字、英文字、カタカナ、ひらがな、バーコード、ロゴなどの組み合わせ等)に従ってレーザ光をダミーシール部4に照射する。照射されたレーザ光によりダミーシール部4を形成しているシール樹脂を変色させる(詳しくは、レーザ光が照射されたシール樹脂の部位で、シール樹脂に混入した顔料によりレーザ光の吸収率が上がり、顔料周辺のシール樹脂を炭化させる)ことで、シール樹脂を黒色または暗色系の色に変化させ、ロット番号、製造履歴番号等の所望の製品情報を印字する。
【0024】
または、レーザ光を照射してレーザのエネルギーを顔料に吸収させ、その熱効果により顔料の分子密度を上げて凝縮させることにより濃色に変色させてもよい。
【0025】
または、レーザ光を照射することにより、顔料の成分として含まれる金属イオンの組成を化学的に変化させることにより濃色に変色させてもよい。
【0026】
以下、本実施の形態における表示パネル1の製造工程の一例を説明する。図2は、表示パネル1の製造工程の一例を示す説明図である。図2の工程(a)はシール印刷工程である。第1の基板2−1は、所定の電極等が形成され、配向処理されたアレイ基板である。工程(a)では、配向処理が終了した第1の基板2−1の液晶側表面に、エポキシ樹脂等のシール材を塗布して予備硬化させる(シールプレキュア)。また、必要に応じて、第2の基板2−2である対向基板(またはカラーファイルタ基板)の液晶側表面に、スペーサを散布させる。なお、スペーサの散布をアレイ基板側にする場合やシール材の塗布を対向基板側に施す場合もある。
【0027】
本実施の形態では、シール材を塗布する際に、周辺シール部3に対応する位置に塗布するだけでなく、ダミーシール部4に対応する位置にもレーザ光の吸収率の高い顔料(例えば、カーボンブラックや、アゾ染料、アントラキノン染料等)をエポキシ樹脂に数パーセント混入したシール材を塗布する。シール材の予備硬化およびスペーサの散布が終了すると、工程(b)において、アレイ基板と対向基板とを貼り合わせて熱圧着し、シール材を完全に硬化させる(貼り合わせ工程(b))。本例では、シール材が硬化した時点で、2枚の基板間に周辺シール部3およびダミーシール部4が形成されたことになる。
【0028】
張り合わせが完了した後は、必要に応じて基板間に形成されたダミーシール部4を印字エリアとして、レーザ光を用いてロット番号等を印字する(マーキング工程(c))。例えば、YAGレーザマーカ(波長1064nm、出力10W、1〜50KHz、印字分解能2μm、印字サイズ0.2〜5mm)を用いてダミーシール部4にレーザ光を照射する。このとき、ダミーシールの表面(外側から視認できる面)に印字されるようにレーザ焦点を調整しておけば、照射したレーザ光はガラス基板を透過してダミーシールに照射される。このとき、ガラス基板の厚みは0.4〜1.1mm厚、ダミーシールの厚みは4〜10μmとする。
【0029】
ダミーシールとして、カーボンブラックを数パーセント混入させたエポキシ樹脂を用いた場合、レーザ光が照射された部位はカーボンブラックによりレーザ光の吸収率が上がりカーボンブラックの周辺のエポキシ樹脂が炭化して黒色または暗色系の色に変色する。このことにより、ロット番号等の必要な製品情報の印字を行うことができる。
【0030】
なお、マーキング工程(c)は、2枚の基板の貼り合わせが完了した後であれば、いつでも行うことが可能である。また工程毎に異なる場所に印字するなど何回でも行うことができる。
【0031】
ところで、表示パネル1は、大サイズの基板(以下、シート基板という。)を用いて形成され、そのシート基板を切断することによって作製される場合がある。すなわち、表示パネル1の製造工程のうち、シート基板から切断される前の工程(例えば、図2における工程(a),(b))における表示パネル1は、シート基板上に配置される複数のセルのうちの1つとして作製される場合がある。図3は、シート基板上で作製される場合の表示パネル1の製造工程の一例を示す説明図である。なお、図3では、2列のセルを含むシート基板を例に示しているが、セルの数(すなわち形成される表示パネル1の数)は2つに限らない。
【0032】
図3に示すように、シール印刷工程(a)および貼り合わせ工程(b)において、シール材の塗布作業や基板の貼り合わせ作業は、複数の表示パネル1を各セルとして含むシート基板上で行われる。また、マーキング工程(c)においても、マーキング作業をシート基板上で各セルに対して行うことが可能である。例えば、貼り合わせが完了しマルチシートとなった状態で、各セルに対応するダミーシール部4に対しレーザ光を照射すればよい。
【0033】
なお、上記例では、ダミーシール部4の製造プロセスを追加しないようにするという点で、シール樹脂によってダミーシール部4を形成する場合を例に説明したが、シート樹脂の他にも、カラーフィルタに用いられるカラーレジスト(保護膜を含む)によって形成することも可能である。なお、カラーレジストによってダミーシール部4を形成した場合であっても、貼り合わせ後のダミーシール部4を印刷エリアとしてレーザマーキングする点に変わりはない。また、カラーレジストによるダミーシール部4は、例えば、カラーフィルタを装着させる工程で、ダミーシール部4に対応する位置にもカラーレジストを塗布することによって形成すればよい。
【0034】
以上のように、本実施の形態によれば、表示パネルの内層部分に設けたダミーシート部4を印字エリアとしてレーザ光によって印字させるので、マーキングが剥がれるといった問題もなく、任意の情報を簡単に印字することができる。また、後工程(例えば、偏光膜貼り付け工程)で異物不良の原因となるような飛散物を発生させることもなく、印字によって表示パネルの外面上に凹凸をつけることもない。
【0035】
また、周辺シート部3よりも外側を印字エリアとしているので、表示パネル1の表示機能へ影響を与えることもない。
【0036】
また、2枚の基板を貼り合わせた後であれば、いつでも印字することができるので、セルに分断される前であっても印字が可能である。例えば、セルに分断される前にシート基板上における番地を示す情報を印字させれば、シート基板上での番地管理を行うことも可能である。
【0037】
また、ガラス基板に直接レーザ光で印字させた場合に白濁した印字となるのに比べ、シート材などの樹脂上に印字させることで、黒色または暗色系の色の印字が可能となり、視認性を向上することもできる。
【0038】
また、ダミーシール部4をシール樹脂やカラーレジストによって形成すれば、ダミーシール部4を形成するための製造プロセスを追加する必要がないので、ライン工程にのせたまま、製品情報を印字することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、液晶表示パネルや有機ELパネルなど、2枚の基板を貼り合わせて形成される表示パネルに製品情報を印字するために好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】表示パネルの一例を示す説明図である。
【図2】表示パネルの製造工程の一例を示す説明図である。
【図3】シート基板上で作製される場合の表示パネルの製造工程の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1 表示パネル
2−1 第1の基板(アレイ基板)
2−2 第2の基板(対向基板)
3 周辺シール部
4 ダミーシール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板と第2の基板とが周辺シール部によって貼り合わされる表示パネルにおける製品情報の印字方法であって、
前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせる前に、前記周辺シール部が形成される位置よりも外側の位置にダミーシール部を形成し、
前記第1の基板と前記第2の基板とを貼り合わせた後に、前記貼り合わせた基板間に形成されている前記ダミーシール部を印字エリアとして、レーザ光による印字を行う
ことを特徴とする製品情報の印字方法。
【請求項2】
第1の基板と第2の基板とが周辺シール部によって貼り合わされる表示パネルであって、
前記2枚の基板間で前記周辺シール部が形成される位置よりも外側の位置に、レーザ光による印字エリアとするダミーシール部を設けた
ことを特徴とする表示パネル。
【請求項3】
ダミーシール部は、周辺シール部を形成するためのシール樹脂またはカラーフィルタを形成するためのカラーレジストによって形成される
請求項2に記載の表示パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−241857(P2008−241857A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−79065(P2007−79065)
【出願日】平成19年3月26日(2007.3.26)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】