製造システム構築方法
【課題】汎用性の高い製造システムを構築可能な構築方法を提供する。
【解決手段】1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行なって製造物を製造するシステム10を構築する方法において、(a)各製造作業機について、メインフレーム24と統括制御装置とを備えた本体装置を準備する工程と、(b)各製造作業機について、複数の作業要素実行装置26,28,30等を準備する工程と、(c)準備した本体装置のメインフレームに、準備した複数の作業要素実行装置を組み付ける工程と、(d)準備した本体装置が備える統括制御装置に対して、準備した複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう工程とを含むように構成する。このような構成によれば、種々の作業を実行可能な製造作業機を備えたシステムを構築することが可能となり、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【解決手段】1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行なって製造物を製造するシステム10を構築する方法において、(a)各製造作業機について、メインフレーム24と統括制御装置とを備えた本体装置を準備する工程と、(b)各製造作業機について、複数の作業要素実行装置26,28,30等を準備する工程と、(c)準備した本体装置のメインフレームに、準備した複数の作業要素実行装置を組み付ける工程と、(d)準備した本体装置が備える統括制御装置に対して、準備した複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう工程とを含むように構成する。このような構成によれば、種々の作業を実行可能な製造作業機を備えたシステムを構築することが可能となり、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行って1の製造物を製造する製造システムを構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造作業の一種である電気回路の組立作業を行う組立システムとして、例えば、下記特許文献に記載されたような組立システムが存在する。このような組立システムを構成する組立作業機は、1つの部品である回路基板に他の部品である回路部品を装着する作業を行うものであり、回路基板を搬送する装置,回路部品を供給する装置,回路部品を回路基板へ装着する装置といった複数の作業要素実行装置と、それら複数の作業要素実行装置が組み込まれるメインフレームと、複数の作業要素実行装置を統括して制御する統括制御装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−104075公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記組立システムは、回路基板に回路部品を装着するといった作業しか行うことができず、汎用性に欠けるものとなっている。回路基板への回路部品の装着作業だけでなく、種々の作業を製造システムによって行なうことができれば、様々な製造物を製造することが可能となり、製造システムの汎用性を高めることが可能となる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、汎用性の高い製造システムを構築可能な構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の製造システム構築方法は、(a)1以上の製造作業機の各々について、メインフレームと統括制御装置とを備えた本体装置を準備する本体装置準備工程と、(b)1以上の製造作業機の各々について、複数の作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程と、(c)1以上の製造作業機の各々について準備した本体装置のメインフレームに、その1以上の製造作業機の各々について準備した複数の作業要素実行装置を組み付ける作業要素実行装置組付工程と、(d)1以上の製造作業機の各々について準備した本体装置が備える統括制御装置に対して、その1以上の製造作業機の各々について準備した複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう統括制御装置設定工程とを含むように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造システム構築方法においては、例えば、製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて製造作業機の数を決めることが可能である。また、製造作業機によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて複数の作業要素実行装置を決めることも可能である。つまり、種々の作業を実行可能な製造作業機を1台以上備えた製造システムを構築することが可能となり、製造システムによって様々な製造物を製造することが可能となる。したがって、本発明の製造システム構築方法によれば、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(3)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(4)項,(5)項および(6)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(4)項,(9)項および(10)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに(31)項,(34)項および(35)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項6に(37)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項7に(38)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項7または請求項8に(39)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項9に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行って1の製造物を製造する製造システムを構築する方法であって、
前記1以上の製造作業機の各々について、(a)それぞれが製造作業を構成する複数の作業要素のうちの1つを実行する複数の作業要素実行装置を組み込むためのメインフレームと、(b)それら複数の作業要素実行装置を統括して制御するための統括制御装置とを備えた本体装置を準備する本体装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について、前記複数の作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置の前記メインフレームに、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を組み付ける作業要素実行装置組付工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置に対して、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう統括制御装置設定工程と
を含む製造システム構築方法。
【0010】
本項に記載された製造システム構築方法においては、例えば、製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて製造作業機の数を決め、その数、本体装置を準備することが可能である。また、例えば、製造作業機によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて複数の作業要素実行装置を決定し、その決定された複数の作業要素実行装置を準備することが可能である。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、種々の作業を実行可能な製造作業機を1台以上備えた製造システムを構築することが可能となり、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0011】
本項に記載の4つの工程には、優先順位はなく、実行可能な工程から実行すればよい。つまり、本体装置と複数の作業要素実行装置とのいずれを先に準備してもよく、例えば、1つの作業要素実行装置を準備した後に本体装置を準備し、その後に、別の作業要素実行装置を準備してもよい。また、本体装置のメインフレームに複数の作業要素実行装置を組み付けた後に、統括制御装置に対して設定してもよく、統括制御装置設定後に、組付工程を行なってもよい。さらに言えば、本体装置を準備し、作業要素実行装置を準備する前に、統括制御装置に対して設定してもよい。
【0012】
本項に記載の「本体装置準備工程」,「作業要素実行装置準備工程」においては、本体装置,作業要素実行装置をどのような手段によって準備してもよく、例えば、購入することで準備してもよく、製造することで準備してもよい。また、本体装置準備工程のおける準備手段と作業要素実行装置準備工程における準備手段とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。つまり、本体装置準備工程では、本体装置を購入することで準備し、作業要素実行装置準備工程では、作業要素実行装置を製造することで準備してもよい。また、本体装置および作業要素実行装置を購入することで準備する場合には、同じ業者から購入してもよく、異なる業者から購入してもよい。本項に記載の「作業要素実行装置組付工程」では、メインフレームへの組み付けが容易であることが望ましく、具体的には、例えば、数本のボルト等による締結,ワンタッチでの着脱が可能であることが望ましい。
【0013】
本項に記載の「製造作業」、つまり、製造作業機の実施対象作業は、特に限定されるものではなく、例えば、複数の部品によって組み立てられる組立物を組み立てる組立作業を始め、作業対象物(「部品」,「組立物」,「ワーク」等を含む概念である)に対して何らかの加工,処理等を施すような種々の作業が、実施対象作業となる。より具体的に言えば、何らかの加工を施す作業としては、例えば、プレス作業等の作業対象物を変形させる作業、切断作業等の作業対象物の一部を取り除く作業、切削作業等の作業対象物を成形する作業等が実施対象作業となる。また、何らかの処理を施す作業としては、例えば、レーザ,プラズマ等による作業対象物の表面改質作業、接着剤,着色剤等を作業対象物に塗布する塗布作業、熱風,冷風等によって作業対象物を加熱・乾燥・冷却等する熱処理作業、研磨等の表面仕上作業等の作業、1の部品に組み付けられた他の部品をねじ込む等によって固定等する作業、固着,硬化等の目的で作業対象物に光線,紫外線,電磁波等を照射等する作業等が実施対象作業となる。なお、組立作業,何らかの加工・処理等を施す作業等の作業結果を検査する検査作業も、実施対象作業となり得る。
【0014】
本項に記載の「作業要素」は、例えば、作業対象物について行われる移動、回転、姿勢変更、処理、加工等のうちの1つのものを意味する。1の製造作業は、それらの作業要素の連携によって行われ、実施対象作業によって、作業要素の種類,数,連携の態様は異なる。「作業要素実行装置」は、1つの作業要素を実行する装置であり、例えば、作業要素に応じた単一の機能を有する装置と考えることができる。具体的には、例えば、実施対象作業が組立作業の場合には、後に説明するような、(a)1の部品を当該製造作業機外からの搬入,組立物の当該製造作業機外への搬出等の搬送を実行する搬送装置、(b)別の部品の供給を実行する部品供給装置、(c)部品供給装置によって供給された部品を上記1の部品に組み付けるための保持を実行する部品保持ヘッド(「作業ヘッド装置」の一種であり、「キャリーヘッド」とも呼ばれる)、(d)部品保持ヘッドによって保持された部品を移動させるために当該部品保持ヘッド装置を移動させるヘッド移動装置等の各々が、作業要素実行装置として、製造作業機に配備される。組立作業において、あるいは、組立作業の結果を検査する検査作業において、部品あるいは組立物の位置,姿勢,組立精度等を認識するために当該部品,組立物を撮像するカメラ等の撮像装置も、撮像処理という作業要素を実行する作業要素実行装置となり得、組立作業において、2つの部品の固着のためにそれら2つの部品の少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布装置も、接着剤の塗布という作業要素を実行する作業要素実行装置となり得る。なお、レーザ処理,プラズマ処理を始め上記何らかの加工・処理等を施す種々の装置も、それらの処理が行われる製造作業において、作業要素実行装置となり得る。
【0015】
(2)前記本体装置準備工程が、
前記本体装置を、前記1の製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて決定された必要となる前記1以上の製造作業機の数、準備する工程である(1)項に記載の製造システム構築方法。
【0016】
本項に記載の製造システム構築方法においては、製造しようとする製造物に応じて、製造システムを構成する製造作業機の数を決めることが可能である。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、少ない製造工程によって製造される製造物の製造システムから比較的多くの製造工程が必要な製造物の製造システムまで構築することが可能となる。本項に記載の「作業」は、製造物の製造時に実行されるべき全ての作業であり、全ての製造作業機の複数の作業要素実行装置が行なうべき全ての作業である。
【0017】
(3)前記作業要素実行装置準備工程が、
前記1以上の製造作業機の各々によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて決定されたその1以上の製造作業機の各々について必要な前記複数の作業要素実行装置を、前記1以上の製造作業機の各々について、準備する工程である(1)項または(2)項に記載の製造システム構築方法。
【0018】
本項に記載の製造システム構築方法においては、製造作業機毎に作業要素実行装置を準備することが可能である。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、製造作業機毎に種々の製造作業を行なわせることが可能となり、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0019】
(4)前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものが、複数の部品によって組み立てられる組立物の組立作業をその少なくとも1つのものによる製造作業として行う組立作業機であり、かつ、前記複数の部品のうちの1つである第1部品に、前記複数の部品のうちの別の1つである第2部品を組み付ける作業を、前記組立作業の少なくとも一部として行うものである(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0020】
本項に記載の態様は、製造作業機が組立作業機に限定された態様である。
【0021】
(5)前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の搬送を、前記複数の作業要素のうちの1つとして実行する搬送装置を含む(4)項に記載の製造システム構築方法。
【0022】
(6)前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の諸元に基づいて決定された前記搬送装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(5)項に記載の製造システム構築方法。
【0023】
上記2つの項に記載の態様は、搬送装置に関する態様である。搬送装置は、ある部品等の製造作業機外からの搬入,組立物の製造作業機外への搬出等の搬送を実行する装置であり、搬送物を搬送するための機構には様々な種類がある。具体的には、所謂コンベア方式の搬送装置は、搬送物を同一平面上を移動させる搬送機構を備えている。また、搬送物を持ち上げて、持ち上げた状態で搬送する搬送機構を備えた搬送装置もあり、そのような機構を備えた搬送装置はリフトアンドキャリー方式,ピックアンドプレース方式等と呼ばれている。リフトアンドキャリー方式の搬送装置は、搬送物が載置されている台を下方から持ち上げる搬送機構を備えており、比較的重たい搬送物の搬送に適している。ピックアンドプレース方式の搬送装置は、搬送物の上方から搬送物を吸着し、吸着した状態で搬送物を持ち上げる搬送機構を備えており、比較的脆い素材の搬送物の搬送に適している。つまり、搬送物の諸元に基づいて搬送装置を選択することで、搬送物を適切に搬送することが可能となる。したがって、後者の項に記載の製造システム構築方法によれば、搬送物の搬送を適切に実行可能な搬送装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。なお、搬送物の諸元とは、その搬送物の要素,因子等であり、寸法,重量,素材,搬送物自体の形状,搬送される際の形状等が含まれる。
【0024】
(7)前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、前記第2部品の供給を、前記複数の作業要素の1つとして実行する部品供給装置を含む(4)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0025】
(8)前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第2部品の諸元に基づいて決定された前記部品供給装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(7)項に記載の製造システム構築方法。
【0026】
上記2つの項に記載の態様は、部品供給装置に関する態様である。部品供給装置は、組立作業において部品の供給を実行する装置であり、種々のタイプの装置を採用することが可能である。具体的には、複数の部品が配置されたトレイにおいて部品を供給するトレイ型部品供給装置、複数の部品を保持するテープを順送りすることによって部品を供給する、若しくは、バラバラの状態で収容された複数の部品を整列させつつ順送りすることによって部品を供給するフィーダ型部品供給装置等を採用することが可能である。どのようなタイプの部品供給装置を採用するかは、供給される部品の諸元に基づいて選択されることが望ましく、供給される部品に適した装置を採用することで、部品の供給を適切に行なうことが可能となる。したがって、後者の項に記載の製造システム構築方法によれば、部品の供給を適切に実行可能な部品供給装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。なお、本項に記載の「第2部品の諸元」とは、第2部品の要素,因子等であり、寸法,重量,素材,第2部品自体の形状,供給される際の形状(所謂、荷姿)等が含まれる。
【0027】
(9)前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、作業ヘッド装置となる、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業を前記複数の作業要素の1つとして実行する1以上の組立作業用作業ヘッド装置を含む(4)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0028】
本項に記載の「第1部品に第2部品を組み付けるために必要な作業」には、組付のために行う第2部品の保持,第2部品を第1部品にねじ込み等を行なって固着させる作業,組付に先立って実行される作業,第1部品に第2部品が組み付けられた物に対して実行される作業等が含まれる。
【0029】
(10)前記1以上の組立作業用作業ヘッド装置の少なくとも1つが、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業として、前記第2部品の保持・離脱を実行する保持・離脱ヘッド装置であり、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第2部品の諸元に基づいて決定された前記保持・離脱ヘッド装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(9)項に記載の製造システム構築方法。
【0030】
本項に記載の「保持・離脱ヘッド装置」は、部品を保持・離脱することが可能な装置であり、種々のタイプの装置を採用することが可能である。具体的には、部品を把持することで保持する装置、所謂、メカチャック型の装置,負圧等によって部品を吸着保持する吸着型の装置等を採用することが可能である。また、装置の性能によって、保持可能な部品の重量,形状等が異なる。このため、作業要素実行装置として保持・離脱ヘッド装置を採用する際には、保持すべき部品の諸元に基づいて選択されることが望ましく、保持すべき部品に適した装置を採用することで、部品の保持・離脱を適切に行なうことが可能となる。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、部品の保持,離脱を適切に実行可能な作業ヘッド装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。なお、本項に記載の「第2部品の諸元」とは、第2部品の要素,因子等であり、寸法,重量,素材,第2部品自体の形状,保持される際の形状等が含まれる。
【0031】
(11)前記1以上の組立作業用作業ヘッド装置の少なくとも1つが、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業として、前記第1部品に前記第2部品を組み付ける作業に先立って実行される作業と前記第1部品に前記第2部品を組み付ける作業が実行されている間に実行される作業と前記第1部品に前記第2部品が組み付けられた物に対して実行される作業とのうちの1つを実行する組付補助ヘッド装置であり、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、自身の性能を考慮して決定された前記組付補助ヘッド装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(9)項または(10)項に記載の製造システム構築方法。
【0032】
定置させられた第1部品の位置,姿勢等の認識のためのその第1部品の撮像、第1部品と第2部品との少なくとも一方への接着剤,補助剤等の塗布等が、「第1部品に第2部品を組み付ける作業に先立って実行される作業」に含まれる。塗布された補助剤等の乾燥、組付精度の認識等のために行う組立物等の撮像等が、「第1部品に第2部品が組み付けられた物に対して実行される作業」に含まれる。また、本項に記載の「第1部品に第2部品を組み付ける作業」は、例えば、保持・離脱ヘッド装置が第2部品を保持してから離脱するまで継続して実行される作業と考えることが可能であり、その保持・離脱ヘッド装置が第2部品を装着位置に載置しているが、その第2部品を離脱していない状態も「第1部品に第2部品を組み付ける作業」に含むことが可能である。このため、保持・離脱ヘッド装置が第2部品を装着位置に押さえつつ、その第2部品に何らかの加工・処理等を施す作業が、「第1部品に第2部品を組み付ける作業が実行されている間に実行される作業」に含まれる。具体的には、例えば、保持・離脱ヘッド装置が第2部品を装着位置に押さえている間に、その第2部品に対してレーザ加工等を施す処理作業,第2部品の装着位置へのねじ締め作業等が、「第1部品に第2部品を組み付ける作業が実行されている間に実行される作業」に含まれる。つまり、本項に記載の「組付補助ヘッド装置」は、第1部品に第2部品を組み付ける作業の補助的な作業を実行するものであり、組付補助ヘッド装置として、撮像を行うための装置,補助剤等を塗布するための装置,接着剤等を乾燥させるための装置等を採用することが可能である。
【0033】
例えば、作業の内容が塗布作業である場合には、当然、補助剤等を塗布するための装置、所謂ディスペンサ装置を採用するが、装置によって、塗布可能な補助材の種類、補助材を放出するノズルの数等が異なる。また、撮像を行うための装置であれば、装置によって、撮像範囲、解像度等が異なり、接着剤等を乾燥させるための装置であれば、装置によって、乾燥させるための熱源の温度、乾燥可能な範囲等が異なる。このため、作業要素実行装置として組付補助ヘッド装置を採用する際に、装置の性能を考慮して選択することで、組付け作業の補助的な作業を適切に実行することが可能となる。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、組付け作業の補助的な作業を適切に実行可能な作業ヘッド装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。
【0034】
(21)前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、作業ヘッド装置を含み、
前記本体装置準備工程において準備される前記本体装置のメインフレームが、前記作業ヘッド装置を移動させるヘッド移動装置を有する(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0035】
本項に記載の「作業ヘッド装置」は、製造作業において中心的な役割を果たす作業要素実行装置であり、製造システムを構成する製造作業機の全てに取付けられることが多い。作業ヘッド装置は、具体的に言えば、作業対象物の概して上方若しく側方からその作業対象物に対して何らかの動作を与える若しくは何らかの処理を施すための装置ということが可能であり、作業ヘッド装置が取付けられる製造作業機には、作業ヘッド装置を作業対象物の近傍に移動させるための装置が必要である。また、作業ヘッド装置を移動させるための装置、つまり、ヘッド移動装置は、先に説明した搬送装置,作業ヘッド装置等のように、搬送物,作業対象物等を考慮して選択する必要性が低い。そこで、本項に記載の製造システム構築方法においては、作業ヘッド移動装置を本体装置のメインフレームの構成要素とし、本体装置準備工程でヘッド移動装置が設けられた本体装置が準備されるようになっている。
【0036】
(31)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、前記複数の作業要素実行装置を、それぞれが前記複数の作業要素実行装置の1つが行う1つの動作についての指令である複数の動作指令を順次送信することによって、統括して制御するように構成された(1)項ないし(22)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0037】
本項に記載の態様によれば、例えば、製造作業の変更等に対して、統括制御装置から送信される動作指令の内容を変更するだけで、フレキシブルに対応することが可能である。
【0038】
(32)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、1のプロトコルに従って前記複数の動作指令を前記複数の作業要素実行装置に送信するための統括インタフェイス部を有する(31)項に記載の製造システム構築方法。
【0039】
(33)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身の作動の制御を司る個別制御装置を備え、
その個別制御装置が、前記複数の動作指令のうちの自身に送信されるものを前記1のプロトコルに従って受信するための個別インタフェイス部を有する(32)項に記載の製造システム構築方法。
【0040】
上記2つの項に記載の態様においては、本体装置の統括制御装置と作業要素実行装置の個別制御装置との間の通信プロトコルが、全ての作業要素実行装置に対して共通化されている。したがって、上記2つの項に記載の態様によれば、作業要素実行装置組付工程において、通信プロトコルに関して考慮することなく、作業要素実行装置をメインフレームに組付けることが可能となる。上記2つの項に記載の「プロトコル」は、統括制御装置と個別制御装置との間の通信に関する取り決め、手順、規約等を定めるものであり、本項に記載の「プロトコル」には、通信されるデータ自体の取り決め等だけでなく、統括制御装置と個別制御装置との間のデータ等の伝送路の取り決め、具体的には、有線通信の場合であれば、ケーブル・コネクタの種類等の取り決め等、無線通信の場合であれば、周波数帯等の取り決め等も含まれる。
【0041】
(34)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、
製造作業を行うために前記複数の作業要素実行装置の各々によって実行されるべき前記作業要素の内容がコード化されたソースデータを記憶するソースデータ記憶部と、
そのソースデータに基づいて、前記複数の動作指令を作成する動作指令作成部と、
その動作指令作成部によって作成された前記複数の動作指令の前記複数の作業要素実行装置への送信処理を行う指令送信処理部と
を有する(31)項ないし(33)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0042】
複数の作業要素実行装置に送信される動作指令の数は比較的多く、製造作業の内容が複雑であれば、その数は相当多くなるため、動作指令の作成には大きな労力が必要となる場合がある。具体的に言えば、動作指令は、1つの作業要素実行装置によって行われる1の動作に対応するものであるため、製造作業において、1つの作業要素実行装置によって行われる1の動作がある特定の数、例えば、100の動作必要な場合には、その特定の数の動作指令、つまり、100個の動作指令が必要となる。本項に記載の態様においては、「ソースデータ」はコード化されたものであるため、コード化する際の技法を駆使すれば、ソースデータを比較的シンプルなものとすることが可能となる。したがって、本項に記載の態様によれば、動作指令作成の労力を減らすことが可能となる。
【0043】
本項に記載の「ソースデータ」は、どのような構造でコード化されてもよいが、繰り返しを避けるような構造、例えば、階層化された構造,サブルーチン化された構造,モジュール化された構造等でコード化されることが望ましい。また、本項に記載の「動作指令作成部」は、単に複数の動作指令を作成するだけでなく、複数の動作指令を、複数の作業要素実行装置の各々へ送信するべき順番に並べるように作成するものであってもよい。このように動作指令作成部が構成された場合には、本項に記載の「指令送信処理部」を、並べられた順番に動作指令を送信するように構成することが可能となり、複雑な処理を実行する必要性の低い機能部とすることが可能となる。
【0044】
(35)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、前記ソースデータ記憶部に記憶されるソースデータの入力を受け付けるソースデータ入力受付部を有し、
前記統括制御装置設定工程が、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置の前記ソースデータ入力受付部に、前記ソースデータを入力する工程を含む(34)項に記載の製造システム構築方法。
【0045】
本項に記載の製造システム構築方法では、統括制御装置設定工程において製造作業機毎に製造作業に応じたソースデータを入力することで、目的とする製造物を製造可能なシステムを構築することが可能となる。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0046】
(36)前記ソースデータ入力受付部に入力される前記ソースデータが、構造化プログラミングの手法に従ってコード化されたものである(35)項に記載の製造システム構築方法。
【0047】
本項に記載の「構造化プログラミングの手法」は、製造作業を実行するための作業を段階的に細かな単位に処理を記述していく手法であり、具体的に言えば、製造作業を大まかないくつかの単位に分け、そのいくつかの単位の各々をさらに細部に分ける手法である。したがって、本項に記載の態様によれば、ソースデータを階層化された構造,サブルーチン化された構造等でコード化することが可能となり、ソースデータを比較的シンプルなものとすることが可能となる。
【0048】
(37)前記1以上の製造作業機の各々による製造作業が、
それぞれが、前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作からなる複数の単位作業を含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に入力される前記ソースデータが、
前記複数の単位作業に対応して、それぞれが前記複数の単位作業の1つを示す複数の単位作業コードと、
それぞれが、前記複数の単位作業コードの1つに関連付けされ、それぞれが、その複数の単位作業コードの1つが示す前記複数の単位作業のうちの1つを構成するところの前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作を示す複数の動作コードを含む複数の動作コード群と
に階層化された構造を有する(35)項または(36)項に記載の製造システム構築方法。
【0049】
本項に記載の態様においては、ソースデータが具体的に限定されている。本項に記載の「ソースデータ」は、少なくとも単位作業コードと動作コード群とに2層化されていればよく、3層以上に階層化されていてもよい。具体的には、複数の単位作業のうちの1以上のものをまとめてコード化した単位作業コードの上位のコードを、さらに有する構造であってもよい。また、本項に記載の「単位作業」は、複数の作業要素実行装置の各々によって行われる各動作が連続するように製造作業から区分けされたものであり、複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作によって構成されている。つまり、本項に記載の「製造作業」は、複数の単位作業のみによって構成されるものもあり、複数の単位作業と、それぞれが、1つの作業要素実行装置によって行われる1の動作からなる複数の単作業とによって構成されるものもある。
【0050】
(38)前記複数の動作コードの各々が、
前記複数の作業要素実行装置のうちの前記複数の動作コードの各々によって示される動作を行なうものを特定するための装置特定コードと、前記複数の作業要素実行装置のうちの前記装置特定コードによって特定されるものが実行する前記作業要素をコード化した作業要素コードとを含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に前記ソースデータを入力する工程が、
少なくとも、前記複数の動作コードの各々について、前記装置特定コードと前記作業要素コードとを入力する工程である(37)項に記載の製造システム構築方法。
【0051】
本項に記載の態様においては、少なくとも作業要素と作業要素実行装置とを入力することで、統括制御装置の設定をすることが可能となっている。したがって、本項に記載の態様によれば、統括制御装置設定工程を簡略化することが可能となる。本項に記載の「作業要素コード」は、動作コードに応じた作業要素をコード化したものであればよく、「装置特定コード」は、動作コードに応じた作業要素を実行する作業要素実行装置を特定することが可能なものであればよい。
【0052】
(39)前記複数の単位作業コードのうちの1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つと、前記複数の単位作業コードのうちの他の1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つとが、それぞれに含まれる前記複数の動作コードが示す前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作についての動作パラメータを除いて、共通化されている(37)項または(38)項に記載の製造システム構築方法。
【0053】
製造作業には、繰り返される作業が含まれるものが多く存在する。具体的に言えば、例えば、複数の回路基板が載置された基板トレイが製造作業機内に搬入され、それら複数の回路基板の各々に対して部品が装着される製造作業では、各回路基板に対する一連の複数の作業は、装着作業位置等を除いて、殆ど同じである。このような製造作業では、繰り返し実行される作業を単位作業とすることで、その単位作業を構成する一連の複数の動作を、装着作業位置等の動作パラメータを除いて共通化することが可能となる。本項に記載の態様では、繰り返し実行される作業が単位作業とされており、その単位作業の一連の複数の動作が、動作パラメータを除いて共通化される。したがって、本項に記載の態様によれば、略同様の複数の動作コード群を1つの動作コード群にすることが可能となり、ソースデータをシンプルなものとすることが可能となる。
【0054】
本項に記載の「動作パラメータ」は、作業要素実行装置が1つの動作を実行する際に利用されるパラメータであり、所謂、引数である。具体的に言えば、搬送・移動の方向・量・時間・速度,補助剤の放出の量・時間・速度,加工・処理の実施の量・時間・速度等が該当する。上述した回路基板に対する作業であれば、例えば、装着装置の移動量を変更することで、装着作業位置を変更することが可能となる。
【0055】
(40)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身の作動の制御を司る個別制御装置を備えた(31)項ないし(39)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0056】
(41)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身の対象となる作業要素を実行するための1以上の作動デバイスを備え、自身が備える前記個別制御装置がその1以上の作動デバイスの作動を制御するように構成された(40)項に記載の製造システム構築方法。
【0057】
上記2つの項に記載の態様においては、複数の作業要素実行装置の各々が自身の作動を制御するための個別制御装置を有し、その個別制御装置が統括制御装置から送信される動作指令に基づいて、作業要素実行装置の作動を制御することが可能とされており、作業要素実行装置がインテリジェント化されている。つまり、統括制御装置は、各作業要素実行装置の作動を制御する必要が無いため、少なくとも、単に動作指令を作業要素実行装置に送信する機能部を有していればよい。したがって、上記2つの項に記載の態様によれば、統括制御装置を複雑な処理を実行する必要性の低いものとすることが可能となる。
【0058】
本項に記載の「作動デバイス」は、例えば、1つの作業要素実行装置における制御可能な1つの作動主体、あるいは、モータ等のその作動主体の駆動源と考えることができる。例えば、作業要素実行装置が搬送装置である場合に、コンベア等の搬送デバイスが1つの作動デバイスとなる。また、作動デバイスは、アクチュエータとして機能するものに限定されず、例えば、プラズマ処理装置,レーザ処理装置等が作業要素実行装置となる場合には、プラズマ発生器,レーザ発生器等も作動デバイスとなり得、撮像装置が作業要素実行装置となる場合には、カメラ等の撮像デバイスの他に、照明器等も作動デバイスとなり得る。なお、作業要素実行装置が、複数の作動デバイスを備える場合、それら複数の作動デバイスを1つの個別制御装置で制御することになり、その作業要素実行装置は、インテリジェント化が進んだ装置となる。
【0059】
(42)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、特定のプログラミング言語での前記複数の動作指令を送信するように構成され、
前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの前記複数の作業要素実行装置のうちの1以上のものの各々の前記個別制御装置が、前記複数の動作指令のうちの自身に送信されるものを、自身がその動作指令の内容を認識可能なプログラミング言語での動作指令に変換する指令変換部を有する(40)項または(41)項に記載の製造システム構築方法。
【0060】
現在使用されているプログラミング言語の数は相当多く、複数の作業要素実行装置の各々で使用されるプログラミング言語は、異なっていることが多い。このため、統括制御装置が送信する複数の動作指令を規定するプログラミング言語は、通常、送信先の作業要素実行装置毎に異なっていることが多い。本項に記載の態様においては、各作業要素実行装置の個別制御装置によって、統括制御装置から送信された動作指令の内容が認識され、その認識された動作指令に基づいて作動デバイスの作動が制御されるようになっている。したがって、本項に記載の態様によれば、例えば、送信先の作業要素実行装置毎に動作指令を規定するプログラミング言語を変更する必要がなくなり、統括制御装置を複雑な処理を実行する必要性のさらに低いものとすることが可能となる。つまり、統括制御装置設定工程を簡略化することが可能となる。また、本項に記載の「プログラミング言語での動作指令」は、プログラミング言語に従った動作指令であり、あるプログラミング言語で規定された動作指令を意味するものである。もっと解り易く言えば、あるプログラミング言語で記載された動作指令を意味するものである。
【0061】
(51)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身が認識されるための認識情報を自身に保有しており、
前記本体装置準備工程において準備されるその1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、
前記複数の作業要素実行装置の各々から取得した認識情報に基づいて、その各々への動作指令の送信の可否を判断する作業要素実行装置認識部を有する(31)項ないし(42)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0062】
本項に記載の態様においては、認可を受けていない第三者によって製造された作業要素実行装置を無効化することが可能となり、認可を受けていない第三者製の作業要素実行装置の流通を阻止することが可能となる。したがって、本項に記載の態様によれば、製造システムを構築するためのネットワークを形成することが可能となり、信頼性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0063】
(52)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記メインフレームが、互いに同じ寸法である(1)項ないし(51)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0064】
本項に記載の態様においては、製造作業機の本体装置が同一化若しくは統一規格化されており、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0065】
(53)前記作業要素実行装置組付工程が、前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置の各々を、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置の前記メインフレームの、前記複数の作業要素実行装置の各々に応じて定められた基準位置に組み付ける工程である(1)項ないし(52)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0066】
本項に記載の態様においては、基準位置に作業要素実行装置が組付けられることで、作業要素実行装置の作動時の基準点が担保されるようになっている。ちなみに、作動時の基準点とは、作業要素実行装置が作動する際の基準点であり、その基準点を原点として作業要素実行装置の作動が制御される。
【0067】
(54)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、その各々が前記メインフレームに組み付けられる位置の空間の大きさに基づいて定められる所定の寸法内の大きさである(1)項ないし(53)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0068】
本項に記載の態様においては、各作業要素実行装置の大きさがメインフレームの組付位置の寸法に応じて定められており、作業要素実行装置組付工程での処理を容易に実行することが可能となる。本項に記載の「空間」は、メインフレームに作業要素実行装置が組み付けられた場合にその作業要素実行装置が占有するスペースであり、作業要素実行装置の非作動時における占有スペースのみならず、作動時における占有スペースをも含む場合がある。
【0069】
(61)前記本体装置準備工程が、前記1以上の製造作業機の前記本体装置を単一の特定の業者から購入することでその本体装置を準備する工程である(1)項ないし(54)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0070】
(62)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、前記特定の業者から前記複数の作業要素実行装置のうちの少なくとも1以上のものを購入する工程を含む(61)項に記載の製造システム構築方法。
【0071】
(63)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、前記特定の業者とは異なる業者から前記複数の作業要素実行装置のうちの少なくとも1以上のものを購入する工程を含む(61)項または(62)項に記載の製造システム構築方法。
【0072】
(64)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、前記複数の作業要素実行装置のうちの少なくとも1以上のものを製造する工程を含む(61)項ないし(63)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0073】
(65)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、複数の業者から前記複数の作業要素実行装置を購入する工程を含む(1)項ないし(64)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0074】
上記(61)項に記載の態様においては、本体装置準備工程での準備手段が具体的に限定されており、(62)項〜(65)項に記載の態様においては、作業要素実行装置準備工程での準備手段が具体的に限定されている。先に述べているように、作業要素実行装置として種々のものを採用可能であり、選択可能な作業要素実行装置は多岐にわたっている。このため、作業要素実行装置を準備するためのルートも多岐にわたっていることが望ましい。したがって、(62)項〜(65)項に記載の態様によれば、種々のルートによって作業要素事項装置を準備することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】請求可能発明の実施例である製造システム構築方法によって構築された製造システムを示す斜視図である。
【図2】図1の製造システムの備える統括制御装置および複数の作業要素実行装置の模式図である。
【図3】図1の製造システムに搬入される基板トレイおよびその基板トレイ上に載置される回路基板を示した図である。
【図4】図2の統括制御装置に記憶されているソースデータの基本コードを示す図である。
【図5】図2の統括制御装置に記憶されているソースデータの単位作業コードを示す図である。
【図6】図2の統括制御装置に記憶されているソースデータの動作コードを示す図である。
【図7】ソースデータに基づいて作成される動作指令を示す図である。
【図8】動作指令に対する返信を示す図である。
【図9】図1の製造システムの備える統括制御装置および複数の作業要素実行装置の制御ブロック図である。
【図10】図1の製造システムの備えるベースおよびそのベースから外された状態の複数の作業要素実行装置を示す斜視図である。
【図11】作業要素実行装置の一例であるリフトアンドキャリー型の搬送装置を示す斜視図である。
【図12】製造システム構築方法を概念的に示した図である。
【図13】図12の方法とは異なる製造システム構築方法を概念的に示した図である。
【図14】LED照明の分解図である。
【図15】図14のLED照明を組み立てるために必要な構成部品,作業要素,作業内容,製造作業,作業要素実行装置を示す図である。
【図16】図14のLED照明を組み立てるためのLED照明組立システムを示す斜視図である。
【図17】図16のLED照明組立システムの備える第1製造作業機の統括制御装置に記憶されているソースデータの基本コードを示す図である。
【図18】図16のLED照明組立システムの備える第1製造作業機の統括制御装置に記憶されているソースデータの単位作業コードを示す図である。
【図19】図16のLED照明組立システムの備える第1製造作業機の統括制御装置に記憶されているソースデータの動作コードを示す図である。
【図20】パワーモジュールの分解図である。
【図21】図20のパワーモジュールを組み立てるために必要な構成部品,作業要素,作業内容,製造作業,作業要素実行装置を示す図である。
【図22】図20のパワーモジュールを組み立てるためのパワーモジュール組立システムを示す斜視図である。
【図23】太陽電池の分解図である。
【図24】図23の太陽電池を組み立てるために必要な構成部品,作業要素,作業内容,製造作業,作業要素実行装置を示す図である。
【図25】図23の太陽電池を組み立てるための太陽電池組立システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0077】
<製造システムの構成>
図1に、請求可能発明の製造システム構築方法によって構築される製造システム10を示す。製造システム10は、電子回路部品(以下、「部品」と略す場合がある)が装着された回路基板を製造するものであり、1台の製造作業機12によって構成されている。その製造作業機12は、製造作業を行なうものであり、具体的には、回路基板に対する部品の組付,接着剤の塗布を行う組立作業機である。製造作業機12は、フレーム部20とそのフレーム部20に上架されたビーム部22とを含んで構成されたベースとしての作業機本体24と、回路基板を搬送する搬送装置26と、回路基板に部品を組付ける組立作業用作業ヘッド装置としての装着装置28と、フレーム部20の一端に配設され装着装置28に部品を供給する部品供給装置(以下、「供給装置」と略す場合がある)30と、回路基板に接着剤を塗布する組立作業用作業ヘッド装置としてのディスペンサ装置32と、供給装置30と搬送装置26との間に配設されたベースカメラ34と装着装置28の後方に配設されたヘッドカメラ36(図10参照)とを含んで構成されたカメラ装置38と、ビーム部22に配設されて装着装置28とディスペンサ装置32とヘッドカメラ36とを共に領域内において移動させる移動装置40とを備えている。ちなみに、製造作業機12の長手方向を前後方向とし、その長手方向に直角な水平の方向を左右方向と、長手方向に直角な垂直の方向を上下方向と称することにする。なお、製造作業機12を構成する各装置26,28,30,32,38,40は公知の装置であることから、ここでの説明は簡単なものとする。
【0078】
搬送装置26は、コンベアベルト50を搬送モータ52(図2参照)によって周回させることで、コンベアベルト50上に載せられる回路基板を左右方向に搬送する構造とされている。つまり、搬送装置26は、作業要素としての回路基板の特定位置への搬入・搬出を実行する作業要素実行装置として機能する。供給装置30は、トレイユニット型の供給装置であり、部品が載置される複数の部品トレイ(図示省略)と、装着装置28に部品を供給可能な位置に複数の部品トレイのうちのいずれかのものを移動させるトレイ移動装置54(図2参照)とを有している。つまり、供給装置30は、作業要素としての部品の供給を実行する作業要素実行装置として機能する。
【0079】
移動装置40は、XYZロボット型の移動装置であり、装着装置28とディスペンサ装置32とヘッドカメラ36とを保持するスライダ56を左右方向にスライドさせる電磁モータ58(図2参照)と、前後方向にスライドさせる電磁モータ60(図2参照)と、上下方向にスライドさせる電磁モータ62(図2参照)とを備えており、それら電磁モータ58,60,62の作動によって、装着装置28とディスペンサ装置32とヘッドカメラ36とを任意の位置に移動させることが可能となっている。つまり、移動装置40は、作業ヘッド装置としての装着装置28,ディスペンサ装置32の移動を実行するヘッド移動装置として機能する。また、移動装置40は、他の作業要素実行装置の移動を実行する作業要素実行装置としての機能を有しているが、本製造システム10のおいて移動装置40は、作業機本体24とともにメインフレームを構成するものとする。
【0080】
装着装置28は、移動装置40のヘッド組付部としてのスライダ56に固定的に保持されており、下端に部品保持装置70を有している。部品保持装置70は、正負圧供給装置72(図2参照)を介して負圧エア,正圧エア通路に通じており、負圧にて部品を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した部品を離脱する構造となっている。つまり、保持・離脱ヘッド装置としての装着装置28は、作業要素としての部品の保持・離脱を実行する作業要素実行装置として機能する。ディスペンサ装置32は、移動装置40のスライダ56に固定的に保持されており、下端に設けられ接着剤を吐出するディスペンサノズル76と、そのディスペンサノズル76から任意の量の接着剤を吐出させる吐出装置78(図2参照)とを備えている。つまり、ディスペンサ装置32は、作業要素としての接着剤の放出を実行する作業要素実行装置として機能する。
【0081】
カメラ装置38は、下方を向いた状態でスライダ56の下部に固定的に保持されたヘッドカメラ36と、そのヘッドカメラ36の光源80(図2参照)と、上方を向いた状態で供給装置36と搬送装置26との間に固定的に設けられたベースカメラ34と、そのベースカメラ34の光源82(図2参照)と、ヘッドカメラ32とベースカメラ38と光源80,82とに接続されたキャプチャボード84(図2参照)とを含んで構成されている。ヘッドカメラ36は、搬送装置26に載せられた回路基板を撮影することが可能となっており、ベースカメラ38は、装着装置28によって吸着保持された状態の部品を撮影することが可能となっている。つまり、カメラ装置38は、作業要素としての回路基板,部品の撮影を実行する作業要素実行装置として機能する。
【0082】
製造作業機10は、搬送装置26,装着装置28,供給装置30,ディスペンサ装置32,カメラ装置38,移動装置40の6つの装置によって構成されており、それら6つの装置の各々は、図2に示すように、個別に制御装置を備えている。具体的には、移動装置40は、3つの電磁モータ58,60,62の作動を制御するための移動装置制御装置90と、3つの電磁モータ58,60,62に対応する3つのサーボアンプ92,94,96とを有しており、移動装置制御装置90が各サーボアンプ92,94,96に制御信号を送信することで各電磁モータ58,60,62の作動を制御する構造とされている。装着装置28は、作動デバイスとしての正負圧供給装置72の作動を制御するための個別制御装置としての装着装置制御装置100と、正負圧供給装置72の駆動回路102とを有しており、装着装置制御装置100が駆動回路102に制御信号を送信することで正負圧供給装置72の作動を制御する構造とされている。
【0083】
ディスペンサ装置32は、作動デバイスとしての吐出装置78の作動を制御するための個別制御装置としてのディスペンサ装置制御装置104と、吐出装置78の駆動回路106とを有しており、ディスペンサ装置制御装置104が駆動回路106に制御信号を送信することで吐出装置78の作動を制御する構造とされている。供給装置30は、作動デバイスとしてのトレイ移動装置54の作動を制御するための個別制御装置としての供給装置制御装置108と、トレイ移動装置54の駆動源のモータの駆動回路110とを有しており、供給装置制御装置108が駆動回路110に制御信号を送信することでトレイ移動装置54の作動を制御する構造とされている。搬送装置26は、作動デバイスとしての搬送モータ52の作動を制御するための個別制御装置としての搬送装置制御装置112と、搬送モータ52の駆動回路114とを有しており、搬送装置制御装置112が駆動回路114に制御信号を送信することで搬送モータ52の作動を制御する構造とされている。
【0084】
カメラ装置38は、ベースカメラ34若しくはヘッドカメラ36による撮影を実行するための制御信号の送信、および撮影によって得られた画像データの処理を実行するための個別制御装置としてのカメラ装置コントローラ116を有している。カメラ装置コントローラ116は、後に説明する補助統括制御装置118内に設けられているが、補助統括制御装置118内で独立しており、バス120を介してカメラ装置38のキャプチャボード84に接続されている。このため、カメラ装置コントローラ116は、補助統括制御装置118の構成要素ではなく、カメラ装置38の構成要素として取り扱うものとする。
【0085】
また、製造作業機12は、上記6つの装置26,28,30,32,38,40を統括して制御するためのメイン統括制御装置130と補助統括制御装置118とによって構成される統括制御装置を備えている。メイン統括制御装置130は、主に、各装置26,28,30,32,38,40の制御装置90,100,104,108,112,116に動作指令を送信するための制御装置であり、リピータハブ132を介して、動作指令を送信するための同種類のシリアル通信ケーブル134によって各制御装置90,100,104,108,112,116と接続されている。また、補助統括制御装置118は、補助統括コントローラ136を有しており、その補助統括コントローラ136には、各個別制御装置90等への動作指令の基となるソースプログラム、つまり、ある特定の製造作業を実行するためのソースデータが記憶されている。その記憶されているソースデータは、上記6つの装置26等の作動がコード化されたものである。補助統括コントローラ136は、そのソースデータをある特定のプログラミング言語に従った動作指令に変換し、変換された動作指令をメイン統括制御装置130に送信するように構成されている。補助統括コントローラ136とメイン統括制御装置130とは、ハブ138を介してLANケーブル140によって接続されており、補助統括コントローラ136において変換された動作指令が、LANケーブル140を介して、メイン統括制御装置130に送信されるようになっている。また、ハブ138には、そのLANケーブル140と同種類の6本のLANケーブル140の一端が接続されており、それら6本のLANケーブル140の各々の他端が各装置26等の制御装置90等に接続されている。なお、シリアル通信ケーブル134およびLANケーブル140は、それぞれ、配線部とコネクタ部とから構成されるが、それら配線部とコネクタ部とは、それぞれ、汎用品であってもよく、本製造システム10専用に開発されたものであってもよい。
【0086】
また、製造作業機12には、製造作業機12の作動に関する情報を入出力するためのタッチパネル式の表示機150が設けられており、メイン統括制御装置130と補助統括コントローラ136とに接続されている。詳しくは、表示機150は、ハブ138を介して上記LANケーブル140と同種類のLANケーブル140によってメイン統括制御装置130に接続されており、シリアル通信ケーブル152とRGBアナログケーブル154とによって補助統括コントローラ136に接続されている。製造作業機12には、さらに、非常停止スイッチ156が設けられており、ターミナルリレー158を介してI/Oケーブル160によってメイン統括制御装置130および各作業要素実行装置26等の制御装置90等に接続されている。なお、製造作業機12の主電源スイッチ,起動スイッチ等の複数のスイッチ162と、起動中であることを示す表示灯,作動可能であることを示す表示灯等の複数の表示灯164とが、メイン統括制御装置130に接続されている。
【0087】
<製造システムの作動>
本製造システム10では、製造作業機12が、補助統括コントローラ136に記憶されているソースデータに従って、上記6つの個別の装置26等が各々の作業を実行することで、回路基板への部品の装着作業を実行するようになっている。具体的に、回路基板上に部品を接着剤によって固着する製造作業について説明する。第1部品としての回路基板166は、図3(a)に示すように、基板トレイ167上に予め20枚載置されており、この基板トレイ167が製造作業機12に搬入される。そして、基板トレイ167上に載置されている1枚の回路基板166に、図3(b)に示すように、接着剤168が塗布され、その塗布された接着剤168の上に第2部品としての電子回路部品169が、図3(c)に示すように、装着される。塗布作業と装着作業とが実行されることで、1枚の回路基板166に対する作業が終了し、製造物としての部品が装着された回路基板が製造される。次に、他の回路基板166に対して塗布作業と装着作業とが実行され、20枚の回路基板166全てに対する作業が終了すると、基板トレイ167が製造作業機12から搬出される。
【0088】
このような製造作業に関するソースデータには、図4に示すような基本コードが記されている。基本コードには、回路基板166に対する作業を実行するための準備作業,回路基板166に対する作業(対基板作業),回路基板166に対する作業実行後の終了作業の3種類の基本コードが記されており、回路基板166に対する作業(対基板作業)は、20枚の回路基板166に対して実行する必要が有るため、20回分記されている。図には、基本コード名が記されているが、その基本コード名とともに作業実行に関する情報、具体的には、例えば、各回路基板166の位置情報等が記される場合がある。
【0089】
さらに、3種類の基本コードの各々は、図5に示すようにコード化されており、1以上の単位作業コードによって構成されている。詳しくは、準備作業コードは、基板トレイ167、および装着すべき部品の載置された部品トレイの準備(トレイ準備)を実行するための単位作業コードによって構成されており、終了作業コードは、基板トレイ167の搬出(トレイ搬出)を実行するための単位作業コードによって構成されている。また、対基板作業コードは、回路基板166に関する情報の取得(基板情報取得),回路基板166への接着剤の塗布(接着剤塗布),回路基板への部品装着(部品装着)の各々を実行するための3種類の単位作業コードによって構成されている。この単位作業コードにも、作業実行に関する情報、具体的には、例えば、基板トレイ167の搬送量等が記される場合がある。
【0090】
単位作業コードは、図6に示すように、一連の複数の作業によって構成される単位作業をコード化したものであり、複数の動作コード、つまり、動作コード群によって構成されている。ただし、トレイ搬出コードは、1つの動作コードのみによって構成されている。詳しくは、トレイ準備コードは、基板トレイ167を特定の位置まで搬入するための動作コードと、装着すべき部品の載置された部品トレイを供給するための動作コードとによって構成されている。基板情報取得コードは、回路基板166を撮影可能な位置にヘッドカメラ36を移動させるための動作コードと、ヘッドカメラ36によって回路基板166を撮影してその回路基板166の位置情報を取得するための動作コードとによって構成されている。接着剤塗布コードは、取得された位置情報に基づいて接着剤の塗布位置にディスペンサ装置32を移動させるための動作コードと、接着剤を回路基板166に塗布するための動作コードとによって構成されている。部品装着コードは、装着装置28を部品の供給位置に移動させるための動作コードと、部品を保持するための動作コードと、部品を保持した装着装置28をベースカメラ34上に移動させるための動作コードと、装着装置28に保持された部品をベースカメラ34によって撮影してその部品の保持状態の情報を取得するための動作コードと、回路基板の位置情報および部品の保持状態の情報に基づいて部品の装着位置に装着装置28を移動させるための動作コードと、部品を離脱するための動作コードとによって構成されている。そして、トレイ搬出コードは、部品が装着された回路基板166、つまり組立物が載置された基板トレイ167を搬出するための動作コードによって構成されている。ちなみに、各動作コードは、作業要素実行装置とその作業要素実行装置によって実行される作業要素とを示しており、各動作コードに応じた作業要素がコード化された作業要素コードと、その作業要素を実行可能な作業要素実行装置を特定する装置特定コードとによって構成されている。
【0091】
上記したように階層的にコード化されたソースデータが、補助統括コントローラ136に記憶されており、さらに、6つの個別の装置26等の各々が行い得る動作に関する情報である可能動作情報も補助統括コントローラ136に記憶されている。可能動作情報には、作業要素実行装置26等が作業を実行する際のその装置が行い得る動作、具体的には、例えば、供給装置30であれば部品の供給,装着装置28であれば部品の保持若しくは離脱等が含まれている。また、作業要素実行装置26等の作動範囲,寸法,作動時の基準点等も含まれる。ちなみに、作動時の基準点とは、各装置26等が作動する際の基準点であり、その基準点を原点として各装置26の動作量等が決定される。
【0092】
本製造システム10では、作業要素実行装置26等の各々への動作に関する指令である動作指令が、補助統括コントローラ136において、ソースデータに基づいて作成される。動作指令作製時には、上記可能動作情報が参照され、各装置26等の作動態様,動作量等を含んだ動作指令が作成される。具体的には、図7に示すように、搬送装置26によって回路基板を特定量搬送するための動作指令(1)と、供給装置30によって特定の部品トレイを供給するための動作指令(2)と、移動装置40によってヘッドカメラ36を特定量移動させるための動作指令(3)と、ヘッドカメラ36の撮影によって回路基板の位置情報を取得するための動作指令(4)と、移動装置40によってディスペンサ装置32を特定量移動させるための動作指令(5)と、ディスペンサ装置32によって接着剤を特定量放出するための動作指令(6)と、移動装置40によって装着装置28を特定量移動させるための動作指令(7)と、装着装置28によって部品を保持するための動作指令(8)と、移動装置40によって装着装置28を特定量移動させるための動作指令(9)と、ベースカメラ34の撮影によって部品の保持状態の情報を取得するための動作指令(10)と、移動装置40によって装着装置28を特定量移動させるための動作指令(11)と、装着装置28によって部品を離脱するための動作指令(12)と、搬送装置26によって回路基板を特定量搬送するための動作指令(203)とを含んだものが作成される。ちなみに、動作指令No.(3)〜(12)の動作指令は1枚の回路基板166に対する作業を実行するためのものであり、動作指令No.(13)〜(202)では、動作指令No.(3)〜(12)と略同様の動作指令が19回繰り返される。ただし、動作指令No.(13)〜(202)での移動装置40の移動量は、回路基板166毎に異なるものとなっている。
【0093】
上述したように、図4〜6に示す形式のソースデータに基づいて、補助統括コントローラ136において、図7に示すような203個の動作指令群が作成される。本製造システム10では、ソースデータを、構造化プログラミングの手法、つまり、製造作業を実行するための作業を段階的に細かな単位に処理を記述していく手法に従ってコード化しており、3層化して記述されたソースデータは、図7に示す動作指令群と比較して、比較的シンプルなものとされている。詳しく言えば、図6に示す単位作業コードのうちの基板情報取得コード,接着剤塗布コード,部品装着コードでは、20枚の回路基板166の各々に対する動作コードが共通化されており、それら3つの単位作業コードは、共通化動作コード群と考えることができる。各単位作業コードの動作群が共通化されることで、ソースデータには、1枚の回路基板166に対する基板情報取得コード,接着剤塗布コード,部品装着コードを記載すればよく、それら3つの単位作業コードを構成する動作群コードを20回繰り返して記載する必要はない。したがって、本製造システム10では、ソースデータの作成を簡便なものとすることが可能となっている。なお、共通化動作群コードであっても、各回路基板166が載置されている位置等は異なるため、移動装置40等の動作パラメータ、つまり、移動装置40による移動量等は異なるが、動作指令作製時に、それら動作パラメータは、回路基板毎に調整される。
【0094】
上記複数の動作指令は、補助統括コントローラ136からメイン統括制御装置130へ、LANケーブル140を介して送信され、それら複数の動作指令が、順次、メイン統括制御装置130によって作業要素実行装置26等の各々の個別制御装置90等に、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。メイン統括制御装置130から送信される動作指令は、送信先を定めずに、全ての作業要素実行装置26等の個別制御装置90等に送信されるが、動作指令には、後に説明するように、その動作指令によって作動するべき作業要素実行装置が示されているため、その作動するべき作業要素実行装置が動作指令に従って作動するようになっている。以下に、上記動作指令による作業要素実行装置の作動を具体的に説明する。
【0095】
メイン統括制御装置130は、まず、基板トレイ167を特定の位置まで搬送するための動作指令を、シリアル通信ケーブル134を介して送信する。送信される動作指令は、図7中の動作指令No.(1)に示すような形式とされている。図中の主指令は、その動作指令を実行するべき作業要素実行装置と、その作業要素実行装置によって実行される1つの動作の開始若しくは終了とを指令するものであり、この動作指令では、搬送装置26による基板トレイ167の搬送の開始を指令するものである。図中の付随指令は、必要に応じて指令されるものであり、作業要素実行装置によって実行される1つの動作についての動作パラメータを指令するものである。具体的には、この動作指令では、搬送装置26による搬送量、つまり、移動距離を指令するものである。なお、この付随指令には、搬送速度,搬送時間,搬送方向等、種々のパラメータを採用することができる。また、図中の指令状態は、動作指令の有無を示すものであり、動作指令が指示されている状態では「指示」、動作指令が指示されていない状態では「無し」と設定される。つまり、この動作指令では「指示」と設定される。
【0096】
メイン統括制御装置130からの動作指令を受信した搬送装置制御装置112は、その動作指令に基づいて搬送モータ52の作動を制御する必要があるが、メイン統括制御装置130から送信される動作指令は、ある特定のプログラミング言語に従ったものとされており、搬送装置制御装置112が対応可能なプログラミング言語に従ったものではない。このため、メイン統括制御装置130から送信される動作指令では、搬送モータ52を作動させることができない。搬送装置制御装置112は、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語、つまり、自身が扱うことが可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換する機能を有しており、自身で変換した動作指令に基づいて搬送モータ52の作動を制御するように構成されている。ちなみに、図7中で示される主指令,付随指令等の内容、具体的には、動作指令No.(1)での「搬送装置:搬送」,「搬送量」等が、ある特定のプログラミング言語に従った動作指令である。
【0097】
なお、装着装置28,供給装置30,ディスペンサ装置32の各々の個別制御装置100,104,108も同様の機能を有しており、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換することが可能とされている。ただし、移動装置40の移動装置制御装置90および、カメラ装置38のカメラ装置コントローラ116は、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応することが可能とされているため、動作指令を規定するプログラミング言語を変換する機能を有していない。
【0098】
メイン統括制御装置130からの動作指令による搬送装置26の作動が終了すると、つまり、基板トレイ167が特定の位置まで搬送されると、その動作指令に対する返信が、搬送装置制御装置112からメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。送信される返信は、図8に示すような形式とされている。図中の作動結果は、動作指令による作業要素実行装置の作動が適切に実行されたか否かをしめすものであり、この返信では、基板トレイ167が特定の位置まで搬送されたか否かを示すものである。さらに、図中の作動結果は、作動結果のパラメータ、具体的には、基板トレイ167の移動先の位置等を必要に応じて示すものであってもよい。また、図中の指令状態は、動作指令による作業要素実行装置の作動が完了したことを示すものであり、この返信では、「完了」に設定される。そして、その終了に関する返信をメイン統括制御装置130が受信すると、指令状態は「無し」に設定される。ちなみに、図中の作業要素実行装置状態は、作業要素実行装置に異常があるか否かを示すものであるが、動作指令に対する返信では利用されずに、後に詳しく説明するように、作業要素実行装置が正常に作動しない虞がある場合の送信時に利用される。
【0099】
メイン統括制御装置130は、基板トレイ167の特定の位置までの搬送が確認された後、つまり、搬送の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、次の動作指令を送信する。次の動作指令は、図7中の動作指令No.(2)に示す形式となっており、装着すべき部品の載置された部品トレイを供給するための動作指令である。この動作指令での、主指令は、供給装置30による部品トレイの供給を指令するものであり、付随指令は、装着すべき部品が載置された部品トレイを指定する指令である。供給装置制御装置108は、動作指令を受信すると、搬送装置制御装置112と同様に、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換し、その自身で変換した動作指令に基づいてトレイ移動装置54の作動を制御する。そして、その動作指令による作動が終了すると、動作指令に対する返信が、供給装置制御装置108からメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。なお、供給装置制御装置108からの返信における作動結果には、装着すべき部品の位置情報等が添付される場合がある。
【0100】
次に、メイン統括制御装置130は、トレイ供給の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、基板トレイ167上の回路基板166を撮影可能な位置にヘッドカメラ36を移動させるための動作指令(図7中の動作指令No.(3))を送信する。ちなみに、本製造システム10では、特定の部品トレイの供給が終了した後にトレイ供給の終了に関する返信が送信されるが、トレイ供給の終了時点が推定される場合には、終了時点の前にトレイ供給の終了に関する返信を送信してもよい。部品トレイの供給中に移動装置40によって装着装置28を移動させても、2つの作業が干渉することは少なく、部品トレイの供給中に移動装置40によって装着装置28を移動させることで、製造作業時間の短縮を図ることが可能となるためである。
【0101】
ヘッドカメラ36を移動させるための動作指令での、主指令は、移動装置40によるヘッドカメラ36の移動の開始を指令するものであり、付随指令は、前後方向への移動量と左右方向への移動量と上下方向への移動量とを指令するものである。なお、この付随指令を設定する際に、搬送装置制御装置112からの返信における作動結果、詳しくは、基板トレイ167の移動先の位置の情報を利用することが可能である。移動装置制御装置90は、動作指令を受信すると、その受信した動作指令を変換することなく、受信した動作指令に基づいて3つの電磁モータ58,60,62の各々作動を制御する。移動装置制御装置90は、上述したように、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語を認識可能とされているからである。そして、その動作指令による移動装置40の作動が終了すると、動作指令に対する返信が、移動装置制御装置90からメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。
【0102】
続いて、メイン統括制御装置130は、ヘッドカメラ36の移動の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、次の動作指令を送信する。具体的には、ヘッドカメラ36によって基板を撮影してその基板の位置情報を取得するための動作指令(図7中の動作指令No.(4))が送信される。この動作指令での、主指令は、ヘッドカメラ36による回路基板166の撮影と撮影によって得られた画像データの処理の開始を指令するものである。カメラ装置コントローラ116も、移動装置制御装置90と同様に、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語を認識可能であるため、カメラ装置コントローラ116は、動作指令を受信すると、その受信した動作指令に基づいてヘッドカメラ36と光源80とを制御する。そして、撮影によって得られた画像データを処理することで、回路基板166の位置情報を取得する。その動作指令による作動が終了すると、動作指令に対する返信が、カメラ装置コントローラ116からメイン統括制御装置130へ送信される。なお、カメラ装置コントローラ116からの返信における作動結果には、撮影によって取得された回路基板166の位置データが添付される。
【0103】
メイン統括制御装置130は、回路基板166の位置情報の取得の完了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、接着剤の塗布位置にディスペンサ装置32を移動させるための動作指令(図7中の動作指令No.(5))を送信する。この動作指令での、主指令は、移動装置40によるディスペンサ装置32の移動の開始を指令するものであり、付随指令は、前後方向への移動量と左右方向への移動量と上下方向への移動量とを指令するものである。なお、この付随指令を設定する際に、カメラ装置コントローラ116からの返信における作動結果、詳しくは、回路基板166の位置情報が利用される。移動装置制御装置90は、動作指令を受信すると、その受信した動作指令に基づいて電磁モータ58,60,62の作動を制御する。そして、その動作指令による作動が終了すると、動作指令に対する返信が、移動装置制御装置90からメイン統括制御装置130へ送信される。
【0104】
メイン統括制御装置130は、ディスペンサ装置32の移動の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、接着剤を回路基板166に塗布するための動作指令(図7中の動作指令No.(6))を送信する。この動作指令での、主指令は、ディスペンサ装置32による接着剤の放出の開始を指令するものであり、付随指令は、接着剤の放出量を指令するものである。なお、この付随指令には、放出速度,放出時間,接着剤の放出口の開度量等、種々の動作パラメータを採用することができる。ディスペンサ装置制御装置104は、移動装置制御装置90,カメラ装置コントローラ116と異なり、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応することができないため、ディスペンサ装置制御装置104は、動作指令を受信すると、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換し、その自身で変換した動作指令に基づいて吐出装置78の作動を制御する。そして、動作指令に基づく吐出装置78の作動によって、回路基板166上の特定の位置に接着剤168が塗布されると、その動作指令に対する返信が、ディスペンサ装置制御装置104からメイン統括制御装置130へ送信される。なお、以降の動作指令による各作業要素実行装置28等の作動の説明は、明細書が冗長となることを避けるべく省略する。
【0105】
また、各作業要素実行装置26の個別制御装置90等には、自身が認識されるための認識情報が記憶されたICチップ(図示省略)が組み込まれており、製造作業機12の起動時に、そのICチップ内に記憶された認識情報がメイン統括制御装置130に、上記LANケーブル140を介して送信されるようになっている。メイン統括制御装置130は、各個別制御装置90等からの認識情報の送信が確認されている場合にのみ、上記動作指令を送信するようになっている。なお、本製造作業機12では、認識情報がLANケーブル140を介して送信されるようになっているが、シリアル通信ケーブル134,I/Oケーブル160を介して送信されてもよく、また、有線ではなく、無線によって送信されてもよい。
【0106】
また、作業要素実行装置26等の異常等によって作業要素実行装置26等が正常に作動しない虞がある場合には、異常等が生じている作業要素実行装置26等の個別制御装置90等が、正常に作動しない虞がある旨をメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信するようになっている。具体的には、図8に示した形式のデータが、正常に作動しない虞のある作業要素実行装置26等の個別制御装置90等からメイン統括制御装置130へ送信されるようになっている。そして、その旨を受信したメイン統括制御装置130は、その正常に作動しない虞がある作業要素実行装置26等だけでなく、全ての作業要素実行装置26等の個別制御装置90等への動作指令の送信を停止するようにされており、作業要素実行装置26等の異常に対応可能とされている。なお、メイン統括制御装置130は、シリアル通信ケーブル134を介した通信によって、作業要素実行装置26等の異常を把握することが可能となっているが、フェールセーフ等の観点から、異常のある作業要素実行装置26等の個別制御装置90等が、上記I/Oケーブル160を介して、作業要素実行装置26等が異常である旨をメイン統括制御装置130へ送信するようにもなっている。
【0107】
また、各作業要素実行装置26等の個別制御装置90等は、自身の作業要素実行装置26等が行い得る動作に関する情報である可能動作情報を個別に記憶するように構成されている。記憶される可能動作情報には、上述した作業要素実行装置が行い得る動作,作業要素実行装置の作動範囲,寸法等だけでなく、作業要素実行装置の性能,作業要素実行装置の制御ゲイン等が含まれる。記憶される作業要素実行装置の性能には、例えば、その装置が電磁モータを有している場合にはその電磁モータの出力性能,その装置が減速機を有している場合にはその減速機の減速比等が含まれる。また、記憶される制御ゲインには、例えば、装置が電磁モータを有している場合にはその電磁モータへの供給電力を決定する際の制御ゲイン等が含まれる。
【0108】
各作業要素実行装置の個別制御装置90等に記憶されている可能動作情報は、個別制御装置90等から補助統括コントローラ136に、上記LANケーブル140を介して送信され、補助統括コントローラ136において記憶されるようになっている。補助統括コントローラ136に記憶される可能動作情報は、上述したように、ソースデータに基づいて動作指令を作成する際に利用されるだけでなく、バックアップ等に役立てることが可能となっている。また、補助統括コントローラ136において、例えば、搬送装置26の搬送モータ52の制御ゲインが記憶されているような場合には、その制御ゲインを変更し、その変更された制御ゲインに関する情報を、搬送装置制御装置112に送信することで、搬送装置26の搬送モータ52の制御ゲインを変更することが可能となる。
【0109】
また、作業要素実行装置26等の個別制御装置90等は、作業要素実行装置26等の本体部、つまり、作業要素を実際に実行し作動する本体部に内蔵されていたり、製造作業機12の内部に位置しており、個別制御装置90等のプログラムの変更,バージョンアップ等の実行のために、個別制御装置90等に直接アクセスし難い。そこで、本製造システム10においては、変更等を施したプログラム等を、補助統括コントローラ136から、LANケーブル140を介して各作業要素実行装置26等の個別制御装置90等へ送信することが可能とされている。
【0110】
<各制御装置の機能構成>
メイン統括制御装置130,補助統括制御装置118および各作業要素実行装置26等の個別制御装置90等は、各々の実行処理に鑑みれば、図9に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、メイン統括制御装置130は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするメイン統括コントローラ170を備えており、そのメイン統括コントローラ170は、製造作業機12の作動状態を監視する機能部として、製造作業機監視部172を、作業要素実行装置26等の個別制御装置90等からの認識情報を取得することで、動作指令の送信可能な作業要素実行装置26等を認識する作業要素実行装置認識部174を、個別制御装置90等と通信する機能部として、統括インタフェイス部176を、動作指令の送信処理を実行する機能部として、指令送信処理部178を、作業要素実行装置26等が正常に作動しない虞がある場合に動作指令の送信を停止する機能部として、動作指令送信停止部180を、複数の動作指令を記憶する機能部として、動作指令記憶部182を、それぞれ有している。
【0111】
補助統括制御装置118の補助統括コントローラ136は、ソースデータの外部からの入力を受け付ける機能部として、ソースデータ入力受付部184を、ソースデータを記憶する機能部として、ソースデータ記憶部186を、ソースデータに基づいて動作指令を作成する機能部として、動作指令作成部188を、全ての作業要素実行装置26等の可能動作情報を統括して記憶する機能部として、可能動作情報統括記憶部190を、可能動作情報の外部からの入力を受け付ける機能部として、可能動作情報入力受付部192を、作業要素実行装置26等の個別制御装置90等のプログラムを変更する機能部として、プログラム変更部194を、それぞれ有している。
【0112】
移動装置制御装置90,装着装置制御装置100,ディスペンサ装置制御装置104,供給装置制御装置108,搬送装置制御装置112は、それぞれ、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラを備えている。具体的には、移動装置制御装置90は移動装置コントローラ200を、装着装置制御装置100は装着装置コントローラ202を、ディスペンサ装置制御装置104はディスペンサ装置コントローラ204を、供給装置制御装置108は供給装置コントローラ206を、搬送装置制御装置112は搬送装置コントローラ208を、それぞれ備えている。それら移動装置コントローラ200,装着装置コントローラ202,ディスペンサ装置コントローラ204,供給装置コントローラ206,搬送装置コントローラ208およびカメラ装置コントローラ116は、それぞれ、メイン統括コントローラ170および補助統括コントローラ136と通信する機能部として、個別インタフェイス部210を、作業要素実行装置90等の認識情報を格納する記憶部として、認識情報格納部212を、動作指令に基づいて作業要素実行装置90等の作動を制御する機能部として、作動制御部214を、作業要素実行装置90等の可能動作情報を個別に記憶する機能部として、可能動作情報個別記憶部216を、それぞれ有している。さらに、装着装置コントローラ202,ディスペンサ装置コントローラ204,供給装置コントローラ206,搬送装置コントローラ208は、それぞれ、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の個別制御装置90等で対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換する機能部として、指令変換部218も有している。
【0113】
メイン統括コントローラ170の製造作業機監視部172は、個別制御装置90等からI/Oケーブル160を介して作業要素実行装置26等が異常である旨の送信を受信するとともに、上記複数のスイッチ162のON/OFF情報を受信するように構成されており、それらの受信情報に基づいて指令送信処理部178に各種指令,作業要素実行装置26等の作動状態等を送信するように構成されている。さらに、製造作業機監視部172は、上記複数の表示灯164にON/OFF指令を送信するように構成されている。また、
統括インタフェイス部176は、個別制御装置90等の個別インタフェイス部210との間で、1のプロトコルに従って、動作指令,動作指令に対する返信,作業要素実行装置26等の異常等を通信可能とされており、作業要素実行装置26等の異常を動作指令送信停止部180に、動作指令に対する返信を指令送信処理部178に送信するように構成されている。
【0114】
指令送信処理部178は、動作指令記憶部182に記憶されている複数の動作指令の送信処理を、順次、実行するように構成されている。つまり、指令送信処理部178において、作業要素実行装置26等を統括して制御する統括制御方法の指令送信処理工程が実行される。指令送信処理部178は、1つの動作指令の送信処理を実行し、その1つの動作指令に対する返信を統括インタフェイス部176を介して受信した後に、その1つの動作指令の次に送信すべき動作指令の送信処理を実行するように構成されている。なお、指令送信処理部178は、作業要素実行装置認識部174によって認識された作業要素実行装置26等へのみ動作指令の送信処理を実行するように構成されており、作業要素実行装置認識部174は、作業要素実行装置26等から認識情報を取得した場合に作業要素実行装置を認識した旨を指令送信処理部178に送信するように構成されている。また、動作指令送信停止部180は、作業要素実行装置26等の異常を統括インタフェイス部176を介して受信した場合に、指令送信処理部178による動作指令の送信処理を停止するように構成されている。
【0115】
補助統括コントローラ136のソースデータ入力受付部184は、本製造作業機12の各制御装置130等とは異なる制御装置,記憶媒体等の外部装置に接続可能とされており、外部装置からソースデータを入力することが可能となっている。そのソースデータ入力受付部184に入力されたソースデータは、ソースデータ記憶部186に記憶されるようになっている。動作指令作成部188は、ソースデータ記憶部186に記憶されているソースデータに基づいて、特定のプログラミング言語に従った動作指令を作成し、その作成した動作指令をメイン統括コントローラ170の動作指令記憶部182に送信するように構成されている。可能動作情報統括記憶部190は、作業要素実行装置26等の各々の可能動作情報を、可能動作情報入力受付部192を介して、作業要素実行装置26等の各々の個別制御装置90から受信するとともに、その情報を記憶するように構成されており、動作指令作成部188は、可能動作情報統括記憶部190に記憶されている可能動作情報を参照して、動作指令を作成するように構成されている。つまり、動作指令作成部188において、作業要素実行装置26等を統括して制御する統括制御方法の動作指令作成工程が実行されるとともに、可能動作情報入力受付部192において、統括制御方法の可能動作情報取得工程が実行される。なお、可能動作情報入力受付部192も、外部装置に接続可能とされており、外部装置から可能動作情報を入力することが可能となっている。また、プログラム変更部194も、外部装置に接続可能とされており、外部装置からプログラムを受信し、その受信したプログラムを、LANケーブル140を介して、メイン統括制御装置130,作業要素実行装置26等の個別制御装置90等に送信することが可能とされている。
【0116】
個別制御装置90等の各コントローラ200等の個別インタフェイス部210は、メイン統括制御装置130の統括インタフェイス部176との間で、1のプロトコルに従って、動作指令,動作指令に対する返信,作業要素実行装置26等の異常等を通信可能とされるとともに、補助統括コントローラ136の可能動作情報入力受付部192との間でも、可能動作情報個別記憶部216に記憶されている可能動作情報を通信可能とされている。指令変換部218は、個別インタフェイス部210が受信した動作指令を自身の個別制御装置100等が理解可能なプログラミング言語に変換するように構成されている。つまり、指令変換部218において、作業要素実行装置を個別に制御する個別制御方法の指令変換工程が実行される。なお、製造作業機12では、指令変換部218が個別制御装置100等内に設けられているが、指令変換部218と同等の機能を有する指令変換装置を個別制御装置100等の外部に設けてもよい。ただし、指令変換部218と同等の機能を有する指令変換装置が個別制御装置100等の外部に設けられる場合には、その指令変換装置に個別インタフェイス部が設けられ、指令変換装置と統括制御装置との間で、1のプロトコルに従って、動作指令,動作指令に対する返信,作業要素実行装置26等の異常等が通信されることになる。
【0117】
装着装置コントローラ202,ディスペンサ装置コントローラ204,供給装置コントローラ206,搬送装置コントローラ208の作動制御部214は、指令変換部218によって変換された動作指令に基づいて作動デバイスの作動を制御するように構成されており、移動装置コントローラ200,カメラ装置コントローラ116の作動制御部214は、個別インタフェイス部210が受信した動作指令に基づいて作動デバイスの作動を制御するように構成されている。また、認識情報格納部212には、認識情報が格納されており、個別インタフェイス部210を介して、格納されている認識情報が、メイン統括コントローラの作業要素実行装置認識部174に送信されるようになっている。
【0118】
また、メイン統括コントローラ170による処理、具体的には、動作指令を送信するための処理、さらに具体的に言えば、動作指令を送信するべく製造作業機の作動状態を監視するための処理を実行するための送信プログラムは、グラフィック型のプログラミング言語によって記述されている。一方、補助統括コントローラ136による処理、具体的には、動作指令作成部による処理を実行するための作成プログラムは、構造型のプログラミング言語によって記述されている。グラフィック型のプログラミング言語は、一般的に、構造型のプログラミング言語より容易なプログラミング言語とされており、高水準なプログラミング言語と考えられている。つまり、送信プログラムの変更は、比較的容易に行うことが可能とされている。なお、本製造システム10での送信プログラムのプログラミング言語はラダー言語とされており、作成プログラムのプログラミング言語はC言語とされている。
【0119】
<作業要素実行装置の交換>
本製造システム10においては、図10に示すように、搬送装置26,供給装置30,移動装置40,カメラ装置38のベースカメラ34は、作業機本体24に着脱可能とされており、装着装置28,ディスペンサ装置32,カメラ装置38のヘッドカメラ36は、移動装置40のスライダ56に着脱可能とされている。それら作業要素実行装置26等は、ワンタッチで取付けおよび取り外し可能なものもあれば、数本のボルトによって固定されるものもあるが、いずれの作業要素実行装置26等も、作業機本体24若しくはスライダ56に容易に取付けおよび取り外し可能なものとされている。
【0120】
また、装着装置28、若しくはディスペンサ装置32が取付けられる位置、つまり、スライダ56には、それら装着装置28,ディスペンサ装置32の代わりに、他の作業要素実行装置を取付けることが可能とされている。具体的に言えば、例えば、高周波による熱処理を実行する高周波ウェルダー220,レーザー加工を実行するレーザー発信装置222,UV照射による処理を実行するUV照射装置224,ホットエアーを送風することで熱処理を実行するホットエアー送風装置226,ねじ締め処理を実行するねじ締め装置228,ねじの保持・離脱および、ねじを保持した状態でのねじ締め処理を実行するねじ装着・ねじ締め装置230,2つのディスペンサノズルを有し、2種類の補助剤の放出を実行するダブルディスペンサ装置232,他の部材を保持・離脱および部材の保持位置の調整を実行する装着装置234,クリームはんだ印刷装置236等に交換することが可能とされている。したがって、例えば、新たな製品を製造する必要が生じ、回路基板への装着作業の代わりに、ある基材に部品をねじによって固定させるための作業を行うことが必要となった場合には、製造作業機自体を変更するのではなく、ディスペンサ装置32をねじ装着・ねじ締め装置230に交換することで製造作業を変更することが可能となる。さらに言えば、上記製造作業機12での製造作業は組立作業であったが、作業対象物に対して何らかの加工・処理等を施すような作業を製造作業として実行できるように、作業要素実行装置を変更してもよい。詳しく言えば、プレス作業等の作業対象物を変形させる作業、切断作業等の作業対象物の一部を取り除く作業、切削作業等の作業対象物を成形する作業、レーザ,プラズマ等による作業対象物の表面改質作業、研磨等の表面仕上作業等の作業、固着,硬化等の目的で作業対象物に光線,紫外線,電磁波等を照射等する作業等の種々の作業を実行できるように、作業要素実行装置を変更することが可能である。つまり、本製造システムによれば、作業要素実行装置を変更することで、多岐にわたる製造作業を実行することが可能となる。
【0121】
また、製造作業機12では、上述したように、スライダ56に2つの作業要素実行装置を取り付けることが可能とされており、それら2つの作業要素実行装置の種類によって、それら2つの作業要素実行装置を協調させて作動させることも可能である。2つの作業要素実行装置による協調作業とは、例えば、一方の作業要素実行装置によって作業対象物を把持等によって固定しつつ、他の作業要素実行装置によって加工・処理等を行うものであり、あたかも両手で作業を行う際に、一方の手で作業対象物がズレないように押さえつつ、他方の手で加工・処理等を行うことが可能である。具体的には、例えば、スライダ56に装着装置28とレーザー発信装置222とを取付けた場合に、装着装置28によって基材を押さえつつ、レーザー発信装置222によって基材にレーザー加工を実行することが可能である。また、例えば、スライダ56に装着装置28とねじ装着・ねじ締め装置230とを取付けた場合に、装着装置28によって基材を押さえつつ、ねじ装着・ねじ締め装置230によってねじ締め処理を実行することが可能である。
【0122】
また、供給装置30の代わりに、他の種類の供給装置、具体的には、例えば、テープフィーダ240,ボールフィーダ,ねじ供給装置,段積みユニット(図示省略)等を取付けることが可能とされている。搬送装置26の代わりには、他の種類の搬送装置、具体的には、例えば、モジュールタイプのダブルコンベア242,シングルコンベア,昇降機能付のコンベア(図示省略)等を取付けることが可能とされている。また、搬送装置26の代わりに、図11に示すリフトアンドキャリー型の搬送装置であるキャリア243を取付けることが可能とされている。このキャリア243は、昇降装置244によって保持台245を上昇させることで作業対象物246を持ち上げ、その状態において運搬装置248によって搬送方向に移動させる構造とされている。つまり、キャリア243は、比較的重い作業対象物であっても適切に搬送することが可能となっている。さらに、搬送装置26の代わりに、ピックアンドプレース型の搬送装置(図示省略)を取り付けることも可能である。ピックアンドプレース型の搬送装置は、簡単に言えば、吸着によって作業対象物を持ち上げ、その状態において搬送方向に移動させる構造とされており、比較的脆い構造の作業対象物であっても適切に搬送することが可能となっている。また、ヘッドカメラ36およびベースカメラ34も、解像度,撮像範囲等の異なる他のカメラに取り替えることが可能とされている。
【0123】
製造作業機12を構成する搬送装置26,装着装置28等の6つの作業要素実行装置26等と交換可能な上記複数の作業要素実行装置220等の各々は、それら6つの作業要素実行装置26等と同様に、自身の作動を制御する個別制御装置を有している。そして、交換可能な上記複数の作業要素実行装置220等の個別制御装置の多くは、メイン統括制御装置130によって送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応可能とされている。また、メイン統括制御装置130によって送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応することのできない個別制御装置は、上記装着装置制御装置100等と同様に、自身が受信した動作指令を自身が扱うことが可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換する機能を有しており、自身で変換した動作指令に基づいて作業要素実行装置の作動を制御するように構成されている。つまり、製造作業機12を構成する作業要素実行装置26等を別の作業要素実行装置220等に交換しても、具体的には、上述したように、ディスペンサ装置32をねじ装着・ねじ締め装置230に交換しても、メイン統括制御装置130は、従来のプログラミング言語に従った動作指令をねじ装着・ねじ締め装置230の個別制御装置に送信すればよい。
【0124】
さらに、交換可能な上記複数の作業要素実行装置220等の個別制御装置の多くは、各作業要素実行装置の可能動作情報が記憶される可能動作情報個別記憶部を有しており、可能動作情報個別記憶部に記憶されている可能動作情報を補助統括コントローラ136の可能動作情報統括記憶部190に送信する事が可能とされている。また、交換可能な作業要素実行装置の個別制御装置が可能動作情報個別記憶部を有していないものであっても、外部装置から補助統括コントローラ136の可能動作情報入力受付部192に可能動作情報を入力することが可能とされているため、可能動作情報個別記憶部を有していない作業要素実行装置の可能動作情報を可能動作情報統括記憶部190に記憶させることが可能となっている。つまり、製造作業機12を構成する作業要素実行装置26等が別の作業要素実行装置220等に交換されても、動作指令作製時にその別の作業要素実行装置の可能動作情報を参照することが可能となっている。
【0125】
また、可能動作情報統括記憶部190に種々の作業要素実行装置の可能動作情報を予め格納しておいて、動作指令作成部188が、必要に応じて可能動作情報を参照しつつ、可能動作情報に基づいて動作指令を作成するように構成することも可能である。具体的には、例えば、起動時に送信される作業要素実行装置の認識情報にその作業要素実行装置の認識IDを含んでおき、その識別IDとその作業要素実行装置の可能動作情報との対応表を、可能動作情報統括記憶部190に記憶させておく。そして、動作指令作成部188が、識別IDに基づいて可能動作情報を参照するように構成する。このような構成によって、可能動作情報統括記憶部190に各作業要素実行装置の可能動作情報を記憶させておき、動作指令作製時等に可能動作情報を利用することも可能である。なお、作業要素実行装置から送信される認識情報に識別IDが含まれていない場合であっても、作業要素実行装置の認識IDを、バーコード等を利用して、統括制御装置に入力することで、識別IDに基づいて可能動作情報を参照することが可能となる。また、例えば、製造システムが複数の製造作業機によって構成されるような場合には、複数の統括制御装置をまとめて制御するホストコンピュータを搭載する製造システムが採用される可能性がある。このような製造システムにおいては、例えば、上記対応表等の情報をホストコンピュータに記憶させておき、各統括制御装置が、必要な情報をホストコンピュータから入手するように構成することも可能である。
【0126】
また、本製造作業機12を構成する6つの作業要素実行装置26等の代わりに取り付け可能な上記複数の作業要素実行装置220等の各々は、上記シリアルケーブル134,LANケーブル140,I/Oケーブル160を接続することが可能とされている。さらに言えば、カメラ装置38を除く他の全ての作業要素実行装置26,220等の各々において、その各々の個別制御装置は、作業要素を実行する本体部の内部に内蔵もしくは装着されている。つまり、カメラ装置38を除く他の全ての作業要素実行装置26,220等はユニット化されている。したがって、作業要素実行装置を交換する場合、具体的には、ディスペンサ装置32をねじ装着・ねじ締め装置230に変更する場合には、各ケーブル134,140,160をディスペンサ装置32からねじ装着・ねじ締め装置230に付け替えることで、作業要素実行装置の交換を完了することが可能となる。
【0127】
なお、作業要素実行装置を変更する際には、必要に応じて、製造作業機の作動状態の監視形態を変更したい場合があり、このような場合には、上記送信プログラムを変更することが望ましいことがある。この送信プログラムは、上述したように比較的容易な言語であるグラフィック言語によって記述されており、容易に変更することが可能となっている。したがって、作業要素実行装置の交換に伴って、統括制御装置の送信プログラムを変更しなければならない場合であっても、大きな労力等を伴わずに作業要素実行装置を変更することが可能となっている。
【0128】
<製造システムの構築方法>
製造作業機は、上述したように、1台の作業機本体24と、その作業機本体24に組み付けられる複数の作業要素実行装置とによって構成され、作業機本体24に組み付けられる複数の作業要素実行装置は、多数の作業要素実行装置の中から選択することが可能となっている。このため、製造作業機、つまり、製造システムを構築する際には、まず、製造作業機によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて複数の作業要素実行装置を決定し、その決定された複数の作業要素実行装置を準備する必要がある。そして、準備された複数の作業要素実行装置を作業機本体24に組み付けるとともに、それら複数の作業要素実行装置が統括制御装置によって制御されるように、統括制御装置に対して設定を行なう必要がある。以下に、本製造システム10を構築する際の構築方法について、具体的に説明する。
【0129】
本製造システム10においては、製造作業機12が、回路基板上に部品を接着剤によって固着する製造作業を行なうために、複数の作業要素、具体的には、回路基板の搬送,接着剤の塗布,部品の供給,部品の保持・離脱,部品等の撮像,保持位置等の移動を実行する必要がある。それら6つの作業要素を実行するためには、回路基板の搬送を実行するための搬送装置,接着剤の塗布を実行するためのディスペンサ装置,部品の供給を実行するための供給装置,部品の装着・離脱を実行するための装着装置,部品等の撮像を実行するためのカメラ装置,装着装置等を移動させるための移動装置の6台の作業要素実行装置が必要である。製造作業機を構成する作業機本体には、上記6台の作業要素実行装置を組付けることが可能とされており、本製造システム10を構築するためには、1台の作業機本体および、その作業機本体に組み付けられる6台の作業要素実行装置を準備する必要がある。
【0130】
そこで、各作業要素実行装置を準備するために、各作業要素を適切に実行可能な作業要素実行装置を決定する。詳しく言えば、回路基板の搬送を実行するための作業要素実行装置に関しては、回路基板、つまり、搬送物を適切に搬出するべく、搬送物の寸法,重量,素材等の諸元に基づいて、作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、20枚の回路基板166が載置された基板トレイ167を搬送するべく、コンベア型の搬送装置26を採用している。なお、搬送物が比較的重たい場合には、例えば、リフトアンドキャリー型の搬送装置であるキャリア243を採用してもよく、搬送物の素材が脆い素材である場合には、例えば、ピックアンドプレース型の搬送装置を採用してもよい。
【0131】
接着剤の塗布を実行するための作業要素実行装置に関しては、当然、ディスペンサ装置を採用する必要があるが、ディスペンサ装置といっても種々の性能のものが存在する。上記したディスペンサ装置においても、1種類の補助材の放出を実行可能なディスペンサ装置32と、2種類の補助剤の放出を実行可能なダブルディスペンサ装置232とが存在する。そこで、ディスペンサ装置の性能を考慮して、接着剤の塗布を実行するための作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、使用される接着剤の種類は1種類であることから、1種類の補助材の放出を実行可能なディスペンサ装置32を採用している。
【0132】
部品の装着・離脱を実行するための作業要素実行装置に関しては、部品を適切に保持・離脱するべく、部品の寸法,重量,素材等の諸元に基づいて、作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、吸着型の装着装置28を採用しているが、装着する部品によっては、メカチャック型の装着装置を採用してもよい。また、部品の供給を実行するための作業要素実行装置に関しては、供給される部品の寸法,重量,荷姿等の諸元に基づいて作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、トレイユニット型の供給装置30を採用しているが、供給部品によっては、フィーダ型の供給装置であるテープフィーダ240を採用してもよい。また、部品等の撮像を実行するための作業要素実行装置に関しては、解像度,撮像範囲等のカメラ装置の性能を考慮して作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、ヘッドカメラ36とベースカメラ38を含むカメラ装置38を採用している。
【0133】
ちなみに、装着装置等の作業ヘッド装置を移動させるためのヘッド移動装置、つまり、上記移動装置40は、作業機本体24に予め組み付けられており、移動装置40と作業機本体24とによって構成されるメインフレームとして流通している場合がある。このため、保持位置等の移動を実行するための作業要素実行装置に関しては、予め作業機本体24に組みつけられているものを採用する。また、そのメインフレームには、メイン統括制御装置130と補助統括制御装置118とによって構成される統括制御装置が予めセットされており、メインフレームと統括制御装置とによって構成される本体装置として流通しているものがある。そこで、本製造システム10では、その移動装置40と作業機本体24とメイン統括制御装置130と補助統括制御装置118とによって構成される本体装置を採用している。
【0134】
そして、上述したように、本体装置に組付けるための5つの作業要素実行装置26等が決定されると、1台の本体装置を準備するための工程(以下、「本体装置準備工程」という場合がある),5つの作業要素実行装置26等を準備するための工程(以下、「作業要素実行装置準備工程」という場合がある),本体装置のメインフレームに5つの作業要素実行装置26等を組付けるための工程(以下、「作業要素実行装置組付工程」という場合がある),本体装置の統括制御装置に対して組立作業の設定を行なう工程(以下、「統括制御装置設定工程」という場合がある)が実行されて、本製造システム10が構築される。
【0135】
具体的に言えば、本体装置準備工程において、本製造システムのユーザーは、本体装置を製造しているある特定のメーカから本体装置を購入することが可能である。また、その特定のメーカとは異なるメーカ(その特定のメーカと区別するべく、「サードベンダ」という場合がある)がその特定のメーカから本体装置を購入し、ユーザーがそのサードベンダから本体装置を購入することも可能である。作業要素実行装置準備工程においては、ユーザーが、本体装置を製造している上記メーカ、若しくは、サードベンダから作業要素実行装置を購入することが可能であり、また、ユーザー自身が作業要素実行装置を製造することも可能である。
【0136】
ただし、先に述べたように、統括制御装置による制御時にその統括制御装置によって作業要素実行装置が認識されるためには、作業要素実行装置に認識情報が記憶されたICチップが組み込まれていなければならない。このため、上記メーカ以外のものが作業要素実行装置を製造する場合には、そのメーカ以外のものは、上記メーカから認識情報が記憶されたICチップを購入し、作業要素実行装置にそのICチップを組み込んで製造する必要がある。さらに、作業要素実行装置は、特定の通信プロトコルに従って、統括制御装置と動作指令等を通信可能とされるとともに、受信した動作指令を自身の有する個別制御装置が理解可能なプログラミング言語に変換するように構成される必要がある。このため、上記メーカ以外のものが作業要素実行装置を製造する場合には、上記メーカから作業要素実行装置の仕様,通信プロトコル等の開示をうける必要がある。なお、上記メーカから購入する作業要素実行装置は、必ずしもそのメーカで製造されている必要はない。つまり、上記メーカが製造した作業要素実行装置をそのメーカから購入してもよく、そのメーカがサードベンダから購入した作業要素実行装置をそのメーカから購入してもよい。このように、本体装置準備工程および作業要素実行装置準備工程には、種々の手法があり、各工程によって構成される製造システムの構築方法には様々なパターンがある。以下に、製造システムの構築方法の様々なパターンについて説明する。
【0137】
i)本体装置および作業要素実行装置のメーカからの購入による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置もメーカから購入することで準備する。つまり、本構築方法においてユーザは、1つの業者から本体装置および作業要素実行装置を購入することになる。そして、作業要素実行装置組付工程において、準備した本体装置のメインフレームに、準備した作業要素実行装置が組付けられる。メインフレームには、作業要素実行装置に応じて基準位置が定められており、その基準位置に作業要素実行装置が組付けられることで、作業要素実行装置の作動時の基準点が担保されるようになっている。さらに、各作業要素実行装置は、各作業要素実行装置の組付位置の空間の大きさに応じた所定の寸法内の大きさとされており、容易に組付工程が実行されるようになっている。作業要素実行装置の組付位置の空間とは、例えば、搬送装置であれば、作業機本体24のフレーム部20を左右方向に貫通するスペースであり、供給装置であれば、フレーム部20の前端部に位置するスペースである。また、統括制御装置設定工程では、先に述べたソースデータが統括制御装置に入力される。ソースデータの入力に関しては、先に詳しく述べていることから簡単に説明すると、図4に示す基本コード,図5に示す単位作業コード,図6に示す動作コードが補助統括制御装置118のソースデータ入力受付部184に入力される。さらに、統括制御装置設定工程において、先に述べた作業要素実行装置の可能動作情報,供給部品の寸法・荷姿等の諸元等が入力される場合もある。このように4つの工程が実行されることで、製造システムが構築される。
【0138】
ちなみに、本構築方法をメーカからの視点において示すことも可能である。メーカから視点における本構築方法での本体装置準備工程では、メーカは本体装置を製造することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置をも製造することで準備する。そして、メーカが、自社製造の本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程,統括制御装置設定工程を実行することで、製造システム10を製造する。つまり、本構築方法をメーカが実行する場合には、ユーザーはメーカから製造システム10を購入することになる。この方法によって、製造システムを構築する場合には、製造システム全体がメーカにおいて製造されることから、メンテナンス等に関して便利である。また、メーカは、製造システムを構築するためのノウハウを得ることが可能であり、製造システム構築方法のノウハウを蓄積していくことが可能となる。なお、この構築方法による概念図を図12(a)に示しておく。
【0139】
また、メーカは、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置をサードベンダから購入することで準備することも可能である。この場合に、メーカは、自社製造の本体装置および購入した作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程,統括制御装置設定工程を実行することで、製造システム10を製造し、ユーザーはその製造システム10を購入することになる。この方法によって、製造システムを構築する場合には、技術力の高いサードベンダ製の作業要素実行装置を製造システムに組み込むことが可能となる。また、サードベンダ側からすれば、販路拡大といったメリット得ることが可能であり、メーカ側からすれば、製造システム構築方法のノウハウを蓄積していくことが可能である。この構築方法による概念図を図12(b)に示しておく。なお、作業要素実行装置を製造するサードベンダは、認識情報が記憶されたICチップの購入をし,通信プロトコル等の開示をうける必要がある。
【0140】
ii)本体装置および作業要素実行装置のサードベンダからの購入による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をサードベンダから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置もサードベンダから購入することで準備する。つまり、本構築方法においても、ユーザは1つの業者から本体装置および作業要素実行装置を購入することになる。ちなみに、サードベンダから購入される本体装置は、サードベンダがメーカから購入したものであり、サードベンダから購入される作業要素事項装置は、サードベンダが自社製造したものである。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付,工程統括制御装置設定工程が実行されることで、製造システム10が構築される。
【0141】
また、本構築方法もサードベンダからの視点において示すことが可能である。サードベンダから視点における本構築方法での本体装置準備工程では、サードベンダは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置を製造することで準備する。そして、サードベンダが、購入した本体装置および自社製造の作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程,統括制御装置設定工程を実行することで、製造システム10を製造し、ユーザーはサードベンダから製造システム10を購入するのである。この方法によって、製造システムを構築する場合にも、技術力の高いサードベンダ製の作業要素実行装置を製造システムに組み込むことが可能となる。また、メーカ側からすれば、サードベンダの高い技術力を利用して、不得意分野への進出を図ることが可能であり、不得意分野のユーザ対応をサードベンダに任せることが可能となる。サードベンダ側からすれば、製造システム構築方法のノウハウを蓄積していくことが可能である。なお、この構築方法による概念図を図12(c)に示しておく。
【0142】
iii)本体装置のメーカからの購入および作業要素実行装置のサードベンダからの購入による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置をサードベンダから購入することで準備する。つまり、本構築方法において、ユーザは、ある特定の業者から本体装置を購入し、作業要素実行装置を、そのある特定の業者とは異なる業者から購入することになる。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付,工程統括制御装置設定工程が実行されることで、製造システム10が構築される。この方法によって、製造システムを構築する場合にも、技術力の高いサードベンダ製の作業要素実行装置を製造システムに組み込むことが可能となる。また、メーカ側からすれば、多品種少量生産となりがちな作業要素実行装置をサードベンダに任せ、汎用性の高い本体装置を販売することが可能となる。なお、この構築方法による概念図を図13(a)に示しておく。
【0143】
iv)本体装置のメーカからの購入および作業要素実行装置の自社製造による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置を自ら製造することで準備する。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付,工程統括制御装置設定工程が実行されることで、製造システム10が構築される。この方法によって、製造システムを構築する場合には、ユーザは、製造物に関する情報を他のものに知られることなく、製造システムを構築することが可能となり、製造物に関する情報の秘匿性を確保することが可能となる。また、メーカ側からすれば、多品種少量生産となりがちな作業要素実行装置をユーザに任せ、汎用性の高い本体装置を販売することが可能となる。この構築方法による概念図を図13(b)に示しておく。なお、ユーザーは、認識情報が記憶されたICチップの購入をし,通信プロトコル等の開示をうける必要がある。
【0144】
<複数の製造作業機によって構成される製造システム>
上記製造システム10は1台の製造作業機によって構成されているため、比較的少ない製造工程しか行うことができないが、上記製造作業機12と同じ製造作業機,上記製造作業機12から作業要素実行装置を交換した製造作業機等を複数配列し、作業対象物を上流側に配置された製造作業機から下流側に配置された製造作業機に搬送しつつ、作業対象物に対して複数の製造作業機の各々による製造作業を順次実行するような製造システムを構築することで、比較的多くの製造工程を行うことが可能となる。つまり、ある程度複雑な製造物を製造することが可能となる。また、製造物に応じて、最適な作業工程を構築し、その最適化された作業工程を適切に実行できるように、製造作業機および、その製造作業機を構成する複数の作業要素実行装置を選択することが可能である。本明細書では、そのように構成された製造システムとして、組立システムを採用し、製造作業としての組立作業を製造作業機毎に実行することで、LED照明,パワーモジュール,太陽電池の組立を実行するシステムについて以下に説明する。
【0145】
i)LED照明組立システム
まず、図14に、LED照明252の分解図を示す。LED照明252は、有底円筒状の電極ソケット254と、その電極ソケット254の内部に設けられる電極256と、電極ソケット254の上端に嵌合される円筒状のケース258と、そのケース258内部に設けられる電極付の回路基板260と、ケース258の上端部に接着剤によって固着されるヒートシンク262と、そのヒートシンク262の上端面に配設される電極付のLED基板264と、そのLED基板264をヒートシンク262に固定するためのねじ266と、ヒートシンク262の上端部に接着剤で固定される半球状のカバー268とによって構成されている。
【0146】
LED照明252を製造するためのシステムを構築する場合には、そのシステムに必要となる製造作業機の数を決定する必要がある。つまり、本体装置準備工程の実行時、若しくは、実行前には、製造システムに必要となる製造作業機の数を決定する製造作業機数決定工程を行なう必要がある。この製造作業機数決定工程は、本体装置準備工程に含まれるものであってもよく、本体装置準備工程とは別のものであってもよい。製造作業機数決定工程においては、製造物としてのLED照明252を構成する複数の構成部品を組付順に並べ、各構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出する。そして、1以上の作業要素毎に、構成部品に対して1以上の作業要素を実行する場合の作業内容を決定する。このように、各作業要素毎に作業内容を決定すると、LED照明252の製造において必要となる作業内容が複数決定される。これら複数の作業内容が順次実行されることで、LED照明252が製造されるのである。そこで、一連の複数の作業内容のうちで連続する1以上の作業内容であって、一台の製造作業機によって実行可能な1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏め、1連の複数の作業内容を1以上の製造作業に集約する。その集約された複数の製造作業の数が、システムに必要となる製造作業機の数であり、この数の製造作業機によって、製造システムを構築することが可能となる。
【0147】
つまり、製造作業機数決定工程においては、複数の構成部品の組付順を決定する構成部品組付順決定工程と、構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出する構成部品対応作業要素抽出工程と、構成部品に対して1以上の作業要素を実行する場合の作業内容を決定する作業内容決定工程と、1連の複数の作業内容を1以上の製造作業に集約することで製造作業を決定する製造作業決定工程とが、実行されることでシステムに必要となる製造作業機の数が決定されるのである。なお、製造物を構成する複数の構成部品の組付順には、1種類しかない場合もあれば、複数種類存在する場合もある。組付順が複数種類存在する場合には、複数種類の組付順の各々に応じて、複数の作業内容の順番が異なるため、製造作業の内容および製造作業の数も異なる場合がある。つまり、組付順を変更することで、作業内容の順序を入れ替えることが可能となり、製造作業の内容,製造作業の数等、ひいては、製造作業機の数を変更することが可能となっている。また、製造作業決定工程において複数の作業内容のうちで連続する1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏める際に、一台の製造作業機によって最大限実行可能な1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏めてもよく、装着作業に関する作業内容と装着作業に対する補助的な作業に関する作業内容とのいずれかを含むように、1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏めてもよい。なお、装着作業に対する補助的な作業とは、装着作業に先立って実行される作業,装着されたものに対して実行される作業等が該当する。
【0148】
具体的に言えば、LED照明252は、電極ソケット254,電極256,ケース258,回路基板260,ヒートシンク262,LED基板264,ねじ266,カバー268の8つの構成部品によって構成されるものであり、これら8つの構成部品は、組付順に並べられると、図15に示すように並べられる。1番最初に組み付けられる電極ソケット254に対して実行されるべき作業要素は、電極ソケット254の供給、および保持・離脱であり、次に組み付けられる電極256に対して実行されるべき作業要素は、電極256の供給、および保持・離脱である。他の構成部品に関して言えば、ケース258,回路基板260,LED基板264に対して実行されるべき作業要素は、各構成部品の供給、および保持・離脱であり、ねじ266に対して実行されるべき作業要素は、ねじ266の供給、および保持・ねじ締めである。さらに、ヒートシンク262,カバー268に対して実行されるべき作業要素は、各構成部品を装着する箇所への接着剤の塗布,各構成部品の供給、および保持・離脱,接着剤の乾燥である。そして、それら複数の作業要素のうちの1以上のものの各々に対応して、図15に示す作業内容が決定される。なお、各構成部品に対して搬送作業も必要であるが、全ての構成部品に対して必要な作業であるため図15への記載を省略する。
【0149】
次に、図15に示す一連の複数の作業内容のうちの連続する1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏め、一連の複数の作業内容を1以上の製造作業に集約する。この際、本組立システムにおいては、一台の製造作業機によって最大限実行可能な1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏める。具体的には、例えば、電極ソケット254に対する作業内容と電極256に対する作業内容とが連続しているが、各作業内容には装着作業が含まれている。1台の製造作業機に装着装置に関しては1台しか取り付けることができず、その1台の装着装置が1種類の部品だけを装着させるように構成されている場合には、電極ソケット254に対する作業内容と電極256に対する作業内容とを1台の製造作業機で実行することはできない。このため、電極ソケット254に対する作業内容を1つの製造作業として取り纏め、電極256に対する作業内容を1つの製造作業として取り纏める。ケース258,回路基板260に対する作業内容も、同様に、1つの製造作業として取り纏める。
【0150】
ヒートシンク262に対する作業内容には、装着作業およびその装着作業に対する補助的な作業が2種類含まれている。1台の製造作業機には、装着作業に対する補助的な作業を実行可能な組付け補助ヘッド装置に関しては1台しか取り付けることができないため、ヒートシンク262に対する作業内容の全てを1台の製造作業機で実行することはできない。このため、ヒートシンク262に対する作業内容のうちの接着剤の乾燥作業を除く3つの作業内容を1つの製造作業として取り纏め、ヒートシンク262に対する作業内容のうちの接着剤の乾燥作業を次の製造作業において行なわせる。つまり、ヒートシンク262に対する作業内容のうちの接着剤の乾燥作業と、LED基板264に対する作業内容とを1つの製造作業として取り纏める。次のねじ266に対する作業内容には、装着作業が含まれているが、その装着作業に対する補助的な作業は含まれていない。このため、ねじ266に対する作業内容だけを1つの製造作業として取り纏めることは可能である。しかし、次のカバー268に対する作業内容には、装着作業およびその装着作業に対する補助的な作業が2種類含まれており、カバー268に対する作業内容の全てを1つの製造作業として取り纏めることはできない。そこで、カバー268に対する作業内容のうちの1種類の補助的な作業とねじ266に対する作業内容とを、1つの製造作業として取り纏め、カバー268に対する作業内容のうちの1種類の補助的な作業を除く3つの作業内容を1つの製造作業として取り纏める。
【0151】
つまり、LED照明の組立システムにおいては、1台の製造作業機に、基本的に1種類の部品の装着作業を行なわせ、装着作業に対する補助的な作業が必要な場合は、1種類の部品の装着作業と1種類の補助的な作業とを行なわせるように、一連の複数の作業内容を複数の製造作業に集約している。このようにして集約された製造作業は、(i)電極ソケット254のコンベア上への載置,(ii)電極256の電極ソケット254内への装着,(iii)ケース258の電極ソケット254への嵌合,(iv)回路基板260のケース258内への装着,(v)ヒートシンク262のケース258上端部への接着剤による固着,(vi)接着剤の乾燥およびLED基板264のヒートシンク262上端面への装着,(vii)LED基板264のねじ締結およびヒートシンク262上端部への接着剤の塗布,(viii)カバー268のヒートシンク262上端部への装着および接着剤の乾燥の8つの製造作業となる。したがって、LED照明の組立システムに必要な製造作業機の台数は8台と決定される。
【0152】
8台の製造作業機によって構成されるLED照明組立システムを構築するためには、8台の本体装置が必要であり、さらに、8台の本体装置の各々に取付けるべき作業要素実行装置が必要である。つまり、各本体装置に取付けるべき作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程の実行時、若しくは、実行前には、各本体装置に必要な作業要素実行装置を決定する作業要素実行装置決定工程を行なう必要がある。この作業要素実行装置決定工程は、作業要素実行装置準備工程に含まれるものであってもよく、作業要素実行装置準備工程とは別のものであってもよい。作業要素実行装置決定工程においては、作業要素実行装置の種類を決定する作業要素実行装置類型決定工程と、その決定された種類の作業要素実行装置のうちから、作業に適した1台の作業要素実行装置を個別に決定する個別作業要素実行装置決定工程とが実行される。作業要素実行装置類型決定工程では、実行させるべき作業内容、若しくは、その作業内容を構成する作業要素に基づいて、作業要素実行装置の種類が決定される。具体的には、例えば、装着作業を実行させる必要がある場合には、装着装置を採用し、供給作業を実行させる必要がある場合には、供給装置を採用する。採用すべき作業要素実行装置の種類が決定されても、1種類の作業要素実行装置には、複数の作業要素実行装置が存在する。つまり、例えば、供給装置といっても、供給方式の異なるもの,供給能力のことなるもの、製造会社の異なるもの等、複数の装置が存在する。このため、個別作業要素実行装置決定工程において、それら複数の装置の中から、本体装置に取り付けるべき作業要素実行装置を決定する。ちなみに、このようにして決定された個別の作業要素実行装置を、作業要素実行装置準備工程において準備するが、その決定された個別の作業要素実行装置が流通していない場合もある。このような場合には、ユーザが、自ら、その決定された個別の作業要素事項装置を製造することで準備してもよい。
【0153】
作業要素実行装置の決定方法については、先に詳しく述べていることから、製造作業として電極ソケット254のコンベア上への載置作業を実行する製造作業機に必要な作業要素実行装置の決定方法について、簡単に説明する。電極ソケット254のコンベア上への載置作業を実行する製造作業機では、電極ソケットの供給作業,電極ソケットの載置作業,電極ソケットの搬送作業が実行される。このため、作業要素実行装置類型決定工程において、1台目の本体装置に取り付けるべき作業要素実行装置に、供給装置,装着装置,搬送装置を採用する。そして、個別作業要素実行装置決定工程においては、先に述べたように、構成部品の諸元に基づいて作業要素実行装置を決定する。具体的には、装着装置、つまり、作業ヘッド装置として、保持・離脱すべき電球ソケットの諸元に基づいて、特定の吸着型装着装置を決定し、搬送装置として、搬送すべき電球ソケットの諸元に基づいて、特定のダブルコンベアを決定する。さらに、供給装置として、供給すべき電球ソケットの諸元に基づいて、特定のトレイユニット型供給装置を決定する。
【0154】
また、例えば、作業内容として装着作業に対する補助的な作業が必要な場合には、まず、その補助的な作業を実行可能な種類の作業要素実行装置を決定する。つまり、補助的な作業の内容に基づいて、補助的な作業を実行する作業要素実行装置の種類を決定する。例えば、接着剤の乾燥作業が必要な場合には、温風等を送風する装置に、ねじ締め作業が必要な場合には、ねじ締め装置に決定する。そして、決定された種類の作業要素実行装置のうちから、装置の性能を考慮して個別の作業要素実行装置を決定する。例えば、乾燥作業を実行可能な温風等を送風する装置に関しては、送風するエアーの温度,送風量等を考慮して、個別の送風装置を決定し、ねじ締め作業を実行可能な装置に関しては、ねじ締め時のトルク等を考慮して、個別のねじ締め装置を決定する。なお、作業要素実行装置を決定する際に、各作業要素実行装置の可能動作情報に基づいて本体装置に取付けるべき作業要素実行装置を決定することで、最適な作業要素実行装置を選択することが可能となる。作業要素実行装置を決定時に利用される可能動作情報は、統括制御装置に記憶されているものを利用してもよく、他の媒体に記憶,記載等されているものを利用してもよい。
【0155】
上述したように決定された8台の本体装置およびそれら8台の本体装置の各々に取付けるべき複数の作業要素実行装置を、上述した種々の手法によって準備するとともに、作業要素実行装置組付工程を行なうことで、図16に示すLED照明組立システム269が構築される。LED照明組立システム269を構成する8台の製造作業機は、最上流側(1番左側)に配置された製造作業機から順に、第1製造作業機270,第2製造作業機272,第3製造作業機274,第4製造作業機276,第5製造作業機278,第6製造作業機280,第7製造作業機282,第8製造作業機284である。第1製造作業機270,第2製造作業機272,第3製造作業機274,第4製造作業機276は、上記製造作業機12の搬送装置26をモジュールタイプのダブルコンベア242に変更するとともに、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第5製造作業機278は、上記製造作業機12の搬送装置26をモジュールタイプのダブルコンベア242に変更したものである。第6製造作業機280および第8製造作業機284は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、ディスペンサ装置32をホットエアー送風装置226に変更したものである。第7製造作業機282は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、装着装置28をねじ装着・ねじ締め装置230に、供給装置30をねじ供給装置286に変更したものである。
【0156】
なお、本LED照明252の製造工程での接着剤の塗布位置は、ケース258,若しくはヒートシンク262の上端面であるため、接着剤の塗布作業を実行する装置として、ディスペンサノズル76の角度を変更させる機能を有していないディスペンサ装置32を採用している。ただし、今後、設計変更等によってケース258等の側面への接着材の塗布作業が必要となる場合を想定して、接着剤の塗布作業を実行する装置として、ディスペンサノズルの角度を変更させる機能を有するディスペンサ装置を採用することも可能である。若しくは、ケース258等の側面への接着材の塗布作業を想定して、ケース258等のコンベア上での角度を変更可能な搬送装置を採用することも可能である。つまり、作業要素実行装置を準備する工程において、補助的な作業を実行するための装置である組付補助ヘッド装置が作業する位置,方向,角度等を考慮して、組付補助ヘッド装置と搬送装置との少なくとも一方を準備してもよい。
【0157】
次に、各製造作業機270等の統括制御装置には、各製造作業機270等において実行される製造作業に応じたソースデータが入力される。ソースデータの入力に関しては、先に詳しく述べていることから、8台の製造作業機のうちの第1製造作業機270に関するソースデータについてのみ説明する。第1製造作業機270に入力されるソースデータは、図17に示す基本コードと、図18に示す単位作業コードと、図19に示す動作コードによって構成されるものであり、それら複数のコードが第1製造作業機270の統括制御装置に入力される。それら複数のコードは、第1製造作業機270に行なわせる製造作業,その製造作業を構成する複数の作業内容,それら複数の作業内容の各々を構成する1以上の作業要素等によって作成される。第1製造作業機270の製造作業は、電極ソケット254のコンベア上への載置であり、図17〜19に示されるソースデータによれば20個の電極ソケットが載置されるようになっている。つまり、本LED照明組立システム269では、1サイクルで20個のLED照明を製造することが可能となっている。
【0158】
第1製造作業機270の製造作業は、先に述べたように、電極ソケット254の供給、電極ソケット254の載置、電球ソケット254の搬送の3つの作業内容を含んでいる。上記3種類の作業内容のうち供給作業は、製造作業の最初に1回実行され、搬送作業は、製造作業の最後に1回実行されればよいが、載置作業は20個の電極ソケット254の各々に対して繰り返し実行される。また、供給作業を構成する作業要素は、供給装置による供給であり、搬送作業を構成する作業要素は、搬送装置による搬送である。載置作業では、電球ソケット254を装着装置によって保持・離脱させるとともに、保持・離脱位置を変更させ、さらに、保持情報を取得する必要がある。このため、載置作業を構成する作業要素は、装着装置による保持・離脱,移動装置による保持・離脱位置の移動,カメラ装置による保持情報の取得である。つまり、載置作業には、3種類の作業要素が含まれている。このように、3種類の作業要素が含まれとともに、20回繰り返して実行される載置作業は、ソースデータをシンプルなものとするべく、複数の動作コードによって構成される単位作業コードとすることが望ましい。そこで、第1製造作業機270では、単位作業コードを、図18に示すように、載置作業に相当する電極ソケット載置コード,供給作業に相当する電極ソケット供給コード,搬送作業に相当する電極ソケット搬出コードの3つの単位作業コードとしている。つまり、複数の作業内容の各々が単位作業コードに対応している。
【0159】
各単位作業コードは、1以上の動作コードを含むものであり、各動作コードは単位作業コードを構成する作業内容に対応する作業要素および、その作業要素を実行するための作業要素実行装置によって構成される。具体的には、図19に示すように、電極ソケット供給コードは、電極ソケット254の載置された部品トレイを供給装置30によって供給するための動作コードによって構成され、電極ソケット搬出コードは、コンベア上に載置された電極ソケット254を搬送装置242によって第2製造作業機272に搬送するための動作コードによって構成される。そして、電極ソケット載置コードは、装着装置28を移動装置40によって電極ソケット254の供給位置に移動させるための動作コードと、電極ソケット254を装着装置28によって保持するための動作コードと、電極ソケット254を保持した装着装置28を移動装置40によってベースカメラ34上に移動させるための動作コードと、装着装置28に保持された電極ソケット254をベースカメラ34によって撮影して保持状態の情報を取得するための動作コードと、その保持状態の情報に基づいて電極ソケット254の載置位置に装着装置28を移動装置40によって移動させるための動作コードと、電極ソケット254を離脱するための動作コードとによって構成される。なお、製造作業の製造工程を複数に分割し、その分割したものをコード化したものが、基本コードである。つまり、製造作業が複数の基本コードに対応しているのである。第1製造作業機270では、1つの基本コードが、図18に示すように、1つの作業内容に対応しており、基本コードは、図17に示すように作成されるが、1つの基本コードが複数の作業内容によって構成されるように基本コードを作成してもよい。
【0160】
上述したようにして作成された複数の動作コードの各々に対して、図19に示すように、作業要素がコード化された作業要素コードと、その作業要素を実行可能な作業要素実行装置を特定する装置特定コードとを入力するとともに、さらに、動作コードによって構成される単位作業コードを、図18に示すように入力し、各単位作業コードに対応する基本コードを、図17に示すように入力することで、第1製造作業機270は、電極ソケット254をダブルコンベア242上の特定の位置に載置する製造作業を実行することが可能となる。つまり、図17〜19に示されるソースデータに基づいて複数の動作指令が作成され、それら複数の動作指令によって第1製造作業機270に取り付けられた複数の作業要素実行装置が作動するのである。
【0161】
詳しく言えば、第1製造作業機270においては、電極ソケット254の載置されたトレイを供給するための動作指令,装着装置28を電極ソケット254の供給位置に移動させるための動作指令,トレイに載置された電極ソケット254を保持するための動作指令,電極ソケット254を保持した装着装置28をベースカメラ34上に移動させるための動作指令,装着装置28に保持された電極ソケット254をベースカメラ34によって撮影してその電極ソケット254の保持状態の情報を取得するための動作指令,ダブルコンベア242上の特定の位置に装着装置28を移動させるための動作指令,ダブルコンベア242上の特定の位置で電極ソケット254を離脱するための動作指令,ダブルコンベア242上に載置された電極ソケット254を搬送するための動作指令が、順次、送信される。各動作指令に応じて各作業要素実行装置242等が各作業要素を実行することで、ダブルコンベア242上に電極ソケット254が載置され、そして、載置された電極ソケット254が第2製造作業機272に搬送されるのである。ちなみに、1サイクルにおいて20台のLED照明を製造するために、20回繰り返される動作指令があるが、説明を簡略化するべく、第1製造作業機270および、以降の製造作業機での動作指令の説明において、1台のLED照明の製造に対する動作指令を説明する。また、以下の製造作業機の各動作指令に関して、カメラ装置38,移動装置40,ダブルコンベア242への動作指令は、各製造作業機270等において略同じであることから、それらの動作指令に関する説明を省略する。
【0162】
第2製造作業機272は、基材としての電極ソケット254に電極256を装着する製造作業を行うものである。第2製造作業機272においては、電極256の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置された電極256を保持するための動作指令,電極256を電極ソケット254の内部で離脱するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、電極256が装着された電極ソケット254が第3製造作業機274に搬送される。また、第3製造作業機274は、電極256が装着された電極ソケット254内にケース258を装着する製造作業を行うものであり、第4製造作業機276は、そのケース258内に回路基板260を装着する製造作業を行うものである。第3製造作業機274および第4製造作業機276の動作指令は、上記第2製造作業機272の動作指令と似通っているため、それらの説明は省略する。
【0163】
第5製造作業機278は、ケース258の上端部に接着剤によってヒートシンク262を固着する製造作業を行うものである。第5製造作業機278においては、接着剤をケース258の上端部に塗布するための動作指令,ヒートシンク262の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置されたヒートシンク262を保持するための動作指令,ヒートシンク262を接着剤の塗布されたケース258の上端部で離脱するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、ヒートシンク262の接着剤による固着作業が完了したLED照明252が第6製造作業機280に搬送される。
【0164】
第6製造作業機280は、第5製造作業機278において塗布された接着材を乾燥させるとともに、ヒートシンク262の上端面にLED基板264を載置する製造作業を行うものである。第6製造作業機280においては、ケース258とヒートシンク262とを接着する接着剤を乾燥させるための動作指令,LED基板264の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置されたLED基板264を保持するための動作指令,LED基板264をヒートシンク262の上端面で離脱するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、乾燥作業およびLED基板264の載置作業が完了したLED照明252が第7製造作業機282に搬送される。なお、接着剤を乾燥させるための動作指令での主指令は、ホットエアー送風装置226によるホットエアーの送風の開始を指令するものであり、付随指令は、送風時間を指令するものである。この付随指令には、送風温度,送風方向,送風力等、種々の動作パラメータを採用することができる。
【0165】
第7製造作業機282は、LED基板264をねじ266によってヒートシンク262に固定するとともに、第8製造作業機284で装着されるカバー268を固着するための接着剤をヒートシンク262に塗布する製造作業を行うものである。第7製造作業機282においては、ねじ266を供給するための動作指令,ねじ供給装置286によって供給されたねじ266を保持するための動作指令,ねじ締めを実行するための動作指令,ねじ266を離脱するための動作指令,接着剤をヒートシンク262の上端に塗布するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、ねじ締め作業および接着剤塗布作業が完了したLED照明252が第8製造作業機284に搬送される。なお、ねじ締めを実行するための動作指令での主指令は、ねじ締めの開始を指令するものであり、付随指令は、ねじ締めの実行時間を指令するものである。この付随指令には、ねじ締め時の回転速度,回転トルク等、種々の動作パラメータを採用することができる。
【0166】
第8製造作業機284は、第7製造作業機278において接着材が塗布された位置にカバー268を装着するとともに、その接着剤を乾燥させる製造作業を行うものである。第8製造作業機284においては、カバー268の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置されたカバー268を保持するための動作指令,カバー268をヒートシンク262上の接着剤が塗布された位置で離脱するための動作指令,その接着剤を乾燥させるための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、完成したLED照明252が第8製造作業機284から送り出されてくる。
【0167】
ii)パワーモジュール組立システム
図20に、パワーモジュール302の分解図を示す。パワーモジュール302は、ベース板314と、そのベース板314上にはんだ付けされる絶縁基板316と、ベース板314の4隅に形成された穴に嵌合される4つのブッシュ318と、それら4つのブッシュ318によってベース板314上に固定されるケース320と、ケース320内に装着される複数のピン端子322と、ケース320内に装着される電極324と、ケース320上部を覆う蓋部材326と、ケース320側面に貼着されるシール328とによって構成されている。なお、図示されていないが、ケース内にはシリコンゲルおよびエポキシ樹脂の2種類の補助材が充填される。また、本システムでは、予め、ベース板314に絶縁基板316がはんだ付けされており、その絶縁基板316付ベース板314に対して製造作業が実行されるようになっている。
【0168】
パワーモジュール302の構成部品を、先に示したLED照明252と同様に、組付順に並べ、各構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出するとともに、各作業要素毎に作業内容を決定すると、図21に示すようになる。この1連の複数の作業内容を、1台の製造作業機に、1種類の部品の装着作業、若しくは、補助的な作業を行なわせるように、複数の製造作業に集約すると、図21に示すように、(i)絶縁基板付ベース板314へのブッシュ318の装着,(ii)絶縁基板付ベース板314へのケース320の装着,(iii)ピン端子322のケース320内への装着,(iv)電極324のケース320内への装着,(v)2種類の補助材のケース320内への放出,(vi)蓋部材326のケース320への装着,(vii)シール328のケース320への貼装の7つの製造作業に集約される。したがって、パワーモジュールの組立システムを構築するためには7台の製造作業機が必要である。
【0169】
7台の製造作業機によって構成されるパワーモジュール組立システムを構築するべく、7台の本体装置を準備するとともに、それら7台の本体装置の各々に取付けるべき作業要素実行装置を準備する。各本体装置に必要な作業要素実行装置の決定方法については、先に詳しく述べていることから省略し、図21に各本体装置に必要な作業要素実行装置を示しておく。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程および統括制御装置設定工程を行なうことで、図22に示すパワーモジュール組立システム329が構築される。なお、パワーモジュール302の製造工程では、ケース320内に装着された電極324に対してワイヤーボンディング加工を実施する必要があるため、パワーモジュール組立システム329は、7台の製造作業機330〜342およびワイヤーボンディング機344によって構成される。
【0170】
7台の製造作業機330〜342は、最上流側(1番左側)に配置された製造作業機から順に、第1製造作業機330,第2製造作業機332,第3製造作業機334,第4製造作業機336,第5製造作業機338,第6製造作業機340,第7製造作業機342である。ちなみに、ワイヤーボンディング機344は、第4製造作業機336と第5製造作業機338との間の配設されているが、本発明とは関係無いため2点鎖線によって示している。第1製造作業機330は、上記製造作業機12の搬送装置26をモジュールタイプのダブルコンベア242に変更するとともに、供給装置30をブッシュ318を供給するブッシュ供給装置350に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第2製造作業機332,第3製造作業機334,第4製造作業機336は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第5製造作業機338は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、ディスペンサ装置32をダブルディスペンサ装置232に変更し、装着装置28と供給装置30とを取り外したものである。第6製造作業機340は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、供給装置30を蓋部材326を供給する蓋部材供給装置352に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第7製造作業機342は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、供給装置30をテープフィーダ240に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。
【0171】
パワーモジュール組立システム329では、まず、絶縁基板316付ベース板314が、第1製造作業機330に送り込まれ、第1製造作業機330が、その絶縁基板316付ベース板314の4隅に4つのブッシュ318を装着する製造作業を行う。そして、第2製造作業機332が、ケース320の4隅に形成された穴に4つのブッシュ318が嵌るように、ベース板314にケース320を装着する製造作業を行い、第3製造作業機334が、ケース320内部に複数のピン端子322を装着する製造作業を行う。続いて、第4製造作業機336が、ケース320内部に電極324を装着する製造作業を行う。第4製造作業機336による製造作業が完了すると、ワイヤーボンディング機344によってワイヤーボンディング加工が実施される。
【0172】
そして、ワイヤーボンディング加工が施されたパワーモジュール302が第5製造作業機338に送り込まれる。第5製造作業機338は、ケース320内部にシリコンゲルおよびエポキシ樹脂の2種類の補助剤を放出する製造作業を行い、第6製造作業機340が、ケース320の上部に蓋部剤326を装着する製造作業を行う。続いて、第7製造作業機342が、ケース320の側面にシール328を貼装する製造作業を行い、その第7製造作業機342による製造作業が完了すると、完成したパワーモジュール302が第7製造作業機342から送り出されてくる。なお、本システム329の製造作業機330等における動作指令は、上記LED照明組立システム269の製造作業機270等における動作指令と似通っているため、本システム329における動作指令に関する説明は省略する。
【0173】
なお、例えば、先に説明したLED照明組立システム269によってLED照明252を製造していた工場において、何らかの理由で、LED照明252の代わりにパワーモジュール302を製造する必要が生じた場合には、LED照明組立システム269を破棄することなく、そのLED照明組立システム269を構成する製造作業機270等の殆どを流用して、パワーモジュール組立システム329を構築することが可能である。具体的に言えば、LED照明組立システム269の第2〜4製造作業機272〜276は、パワーモジュール組立システム329の第2〜4製造作業機332〜336と同じであるため、そのまま流用可能である。LED照明組立システム269の第1製造作業機270は、供給装置30を除いて、パワーモジュール組立システム329の第1製造作業機330と同じであり、新たにブッシュ供給装置350を準備することで流用可能である。LED照明組立システム269の第5製造作業機278は、ディスペンサ装置32と供給装置30とを除いて、パワーモジュール組立システム329の第6製造作業機340と同じであり、新たに蓋部材供給装置352を準備することで流用可能である。なお、ディスペンサ装置32は取り外せばよい。LED照明組立システム269の第6製造作業機280は、供給装置30とホットエア送風装置226とを除いて、パワーモジュール組立システム329の第7製造作業機342と同じであり、新たにテープフィーダ240を準備することで流用可能である。なお、ホットエア送風装置226は取り外せばよい。ちなみに、パワーモジュール組立システム329の第5製造作業機338は、LED照明組立システム269の第7製造作業機282の本体装置を流用し、新たにダブルディスペンサ装置232を準備すればよい。つまり、新たにブッシュ供給装置350,蓋部材供給装置352,ダブルディスペンサ装置232,テープフィーダ240を準備するだけで、LED照明組立システム269をパワーモジュール組立システム329に転用することが可能となる。
【0174】
また、先に述べたように、本明細書での製造システムにおいては、ソースデータを容易に書換可能とされており、さらに、書き換えたソースデータは統括制御装置に入力可能とされているため、製造作業の変更にも容易に対応することが可能となっている。さらに言えば、新たに準備する作業要素実行装置350等は、インタフェイスの共通化によって、簡単に製造作業機の本体装置に取付けることが可能となっている。このように、本明細書での製造システムによれば、コスト,環境,容易さ等に関して、製造作業の変更に好適に対応することが可能となっている。
【0175】
iii)太陽電池組立システム
図23に、太陽電池372の分解図を示す。太陽電池372は、シリコンセル374と、そのシリコンセル374の下面にはんだ付けされる下面側インタコネクタ376と、シリコンセル374の上面にはんだ付けされる上面側インタコネクタ378とによって構成される。この太陽電池372の構成部品を、先に示したLED照明252と同様に、組付順に並べ、各構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出するとともに、各作業要素毎に作業内容を決定すると、図24に示すようになる。この1連の複数の作業内容を、1台の製造作業機に、1種類の部品の装着作業および補助的な作業を行なわせるように、複数の製造作業に集約すると、図24に示すように、(i)下面側インタコネクタ376のコンベア上への載置および下面側インタコネクタ376上へのクリームはんだの塗布,(ii)下面側インタコネクタ376上へのシリコンセル374の装着およびシリコンセル374上へのクリームはんだの塗布,(iii)シリコンセル374上へのクリームはんだの塗布およびシリコンセル374上への上面側インタコネクタ378の装着の3つの製造作業に集約される。つまり、3台の製造作業機によって太陽電池組立システムが構成されるのである。なお、本システムでは、スループットを向上させるべく、シリコンセル374上へのクリームはんだの塗布作業を、2台目の製造作業機および3台目の製造作業機に行なわせている。
【0176】
太陽電池組立システム379は、図25に示すように、3台の製造作業機によって構成される。それら3台の製造作業機は、最上流側(1番左側)に配置された製造作業機から順に、第1製造作業機380,第2製造作業機382,第3製造作業機384である。第1製造作業機380および第3製造作業機384は、上記製造作業機12のディスペンサ装置32をクリームはんだ印刷装置236に変更するとともに、供給装置30をインタコネクタを供給するインタコネクタ供給装置386に変更したものである。第2製造作業機382は、上記製造作業機12のディスペンサ装置32をクリームはんだ印刷装置236に変更するとともに、供給装置30をシリコンセル374を供給するシリコンセル供給装置388に変更したものである。
【0177】
第1製造作業機380は、下面側インタコネクタ376を装着装置26のコンベアベルト50上の特定の位置に載置するとともに、下面側インタコネクタ376の上面のクリームはんだを塗布すべき箇所の全てにクリームはんだを印刷する製造作業を行う。次に、第2製造作業機382が、クリームはんだが印刷された下面側インタコネクタ376の上にシリコンセル374を装着するとともに、シリコンセル374の上面のクリームはんだを印刷すべき箇所の一部にクリームはんだを印刷する製造作業を行う。続いて、第3製造作業機384が、シリコンセル374の上面のクリームはんだを印刷すべき箇所の残りの部分にクリームはんだを印刷するとともに、シリコンセル374上のクリームはんだが印刷された箇所に上面側インタコネクタ378を装着する製造作業を行う。そして、その第3製造作業機384による製造作業が完了すると、製造された太陽電池372が第3製造作業機384から送り出されてくる。なお、本システム379の製造作業機380等における動作指令も、上記LED照明組立システム269の製造作業機270等における動作指令と似通っているため、本システム379における動作指令に関する説明は省略する。
【0178】
また、本太陽電池組立システム379は、3台の製造作業機380等によって構成されているが、1台の製造作業機によって太陽電池372を組み立てることも可能である。この場合には、例えば、第1製造作業機380にシリコンセル供給装置388を装着すればよい。1台の製造作業機では、生産能力は低いが、例えば、開発段階等においては、大量に生産する必要ないため、1台の製造作業機で充分対応可能である。また、太陽電池の販売が軌道に乗り、大量の太陽電池の組立が望まれる場合には、例えば、3台より多くの台数の製造作業機によって太陽電池組立システムを構成することで、太陽電池の生産能力を向上させることが可能となる。このように、組立システムの生産能力をも考慮して、組立システムに必要な製造作業機の数を決定することも可能である。
【符号の説明】
【0179】
10:製造システム 12:製造作業機(組立作業機) 24:作業機本体(メインフレーム)(本体装置) 26:搬送装置(作業要素実行装置) 28:装着装置(作業ヘッド装置)(保持・離脱ヘッド装置)(作業要素実行装置) 30:供給装置(部品供給装置)(作業要素実行装置) 32:ディスペンサ装置(作業ヘッド装置)(組付補助ヘッド装置)(作業要素実行装置) 38:カメラ装置(作業要素実行装置) 40:移動装置(ヘッド移動装置)(メインフレーム)(本体装置) 52:搬送モータ(作動デバイス) 54:トレイ移動装置(作動デバイス) 72:正負圧供給装置(作動デバイス) 78:吐出装置(作動デバイス) 100:装着装置制御装置(個別制御装置) 104:ディスペンサ装置制御装置(個別制御装置) 108:供給装置制御装置(個別制御装置) 112:搬送装置制御装置(個別制御装置) 116:カメラ装置コントローラ(個別制御装置) 130:メイン統括制御装置(統括制御装置)(本体装置) 136:補助統括コントローラ(統括制御装置)(本体装置) 166:回路基板(第1部品) 169:電子回路部品(第2部品) 174:作業要素実行装置認識部 176:統括インタフェイス部 178:指令送信処理部 184:ソースデータ入力受付部 186:ソースデータ記憶部 188:動作指令作成部 210:個別インタフェイス部 212:認識情報格納部(認識情報) 218:指令変換部 220:高周波ウェルダー(作業要素実行装置) 222:レーザー発信装置(作業要素実行装置) 224:UV照射装置(作業要素実行装置) 226:ホットエアー送風装置(作業要素実行装置) 228:ねじ締め装置(作業要素実行装置) 230:ねじ装着・ねじ締め装置(作業要素実行装置) 232:ダブルディスペンサ装置(作業要素実行装置) 234:装着装置(作業要素実行装置) 236:クリームはんだ印刷装置(作業要素実行装置) 240:テープフィーダ(作業要素実行装置) 242:ダブルコンベア(作業要素実行装置) 243:キャリア(作業要素実行装置) 252:LED照明(製造物) 269:LED照明組立システム(製造システム) 270:第1製造作業機 272:第2製造作業機 274:第3製造作業機 276:第4製造作業機 278:第5製造作業機 280:第6製造作業機 282:第7製造作業機 284:第8製造作業機 286:ねじ供給装置(作業要素実行装置) 302:パワーモジュール(製造物) 329:パワーモジュール組立システム(製造システム) 330:第1製造作業機 332:第2製造作業機 334:第3製造作業機 336:第4製造作業機 338:第5製造作業機 340:第6製造作業機 342:第7製造作業機 350:ブッシュ供給装置(作業要素実行装置) 352:蓋部材供給装置(作業要素実行装置) 372:太陽電池(製造物) 379:太陽電池組立システム(製造作業システム) 380:第1製造作業機 382:第2製造作業機 384:第3製造作業機
【技術分野】
【0001】
本発明は、1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行って1の製造物を製造する製造システムを構築する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造作業の一種である電気回路の組立作業を行う組立システムとして、例えば、下記特許文献に記載されたような組立システムが存在する。このような組立システムを構成する組立作業機は、1つの部品である回路基板に他の部品である回路部品を装着する作業を行うものであり、回路基板を搬送する装置,回路部品を供給する装置,回路部品を回路基板へ装着する装置といった複数の作業要素実行装置と、それら複数の作業要素実行装置が組み込まれるメインフレームと、複数の作業要素実行装置を統括して制御する統括制御装置とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−104075公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記組立システムは、回路基板に回路部品を装着するといった作業しか行うことができず、汎用性に欠けるものとなっている。回路基板への回路部品の装着作業だけでなく、種々の作業を製造システムによって行なうことができれば、様々な製造物を製造することが可能となり、製造システムの汎用性を高めることが可能となる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、汎用性の高い製造システムを構築可能な構築方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の製造システム構築方法は、(a)1以上の製造作業機の各々について、メインフレームと統括制御装置とを備えた本体装置を準備する本体装置準備工程と、(b)1以上の製造作業機の各々について、複数の作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程と、(c)1以上の製造作業機の各々について準備した本体装置のメインフレームに、その1以上の製造作業機の各々について準備した複数の作業要素実行装置を組み付ける作業要素実行装置組付工程と、(d)1以上の製造作業機の各々について準備した本体装置が備える統括制御装置に対して、その1以上の製造作業機の各々について準備した複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう統括制御装置設定工程とを含むように構成される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造システム構築方法においては、例えば、製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて製造作業機の数を決めることが可能である。また、製造作業機によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて複数の作業要素実行装置を決めることも可能である。つまり、種々の作業を実行可能な製造作業機を1台以上備えた製造システムを構築することが可能となり、製造システムによって様々な製造物を製造することが可能となる。したがって、本発明の製造システム構築方法によれば、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【発明の態様】
【0007】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
【0008】
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、請求項1に(2)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項2に、請求項1または請求項2に(3)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項3に、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに(4)項,(5)項および(6)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項4に、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに(4)項,(9)項および(10)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項5に、請求項1ないし請求項5のいずれか1つに(31)項,(34)項および(35)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項6に、請求項6に(37)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項7に、請求項7に(38)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項8に、請求項7または請求項8に(39)項に記載の技術的特徴を付加したものが請求項9に、それぞれ相当する。
【0009】
(1)1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行って1の製造物を製造する製造システムを構築する方法であって、
前記1以上の製造作業機の各々について、(a)それぞれが製造作業を構成する複数の作業要素のうちの1つを実行する複数の作業要素実行装置を組み込むためのメインフレームと、(b)それら複数の作業要素実行装置を統括して制御するための統括制御装置とを備えた本体装置を準備する本体装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について、前記複数の作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置の前記メインフレームに、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を組み付ける作業要素実行装置組付工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置に対して、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう統括制御装置設定工程と
を含む製造システム構築方法。
【0010】
本項に記載された製造システム構築方法においては、例えば、製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて製造作業機の数を決め、その数、本体装置を準備することが可能である。また、例えば、製造作業機によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて複数の作業要素実行装置を決定し、その決定された複数の作業要素実行装置を準備することが可能である。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、種々の作業を実行可能な製造作業機を1台以上備えた製造システムを構築することが可能となり、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0011】
本項に記載の4つの工程には、優先順位はなく、実行可能な工程から実行すればよい。つまり、本体装置と複数の作業要素実行装置とのいずれを先に準備してもよく、例えば、1つの作業要素実行装置を準備した後に本体装置を準備し、その後に、別の作業要素実行装置を準備してもよい。また、本体装置のメインフレームに複数の作業要素実行装置を組み付けた後に、統括制御装置に対して設定してもよく、統括制御装置設定後に、組付工程を行なってもよい。さらに言えば、本体装置を準備し、作業要素実行装置を準備する前に、統括制御装置に対して設定してもよい。
【0012】
本項に記載の「本体装置準備工程」,「作業要素実行装置準備工程」においては、本体装置,作業要素実行装置をどのような手段によって準備してもよく、例えば、購入することで準備してもよく、製造することで準備してもよい。また、本体装置準備工程のおける準備手段と作業要素実行装置準備工程における準備手段とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。つまり、本体装置準備工程では、本体装置を購入することで準備し、作業要素実行装置準備工程では、作業要素実行装置を製造することで準備してもよい。また、本体装置および作業要素実行装置を購入することで準備する場合には、同じ業者から購入してもよく、異なる業者から購入してもよい。本項に記載の「作業要素実行装置組付工程」では、メインフレームへの組み付けが容易であることが望ましく、具体的には、例えば、数本のボルト等による締結,ワンタッチでの着脱が可能であることが望ましい。
【0013】
本項に記載の「製造作業」、つまり、製造作業機の実施対象作業は、特に限定されるものではなく、例えば、複数の部品によって組み立てられる組立物を組み立てる組立作業を始め、作業対象物(「部品」,「組立物」,「ワーク」等を含む概念である)に対して何らかの加工,処理等を施すような種々の作業が、実施対象作業となる。より具体的に言えば、何らかの加工を施す作業としては、例えば、プレス作業等の作業対象物を変形させる作業、切断作業等の作業対象物の一部を取り除く作業、切削作業等の作業対象物を成形する作業等が実施対象作業となる。また、何らかの処理を施す作業としては、例えば、レーザ,プラズマ等による作業対象物の表面改質作業、接着剤,着色剤等を作業対象物に塗布する塗布作業、熱風,冷風等によって作業対象物を加熱・乾燥・冷却等する熱処理作業、研磨等の表面仕上作業等の作業、1の部品に組み付けられた他の部品をねじ込む等によって固定等する作業、固着,硬化等の目的で作業対象物に光線,紫外線,電磁波等を照射等する作業等が実施対象作業となる。なお、組立作業,何らかの加工・処理等を施す作業等の作業結果を検査する検査作業も、実施対象作業となり得る。
【0014】
本項に記載の「作業要素」は、例えば、作業対象物について行われる移動、回転、姿勢変更、処理、加工等のうちの1つのものを意味する。1の製造作業は、それらの作業要素の連携によって行われ、実施対象作業によって、作業要素の種類,数,連携の態様は異なる。「作業要素実行装置」は、1つの作業要素を実行する装置であり、例えば、作業要素に応じた単一の機能を有する装置と考えることができる。具体的には、例えば、実施対象作業が組立作業の場合には、後に説明するような、(a)1の部品を当該製造作業機外からの搬入,組立物の当該製造作業機外への搬出等の搬送を実行する搬送装置、(b)別の部品の供給を実行する部品供給装置、(c)部品供給装置によって供給された部品を上記1の部品に組み付けるための保持を実行する部品保持ヘッド(「作業ヘッド装置」の一種であり、「キャリーヘッド」とも呼ばれる)、(d)部品保持ヘッドによって保持された部品を移動させるために当該部品保持ヘッド装置を移動させるヘッド移動装置等の各々が、作業要素実行装置として、製造作業機に配備される。組立作業において、あるいは、組立作業の結果を検査する検査作業において、部品あるいは組立物の位置,姿勢,組立精度等を認識するために当該部品,組立物を撮像するカメラ等の撮像装置も、撮像処理という作業要素を実行する作業要素実行装置となり得、組立作業において、2つの部品の固着のためにそれら2つの部品の少なくとも一方に接着剤を塗布する接着剤塗布装置も、接着剤の塗布という作業要素を実行する作業要素実行装置となり得る。なお、レーザ処理,プラズマ処理を始め上記何らかの加工・処理等を施す種々の装置も、それらの処理が行われる製造作業において、作業要素実行装置となり得る。
【0015】
(2)前記本体装置準備工程が、
前記本体装置を、前記1の製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて決定された必要となる前記1以上の製造作業機の数、準備する工程である(1)項に記載の製造システム構築方法。
【0016】
本項に記載の製造システム構築方法においては、製造しようとする製造物に応じて、製造システムを構成する製造作業機の数を決めることが可能である。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、少ない製造工程によって製造される製造物の製造システムから比較的多くの製造工程が必要な製造物の製造システムまで構築することが可能となる。本項に記載の「作業」は、製造物の製造時に実行されるべき全ての作業であり、全ての製造作業機の複数の作業要素実行装置が行なうべき全ての作業である。
【0017】
(3)前記作業要素実行装置準備工程が、
前記1以上の製造作業機の各々によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて決定されたその1以上の製造作業機の各々について必要な前記複数の作業要素実行装置を、前記1以上の製造作業機の各々について、準備する工程である(1)項または(2)項に記載の製造システム構築方法。
【0018】
本項に記載の製造システム構築方法においては、製造作業機毎に作業要素実行装置を準備することが可能である。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、製造作業機毎に種々の製造作業を行なわせることが可能となり、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0019】
(4)前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものが、複数の部品によって組み立てられる組立物の組立作業をその少なくとも1つのものによる製造作業として行う組立作業機であり、かつ、前記複数の部品のうちの1つである第1部品に、前記複数の部品のうちの別の1つである第2部品を組み付ける作業を、前記組立作業の少なくとも一部として行うものである(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0020】
本項に記載の態様は、製造作業機が組立作業機に限定された態様である。
【0021】
(5)前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の搬送を、前記複数の作業要素のうちの1つとして実行する搬送装置を含む(4)項に記載の製造システム構築方法。
【0022】
(6)前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の諸元に基づいて決定された前記搬送装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(5)項に記載の製造システム構築方法。
【0023】
上記2つの項に記載の態様は、搬送装置に関する態様である。搬送装置は、ある部品等の製造作業機外からの搬入,組立物の製造作業機外への搬出等の搬送を実行する装置であり、搬送物を搬送するための機構には様々な種類がある。具体的には、所謂コンベア方式の搬送装置は、搬送物を同一平面上を移動させる搬送機構を備えている。また、搬送物を持ち上げて、持ち上げた状態で搬送する搬送機構を備えた搬送装置もあり、そのような機構を備えた搬送装置はリフトアンドキャリー方式,ピックアンドプレース方式等と呼ばれている。リフトアンドキャリー方式の搬送装置は、搬送物が載置されている台を下方から持ち上げる搬送機構を備えており、比較的重たい搬送物の搬送に適している。ピックアンドプレース方式の搬送装置は、搬送物の上方から搬送物を吸着し、吸着した状態で搬送物を持ち上げる搬送機構を備えており、比較的脆い素材の搬送物の搬送に適している。つまり、搬送物の諸元に基づいて搬送装置を選択することで、搬送物を適切に搬送することが可能となる。したがって、後者の項に記載の製造システム構築方法によれば、搬送物の搬送を適切に実行可能な搬送装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。なお、搬送物の諸元とは、その搬送物の要素,因子等であり、寸法,重量,素材,搬送物自体の形状,搬送される際の形状等が含まれる。
【0024】
(7)前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、前記第2部品の供給を、前記複数の作業要素の1つとして実行する部品供給装置を含む(4)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0025】
(8)前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第2部品の諸元に基づいて決定された前記部品供給装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(7)項に記載の製造システム構築方法。
【0026】
上記2つの項に記載の態様は、部品供給装置に関する態様である。部品供給装置は、組立作業において部品の供給を実行する装置であり、種々のタイプの装置を採用することが可能である。具体的には、複数の部品が配置されたトレイにおいて部品を供給するトレイ型部品供給装置、複数の部品を保持するテープを順送りすることによって部品を供給する、若しくは、バラバラの状態で収容された複数の部品を整列させつつ順送りすることによって部品を供給するフィーダ型部品供給装置等を採用することが可能である。どのようなタイプの部品供給装置を採用するかは、供給される部品の諸元に基づいて選択されることが望ましく、供給される部品に適した装置を採用することで、部品の供給を適切に行なうことが可能となる。したがって、後者の項に記載の製造システム構築方法によれば、部品の供給を適切に実行可能な部品供給装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。なお、本項に記載の「第2部品の諸元」とは、第2部品の要素,因子等であり、寸法,重量,素材,第2部品自体の形状,供給される際の形状(所謂、荷姿)等が含まれる。
【0027】
(9)前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、作業ヘッド装置となる、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業を前記複数の作業要素の1つとして実行する1以上の組立作業用作業ヘッド装置を含む(4)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0028】
本項に記載の「第1部品に第2部品を組み付けるために必要な作業」には、組付のために行う第2部品の保持,第2部品を第1部品にねじ込み等を行なって固着させる作業,組付に先立って実行される作業,第1部品に第2部品が組み付けられた物に対して実行される作業等が含まれる。
【0029】
(10)前記1以上の組立作業用作業ヘッド装置の少なくとも1つが、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業として、前記第2部品の保持・離脱を実行する保持・離脱ヘッド装置であり、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第2部品の諸元に基づいて決定された前記保持・離脱ヘッド装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(9)項に記載の製造システム構築方法。
【0030】
本項に記載の「保持・離脱ヘッド装置」は、部品を保持・離脱することが可能な装置であり、種々のタイプの装置を採用することが可能である。具体的には、部品を把持することで保持する装置、所謂、メカチャック型の装置,負圧等によって部品を吸着保持する吸着型の装置等を採用することが可能である。また、装置の性能によって、保持可能な部品の重量,形状等が異なる。このため、作業要素実行装置として保持・離脱ヘッド装置を採用する際には、保持すべき部品の諸元に基づいて選択されることが望ましく、保持すべき部品に適した装置を採用することで、部品の保持・離脱を適切に行なうことが可能となる。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、部品の保持,離脱を適切に実行可能な作業ヘッド装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。なお、本項に記載の「第2部品の諸元」とは、第2部品の要素,因子等であり、寸法,重量,素材,第2部品自体の形状,保持される際の形状等が含まれる。
【0031】
(11)前記1以上の組立作業用作業ヘッド装置の少なくとも1つが、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業として、前記第1部品に前記第2部品を組み付ける作業に先立って実行される作業と前記第1部品に前記第2部品を組み付ける作業が実行されている間に実行される作業と前記第1部品に前記第2部品が組み付けられた物に対して実行される作業とのうちの1つを実行する組付補助ヘッド装置であり、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、自身の性能を考慮して決定された前記組付補助ヘッド装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である(9)項または(10)項に記載の製造システム構築方法。
【0032】
定置させられた第1部品の位置,姿勢等の認識のためのその第1部品の撮像、第1部品と第2部品との少なくとも一方への接着剤,補助剤等の塗布等が、「第1部品に第2部品を組み付ける作業に先立って実行される作業」に含まれる。塗布された補助剤等の乾燥、組付精度の認識等のために行う組立物等の撮像等が、「第1部品に第2部品が組み付けられた物に対して実行される作業」に含まれる。また、本項に記載の「第1部品に第2部品を組み付ける作業」は、例えば、保持・離脱ヘッド装置が第2部品を保持してから離脱するまで継続して実行される作業と考えることが可能であり、その保持・離脱ヘッド装置が第2部品を装着位置に載置しているが、その第2部品を離脱していない状態も「第1部品に第2部品を組み付ける作業」に含むことが可能である。このため、保持・離脱ヘッド装置が第2部品を装着位置に押さえつつ、その第2部品に何らかの加工・処理等を施す作業が、「第1部品に第2部品を組み付ける作業が実行されている間に実行される作業」に含まれる。具体的には、例えば、保持・離脱ヘッド装置が第2部品を装着位置に押さえている間に、その第2部品に対してレーザ加工等を施す処理作業,第2部品の装着位置へのねじ締め作業等が、「第1部品に第2部品を組み付ける作業が実行されている間に実行される作業」に含まれる。つまり、本項に記載の「組付補助ヘッド装置」は、第1部品に第2部品を組み付ける作業の補助的な作業を実行するものであり、組付補助ヘッド装置として、撮像を行うための装置,補助剤等を塗布するための装置,接着剤等を乾燥させるための装置等を採用することが可能である。
【0033】
例えば、作業の内容が塗布作業である場合には、当然、補助剤等を塗布するための装置、所謂ディスペンサ装置を採用するが、装置によって、塗布可能な補助材の種類、補助材を放出するノズルの数等が異なる。また、撮像を行うための装置であれば、装置によって、撮像範囲、解像度等が異なり、接着剤等を乾燥させるための装置であれば、装置によって、乾燥させるための熱源の温度、乾燥可能な範囲等が異なる。このため、作業要素実行装置として組付補助ヘッド装置を採用する際に、装置の性能を考慮して選択することで、組付け作業の補助的な作業を適切に実行することが可能となる。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、組付け作業の補助的な作業を適切に実行可能な作業ヘッド装置を備えた製造システムを構築することが可能となる。
【0034】
(21)前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、作業ヘッド装置を含み、
前記本体装置準備工程において準備される前記本体装置のメインフレームが、前記作業ヘッド装置を移動させるヘッド移動装置を有する(1)項ないし(11)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0035】
本項に記載の「作業ヘッド装置」は、製造作業において中心的な役割を果たす作業要素実行装置であり、製造システムを構成する製造作業機の全てに取付けられることが多い。作業ヘッド装置は、具体的に言えば、作業対象物の概して上方若しく側方からその作業対象物に対して何らかの動作を与える若しくは何らかの処理を施すための装置ということが可能であり、作業ヘッド装置が取付けられる製造作業機には、作業ヘッド装置を作業対象物の近傍に移動させるための装置が必要である。また、作業ヘッド装置を移動させるための装置、つまり、ヘッド移動装置は、先に説明した搬送装置,作業ヘッド装置等のように、搬送物,作業対象物等を考慮して選択する必要性が低い。そこで、本項に記載の製造システム構築方法においては、作業ヘッド移動装置を本体装置のメインフレームの構成要素とし、本体装置準備工程でヘッド移動装置が設けられた本体装置が準備されるようになっている。
【0036】
(31)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、前記複数の作業要素実行装置を、それぞれが前記複数の作業要素実行装置の1つが行う1つの動作についての指令である複数の動作指令を順次送信することによって、統括して制御するように構成された(1)項ないし(22)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0037】
本項に記載の態様によれば、例えば、製造作業の変更等に対して、統括制御装置から送信される動作指令の内容を変更するだけで、フレキシブルに対応することが可能である。
【0038】
(32)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、1のプロトコルに従って前記複数の動作指令を前記複数の作業要素実行装置に送信するための統括インタフェイス部を有する(31)項に記載の製造システム構築方法。
【0039】
(33)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身の作動の制御を司る個別制御装置を備え、
その個別制御装置が、前記複数の動作指令のうちの自身に送信されるものを前記1のプロトコルに従って受信するための個別インタフェイス部を有する(32)項に記載の製造システム構築方法。
【0040】
上記2つの項に記載の態様においては、本体装置の統括制御装置と作業要素実行装置の個別制御装置との間の通信プロトコルが、全ての作業要素実行装置に対して共通化されている。したがって、上記2つの項に記載の態様によれば、作業要素実行装置組付工程において、通信プロトコルに関して考慮することなく、作業要素実行装置をメインフレームに組付けることが可能となる。上記2つの項に記載の「プロトコル」は、統括制御装置と個別制御装置との間の通信に関する取り決め、手順、規約等を定めるものであり、本項に記載の「プロトコル」には、通信されるデータ自体の取り決め等だけでなく、統括制御装置と個別制御装置との間のデータ等の伝送路の取り決め、具体的には、有線通信の場合であれば、ケーブル・コネクタの種類等の取り決め等、無線通信の場合であれば、周波数帯等の取り決め等も含まれる。
【0041】
(34)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、
製造作業を行うために前記複数の作業要素実行装置の各々によって実行されるべき前記作業要素の内容がコード化されたソースデータを記憶するソースデータ記憶部と、
そのソースデータに基づいて、前記複数の動作指令を作成する動作指令作成部と、
その動作指令作成部によって作成された前記複数の動作指令の前記複数の作業要素実行装置への送信処理を行う指令送信処理部と
を有する(31)項ないし(33)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0042】
複数の作業要素実行装置に送信される動作指令の数は比較的多く、製造作業の内容が複雑であれば、その数は相当多くなるため、動作指令の作成には大きな労力が必要となる場合がある。具体的に言えば、動作指令は、1つの作業要素実行装置によって行われる1の動作に対応するものであるため、製造作業において、1つの作業要素実行装置によって行われる1の動作がある特定の数、例えば、100の動作必要な場合には、その特定の数の動作指令、つまり、100個の動作指令が必要となる。本項に記載の態様においては、「ソースデータ」はコード化されたものであるため、コード化する際の技法を駆使すれば、ソースデータを比較的シンプルなものとすることが可能となる。したがって、本項に記載の態様によれば、動作指令作成の労力を減らすことが可能となる。
【0043】
本項に記載の「ソースデータ」は、どのような構造でコード化されてもよいが、繰り返しを避けるような構造、例えば、階層化された構造,サブルーチン化された構造,モジュール化された構造等でコード化されることが望ましい。また、本項に記載の「動作指令作成部」は、単に複数の動作指令を作成するだけでなく、複数の動作指令を、複数の作業要素実行装置の各々へ送信するべき順番に並べるように作成するものであってもよい。このように動作指令作成部が構成された場合には、本項に記載の「指令送信処理部」を、並べられた順番に動作指令を送信するように構成することが可能となり、複雑な処理を実行する必要性の低い機能部とすることが可能となる。
【0044】
(35)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、前記ソースデータ記憶部に記憶されるソースデータの入力を受け付けるソースデータ入力受付部を有し、
前記統括制御装置設定工程が、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置の前記ソースデータ入力受付部に、前記ソースデータを入力する工程を含む(34)項に記載の製造システム構築方法。
【0045】
本項に記載の製造システム構築方法では、統括制御装置設定工程において製造作業機毎に製造作業に応じたソースデータを入力することで、目的とする製造物を製造可能なシステムを構築することが可能となる。したがって、本項に記載の製造システム構築方法によれば、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0046】
(36)前記ソースデータ入力受付部に入力される前記ソースデータが、構造化プログラミングの手法に従ってコード化されたものである(35)項に記載の製造システム構築方法。
【0047】
本項に記載の「構造化プログラミングの手法」は、製造作業を実行するための作業を段階的に細かな単位に処理を記述していく手法であり、具体的に言えば、製造作業を大まかないくつかの単位に分け、そのいくつかの単位の各々をさらに細部に分ける手法である。したがって、本項に記載の態様によれば、ソースデータを階層化された構造,サブルーチン化された構造等でコード化することが可能となり、ソースデータを比較的シンプルなものとすることが可能となる。
【0048】
(37)前記1以上の製造作業機の各々による製造作業が、
それぞれが、前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作からなる複数の単位作業を含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に入力される前記ソースデータが、
前記複数の単位作業に対応して、それぞれが前記複数の単位作業の1つを示す複数の単位作業コードと、
それぞれが、前記複数の単位作業コードの1つに関連付けされ、それぞれが、その複数の単位作業コードの1つが示す前記複数の単位作業のうちの1つを構成するところの前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作を示す複数の動作コードを含む複数の動作コード群と
に階層化された構造を有する(35)項または(36)項に記載の製造システム構築方法。
【0049】
本項に記載の態様においては、ソースデータが具体的に限定されている。本項に記載の「ソースデータ」は、少なくとも単位作業コードと動作コード群とに2層化されていればよく、3層以上に階層化されていてもよい。具体的には、複数の単位作業のうちの1以上のものをまとめてコード化した単位作業コードの上位のコードを、さらに有する構造であってもよい。また、本項に記載の「単位作業」は、複数の作業要素実行装置の各々によって行われる各動作が連続するように製造作業から区分けされたものであり、複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作によって構成されている。つまり、本項に記載の「製造作業」は、複数の単位作業のみによって構成されるものもあり、複数の単位作業と、それぞれが、1つの作業要素実行装置によって行われる1の動作からなる複数の単作業とによって構成されるものもある。
【0050】
(38)前記複数の動作コードの各々が、
前記複数の作業要素実行装置のうちの前記複数の動作コードの各々によって示される動作を行なうものを特定するための装置特定コードと、前記複数の作業要素実行装置のうちの前記装置特定コードによって特定されるものが実行する前記作業要素をコード化した作業要素コードとを含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に前記ソースデータを入力する工程が、
少なくとも、前記複数の動作コードの各々について、前記装置特定コードと前記作業要素コードとを入力する工程である(37)項に記載の製造システム構築方法。
【0051】
本項に記載の態様においては、少なくとも作業要素と作業要素実行装置とを入力することで、統括制御装置の設定をすることが可能となっている。したがって、本項に記載の態様によれば、統括制御装置設定工程を簡略化することが可能となる。本項に記載の「作業要素コード」は、動作コードに応じた作業要素をコード化したものであればよく、「装置特定コード」は、動作コードに応じた作業要素を実行する作業要素実行装置を特定することが可能なものであればよい。
【0052】
(39)前記複数の単位作業コードのうちの1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つと、前記複数の単位作業コードのうちの他の1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つとが、それぞれに含まれる前記複数の動作コードが示す前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作についての動作パラメータを除いて、共通化されている(37)項または(38)項に記載の製造システム構築方法。
【0053】
製造作業には、繰り返される作業が含まれるものが多く存在する。具体的に言えば、例えば、複数の回路基板が載置された基板トレイが製造作業機内に搬入され、それら複数の回路基板の各々に対して部品が装着される製造作業では、各回路基板に対する一連の複数の作業は、装着作業位置等を除いて、殆ど同じである。このような製造作業では、繰り返し実行される作業を単位作業とすることで、その単位作業を構成する一連の複数の動作を、装着作業位置等の動作パラメータを除いて共通化することが可能となる。本項に記載の態様では、繰り返し実行される作業が単位作業とされており、その単位作業の一連の複数の動作が、動作パラメータを除いて共通化される。したがって、本項に記載の態様によれば、略同様の複数の動作コード群を1つの動作コード群にすることが可能となり、ソースデータをシンプルなものとすることが可能となる。
【0054】
本項に記載の「動作パラメータ」は、作業要素実行装置が1つの動作を実行する際に利用されるパラメータであり、所謂、引数である。具体的に言えば、搬送・移動の方向・量・時間・速度,補助剤の放出の量・時間・速度,加工・処理の実施の量・時間・速度等が該当する。上述した回路基板に対する作業であれば、例えば、装着装置の移動量を変更することで、装着作業位置を変更することが可能となる。
【0055】
(40)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身の作動の制御を司る個別制御装置を備えた(31)項ないし(39)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0056】
(41)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身の対象となる作業要素を実行するための1以上の作動デバイスを備え、自身が備える前記個別制御装置がその1以上の作動デバイスの作動を制御するように構成された(40)項に記載の製造システム構築方法。
【0057】
上記2つの項に記載の態様においては、複数の作業要素実行装置の各々が自身の作動を制御するための個別制御装置を有し、その個別制御装置が統括制御装置から送信される動作指令に基づいて、作業要素実行装置の作動を制御することが可能とされており、作業要素実行装置がインテリジェント化されている。つまり、統括制御装置は、各作業要素実行装置の作動を制御する必要が無いため、少なくとも、単に動作指令を作業要素実行装置に送信する機能部を有していればよい。したがって、上記2つの項に記載の態様によれば、統括制御装置を複雑な処理を実行する必要性の低いものとすることが可能となる。
【0058】
本項に記載の「作動デバイス」は、例えば、1つの作業要素実行装置における制御可能な1つの作動主体、あるいは、モータ等のその作動主体の駆動源と考えることができる。例えば、作業要素実行装置が搬送装置である場合に、コンベア等の搬送デバイスが1つの作動デバイスとなる。また、作動デバイスは、アクチュエータとして機能するものに限定されず、例えば、プラズマ処理装置,レーザ処理装置等が作業要素実行装置となる場合には、プラズマ発生器,レーザ発生器等も作動デバイスとなり得、撮像装置が作業要素実行装置となる場合には、カメラ等の撮像デバイスの他に、照明器等も作動デバイスとなり得る。なお、作業要素実行装置が、複数の作動デバイスを備える場合、それら複数の作動デバイスを1つの個別制御装置で制御することになり、その作業要素実行装置は、インテリジェント化が進んだ装置となる。
【0059】
(42)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、特定のプログラミング言語での前記複数の動作指令を送信するように構成され、
前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの前記複数の作業要素実行装置のうちの1以上のものの各々の前記個別制御装置が、前記複数の動作指令のうちの自身に送信されるものを、自身がその動作指令の内容を認識可能なプログラミング言語での動作指令に変換する指令変換部を有する(40)項または(41)項に記載の製造システム構築方法。
【0060】
現在使用されているプログラミング言語の数は相当多く、複数の作業要素実行装置の各々で使用されるプログラミング言語は、異なっていることが多い。このため、統括制御装置が送信する複数の動作指令を規定するプログラミング言語は、通常、送信先の作業要素実行装置毎に異なっていることが多い。本項に記載の態様においては、各作業要素実行装置の個別制御装置によって、統括制御装置から送信された動作指令の内容が認識され、その認識された動作指令に基づいて作動デバイスの作動が制御されるようになっている。したがって、本項に記載の態様によれば、例えば、送信先の作業要素実行装置毎に動作指令を規定するプログラミング言語を変更する必要がなくなり、統括制御装置を複雑な処理を実行する必要性のさらに低いものとすることが可能となる。つまり、統括制御装置設定工程を簡略化することが可能となる。また、本項に記載の「プログラミング言語での動作指令」は、プログラミング言語に従った動作指令であり、あるプログラミング言語で規定された動作指令を意味するものである。もっと解り易く言えば、あるプログラミング言語で記載された動作指令を意味するものである。
【0061】
(51)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、自身が認識されるための認識情報を自身に保有しており、
前記本体装置準備工程において準備されるその1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、
前記複数の作業要素実行装置の各々から取得した認識情報に基づいて、その各々への動作指令の送信の可否を判断する作業要素実行装置認識部を有する(31)項ないし(42)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0062】
本項に記載の態様においては、認可を受けていない第三者によって製造された作業要素実行装置を無効化することが可能となり、認可を受けていない第三者製の作業要素実行装置の流通を阻止することが可能となる。したがって、本項に記載の態様によれば、製造システムを構築するためのネットワークを形成することが可能となり、信頼性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0063】
(52)前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記メインフレームが、互いに同じ寸法である(1)項ないし(51)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0064】
本項に記載の態様においては、製造作業機の本体装置が同一化若しくは統一規格化されており、汎用性の高い製造システムを構築することが可能となる。
【0065】
(53)前記作業要素実行装置組付工程が、前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置の各々を、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置の前記メインフレームの、前記複数の作業要素実行装置の各々に応じて定められた基準位置に組み付ける工程である(1)項ないし(52)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0066】
本項に記載の態様においては、基準位置に作業要素実行装置が組付けられることで、作業要素実行装置の作動時の基準点が担保されるようになっている。ちなみに、作動時の基準点とは、作業要素実行装置が作動する際の基準点であり、その基準点を原点として作業要素実行装置の作動が制御される。
【0067】
(54)前記作業要素実行装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記複数の作業要素実行装置の各々が、その各々が前記メインフレームに組み付けられる位置の空間の大きさに基づいて定められる所定の寸法内の大きさである(1)項ないし(53)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0068】
本項に記載の態様においては、各作業要素実行装置の大きさがメインフレームの組付位置の寸法に応じて定められており、作業要素実行装置組付工程での処理を容易に実行することが可能となる。本項に記載の「空間」は、メインフレームに作業要素実行装置が組み付けられた場合にその作業要素実行装置が占有するスペースであり、作業要素実行装置の非作動時における占有スペースのみならず、作動時における占有スペースをも含む場合がある。
【0069】
(61)前記本体装置準備工程が、前記1以上の製造作業機の前記本体装置を単一の特定の業者から購入することでその本体装置を準備する工程である(1)項ないし(54)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0070】
(62)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、前記特定の業者から前記複数の作業要素実行装置のうちの少なくとも1以上のものを購入する工程を含む(61)項に記載の製造システム構築方法。
【0071】
(63)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、前記特定の業者とは異なる業者から前記複数の作業要素実行装置のうちの少なくとも1以上のものを購入する工程を含む(61)項または(62)項に記載の製造システム構築方法。
【0072】
(64)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、前記複数の作業要素実行装置のうちの少なくとも1以上のものを製造する工程を含む(61)項ないし(63)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0073】
(65)前記作業要素実行装置準備工程が、前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものについて、複数の業者から前記複数の作業要素実行装置を購入する工程を含む(1)項ないし(64)項のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【0074】
上記(61)項に記載の態様においては、本体装置準備工程での準備手段が具体的に限定されており、(62)項〜(65)項に記載の態様においては、作業要素実行装置準備工程での準備手段が具体的に限定されている。先に述べているように、作業要素実行装置として種々のものを採用可能であり、選択可能な作業要素実行装置は多岐にわたっている。このため、作業要素実行装置を準備するためのルートも多岐にわたっていることが望ましい。したがって、(62)項〜(65)項に記載の態様によれば、種々のルートによって作業要素事項装置を準備することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】請求可能発明の実施例である製造システム構築方法によって構築された製造システムを示す斜視図である。
【図2】図1の製造システムの備える統括制御装置および複数の作業要素実行装置の模式図である。
【図3】図1の製造システムに搬入される基板トレイおよびその基板トレイ上に載置される回路基板を示した図である。
【図4】図2の統括制御装置に記憶されているソースデータの基本コードを示す図である。
【図5】図2の統括制御装置に記憶されているソースデータの単位作業コードを示す図である。
【図6】図2の統括制御装置に記憶されているソースデータの動作コードを示す図である。
【図7】ソースデータに基づいて作成される動作指令を示す図である。
【図8】動作指令に対する返信を示す図である。
【図9】図1の製造システムの備える統括制御装置および複数の作業要素実行装置の制御ブロック図である。
【図10】図1の製造システムの備えるベースおよびそのベースから外された状態の複数の作業要素実行装置を示す斜視図である。
【図11】作業要素実行装置の一例であるリフトアンドキャリー型の搬送装置を示す斜視図である。
【図12】製造システム構築方法を概念的に示した図である。
【図13】図12の方法とは異なる製造システム構築方法を概念的に示した図である。
【図14】LED照明の分解図である。
【図15】図14のLED照明を組み立てるために必要な構成部品,作業要素,作業内容,製造作業,作業要素実行装置を示す図である。
【図16】図14のLED照明を組み立てるためのLED照明組立システムを示す斜視図である。
【図17】図16のLED照明組立システムの備える第1製造作業機の統括制御装置に記憶されているソースデータの基本コードを示す図である。
【図18】図16のLED照明組立システムの備える第1製造作業機の統括制御装置に記憶されているソースデータの単位作業コードを示す図である。
【図19】図16のLED照明組立システムの備える第1製造作業機の統括制御装置に記憶されているソースデータの動作コードを示す図である。
【図20】パワーモジュールの分解図である。
【図21】図20のパワーモジュールを組み立てるために必要な構成部品,作業要素,作業内容,製造作業,作業要素実行装置を示す図である。
【図22】図20のパワーモジュールを組み立てるためのパワーモジュール組立システムを示す斜視図である。
【図23】太陽電池の分解図である。
【図24】図23の太陽電池を組み立てるために必要な構成部品,作業要素,作業内容,製造作業,作業要素実行装置を示す図である。
【図25】図23の太陽電池を組み立てるための太陽電池組立システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0076】
以下、請求可能発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、本請求可能発明は、下記実施例の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【実施例】
【0077】
<製造システムの構成>
図1に、請求可能発明の製造システム構築方法によって構築される製造システム10を示す。製造システム10は、電子回路部品(以下、「部品」と略す場合がある)が装着された回路基板を製造するものであり、1台の製造作業機12によって構成されている。その製造作業機12は、製造作業を行なうものであり、具体的には、回路基板に対する部品の組付,接着剤の塗布を行う組立作業機である。製造作業機12は、フレーム部20とそのフレーム部20に上架されたビーム部22とを含んで構成されたベースとしての作業機本体24と、回路基板を搬送する搬送装置26と、回路基板に部品を組付ける組立作業用作業ヘッド装置としての装着装置28と、フレーム部20の一端に配設され装着装置28に部品を供給する部品供給装置(以下、「供給装置」と略す場合がある)30と、回路基板に接着剤を塗布する組立作業用作業ヘッド装置としてのディスペンサ装置32と、供給装置30と搬送装置26との間に配設されたベースカメラ34と装着装置28の後方に配設されたヘッドカメラ36(図10参照)とを含んで構成されたカメラ装置38と、ビーム部22に配設されて装着装置28とディスペンサ装置32とヘッドカメラ36とを共に領域内において移動させる移動装置40とを備えている。ちなみに、製造作業機12の長手方向を前後方向とし、その長手方向に直角な水平の方向を左右方向と、長手方向に直角な垂直の方向を上下方向と称することにする。なお、製造作業機12を構成する各装置26,28,30,32,38,40は公知の装置であることから、ここでの説明は簡単なものとする。
【0078】
搬送装置26は、コンベアベルト50を搬送モータ52(図2参照)によって周回させることで、コンベアベルト50上に載せられる回路基板を左右方向に搬送する構造とされている。つまり、搬送装置26は、作業要素としての回路基板の特定位置への搬入・搬出を実行する作業要素実行装置として機能する。供給装置30は、トレイユニット型の供給装置であり、部品が載置される複数の部品トレイ(図示省略)と、装着装置28に部品を供給可能な位置に複数の部品トレイのうちのいずれかのものを移動させるトレイ移動装置54(図2参照)とを有している。つまり、供給装置30は、作業要素としての部品の供給を実行する作業要素実行装置として機能する。
【0079】
移動装置40は、XYZロボット型の移動装置であり、装着装置28とディスペンサ装置32とヘッドカメラ36とを保持するスライダ56を左右方向にスライドさせる電磁モータ58(図2参照)と、前後方向にスライドさせる電磁モータ60(図2参照)と、上下方向にスライドさせる電磁モータ62(図2参照)とを備えており、それら電磁モータ58,60,62の作動によって、装着装置28とディスペンサ装置32とヘッドカメラ36とを任意の位置に移動させることが可能となっている。つまり、移動装置40は、作業ヘッド装置としての装着装置28,ディスペンサ装置32の移動を実行するヘッド移動装置として機能する。また、移動装置40は、他の作業要素実行装置の移動を実行する作業要素実行装置としての機能を有しているが、本製造システム10のおいて移動装置40は、作業機本体24とともにメインフレームを構成するものとする。
【0080】
装着装置28は、移動装置40のヘッド組付部としてのスライダ56に固定的に保持されており、下端に部品保持装置70を有している。部品保持装置70は、正負圧供給装置72(図2参照)を介して負圧エア,正圧エア通路に通じており、負圧にて部品を吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した部品を離脱する構造となっている。つまり、保持・離脱ヘッド装置としての装着装置28は、作業要素としての部品の保持・離脱を実行する作業要素実行装置として機能する。ディスペンサ装置32は、移動装置40のスライダ56に固定的に保持されており、下端に設けられ接着剤を吐出するディスペンサノズル76と、そのディスペンサノズル76から任意の量の接着剤を吐出させる吐出装置78(図2参照)とを備えている。つまり、ディスペンサ装置32は、作業要素としての接着剤の放出を実行する作業要素実行装置として機能する。
【0081】
カメラ装置38は、下方を向いた状態でスライダ56の下部に固定的に保持されたヘッドカメラ36と、そのヘッドカメラ36の光源80(図2参照)と、上方を向いた状態で供給装置36と搬送装置26との間に固定的に設けられたベースカメラ34と、そのベースカメラ34の光源82(図2参照)と、ヘッドカメラ32とベースカメラ38と光源80,82とに接続されたキャプチャボード84(図2参照)とを含んで構成されている。ヘッドカメラ36は、搬送装置26に載せられた回路基板を撮影することが可能となっており、ベースカメラ38は、装着装置28によって吸着保持された状態の部品を撮影することが可能となっている。つまり、カメラ装置38は、作業要素としての回路基板,部品の撮影を実行する作業要素実行装置として機能する。
【0082】
製造作業機10は、搬送装置26,装着装置28,供給装置30,ディスペンサ装置32,カメラ装置38,移動装置40の6つの装置によって構成されており、それら6つの装置の各々は、図2に示すように、個別に制御装置を備えている。具体的には、移動装置40は、3つの電磁モータ58,60,62の作動を制御するための移動装置制御装置90と、3つの電磁モータ58,60,62に対応する3つのサーボアンプ92,94,96とを有しており、移動装置制御装置90が各サーボアンプ92,94,96に制御信号を送信することで各電磁モータ58,60,62の作動を制御する構造とされている。装着装置28は、作動デバイスとしての正負圧供給装置72の作動を制御するための個別制御装置としての装着装置制御装置100と、正負圧供給装置72の駆動回路102とを有しており、装着装置制御装置100が駆動回路102に制御信号を送信することで正負圧供給装置72の作動を制御する構造とされている。
【0083】
ディスペンサ装置32は、作動デバイスとしての吐出装置78の作動を制御するための個別制御装置としてのディスペンサ装置制御装置104と、吐出装置78の駆動回路106とを有しており、ディスペンサ装置制御装置104が駆動回路106に制御信号を送信することで吐出装置78の作動を制御する構造とされている。供給装置30は、作動デバイスとしてのトレイ移動装置54の作動を制御するための個別制御装置としての供給装置制御装置108と、トレイ移動装置54の駆動源のモータの駆動回路110とを有しており、供給装置制御装置108が駆動回路110に制御信号を送信することでトレイ移動装置54の作動を制御する構造とされている。搬送装置26は、作動デバイスとしての搬送モータ52の作動を制御するための個別制御装置としての搬送装置制御装置112と、搬送モータ52の駆動回路114とを有しており、搬送装置制御装置112が駆動回路114に制御信号を送信することで搬送モータ52の作動を制御する構造とされている。
【0084】
カメラ装置38は、ベースカメラ34若しくはヘッドカメラ36による撮影を実行するための制御信号の送信、および撮影によって得られた画像データの処理を実行するための個別制御装置としてのカメラ装置コントローラ116を有している。カメラ装置コントローラ116は、後に説明する補助統括制御装置118内に設けられているが、補助統括制御装置118内で独立しており、バス120を介してカメラ装置38のキャプチャボード84に接続されている。このため、カメラ装置コントローラ116は、補助統括制御装置118の構成要素ではなく、カメラ装置38の構成要素として取り扱うものとする。
【0085】
また、製造作業機12は、上記6つの装置26,28,30,32,38,40を統括して制御するためのメイン統括制御装置130と補助統括制御装置118とによって構成される統括制御装置を備えている。メイン統括制御装置130は、主に、各装置26,28,30,32,38,40の制御装置90,100,104,108,112,116に動作指令を送信するための制御装置であり、リピータハブ132を介して、動作指令を送信するための同種類のシリアル通信ケーブル134によって各制御装置90,100,104,108,112,116と接続されている。また、補助統括制御装置118は、補助統括コントローラ136を有しており、その補助統括コントローラ136には、各個別制御装置90等への動作指令の基となるソースプログラム、つまり、ある特定の製造作業を実行するためのソースデータが記憶されている。その記憶されているソースデータは、上記6つの装置26等の作動がコード化されたものである。補助統括コントローラ136は、そのソースデータをある特定のプログラミング言語に従った動作指令に変換し、変換された動作指令をメイン統括制御装置130に送信するように構成されている。補助統括コントローラ136とメイン統括制御装置130とは、ハブ138を介してLANケーブル140によって接続されており、補助統括コントローラ136において変換された動作指令が、LANケーブル140を介して、メイン統括制御装置130に送信されるようになっている。また、ハブ138には、そのLANケーブル140と同種類の6本のLANケーブル140の一端が接続されており、それら6本のLANケーブル140の各々の他端が各装置26等の制御装置90等に接続されている。なお、シリアル通信ケーブル134およびLANケーブル140は、それぞれ、配線部とコネクタ部とから構成されるが、それら配線部とコネクタ部とは、それぞれ、汎用品であってもよく、本製造システム10専用に開発されたものであってもよい。
【0086】
また、製造作業機12には、製造作業機12の作動に関する情報を入出力するためのタッチパネル式の表示機150が設けられており、メイン統括制御装置130と補助統括コントローラ136とに接続されている。詳しくは、表示機150は、ハブ138を介して上記LANケーブル140と同種類のLANケーブル140によってメイン統括制御装置130に接続されており、シリアル通信ケーブル152とRGBアナログケーブル154とによって補助統括コントローラ136に接続されている。製造作業機12には、さらに、非常停止スイッチ156が設けられており、ターミナルリレー158を介してI/Oケーブル160によってメイン統括制御装置130および各作業要素実行装置26等の制御装置90等に接続されている。なお、製造作業機12の主電源スイッチ,起動スイッチ等の複数のスイッチ162と、起動中であることを示す表示灯,作動可能であることを示す表示灯等の複数の表示灯164とが、メイン統括制御装置130に接続されている。
【0087】
<製造システムの作動>
本製造システム10では、製造作業機12が、補助統括コントローラ136に記憶されているソースデータに従って、上記6つの個別の装置26等が各々の作業を実行することで、回路基板への部品の装着作業を実行するようになっている。具体的に、回路基板上に部品を接着剤によって固着する製造作業について説明する。第1部品としての回路基板166は、図3(a)に示すように、基板トレイ167上に予め20枚載置されており、この基板トレイ167が製造作業機12に搬入される。そして、基板トレイ167上に載置されている1枚の回路基板166に、図3(b)に示すように、接着剤168が塗布され、その塗布された接着剤168の上に第2部品としての電子回路部品169が、図3(c)に示すように、装着される。塗布作業と装着作業とが実行されることで、1枚の回路基板166に対する作業が終了し、製造物としての部品が装着された回路基板が製造される。次に、他の回路基板166に対して塗布作業と装着作業とが実行され、20枚の回路基板166全てに対する作業が終了すると、基板トレイ167が製造作業機12から搬出される。
【0088】
このような製造作業に関するソースデータには、図4に示すような基本コードが記されている。基本コードには、回路基板166に対する作業を実行するための準備作業,回路基板166に対する作業(対基板作業),回路基板166に対する作業実行後の終了作業の3種類の基本コードが記されており、回路基板166に対する作業(対基板作業)は、20枚の回路基板166に対して実行する必要が有るため、20回分記されている。図には、基本コード名が記されているが、その基本コード名とともに作業実行に関する情報、具体的には、例えば、各回路基板166の位置情報等が記される場合がある。
【0089】
さらに、3種類の基本コードの各々は、図5に示すようにコード化されており、1以上の単位作業コードによって構成されている。詳しくは、準備作業コードは、基板トレイ167、および装着すべき部品の載置された部品トレイの準備(トレイ準備)を実行するための単位作業コードによって構成されており、終了作業コードは、基板トレイ167の搬出(トレイ搬出)を実行するための単位作業コードによって構成されている。また、対基板作業コードは、回路基板166に関する情報の取得(基板情報取得),回路基板166への接着剤の塗布(接着剤塗布),回路基板への部品装着(部品装着)の各々を実行するための3種類の単位作業コードによって構成されている。この単位作業コードにも、作業実行に関する情報、具体的には、例えば、基板トレイ167の搬送量等が記される場合がある。
【0090】
単位作業コードは、図6に示すように、一連の複数の作業によって構成される単位作業をコード化したものであり、複数の動作コード、つまり、動作コード群によって構成されている。ただし、トレイ搬出コードは、1つの動作コードのみによって構成されている。詳しくは、トレイ準備コードは、基板トレイ167を特定の位置まで搬入するための動作コードと、装着すべき部品の載置された部品トレイを供給するための動作コードとによって構成されている。基板情報取得コードは、回路基板166を撮影可能な位置にヘッドカメラ36を移動させるための動作コードと、ヘッドカメラ36によって回路基板166を撮影してその回路基板166の位置情報を取得するための動作コードとによって構成されている。接着剤塗布コードは、取得された位置情報に基づいて接着剤の塗布位置にディスペンサ装置32を移動させるための動作コードと、接着剤を回路基板166に塗布するための動作コードとによって構成されている。部品装着コードは、装着装置28を部品の供給位置に移動させるための動作コードと、部品を保持するための動作コードと、部品を保持した装着装置28をベースカメラ34上に移動させるための動作コードと、装着装置28に保持された部品をベースカメラ34によって撮影してその部品の保持状態の情報を取得するための動作コードと、回路基板の位置情報および部品の保持状態の情報に基づいて部品の装着位置に装着装置28を移動させるための動作コードと、部品を離脱するための動作コードとによって構成されている。そして、トレイ搬出コードは、部品が装着された回路基板166、つまり組立物が載置された基板トレイ167を搬出するための動作コードによって構成されている。ちなみに、各動作コードは、作業要素実行装置とその作業要素実行装置によって実行される作業要素とを示しており、各動作コードに応じた作業要素がコード化された作業要素コードと、その作業要素を実行可能な作業要素実行装置を特定する装置特定コードとによって構成されている。
【0091】
上記したように階層的にコード化されたソースデータが、補助統括コントローラ136に記憶されており、さらに、6つの個別の装置26等の各々が行い得る動作に関する情報である可能動作情報も補助統括コントローラ136に記憶されている。可能動作情報には、作業要素実行装置26等が作業を実行する際のその装置が行い得る動作、具体的には、例えば、供給装置30であれば部品の供給,装着装置28であれば部品の保持若しくは離脱等が含まれている。また、作業要素実行装置26等の作動範囲,寸法,作動時の基準点等も含まれる。ちなみに、作動時の基準点とは、各装置26等が作動する際の基準点であり、その基準点を原点として各装置26の動作量等が決定される。
【0092】
本製造システム10では、作業要素実行装置26等の各々への動作に関する指令である動作指令が、補助統括コントローラ136において、ソースデータに基づいて作成される。動作指令作製時には、上記可能動作情報が参照され、各装置26等の作動態様,動作量等を含んだ動作指令が作成される。具体的には、図7に示すように、搬送装置26によって回路基板を特定量搬送するための動作指令(1)と、供給装置30によって特定の部品トレイを供給するための動作指令(2)と、移動装置40によってヘッドカメラ36を特定量移動させるための動作指令(3)と、ヘッドカメラ36の撮影によって回路基板の位置情報を取得するための動作指令(4)と、移動装置40によってディスペンサ装置32を特定量移動させるための動作指令(5)と、ディスペンサ装置32によって接着剤を特定量放出するための動作指令(6)と、移動装置40によって装着装置28を特定量移動させるための動作指令(7)と、装着装置28によって部品を保持するための動作指令(8)と、移動装置40によって装着装置28を特定量移動させるための動作指令(9)と、ベースカメラ34の撮影によって部品の保持状態の情報を取得するための動作指令(10)と、移動装置40によって装着装置28を特定量移動させるための動作指令(11)と、装着装置28によって部品を離脱するための動作指令(12)と、搬送装置26によって回路基板を特定量搬送するための動作指令(203)とを含んだものが作成される。ちなみに、動作指令No.(3)〜(12)の動作指令は1枚の回路基板166に対する作業を実行するためのものであり、動作指令No.(13)〜(202)では、動作指令No.(3)〜(12)と略同様の動作指令が19回繰り返される。ただし、動作指令No.(13)〜(202)での移動装置40の移動量は、回路基板166毎に異なるものとなっている。
【0093】
上述したように、図4〜6に示す形式のソースデータに基づいて、補助統括コントローラ136において、図7に示すような203個の動作指令群が作成される。本製造システム10では、ソースデータを、構造化プログラミングの手法、つまり、製造作業を実行するための作業を段階的に細かな単位に処理を記述していく手法に従ってコード化しており、3層化して記述されたソースデータは、図7に示す動作指令群と比較して、比較的シンプルなものとされている。詳しく言えば、図6に示す単位作業コードのうちの基板情報取得コード,接着剤塗布コード,部品装着コードでは、20枚の回路基板166の各々に対する動作コードが共通化されており、それら3つの単位作業コードは、共通化動作コード群と考えることができる。各単位作業コードの動作群が共通化されることで、ソースデータには、1枚の回路基板166に対する基板情報取得コード,接着剤塗布コード,部品装着コードを記載すればよく、それら3つの単位作業コードを構成する動作群コードを20回繰り返して記載する必要はない。したがって、本製造システム10では、ソースデータの作成を簡便なものとすることが可能となっている。なお、共通化動作群コードであっても、各回路基板166が載置されている位置等は異なるため、移動装置40等の動作パラメータ、つまり、移動装置40による移動量等は異なるが、動作指令作製時に、それら動作パラメータは、回路基板毎に調整される。
【0094】
上記複数の動作指令は、補助統括コントローラ136からメイン統括制御装置130へ、LANケーブル140を介して送信され、それら複数の動作指令が、順次、メイン統括制御装置130によって作業要素実行装置26等の各々の個別制御装置90等に、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。メイン統括制御装置130から送信される動作指令は、送信先を定めずに、全ての作業要素実行装置26等の個別制御装置90等に送信されるが、動作指令には、後に説明するように、その動作指令によって作動するべき作業要素実行装置が示されているため、その作動するべき作業要素実行装置が動作指令に従って作動するようになっている。以下に、上記動作指令による作業要素実行装置の作動を具体的に説明する。
【0095】
メイン統括制御装置130は、まず、基板トレイ167を特定の位置まで搬送するための動作指令を、シリアル通信ケーブル134を介して送信する。送信される動作指令は、図7中の動作指令No.(1)に示すような形式とされている。図中の主指令は、その動作指令を実行するべき作業要素実行装置と、その作業要素実行装置によって実行される1つの動作の開始若しくは終了とを指令するものであり、この動作指令では、搬送装置26による基板トレイ167の搬送の開始を指令するものである。図中の付随指令は、必要に応じて指令されるものであり、作業要素実行装置によって実行される1つの動作についての動作パラメータを指令するものである。具体的には、この動作指令では、搬送装置26による搬送量、つまり、移動距離を指令するものである。なお、この付随指令には、搬送速度,搬送時間,搬送方向等、種々のパラメータを採用することができる。また、図中の指令状態は、動作指令の有無を示すものであり、動作指令が指示されている状態では「指示」、動作指令が指示されていない状態では「無し」と設定される。つまり、この動作指令では「指示」と設定される。
【0096】
メイン統括制御装置130からの動作指令を受信した搬送装置制御装置112は、その動作指令に基づいて搬送モータ52の作動を制御する必要があるが、メイン統括制御装置130から送信される動作指令は、ある特定のプログラミング言語に従ったものとされており、搬送装置制御装置112が対応可能なプログラミング言語に従ったものではない。このため、メイン統括制御装置130から送信される動作指令では、搬送モータ52を作動させることができない。搬送装置制御装置112は、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語、つまり、自身が扱うことが可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換する機能を有しており、自身で変換した動作指令に基づいて搬送モータ52の作動を制御するように構成されている。ちなみに、図7中で示される主指令,付随指令等の内容、具体的には、動作指令No.(1)での「搬送装置:搬送」,「搬送量」等が、ある特定のプログラミング言語に従った動作指令である。
【0097】
なお、装着装置28,供給装置30,ディスペンサ装置32の各々の個別制御装置100,104,108も同様の機能を有しており、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換することが可能とされている。ただし、移動装置40の移動装置制御装置90および、カメラ装置38のカメラ装置コントローラ116は、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応することが可能とされているため、動作指令を規定するプログラミング言語を変換する機能を有していない。
【0098】
メイン統括制御装置130からの動作指令による搬送装置26の作動が終了すると、つまり、基板トレイ167が特定の位置まで搬送されると、その動作指令に対する返信が、搬送装置制御装置112からメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。送信される返信は、図8に示すような形式とされている。図中の作動結果は、動作指令による作業要素実行装置の作動が適切に実行されたか否かをしめすものであり、この返信では、基板トレイ167が特定の位置まで搬送されたか否かを示すものである。さらに、図中の作動結果は、作動結果のパラメータ、具体的には、基板トレイ167の移動先の位置等を必要に応じて示すものであってもよい。また、図中の指令状態は、動作指令による作業要素実行装置の作動が完了したことを示すものであり、この返信では、「完了」に設定される。そして、その終了に関する返信をメイン統括制御装置130が受信すると、指令状態は「無し」に設定される。ちなみに、図中の作業要素実行装置状態は、作業要素実行装置に異常があるか否かを示すものであるが、動作指令に対する返信では利用されずに、後に詳しく説明するように、作業要素実行装置が正常に作動しない虞がある場合の送信時に利用される。
【0099】
メイン統括制御装置130は、基板トレイ167の特定の位置までの搬送が確認された後、つまり、搬送の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、次の動作指令を送信する。次の動作指令は、図7中の動作指令No.(2)に示す形式となっており、装着すべき部品の載置された部品トレイを供給するための動作指令である。この動作指令での、主指令は、供給装置30による部品トレイの供給を指令するものであり、付随指令は、装着すべき部品が載置された部品トレイを指定する指令である。供給装置制御装置108は、動作指令を受信すると、搬送装置制御装置112と同様に、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換し、その自身で変換した動作指令に基づいてトレイ移動装置54の作動を制御する。そして、その動作指令による作動が終了すると、動作指令に対する返信が、供給装置制御装置108からメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。なお、供給装置制御装置108からの返信における作動結果には、装着すべき部品の位置情報等が添付される場合がある。
【0100】
次に、メイン統括制御装置130は、トレイ供給の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、基板トレイ167上の回路基板166を撮影可能な位置にヘッドカメラ36を移動させるための動作指令(図7中の動作指令No.(3))を送信する。ちなみに、本製造システム10では、特定の部品トレイの供給が終了した後にトレイ供給の終了に関する返信が送信されるが、トレイ供給の終了時点が推定される場合には、終了時点の前にトレイ供給の終了に関する返信を送信してもよい。部品トレイの供給中に移動装置40によって装着装置28を移動させても、2つの作業が干渉することは少なく、部品トレイの供給中に移動装置40によって装着装置28を移動させることで、製造作業時間の短縮を図ることが可能となるためである。
【0101】
ヘッドカメラ36を移動させるための動作指令での、主指令は、移動装置40によるヘッドカメラ36の移動の開始を指令するものであり、付随指令は、前後方向への移動量と左右方向への移動量と上下方向への移動量とを指令するものである。なお、この付随指令を設定する際に、搬送装置制御装置112からの返信における作動結果、詳しくは、基板トレイ167の移動先の位置の情報を利用することが可能である。移動装置制御装置90は、動作指令を受信すると、その受信した動作指令を変換することなく、受信した動作指令に基づいて3つの電磁モータ58,60,62の各々作動を制御する。移動装置制御装置90は、上述したように、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語を認識可能とされているからである。そして、その動作指令による移動装置40の作動が終了すると、動作指令に対する返信が、移動装置制御装置90からメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信される。
【0102】
続いて、メイン統括制御装置130は、ヘッドカメラ36の移動の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、次の動作指令を送信する。具体的には、ヘッドカメラ36によって基板を撮影してその基板の位置情報を取得するための動作指令(図7中の動作指令No.(4))が送信される。この動作指令での、主指令は、ヘッドカメラ36による回路基板166の撮影と撮影によって得られた画像データの処理の開始を指令するものである。カメラ装置コントローラ116も、移動装置制御装置90と同様に、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語を認識可能であるため、カメラ装置コントローラ116は、動作指令を受信すると、その受信した動作指令に基づいてヘッドカメラ36と光源80とを制御する。そして、撮影によって得られた画像データを処理することで、回路基板166の位置情報を取得する。その動作指令による作動が終了すると、動作指令に対する返信が、カメラ装置コントローラ116からメイン統括制御装置130へ送信される。なお、カメラ装置コントローラ116からの返信における作動結果には、撮影によって取得された回路基板166の位置データが添付される。
【0103】
メイン統括制御装置130は、回路基板166の位置情報の取得の完了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、接着剤の塗布位置にディスペンサ装置32を移動させるための動作指令(図7中の動作指令No.(5))を送信する。この動作指令での、主指令は、移動装置40によるディスペンサ装置32の移動の開始を指令するものであり、付随指令は、前後方向への移動量と左右方向への移動量と上下方向への移動量とを指令するものである。なお、この付随指令を設定する際に、カメラ装置コントローラ116からの返信における作動結果、詳しくは、回路基板166の位置情報が利用される。移動装置制御装置90は、動作指令を受信すると、その受信した動作指令に基づいて電磁モータ58,60,62の作動を制御する。そして、その動作指令による作動が終了すると、動作指令に対する返信が、移動装置制御装置90からメイン統括制御装置130へ送信される。
【0104】
メイン統括制御装置130は、ディスペンサ装置32の移動の終了に関する返信の受信により指令状態が「無し」とされた後に、接着剤を回路基板166に塗布するための動作指令(図7中の動作指令No.(6))を送信する。この動作指令での、主指令は、ディスペンサ装置32による接着剤の放出の開始を指令するものであり、付随指令は、接着剤の放出量を指令するものである。なお、この付随指令には、放出速度,放出時間,接着剤の放出口の開度量等、種々の動作パラメータを採用することができる。ディスペンサ装置制御装置104は、移動装置制御装置90,カメラ装置コントローラ116と異なり、メイン統括制御装置130から送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応することができないため、ディスペンサ装置制御装置104は、動作指令を受信すると、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換し、その自身で変換した動作指令に基づいて吐出装置78の作動を制御する。そして、動作指令に基づく吐出装置78の作動によって、回路基板166上の特定の位置に接着剤168が塗布されると、その動作指令に対する返信が、ディスペンサ装置制御装置104からメイン統括制御装置130へ送信される。なお、以降の動作指令による各作業要素実行装置28等の作動の説明は、明細書が冗長となることを避けるべく省略する。
【0105】
また、各作業要素実行装置26の個別制御装置90等には、自身が認識されるための認識情報が記憶されたICチップ(図示省略)が組み込まれており、製造作業機12の起動時に、そのICチップ内に記憶された認識情報がメイン統括制御装置130に、上記LANケーブル140を介して送信されるようになっている。メイン統括制御装置130は、各個別制御装置90等からの認識情報の送信が確認されている場合にのみ、上記動作指令を送信するようになっている。なお、本製造作業機12では、認識情報がLANケーブル140を介して送信されるようになっているが、シリアル通信ケーブル134,I/Oケーブル160を介して送信されてもよく、また、有線ではなく、無線によって送信されてもよい。
【0106】
また、作業要素実行装置26等の異常等によって作業要素実行装置26等が正常に作動しない虞がある場合には、異常等が生じている作業要素実行装置26等の個別制御装置90等が、正常に作動しない虞がある旨をメイン統括制御装置130へ、シリアル通信ケーブル134を介して送信するようになっている。具体的には、図8に示した形式のデータが、正常に作動しない虞のある作業要素実行装置26等の個別制御装置90等からメイン統括制御装置130へ送信されるようになっている。そして、その旨を受信したメイン統括制御装置130は、その正常に作動しない虞がある作業要素実行装置26等だけでなく、全ての作業要素実行装置26等の個別制御装置90等への動作指令の送信を停止するようにされており、作業要素実行装置26等の異常に対応可能とされている。なお、メイン統括制御装置130は、シリアル通信ケーブル134を介した通信によって、作業要素実行装置26等の異常を把握することが可能となっているが、フェールセーフ等の観点から、異常のある作業要素実行装置26等の個別制御装置90等が、上記I/Oケーブル160を介して、作業要素実行装置26等が異常である旨をメイン統括制御装置130へ送信するようにもなっている。
【0107】
また、各作業要素実行装置26等の個別制御装置90等は、自身の作業要素実行装置26等が行い得る動作に関する情報である可能動作情報を個別に記憶するように構成されている。記憶される可能動作情報には、上述した作業要素実行装置が行い得る動作,作業要素実行装置の作動範囲,寸法等だけでなく、作業要素実行装置の性能,作業要素実行装置の制御ゲイン等が含まれる。記憶される作業要素実行装置の性能には、例えば、その装置が電磁モータを有している場合にはその電磁モータの出力性能,その装置が減速機を有している場合にはその減速機の減速比等が含まれる。また、記憶される制御ゲインには、例えば、装置が電磁モータを有している場合にはその電磁モータへの供給電力を決定する際の制御ゲイン等が含まれる。
【0108】
各作業要素実行装置の個別制御装置90等に記憶されている可能動作情報は、個別制御装置90等から補助統括コントローラ136に、上記LANケーブル140を介して送信され、補助統括コントローラ136において記憶されるようになっている。補助統括コントローラ136に記憶される可能動作情報は、上述したように、ソースデータに基づいて動作指令を作成する際に利用されるだけでなく、バックアップ等に役立てることが可能となっている。また、補助統括コントローラ136において、例えば、搬送装置26の搬送モータ52の制御ゲインが記憶されているような場合には、その制御ゲインを変更し、その変更された制御ゲインに関する情報を、搬送装置制御装置112に送信することで、搬送装置26の搬送モータ52の制御ゲインを変更することが可能となる。
【0109】
また、作業要素実行装置26等の個別制御装置90等は、作業要素実行装置26等の本体部、つまり、作業要素を実際に実行し作動する本体部に内蔵されていたり、製造作業機12の内部に位置しており、個別制御装置90等のプログラムの変更,バージョンアップ等の実行のために、個別制御装置90等に直接アクセスし難い。そこで、本製造システム10においては、変更等を施したプログラム等を、補助統括コントローラ136から、LANケーブル140を介して各作業要素実行装置26等の個別制御装置90等へ送信することが可能とされている。
【0110】
<各制御装置の機能構成>
メイン統括制御装置130,補助統括制御装置118および各作業要素実行装置26等の個別制御装置90等は、各々の実行処理に鑑みれば、図9に示すような機能構成を有するものと考えることができる。図から解るように、メイン統括制御装置130は、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするメイン統括コントローラ170を備えており、そのメイン統括コントローラ170は、製造作業機12の作動状態を監視する機能部として、製造作業機監視部172を、作業要素実行装置26等の個別制御装置90等からの認識情報を取得することで、動作指令の送信可能な作業要素実行装置26等を認識する作業要素実行装置認識部174を、個別制御装置90等と通信する機能部として、統括インタフェイス部176を、動作指令の送信処理を実行する機能部として、指令送信処理部178を、作業要素実行装置26等が正常に作動しない虞がある場合に動作指令の送信を停止する機能部として、動作指令送信停止部180を、複数の動作指令を記憶する機能部として、動作指令記憶部182を、それぞれ有している。
【0111】
補助統括制御装置118の補助統括コントローラ136は、ソースデータの外部からの入力を受け付ける機能部として、ソースデータ入力受付部184を、ソースデータを記憶する機能部として、ソースデータ記憶部186を、ソースデータに基づいて動作指令を作成する機能部として、動作指令作成部188を、全ての作業要素実行装置26等の可能動作情報を統括して記憶する機能部として、可能動作情報統括記憶部190を、可能動作情報の外部からの入力を受け付ける機能部として、可能動作情報入力受付部192を、作業要素実行装置26等の個別制御装置90等のプログラムを変更する機能部として、プログラム変更部194を、それぞれ有している。
【0112】
移動装置制御装置90,装着装置制御装置100,ディスペンサ装置制御装置104,供給装置制御装置108,搬送装置制御装置112は、それぞれ、CPU,ROM,RAM等を備えたコンピュータを主体とするコントローラを備えている。具体的には、移動装置制御装置90は移動装置コントローラ200を、装着装置制御装置100は装着装置コントローラ202を、ディスペンサ装置制御装置104はディスペンサ装置コントローラ204を、供給装置制御装置108は供給装置コントローラ206を、搬送装置制御装置112は搬送装置コントローラ208を、それぞれ備えている。それら移動装置コントローラ200,装着装置コントローラ202,ディスペンサ装置コントローラ204,供給装置コントローラ206,搬送装置コントローラ208およびカメラ装置コントローラ116は、それぞれ、メイン統括コントローラ170および補助統括コントローラ136と通信する機能部として、個別インタフェイス部210を、作業要素実行装置90等の認識情報を格納する記憶部として、認識情報格納部212を、動作指令に基づいて作業要素実行装置90等の作動を制御する機能部として、作動制御部214を、作業要素実行装置90等の可能動作情報を個別に記憶する機能部として、可能動作情報個別記憶部216を、それぞれ有している。さらに、装着装置コントローラ202,ディスペンサ装置コントローラ204,供給装置コントローラ206,搬送装置コントローラ208は、それぞれ、メイン統括制御装置130からの動作指令を自身の個別制御装置90等で対応可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換する機能部として、指令変換部218も有している。
【0113】
メイン統括コントローラ170の製造作業機監視部172は、個別制御装置90等からI/Oケーブル160を介して作業要素実行装置26等が異常である旨の送信を受信するとともに、上記複数のスイッチ162のON/OFF情報を受信するように構成されており、それらの受信情報に基づいて指令送信処理部178に各種指令,作業要素実行装置26等の作動状態等を送信するように構成されている。さらに、製造作業機監視部172は、上記複数の表示灯164にON/OFF指令を送信するように構成されている。また、
統括インタフェイス部176は、個別制御装置90等の個別インタフェイス部210との間で、1のプロトコルに従って、動作指令,動作指令に対する返信,作業要素実行装置26等の異常等を通信可能とされており、作業要素実行装置26等の異常を動作指令送信停止部180に、動作指令に対する返信を指令送信処理部178に送信するように構成されている。
【0114】
指令送信処理部178は、動作指令記憶部182に記憶されている複数の動作指令の送信処理を、順次、実行するように構成されている。つまり、指令送信処理部178において、作業要素実行装置26等を統括して制御する統括制御方法の指令送信処理工程が実行される。指令送信処理部178は、1つの動作指令の送信処理を実行し、その1つの動作指令に対する返信を統括インタフェイス部176を介して受信した後に、その1つの動作指令の次に送信すべき動作指令の送信処理を実行するように構成されている。なお、指令送信処理部178は、作業要素実行装置認識部174によって認識された作業要素実行装置26等へのみ動作指令の送信処理を実行するように構成されており、作業要素実行装置認識部174は、作業要素実行装置26等から認識情報を取得した場合に作業要素実行装置を認識した旨を指令送信処理部178に送信するように構成されている。また、動作指令送信停止部180は、作業要素実行装置26等の異常を統括インタフェイス部176を介して受信した場合に、指令送信処理部178による動作指令の送信処理を停止するように構成されている。
【0115】
補助統括コントローラ136のソースデータ入力受付部184は、本製造作業機12の各制御装置130等とは異なる制御装置,記憶媒体等の外部装置に接続可能とされており、外部装置からソースデータを入力することが可能となっている。そのソースデータ入力受付部184に入力されたソースデータは、ソースデータ記憶部186に記憶されるようになっている。動作指令作成部188は、ソースデータ記憶部186に記憶されているソースデータに基づいて、特定のプログラミング言語に従った動作指令を作成し、その作成した動作指令をメイン統括コントローラ170の動作指令記憶部182に送信するように構成されている。可能動作情報統括記憶部190は、作業要素実行装置26等の各々の可能動作情報を、可能動作情報入力受付部192を介して、作業要素実行装置26等の各々の個別制御装置90から受信するとともに、その情報を記憶するように構成されており、動作指令作成部188は、可能動作情報統括記憶部190に記憶されている可能動作情報を参照して、動作指令を作成するように構成されている。つまり、動作指令作成部188において、作業要素実行装置26等を統括して制御する統括制御方法の動作指令作成工程が実行されるとともに、可能動作情報入力受付部192において、統括制御方法の可能動作情報取得工程が実行される。なお、可能動作情報入力受付部192も、外部装置に接続可能とされており、外部装置から可能動作情報を入力することが可能となっている。また、プログラム変更部194も、外部装置に接続可能とされており、外部装置からプログラムを受信し、その受信したプログラムを、LANケーブル140を介して、メイン統括制御装置130,作業要素実行装置26等の個別制御装置90等に送信することが可能とされている。
【0116】
個別制御装置90等の各コントローラ200等の個別インタフェイス部210は、メイン統括制御装置130の統括インタフェイス部176との間で、1のプロトコルに従って、動作指令,動作指令に対する返信,作業要素実行装置26等の異常等を通信可能とされるとともに、補助統括コントローラ136の可能動作情報入力受付部192との間でも、可能動作情報個別記憶部216に記憶されている可能動作情報を通信可能とされている。指令変換部218は、個別インタフェイス部210が受信した動作指令を自身の個別制御装置100等が理解可能なプログラミング言語に変換するように構成されている。つまり、指令変換部218において、作業要素実行装置を個別に制御する個別制御方法の指令変換工程が実行される。なお、製造作業機12では、指令変換部218が個別制御装置100等内に設けられているが、指令変換部218と同等の機能を有する指令変換装置を個別制御装置100等の外部に設けてもよい。ただし、指令変換部218と同等の機能を有する指令変換装置が個別制御装置100等の外部に設けられる場合には、その指令変換装置に個別インタフェイス部が設けられ、指令変換装置と統括制御装置との間で、1のプロトコルに従って、動作指令,動作指令に対する返信,作業要素実行装置26等の異常等が通信されることになる。
【0117】
装着装置コントローラ202,ディスペンサ装置コントローラ204,供給装置コントローラ206,搬送装置コントローラ208の作動制御部214は、指令変換部218によって変換された動作指令に基づいて作動デバイスの作動を制御するように構成されており、移動装置コントローラ200,カメラ装置コントローラ116の作動制御部214は、個別インタフェイス部210が受信した動作指令に基づいて作動デバイスの作動を制御するように構成されている。また、認識情報格納部212には、認識情報が格納されており、個別インタフェイス部210を介して、格納されている認識情報が、メイン統括コントローラの作業要素実行装置認識部174に送信されるようになっている。
【0118】
また、メイン統括コントローラ170による処理、具体的には、動作指令を送信するための処理、さらに具体的に言えば、動作指令を送信するべく製造作業機の作動状態を監視するための処理を実行するための送信プログラムは、グラフィック型のプログラミング言語によって記述されている。一方、補助統括コントローラ136による処理、具体的には、動作指令作成部による処理を実行するための作成プログラムは、構造型のプログラミング言語によって記述されている。グラフィック型のプログラミング言語は、一般的に、構造型のプログラミング言語より容易なプログラミング言語とされており、高水準なプログラミング言語と考えられている。つまり、送信プログラムの変更は、比較的容易に行うことが可能とされている。なお、本製造システム10での送信プログラムのプログラミング言語はラダー言語とされており、作成プログラムのプログラミング言語はC言語とされている。
【0119】
<作業要素実行装置の交換>
本製造システム10においては、図10に示すように、搬送装置26,供給装置30,移動装置40,カメラ装置38のベースカメラ34は、作業機本体24に着脱可能とされており、装着装置28,ディスペンサ装置32,カメラ装置38のヘッドカメラ36は、移動装置40のスライダ56に着脱可能とされている。それら作業要素実行装置26等は、ワンタッチで取付けおよび取り外し可能なものもあれば、数本のボルトによって固定されるものもあるが、いずれの作業要素実行装置26等も、作業機本体24若しくはスライダ56に容易に取付けおよび取り外し可能なものとされている。
【0120】
また、装着装置28、若しくはディスペンサ装置32が取付けられる位置、つまり、スライダ56には、それら装着装置28,ディスペンサ装置32の代わりに、他の作業要素実行装置を取付けることが可能とされている。具体的に言えば、例えば、高周波による熱処理を実行する高周波ウェルダー220,レーザー加工を実行するレーザー発信装置222,UV照射による処理を実行するUV照射装置224,ホットエアーを送風することで熱処理を実行するホットエアー送風装置226,ねじ締め処理を実行するねじ締め装置228,ねじの保持・離脱および、ねじを保持した状態でのねじ締め処理を実行するねじ装着・ねじ締め装置230,2つのディスペンサノズルを有し、2種類の補助剤の放出を実行するダブルディスペンサ装置232,他の部材を保持・離脱および部材の保持位置の調整を実行する装着装置234,クリームはんだ印刷装置236等に交換することが可能とされている。したがって、例えば、新たな製品を製造する必要が生じ、回路基板への装着作業の代わりに、ある基材に部品をねじによって固定させるための作業を行うことが必要となった場合には、製造作業機自体を変更するのではなく、ディスペンサ装置32をねじ装着・ねじ締め装置230に交換することで製造作業を変更することが可能となる。さらに言えば、上記製造作業機12での製造作業は組立作業であったが、作業対象物に対して何らかの加工・処理等を施すような作業を製造作業として実行できるように、作業要素実行装置を変更してもよい。詳しく言えば、プレス作業等の作業対象物を変形させる作業、切断作業等の作業対象物の一部を取り除く作業、切削作業等の作業対象物を成形する作業、レーザ,プラズマ等による作業対象物の表面改質作業、研磨等の表面仕上作業等の作業、固着,硬化等の目的で作業対象物に光線,紫外線,電磁波等を照射等する作業等の種々の作業を実行できるように、作業要素実行装置を変更することが可能である。つまり、本製造システムによれば、作業要素実行装置を変更することで、多岐にわたる製造作業を実行することが可能となる。
【0121】
また、製造作業機12では、上述したように、スライダ56に2つの作業要素実行装置を取り付けることが可能とされており、それら2つの作業要素実行装置の種類によって、それら2つの作業要素実行装置を協調させて作動させることも可能である。2つの作業要素実行装置による協調作業とは、例えば、一方の作業要素実行装置によって作業対象物を把持等によって固定しつつ、他の作業要素実行装置によって加工・処理等を行うものであり、あたかも両手で作業を行う際に、一方の手で作業対象物がズレないように押さえつつ、他方の手で加工・処理等を行うことが可能である。具体的には、例えば、スライダ56に装着装置28とレーザー発信装置222とを取付けた場合に、装着装置28によって基材を押さえつつ、レーザー発信装置222によって基材にレーザー加工を実行することが可能である。また、例えば、スライダ56に装着装置28とねじ装着・ねじ締め装置230とを取付けた場合に、装着装置28によって基材を押さえつつ、ねじ装着・ねじ締め装置230によってねじ締め処理を実行することが可能である。
【0122】
また、供給装置30の代わりに、他の種類の供給装置、具体的には、例えば、テープフィーダ240,ボールフィーダ,ねじ供給装置,段積みユニット(図示省略)等を取付けることが可能とされている。搬送装置26の代わりには、他の種類の搬送装置、具体的には、例えば、モジュールタイプのダブルコンベア242,シングルコンベア,昇降機能付のコンベア(図示省略)等を取付けることが可能とされている。また、搬送装置26の代わりに、図11に示すリフトアンドキャリー型の搬送装置であるキャリア243を取付けることが可能とされている。このキャリア243は、昇降装置244によって保持台245を上昇させることで作業対象物246を持ち上げ、その状態において運搬装置248によって搬送方向に移動させる構造とされている。つまり、キャリア243は、比較的重い作業対象物であっても適切に搬送することが可能となっている。さらに、搬送装置26の代わりに、ピックアンドプレース型の搬送装置(図示省略)を取り付けることも可能である。ピックアンドプレース型の搬送装置は、簡単に言えば、吸着によって作業対象物を持ち上げ、その状態において搬送方向に移動させる構造とされており、比較的脆い構造の作業対象物であっても適切に搬送することが可能となっている。また、ヘッドカメラ36およびベースカメラ34も、解像度,撮像範囲等の異なる他のカメラに取り替えることが可能とされている。
【0123】
製造作業機12を構成する搬送装置26,装着装置28等の6つの作業要素実行装置26等と交換可能な上記複数の作業要素実行装置220等の各々は、それら6つの作業要素実行装置26等と同様に、自身の作動を制御する個別制御装置を有している。そして、交換可能な上記複数の作業要素実行装置220等の個別制御装置の多くは、メイン統括制御装置130によって送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応可能とされている。また、メイン統括制御装置130によって送信される動作指令を規定するプログラミング言語に対応することのできない個別制御装置は、上記装着装置制御装置100等と同様に、自身が受信した動作指令を自身が扱うことが可能なプログラミング言語に従った動作指令に変換する機能を有しており、自身で変換した動作指令に基づいて作業要素実行装置の作動を制御するように構成されている。つまり、製造作業機12を構成する作業要素実行装置26等を別の作業要素実行装置220等に交換しても、具体的には、上述したように、ディスペンサ装置32をねじ装着・ねじ締め装置230に交換しても、メイン統括制御装置130は、従来のプログラミング言語に従った動作指令をねじ装着・ねじ締め装置230の個別制御装置に送信すればよい。
【0124】
さらに、交換可能な上記複数の作業要素実行装置220等の個別制御装置の多くは、各作業要素実行装置の可能動作情報が記憶される可能動作情報個別記憶部を有しており、可能動作情報個別記憶部に記憶されている可能動作情報を補助統括コントローラ136の可能動作情報統括記憶部190に送信する事が可能とされている。また、交換可能な作業要素実行装置の個別制御装置が可能動作情報個別記憶部を有していないものであっても、外部装置から補助統括コントローラ136の可能動作情報入力受付部192に可能動作情報を入力することが可能とされているため、可能動作情報個別記憶部を有していない作業要素実行装置の可能動作情報を可能動作情報統括記憶部190に記憶させることが可能となっている。つまり、製造作業機12を構成する作業要素実行装置26等が別の作業要素実行装置220等に交換されても、動作指令作製時にその別の作業要素実行装置の可能動作情報を参照することが可能となっている。
【0125】
また、可能動作情報統括記憶部190に種々の作業要素実行装置の可能動作情報を予め格納しておいて、動作指令作成部188が、必要に応じて可能動作情報を参照しつつ、可能動作情報に基づいて動作指令を作成するように構成することも可能である。具体的には、例えば、起動時に送信される作業要素実行装置の認識情報にその作業要素実行装置の認識IDを含んでおき、その識別IDとその作業要素実行装置の可能動作情報との対応表を、可能動作情報統括記憶部190に記憶させておく。そして、動作指令作成部188が、識別IDに基づいて可能動作情報を参照するように構成する。このような構成によって、可能動作情報統括記憶部190に各作業要素実行装置の可能動作情報を記憶させておき、動作指令作製時等に可能動作情報を利用することも可能である。なお、作業要素実行装置から送信される認識情報に識別IDが含まれていない場合であっても、作業要素実行装置の認識IDを、バーコード等を利用して、統括制御装置に入力することで、識別IDに基づいて可能動作情報を参照することが可能となる。また、例えば、製造システムが複数の製造作業機によって構成されるような場合には、複数の統括制御装置をまとめて制御するホストコンピュータを搭載する製造システムが採用される可能性がある。このような製造システムにおいては、例えば、上記対応表等の情報をホストコンピュータに記憶させておき、各統括制御装置が、必要な情報をホストコンピュータから入手するように構成することも可能である。
【0126】
また、本製造作業機12を構成する6つの作業要素実行装置26等の代わりに取り付け可能な上記複数の作業要素実行装置220等の各々は、上記シリアルケーブル134,LANケーブル140,I/Oケーブル160を接続することが可能とされている。さらに言えば、カメラ装置38を除く他の全ての作業要素実行装置26,220等の各々において、その各々の個別制御装置は、作業要素を実行する本体部の内部に内蔵もしくは装着されている。つまり、カメラ装置38を除く他の全ての作業要素実行装置26,220等はユニット化されている。したがって、作業要素実行装置を交換する場合、具体的には、ディスペンサ装置32をねじ装着・ねじ締め装置230に変更する場合には、各ケーブル134,140,160をディスペンサ装置32からねじ装着・ねじ締め装置230に付け替えることで、作業要素実行装置の交換を完了することが可能となる。
【0127】
なお、作業要素実行装置を変更する際には、必要に応じて、製造作業機の作動状態の監視形態を変更したい場合があり、このような場合には、上記送信プログラムを変更することが望ましいことがある。この送信プログラムは、上述したように比較的容易な言語であるグラフィック言語によって記述されており、容易に変更することが可能となっている。したがって、作業要素実行装置の交換に伴って、統括制御装置の送信プログラムを変更しなければならない場合であっても、大きな労力等を伴わずに作業要素実行装置を変更することが可能となっている。
【0128】
<製造システムの構築方法>
製造作業機は、上述したように、1台の作業機本体24と、その作業機本体24に組み付けられる複数の作業要素実行装置とによって構成され、作業機本体24に組み付けられる複数の作業要素実行装置は、多数の作業要素実行装置の中から選択することが可能となっている。このため、製造作業機、つまり、製造システムを構築する際には、まず、製造作業機によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて複数の作業要素実行装置を決定し、その決定された複数の作業要素実行装置を準備する必要がある。そして、準備された複数の作業要素実行装置を作業機本体24に組み付けるとともに、それら複数の作業要素実行装置が統括制御装置によって制御されるように、統括制御装置に対して設定を行なう必要がある。以下に、本製造システム10を構築する際の構築方法について、具体的に説明する。
【0129】
本製造システム10においては、製造作業機12が、回路基板上に部品を接着剤によって固着する製造作業を行なうために、複数の作業要素、具体的には、回路基板の搬送,接着剤の塗布,部品の供給,部品の保持・離脱,部品等の撮像,保持位置等の移動を実行する必要がある。それら6つの作業要素を実行するためには、回路基板の搬送を実行するための搬送装置,接着剤の塗布を実行するためのディスペンサ装置,部品の供給を実行するための供給装置,部品の装着・離脱を実行するための装着装置,部品等の撮像を実行するためのカメラ装置,装着装置等を移動させるための移動装置の6台の作業要素実行装置が必要である。製造作業機を構成する作業機本体には、上記6台の作業要素実行装置を組付けることが可能とされており、本製造システム10を構築するためには、1台の作業機本体および、その作業機本体に組み付けられる6台の作業要素実行装置を準備する必要がある。
【0130】
そこで、各作業要素実行装置を準備するために、各作業要素を適切に実行可能な作業要素実行装置を決定する。詳しく言えば、回路基板の搬送を実行するための作業要素実行装置に関しては、回路基板、つまり、搬送物を適切に搬出するべく、搬送物の寸法,重量,素材等の諸元に基づいて、作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、20枚の回路基板166が載置された基板トレイ167を搬送するべく、コンベア型の搬送装置26を採用している。なお、搬送物が比較的重たい場合には、例えば、リフトアンドキャリー型の搬送装置であるキャリア243を採用してもよく、搬送物の素材が脆い素材である場合には、例えば、ピックアンドプレース型の搬送装置を採用してもよい。
【0131】
接着剤の塗布を実行するための作業要素実行装置に関しては、当然、ディスペンサ装置を採用する必要があるが、ディスペンサ装置といっても種々の性能のものが存在する。上記したディスペンサ装置においても、1種類の補助材の放出を実行可能なディスペンサ装置32と、2種類の補助剤の放出を実行可能なダブルディスペンサ装置232とが存在する。そこで、ディスペンサ装置の性能を考慮して、接着剤の塗布を実行するための作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、使用される接着剤の種類は1種類であることから、1種類の補助材の放出を実行可能なディスペンサ装置32を採用している。
【0132】
部品の装着・離脱を実行するための作業要素実行装置に関しては、部品を適切に保持・離脱するべく、部品の寸法,重量,素材等の諸元に基づいて、作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、吸着型の装着装置28を採用しているが、装着する部品によっては、メカチャック型の装着装置を採用してもよい。また、部品の供給を実行するための作業要素実行装置に関しては、供給される部品の寸法,重量,荷姿等の諸元に基づいて作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、トレイユニット型の供給装置30を採用しているが、供給部品によっては、フィーダ型の供給装置であるテープフィーダ240を採用してもよい。また、部品等の撮像を実行するための作業要素実行装置に関しては、解像度,撮像範囲等のカメラ装置の性能を考慮して作業要素実行装置を決定する。本製造システム10では、ヘッドカメラ36とベースカメラ38を含むカメラ装置38を採用している。
【0133】
ちなみに、装着装置等の作業ヘッド装置を移動させるためのヘッド移動装置、つまり、上記移動装置40は、作業機本体24に予め組み付けられており、移動装置40と作業機本体24とによって構成されるメインフレームとして流通している場合がある。このため、保持位置等の移動を実行するための作業要素実行装置に関しては、予め作業機本体24に組みつけられているものを採用する。また、そのメインフレームには、メイン統括制御装置130と補助統括制御装置118とによって構成される統括制御装置が予めセットされており、メインフレームと統括制御装置とによって構成される本体装置として流通しているものがある。そこで、本製造システム10では、その移動装置40と作業機本体24とメイン統括制御装置130と補助統括制御装置118とによって構成される本体装置を採用している。
【0134】
そして、上述したように、本体装置に組付けるための5つの作業要素実行装置26等が決定されると、1台の本体装置を準備するための工程(以下、「本体装置準備工程」という場合がある),5つの作業要素実行装置26等を準備するための工程(以下、「作業要素実行装置準備工程」という場合がある),本体装置のメインフレームに5つの作業要素実行装置26等を組付けるための工程(以下、「作業要素実行装置組付工程」という場合がある),本体装置の統括制御装置に対して組立作業の設定を行なう工程(以下、「統括制御装置設定工程」という場合がある)が実行されて、本製造システム10が構築される。
【0135】
具体的に言えば、本体装置準備工程において、本製造システムのユーザーは、本体装置を製造しているある特定のメーカから本体装置を購入することが可能である。また、その特定のメーカとは異なるメーカ(その特定のメーカと区別するべく、「サードベンダ」という場合がある)がその特定のメーカから本体装置を購入し、ユーザーがそのサードベンダから本体装置を購入することも可能である。作業要素実行装置準備工程においては、ユーザーが、本体装置を製造している上記メーカ、若しくは、サードベンダから作業要素実行装置を購入することが可能であり、また、ユーザー自身が作業要素実行装置を製造することも可能である。
【0136】
ただし、先に述べたように、統括制御装置による制御時にその統括制御装置によって作業要素実行装置が認識されるためには、作業要素実行装置に認識情報が記憶されたICチップが組み込まれていなければならない。このため、上記メーカ以外のものが作業要素実行装置を製造する場合には、そのメーカ以外のものは、上記メーカから認識情報が記憶されたICチップを購入し、作業要素実行装置にそのICチップを組み込んで製造する必要がある。さらに、作業要素実行装置は、特定の通信プロトコルに従って、統括制御装置と動作指令等を通信可能とされるとともに、受信した動作指令を自身の有する個別制御装置が理解可能なプログラミング言語に変換するように構成される必要がある。このため、上記メーカ以外のものが作業要素実行装置を製造する場合には、上記メーカから作業要素実行装置の仕様,通信プロトコル等の開示をうける必要がある。なお、上記メーカから購入する作業要素実行装置は、必ずしもそのメーカで製造されている必要はない。つまり、上記メーカが製造した作業要素実行装置をそのメーカから購入してもよく、そのメーカがサードベンダから購入した作業要素実行装置をそのメーカから購入してもよい。このように、本体装置準備工程および作業要素実行装置準備工程には、種々の手法があり、各工程によって構成される製造システムの構築方法には様々なパターンがある。以下に、製造システムの構築方法の様々なパターンについて説明する。
【0137】
i)本体装置および作業要素実行装置のメーカからの購入による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置もメーカから購入することで準備する。つまり、本構築方法においてユーザは、1つの業者から本体装置および作業要素実行装置を購入することになる。そして、作業要素実行装置組付工程において、準備した本体装置のメインフレームに、準備した作業要素実行装置が組付けられる。メインフレームには、作業要素実行装置に応じて基準位置が定められており、その基準位置に作業要素実行装置が組付けられることで、作業要素実行装置の作動時の基準点が担保されるようになっている。さらに、各作業要素実行装置は、各作業要素実行装置の組付位置の空間の大きさに応じた所定の寸法内の大きさとされており、容易に組付工程が実行されるようになっている。作業要素実行装置の組付位置の空間とは、例えば、搬送装置であれば、作業機本体24のフレーム部20を左右方向に貫通するスペースであり、供給装置であれば、フレーム部20の前端部に位置するスペースである。また、統括制御装置設定工程では、先に述べたソースデータが統括制御装置に入力される。ソースデータの入力に関しては、先に詳しく述べていることから簡単に説明すると、図4に示す基本コード,図5に示す単位作業コード,図6に示す動作コードが補助統括制御装置118のソースデータ入力受付部184に入力される。さらに、統括制御装置設定工程において、先に述べた作業要素実行装置の可能動作情報,供給部品の寸法・荷姿等の諸元等が入力される場合もある。このように4つの工程が実行されることで、製造システムが構築される。
【0138】
ちなみに、本構築方法をメーカからの視点において示すことも可能である。メーカから視点における本構築方法での本体装置準備工程では、メーカは本体装置を製造することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置をも製造することで準備する。そして、メーカが、自社製造の本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程,統括制御装置設定工程を実行することで、製造システム10を製造する。つまり、本構築方法をメーカが実行する場合には、ユーザーはメーカから製造システム10を購入することになる。この方法によって、製造システムを構築する場合には、製造システム全体がメーカにおいて製造されることから、メンテナンス等に関して便利である。また、メーカは、製造システムを構築するためのノウハウを得ることが可能であり、製造システム構築方法のノウハウを蓄積していくことが可能となる。なお、この構築方法による概念図を図12(a)に示しておく。
【0139】
また、メーカは、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置をサードベンダから購入することで準備することも可能である。この場合に、メーカは、自社製造の本体装置および購入した作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程,統括制御装置設定工程を実行することで、製造システム10を製造し、ユーザーはその製造システム10を購入することになる。この方法によって、製造システムを構築する場合には、技術力の高いサードベンダ製の作業要素実行装置を製造システムに組み込むことが可能となる。また、サードベンダ側からすれば、販路拡大といったメリット得ることが可能であり、メーカ側からすれば、製造システム構築方法のノウハウを蓄積していくことが可能である。この構築方法による概念図を図12(b)に示しておく。なお、作業要素実行装置を製造するサードベンダは、認識情報が記憶されたICチップの購入をし,通信プロトコル等の開示をうける必要がある。
【0140】
ii)本体装置および作業要素実行装置のサードベンダからの購入による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をサードベンダから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置もサードベンダから購入することで準備する。つまり、本構築方法においても、ユーザは1つの業者から本体装置および作業要素実行装置を購入することになる。ちなみに、サードベンダから購入される本体装置は、サードベンダがメーカから購入したものであり、サードベンダから購入される作業要素事項装置は、サードベンダが自社製造したものである。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付,工程統括制御装置設定工程が実行されることで、製造システム10が構築される。
【0141】
また、本構築方法もサードベンダからの視点において示すことが可能である。サードベンダから視点における本構築方法での本体装置準備工程では、サードベンダは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置を製造することで準備する。そして、サードベンダが、購入した本体装置および自社製造の作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程,統括制御装置設定工程を実行することで、製造システム10を製造し、ユーザーはサードベンダから製造システム10を購入するのである。この方法によって、製造システムを構築する場合にも、技術力の高いサードベンダ製の作業要素実行装置を製造システムに組み込むことが可能となる。また、メーカ側からすれば、サードベンダの高い技術力を利用して、不得意分野への進出を図ることが可能であり、不得意分野のユーザ対応をサードベンダに任せることが可能となる。サードベンダ側からすれば、製造システム構築方法のノウハウを蓄積していくことが可能である。なお、この構築方法による概念図を図12(c)に示しておく。
【0142】
iii)本体装置のメーカからの購入および作業要素実行装置のサードベンダからの購入による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置をサードベンダから購入することで準備する。つまり、本構築方法において、ユーザは、ある特定の業者から本体装置を購入し、作業要素実行装置を、そのある特定の業者とは異なる業者から購入することになる。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付,工程統括制御装置設定工程が実行されることで、製造システム10が構築される。この方法によって、製造システムを構築する場合にも、技術力の高いサードベンダ製の作業要素実行装置を製造システムに組み込むことが可能となる。また、メーカ側からすれば、多品種少量生産となりがちな作業要素実行装置をサードベンダに任せ、汎用性の高い本体装置を販売することが可能となる。なお、この構築方法による概念図を図13(a)に示しておく。
【0143】
iv)本体装置のメーカからの購入および作業要素実行装置の自社製造による製造システム構築方法
本構築方法での本体装置準備工程では、ユーザーは本体装置をメーカから購入することで準備するとともに、作業要素実行装置準備工程において、作業要素実行装置を自ら製造することで準備する。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付,工程統括制御装置設定工程が実行されることで、製造システム10が構築される。この方法によって、製造システムを構築する場合には、ユーザは、製造物に関する情報を他のものに知られることなく、製造システムを構築することが可能となり、製造物に関する情報の秘匿性を確保することが可能となる。また、メーカ側からすれば、多品種少量生産となりがちな作業要素実行装置をユーザに任せ、汎用性の高い本体装置を販売することが可能となる。この構築方法による概念図を図13(b)に示しておく。なお、ユーザーは、認識情報が記憶されたICチップの購入をし,通信プロトコル等の開示をうける必要がある。
【0144】
<複数の製造作業機によって構成される製造システム>
上記製造システム10は1台の製造作業機によって構成されているため、比較的少ない製造工程しか行うことができないが、上記製造作業機12と同じ製造作業機,上記製造作業機12から作業要素実行装置を交換した製造作業機等を複数配列し、作業対象物を上流側に配置された製造作業機から下流側に配置された製造作業機に搬送しつつ、作業対象物に対して複数の製造作業機の各々による製造作業を順次実行するような製造システムを構築することで、比較的多くの製造工程を行うことが可能となる。つまり、ある程度複雑な製造物を製造することが可能となる。また、製造物に応じて、最適な作業工程を構築し、その最適化された作業工程を適切に実行できるように、製造作業機および、その製造作業機を構成する複数の作業要素実行装置を選択することが可能である。本明細書では、そのように構成された製造システムとして、組立システムを採用し、製造作業としての組立作業を製造作業機毎に実行することで、LED照明,パワーモジュール,太陽電池の組立を実行するシステムについて以下に説明する。
【0145】
i)LED照明組立システム
まず、図14に、LED照明252の分解図を示す。LED照明252は、有底円筒状の電極ソケット254と、その電極ソケット254の内部に設けられる電極256と、電極ソケット254の上端に嵌合される円筒状のケース258と、そのケース258内部に設けられる電極付の回路基板260と、ケース258の上端部に接着剤によって固着されるヒートシンク262と、そのヒートシンク262の上端面に配設される電極付のLED基板264と、そのLED基板264をヒートシンク262に固定するためのねじ266と、ヒートシンク262の上端部に接着剤で固定される半球状のカバー268とによって構成されている。
【0146】
LED照明252を製造するためのシステムを構築する場合には、そのシステムに必要となる製造作業機の数を決定する必要がある。つまり、本体装置準備工程の実行時、若しくは、実行前には、製造システムに必要となる製造作業機の数を決定する製造作業機数決定工程を行なう必要がある。この製造作業機数決定工程は、本体装置準備工程に含まれるものであってもよく、本体装置準備工程とは別のものであってもよい。製造作業機数決定工程においては、製造物としてのLED照明252を構成する複数の構成部品を組付順に並べ、各構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出する。そして、1以上の作業要素毎に、構成部品に対して1以上の作業要素を実行する場合の作業内容を決定する。このように、各作業要素毎に作業内容を決定すると、LED照明252の製造において必要となる作業内容が複数決定される。これら複数の作業内容が順次実行されることで、LED照明252が製造されるのである。そこで、一連の複数の作業内容のうちで連続する1以上の作業内容であって、一台の製造作業機によって実行可能な1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏め、1連の複数の作業内容を1以上の製造作業に集約する。その集約された複数の製造作業の数が、システムに必要となる製造作業機の数であり、この数の製造作業機によって、製造システムを構築することが可能となる。
【0147】
つまり、製造作業機数決定工程においては、複数の構成部品の組付順を決定する構成部品組付順決定工程と、構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出する構成部品対応作業要素抽出工程と、構成部品に対して1以上の作業要素を実行する場合の作業内容を決定する作業内容決定工程と、1連の複数の作業内容を1以上の製造作業に集約することで製造作業を決定する製造作業決定工程とが、実行されることでシステムに必要となる製造作業機の数が決定されるのである。なお、製造物を構成する複数の構成部品の組付順には、1種類しかない場合もあれば、複数種類存在する場合もある。組付順が複数種類存在する場合には、複数種類の組付順の各々に応じて、複数の作業内容の順番が異なるため、製造作業の内容および製造作業の数も異なる場合がある。つまり、組付順を変更することで、作業内容の順序を入れ替えることが可能となり、製造作業の内容,製造作業の数等、ひいては、製造作業機の数を変更することが可能となっている。また、製造作業決定工程において複数の作業内容のうちで連続する1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏める際に、一台の製造作業機によって最大限実行可能な1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏めてもよく、装着作業に関する作業内容と装着作業に対する補助的な作業に関する作業内容とのいずれかを含むように、1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏めてもよい。なお、装着作業に対する補助的な作業とは、装着作業に先立って実行される作業,装着されたものに対して実行される作業等が該当する。
【0148】
具体的に言えば、LED照明252は、電極ソケット254,電極256,ケース258,回路基板260,ヒートシンク262,LED基板264,ねじ266,カバー268の8つの構成部品によって構成されるものであり、これら8つの構成部品は、組付順に並べられると、図15に示すように並べられる。1番最初に組み付けられる電極ソケット254に対して実行されるべき作業要素は、電極ソケット254の供給、および保持・離脱であり、次に組み付けられる電極256に対して実行されるべき作業要素は、電極256の供給、および保持・離脱である。他の構成部品に関して言えば、ケース258,回路基板260,LED基板264に対して実行されるべき作業要素は、各構成部品の供給、および保持・離脱であり、ねじ266に対して実行されるべき作業要素は、ねじ266の供給、および保持・ねじ締めである。さらに、ヒートシンク262,カバー268に対して実行されるべき作業要素は、各構成部品を装着する箇所への接着剤の塗布,各構成部品の供給、および保持・離脱,接着剤の乾燥である。そして、それら複数の作業要素のうちの1以上のものの各々に対応して、図15に示す作業内容が決定される。なお、各構成部品に対して搬送作業も必要であるが、全ての構成部品に対して必要な作業であるため図15への記載を省略する。
【0149】
次に、図15に示す一連の複数の作業内容のうちの連続する1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏め、一連の複数の作業内容を1以上の製造作業に集約する。この際、本組立システムにおいては、一台の製造作業機によって最大限実行可能な1以上の作業内容を1つの製造作業として取り纏める。具体的には、例えば、電極ソケット254に対する作業内容と電極256に対する作業内容とが連続しているが、各作業内容には装着作業が含まれている。1台の製造作業機に装着装置に関しては1台しか取り付けることができず、その1台の装着装置が1種類の部品だけを装着させるように構成されている場合には、電極ソケット254に対する作業内容と電極256に対する作業内容とを1台の製造作業機で実行することはできない。このため、電極ソケット254に対する作業内容を1つの製造作業として取り纏め、電極256に対する作業内容を1つの製造作業として取り纏める。ケース258,回路基板260に対する作業内容も、同様に、1つの製造作業として取り纏める。
【0150】
ヒートシンク262に対する作業内容には、装着作業およびその装着作業に対する補助的な作業が2種類含まれている。1台の製造作業機には、装着作業に対する補助的な作業を実行可能な組付け補助ヘッド装置に関しては1台しか取り付けることができないため、ヒートシンク262に対する作業内容の全てを1台の製造作業機で実行することはできない。このため、ヒートシンク262に対する作業内容のうちの接着剤の乾燥作業を除く3つの作業内容を1つの製造作業として取り纏め、ヒートシンク262に対する作業内容のうちの接着剤の乾燥作業を次の製造作業において行なわせる。つまり、ヒートシンク262に対する作業内容のうちの接着剤の乾燥作業と、LED基板264に対する作業内容とを1つの製造作業として取り纏める。次のねじ266に対する作業内容には、装着作業が含まれているが、その装着作業に対する補助的な作業は含まれていない。このため、ねじ266に対する作業内容だけを1つの製造作業として取り纏めることは可能である。しかし、次のカバー268に対する作業内容には、装着作業およびその装着作業に対する補助的な作業が2種類含まれており、カバー268に対する作業内容の全てを1つの製造作業として取り纏めることはできない。そこで、カバー268に対する作業内容のうちの1種類の補助的な作業とねじ266に対する作業内容とを、1つの製造作業として取り纏め、カバー268に対する作業内容のうちの1種類の補助的な作業を除く3つの作業内容を1つの製造作業として取り纏める。
【0151】
つまり、LED照明の組立システムにおいては、1台の製造作業機に、基本的に1種類の部品の装着作業を行なわせ、装着作業に対する補助的な作業が必要な場合は、1種類の部品の装着作業と1種類の補助的な作業とを行なわせるように、一連の複数の作業内容を複数の製造作業に集約している。このようにして集約された製造作業は、(i)電極ソケット254のコンベア上への載置,(ii)電極256の電極ソケット254内への装着,(iii)ケース258の電極ソケット254への嵌合,(iv)回路基板260のケース258内への装着,(v)ヒートシンク262のケース258上端部への接着剤による固着,(vi)接着剤の乾燥およびLED基板264のヒートシンク262上端面への装着,(vii)LED基板264のねじ締結およびヒートシンク262上端部への接着剤の塗布,(viii)カバー268のヒートシンク262上端部への装着および接着剤の乾燥の8つの製造作業となる。したがって、LED照明の組立システムに必要な製造作業機の台数は8台と決定される。
【0152】
8台の製造作業機によって構成されるLED照明組立システムを構築するためには、8台の本体装置が必要であり、さらに、8台の本体装置の各々に取付けるべき作業要素実行装置が必要である。つまり、各本体装置に取付けるべき作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程の実行時、若しくは、実行前には、各本体装置に必要な作業要素実行装置を決定する作業要素実行装置決定工程を行なう必要がある。この作業要素実行装置決定工程は、作業要素実行装置準備工程に含まれるものであってもよく、作業要素実行装置準備工程とは別のものであってもよい。作業要素実行装置決定工程においては、作業要素実行装置の種類を決定する作業要素実行装置類型決定工程と、その決定された種類の作業要素実行装置のうちから、作業に適した1台の作業要素実行装置を個別に決定する個別作業要素実行装置決定工程とが実行される。作業要素実行装置類型決定工程では、実行させるべき作業内容、若しくは、その作業内容を構成する作業要素に基づいて、作業要素実行装置の種類が決定される。具体的には、例えば、装着作業を実行させる必要がある場合には、装着装置を採用し、供給作業を実行させる必要がある場合には、供給装置を採用する。採用すべき作業要素実行装置の種類が決定されても、1種類の作業要素実行装置には、複数の作業要素実行装置が存在する。つまり、例えば、供給装置といっても、供給方式の異なるもの,供給能力のことなるもの、製造会社の異なるもの等、複数の装置が存在する。このため、個別作業要素実行装置決定工程において、それら複数の装置の中から、本体装置に取り付けるべき作業要素実行装置を決定する。ちなみに、このようにして決定された個別の作業要素実行装置を、作業要素実行装置準備工程において準備するが、その決定された個別の作業要素実行装置が流通していない場合もある。このような場合には、ユーザが、自ら、その決定された個別の作業要素事項装置を製造することで準備してもよい。
【0153】
作業要素実行装置の決定方法については、先に詳しく述べていることから、製造作業として電極ソケット254のコンベア上への載置作業を実行する製造作業機に必要な作業要素実行装置の決定方法について、簡単に説明する。電極ソケット254のコンベア上への載置作業を実行する製造作業機では、電極ソケットの供給作業,電極ソケットの載置作業,電極ソケットの搬送作業が実行される。このため、作業要素実行装置類型決定工程において、1台目の本体装置に取り付けるべき作業要素実行装置に、供給装置,装着装置,搬送装置を採用する。そして、個別作業要素実行装置決定工程においては、先に述べたように、構成部品の諸元に基づいて作業要素実行装置を決定する。具体的には、装着装置、つまり、作業ヘッド装置として、保持・離脱すべき電球ソケットの諸元に基づいて、特定の吸着型装着装置を決定し、搬送装置として、搬送すべき電球ソケットの諸元に基づいて、特定のダブルコンベアを決定する。さらに、供給装置として、供給すべき電球ソケットの諸元に基づいて、特定のトレイユニット型供給装置を決定する。
【0154】
また、例えば、作業内容として装着作業に対する補助的な作業が必要な場合には、まず、その補助的な作業を実行可能な種類の作業要素実行装置を決定する。つまり、補助的な作業の内容に基づいて、補助的な作業を実行する作業要素実行装置の種類を決定する。例えば、接着剤の乾燥作業が必要な場合には、温風等を送風する装置に、ねじ締め作業が必要な場合には、ねじ締め装置に決定する。そして、決定された種類の作業要素実行装置のうちから、装置の性能を考慮して個別の作業要素実行装置を決定する。例えば、乾燥作業を実行可能な温風等を送風する装置に関しては、送風するエアーの温度,送風量等を考慮して、個別の送風装置を決定し、ねじ締め作業を実行可能な装置に関しては、ねじ締め時のトルク等を考慮して、個別のねじ締め装置を決定する。なお、作業要素実行装置を決定する際に、各作業要素実行装置の可能動作情報に基づいて本体装置に取付けるべき作業要素実行装置を決定することで、最適な作業要素実行装置を選択することが可能となる。作業要素実行装置を決定時に利用される可能動作情報は、統括制御装置に記憶されているものを利用してもよく、他の媒体に記憶,記載等されているものを利用してもよい。
【0155】
上述したように決定された8台の本体装置およびそれら8台の本体装置の各々に取付けるべき複数の作業要素実行装置を、上述した種々の手法によって準備するとともに、作業要素実行装置組付工程を行なうことで、図16に示すLED照明組立システム269が構築される。LED照明組立システム269を構成する8台の製造作業機は、最上流側(1番左側)に配置された製造作業機から順に、第1製造作業機270,第2製造作業機272,第3製造作業機274,第4製造作業機276,第5製造作業機278,第6製造作業機280,第7製造作業機282,第8製造作業機284である。第1製造作業機270,第2製造作業機272,第3製造作業機274,第4製造作業機276は、上記製造作業機12の搬送装置26をモジュールタイプのダブルコンベア242に変更するとともに、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第5製造作業機278は、上記製造作業機12の搬送装置26をモジュールタイプのダブルコンベア242に変更したものである。第6製造作業機280および第8製造作業機284は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、ディスペンサ装置32をホットエアー送風装置226に変更したものである。第7製造作業機282は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、装着装置28をねじ装着・ねじ締め装置230に、供給装置30をねじ供給装置286に変更したものである。
【0156】
なお、本LED照明252の製造工程での接着剤の塗布位置は、ケース258,若しくはヒートシンク262の上端面であるため、接着剤の塗布作業を実行する装置として、ディスペンサノズル76の角度を変更させる機能を有していないディスペンサ装置32を採用している。ただし、今後、設計変更等によってケース258等の側面への接着材の塗布作業が必要となる場合を想定して、接着剤の塗布作業を実行する装置として、ディスペンサノズルの角度を変更させる機能を有するディスペンサ装置を採用することも可能である。若しくは、ケース258等の側面への接着材の塗布作業を想定して、ケース258等のコンベア上での角度を変更可能な搬送装置を採用することも可能である。つまり、作業要素実行装置を準備する工程において、補助的な作業を実行するための装置である組付補助ヘッド装置が作業する位置,方向,角度等を考慮して、組付補助ヘッド装置と搬送装置との少なくとも一方を準備してもよい。
【0157】
次に、各製造作業機270等の統括制御装置には、各製造作業機270等において実行される製造作業に応じたソースデータが入力される。ソースデータの入力に関しては、先に詳しく述べていることから、8台の製造作業機のうちの第1製造作業機270に関するソースデータについてのみ説明する。第1製造作業機270に入力されるソースデータは、図17に示す基本コードと、図18に示す単位作業コードと、図19に示す動作コードによって構成されるものであり、それら複数のコードが第1製造作業機270の統括制御装置に入力される。それら複数のコードは、第1製造作業機270に行なわせる製造作業,その製造作業を構成する複数の作業内容,それら複数の作業内容の各々を構成する1以上の作業要素等によって作成される。第1製造作業機270の製造作業は、電極ソケット254のコンベア上への載置であり、図17〜19に示されるソースデータによれば20個の電極ソケットが載置されるようになっている。つまり、本LED照明組立システム269では、1サイクルで20個のLED照明を製造することが可能となっている。
【0158】
第1製造作業機270の製造作業は、先に述べたように、電極ソケット254の供給、電極ソケット254の載置、電球ソケット254の搬送の3つの作業内容を含んでいる。上記3種類の作業内容のうち供給作業は、製造作業の最初に1回実行され、搬送作業は、製造作業の最後に1回実行されればよいが、載置作業は20個の電極ソケット254の各々に対して繰り返し実行される。また、供給作業を構成する作業要素は、供給装置による供給であり、搬送作業を構成する作業要素は、搬送装置による搬送である。載置作業では、電球ソケット254を装着装置によって保持・離脱させるとともに、保持・離脱位置を変更させ、さらに、保持情報を取得する必要がある。このため、載置作業を構成する作業要素は、装着装置による保持・離脱,移動装置による保持・離脱位置の移動,カメラ装置による保持情報の取得である。つまり、載置作業には、3種類の作業要素が含まれている。このように、3種類の作業要素が含まれとともに、20回繰り返して実行される載置作業は、ソースデータをシンプルなものとするべく、複数の動作コードによって構成される単位作業コードとすることが望ましい。そこで、第1製造作業機270では、単位作業コードを、図18に示すように、載置作業に相当する電極ソケット載置コード,供給作業に相当する電極ソケット供給コード,搬送作業に相当する電極ソケット搬出コードの3つの単位作業コードとしている。つまり、複数の作業内容の各々が単位作業コードに対応している。
【0159】
各単位作業コードは、1以上の動作コードを含むものであり、各動作コードは単位作業コードを構成する作業内容に対応する作業要素および、その作業要素を実行するための作業要素実行装置によって構成される。具体的には、図19に示すように、電極ソケット供給コードは、電極ソケット254の載置された部品トレイを供給装置30によって供給するための動作コードによって構成され、電極ソケット搬出コードは、コンベア上に載置された電極ソケット254を搬送装置242によって第2製造作業機272に搬送するための動作コードによって構成される。そして、電極ソケット載置コードは、装着装置28を移動装置40によって電極ソケット254の供給位置に移動させるための動作コードと、電極ソケット254を装着装置28によって保持するための動作コードと、電極ソケット254を保持した装着装置28を移動装置40によってベースカメラ34上に移動させるための動作コードと、装着装置28に保持された電極ソケット254をベースカメラ34によって撮影して保持状態の情報を取得するための動作コードと、その保持状態の情報に基づいて電極ソケット254の載置位置に装着装置28を移動装置40によって移動させるための動作コードと、電極ソケット254を離脱するための動作コードとによって構成される。なお、製造作業の製造工程を複数に分割し、その分割したものをコード化したものが、基本コードである。つまり、製造作業が複数の基本コードに対応しているのである。第1製造作業機270では、1つの基本コードが、図18に示すように、1つの作業内容に対応しており、基本コードは、図17に示すように作成されるが、1つの基本コードが複数の作業内容によって構成されるように基本コードを作成してもよい。
【0160】
上述したようにして作成された複数の動作コードの各々に対して、図19に示すように、作業要素がコード化された作業要素コードと、その作業要素を実行可能な作業要素実行装置を特定する装置特定コードとを入力するとともに、さらに、動作コードによって構成される単位作業コードを、図18に示すように入力し、各単位作業コードに対応する基本コードを、図17に示すように入力することで、第1製造作業機270は、電極ソケット254をダブルコンベア242上の特定の位置に載置する製造作業を実行することが可能となる。つまり、図17〜19に示されるソースデータに基づいて複数の動作指令が作成され、それら複数の動作指令によって第1製造作業機270に取り付けられた複数の作業要素実行装置が作動するのである。
【0161】
詳しく言えば、第1製造作業機270においては、電極ソケット254の載置されたトレイを供給するための動作指令,装着装置28を電極ソケット254の供給位置に移動させるための動作指令,トレイに載置された電極ソケット254を保持するための動作指令,電極ソケット254を保持した装着装置28をベースカメラ34上に移動させるための動作指令,装着装置28に保持された電極ソケット254をベースカメラ34によって撮影してその電極ソケット254の保持状態の情報を取得するための動作指令,ダブルコンベア242上の特定の位置に装着装置28を移動させるための動作指令,ダブルコンベア242上の特定の位置で電極ソケット254を離脱するための動作指令,ダブルコンベア242上に載置された電極ソケット254を搬送するための動作指令が、順次、送信される。各動作指令に応じて各作業要素実行装置242等が各作業要素を実行することで、ダブルコンベア242上に電極ソケット254が載置され、そして、載置された電極ソケット254が第2製造作業機272に搬送されるのである。ちなみに、1サイクルにおいて20台のLED照明を製造するために、20回繰り返される動作指令があるが、説明を簡略化するべく、第1製造作業機270および、以降の製造作業機での動作指令の説明において、1台のLED照明の製造に対する動作指令を説明する。また、以下の製造作業機の各動作指令に関して、カメラ装置38,移動装置40,ダブルコンベア242への動作指令は、各製造作業機270等において略同じであることから、それらの動作指令に関する説明を省略する。
【0162】
第2製造作業機272は、基材としての電極ソケット254に電極256を装着する製造作業を行うものである。第2製造作業機272においては、電極256の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置された電極256を保持するための動作指令,電極256を電極ソケット254の内部で離脱するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、電極256が装着された電極ソケット254が第3製造作業機274に搬送される。また、第3製造作業機274は、電極256が装着された電極ソケット254内にケース258を装着する製造作業を行うものであり、第4製造作業機276は、そのケース258内に回路基板260を装着する製造作業を行うものである。第3製造作業機274および第4製造作業機276の動作指令は、上記第2製造作業機272の動作指令と似通っているため、それらの説明は省略する。
【0163】
第5製造作業機278は、ケース258の上端部に接着剤によってヒートシンク262を固着する製造作業を行うものである。第5製造作業機278においては、接着剤をケース258の上端部に塗布するための動作指令,ヒートシンク262の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置されたヒートシンク262を保持するための動作指令,ヒートシンク262を接着剤の塗布されたケース258の上端部で離脱するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、ヒートシンク262の接着剤による固着作業が完了したLED照明252が第6製造作業機280に搬送される。
【0164】
第6製造作業機280は、第5製造作業機278において塗布された接着材を乾燥させるとともに、ヒートシンク262の上端面にLED基板264を載置する製造作業を行うものである。第6製造作業機280においては、ケース258とヒートシンク262とを接着する接着剤を乾燥させるための動作指令,LED基板264の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置されたLED基板264を保持するための動作指令,LED基板264をヒートシンク262の上端面で離脱するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、乾燥作業およびLED基板264の載置作業が完了したLED照明252が第7製造作業機282に搬送される。なお、接着剤を乾燥させるための動作指令での主指令は、ホットエアー送風装置226によるホットエアーの送風の開始を指令するものであり、付随指令は、送風時間を指令するものである。この付随指令には、送風温度,送風方向,送風力等、種々の動作パラメータを採用することができる。
【0165】
第7製造作業機282は、LED基板264をねじ266によってヒートシンク262に固定するとともに、第8製造作業機284で装着されるカバー268を固着するための接着剤をヒートシンク262に塗布する製造作業を行うものである。第7製造作業機282においては、ねじ266を供給するための動作指令,ねじ供給装置286によって供給されたねじ266を保持するための動作指令,ねじ締めを実行するための動作指令,ねじ266を離脱するための動作指令,接着剤をヒートシンク262の上端に塗布するための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、ねじ締め作業および接着剤塗布作業が完了したLED照明252が第8製造作業機284に搬送される。なお、ねじ締めを実行するための動作指令での主指令は、ねじ締めの開始を指令するものであり、付随指令は、ねじ締めの実行時間を指令するものである。この付随指令には、ねじ締め時の回転速度,回転トルク等、種々の動作パラメータを採用することができる。
【0166】
第8製造作業機284は、第7製造作業機278において接着材が塗布された位置にカバー268を装着するとともに、その接着剤を乾燥させる製造作業を行うものである。第8製造作業機284においては、カバー268の載置されたトレイを供給するための動作指令,トレイに載置されたカバー268を保持するための動作指令,カバー268をヒートシンク262上の接着剤が塗布された位置で離脱するための動作指令,その接着剤を乾燥させるための動作指令が、順次、送信され、各作業要素が実行されることで、完成したLED照明252が第8製造作業機284から送り出されてくる。
【0167】
ii)パワーモジュール組立システム
図20に、パワーモジュール302の分解図を示す。パワーモジュール302は、ベース板314と、そのベース板314上にはんだ付けされる絶縁基板316と、ベース板314の4隅に形成された穴に嵌合される4つのブッシュ318と、それら4つのブッシュ318によってベース板314上に固定されるケース320と、ケース320内に装着される複数のピン端子322と、ケース320内に装着される電極324と、ケース320上部を覆う蓋部材326と、ケース320側面に貼着されるシール328とによって構成されている。なお、図示されていないが、ケース内にはシリコンゲルおよびエポキシ樹脂の2種類の補助材が充填される。また、本システムでは、予め、ベース板314に絶縁基板316がはんだ付けされており、その絶縁基板316付ベース板314に対して製造作業が実行されるようになっている。
【0168】
パワーモジュール302の構成部品を、先に示したLED照明252と同様に、組付順に並べ、各構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出するとともに、各作業要素毎に作業内容を決定すると、図21に示すようになる。この1連の複数の作業内容を、1台の製造作業機に、1種類の部品の装着作業、若しくは、補助的な作業を行なわせるように、複数の製造作業に集約すると、図21に示すように、(i)絶縁基板付ベース板314へのブッシュ318の装着,(ii)絶縁基板付ベース板314へのケース320の装着,(iii)ピン端子322のケース320内への装着,(iv)電極324のケース320内への装着,(v)2種類の補助材のケース320内への放出,(vi)蓋部材326のケース320への装着,(vii)シール328のケース320への貼装の7つの製造作業に集約される。したがって、パワーモジュールの組立システムを構築するためには7台の製造作業機が必要である。
【0169】
7台の製造作業機によって構成されるパワーモジュール組立システムを構築するべく、7台の本体装置を準備するとともに、それら7台の本体装置の各々に取付けるべき作業要素実行装置を準備する。各本体装置に必要な作業要素実行装置の決定方法については、先に詳しく述べていることから省略し、図21に各本体装置に必要な作業要素実行装置を示しておく。そして、準備された本体装置および作業要素実行装置に対して作業要素実行装置組付工程および統括制御装置設定工程を行なうことで、図22に示すパワーモジュール組立システム329が構築される。なお、パワーモジュール302の製造工程では、ケース320内に装着された電極324に対してワイヤーボンディング加工を実施する必要があるため、パワーモジュール組立システム329は、7台の製造作業機330〜342およびワイヤーボンディング機344によって構成される。
【0170】
7台の製造作業機330〜342は、最上流側(1番左側)に配置された製造作業機から順に、第1製造作業機330,第2製造作業機332,第3製造作業機334,第4製造作業機336,第5製造作業機338,第6製造作業機340,第7製造作業機342である。ちなみに、ワイヤーボンディング機344は、第4製造作業機336と第5製造作業機338との間の配設されているが、本発明とは関係無いため2点鎖線によって示している。第1製造作業機330は、上記製造作業機12の搬送装置26をモジュールタイプのダブルコンベア242に変更するとともに、供給装置30をブッシュ318を供給するブッシュ供給装置350に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第2製造作業機332,第3製造作業機334,第4製造作業機336は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第5製造作業機338は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、ディスペンサ装置32をダブルディスペンサ装置232に変更し、装着装置28と供給装置30とを取り外したものである。第6製造作業機340は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、供給装置30を蓋部材326を供給する蓋部材供給装置352に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。第7製造作業機342は、上記製造作業機12の搬送装置26をダブルコンベア242に変更するとともに、供給装置30をテープフィーダ240に変更し、ディスペンサ装置32を取り外したものである。
【0171】
パワーモジュール組立システム329では、まず、絶縁基板316付ベース板314が、第1製造作業機330に送り込まれ、第1製造作業機330が、その絶縁基板316付ベース板314の4隅に4つのブッシュ318を装着する製造作業を行う。そして、第2製造作業機332が、ケース320の4隅に形成された穴に4つのブッシュ318が嵌るように、ベース板314にケース320を装着する製造作業を行い、第3製造作業機334が、ケース320内部に複数のピン端子322を装着する製造作業を行う。続いて、第4製造作業機336が、ケース320内部に電極324を装着する製造作業を行う。第4製造作業機336による製造作業が完了すると、ワイヤーボンディング機344によってワイヤーボンディング加工が実施される。
【0172】
そして、ワイヤーボンディング加工が施されたパワーモジュール302が第5製造作業機338に送り込まれる。第5製造作業機338は、ケース320内部にシリコンゲルおよびエポキシ樹脂の2種類の補助剤を放出する製造作業を行い、第6製造作業機340が、ケース320の上部に蓋部剤326を装着する製造作業を行う。続いて、第7製造作業機342が、ケース320の側面にシール328を貼装する製造作業を行い、その第7製造作業機342による製造作業が完了すると、完成したパワーモジュール302が第7製造作業機342から送り出されてくる。なお、本システム329の製造作業機330等における動作指令は、上記LED照明組立システム269の製造作業機270等における動作指令と似通っているため、本システム329における動作指令に関する説明は省略する。
【0173】
なお、例えば、先に説明したLED照明組立システム269によってLED照明252を製造していた工場において、何らかの理由で、LED照明252の代わりにパワーモジュール302を製造する必要が生じた場合には、LED照明組立システム269を破棄することなく、そのLED照明組立システム269を構成する製造作業機270等の殆どを流用して、パワーモジュール組立システム329を構築することが可能である。具体的に言えば、LED照明組立システム269の第2〜4製造作業機272〜276は、パワーモジュール組立システム329の第2〜4製造作業機332〜336と同じであるため、そのまま流用可能である。LED照明組立システム269の第1製造作業機270は、供給装置30を除いて、パワーモジュール組立システム329の第1製造作業機330と同じであり、新たにブッシュ供給装置350を準備することで流用可能である。LED照明組立システム269の第5製造作業機278は、ディスペンサ装置32と供給装置30とを除いて、パワーモジュール組立システム329の第6製造作業機340と同じであり、新たに蓋部材供給装置352を準備することで流用可能である。なお、ディスペンサ装置32は取り外せばよい。LED照明組立システム269の第6製造作業機280は、供給装置30とホットエア送風装置226とを除いて、パワーモジュール組立システム329の第7製造作業機342と同じであり、新たにテープフィーダ240を準備することで流用可能である。なお、ホットエア送風装置226は取り外せばよい。ちなみに、パワーモジュール組立システム329の第5製造作業機338は、LED照明組立システム269の第7製造作業機282の本体装置を流用し、新たにダブルディスペンサ装置232を準備すればよい。つまり、新たにブッシュ供給装置350,蓋部材供給装置352,ダブルディスペンサ装置232,テープフィーダ240を準備するだけで、LED照明組立システム269をパワーモジュール組立システム329に転用することが可能となる。
【0174】
また、先に述べたように、本明細書での製造システムにおいては、ソースデータを容易に書換可能とされており、さらに、書き換えたソースデータは統括制御装置に入力可能とされているため、製造作業の変更にも容易に対応することが可能となっている。さらに言えば、新たに準備する作業要素実行装置350等は、インタフェイスの共通化によって、簡単に製造作業機の本体装置に取付けることが可能となっている。このように、本明細書での製造システムによれば、コスト,環境,容易さ等に関して、製造作業の変更に好適に対応することが可能となっている。
【0175】
iii)太陽電池組立システム
図23に、太陽電池372の分解図を示す。太陽電池372は、シリコンセル374と、そのシリコンセル374の下面にはんだ付けされる下面側インタコネクタ376と、シリコンセル374の上面にはんだ付けされる上面側インタコネクタ378とによって構成される。この太陽電池372の構成部品を、先に示したLED照明252と同様に、組付順に並べ、各構成部品に対して実行されるべき作業要素を抽出するとともに、各作業要素毎に作業内容を決定すると、図24に示すようになる。この1連の複数の作業内容を、1台の製造作業機に、1種類の部品の装着作業および補助的な作業を行なわせるように、複数の製造作業に集約すると、図24に示すように、(i)下面側インタコネクタ376のコンベア上への載置および下面側インタコネクタ376上へのクリームはんだの塗布,(ii)下面側インタコネクタ376上へのシリコンセル374の装着およびシリコンセル374上へのクリームはんだの塗布,(iii)シリコンセル374上へのクリームはんだの塗布およびシリコンセル374上への上面側インタコネクタ378の装着の3つの製造作業に集約される。つまり、3台の製造作業機によって太陽電池組立システムが構成されるのである。なお、本システムでは、スループットを向上させるべく、シリコンセル374上へのクリームはんだの塗布作業を、2台目の製造作業機および3台目の製造作業機に行なわせている。
【0176】
太陽電池組立システム379は、図25に示すように、3台の製造作業機によって構成される。それら3台の製造作業機は、最上流側(1番左側)に配置された製造作業機から順に、第1製造作業機380,第2製造作業機382,第3製造作業機384である。第1製造作業機380および第3製造作業機384は、上記製造作業機12のディスペンサ装置32をクリームはんだ印刷装置236に変更するとともに、供給装置30をインタコネクタを供給するインタコネクタ供給装置386に変更したものである。第2製造作業機382は、上記製造作業機12のディスペンサ装置32をクリームはんだ印刷装置236に変更するとともに、供給装置30をシリコンセル374を供給するシリコンセル供給装置388に変更したものである。
【0177】
第1製造作業機380は、下面側インタコネクタ376を装着装置26のコンベアベルト50上の特定の位置に載置するとともに、下面側インタコネクタ376の上面のクリームはんだを塗布すべき箇所の全てにクリームはんだを印刷する製造作業を行う。次に、第2製造作業機382が、クリームはんだが印刷された下面側インタコネクタ376の上にシリコンセル374を装着するとともに、シリコンセル374の上面のクリームはんだを印刷すべき箇所の一部にクリームはんだを印刷する製造作業を行う。続いて、第3製造作業機384が、シリコンセル374の上面のクリームはんだを印刷すべき箇所の残りの部分にクリームはんだを印刷するとともに、シリコンセル374上のクリームはんだが印刷された箇所に上面側インタコネクタ378を装着する製造作業を行う。そして、その第3製造作業機384による製造作業が完了すると、製造された太陽電池372が第3製造作業機384から送り出されてくる。なお、本システム379の製造作業機380等における動作指令も、上記LED照明組立システム269の製造作業機270等における動作指令と似通っているため、本システム379における動作指令に関する説明は省略する。
【0178】
また、本太陽電池組立システム379は、3台の製造作業機380等によって構成されているが、1台の製造作業機によって太陽電池372を組み立てることも可能である。この場合には、例えば、第1製造作業機380にシリコンセル供給装置388を装着すればよい。1台の製造作業機では、生産能力は低いが、例えば、開発段階等においては、大量に生産する必要ないため、1台の製造作業機で充分対応可能である。また、太陽電池の販売が軌道に乗り、大量の太陽電池の組立が望まれる場合には、例えば、3台より多くの台数の製造作業機によって太陽電池組立システムを構成することで、太陽電池の生産能力を向上させることが可能となる。このように、組立システムの生産能力をも考慮して、組立システムに必要な製造作業機の数を決定することも可能である。
【符号の説明】
【0179】
10:製造システム 12:製造作業機(組立作業機) 24:作業機本体(メインフレーム)(本体装置) 26:搬送装置(作業要素実行装置) 28:装着装置(作業ヘッド装置)(保持・離脱ヘッド装置)(作業要素実行装置) 30:供給装置(部品供給装置)(作業要素実行装置) 32:ディスペンサ装置(作業ヘッド装置)(組付補助ヘッド装置)(作業要素実行装置) 38:カメラ装置(作業要素実行装置) 40:移動装置(ヘッド移動装置)(メインフレーム)(本体装置) 52:搬送モータ(作動デバイス) 54:トレイ移動装置(作動デバイス) 72:正負圧供給装置(作動デバイス) 78:吐出装置(作動デバイス) 100:装着装置制御装置(個別制御装置) 104:ディスペンサ装置制御装置(個別制御装置) 108:供給装置制御装置(個別制御装置) 112:搬送装置制御装置(個別制御装置) 116:カメラ装置コントローラ(個別制御装置) 130:メイン統括制御装置(統括制御装置)(本体装置) 136:補助統括コントローラ(統括制御装置)(本体装置) 166:回路基板(第1部品) 169:電子回路部品(第2部品) 174:作業要素実行装置認識部 176:統括インタフェイス部 178:指令送信処理部 184:ソースデータ入力受付部 186:ソースデータ記憶部 188:動作指令作成部 210:個別インタフェイス部 212:認識情報格納部(認識情報) 218:指令変換部 220:高周波ウェルダー(作業要素実行装置) 222:レーザー発信装置(作業要素実行装置) 224:UV照射装置(作業要素実行装置) 226:ホットエアー送風装置(作業要素実行装置) 228:ねじ締め装置(作業要素実行装置) 230:ねじ装着・ねじ締め装置(作業要素実行装置) 232:ダブルディスペンサ装置(作業要素実行装置) 234:装着装置(作業要素実行装置) 236:クリームはんだ印刷装置(作業要素実行装置) 240:テープフィーダ(作業要素実行装置) 242:ダブルコンベア(作業要素実行装置) 243:キャリア(作業要素実行装置) 252:LED照明(製造物) 269:LED照明組立システム(製造システム) 270:第1製造作業機 272:第2製造作業機 274:第3製造作業機 276:第4製造作業機 278:第5製造作業機 280:第6製造作業機 282:第7製造作業機 284:第8製造作業機 286:ねじ供給装置(作業要素実行装置) 302:パワーモジュール(製造物) 329:パワーモジュール組立システム(製造システム) 330:第1製造作業機 332:第2製造作業機 334:第3製造作業機 336:第4製造作業機 338:第5製造作業機 340:第6製造作業機 342:第7製造作業機 350:ブッシュ供給装置(作業要素実行装置) 352:蓋部材供給装置(作業要素実行装置) 372:太陽電池(製造物) 379:太陽電池組立システム(製造作業システム) 380:第1製造作業機 382:第2製造作業機 384:第3製造作業機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行って1の製造物を製造する製造システムを構築する方法であって、
前記1以上の製造作業機の各々について、(a)それぞれが製造作業を構成する複数の作業要素のうちの1つを実行する複数の作業要素実行装置を組み込むためのメインフレームと、(b)それら複数の作業要素実行装置を統括して制御するための統括制御装置とを備えた本体装置を準備する本体装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について、前記複数の作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置の前記メインフレームに、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を組み付ける作業要素実行装置組付工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置に対して、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう統括制御装置設定工程と
を含む製造システム構築方法。
【請求項2】
前記本体装置準備工程が、
前記本体装置を、前記1の製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて決定された必要となる前記1以上の製造作業機の数、準備する工程である請求項1に記載の製造システム構築方法。
【請求項3】
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記1以上の製造作業機の各々によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて決定されたその1以上の製造作業機の各々について必要な前記複数の作業要素実行装置を、前記1以上の製造作業機の各々について、準備する工程である請求項1または請求項2に記載の製造システム構築方法。
【請求項4】
前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものが、複数の部品によって組み立てられる組立物の組立作業をその少なくとも1つのものによる製造作業として行う組立作業機であり、かつ、前記複数の部品のうちの1つである第1部品に、前記複数の部品のうちの別の1つである第2部品を組み付ける作業を、前記組立作業の少なくとも一部として行うものであり、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の搬送を、前記複数の作業要素のうちの1つとして実行する搬送装置を含み、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の諸元に基づいて決定された前記搬送装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【請求項5】
前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものが、複数の部品によって組み立てられる組立物の組立作業をその少なくとも1つのものによる製造作業として行う組立作業機であり、かつ、前記複数の部品のうちの1つである第1部品に、前記複数の部品のうちの別の1つである第2部品を組み付ける作業を、前記組立作業の少なくとも一部として行うものであり、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、作業ヘッド装置となる、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業を前記複数の作業要素の1つとして実行する1以上の組立作業用作業ヘッド装置を含み、
その1以上の組立作業用作業ヘッド装置の少なくとも1つが、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業として、前記第2部品の保持・離脱を実行する保持・離脱ヘッド装置であり、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第2部品の諸元に基づいて決定された前記保持・離脱ヘッド装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【請求項6】
前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、
前記複数の作業要素実行装置を、それぞれが前記複数の作業要素実行装置の1つが行う1つの動作についての指令である複数の動作指令を順次送信することによって、統括して制御するように構成され、(a)製造作業を行うために前記複数の作業要素実行装置の各々によって実行されるべき前記作業要素の内容がコード化されたソースデータを記憶するソースデータ記憶部と、(b)そのソースデータに基づいて、前記複数の動作指令を作成する動作指令作成部と、(c)その動作指令作成部によって作成された前記複数の動作指令の前記複数の作業要素実行装置への送信処理を行う指令送信処理部と、(d)前記ソースデータ記憶部に記憶されるソースデータの入力を受け付けるソースデータ入力受付部とを有し、
前記統括制御装置設定工程が、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置の前記ソースデータ入力受付部に、前記ソースデータを入力する工程を含む請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【請求項7】
前記1以上の製造作業機の各々による製造作業が、
それぞれが、前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作からなる複数の単位作業を含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に入力される前記ソースデータが、
前記複数の単位作業に対応して、それぞれが前記複数の単位作業の1つを示す複数の単位作業コードと、
それぞれが、前記複数の単位作業コードの1つに関連付けされ、それぞれが、その複数の単位作業コードの1つが示す前記複数の単位作業のうちの1つを構成するところの前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作を示す複数の動作コードを含む複数の動作コード群と
に階層化された構造を有する請求項6に記載の製造システム構築方法。
【請求項8】
前記複数の動作コードの各々が、
前記複数の作業要素実行装置のうちの前記複数の動作コードの各々によって示される動作を行なうものを特定するための装置特定コードと、前記複数の作業要素実行装置のうちの前記装置特定コードによって特定されるものが実行する前記作業要素をコード化した作業要素コードとを含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に前記ソースデータを入力する工程が、
少なくとも、前記複数の動作コードの各々について、前記装置特定コードと前記作業要素コードとを入力する工程である請求項7に記載の製造システム構築方法。
【請求項9】
前記複数の単位作業コードのうちの1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つと、前記複数の単位作業コードのうちの他の1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つとが、それぞれに含まれる前記複数の動作コードが示す前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作についての動作パラメータを除いて、共通化されている請求項7または請求項8に記載の製造システム構築方法。
【請求項1】
1以上の製造作業機の各々による製造作業を順次行って1の製造物を製造する製造システムを構築する方法であって、
前記1以上の製造作業機の各々について、(a)それぞれが製造作業を構成する複数の作業要素のうちの1つを実行する複数の作業要素実行装置を組み込むためのメインフレームと、(b)それら複数の作業要素実行装置を統括して制御するための統括制御装置とを備えた本体装置を準備する本体装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について、前記複数の作業要素実行装置を準備する作業要素実行装置準備工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置の前記メインフレームに、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を組み付ける作業要素実行装置組付工程と、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置に対して、その1以上の製造作業機の各々について準備した前記複数の作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行なう統括制御装置設定工程と
を含む製造システム構築方法。
【請求項2】
前記本体装置準備工程が、
前記本体装置を、前記1の製造物の製造において必要となる作業の内容に基づいて決定された必要となる前記1以上の製造作業機の数、準備する工程である請求項1に記載の製造システム構築方法。
【請求項3】
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記1以上の製造作業機の各々によって行わせるべき製造作業の内容に基づいて決定されたその1以上の製造作業機の各々について必要な前記複数の作業要素実行装置を、前記1以上の製造作業機の各々について、準備する工程である請求項1または請求項2に記載の製造システム構築方法。
【請求項4】
前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものが、複数の部品によって組み立てられる組立物の組立作業をその少なくとも1つのものによる製造作業として行う組立作業機であり、かつ、前記複数の部品のうちの1つである第1部品に、前記複数の部品のうちの別の1つである第2部品を組み付ける作業を、前記組立作業の少なくとも一部として行うものであり、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の搬送を、前記複数の作業要素のうちの1つとして実行する搬送装置を含み、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第1部品と前記組立物との少なくとも一方の諸元に基づいて決定された前記搬送装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【請求項5】
前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものが、複数の部品によって組み立てられる組立物の組立作業をその少なくとも1つのものによる製造作業として行う組立作業機であり、かつ、前記複数の部品のうちの1つである第1部品に、前記複数の部品のうちの別の1つである第2部品を組み付ける作業を、前記組立作業の少なくとも一部として行うものであり、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々の前記複数の作業要素実行装置が、作業ヘッド装置となる、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業を前記複数の作業要素の1つとして実行する1以上の組立作業用作業ヘッド装置を含み、
その1以上の組立作業用作業ヘッド装置の少なくとも1つが、前記第1部品に前記第2部品を組み付けるために必要な作業として、前記第2部品の保持・離脱を実行する保持・離脱ヘッド装置であり、
前記作業要素実行装置準備工程が、
前記組立作業機である前記1以上の製造作業機のうちの少なくとも1つのものの各々について、前記第2部品の諸元に基づいて決定された前記保持・離脱ヘッド装置を、前記複数の作業要素実行装置のうちの1つとして準備する工程である請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【請求項6】
前記本体装置準備工程において準備される前記1以上の製造作業機の各々の前記本体装置の前記統括制御装置が、
前記複数の作業要素実行装置を、それぞれが前記複数の作業要素実行装置の1つが行う1つの動作についての指令である複数の動作指令を順次送信することによって、統括して制御するように構成され、(a)製造作業を行うために前記複数の作業要素実行装置の各々によって実行されるべき前記作業要素の内容がコード化されたソースデータを記憶するソースデータ記憶部と、(b)そのソースデータに基づいて、前記複数の動作指令を作成する動作指令作成部と、(c)その動作指令作成部によって作成された前記複数の動作指令の前記複数の作業要素実行装置への送信処理を行う指令送信処理部と、(d)前記ソースデータ記憶部に記憶されるソースデータの入力を受け付けるソースデータ入力受付部とを有し、
前記統括制御装置設定工程が、
前記1以上の製造作業機の各々について準備した前記本体装置が備える前記統括制御装置の前記ソースデータ入力受付部に、前記ソースデータを入力する工程を含む請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の製造システム構築方法。
【請求項7】
前記1以上の製造作業機の各々による製造作業が、
それぞれが、前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作からなる複数の単位作業を含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に入力される前記ソースデータが、
前記複数の単位作業に対応して、それぞれが前記複数の単位作業の1つを示す複数の単位作業コードと、
それぞれが、前記複数の単位作業コードの1つに関連付けされ、それぞれが、その複数の単位作業コードの1つが示す前記複数の単位作業のうちの1つを構成するところの前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作を示す複数の動作コードを含む複数の動作コード群と
に階層化された構造を有する請求項6に記載の製造システム構築方法。
【請求項8】
前記複数の動作コードの各々が、
前記複数の作業要素実行装置のうちの前記複数の動作コードの各々によって示される動作を行なうものを特定するための装置特定コードと、前記複数の作業要素実行装置のうちの前記装置特定コードによって特定されるものが実行する前記作業要素をコード化した作業要素コードとを含んで構成されており、
前記ソースデータ入力受付部に前記ソースデータを入力する工程が、
少なくとも、前記複数の動作コードの各々について、前記装置特定コードと前記作業要素コードとを入力する工程である請求項7に記載の製造システム構築方法。
【請求項9】
前記複数の単位作業コードのうちの1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つと、前記複数の単位作業コードのうちの他の1つに関連付けられた前記複数の動作コード群の1つとが、それぞれに含まれる前記複数の動作コードが示す前記複数の作業要素実行装置の1以上のものによって行われる一連の複数の動作についての動作パラメータを除いて、共通化されている請求項7または請求項8に記載の製造システム構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
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【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2012−56002(P2012−56002A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200622(P2010−200622)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】
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