説明

製造方法

本発明は、a)コラーゲンを含むゲルの制御された量の接着層を無孔質コラーゲン系材料の接着面に塗布することによって多孔質コラーゲン系材料を無孔質コラーゲン系材料に接合し、接着面に塗布されたゲルを多孔質コラーゲン系材料の表面と接触させてそれら材料の境界面で多孔質材料の部分を部分的に水和させること、b)そのゲルを乾燥して材料を相互に接着させること、およびc)接着層中のコラーゲンを架橋させることを含む、バイオマテリアルの製造方法を開示する。この製造方法を用いて生産されるバイオマテリアルおよびインプラントもまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、損傷した組織の修復を必要とする臨床用途において組織再生の足場として使用することができるバイオマテリアルの製造方法に関する。具体的には本発明は、多孔質バイオマテリアルと無孔質バイオマテリアルを接合して多孔性と機械的強度の両方を有する新規なバイオマテリアルの形を創り出す製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質コラーゲン系バイオマテリアルは、損傷した組織の修復および再生のための足場として一般に使用され、それらの多孔質構造を利用して細胞が成長、増殖、移動、および浸潤して欠損部位に入るのを可能にする。多孔質コラーゲン系バイオマテリアルは、その材料中の細孔の存在によって引き起こされる実質的機械的弱化により制約されるが、それらの細孔は、内移植後の分解過程の間に細胞の増殖および浸潤を促進させ、こうしてその材料が損傷組織の再生を仲介する(すなわち再生のための足場を提供する)ために必要である。これら多孔質材料の生来の機械的弱さは、(i)それらを縫合などの通常の固定化技術を用いて所定位置に固定または繋ぎ留めることができないこと、および(ii)それらを使用して生来の機械的強度を有する耐力組織、例えば腱および靭帯に似せまたはそれらを修復することができないことを意味する。さらにそれらの多孔性は、生体分子または細胞などの生物学的種(薬理的効能のために利用できる)を含有させるためにそれらを使用する能力を制限する。コラーゲンの足場は、多孔質だが弱い構造または緻密だが強い構造のどちらかに従来限られてきた。
【0003】
多孔質コラーゲン系バイオマテリアルを、機械的に丈夫な無孔質コラーゲン系材料と組み合わせることは、機械的強度と多孔性の両方が必要な組織を再生するための足場を提供する可能性を秘めている。整形外科的修復のための、また歯科医療における幾つかの用途が存在し、その場合これらの材料を組み合わせて単一構造物にすることができるならば有利なはずである。
【0004】
異なる組織型間の構造的な違いのために、新しい組織の発達のための足場母材を与えるバイオマテリアルを使用して骨−軟組織の境界面を再生させることは困難である。この用途のための理想的な足場は、広範囲に及ぶ脈管化を必要とする等方性組織(例えば海綿骨)の再生を目的とすることができ、かつ特定の向きの機械的強度がより重要な腱、靭帯、および線維軟骨などの無血管組織に似せることもできるはずである。好適な足場は、多孔質材料、具体的にはコラーゲンからなる材料は、耐力用途にとって機械的性質が不十分であるために、さらにまた配向されていないために様々な材料の種類の組合せを必要とすることになる。
【0005】
米国特許第5,171,273号明細書は、高い引張強さを有する生体適合性コラーゲン移植片の製造方法を開示している。
【0006】
欧州特許第0639959B1号明細書は、架橋した低密度コラーゲンフィラメントを高密度フィラメントと撚り合わせることによって製造される補綴靭帯を開示している。
【0007】
多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料の組合せは、実質的に浸透性の区画と実質的に不浸透性の区画を提供することができる材料の生産を可能にする。したがってこの材料構造は、細胞および生体分子などの生物学的に関連のある種を引き離してそれらを選択的に組織の欠損部位に送達する能力を与えるように設計される。浸透性区画と不浸透性区画の両方を有するバイオマテリアルを製造することができることはまた、細胞またはタンパク質などの治療薬の、拡散または流体力学的流れ(例えば滑膜関節で見出されるもの)によるそのような薬剤の早期喪失のない送達が必要とされる用途においては必要である。整形外科および歯科の医療に関係のある部位の欠損部を充填するための多孔質材料と無孔質材料の組合せに関する現状技術は、別々の多孔質成分と無孔質成分の使用を必要とする。例えば歯科の抜歯窩は、多孔質の骨空洞充填材を用いて充填することができ、次いで実質的な不透過性膜を用いて隔てられる。多孔質および無孔質の両方の特性を有する切れ目のないバイオマテリアルを使用することは有利であろう。
【0008】
糊の状態のコラーゲンは、凝固し、その後再吸収される能力があり、かつ生体適合性であるという理由で、これを使用してこれらバイオマテリアルを相互に接合することが知られている。しかしながらコラーゲンはそれ自体、接着力が弱い。米国特許出願公開第2008/0295735号明細書は、コラーゲンとアルデヒド型の架橋剤との混合物を含む、あるいはアルデヒド官能基を有し、凍結乾燥形態で与えられる変性コラーゲンを含む糊を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
多孔質コラーゲン系材料(機械的強度が低い)と無孔質コラーゲン系材料(機械的強度が高い)を組み合わせることにより、新規で有利なバイオマテリアルの構成が得られるが、「ハイブリッド」コラーゲン系バイオマテリアル(すなわち、多孔性および機械的強度を有するもの)の製造に関わる主要な問題は、それら成分が容易に一体化せず、かつ既知の糊が弱いために良く接着せず、また結果として細胞毒性のある副産物を生み出す恐れのある化学的架橋処理を必ず必要とすることである。本発明は、単一の切れ目のない材料において多孔質および無孔質の両方の材料の機能性を与え、こうして多孔性を機械的強度と組み合わせることを可能にするバイオマテリアルの製造方法を提供することによって従来技術の方法および材料に関連した問題の克服を目指す。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の態様によれば、
a)コラーゲンを含むゲルの制御された量の接着層を無孔質コラーゲン系材料の接着面に塗布することによって多孔質コラーゲン系材料を無孔質コラーゲン系材料に接合し、接着面に塗布されたゲルを多孔質コラーゲン系材料の表面と接触させてそれら材料の境界面で多孔質材料の部分を部分的に水和させるステップ、
b)ゲルを乾燥してそれら材料を接着させるステップ、および
c)接着層中のコラーゲンを架橋させるステップ
を含む、バイオマテリアルの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、多孔質コラーゲン系材料成分と無孔質コラーゲン系材料成分の制御されたゲル接着形成の工程を詳述する概略図を示す。
【図2】図2は、骨を有する線維性結合組織の再生に適した三領域多相インプラントの構造を示す。
【図3a】図3aは、二層組織修復膜を示す。
【図3b】図3bは、走査電子顕微鏡で観た二層組織修復膜の構造を示す。
【図4a】図4aは、押出成形コラーゲンシート上の多様な異なる形状およびサイズの多孔質コラーゲンのアッセンブリを示す。
【図4b】図4bは、組織の欠損部の治療におけるこの製品の使用法を図示する。
【図5a】図5aは、半月上の欠損部位にインプラントを設置するための概略図を示す。
【図5b】図5bは、縫合糸によって所定の場所に固定された半月インプラントの断面を示す。
【図6a】図6aは、動脈閉鎖装具としてこの製品を使用するための概略図である。
【図6b】図6bは、縫合糸によって所定の場所に固定された動脈閉鎖装具の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中で使用される用語「バイオマテリアル」とは、ヒトまたは動物の体に対して生体適合性の材料を意味する。本明細書中で使用される用語「多孔質」とは、その材料がマクロ細孔および/またはミクロ細孔を含有することができることを意味する。本発明の製造されたバイオマテリアルは、以前は別々の無孔質コラーゲン系材料と多孔質コラーゲン系材料が、製造後には互いに隣接した状態にあるために切れ目がないと定義される。製造されたバイオマテリアルはまた、それぞれの多孔質および無孔質材料中のコラーゲンが、1つまたは複数の境界面で接着層のゲル中のコラーゲンと接着して、それら成分材料のそれぞれの機能性および特性を有する接着し一体化したバイオマテリアルを創り出すために連続的と定義される。
【0013】
多孔質材料と無孔質材料の固定した空間配置を組み立てるために、コラーゲンを含むゲルの制御された量を分注することを用いてそれら材料を相互に接着させることができることを突き止めた。コラーゲンゲルは注型構造物を形成するために一般に使用されるが、それらを多孔質材料と無孔質材料を接着させるために使用することは、今日まで成功していない。これら材料を接着させるために不十分または過剰な量のコラーゲンゲルを使用することは、製造されたバイオマテリアルに対する幾つかの有害な影響を引き起こす。それにコラーゲンゲルを分注するための制御された方法を用いてそれら材料を接着させることができることが、この方法の範囲内で使用されるコラーゲン材料の組立ての鍵である。接合のステップは、ゲルを塗布する場合に多孔質コラーゲン系材料の多孔性を危うくしないことを確実にするために注意深く制御することが好ましい。接合のステップおよびその得られる接着の質は、既知の粘度を有するゲルの制御された量を使用することによって制御することができる。制御された量のゲルは、多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料の間の計画された境界面でその多孔質材料部分を単に部分的にのみ水和するのに十分な量と定義される。本出願人は、この多孔質および無孔質コラーゲン系材料を、50〜100μmの間の厚さの接着層を用いて接着させることができると判断した。接着層中の塗布されたコラーゲンゲルの量は、50〜500μL/cm−2の間であってもよい。使用されるコラーゲンゲルの量が過度である場合、多孔質成分の多孔性が、毛管現象による多孔質成分中へのコラーゲンゲルの取り込みによって危うくなる。したがって、過度のゲルの塗布はその多孔質コラーゲン系材料を過度に水和し、結果としてその多孔質構造をなくし、またこの方法を用いて生産されるバイオマテリアルの品質を損なう。反対に、ゲルの使用が少な過ぎると、ゲルの多孔質コラーゲン系材料中への浸潤が不十分となり、結果として接着が不完全となり、それら材料間の接着が不十分となり、かつそれら材料間に間隙が存在するようになる。これら間隙は領域の構造的弱点を生み出し、また得られるバイオマテリアルの機械的強度に不利な影響を与える。
【0014】
用語「ゲル」は、定常状態にある場合に流動性を示し得る、コラーゲンを含む粘性の溶液および組成物を包含する。このゲルは、好ましくは接着特性または粘着特性を有し、糊とみなすことができる。このゲルの粘度は、計画された境界面でその多孔質コラーゲン系材料の最適な浸潤および水和を確実にするために制御されることが好ましい。ゲルの粘度は、1〜250,000cPの間、例えば10、100、1000、10,000、25,000、50,000、100,000、150,000、または2000,000cPであってもよい。より低い粘度は、多孔質コラーゲン系材料中へのゲルの過度の浸潤を引き起こし、望ましくない量の水和を生じさせ、それにより多孔構造がなくなる可能性がある。より高いゲル粘度は不十分な浸潤を引き起こす恐れがあり、それにより材料間の接着が弱くなる可能性がある。
【0015】
ゲル中のコラーゲンの濃度は、0.1〜2%(wt/vol)の間であってもよい。ゲルは、コラーゲンを0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、または2%(wt/vol)含むことができる。コラーゲンは、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、ゼラチン、アガロース、プロテオグリカン、グリコサミノグリカンまたはグリコタンパク質を含有する細胞収縮コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、エラスチン、フィブリン、ポリ乳酸またはポリグリコール酸またはポリアミノ酸などのポリ酸から作られる合成高分子繊維、ポリカプロラクトン、ポリアミノ酸、ポリペプチドゲル、それらのコポリマー、および/またはそれらの組合せであってもよい。このコラーゲンは、テロ含有コラーゲン、アテロコラーゲン、または誘導体化コラーゲン、またはこれらの組合せを導き出すことができる。本明細書中で使用されるコラーゲンという用語は、組み換えヒト(rh)コラーゲンを包含する。このコラーゲンは、可溶性でも不溶性でもよく、また任意の動物中の任意の組織から得ることもでき、また幾つもの従来の技術を使用して抽出することもできる。
【0016】
ステップ(b)は空気乾燥を含んでもよい。空気乾燥は、そのゲルの成分の不溶性を原因とする再水和に逆らう多孔質材料と無孔質材料の間の弱い非共有結合相互作用を形成することができる。バイオマテリアルを取り囲む環境の温度および/または湿度を制御して乾燥速度を制御することができる。空気中でのコラーゲン構造物の乾燥は、その構造物内部の乾燥速度のばらつきのせいで構造歪みを生じさせることがあり、それが目的に適わない物理的形状につながることがある。乾燥のステップ(b)では材料の構造/形状は、実質上歪みなしに保持されることが好ましい。これは、患者の欠損部位に常に正確に合致しなければならず、また必要に応じて望ましくない歪みが最小限または全くない均一な平面性および層構造を有しなければならない製造されたバイオマテリアルの品質の低下を避けるために重要である。乾燥時の歪みの量は、材料を相互に接合する時のその材料の水和度によって影響される。多孔質構造の喪失という悪影響以外に、乾燥時の歪みをできるだけ少なくするためにも過度な水和はまた(多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料の接着を確実にするのに十分なゲルだけを使用することによって)避けるべきである。したがって歪みは、それら材料の接着を確実にするのに十分なゲルだけを使用することによって最小限度に抑えることができる。
【0017】
製造工程の間ずっと製造されるバイオマテリアルの形状/構造を制御することの重要性は、本出願人が、そのバイオマテリアルの望ましい構造、形状、平面性、および層構造(laminarity)をそれが乾燥している最中に保持することを確実にする方法を開発するきっかけとなった。バイオマテリアルの構造/形状などは、バイオマテリアルをケージ、金型、プレス、または枠中で束縛して、それが乾燥している最中に構造歪みを最小限度に抑えることによって保持することができる。バイオマテリアルが平面または層構造を有する場合、その構造/形状は、それが乾燥している最中にバイオマテリアルを剛性シート間にはさむことによって保持することができる。構造/形状は、その無孔質材料の接着面とは別の面を支持体に接着または取り付けることによって保持することができる。好ましくはケージ、金型、プレス、枠、剛性シート、および/または支持体は、金属製であるか、または乾燥バイオマテリアルの歪みを抑制/阻止するのに十分な剛性材料から製造される。ケージ、金型、プレス、枠、剛性シート、および/または支持体は、非粘着性材料、例えばポリテトラフルオロエチレンを含んでもよく、またそれで被覆されてもよい。
【0018】
コラーゲンは、コラーゲンを含むゲルの接着層中だけでなく、多孔質および無孔質コラーゲン系材料のそれぞれによってもたらされる。好ましくは架橋のステップを使用して接着層中のコラーゲンを、多孔質および無孔質コラーゲン系材料によってもたらされるコラーゲンと架橋またはバイオコンジュゲートさせる。これら材料の境界面に塗布されたコラーゲンが多孔質コラーゲン系材料の内側に延在する部分を部分的に水和するので、架橋は、界面組織に共有結合架橋を与えることによってこのコラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料をさらに接合させる。架橋のステップはまた、多孔質コラーゲン系材料中と無孔質コラーゲン系材料中のコラーゲンも架橋させることができる。架橋は、追加の安定性を与え、かつコラーゲン分子をin vivoのコラゲナーゼおよび他のマトリックスメタロプロテアーゼ活性に対して抵抗性にする。架橋のステップは、その架橋がアルデヒドなどの潜在的に細胞毒性のある最終製品または副産物を除去するためにそのバイオマテリアルの洗浄を必要としないという条件で、バイオマテリアルを完全に水和する危険を冒す、また多孔構造の望ましくない喪失および/または乾燥時の構造/形状の歪みを引き起こす危険を冒すステップを必要としないという条件で、1種類または複数種類の適切な化学的または生化学的薬品、あるいは物理的架橋方法の使用を含むことができる。架橋は、物理的方法および/または化学的/生化学的方法の組合せであってもよい。
【0019】
好ましくはゲルは、接着層中のコラーゲンの架橋を容易にすることができる成分を含むことができる。ゲルはさらに、グリコサミノグリカン(GAG)またはムコ多糖を含むことができる。グリコサミノグリカンは、反復二糖単位を含有する長鎖の非分岐多糖を含有する巨大分子の系統である。好ましくはグリコサミノグリカンは、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパリン硫酸、ケラチン硫酸、およびヒアルロン酸のうちの1種類または複数種類から選択される。コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン−4−硫酸またはコンドロイチン−6−硫酸であることができ、これらの両方が、例えばSigma−Aldrich Inc.から市販されている。コンドロイチン−6−硫酸はサメから得ることができる。GAGは、0.01〜12wt%(乾燥)、または1〜5.5wt%(乾燥)、または1.8〜2.3wt%(乾燥)で使用することができる。好ましくはGAGは、0.1%(wt/vol)で使用される。ゲルは、架橋官能性を与えることができる他の多糖または他の成分を含むことができる。ゲルの組成は、多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料の組成と同一であってもよい。ゲル中のコラーゲンおよびGAGの濃度は、多孔質コラーゲン系材料中のコラーゲンおよび任意のGAGの濃度と同一であってもよい。
【0020】
接着層中のコラーゲンを架橋するには様々な物理的架橋方法を用いることができる。架橋のステップは、アミン基とカルボン酸基を結合させる縮合反応を生じさせるために乾燥バイオマテリアルに施される脱水熱処理(DHT)を含むことができる。DHT処理の利点は、化学的試薬を何も必要とせず、かつその処理の間に潜在的に細胞毒性のある最終製品または副産物を何も生み出さないことである。バイオマテリアルは真空中で加熱することができる。DHT処理の温度および暴露時間を変えてバイオマテリアルの圧縮および引張特性ならびに架橋密度を変えることができる。DHT処理の温度は60〜180℃の間であり、曝露は24〜120時間の間であってもよい。真空は、例えば50〜150ミリトルであってもよい。
【0021】
架橋は光誘発性であってもよい。架橋のステップは、UVまたは可視光線処理を含むことができる。UV照射(254nmにおける)は、コラーゲン繊維の機械的強度を増す迅速かつ制御の容易な手段であり、また後続のバイオマテリアル洗浄による除去を必要とする毒性副産物を何も生成しない。コラーゲンゲルは、UV架橋処理を最適化することができる多糖またはGAGなどのヒドロキシル含有成分を含むことができる。コラーゲンは、可視光線を用いてメチレンブルーおよびローズベンガルなどの光増感染料の存在下で架橋することもできる。
【0022】
架橋のステップは、DHT処理とUV処理、あるいは架橋方法の組合せを含むこともできる。
【0023】
架橋のステップは、電子線(EB)またはガンマ線を用いた放射線処理を含むこともできる。大多数の物理的架橋方法と変わらず、放射線架橋は細胞毒性のある架橋剤の使用を必要とせず、かつ後続の処理ステップが必要でない。放射線架橋の別の利点は、ガンマ線が、可視光線またはUV光線架橋などの他の方法を用いた場合に達成することができない深さまでバイオマテリアルを貫通できることである。
【0024】
物理的架橋方法は細胞毒性のある最終製品または副産物の形成を引き起こさないので有利だが、接着層中のコラーゲンを架橋するために1種類または複数種類の、好ましくは気相で使用される化学架橋剤を用いることができる。化学架橋試薬は、タンパク質上の特定の官能基(第一アミン、スルフヒドリルなど)と化学的に結合することができる2個以上の反応性末端を含有する分子である。好ましくは化学架橋試薬は、不揮発性副産物の形成を引き起こすべきではない。気相の化学架橋剤は、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびヘキサメチルジイソシアナートからなる群から選択することができる。架橋剤は、カルボジイミド、ポリアルデヒド、ポリスルホン、活性PEG、エポキシド、イミダゾール、およびジイソシアナートからなる群から選択することができる。この架橋のステップは、グルタルアルデヒドまたはホルムアルデヒドなどのアルデヒド(これはリシン残基を架橋することができる)、あるいは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)(これはアミノ基とカルボキシル基を架橋することができる)、あるいはグリセロールポリ(グリシジルエーテル)およびポリ(エチレングリコールジグリシジルエーテル)などのポリエポキシ化合物による処理を含むことができる。この架橋剤は、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)であることができ、これはアミノ基を架橋することができる。EDCは、それがコラーゲン分子間の最終架橋結合の一部にならないので、好ましい架橋剤である。
【0025】
ゲルはさらに、潜在的に細胞毒性のある最終製品または副産物の放出なしに架橋を達成するように無孔質および多孔質コラーゲン材料と反応する反応性基を含むように変性または誘導体化される成分(例えばGAG)を含むことができる。これら成分は、アルデヒド反応性基またはNHSで活性化したエステル基により化学的に官能基化することができる。これら成分は、トリアジンで活性化したコラーゲン、またはエポキシドで官能基化したコラーゲンであってもよい。
【0026】
ゲルは、接着面に塗布される前は酸性でもアルカリ性でもよい。このゲルは、中性pHでゲル化することができる。ゲルのpHは、接着面への塗布時に中和することができる。ゲルのゲル化時間は、中和後1〜60分であってもよい。架橋は、塗布後にゲルのpHが中和している最中に行われ、ゲル中で原線維形成、すなわち結合組織のコラーゲン線維中に普通に存在する微細なフィブリルの発達を引き起こす。
【0027】
コラーゲンは求核基および求電子基の両方を含有するので、それは多くの上記化学作用を用いて自己架橋することができる。好ましい実施形態ではゲル内の架橋反応を阻止または最小限にするゲルが使用され、それによってゲルの早過ぎる強度増加なしに架橋用ゲルを塗布することを可能にする。ゲルは、コラーゲンをポリエチレングリコールおよび/またはグリコサミノグリカンと組み合わせて含むこともできる。
【0028】
この製造方法では無孔質コラーゲン系材料の1個または複数個の断片または領域を、多孔質コラーゲン系材料の1個または複数個の断片または領域に接合することができる。下記に述べるようにこの方法を用いて、多孔質および無孔質コラーゲン系材料の複数の領域を含む新規なバイオマテリアルの構成を製造することができる。この構成は、硬骨、軟骨、腱、靭帯、およびこれらの組織間の境界面を含めて組織の組成および/または構造に似せることができる。
【0029】
本発明の第二の態様によれば、コラーゲンを含む乾燥ゲルの接着層で接着された多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料を含む製造されたバイオマテリアルを提供する。このバイオマテリアルは多相でもよく、連続的でもよい。本発明の製造されたバイオマテリアルは、それが多孔質および無孔質コラーゲン系材料の両方、すなわち必要とされる孔隙率を有する1つまたは複数の相と、必要とされる機械的強度を有する1つまたは複数の相とを含むために多相と定義される。
【0030】
本発明はまた、無孔質および多孔質コラーゲン系材料の両方を含む多相バイオマテリアルの構造を達成するために新規な架橋の順序を利用することができる。
【0031】
多孔質および無孔質コラーゲン系材料はさらに、グリコサミノグリカン(例えば、コンドロイチン−4−硫酸またはコンドロイチン−6−硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、またはキトサン)、プロテオグリカン(例えば、デコリン)、タンパク質(例えば、エラスチン、レジリン、または細胞外基質の他の成分)などの他のバイオポリマー成分を含むことができる。
【0032】
接合する前に多孔質および無孔質コラーゲン系材料の一方または両方を架橋することもできる。この個々の成分の架橋は、本発明の方法によって製造されるバイオマテリアルの物理的および機械的特性を改良することができる機械的強度を与える。好ましくは、少なくとも多孔質コラーゲン系材料が、この製造工程で使用する前に架橋される。これは、ゲルの接着層による再水和時に材料が弱化、崩壊、または分解しないことを確実にする。
【0033】
多孔質コラーゲン系材料を非石灰化、または石灰化することができる。1つまたは複数の相、断片、または領域が骨によく似ていることが必要な実施形態では、多孔質コラーゲン系材料はリン酸カルシウム、例えばブラッシュ石、リン酸オクタカルシウム、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸β−三カルシウム、二相性リン酸カルシウム、置換リン酸カルシウム、ケイ酸置換リン酸カルシウム、ケイ酸置換ヒドロキシアパタイト、またはケイ酸置換リン酸三カルシウムを含むことができる。多孔質コラーゲン系材料は、コラーゲンと、グリコサミノグリカンまたはリン酸カルシウムとの共沈物、あるいはコラーゲンとグリコサミノグリカンとリン酸カルシウム材料との三重共沈物を含むことができる。このコラーゲンとこの1種類または複数種類のグリコサミノグリカンは架橋することができる。
【0034】
多孔質材料中の連続気泡孔隙の割合(連続気泡と独立気泡の両方の気孔の総数の割合として測定される)は、好ましくは1〜100%、より好ましくは20〜100%、さらに一層好ましくは90〜100%である。
【0035】
コラーゲンは、好ましくはその材料中に5〜90wt%(乾燥)、より好ましくは15〜60wt%(乾燥)、より好ましくは20〜40wt%(乾燥)の量で存在する。
【0036】
1種類または複数種類のグリコサミノグリカンは、その材料中に0.01〜12wt%(乾燥)、より好ましくは1〜5.5wt%(乾燥)、最も好ましくは1.8〜2.3wt%(乾燥)の量で存在することができる。好ましくはコラーゲン対1種類または複数種類のグリコサミノグリカンの総量の比は、重量(乾燥)を基準にして8:1〜30:1、より好ましくは重量(乾燥)を基準にして10:1〜30:1、さらに一層好ましくは重量(乾燥)を基準にして10:1〜12:1、最も好ましくは重量(乾燥)を基準にして11:1〜23:2である。
【0037】
接着層の厚さは50〜100μm(ミクロン)の間であってもよい。
【0038】
接着層中のコラーゲンは架橋することができる。多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料中のコラーゲンは架橋することができる。バイオマテリアルを架橋して、多様な異なる機械的特性および/または分解特性を与えることができる。多孔質または無孔質コラーゲン系材料中のコラーゲンとグリコサミノグリカンを架橋することができる。
【0039】
この製造工程中の多孔質コラーゲン系材料の制御された量の水和のせいで、バイオマテリアルは、その多孔質コラーゲン系材料の元の孔隙率の95%超を保持するので有利である。
【0040】
無孔質コラーゲン系材料は、押出成形コラーゲンシートまたは膜、あるいはコラーゲン繊維(例えば束の状態の)を含むことができる。これらは押出成形および/または配向させることができる。コラーゲンから作られる多孔質材料および一連の組合せバイオポリマー材料の場合のように、不溶性および可溶性コラーゲンから再構成される繊維(織布および不織布の両方)およびシートを含めた押出成形コラーゲン構造物は当業者によく知られている。しかしながらこれらの組合せ用法は、それらの材料をうまく一体化して単一構造物にすることができないせいで限定されている。無孔質コラーゲンはまた、精製した動物またはヒト由来の組織、例えば脱細胞化した皮膚、腸、骨膜、心膜、筋膜、あるいは当業者によく知られている他の異種移植片または同種移植片シートであることもできる。
【0041】
バイオマテリアルは、コラーゲンとGAGを含む多孔質コラーゲン系材料に接着した無孔質コラーゲン膜を含む非石灰化多孔質パッチであることもできる。この非石灰化多孔質パッチは多孔質コラーゲン系材料の2つ以上の領域を含むことができ、本発明のこの方法を用いて様々な形状/サイズのパッチを製造することができると考えられる。無孔質コラーゲン系材料が多孔質コラーゲン系材料の一部と重なり合って、患者の欠損部位中での装具の固定を可能にする皮弁(flap)を提供することができる。この固定は、縫合、鋲留め(tacking)、ダーツの使用、縫合糸とポリマータブまたはボタンとを含む装具などの複合装具の使用、縫合糸通し具、フィブリン糊などの生体接着剤、血餅の誘発を伴う手法、あるいは他の自己体液からの接着剤の形成による手法などの当業者に知られている手法を用いることによって達成することができる。
【0042】
無孔質コラーゲン系材料は、多孔質コラーゲン系材料の中から外への細胞、タンパク質、および小分子の輸送のバリアとして働くことができる。
【0043】
多孔質コラーゲン系材料は、多孔質コラーゲンの足場を含むことができ、また無孔質コラーゲン系材料は、配向コラーゲン繊維を含むことができる。バイオマテリアルは、多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料の多数の領域を含むことができる。バイオマテリアルは、多孔質石灰化コラーゲン系材料を各末端に有する無孔質配向コラーゲン繊維を含むことができる。
【0044】
本発明の第一の態様による方法に従って生産される製造されたバイオマテリアルが提供される。
【0045】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の製造されたバイオマテリアルを含むインプラントが提供される。このインプラントは、多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料の1つまたは複数の相、断片、または領域を含むことができる。
【0046】
本発明のさらなる態様によれば、本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントを含む人工の軟骨、硬骨、靭帯、腱、半月、歯周組織、象牙質、エナメル質、椎間板、線維輪、または髄核のインプラント、移植片、代用品、足場、充填材、塗料、あるいはセメントが提供される。
【0047】
バイオマテリアルまたは本発明のバイオマテリアルを含むインプラントは、さらに細胞を含むことができる。これら細胞は、幹細胞または前駆細胞、分化細胞、最終分化細胞、あるいはこれらの組合せであってもよい。細胞は、全能性、多能性、または分化単能性幹細胞、あるいは人工多能性幹細胞であってもよい。細胞は、ヒトの胚の破壊を必要としない技術によって得られる、例えば株化細胞を通じて得られるヒト胚幹細胞であることもできる。間葉幹細胞(骨髄間質細胞、多能性間質細胞、またはMSCとも呼ばれる)は、分化して骨芽細胞、腱細胞、軟骨細胞、筋細胞、脂肪細胞を含めた様々な細胞型になることができる多能性幹細胞である。これらの細胞型は、硬骨、腱、靭帯、軟骨、筋、および脂肪を生成する能力を有する。これら細胞は、MSCまたはMSC系統内の任意の細胞であってもよい。これら前駆細胞は、最終分化して成熟細胞になる前に細胞分裂の幾つかの過程を通過することができ、これら細胞はそれらの中間細胞であってもよい。これら細胞は、MSC(骨髄間質細胞、間葉幹細胞、多能性間質細胞)、軟骨細胞、線維軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、滑膜細胞、脂肪細胞、骨髄細胞、間葉細胞、間質細胞、遺伝形質転換細胞、またはこれらの組合せからなる群から選択することができる。これら細胞は、自系または異種であってもよい。
【0048】
これら細胞は、胚幹細胞、脂肪組織由来の前駆細胞、末梢血前駆細胞、成体組織から分離した幹細胞、遺伝形質転換細胞、軟骨細胞と他の細胞の組合せ、滑膜細胞と他の細胞の組合せ、骨髄細胞と他の細胞の組合せ、間葉細胞と他の細胞の組合せ、間質細胞と他の細胞の組合せ、幹細胞と他の細胞の組合せ、胚幹細胞と他の細胞の組合せ、成体組織から分離した前駆細胞と他の細胞の組合せ、末梢血前駆細胞と他の細胞の組合せ、成体組織から分離した幹細胞と他の細胞の組合せ、遺伝形質転換細胞と他の細胞の組合せのうちの1種類または複数種類を含むことができる。
【0049】
上記製造方法を用いてコラーゲンシート、繊維を石灰化または非石灰化多孔質成分と結合させ、こうしてヒト組織の構造に似せた多数の異なる配置および構成の製造を可能にすることができる。上記製造方法を用いて生産されるバイオマテリアルの用途の幾つかを下記に述べる。
【0050】
一実施形態ではこのバイオマテリアルは、シャーピー線維(本質的には骨膜を骨と結合する丈夫なコラーゲン繊維の束を含む結合組織のマトリックス)として知られる骨−腱付着構造物を似せることができる。このバイオマテリアルは、実質上平行な(インプラントの長軸に沿って平行な)無孔質コラーゲン繊維を含み、さらに一端または両端に多孔質石灰化コラーゲン系材料(すなわち、コラーゲン、GAG、およびリン酸カルシウムを含む多孔質コラーゲン系材料の1箇所または2箇所の領域)を含む。このバイオマテリアルは、各末端に縫合に適したループを含むことができる。
【0051】
別の実施形態ではこのバイオマテリアルを使用して、半月中の欠損部を充填することができる。半月インプラントは、欠損部位にぴったり合うように設計され、縫合、鋲留め、ダーツの使用、縫合糸とポリマータブまたはボタンとを含む装具などの複合装具の使用、縫合糸通し具、フィブリン糊などの生体接着剤、血餅の誘発を伴う手法、あるいは他の自己体液からの接着剤の形成による手法などの標準的な手法によって所定位置に固定することができる。縫合は、所定の場所に装具を固定するように装具の多孔質部分および/または必要に応じて無孔質部分を通じて行うことができる。
【0052】
さらなる実施形態ではこのバイオマテリアルを動脈閉鎖装具として使用することができる。この装具は、多孔質部分が動脈にぴったり合うように、かつ閉鎖を与える形に無孔質部分が動脈を折り重ね、包むように設計することができる。次いでその装具を、縫合、鋲留め、ダーツの使用、縫合糸とポリマータブまたはボタンとを含む装具などの複合装具の使用、縫合糸通し具、フィブリン糊などの生体接着剤、血餅の誘発を伴う手法、あるいは他の自己体液からの接着剤の形成による手法などの標準的な手法によって所定位置に固定することができる。縫合は、所定の場所に装具を固定するように装具の多孔質部分および/または必要に応じて無孔質部分を通じて行うことができる。
【0053】
関節軟骨の再生用パッチを製造することができ、これらパッチが多孔質材料を利用して細胞または(巨大)分子種を送達する一方で、無孔質材料が周囲組織との固着を可能にし、かつ多孔質材料に搭載された成分の損失を防ぐ。パッチは、多孔質コラーゲンシートと、縫合性を与える布などのコラーゲン系繊維構築物との組み合わせ物をベースに製造することができる。別法では、多孔質コラーゲンシート、例えば押出成形コラーゲンシートの組み合わせ物を、縫合性および不浸透性を与える無孔質コラーゲンシートと組み合わせることもできる。一実施形態では非石灰化多孔質パッチ、すなわち無孔質コラーゲンシートに貼り合せたコラーゲンおよびGAGを含む多孔質コラーゲン系材料を含むインプラントが提供される。この構造物は、微細破壊(軟骨下骨に穴を開けることを利用して線維軟骨を生じさせて軟骨欠損部を覆う)として知られる軟骨刺激手法を充実させるための足場として特に有用である。さらにこの材料構造物は、自己軟骨細胞移植(軟骨細胞を関節軟骨の軟骨欠損部中に移植する)手順を適用する際に特に役立つ。この材料の具体的な利点は、マトリックス補助自己軟骨細胞移植手順に利用された場合、その多孔層が、欠損形状とぴったり合う細胞搭載多孔質材料を送達することができることである。
【0054】
腱および靭帯の再生用のバイオマテリアルおよびインプラントは、(i)骨−腱境界面によく似た石灰化材料と非石灰化材料の組合せ、または(ii)腱再生を補うために使用することができる材料を提供するようにコラーゲン繊維の無孔質の束と組み合わせた多孔質コラーゲンシートを用いて製造することができる。骨−靭帯/腱の境界面の修復用パッチは、コラーゲン繊維の無孔質の束と組み合わせた多孔質の石灰化リン酸カルシウムのコラーゲンブロックを用いて製造することができる。
【0055】
本発明の製造方法は、前述のように無孔質コラーゲン系材料を多孔質コラーゲン系材料に接合することによって本明細書中で述べる構成を製造するステップを含むことができる。
【0056】
多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料を接着するためのコラーゲンゲルの使用法が提供される。
【0057】
本発明のさらなる態様によれば、本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントを選ぶステップ、およびその材料を患者の欠損部に挿入するステップを含む、患者の標的組織中の欠損部の治療方法が提供される。
【0058】
本発明のさらなる態様によれば、患者の標的組織を本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントで置き換えるステップを含む、患者の器官または組織設計の方法が提供される。
【0059】
本発明のさらなる態様によれば、患者の標的組織中の欠損部を治療するための本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントの使用法が提供される。患者の標的組織中の欠損部を治療するための薬剤の製造における本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントの使用法が提供される。
【0060】
患者の標的組織を組織設計するための薬剤の製造における本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントの使用法が提供される。
【0061】
この標的組織は、軟骨、硬骨、靭帯、腱、動脈、シャーピー線維、半月、歯周組織、象牙質、エナメル質、椎間板、線維輪、および髄核からなる群から選択することができる。
【0062】
この患者は、哺乳動物または非ヒト哺乳動物であってもよい。患者は、ヒト、イヌ、ラクダ、またはウマであってもよい。
【0063】
本発明のさらなる態様によれば、本発明によるバイオマテリアルまたはインプラントを含むパーツの、送達装置と組み合わせたキットが提供される。キットは、複数種類のバイオマテリアル、インプラント、送達装置、またはこれらの組合せを含むことができる。キットはさらに、そのインプラントを送達するため、またはその組織または器官を設計するために利用される手順において必要とされ得る追加の用具を含むことができる。
【0064】
次に本発明を、例によって、また下記の図面を参照してさらに述べることにする。
【0065】
材料
コラーゲン:I型、ウシの腱由来の微細繊維状コラーゲン、Integra Life Sciences Plainsboro,NJ,USA。GAG:サメ軟骨由来のコンドロイチン−β−硫酸、ナトリウム塩、Sigma−Aldrich Inc.(St.Louis,MO,USA)。カルシウム供給源:(i)水酸化カルシウム(Ca(OH))、Sigma−Aldrich Inc.(St.Louis,MO,USA)、および(ii)硝酸カルシウム(Ca(NO) 2.4HO)、Sigma−Aldrich Inc.(St.Louis,MO,USA)。リン供給源:オルトリン酸(H3PO4)、BDH Laboratory Supplies(Poole,United Kingdom)。架橋剤:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(=EDAC)、Sigma−Aldrich Inc.(St.Louis,MO,USA)、およびN−ヒドロキシコハク酸イミド(=NHS)、Sigma−Aldrich Inc.(St.Louis,MO,USA)。
【0066】
図1を参照すると、この概略図は、本発明の製造されたバイオマテリアルを生産するために全体的にまたは部分的に適用することができる一連のステップを含む、好ましい製造工程を示す。最初のステップは、無孔質コラーゲン系材料(10)、最も好ましくは押出成形シートまたは膜あるいは繊維の束をコラーゲン系ゲルの接着層で水和することを伴う。無孔質材料(10)は、得られる接着剤がそれら材料を相互に接着させるのに適切な厚さのものであることを確実にするような、またその後の乾燥時に多孔性を損なう、または歪みの問題を生じさせるほどには過剰ではない特定のゲル量、一般には50〜500μL/cmを投入される。本発明者等は、接着層の適切な厚さが50〜100μmであることを実験により確定した。ステップ(iii)では、次に多孔質コラーゲン系材料(30)をその水和された無孔質材料(20)上にそっと押し付けてゲルの接着層(40)と接触させることによって、水和された無孔質材料(20)を多孔質コラーゲン系材料(30)に接合する。材料(20、30)の境界面における毛管力が、一定限度の量のゲルを多孔質コラーゲン系材料(30)中に引き込み、2種類の材料間の境界面において多孔質コラーゲン系材料(30)の限られた部分の部分的水和を引き起こす。好ましくは多孔質コラーゲン系材料は、機械的強度を与えるために架橋される。これは、接着層のゲルとの接触時に材料が弱化または分解する傾向を最小限に抑える。図示しないが、多孔質コラーゲン系材料の複数個の領域または断片を無孔質コラーゲン系材料の1個または複数個の領域または断片に接合することができる。ステップ(iv)は、接合した材料をその物理的構造(形状、サイズ)にとって最小限の歪みで乾燥してそれらを相互に接着させ、製造された連続的多相バイオマテリアル(50)を形成することを含む。図示しないが、乾燥時の歪みを最小限に抑え、理想的には阻止することによってバイオマテリアルの構造、形状、平面性、層状態を保持する。これは、バイオマテリアルを、例えばケージ、金型、または枠中で物理的に束縛することによって、あるいはそれを剛性シート間に挿入することによって、あるいは無孔質コラーゲン系材料を剛性の非変形性支持体に接着することによって達成することができる。好ましくはステップ(iv)は、コラーゲンとゲル中の任意の他の架橋成分を架橋してより強い接着を得ることを含む。バイオマテリアル(50)は、それら2種類の材料(10、30)が、相互に接着し架橋するので「連続的」と、またそのバイオマテリアルが、異なる機能性および特性を有する多孔質領域と無孔質領域を含むので「多相」と定義される。
【0067】
図2を参照すると、骨を有する線維性結合組織の再生に適したインプラントの構造を示す。このインプラントは、無孔質領域(60)および2つの多孔質領域(70)を含む製造されたバイオマテリアル(50)からなる。無孔質領域(60)は、押出成形コラーゲンの形態の無孔質コラーゲン系材料(10)を含む。多孔質領域(70)は、コラーゲン、グリコサミノグリカン、およびリン酸カルシウムを含む多孔質石灰化コラーゲン系材料(30)を含む。多孔質領域(70)は、本質的には骨の構造によく似た石灰化コラーゲン/GAGのブロックである。これらブロックは、接着性コラーゲンゲルの接着層(図示せず)を用いて押出成形コラーゲンの各端部に取り付けることができる。接着層のゲル中のコラーゲンは、例えばDHT処理により無孔質および多孔質コラーゲン系材料中のコラーゲンと架橋させることができる。このインプラントは、各端部で骨中に繋ぎ留めることができ、また靭帯および腱を修復、置き換え、または補強するために使用することができる。図2に示したインプラントは、下記のように製造された。
【0068】
押出成形コラーゲン繊維は、さきに述べた方法、例えば米国特許第5,171,273号明細書中の方法に従って作られた。水性溶液(pH約7.5、37℃の)中に押し出された不溶性または可溶性コラーゲンは、製造するのに十分な機械的強度を有するコラーゲン繊維を生成した。押出成形コラーゲン繊維はスプールに巻かれ、長軸に沿って実質上平行な繊維を含有し、かつその末端にループ(縫合可能な取付点を与える)を含有する繊維構造物を形成した。次いでコラーゲン繊維のループを、MES緩衝液(pH5.5)に溶かしたN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)および1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)を含む架橋液中に1時間浸漬することにより架橋させてから脱イオン水で洗浄し、空気乾燥した。このコラーゲン繊維束を、1gの凍結乾燥コラーゲンと、0.1gのコンドロイチン−6−硫酸と、100mLの20mM HClとを含む酸性化ゲルを混ぜ合わせることにより調製されたコラーゲン−コンドロイチン−6−硫酸ゲル中で注型した。使用したゲルの量は50μL/cmであった。このコラーゲン−GAGゲルは、繊維束を水和し、かつ繊維間の間質腔を満たすことを可能にした。過剰なコラーゲン/GAGゲルは存在しなかった。
【0069】
この多孔質コラーゲン−グリコサミノグリカン−リン酸カルシウム材料は、本出願人によって以前に開発された方法(国際公開第2005/051447号、第2006/095154号、および第2008/017858号各パンフレット中に開示されている)に従って調製された。国際公開第2005/051447号パンフレットに記載の方法は、コラーゲンと、カルシウム供給源およびリン供給源と、グリコサミノグリカンとを含む酸性水溶液を準備するステップ、およびこの水溶液からコラーゲン、ブラッシュ石、およびグリコサミノグリカンを一緒に沈殿させて三種共沈物を形成するステップを伴う。本出願人の三種共沈多孔質コラーゲン系材料の使用以外に、本発明の製造方法において他の多孔質コラーゲン系材料を使用して、所望の孔隙率および強度を有する途切れのない製造された多相バイオマテリアルおよびインプラントを生産することもできると考えられる。沈殿の後、外科用メスまたは類似の装置を用いてこの多孔質材料を切断して約10×10×12mmの寸法の骨ブロックを形成した。
【0070】
コラーゲン/コンドロイチン硫酸ゲルを自然乾燥する前に、図示(図2参照)の配置でこの多孔質コラーゲン−グリコサミノグリカン−リン酸カルシウムブロックをゲルに対して配置した。前述のようにこの方法は、細孔が境界面において薄い層の状態で部分的に充填され、こうして多孔質材料と無孔質材料の間で機械的に強い接着が形作られることを可能にするように、コラーゲン/コンドロイチン−6−硫酸ゲルで多孔質材料を部分的に濡らすステップを伴った。次いで、構造の最小限の歪みを有するそのバイオマテリアルを空気乾燥した。架橋(105℃、150ミリトルで3日間の脱水熱処理の適用による)を用いてインプラント中のコラーゲン−GAG接着の機械的強度をさらに高めた。得られたインプラントは、骨−膝蓋骨または前十字靭帯の配置に似ている。
【0071】
この製造方法を用いて、図3に示すように無孔質の押出成形コラーゲンシートに接着した多孔質ブロックを含むバイオマテリアルを作り出すことができる。図示したバイオマテリアル(50)は、無孔質領域(60)および多孔質領域(70)を含む。無孔質領域(60)は押出成形コラーゲンシート(10)を含み、また多孔質領域(70)はコラーゲンおよびグリコサミノグリカン(30)を含む。架橋多孔質領域(70)は、接着性コラーゲンゲルの接着層(図示せず)を用いて押出成形コラーゲンシート(10、60)に接着される。この材料は、下記に詳述するように製造される。
【0072】
押出成形コラーゲンフィルムを、不浸透性コラーゲンシートと多孔質コラーゲン/GAGシートの両方を含む足場の組立てを可能にするための多孔質コラーゲンシート取り付け用支持体として使用した。コラーゲンシートは、コラーゲンシートの生産のための多数の工業的方法のいずれかにより押出成形され、約0.5mmの厚さを有した。製造手順は、最初に50μL/cmの1%(w/v)コラーゲンゲルでコラーゲンシートを水和することを伴った。歪みを最小限に抑え、かつ平面性を保つためにこの水和シートをTeflon(RTM)支持体上に平らに置いた。次いで多孔質架橋コラーゲン/GAG層をこの押出成形コラーゲンシート上に置き、放置してゲルにその多孔質架橋コラーゲン/GAG層の表面を部分的に水和させた。次いでこの組立バイオマテリアルをそれら成分の物理的形状および寸法の最小限の歪みで空気乾燥させた。結果として得られる貼合せバイオマテリアルは、図3bに示すように、実質上不浸透性のコラーゲンシートと、厚さ約50μmのコラーゲン/GAG接着層と、厚さ約1mmの多孔質コラーゲン/GAGの足場とを含む。この材料は、続いて前述の物理的または化学的架橋方法を用いて架橋することができる。多孔質コラーゲン系材料を押出成形コラーゲンシートと接着させることにより、多孔質層に細胞、タンパク質、または他の巨大分子成分などの種を、送達後のそれらの周囲の環境中への漏洩なしに搭載することを可能にする実質上不浸透性の層を有するバイオマテリアルが作り出される。押出成形コラーゲンシートは、5Nを超える引張荷重を支えるのに十分な機械的強度のものである。この機械的強度はシートを、これらには限定されないが縫合、鋲留め、ダーツの使用、縫合糸とポリマータブまたはボタンとを含む装具などの複合装具の使用、縫合糸通し具、フィブリン糊などの生体接着剤、血餅の誘発を伴う手法、あるいは他の自己体液からの接着剤の形成による手法を含めた様々な整形外科固定技術により軟組織に取り付けることを可能にする。
【0073】
本発明の方法を用いて多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料を結合させることはまた、安定化させた詰め物として使用し、それによって多孔質材料を欠損部位に挿入した場合にその無孔質材料の重なり部分が多孔質材料の構造的安定性をもたらすことができるバイオマテリアルの生産を可能にする。この構成が最も適用される欠損部位の例には、(i)軟骨の欠損、(ii)抜歯窩、(iii)皮膚損傷、および(iv)半月の欠損が挙げられる。
【0074】
図4aは、個々の断片を切り抜くことにより個々の成分を選定することができるような、または複数の近接部位中に多孔質の足場を設けるためのアッセンブリとして使用することができるような、押出成形コラーゲンシート(10、60)上に多様な異なる形状およびサイズの多孔質コラーゲン(30、70)を備えたバイオマテリアルのシート(50)を図示する。多孔質領域(70)は、接着性コラーゲンゲルの接着層(図示せず)を用いて押出成形コラーゲンシートに接着される。このバイオマテリアルをどのように軟組織欠損部位(80)中に当てはめることができるかを詳述した概略図を図4bに示す。
【0075】
図5aは、半月の欠損部(130)中に挿入するための本発明による半月欠損部充填装具(100)を詳述した概略図を示す。この欠損部位は、無傷の外側半月の縁を有する切除された半月である。装具(100)の多孔質部分(120)は、半月(130)の欠損部位にぴったり合うように形成され、半月(130)を包む無孔質部分(110)に取り付けられる。インプラント(100)は、縫合糸(140)などの固定手段によって所定の場所に収めることができる。鋲留め、ダーツの使用、縫合糸とポリマータブまたはボタンとを含む装具などの複合装具の使用、縫合糸通し具、フィブリン糊などの生体接着剤、血餅の誘発を伴う手法、または他の自己体液からの接着剤の形成に基づく手法、あるいは当業者に知られている任意の他の手段などの他の固定手段もまた使用することができる。図5bは、インプラント(100)が欠損部位で縫合糸(140)によって所定位置に固定された状態の半月(3)の断面を示す。
【0076】
本発明のさらなる用途は、図6aの概略図に示すような動脈閉鎖装具としてのものであってもよい。動脈閉鎖装具(200)は、本発明による無孔質部分(210)と多孔質部分(220)で作られる。多孔質部分(220)は動脈(230)にぴったり合うように設計され、また無孔質部分(210)は閉鎖を実現するために動脈壁の外面を包むのに十分な可撓性であるように設計される。装具(200)がいったん所を得ると、それを縫合糸(240)によって動脈(230)に固定することができる。鋲留め、ダーツの使用、縫合糸とポリマータブまたはボタンとを含む装具などの複合装具の使用、縫合糸通し具、フィブリン糊などの生体接着剤、血餅の誘発を伴う手法、あるいは他の自己体液からの接着剤の形成に基づく手法などの他の適切な固定手段もまた使用することができる。図6bは、その場所での動脈閉鎖装具(200)の断面を示す。
【0077】
要約すると、本出願人は、好都合なことに多孔性と機械的強度の両方を有するバイオマテリアルの新規な構成を作り出すことができる製造方法を開発した。この方法は、無孔質コラーゲン系材料と多孔質コラーゲン系材料を接合するためにコラーゲンを含むゲルの接着層を使用することに依拠する。この方法で使用される材料の水和および結果として得られるバイオマテリアルの乾燥は、そのバイオマテリアルの必要とされる孔隙率および構造/形状を保つためにしっかりと制御される。乾燥においては、バイオマテリアルに多孔質成分の歪みなしに三次元構造を与えるために乾燥工程の間を通じて物理的拘束を使用することができる。好ましくはこの方法は、潜在的に細胞毒性のある最終製品または副産物の生成を引き起こさない架橋のステップを含む(通常は、後続の洗浄のステップによる除去を必要とする)。ゲルの化学的性質は、使用される架橋の種類の要求に応えることができる。この方法は、全体に緻密な材料の凍結乾燥、コラーゲンゲル中での注型、または機械的一体化などの、個々の成分の構造および特性の大半が失われる他の構築方法よりも大幅に優れている。具体的には本発明は、繊維または配向シートなどの配向した緻密な無孔質コラーゲン材料の多孔質材料との一体化を可能にし、こうして骨−腱または骨−靭帯の境界面の構造を模倣する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)コラーゲンを含むゲルの制御された量の接着層を無孔質コラーゲン系材料の接着面に塗布することによって多孔質コラーゲン系材料を前記無孔質コラーゲン系材料に接合し、前記接着面に塗布された前記ゲルを前記多孔質コラーゲン系材料の表面と接触させて前記材料の境界面で前記多孔質材料の部分を部分的に水和させるステップと、
b)前記ゲルを乾燥して前記材料を相互に接着させるステップと、および
c)前記接着層中の前記コラーゲンを架橋するステップと
を含むことを特徴とする、バイオマテリアルの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、乾燥のステップ(b)の間、前記材料の構造/形状が歪みなしに実質上保持されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、ステップ(b)が空気乾燥を含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法において、前記バイオマテリアルを取り囲む環境の温度および湿度を制御して乾燥速度を制御することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の方法において、前記接着層中の塗布されたゲルの量が50〜500μL/cmの間であることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法において、前記ゲルが前記接着面に塗布される前に酸性またはアルカリ性であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記ゲルが中性pHでゲル化することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記ゲルのpHが前記接着面への塗布時に中和されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項に記載の方法において、前記ゲルが0.1〜2% wt/volのコラーゲンを含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の方法において、前記ゲルがコンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、およびヒアルロン酸からなる群から選択されるグリコサミノグリカンをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法において、前記ゲルが0.01〜12wt%のグリコサミノグリカンを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の方法において、前記ゲルの組成が前記多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料の組成と同一であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項10乃至12の何れか1項に記載の方法において、前記ゲル中の前記コラーゲンおよびGAGの濃度が、前記多孔質コラーゲン系材料中の前記コラーゲンおよびいずれかのGAGの濃度と同一であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項2乃至13の何れか1項に記載の方法において、前記材料の接着を確実にするのに十分なゲルだけを使用することによって歪みが最小限に抑えられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項2乃至14の何れか1項に記載の方法において、前記バイオマテリアルをケージ、金型、プレス、または枠中で束縛して、それが乾燥している最中に構造歪みを最小限に抑えることによって前記構造/形状が保持されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項2乃至15の何れか1項に記載の方法において、前記バイオマテリアルをそれが乾燥している最中に剛性シート間にはさむことによって前記構造/形状が保持されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項2乃至16の何れか1項に記載の方法において、前記無孔質材料の前記接着面以外の面を支持体に接着することによって前記構造/形状が保持されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1乃至17の何れか1項に記載の方法において、架橋のステップ(c)が物理的架橋処理を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1乃至18の何れか1項に記載の方法において、架橋のステップ(c)が、アミン基とカルボン酸基を結合させる縮合反応を生じさせるために前記乾燥バイオマテリアルに施される脱水熱処理を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1乃至19の何れか1項に記載の方法において、架橋のステップ(c)は、前記ゲルの前記pHが塗布後に中和している最中に行われ、前記ゲル中での原線維形成を引き起こすことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1乃至20の何れか1項に記載の方法において、架橋のステップ(c)がUV処理を含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法において、前記ゲルが、前記UV処理を最適化するヒドロキシル含有成分をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1乃至22の何れか1項に記載の方法において、架橋のステップ(c)が、不揮発性副産物の形成を引き起こさない気相化学架橋剤の使用を含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法において、前記気相化学架橋剤が、グルタルアルデヒド、ホルムアルデヒド、およびヘキサメチルジイソシアナートからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項1乃至24の何れか1項に記載の方法において、前記ゲルが、前記無孔質コラーゲン系材料および前記多孔質コラーゲン系材料と反応して副産物を放出せずに架橋を達成する反応性基を有する成分をさらに含み、前記成分がアルデヒドで官能基化した(過ヨウ素酸ナトリウムで活性化した)。NHSで活性化したエステル、トリアジンで活性化したコラーゲン、およびエポキシドで官能基化したコラーゲンからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項1乃至25の何れか1項に記載の方法において、無孔質コラーゲン系材料の1個または複数個の断片または領域を、多孔質コラーゲン系材料の1個または複数個の断片または領域に接合されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項1乃至26の何れか1項に記載の方法において、前記多孔質コラーゲン系材料の元の孔隙率の95%超が保持されることを特徴とする方法。
【請求項28】
コラーゲンを含む乾燥ゲルの接着層と接着した多孔質および無孔質コラーゲン系材料を含む製造されたバイオマテリアルにおいて、前記接着層中の前記コラーゲンが架橋されることを特徴とするバイオマテリアル。
【請求項29】
請求項1乃至28の何れか1項に記載のバイオマテリアルの製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記接着層が厚さ50〜100μmであることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項30】
請求項29または請求項30に記載のバイオマテリアルにおいて、前記多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料中の前記コラーゲンが架橋されることを特徴とするバイオマテリアル。
【請求項31】
請求項28乃至30の何れか1項に記載のバイオマテリアルにおいて、前記多孔質コラーゲン系材料がその元の孔隙率の95%超を有することを特徴とするバイオマテリアル。
【請求項32】
請求項28乃至31の何れか1項に記載のバイオマテリアルにおいて、前記コラーゲンが、5〜90wt%(乾燥)、または15〜60wt%(乾燥)、または20〜40wt%(乾燥)の量で前記材料中に存在することを特徴とするバイオマテリアル。
【請求項33】
請求項1乃至32の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料が、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、またはタンパク質からなる群から選択される他のバイオポリマー成分を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項34】
請求項33に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、1種類または複数種類のグリコサミノグリカンが、0.01〜12wt%(乾燥)、または1〜5.5wt%(乾燥)、または1.8〜2.3wt%(乾燥)の量で前記材料中に存在することを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項35】
請求項34に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記グリコサミノグリカンが、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヒアルロン酸、またはキトサンからなる群から選択されることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項36】
請求項33乃至35の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記コラーゲンと前記グリコサミノグリカンが架橋されることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項37】
請求項33に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記プロテオグリカンがデコリンであることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項38】
請求項33に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記タンパク質が、エラスチンおよびレシリンからなる群から選択されることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項39】
請求項1乃至38の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記多孔質コラーゲン系材料が非石灰化、または石灰化されることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項40】
請求項39に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記多孔質コラーゲン系材料がリン酸カルシウムを含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項41】
請求項40に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記リン酸カルシウムが、ブラッシュ石、リン酸オクタカルシウム、アパタイト、ヒドロキシアパタイト、リン酸β−三カルシウム、二相性リン酸カルシウム、置換リン酸カルシウム、ケイ酸置換リン酸カルシウム、ケイ酸置換ヒドロキシアパタイト、およびケイ酸置換リン酸三カルシウムからなる群から選択されることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項42】
請求項1乃至41の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記多孔質コラーゲン系材料が、コラーゲンとグリコサミノグリカンまたはリン酸カルシウムとの共沈物を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項43】
請求項1乃至42の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記多孔質コラーゲン系材料が、コラーゲンとグリコサミノグリカンとリン酸カルシウムとの三重共沈物を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項44】
請求項1乃至43の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、1種類または複数種類のグリコサミノグリカンが、0.01〜12wt%(乾燥)、または1〜5.5wt%(乾燥)、または1.8〜2.3wt%(乾燥)の量で前記材料中に存在することを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項45】
請求項1乃至44の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記無孔質コラーゲン系材料が押出成形コラーゲンシートを含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項46】
請求項1乃至45の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記無孔質コラーゲン系材料が押出成形コラーゲン繊維の束を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項47】
請求項1乃至46の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記多孔質コラーゲン系材料が多孔質コラーゲンの足場を含み、かつ前記無孔質コラーゲン系材料が配向コラーゲン繊維を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項48】
請求項1乃至47の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記バイオマテリアルが、多孔質および/または無孔質コラーゲン系材料の多数の領域を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項49】
請求項48に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記バイオマテリアルが、各末端に多孔質石灰化コラーゲン系材料を有する無孔質配向コラーゲン繊維を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項50】
請求項49に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記バイオマテリアルがシャーピー線維として知られる骨−腱付着構造物を模倣し、前記バイオマテリアルが実質上平行な無孔質コラーゲン繊維と、各端部に多孔質石灰化コラーゲン系材料とを含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項51】
請求項1乃至38の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記バイオマテリアルが、コラーゲンとGAGを含む多孔質コラーゲン系材料に接着した無孔質コラーゲン膜を含む非石灰化多孔質パッチであることを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項52】
請求項51に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記非石灰化多孔質パッチが、前記多孔質コラーゲン系材料の2個以上の領域を含むことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項53】
請求項1乃至52の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記無孔質コラーゲン系材料が、前記多孔質コラーゲン系材料の中から外への細胞、タンパク質、および小分子の輸送のバリアとして働くことを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項54】
請求項1乃至53の何れか1項に記載の製造方法またはバイオマテリアルにおいて、前記無孔質コラーゲン系材料が、前記多孔質コラーゲン系材料と重なり合って、欠損部位中の装具の固定を可能にする皮弁を提供することを特徴とする方法またはバイオマテリアル。
【請求項55】
請求項28乃至54の何れか1項に記載の前記製造されたバイオマテリアルを含むインプラント。
【請求項56】
細胞をさらに含む、請求項28乃至55の何れか1項に記載のインプラントまたはバイオマテリアル。
【請求項57】
請求項28乃至55の何れか1項に記載のバイオマテリアルまたはインプラントを含む人工の軟骨、硬骨、靭帯、腱、半月、歯周組織、象牙質、エナメル質、椎間板、線維輪、または髄核のインプラント、または移植片、代用品、足場、充填材、塗料、またはセメント。
【請求項58】
多孔質コラーゲン系材料と無孔質コラーゲン系材料を接着させるためのコラーゲンゲルの使用。
【請求項59】
患者の標的組織中の欠損部の治療方法において、請求項28乃至56の何れか1項に記載のバイオマテリアルまたはインプラントを選ぶステップと、前記材料を前記患者の前記欠損部位に挿入するステップとを含む、方法。
【請求項60】
患者における器官または組織の設計方法において、前記患者の標的組織を請求項28乃至56の何れか1項に記載のバイオマテリアルまたはインプラントで置き換えるステップを含む。
【請求項61】
患者の標的組織中の欠損部を治療するための、請求項28乃至56の何れか1項に記載のバイオマテリアルまたはインプラントの使用。
【請求項62】
患者の標的組織の組織工学における請求項28乃至56の何れか1項に記載のバイオマテリアルまたはインプラントの使用。
【請求項63】
請求項59乃至62の何れか1項に記載の方法または使用において、前記標的組織が、軟骨、硬骨、靭帯、腱、動脈、シャーピー線維、半月、歯周組織、象牙質、エナメル質、椎間板、線維輪、および髄核からなる群から選択されることを特徴とする方法または使用。
【請求項64】
請求項59乃至63の何れか1項に記載の方法または使用において、前記患者が哺乳動物または非ヒト哺乳動物であることを特徴とする方法または使用。
【請求項65】
請求項64に記載の方法または使用において、前記患者がヒト、イヌ、ラクダ、またはウマであることを特徴とする方法または使用。
【請求項66】
請求項59乃至65の何れか1項に記載の方法または使用において、前記バイオマテリアルが固定手段によって前記欠損部位に固定されることを特徴とする方法または使用。
【請求項67】
請求項66に記載の方法または使用において、前記固定手段が、縫合糸、鋲、ダーツ、ポリマータブ、生体接着剤、フィブリン糊、血餅形成手段、自己体液からの接着剤、または前記固定手段の1つまたは複数を含む複合手段から選択されることを特徴とする方法または使用。
【請求項68】
請求項28乃至56の何れか1項に記載のバイオマテリアルまたはインプラントを含むパーツを送達装置と組み合わせたキット。
【請求項69】
請求項68に記載のキットにおいて、複数種類のバイオマテリアルもしくはインプラントもしくは送達装置、またはこれらの組合せをさらに含む、キット。
【請求項70】
請求項28乃至54の何れか1項に記載の前記バイオマテリアルを含む半月欠損インプラント。
【請求項71】
請求項70に記載の半月欠損インプラントにおいて、前記インプラントが、縫合糸、鋲、ダーツ、ポリマータブ、生体接着剤、フィブリン糊、血餅形成手段、自己体液からの接着剤、または前記固定手段の1つまたは複数を含む複合手段によって前記半月に固定されることを特徴とするインプラント。
【請求項72】
細胞をさらに含む、請求項70または71に記載の半月欠損インプラント。
【請求項73】
請求項28乃至54の何れか1項に記載の前記バイオマテリアルを含む動脈閉鎖装具。
【請求項74】
請求項73に記載の動脈閉鎖装具において、前記装具が、縫合糸、鋲、ダーツ、ポリマータブ、生体接着剤、フィブリン糊、血餅形成手段、自己体液からの接着剤、または前記固定手段の1つまたは複数を含む複合手段によって動脈に固定されることを特徴とする装具。
【請求項75】
細胞をさらに含む、請求項73または74に記載の動脈閉鎖装具。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2013−521036(P2013−521036A)
【公表日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−555497(P2012−555497)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050439
【国際公開番号】WO2011/107807
【国際公開日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(512227199)ティージェニックス リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】TIGENIX LIMITED
【Fターム(参考)】