説明

製鉄用副資材の製造方法

【課題】 昇温および耐火物保護の2つの目的が同時に達成可能な製鋼用副資材
【解決手段】高温で溶融処理した繊維状廃棄物に炭素材、マグネシウム化合物、バインダーを加えて混練し、粒径30〜80mmに成形してなる製鋼用副資材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製銑・製鋼工程における溶銑の脱リン(P)及び昇熱、脱炭(C)を行う際に使用される副資材に関するものである。より詳しくは、溶銑中に気体酸素を吹き込んで、溶銑内に存在する不純物であるリン及びカーボンを分離・除去する際に、同時におこる鉄(Fe)の酸化ロスを最小限に抑制し、さらに溶銑中の脱炭反応に伴って起きる溶鋼の激しい運動に起因する耐火物の溶損防止を目的とした製鉄用副資材に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉より取り出された溶銑は、脱硫(S)、脱シリコン(Si)、および脱リン等のいわゆる溶銑予備処理が施された後、製鋼工場に運ばれ転炉に装入される。ここでは、転炉操業を例にとって説明する。転炉においては、高圧・高速の気体酸素が炉上からランスおよび/または炉底に設けられた羽口より溶鋼中に吹き込まれ、溶鋼中に含有される不純物、特に炭素(C)が下記反応(1)により酸化除去される。
【化1】

この際の溶鋼温度は高ければ高いほど、脱炭等、不純物の酸化除去は効率よく行うことが出来る。一般には1,600〜1,750℃で処理される。しかし、高炉より取り出された溶銑は、溶銑予備処理作業等で、すでに長時間を経ている溶銑の温度は1,500℃程度まで下がっていることが多い。
【0003】
従って、溶銑中に存在する炭素自身が燃焼して発生する燃焼熱のみでは、十分な高温が得られず、効率の良い精錬、すなわち不純物除去は行えない。そこで、従来では溶銑が転炉に装入されると、直ちに昇熱材としてコークス、無煙炭、土状黒鉛等の炭材が投入され、これを燃焼して発生する燃焼熱で昇温する。
【化2】

【0004】
また、酸素吹錬の途中で、特に本操作の末期においてスラグが膨れ上がり、炉外へ溢れるようなフォーミング現象が発生することがある。この現象は、気体酸素の吹き込みによって、溶銑中の炭素が酸素と反応し(前記反応(1)参照)、小さなCOガスの気泡がスラグ中に形成されて溶銑中に滞留し、且つ何らかの原因で一気に放出されることに起因するものと考えられている。当該現象が発生すると、転炉の内張りレンガを損傷させ、更にはスラグのみならず、メタルも炉外に溢れ出る場合がある。このような状態では操炉作業が危険であり、Feの歩留を低下させ、且つ転炉での生産性を著しく阻害する。そこで、現状では、前記現象が発生する兆しが見えると、直ちに炉上のバンカーに貯えてある鎮静材を炉内に投入し、スラグのフォーミングを鎮静させることが行われている。この目的に通常使用されている鎮静材には、特許文献1、特許文献2、特許文献3に示されるように、製紙スラッジ、木屑等の有機物と製鋼スラグ等の無機物を混合・成形したものがある。
【0005】
【特許文献1】特公昭 55−51490
【特許文献2】特公昭 57−39291
【特許文献3】特公昭 58−42241
【0006】
さらに、気体酸素の吹き込みによって起こる脱炭反応(前記反応(1)参照)は過激なもので、溶鋼は転炉内で激しく揺動する。溶鋼は比重が大きい上、且つ高温であるため転炉の内張りに用いられている耐火物は、著しく損傷を受ける。そこで、これら耐火物を保護し、また損傷部分を補修する目的でドロマイト、軽焼マグネシア等が投入されている。転炉の耐火物は主として酸化マグネシウム(MgO)で構成されており、投入されたドロマイト、軽焼マグネシア(MgO)が溶融して耐火物の表面をコーティングし、耐火物を保護してくれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、現状では冷却された溶鋼の「昇温材」、フォーミングしたスラグの「鎮静材」、および転炉内張りの「耐火物保護材」に対応して3種類の副資材が使用されている。具体的に、昇温材としてはコークス、無煙炭、土状黒鉛等の炭材、鎮静材としては製紙スラッジ、木屑等と製鋼スラグ等の混合物、さらに耐火物保護材としてはドロマイト、軽焼マグネシア等が使用されている。即ち、現状では目的に応じて3種類の副資材が使用されており、これに対応して受け入れホッパーより炉上バンカーまで3系列の設備が装備されている。また、これに付随して、在庫管理、準備作業、投入作業等にも費用がかかることになり、結果的に製鋼コストの上昇を招いている。
【0008】
スラグのフォーミング現象はチャージ毎に発生するものではないため「鎮静材」は必ずしも必要とは言えない。しかし、「昇温材」及び「耐火物保護材」はいかなる場合も必要であり、昇温材と耐火物保護材の添加は、毎チャージ不可欠となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これまで転炉副資材として、前記目的に対応して2種類の副資材を使用してきた。その理由は、副資材の種類によって投入時期をかえなければ効果がないと考えられてきたからである。しかしながら、本発明者等は製鋼現場の技術者と共に、作業方法および副資材投入時期に関し、種々のテストを繰り返し行った結果、ある一定の条件下で且つ投入時間を特定すれば、1種類の副資材でも2つの目的を達成できることを見出した。そこで、安価で、不純物が少なく且つ2つの目的、即ち昇温、および耐火物保護が同時に行える副資材の開発を進めた結果、本発明を提案する。
【発明の効果】
【0010】
以上記載のように、本発明の製鋼用副資材によれば、1種類の副資材によって、2つの目的を同時に達成することが出来、在庫管理、準備作業および投入作業の手間が省けるなど大きな合理化が可能となる。また、成形する際に粒状のガラスを混入させることにより、容易に強固なブリケットが出来るというメリットがある。更にはブリケット中に低融点のガラスが含まれるため、転炉への投入時に滓化時間の短縮が可能となり、生産性の向上に寄与することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1を参照して本発明の好適な実施携帯を例示的に詳しく説明する。但し、この実施携帯に記載されている構成の種類、材質、計上、その相対的配置等は特に特定的な記載がないかぎりは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。本発明で提案する製鉄用副資材の原料として、繊維状廃棄物1(アスベスト、ガラス繊維、ロックウールスラグウール、FRP樹脂)とフラックス2(廃鋳物砂、アルミドロス、牡蠣殻およびレンガ屑)とを、液体3(油または水)を入れた粉砕機4により5mm以下に粉砕する。当該粉砕物をフィーダー5で、高温状態に保持してある燃焼旋回溶融炉6に供給して溶融ガラスを造り、保持炉7に一時貯蔵する。当該溶融ガラスを保持炉7から水槽8の水中に排出して水砕ガラス粒子を製造する。当該水砕ガラスを水砕機9で粉砕して粒径を調整して原料の水砕ガラス10を製造する。次に、炭化物11(石炭、コークスあるいは有機系廃棄物を炭化して得られた炭化物等)、水砕ガラス10、マグネシウム化合物12(マグネサイト、ドロマイト等)、バインダー13とを、混合機14で混合して組成を調整し、造粒機15で造粒して製品の形態であるブリケットを製造16する。前記、水砕ガラス10の形状は球形に近く、また強固に成形されているため、ハンドリング中、あるいは炉上バンカーでの貯蔵中に崩壊・粉化することもなく、又バンカー内にて棚吊りを起すこともない。更にはバンカーから自動切出しを行う際にも、バンカー出口にて詰まることなく、安定的な切出しが可能である。
【0012】
また、水砕ガラス10,炭化物11、マグネシウム化合物12、の種類および配合割合は、鋼種、転炉の操業条件、あるいは耐火物の損傷状況等により調整する。例えば、溶銑温度が低下し過ぎる場合には、炭化物の配合比率を増加する必要がある。また、炉内に投入された成形物の滓化を急がなければならないときには、水砕ガラスの配合量を増加する必要がある。勿論、耐火物の寿命が短い場合、あるいは部分的に損傷を受けた場合には、マグネシウム化合物の配合比率を増加させる措置がとられることは言うまでもない。
【0013】
更には、この発明の副資材のサイズは、最大径が30mmより80mmの範囲であることが望ましい。その理由は、30mm未満であれば投入時、落下スピードが遅くスラグ中に進入しにくいという課題があり、また80mmを超えると投入しても滓化するのに時間がかかり、生産性を低下させるなどの問題を生じさせるからである。
【実施例1】
【0014】
廃アスベスト90kgを軽油10kgと共にボールミルに装入し、約30分間粉砕・混合したものを、図1に示すフローにより以下の要領にて処理した。使用した廃アスベストの組成を表1に示す。
【表1】

【0015】
上述の混合物を旋回溶融炉の頂部より装入し高温の燃焼ガスにより溶融して保持炉内に導入して温度及び成分の均一化を行った。
又、燃料ガスを得るために灯油を燃焼させた。
溶融条件を表2に示す。純溶融時間は約4時間であり、得られたガラスは約85kgであった。
【表2】

【0016】
表3に示す材料を、同表に示す割合で配合し、下記造粒機によりブリケットを製造した。
【表3】

ブリケット製造に使用した造粒機の仕様を以下に示す。
・ロール径 : 500mmφ
・ロール幅 : 280mmL
・圧 力 : 3Ton/cm2
・ブリケット形状 :アーモンド型
・ブリケットサイズ:40×40×15mm(単重約60g)
ガラスは、溶融後に水砕したものを7mmφ以下に整粒して使用することにより、極めて強固なブリケットを製造した。ブリケットの製造量は約400kgであった。ブリケット成形後の組成を表4に示す。
【表4】

【0017】
前記の方法で製造したブリケットを原料として、処理規模250トンの転炉を使用して、チャージ回数2回の運転を行った。その結果、炭材及び軽焼マグネシアを別々に投入したものに比べて、本発明によるブリケットを使用することにより、滓化が10%短縮され、昇温も従来の通常運転通りの効果を確認した。また、スラグの性状、出鋼後の目視検査において、従来と同じ効果を確認した。
【実施例2】
【0018】
廃FRPについて、ガラス繊維を主体とする廃棄物100kgを軽油10kgと共にボールミルに装入し、約30分間粉砕・混合したものを、図1に示すフローにより以下の要領にて処理した。使用した廃FRPの組成を表5に示す。
【表5】

【0019】
上述の混合物を旋回溶融炉の頂部より装入し高温の燃焼ガスにより溶融して保持炉内に導入して温度及び成分の均一化を行った。又、燃料ガスを得るために灯油を燃焼させた。溶融条件を表6に示す。純溶融時間は約4時間であり、得られたガラスは約73kgであった。
【表6】

【0020】
表7に示す材料を、同表に示す割合で配合し、下記造粒機によりブリケットを製造した。
【表7】

ブリケット製造に使用した造粒機の仕様を以下に示す。
・ロール径 : 500mmφ
・ロール幅 : 280mmL
・圧 力 : 3Ton/cm2
・ブリケット形状 :アーモンド型
・ブリケットサイズ:40×40×15mm(単重約60g)
ガラスは、溶融後に水砕したものを7mmφ以下に整粒して使用することにより、極めて強固なブリケットを製造した。ブリケットの製造量は約3,650kgであった。ブリケット成形後の組成を表8に示す。
【表8】

【0021】
前記の方法で製造したブリケットを原料として、処理規模250トンの転炉を使用して、チャージ回数2回の運転を行った。その結果、炭材及び軽焼マグネシアを別々に投入したものに比べて、本発明によるブリケットを使用することにより、滓化が8%短縮され、昇温も従来の通常運転通りの効果を確認した。また、スラグの性状、出鋼後の目視検査において、従来と同じ効果を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例に係る製鉄用副資材の製造方法に関するシステムを示す。
【符号の説明】
【0023】
1 繊維状廃棄物
2 フラックス
3 油または水
4 粉砕機
5 フィーダー
6 燃焼旋回溶融炉
7 保持炉
8 溶融ガラス
9 水砕機
10 水砕ガラス
11 炭化物
12 マグネシウム化合物
13 バインダー
14 混合機
15 造粒機
16 ブリケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中で繊維状廃棄物をフラックスと共に混合した後、粉砕機により5mm以下に粉砕して、当該粉砕物を原料とすることを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、繊維状廃棄物がアスベスト、ガラス繊維、ロックウールスラグウール、FRP樹脂であることを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。
【請求項3】
請求項1、請求項2において、5mm以下に粉砕した当該粉砕物を、高温状態に保持してある燃焼旋回溶融炉に供給して溶融ガラスを造り、当該溶融ガラスを溶融炉から水中に排出して水砕ガラス粒子を製造することを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。
【請求項4】
請求項1、請求項2、請求項3において、当該水砕ガラス粒子に、マグネシウム化合物、炭素材、バインダーとを混練し、当該混練物を成形することを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。
【請求項5】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4において、当該フラックスが廃鋳物砂、アルミドロス、牡蠣殻およびレンガ屑であることを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5において、当該マグネシウム化合物がマグネサイト、焼成マグネシア、ドロマイトおよび焼成ドロマイトであることを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。
【請求項7】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6において、当該炭素材がコークス、ペトコーク、石炭および有機物を炭化して得られた炭化物であることを特徴とする製鉄用副資材の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−253031(P2007−253031A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78898(P2006−78898)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000236104)MHIソリューションテクノロジーズ株式会社 (33)
【出願人】(300078615)広島ガステクノ株式会社 (13)
【出願人】(598098467)株式会社 メッツコーポレーション (10)
【Fターム(参考)】