説明

複合体シートの製造方法

【課題】低コストで行うことができる、微細セルロースを用いた複合体シートの製造方法の提供。
【解決手段】微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する工程と、微細セルロース分散液を塗布された疎水性基材を乾燥させて、微細セルロースと疎水性基材との複合体シートを得る工程とを具備する、複合体シートの製造方法であって、濡れ・浸透剤の種類と、水と濡れ・浸透剤との合計に対する濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、エチルアルコール:濃度20%以上40%未満、1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満、イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満、1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下、2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下、t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合体シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生用又は医療用製品に用いられるシート状又はフィルム状材料には、液体を漏らさない一方で、ある程度の通気性が必要とされる。
従来、耐水性と通気性との両立が要求されるおむつのバックシート等のシート素材として、ポリエチレン等の疎水性フィルムに炭酸カルシウム等のフィラーと異種ポリマーとの混合による相分離層を形成させた微多孔質フィルムが使用されている。
しかしながら、この微多孔質フィルムは、JIS P8117の規定する透気度が500秒/100mL以上であり、実用上十分な通気性能を発揮するものとはいえない。
これに対して、不織布と微細繊維状セルロースからなる複合シート材に撥水材と脱臭剤が積層されてなり、前記撥水材が、オレフィン系撥水剤及びパラフィン系撥水剤から選ばれた少なくとも1種と、合成樹脂系バインダーと、架橋剤とを含有する通気性シートが提案されている(特許文献1参照。)。
また、不織布からなり100mmH2O以上の耐水圧を有する疎水性不織布層と、該疎水性不織布層上に積層されたセルロース繊維からなるセルロース繊維層とを有し、主面が撥水処理されている高通気性耐水性シートも提案されている(特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2008/065748号パンフレット
【特許文献2】特開2007−230139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の通気性シート及び特許文献2に記載の高通気性耐水性シートは、いずれも、不織布上への微細セルロースの塗布に用いるセルロース分散液に、多量のエチルアルコールを用いる必要があり、また、工業的にはその回収が必須なものとなるため、回収コスト及び回収できない分の補充コストが高くなってしまうという問題があった。
したがって、本発明は、低コストで行うことができる、微細セルロースを用いた複合体シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来、微細セルロースの安定的な分散状態を維持しつつ、その分散液を不織布の表面に塗布して複層体を得る方法において、水に多量の有機溶媒を含有させた混合溶媒を用いることが有用であることが知られている(例えば、特開平10−248872号公報参照。)。
実際、不織布上への微細セルロースの塗布に用いるセルロース分散液としては、特許文献1においては、エチルアルコール/水=65/35(重量比)の混合溶媒が用いられており、特許文献2においては、エチルアルコール/水=50/50(重量比)の混合溶媒が用いられている。
このような水に多量の有機溶媒を含有させた混合溶媒を用いるのは、微細セルロースの分散液を安定化させるために必須であると考えられているからであり、また、このような混合溶媒を用いると疎水性や撥水性を持つ不織布上への塗布を問題なく実施することができたからである。
したがって、従来、不織布上への微細セルロースの塗布に用いるセルロース分散液としては、水に多量の有機溶媒を含有させた混合溶媒を用いることが必須であると考えられてきたのである。
【0006】
しかしながら、本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、このような従来の技術常識からは到底考えられないことであるが、特定のアルコールを従来の量より少ない特定の量で微細セルロースの分散液に用いた場合に、微細セルロースを用いた複合体シートの製造を低コストで行うことができるだけでなく、複合体シートを工業的に製造する際の種々の要求を満たすことができることを見出し、本発明を完成させたのである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)を提供する。
(1)微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する微細セルロース塗布工程と、
前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させて、前記微細セルロースと前記疎水性基材との複合体シートを得る乾燥工程と
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
前記濡れ・浸透剤の種類と、前記微細セルロース分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
(2)更に、前記塗布工程の後かつ前記乾燥工程の前に、
耐水処理剤と水とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥前耐水処理剤塗布工程
を具備する、上記(1)に記載の複合体シートの製造方法。
【0008】
(3)微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する微細セルロース塗布工程と、
前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させる第1乾燥工程と、
耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥後耐水処理剤塗布工程と、
前記耐水処理剤分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させ、複合体シートを得る第2乾燥工程と
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
前記微細セルロース塗布工程及び前記乾燥後耐水処理剤塗布工程の両方において、前記濡れ・浸透剤の種類と、前記微細セルロース分散液又は前記耐水処理剤分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
(4)更に、前記塗布工程の後かつ前記第1乾燥工程の前に、
耐水処理剤と水とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥前耐水処理剤塗布工程
を具備する、上記(3)に記載の複合体シートの製造方法。
【0009】
(5)更に、耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記微細セルロース分散液を塗布されるのと反対側の表面に塗布する耐水処理剤裏側塗布工程
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
耐水処理剤裏側塗布工程において、前記濡れ・浸透剤の種類と、前記耐水処理剤分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
(6)前記微細セルロース分散液が、更に、耐水処理剤を含有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
(7)前記耐水処理剤の少なくとも一つが樹脂のエマルジョン及び/又はラテックス類である、上記(6)に記載の複合体シートの製造方法。
(8)前記微細セルロースが、単位質量の微細セルロースが保持しうる水の体積を表す抱水量が10mL/g以上である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
(9)前記微細セルロースが、バイオセルロース及び/又はミクロフィブリル化セルロースである、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
(10)前記疎水性基材が、目付量10〜50g/m2の疎水性合成繊維の不織布である、上記(1)〜(9)のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
(11)前記不織布が、スパンボンド・メルトブローン複合体不織布である、上記(10)に記載の複合体シートの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合体シートの製造方法は、低コストで行うことができるだけでなく、複合体シートを工業的に製造する際の種々の要求を満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施態様1を示す説明図である。
【図2】実施態様2を示す説明図である。
【図3】実施態様3を示す説明図である。
【図4】実施態様4を示す説明図である。
【図5】実施態様5及び6を示す説明図である。
【図6】45°傾斜法試験の説明図である。
【図7】リング式シールテストの説明図である。
【図8】実施例の複合体シートの製造に用いられたパイロットプラントの概要を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複合体シートを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1の態様は、微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する微細セルロース塗布工程と、
前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させて、前記微細セルロースと前記疎水性基材との複合体シートを得る乾燥工程と
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
前記濡れ・浸透剤の種類と、前記微細セルロース分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法である。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
【0013】
本発明の第2の態様は、微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する微細セルロース塗布工程と、
前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させる第1乾燥工程と、
耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥後耐水処理剤塗布工程と、
前記耐水処理剤分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させ、複合体シートを得る第2乾燥工程と
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
前記微細セルロース塗布工程及び前記乾燥後耐水処理剤塗布工程の両方において、前記濡れ・浸透剤の種類と、前記微細セルロース分散液又は前記耐水処理剤分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、上記(a)〜(g)からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法である。
【0014】
本発明の第1の態様及び本発明の第2の態様のいずれにおいても、更に、前記塗布工程の後かつ前記乾燥工程(第1乾燥工程)の前に、
耐水処理剤と水とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥前耐水処理剤塗布工程
を具備するのが好ましい態様の一つである。
【0015】
また、本発明の第1の態様及び本発明の第2の態様のいずれにおいても、更に、
耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記微細セルロース分散液を塗布されるのと反対側の表面に塗布する耐水処理剤裏側塗布工程
を具備し、
耐水処理剤裏側塗布工程において、前記濡れ・浸透剤の種類と、前記耐水処理剤分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、上記(a)〜(g)からなる群から選ばれるのが好ましい態様の一つである。
【0016】
本発明の第1の態様と本発明の第2の態様とは、微細セルロース塗布工程と乾燥工程(第1乾燥工程)とを具備する点で共通し、本発明の第1の態様にない乾燥後耐水処理剤塗布工程と第2乾燥工程とを本発明の第2の態様が具備する点で相違する。
【0017】
(1)微細セルロース塗布工程
微細セルロース塗布工程は、微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する工程である。
微細セルロースは、その一部又は全部が極めて細い繊維、具体的には、セルロース鎖が数十本結合したミクロフィブリルのレベルの細さを有する繊維からなる。微細セルロースの製造方法としては、例えば、酢酸菌の発酵によってバイオセルロース(バクテリアセルロース)を得る方法、パルプを砥粒板擦り合わせ装置を用いて微細化する方法(例えば、特開平7−310296号公報に記載の方法)、パルプを高圧ホモジナイザーで長時間処理する方法、固形分濃度1〜6質量%のパルプを含有するスラリーにディスクリファイナーでの処理を10回以上施す方法(例えば、国際公開第2004/009902号パンフレットに記載の方法)が挙げられる。本発明においては、微細セルロースの製造方法を特に限定されず、いずれの製造方法で得られる微細セルロースも用いることができる。
【0018】
中でも、バイオセルロース及び/又はパルプをミクロフィブリル化させて得られる、ミクロフィブリル化セルロース(MFC:Microfibrillated Cellulose)が好ましく、MFCがより好ましい。MFCは、その繊維の微小サイズと強い水和性とに起因する、水素結合性能と固形粉体の吸着性能のような特異性能を持ち、水に分散させると、その分散液が大きな非ニュートン粘性を示す。
【0019】
微細セルロースは、抱水量が10mL/g以上であるのが好ましく、15mL/g以上であるのがより好ましく、20mL/g以上であるのが更に好ましい。上記範囲であると、微細セルロース分散液中で微細セルロースが安定な水和状態を保ち、微細セルロース分散液をコーティング材料として容易に取り扱うことができる。
本発明において、「抱水量」とは、単位質量の微細セルロースが保持しうる水の体積を表す値であり、具体的には、以下のようにして求められる。
すなわち、抱水量とは、温度20℃、微細セルロース約0.5gを含有する水分散液50mLを遠心分離可能な試験管(内径30mm×長さ100mm、目盛表示容積50mL)中に採り、2000G(3300rpm)で10分間遠心分離した後、沈積物の体積を読み取って、下記式(1)により求められる値である。なお、微細セルロースの絶乾質量は、沈積物を熱乾燥させて恒量状態に達したところで秤量して求める。
【0020】
抱水量(mL/g)=沈積物の体積(mL)/微細セルロースの絶乾質量(g) (1)
【0021】
濡れ・浸透剤は、微細セルロース分散液が、疎水性基材の表面に良好に濡れ、かつ、疎水性基材の表面から内部へと良好に浸透するようにする役割を果たす。
微細セルロースは、親水性が高いため、その水分散液をシート状基材に塗布する場合、レーヨン、コットン等の親水性繊維からなる基材には濡れやすく、かつ、浸透しやすいため、容易に塗布することができる。
しかしながら、シート状基材がスパンボンド・メルトブローン複合体不織布(例えば、PPを用いたもの)等の疎水性基材であるときには、水滴状になってしまう。また、表面が水分散液で十分に濡れたとしても、その水分散液が基材の内部に浸透し、表面付近で分散成分の濃縮が起きて分散成分の流動性が失われなければ、表面からのFlooding(溢流)が生じて塗工をすることができなくなる。すなわち、このような疎水性基材に均一に塗布するためには、濡れ性及び浸透性のいずれをも良好にする必要がある。
【0022】
濡れ性及び浸透性のいずれをも良好にするためには、一般的には、界面活性剤(例えば、ノニオン系界面活性剤)を水分散液中に含有させる方法や、基材をあらかじめ界面活性剤で処理しておく方法が用いられる。
しかしながら、吸収体物品の防漏体のように耐水性が求められる用途の場合には、基材における界面活性剤の残存は大きな問題となるので、上述した通常の界面活性剤を用いる方法は用いることができない。
【0023】
そこで、本発明者は、基材をあらかじめ反応性界面活性剤で処理し、その後、残存している反応性界面活性剤を、微細セルロース又は耐水処理剤と反応させて界面活性効果を消滅させる方法を検討した。
しかしながら、反応性界面活性剤の反応は、完結したことの確認が難しいという問題があることが分かった。
【0024】
本発明者は、微細セルロースの水分散液に、濡れ剤や浸透剤を含有させる方法を用いても、水を除去する工程で濡れ剤や浸透剤も水と一緒に除去することができれば、吸収体物品の防漏体のように耐水性が求められる用途においても問題が生じないと考えた。
そこで、本発明者は、種々の物質の使用を検討した結果、微細セルロースの水分散液に特定の物質を含有させると、濡れ性及び浸透性のいずれもが優れたものとなること、並びに、前記特定の物質が極めて揮発性が高く、容易に除去しうることを見出した。前記特定の物質は、濡れ性及び浸透性のいずれにも優れるため、本明細書においては、「濡れ・浸透剤」というものとする。
【0025】
さらに、本発明者は、濡れ・浸透剤に求められる条件について検討した。
(1)濡れ性及び浸透性に優れること
水分散液が、基材の表面の全体に均一に濡れ、濡れない部分を生じないこと、及び、その後、速やかに基材の内部に浸透することが求められる。
(2)水への溶解性に優れること
水分散液の塗布を均一に行うためには、濡れ・浸透剤が水分散液中において溶解しているのが好ましい。
(3)水分散液中の他の成分との相互作用がないこと
水分散液の塗布を均一に行うためには、濡れ・浸透剤が、微細セルロースや耐水処理剤との接触によって凝集を生じたり、化学反応を起こしたりしないのが好ましい。
(4)揮発性が高いこと
水分散液を基材に塗布した後、乾燥工程が終わるまでに、揮発性が高く、基材から除去されやすいものであるのが好ましい。
(5)安価であること又は回収性に優れること
濡れ・浸透剤を系外に放出させる場合には、コスト低減のためには、安価であるものであるのが好ましい。また、濡れ・浸透剤を系外に放出させることができず、回収する場合には、蒸留回収等による回収が容易であるのが好ましい。
(6)安全性に優れること
複合体シートの製造を工業的に行う場合、濡れ・浸透剤の安全性が高いものであるのが好ましい。
【0026】
本発明者は、上記条件を満たす濡れ・浸透剤を見出すべく、以下に詳述する方法で種々の物質を検討したところ、微細セルロースの水分散液に特定の物質を特定量含有させた場合に、上記(1)〜(6)の条件を満たすことを見出し、本発明を完成させたのである。
【0027】
<濡れ性及び浸透性の評価>
濡れ性及び浸透性の評価は、本発明者が開発した45°傾斜法試験及びハンドコート試験により行った。
<45°傾斜法試験>
図6は、45°傾斜法試験の説明図である。図6(A)は、45°傾斜法試験に用いた装置を示す模式図であり、図6(B)は、45°傾斜法試験の結果を示す模式図である。
初めに、水に、濡れ・浸透剤の候補となる種々の物質(以下「候補物質」という。)を種々の濃度で含有させた、候補物質の溶液を調製した。
ついで、45°に傾斜させたアクリル板1(長さ400mm)の上に載置した疎水性不織布2(2種)の上に、候補物質の溶液(図示せず。)を、1mL容マイクロピペット3を用いて、0.1mL滴下した。
候補物質の溶液の液滴が、疎水性不織布2に浸透拡散しながら疎水性不織布2の表面を流れ落ち、その全量が疎水性不織布2内に吸収されきった位置4、4’と、滴下した位置5、5’との間の距離6、6’を測定した。この距離が短いものほど、疎水性不織布への濡れ・浸透性に優れるものといえる。
測定された距離(単位mm)の結果を第1表に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
第1表から、候補物質のうち、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールが、濡れ性及び浸透性に優れていることが分かる。中でも、1−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、t−ブチルアルコールが、特に優れていることが分かる。
なお、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールは、アセチレンアルコールの一つであり、例えば、エアプロダクト社製のサーフィノール61を好適に用いることができる。
また、第1表から、濡れ性及び浸透性に優れる候補物質の濃度も分かる。
【0030】
<ハンドコート試験>
つぎに、45°傾斜法試験に供した候補物質の一部について、ハンドコート試験を行った。
初めに、水に候補物質を種々の濃度で含有させた、候補物質の溶液を調製し、微量の染料を添加して着色した。
ついで、得られた候補物質の溶液を、メイヤーバー(線径0.1mm)を用いて疎水性不織布(PP不織布、13g/m2)にハンドコートした。
疎水性不織布の表面の繊維の着色の状態を目視で判断し、濡れ性及び浸透性を評価した。
結果を第2表に示す。表中の記号の意味は、以下のとおりである。
◎:ハンドコート後、5秒以内に疎水性不織布に吸収されたもの
○:ハンドコートにより、繊維が均一に着色したもの
△:繊維が均一に着色したが、微細な液滴が表面に浮いていたもの
×:繊維が着色せず、玉状の液滴が残ったもの
【0031】
【表2】

【0032】
第2表から、濡れ性及び浸透性に優れる候補物質の濃度が分かる。
【0033】
上述した濡れ性及び浸透性の評価のほかに、水への溶解性、揮発性(及び沸点)、価格及び回収性並びに安全性を評価し、これらを合わせて総合評価を行った。
結果を第3表に示す。表中の記号の意味は、以下のとおりである。
◎:極めて良好
○:良好
△:使用可能
×:使用不可能
【0034】
【表3】

【0035】
上述した本発明者による各種評価により、本発明においては、濡れ・浸透剤として、以下の物質(a)〜(g)を、以下の質量比(水と濡れ・浸透剤との合計に対する濡れ・浸透剤の質量比)で用いることが好ましいことが明らかになった。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
【0036】
微細セルロース分散液は、上述した微細セルロースと水と上述した濡れ・浸透剤とを含有する。
微細セルロース分散液における微細セルロースの含有量は、微細セルロースの抱水量にもよるが、例えば、0.1質量%以上であるのが好ましく、0.3質量%以上であるのがより好ましく、0.5質量%以上であるのが更に好ましく、また、2.0質量%以下であるのが好ましく、1.5質量%以下であるのがより好ましく、1.0質量%以下であるのが更に好ましい。上記範囲であると、微細セルロースの分散状態の安定性に優れ、かつ、微細セルロース分散液の塗布時の粘性が適度な流動性を保つ状態となるため、微細セルロース分散液の物性が塗布に適した物性となる。
【0037】
微細セルロース分散液は、更に、耐水処理剤を含有することができる。耐水処理剤を含有すると、得られる複合体シートの耐水性がより優れたものになる。
耐水処理剤は、特に限定されないが、下記(1)〜(4)のものが好適に挙げられる。
【0038】
(1)水、有機溶媒等の媒体中に樹脂又はゴムを分散剤、乳化剤等を用いて分散させ、又は乳化させた材料
例えば、アクリル酸及びその誘導体のエマルジョン、EVAエマルジョン等の樹脂のエマルジョン;SBR等のゴムのエマルジョン(ラテックス類);PE、PP等の樹脂微粒子のサスペンションが挙げられる。これらは、比較的取扱いが容易である。
【0039】
(2)樹脂又はそのプレポリマーの水又は有機溶媒の溶液
例えば、PVA又は反応性アクリル酸プレポリマーの水溶液、ポリウレタン又は反応性ポリウレタンプレポリマーの有機溶媒溶液が挙げられる。これらは、皮膜形成性が強い。
【0040】
(3)粉体状又は粒状の熱可塑性ポリマー
例えば、PE、PP、EVA等の粉体又は粒状体が挙げられる。
【0041】
(4)接着性合成繊維
例えば、PE/PET、PE/PP、易溶融性PET/難溶融性PETとの複合成分を組み合わせたいわゆるBi−component Fiberからなる15mm以下の短繊維である接着性合成繊維;PVA繊維;エバール繊維;ポリオレフィン系合成パルプ(例えば、三井化学社製のSWP(登録商標))が挙げられる。
【0042】
中でも、樹脂のエマルジョン及び/又はラテックス類が好ましい。
【0043】
微細セルロース分散液に耐水処理剤を含有させる場合、耐水処理剤の含有量は、微細セルロースに対して、10質量%以上であるのが好ましく、30質量%以上であるのがより好ましく、また、200質量%以下であるのが好ましく、150質量%以下であるのがより好ましい。上記範囲であると、優れた耐水性と、適当な透気度及び柔軟性を有する複合体シートが得られる。
【0044】
微細セルロース分散液は、更に、他の添加剤を含有することができる。
添加剤は、例えば、活性炭、ゼオライト等の臭気吸着剤;シリカゲル、高分子吸収体等の水分吸収剤;鉄粉、銀イオン抱接体等の金属類;抗菌剤;防カビ剤;防腐剤;抗ウィルス剤が挙げられる。微細セルロース分散液に添加剤を含有させることにより、複合体シートに添加剤を付着させることができる。
添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
微細セルロース分散液の製造方法は、特に限定されない。例えば、濡れ・浸透剤を含有する水に、微細セルロースを添加する方法により、微細セルロース分散液を得ることができる。
微細セルロース分散液が耐水処理剤を含有する場合には、濡れ・浸透剤を含有する水に、微細セルロースを添加し、その後、耐水処理剤を添加する方法が好ましい。
【0046】
疎水性基材は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリル、PVA等の合成繊維の不織布、PE/PET、PE/PP、EVA/PE等の易溶融性複合繊維の不織布が挙げられる。中でも、疎水性合成繊維の不織布であるのが好ましい。
不織布に用いられる繊維の太さは、特に限定されないが、0.5〜8.0デニールであるのが好ましい。
疎水性基材として用いられる不織布は、目付が10〜50g/m2であるのが好ましく、また、厚さが0.5mm以下であるのが好ましい。
疎水性基材として用いられる不織布の製造方法は、特に限定されない。例えば、短繊維を原料としたカード法によるスポットボンド不織布、エアスルー法不織布、エアレイド法によるパルプ不織布、フィラメント不織布であるスパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンボンド・メルトブローン複合体不織布(例えば、SM(スパンボンド/メルトブローン)不織布、SMS(スパンボンド/メルトブローン/スパンボンド)不織布)を用いることができる。中でも、大量生産が可能で、安価で、耐水性に優れる点で、スパンボンド・メルトブローン複合体不織布が好ましく、SMS不織布がより好ましい。
【0047】
微細セルロース塗布工程においては、上述した微細セルロース分散液を、上述した疎水性基材の表面に塗布する。
塗布の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0048】
疎水性基材が不織布のように内部に空気を含むものである場合には、微細セルロース分散液に分散媒として用いられる、濡れ・浸透剤を含有する水又はこれに近い成分の液により、あらかじめ空気を置換しておくと、より均質なコーティングが可能になる。本明細書においては、このような予備処理を「プリコート処理」又は「サチュレーション処理」という。
【0049】
(2)乾燥前耐水処理剤塗布工程
本発明においては、上述した(1)塗布工程の後、かつ、後述する(3)乾燥工程(第1乾燥工程)の前に、乾燥前耐水処理剤塗布工程を行うのが好適な態様の一つである。乾燥前耐水処理剤塗布工程を行うと、得られる複合体シートの耐水性がより優れたものになる。
【0050】
乾燥前耐水処理剤塗布工程は、耐水処理剤と水とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する工程である。
耐水処理剤分散液に用いられる耐水処理剤の種類は、上述した微細セルロース分散液に用いることができる耐水処理剤と同様である。
耐水処理剤分散液における耐水処理剤の含有量は、安定した分散状態を保てる範囲であればよく、特に限定されない。
【0051】
耐水処理剤分散液には、水のほかに、濡れ・浸透剤を含有させることができる。耐水処理剤分散液に好適に用いることができる濡れ・浸透剤の種類及び含有量は、微細セルロース分散液における濡れ・浸透剤の種類及び含有量と同様である。
【0052】
乾燥前耐水処理剤塗布工程においては、上述した耐水処理剤分散液を、上述した疎水性基材の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する。
塗布の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0053】
微細セルロースは、水素結合の力が極めて大きく、一度乾燥させるとセロハン状又はパーチメント紙状にフィルム化する。よって、その後、耐水処理剤分散液を塗布する場合には、疎水性基材の内部への浸透に、時間が掛かるようになる。したがって、乾燥後に、耐水処理剤分散液を塗布する場合には、耐水処理剤分散液に濡れ・浸透剤を含有させる方法、低濃度の耐水処理剤分散液を複数回塗布する方法等によるのが好ましくなる。
これに対して、乾燥前、すなわち、疎水性基材が水及び/又は濡れ・浸透剤を含有しており、微細セルロースの繊維が水素結合により結合していない状態で、耐水処理剤分散液を塗布すると、耐水処理剤分散液の微細セルロースの繊維の間隙や疎水性基材の内部への浸透が比較的容易となるという利点がある。
【0054】
(3)乾燥工程(第1乾燥工程)
乾燥工程は、前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させて、前記微細セルロースと前記疎水性基材との複合体シートを得る工程である。
乾燥の方法は、特に限定されず、例えば、熱風中をコンベアーで搬送する方法、ヤンキードラム等の加熱ロールの表面に直接接触させる方法、赤外線を用いて乾燥させる方法、これらを組み合わせた方法が挙げられる。
乾燥の前には、脱液を行うことができる。脱液の方法は、特に限定されず、例えば、真空脱液、プレス脱液が挙げられる。
【0055】
乾燥工程においては、濡れ・浸透剤を回収することができる。
濡れ・浸透剤を回収する場合には、乾燥の前に脱液を行って、濡れ・浸透剤を含有する水を回収するのが好ましい。回収された濡れ・浸透剤を含有する水は、微細セルロース分散液、耐水処理剤分散液等の調製に利用することができる。また、回収された濡れ・浸透剤を含有する水の量が微細セルロース分散液、耐水処理剤分散液等の調製に用いられる量よりも多い場合等においては、蒸留により、濡れ・浸透剤を濃縮して回収することもできる。
一方、濡れ・浸透剤の量が少なく、廃液として排出しても環境負荷が少なく、回収するとコストが高くなる場合等においては、回収を行わないのが好ましい態様の一つである。なお、回収を行わない場合、脱液、乾燥により排出された濡れ・浸透剤を含有する水は、活性汚泥処理等を経て排出するのが好ましい。
【0056】
脱液を行っても疎水性基材に残存する濡れ・浸透剤の量が多く、乾燥処理において爆発限界に入るような場合には、窒素ガスを加熱して密閉無酸素系乾燥を行い、発生した濃厚な濡れ・浸透剤のガスを洗浄塔で冷却水により洗浄し、ついで凝結させ、希釈水として回収するのが好ましい。例えば、真空ポンプの排気ガスの場合も、濡れ・浸透剤の濃度が高い場合には洗浄塔によって希釈水として回収するのが好ましい。
希釈水の処理は、上述したように、比較的濃度が高く、コストが高くならない場合は、蒸留により濃縮して回収するのが好ましい。
【0057】
乾燥工程においては、乾燥しわが発生しないようにするのが好ましい。
疎水性基材における水及び濡れ・浸透剤の含有率が、50質量%以下、特に30質量%以下になると、乾燥による収縮が発生しやすくなる。そのような乾燥の後期には、疎水性基材が収縮しないように、幅方向及び長さ方向に張力を掛けた状態で乾燥するのが好ましい。
幅方向に張力を掛ける方法としては、例えば、コンベアー上にプレスロールを設置する方法、加熱ロール上に圧着した状態で乾燥を完結する方法が挙げられる。長さ方向に張力を掛ける方法としては、例えば、従来公知の方法が挙げられる。
【0058】
乾燥工程は、上述した疎水性基材を乾燥させること以外に、他の目的を併有していてもよい。
例えば、架橋を必要とする耐水処理剤を用いる場合には、乾燥工程において、架橋反応を終了させたり、キュアを行ったりすることができる。
また、表面鏡面加工、薄膜化加工等の仕上げ加工を必要とする場合には、乾燥工程において、オンラインで仕上げ加工を行うことができる。なお、仕上げ加工は、乾燥により得られた複合体シートに対しても行うことができる。
【0059】
乾燥により、微細セルロースが疎水性基材に強固に付着し、複合体シートが得られる。微細セルロース分散液が耐水処理剤を含有する場合及び乾燥前耐水処理剤塗布工程を行う場合には、乾燥により、微細セルロース及び耐水処理剤が疎水性基材に付着し、複合体シートが得られる。
【0060】
なお、本発明の第2の態様においては、すなわち、本工程の後、乾燥後耐水処理剤塗布工程及び第2乾燥工程を順次行う場合においては、本工程は、乾燥後耐水処理剤塗布工程における耐水処理剤分散液の塗布が可能な程度に乾燥が行われていればよい。例えば、表面のごく薄い部分は乾燥状態にあるが、内部にはまだ水及び濡れ・浸透剤が残存している状態であってもよいし、疎水性基材全体の水及び濡れ・浸透剤の含有率が0〜80質量%程度である状態であってもよい。
【0061】
(4)乾燥後耐水処理剤塗布工程
本発明の第2の態様においては、上記(3)乾燥工程を第1乾燥工程として行い、その後、(4)乾燥後耐水処理剤塗布工程及び(5)第2乾燥工程を順次行う。
乾燥後耐水処理剤塗布工程は、耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する工程である。
耐水処理剤分散液に用いられる耐水処理剤の種類は、上述した微細セルロース分散液に用いることができる耐水処理剤と同様である。
耐水処理剤分散液における耐水処理剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、市販の樹脂のエマルジョン又はゴムのエマルジョン(ラテックス類)は、一般的に、固形分濃度が40〜80質量%であるので、その原液をそのまま又は固形分濃度が5〜30質量%になるように希釈して用いることができる。
【0062】
耐水処理剤分散液に用いられる濡れ・浸透剤の種類及び含有量は、微細セルロース分散液における濡れ・浸透剤の種類及び含有量と同様である。微細セルロース分散液に用いられる濡れ・浸透剤と耐水処理剤分散液に用いられる濡れ・浸透剤とは、同じであっても異なっていてもよいが、同じであるのが好ましい。
耐水処理剤分散液に用いられる濡れ・浸透剤は、第1乾燥工程において乾燥した疎水性基材の表面に、耐水処理剤分散液を濡れさせ、浸透させることを容易にする。
【0063】
乾燥後耐水処理剤塗布工程においては、上述した耐水処理剤分散液を、上述した疎水性基材の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する。
塗布の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0064】
乾燥前耐水処理剤塗布工程を行っている場合は、乾燥前耐水処理剤塗布工程において、比較的表面から深い部分まで耐水処理剤を浸透させ、その後の乾燥後耐水処理剤塗布工程において、比較的表面から浅い部分まで耐水処理剤を浸透させるのが好ましい。
【0065】
(5)第2乾燥工程
第2乾燥工程は、乾燥後耐水処理剤塗布工程において前記耐水処理剤分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させ、複合体シートを得る工程である。
第2乾燥工程は、上述した乾燥工程(第1乾燥工程)と同様の方法により行うことができる。
乾燥により、微細セルロースが疎水性基材に、更に耐水処理剤が付着し、複合体シートが得られる。
【0066】
(6)耐水処理剤裏側塗布工程
耐水処理剤裏側塗布工程は、耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記微細セルロース分散液を塗布されるのと反対側(以下「裏側」ともいう。)の表面に塗布する工程である。
耐水処理剤裏側塗布工程は、上記各工程との順序は特に限定されない。
【0067】
耐水処理剤分散液に用いられる耐水処理剤の種類は、上述した微細セルロース分散液に用いることができる耐水処理剤と同様である。
耐水処理剤分散液における耐水処理剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、市販の樹脂のエマルジョン又はゴムのエマルジョン(ラテックス類)は、一般的に、固形分濃度が40〜80質量%であるので、その原液をそのまま又は固形分濃度が5〜30質量%になるように希釈して用いることができる。
【0068】
耐水処理剤分散液に好適に用いることができる濡れ・浸透剤の種類及び含有量は、微細セルロース分散液における濡れ・浸透剤の種類及び含有量と同様である。微細セルロース分散液に用いられる濡れ・浸透剤と耐水処理剤分散液に用いられる濡れ・浸透剤とは、同じであっても異なっていてもよい。
【0069】
耐水処理剤裏側塗布工程においては、上述した耐水処理剤分散液を、疎水性基材裏側の表面に塗布する。
塗布の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0070】
耐水処理剤裏側塗布工程の後は、耐水処理剤分散液を塗布された疎水性基材を乾燥させるのが好ましい。乾燥は、上述した乾燥工程(第1乾燥工程)と同様の方法により行うことができる。
【0071】
以下に、本発明の好適な実施態様を図面を用いて説明する。
【0072】
<工程(1)及び(3)の組合せによる実施態様1>
図1は、実施態様1を示す説明図である。実施態様1は、工程(1)及び(3)の組合せによる。
初めに、イソプロピルアルコール(IPA)と水との混合液に、高濃度のMFC水分散液を添加し、更に、SBRエマルジョン(SBRの水分散液。例えば、固形分濃度50質量%)を添加して、MFCとSBRとIPAと水とを含有する微細セルロース分散液(例えば、MFC含有量1質量%、SBR含有量0.8質量%、IPA/水=25/75(質量比))を得る。
ついで、この微細セルロース分散液をSMS不織布の表面に塗布する(塗布工程)。
その後、微細セルロース分散液を塗布されたSMS不織布を、サクションにより脱液し、更に、熱風により乾燥させて、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得る(乾燥工程)。
【0073】
<工程(1)、(2)及び(3)の組合せによる実施態様2>
図2は、実施態様2を示す説明図である。実施態様2は、工程(1)、(2)及び(3)の組合せによる。
初めに、IPAと水との混合液に、高濃度のMFC水分散液を添加し、MFCとIPAと水とを含有する微細セルロース分散液(例えば、MFC含有量0.8質量%、IPA/水=25/75(質量比))を得る。
ついで、この微細セルロース分散液をSMS不織布の表面に塗布する(塗布工程)。
その後、微細セルロース分散液を塗布されたSMS不織布を、サクションにより脱液する。
更に、SBRエマルジョン(SBRの水分散液。例えば、固形分濃度20質量%)を、脱液されたSMS不織布の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分にスプレー塗布する(乾燥前耐水処理剤塗布工程)。
その後、熱風により乾燥させて、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得る(乾燥工程)。
【0074】
<工程(1)、(3)、(4)及び(5)の組合せによる実施態様3>
図3は、実施態様3を示す説明図である。実施態様3は、工程(1)、(3)、(4)及び(5)の組合せによる。
初めに、IPAと水との混合液に、高濃度のMFC水分散液を添加し、MFCとIPAと水とを含有する微細セルロース分散液(例えば、MFC含有量0.8質量%、IPA/水=25/75(質量比))を得る。
ついで、この微細セルロース分散液をSMS不織布の表面に塗布する(塗布工程)。
その後、微細セルロース分散液を塗布されたSMS不織布を、サクションにより脱液し、更に、加熱ロールによりSMS不織布の表面を乾燥させる(第1乾燥工程)。
更に、SBRのIPA/水混合溶媒分散液(例えば、固形分濃度15質量%、IPA/水=20/80(質量比))を、表面が乾燥したSMS不織布の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する(乾燥後耐水処理剤塗布工程)。
その後、熱風により乾燥させて、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得る(第2乾燥工程)。
【0075】
<工程(1)、(3)、(4)及び(5)の組合せによる実施態様4>
図4は、実施態様4を示す説明図である。実施態様4は、工程(1)、(3)、(4)及び(5)の組合せによる。
初めに、IPAと水との混合液に、高濃度のMFC水分散液を添加し、更に、SBRエマルジョン(SBRの水分散液。例えば、固形分濃度50質量%)を添加して、MFCとSBRとIPAと水とを含有する微細セルロース分散液(例えば、MFC含有量1質量%、SBR含有量0.8質量%、IPA/水=25/75(質量比))を得る。
ついで、この微細セルロース分散液をSMS不織布の表面に塗布する(塗布工程)。
その後、微細セルロース分散液を塗布されたSMS不織布を、サクションにより脱液し、更に、加熱ロールによりSMS不織布の表面を乾燥させる(第1乾燥工程)。
更に、SBRのIPA/水混合溶媒分散液(例えば、固形分濃度15質量%、IPA/水=30/70(質量比))を、表面が乾燥したSMS不織布の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する(乾燥後耐水処理剤塗布工程)。
その後、熱風により乾燥させて、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得る(第2乾燥工程)。
【0076】
<工程(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の組合せによる実施態様5並びに工程(1)、(2)、(3)、(6)及び(5)の組合せによる実施態様6>
図5は、実施態様5及び6を示す説明図である。実施態様5は、工程(1)、(2)、(3)、(4)及び(5)の組合せにより、実施態様6は、工程(1)、(2)、(3)、(6)及び(5)の組合せによる。
初めに、IPAと水との混合液に、高濃度のMFC水分散液を添加し、MFCとIPAと水とを含有する微細セルロース分散液(例えば、MFC含有量0.8質量%、IPA/水=25/75(質量比))を得る。
ついで、この微細セルロース分散液をSMS不織布の表面に塗布する(塗布工程)。
その後、微細セルロース分散液を塗布されたSMS不織布を、サクションにより脱液する。
更に、SBRエマルジョン(SBRの水分散液。例えば、固形分濃度10質量%)を、脱液されたSMS不織布の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分にスプレー塗布する(乾燥前耐水処理剤塗布工程)。
その後、熱風により乾燥させる(第1乾燥工程)。
実施態様5においては、更に、SBRのIPA/水混合溶媒分散液(例えば、固形分濃度15質量%、IPA/水=25/75(質量比))を、乾燥したSMS不織布の表面の微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する(乾燥後耐水処理剤塗布工程)。実施態様6においては、更に、SBRのIPA/水混合溶媒分散液(例えば、固形分濃度15質量%、IPA/水=25/75(質量比))を、乾燥したSMS不織布の裏側の表面に塗布する(耐水処理剤裏側塗布工程)。
その後、熱風により乾燥させて、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得る(第2乾燥工程)。
【0077】
以上、本発明の複合体シートの製造方法を好適な実施形態を例に挙げて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0078】
本発明の複合体シートの製造方法により得られる複合体シートは、用途を特に限定されない。複合体シートの種々の特性を活用して、種々の用途に用いることができる。
【0079】
(1)表面(表層)親水化機能
疎水性基材(例えば、PE不織布、PP不織布、PE/PP複合繊維不織布、PE/PET複合繊維不織布)の表面又は表層に、微細セルロースを複合化させているため、疎水性基材の表面又は表層が永続的に親水性を示す。この複合体シートは親水性と疎水性がともに必要な分野に応用が可能である。
例えば、静電気が発生せず、かつ、吸湿性を示す手術衣、覆布のようなバイオバリヤー用途;結露を防止するとともにはく離性、シール性等を併せ持つ吸水シーラント、食品包材に好適に用いられる。
【0080】
(2)透気性及び耐水バリヤー性付与機能
透気性を有する疎水性基材(例えば、PE、PP等のスパンボンド・メルトブローン複合体不織布;SMMS等の耐水性不織布)を用い、微細セルロース及び耐水処理剤を複合化させた場合、液状の水は透過させないが、水蒸気、空気等の気体は透過させるという特性を有する。この複合体シートは、高通気性と耐水バリヤー性とがともに必要な分野に応用が可能である。
例えば、滅菌用ラッピング;紙オムツ、ナプキン等の吸収体製品のバックシートに好適に用いられる。
【0081】
(3)表面積増大機能
微細セルロースは極めて内部表面積が大きいため、複合体シートは、その表面に大量の電解質類を保有することができる。
例えば、電池(例えば、リチウム電池)のセパレーターに好適に用いられる。
【0082】
(4)添加剤保持機能
複合体シートは、添加剤(例えば、吸着剤、吸収体)を保持することができる。
例えば、防塵マスク、防インフルエンザマスク等の構成材料;抗菌シート、発熱シート等の基材に好適に用いられる。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限られるものではない。
1.ハンドコートによる複合体シートの製造(その1)
(1)MFC分散液の調製
広葉樹を原料とするパルプ(LBKP、St.Croix、米国Bowater社製)を、パルパーにより離解し、得られたパルプ水分散液(固形分濃度3質量%)を、ダブルディスクリファイナー(相川鉄工社製)を用いて50サイクル処理を行い、MFC水分散液(固形分濃度3質量%)を得た。MFCは、数平均繊維長0.15mm、抱水量25mL/gであった。
【0084】
上記で得られたMFC水分散液(固形分濃度3質量%)に、IPA(一級試薬)とイオン交換水とを添加して、下記のような5種類のMFC分散液A〜Eを調製した。
MFC分散液A:MFC固形分濃度0.8質量%、IPA/水=20/80(質量比)
MFC分散液B:MFC固形分濃度0.8質量%、IPA/水=15/85(質量比)
MFC分散液C:MFC固形分濃度0.8質量%、IPA/水=10/90(質量比)
MFC分散液D:MFC固形分濃度0.8質量%、IPA/水=5/95(質量比)
MFC分散液E:MFC固形分濃度0.8質量%、IPA/水=0/100(質量比)
【0085】
(2)SMS不織布へのMFC分散液の塗布(微細セルロース塗布工程)
ハンドコーターを用いて、ガラス板上に載置したSMS不織布(PP製SMS不織布、13g/m2、Avgol社製、幅250mm×長さ1、000mm)の表面に、IPA/水混合液(IPA/水=20/80)をプリコートした後、更に、ハンドコーターを用いて上記で得られたMFC分散液を塗布した。MFC分散液の塗布時のリップクリアランスは1.2mmであった。
【0086】
塗布直後のそれぞれの塗布面の状態は以下のとおりであった。
例1(MFC分散液A使用):極めて滑らかで均質な塗布面が得られた
例2(MFC分散液B使用):全体に均質な塗布面が得られた
例3(MFC分散液C使用):ほぼ均質な塗布面であるが、部分的に厚薄がみられた
例4(MFC分散液D使用):全体に凹凸のある塗布面で、ピンホール状にはじく部分がみられた
例5(MFC分散液E使用):全体に液がはじかれ、塗膜が形成されなかった
【0087】
(3)脱液及び乾燥(乾燥工程)
MFC分散液を塗布されたSMS不織布を、数枚重ねた吸水紙の上に載せて脱液し、その後、別の吸水紙の上に移して放置し、自然乾燥させ、MFCとSMS不織布との複合体シートを得た。
【0088】
得られた複合体シートについて、MFC塗布量及びガーレ透気度を測定し、また、表面を目視で観察した。なお、ガーレ透気度は、各サンプル10箇所測定を行い、平均値を求めた。
【0089】
結果は以下のとおりであった。
例1:MFC塗布量8.0g/m2、ガーレ透気度96sec/100mL、均質な塗布面であった
例2:MFC塗布量8.2g/m2、ガーレ透気度90sec/100mL、均質な塗布面であった
例3:MFC塗布量8.1g/m2、ガーレ透気度24sec/100mL、MFC塗布部分にピンホールが多少存在した
例4:MFC塗布量7.6g/m2、ガーレ透気度8sec/100mL、大きな塗布ムラが散見された
例5:塗布できず、複合体シートが得られなかった
【0090】
上記結果から明らかなように、本発明の複合体シートの製造方法(例1及び2)によれば、均質な塗布ができる。
一方、MFC分散液において、IPA/水が10/90である場合(例3)、IPA/水が5/95である場合(例4)及び0/100である場合(例5)は、均質な塗布ができなかった。
【0091】
2.ハンドコートによる複合体シートの製造(その2)
(1)MFC分散液の調製
「1.ハンドコートによる複合体シートの製造(その1)」と同様の方法により得られたMFC水分散液(固形分濃度3質量%)に、IPA(一級試薬)とイオン交換水とを添加し、更に、SBRエマルジョン(スマーテックスPA−3807、日本エイアンドエル社製、固形分濃度48.3質量%)を添加して、下記のような5種類のMFC分散液F〜Jを調製した。
MFC分散液F:MFC固形分濃度0.8質量%、SBR固形分濃度0.8質量%、IPA/水=45/55(質量比)
MFC分散液G:MFC固形分濃度0.8質量%、SBR固形分濃度0.8質量%、IPA/水=30/70(質量比)
MFC分散液H:MFC固形分濃度0.8質量%、SBR固形分濃度0.8質量%、IPA/水=15/85(質量比)
MFC分散液I:MFC固形分濃度0.8質量%、SBR固形分濃度0.8質量%、IPA/水=5/95(質量比)
MFC分散液J:MFC固形分濃度0.8質量%、SBR固形分濃度0.8質量%、IPA/水=0/100(質量比)
【0092】
(2)SMS不織布へのMFC分散液の塗布(微細セルロース塗布工程)
ハンドコーターを用いて、ガラス板上に載置したSMS不織布(PP製SMS不織布、13g/m2、Avgol社製、幅250mm×長さ1000mm)の表面に、IPA/水混合液(IPA/水=20/80)をプリコートした後、更に、ハンドコーターを用いて上記で得られたMFC分散液を塗布した。MFC分散液の塗布時のリップクリアランスは1.2mmであった。
【0093】
塗布直後のそれぞれの塗布面の状態は以下のとおりであった。
例6(MFC分散液F使用):SBRの凝集物が全面に現れ、ブツブツ状の塗布面となった
例7(MFC分散液G使用):極めて滑らかで均質な塗布面が得られた
例8(MFC分散液H使用):全体に均質な塗布面が得られた
例9(MFC分散液I使用):全体に塗膜の厚薄やピンホールの発生がみられた
例10(MFC分散液J使用):全体に液がはじかれ、塗膜が形成されなかった
【0094】
(3)脱液及び乾燥(乾燥工程)
MFC分散液を塗布されたSMS不織布を、数枚重ねた吸水紙の上に載せて脱液し、その後、別の吸水紙の上に移して放置し、自然乾燥させ、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得た。
【0095】
得られた複合体シートについて、MFC及びSBR合計塗布量並びにガーレ透気度を測定し、また、表面を目視で観察した。なお、ガーレ透気度は、各サンプル10箇所測定を行い、平均値を求めた。
【0096】
結果は以下のとおりであった。
例6:MFC及びSBR合計塗布量14.8g/m2、ガーレ透気度8sec/100mL、凝集物やピンホールが大量に発生した
例7:MFC及びSBR合計塗布量15.3g/m2、ガーレ透気度70sec/100mL、均一な塗布面であった
例8:MFC及びSBR合計塗布量15.6g/m2、ガーレ透気度67sec/100mL、均一な塗布面であった
例9:MFC及びSBR合計塗布量15.2g/m2、ガーレ透気度24sec/100mL、大きな塗布ムラが散見された
例10:塗布できず、複合体シートが得られなかった
【0097】
上記結果から明らかなように、本発明の複合体シートの製造方法(例7及び8)によれば、均質な塗布ができる。
一方、MFC分散液において、IPA/水が45/55である場合(例6)は、SBRエマルジョンの樹脂が凝集を起こし、均質な塗布面が得られなかった。また、MFC分散液において、IPA/水が5/95である場合(例9)及び0/100である場合(例10)は、均質な塗布ができなかった。
【0098】
3.ハンドコートによる複合体シートの製造(その3)
(1)SBR分散液の調製
SBRエマルジョン(スマーテックスPA−3807、日本エイアンドエル社製、固形分濃度48.3質量%)に、t−ブチルアルコール(一級試薬)と水との混合液を添加して、下記のような5種類のSBR分散液を調製した。
SBR分散液a:SBR固形分濃度10質量%、t−ブチルアルコール/水=20/80
SBR分散液b:SBR固形分濃度10質量%、t−ブチルアルコール/水=15/85
SBR分散液c:SBR固形分濃度10質量%、t−ブチルアルコール/水=10/90
SBR分散液d:SBR固形分濃度10質量%、t−ブチルアルコール/水=5/95
SBR分散液e:SBR固形分濃度10質量%、t−ブチルアルコール/水=0/100
【0099】
(2)MFCを塗布されたSMS不織布へのSBR分散液の塗布(乾燥後耐水処理剤塗布工程)
例1で得られた複合体シート(SBR未塗布)及び例7で得られた複合体シート(SBR塗布量7.3g/m2)を、それぞれ幅170mm×長さ400mmの大きさに切り、そのMFC塗布面の表面に、メイヤーバー(線径0.3mm)を用いて上記で得られたSBR分散液を塗布した。
【0100】
塗布直後のそれぞれの塗布面の状態は以下のとおりであった。
例11(例1で得られた複合体シート及びSBR分散液a使用):極めて均質な塗布面でSBR分散液は極めて速やかに吸収された
例12(例1で得られた複合体シート及びSBR分散液b使用):極めて均質な塗布面でSBR分散液は極めて速やかに吸収された
例13(例1で得られた複合体シート及びSBR分散液c使用):均質な塗布面でSBR分散液は速やかに吸収された
例14(例1で得られた複合体シート及びSBR分散液d使用):均質な塗布面でSBR分散液は緩やかに吸収された
例15(例1で得られた複合体シート及びSBR分散液e使用):SBR分散液が液滴状になって表面に残り、膜状にならなかった
【0101】
例16(例7で得られた複合体シート及びSBR分散液a使用):極めて均質な塗布面でSBR分散液は極めて速やかに吸収された
例17(例7で得られた複合体シート及びSBR分散液b使用):均質な塗布面でSBR分散液は速やかに吸収された
例18(例7で得られた複合体シート及びSBR分散液c使用):塗布直後は均質な塗布面が形成されたが、その後、SBR分散液が部分的に溜まる部分が生じた
例19(例7で得られた複合体シート及びSBR分散液d使用):SBR分散液がはじかれた部分が多く生じた
例20(例7で得られた複合体シート及びSBR分散液e使用):SBR分散液がはじかれて塗布できなかった
【0102】
(3)乾燥(第2乾燥工程)
SBR分散液を塗布されたSMS製不織布を、乾燥による収縮が起きないように、同じ大きさに切ったベニヤ板の上に載置し、その四隅をクリップでベニヤ板に固定し、80℃の熱風乾燥機で30分間乾燥させ、MFCとSBRとSMS不織布との複合体シートを得た。
【0103】
得られた複合体シートについて、SBR塗布量及びガーレ透気度を測定し、また、後述する本発明者が開発したリング式シールテストを行い、耐水性を評価した。なお、ガーレ透気度は、各サンプル10箇所測定を行い、平均値を求めた。
【0104】
<リング式シールテスト>
図7は、リング式シールテストの説明図である。図7(A)は、リング式シールテストに用いたリングを示す模式的な斜視図であり、図7(B)は、リング式シールテストに用いた装置を示す模式的な正面図である。
図7(A)に示されるリング式シールテストに用いられるリング11は、ステンレス製であり、内径80mm、高さ50mm、重さ500gである。
図7(B)に示されるように、透明ガラス板12の上にサンプル13からの水の漏出を検知するための検知用ろ紙14(GRADE2、Advantec社製、目付125g/m2、厚さ0.26mm)を載置し、検知用ろ紙14の上にサンプル13を載置する。
ついで、サンプル13の上にリング11を載置する。リング11のサンプル13との接触面には、サンプル13とリング11との間からの水の漏れを防止するように、あらかじめ樹脂製接着剤(新ポリグリップS、アース製薬社製)を塗布しておく。
透明ガラス板12の下部に、検知用ろ紙14の状態を観察するための観察用ミラー15を設けておく。
上記の装置において、リング11の内壁とサンプル13の表面とで形成された空間に50mLの染料水16を導入し、導入時及び所定時間経過後(2時間後、6時間後及び24時間後)に、染料水16がサンプル13を透過して検知用ろ紙14に漏れているか否か、漏れている場合はその状態を観察用ミラー15により観察した。
【0105】
リング式シールテストは、SBR分散液を塗布しなかったもの(例1及び例7で得られた複合体シート)についても行った。
【0106】
例11:SBR塗布量5.9g/m2、ガーレ透気度156sec/100mL、24時間後微量の漏れ発生
例12:SBR塗布量5.7g/m2、ガーレ透気度150sec/100mL、24時間後微量の漏れ発生
例13:SBR塗布量4.2g/m2、ガーレ透気度130sec/100mL、6時間後スポット状の漏れ発生
例14:SBR塗布量3.9g/m2、ガーレ透気度126sec/100mL、2時間後スポット状の漏れ発生
例15:ガーレ透気度100sec/100mL、数分後全面で漏れ発生
例1:ガーレ透気度96sec/100mL、数分後全面で漏れ発生
【0107】
例16:SBR塗布量4.2g/m2、ガーレ透気度305sec/100mL、24時間後漏れ発生なし
例17:SBR塗布量4.0g/m2、ガーレ透気度280sec/100mL、24時間後漏れ発生なし
例18:SBR塗布量3.3g/m2、ガーレ透気度223sec/100mL、24時間後漏れ発生なし
例19:SBR塗布量3.1g/m2、ガーレ透気度106sec/100mL、24時間後スポット状の漏れ発生
例20:ガーレ透気度76sec/100mL、6時間後スポット状の漏れ発生
例7:ガーレ透気度70sec/100mL、6時間後スポット状の漏れ発生
【0108】
上記結果から明らかなように、本発明の複合体シートの製造方法(例11〜13及び16〜18)によれば、均質な塗布ができる。
一方、SBR分散液において、t−ブチルアルコール/水が5/95である場合(例14及び19)及び0/100である場合(例15及び20)は、均質な塗布ができなかった。
【0109】
また、メイヤーバーによる塗布においては、一般に、基材への浸透性がよい塗布液ほど塗布量が増加する傾向にある。
したがって、例11及び12におけるSBR塗布量が例13におけるSBR塗布量よりも多いことは、例11及び12に用いられたSBR分散液が例13に用いられた分散液よりも浸透性に優れていたことを示す。同様に、例16及び17におけるSBR塗布量が例18におけるSBR塗布量よりも多いことは、例16及び17に用いられたSBR分散液が例18に用いられた分散液よりも浸透性に優れていたことを示す。
【0110】
さらに、微細セルロース塗布工程に用いたMFC分散液にSBRを含有させていた場合(例16〜18)は、微細セルロース塗布工程に用いたMFC分散液にSBRを含有させていなかった場合(例11〜13)に比べて、乾燥後耐水処理剤塗布工程におけるSBR塗布量が少なかったが、耐水性は優れていた。
【0111】
4.パイロットプラントによる複合体シートの製造(その1)
(1)パイロットプラントの概要
図8は、複合体シートの製造に用いられたパイロットプラントの概要を示すフロー図である。
疎水性基材(幅500mm)は、リワインダーからフィードされ、ネットコンベアー(エンドレス)によりプリコーターに導かれ、プリコート液(例えば、IPA/水混合液)をプリコートされる。プリコート液は、プリコート液を貯留するプリコートタンク(ポリタンク)からプリコーターに備えたプリコートタンクに供給され、疎水性基材に塗布される。疎水性基材が吸収しきれなかった余剰のプリコート液は、ポリタンクに回収される。
疎水性基材は、プリコーターの後、スラリーコーターに導かれ、MFC分散液を塗布される。スラリーコーターには、塗布の安定性を維持するためのスラリーヘッダーが備えてあり、MFC分散液を貯留するMFCスラリータンク(アジテーター付き)から、スラリーポンプを介して常にMFC分散液が供給され、分散液の塗工ヘッドがコントロールされている。オーバーフローしたMFC分散液は、MFCスラリータンクに戻る。すなわち、スラリーヘッダーとMFCスラリータンクとの間でMFC分散液は循環している。
MFC分散液を塗布された疎水性基材は、バキュームサクションに導かれ、脱液される。バキュームサクションには、気液セパレーターが備えられている。
脱液された疎水性基材は、ドラム乾燥機に導かれ、乾燥される。
乾燥した疎水性基材は、スプレーコーターに導かれ、所望によりSBR分散液をスプレー塗布される。
SBR分散液を塗布された疎水性基材は、熱風乾燥機に導かれ、所望により乾燥した後、ワインダーに巻き取られる。
【0112】
(2)MFC分散液の調製
「1.ハンドコートによる複合体シートの製造(その1)」と同様の方法により得られたMFC水分散液(固形分濃度3質量%)に、IPA(一級試薬)とイオン交換水とを添加して、MFC固形分濃度1質量%、IPA/水=25/75(質量比)のMFC分散液を調製した。
【0113】
(3)スパンボンド不織布へのMFC分散液の塗布(微細セルロース塗布工程)
図8に示されるパイロットプラントによりスパンボンド不織布へのMFC分散液の塗布を行った。
スパンボンド不織布(PE製スパンボンド不織布、15.5g/m2、出光ユニテック社製、構成繊維2デニール前後)の表面に、IPA/水混合液(IPA/水=20/80)をプリコートした後、更に、スラリーコーターを用いて上記で得られたMFC分散液を塗布した。MFC分散液の塗布時のロールクリアランスは0.9mmであった。
これにより、滑らかで均質な塗布面が得られた。
【0114】
(4)脱液及び乾燥(乾燥工程)
引き続き、図8に示されるパイロットプラントにより脱液及び乾燥を行った。
MFC分散液を塗布されたスパンボンド不織布は、バキュームサクションにより脱液させた後、含液率120質量%の状態で、表面にテフロン(登録商標)コーティングを施した加熱ドラム乾燥機に塗布面を密着させて乾燥させ、更に、熱風乾燥させて、複合体シートを得て、これをワインダーに巻き取った。
加熱ドラムの表面温度は105℃、熱風温度は80℃であった。得られた複合体シートは、水分含有率は7質量%であったが、IPAの残留臭は感知されなかった。
【0115】
得られた複合体シートについて、MFC塗布量及びガーレ透気度を測定した。なお、ガーレ透気度は、10箇所測定を行い、平均値を求めた。
また、得られた複合体シートの塗布面を加圧しながら130℃で熱溶着処理し、スパンボンド不織布の表面を溶融させてフィルム化させたものについても、上記と同様の方法により、ガーレ透気度を測定した。
結果は、MFC塗布量8.0g/m2、ガーレ透気度76sec/100mLであった。熱溶着処理後においては、ガーレ透気度約3000sec/100mLであった。よって、熱溶着処理により透気性が大幅に低下することが分かった。
【0116】
5.パイロットプラントによる複合体シートの製造(その2)
(1)MFC分散液の調製
「1.ハンドコートによる複合体シートの製造(その1)」と同様の方法により得られたMFC水分散液(固形分濃度3質量%)に、PE樹脂ディスパージョン(Hydrocer257、Shamrock Technology社製、低分子量ポリエチレンのディスパージョン)とIPA(一級試薬)とイオン交換水とを添加して、MFC固形分濃度0.8質量%、PE樹脂固形分濃度1.5質量%、IPA/水=20/80(質量比)のMFC分散液を調製した。このMFC分散液は、長時間放置しても相分離や沈殿が生じなかった。これは、MFCの増粘効果によって極めて安定な分散状態となっているためと考えられる。
【0117】
(2)SMS不織布へのMFC分散液の塗布(微細セルロース塗布工程)
図8に示されるパイロットプラントによりSMS不織布へのMFC分散液の塗布を行った。
SMS不織布(PP製SMS不織布、13.2g/m2、Avgol社製)の表面に、IPA/水混合液(IPA/水=20/80)をプリコートした後、更に、スラリーコーターを用いて上記で得られたMFC分散液を塗布した。MFC分散液の塗布時のロールクリアランスは1.2mmであった。
これにより、滑らかで均質な塗布面が得られた。
【0118】
(3)脱液及び乾燥(乾燥工程)
引き続き、図8に示されるパイロットプラントにより脱液及び乾燥を行った。
MFC分散液を塗布されたSMS不織布は、バキュームサクションにより脱液させた後、含液率98質量%の状態で、表面にテフロン(登録商標)コーティングを施した加熱ドラム乾燥機に塗布面を密着させて乾燥させ、更に、熱風乾燥させて、複合体シートを得て、これをワインダーに巻き取った。
加熱ドラムの表面温度は103℃、熱風温度は82℃であった。得られた複合体シートは、水分含有率は10質量%であったが、IPAの残留臭は感知されなかった。
【0119】
得られた複合体シートについて、MFC塗布量、PE樹脂塗布量及びガーレ透気度を測定し、また、表面状態を目視で観察した。なお、ガーレ透気度は、10箇所測定を行い、平均値を求めた。
また、得られた複合体シートの塗布面を加圧しながら130℃で熱溶着処理し、SMS不織布の表面を溶融させてフィルム化させたものについても、上記と同様の方法により、ガーレ透気度を測定した。
結果は、MFC塗布量6.8g/m2、PE樹脂塗布量12.0g/m2、ガーレ透気度30sec/100mLであった。熱溶着処理後においては、ガーレ透気度約5000sec/100mLであった。よって、熱溶着処理により透気性が大幅に低下することが分かった。
また、得られた複合体シートは、MFCとPE樹脂とが一体化して、これらとSMS不織布とのはく離は生じていなかった。PE樹脂は溶融状態に至らず、PE樹脂のSMS不織布への接着効果により、ソフトな不織布状の外観を呈していた。熱溶着処理後においては、MFCが溶融したPE樹脂により含しんされた状態となり、白濁したフィルム状になっていた。
【0120】
6.パイロットプラントによる複合体シートの製造(その3)
(1)MFC分散液の調製
「1.ハンドコートによる複合体シートの製造(その1)」と同様の方法により得られたMFC水分散液(固形分濃度3質量%)に、とIPA(一級試薬)とイオン交換水とを添加して、MFC固形分濃度1質量%、IPA/水=25/75(質量比)のMFC分散液を調製した。
【0121】
(2)SBR分散液の調製
SBRエマルジョン(スマーテックスPA−3807、日本エイアンドエル社製、固形分濃度48.3質量%)に、IPA(一級試薬)と水との混合液を添加して、SBR固形分濃度10質量%、IPA/水=20/80(質量比)のSBR分散液を調製した。
【0122】
(3)SMS不織布へのMFC分散液の塗布(微細セルロース塗布工程)
図8に示されるパイロットプラントによりSMS不織布へのMFC分散液の塗布を行った。
SMS不織布(PP製SMS不織布、13.2g/m2、Avgol社製)の表面に、IPA/水混合液(IPA/水=20/80)をプリコートした後、更に、スラリーコーターを用いて上記で得られたMFC分散液を塗布した。MFC分散液の塗布時のロールクリアランスは0.9mmであった。
これにより、滑らかで均質な塗布面が得られた。
【0123】
(4)脱液及び乾燥(第1乾燥工程)
引き続き、図8に示されるパイロットプラントにより脱液及び乾燥を行った。
MFC分散液を塗布されたSMS不織布は、バキュームサクションにより脱液させた後、含液率110質量%の状態で、表面にテフロン(登録商標)コーティングを施した加熱ドラム乾燥機に塗布面を密着させて乾燥させ、更に、送風により乾燥させて、含液率65質量%の状態まで予備乾燥させた。
加熱ドラムの表面温度は80℃、送風温度は室温であった。
【0124】
(5)MFCを塗布されたSMS不織布へのSBR分散液の塗布(乾燥後耐水処理剤塗布工程)
引き続き、図8に示されるパイロットプラントによりSBR分散液の塗布を行った。
予備乾燥後のSMS不織布のMFC塗布面の表面に、スプレーコーターを用いて上記で得られたSBR分散液を、塗布量が50g/m2(有姿)となるように塗布した。
【0125】
(6)乾燥(第2乾燥工程)
引き続き、図8に示されるパイロットプラントにより乾燥を行った。
SBR分散液を塗布されたSMS不織布は、熱風により乾燥させて、複合体シートを得て、これをワインダーに巻き取った。
熱風温度は85℃であった。得られた複合体シートは、水分含有率は10質量%であったが、IPAの残留臭は感知されなかった。
得られた複合体シートについて、MFC塗布量、SBR塗布量及びガーレ透気度を測定し、また、リング式シールテストを行い、耐水性を評価した。なお、ガーレ透気度は、各サンプル10箇所測定を行い、平均値を求めた。
結果は、MFC塗布量8.0g/m2、SBR塗布量4.8g/m2、ガーレ透気度53sec/100mLであった。耐水性は、24時間後微量の漏れ発生であった。
【符号の説明】
【0126】
1 アクリル板
2 疎水性不織布
3 1mL容マイクロピペット
4、4’ 液滴の全量が不織布内に吸収されきった位置
5、5’ 液滴を滴下した位置
6、6’ 液滴の全量が不織布内に吸収されきった位置と液滴を滴下した位置との間の距離
11 リング
12 透明ガラス板
13 サンプル
14 検知用ろ紙
15 観察用ミラー
16 染料水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する微細セルロース塗布工程と、
前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させて、前記微細セルロースと前記疎水性基材との複合体シートを得る乾燥工程と
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
前記濡れ・浸透剤の種類と、前記微細セルロース分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
【請求項2】
更に、前記塗布工程の後かつ前記乾燥工程の前に、
耐水処理剤と水とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥前耐水処理剤塗布工程
を具備する、請求項1に記載の複合体シートの製造方法。
【請求項3】
微細セルロースと水と濡れ・浸透剤とを含有する微細セルロース分散液を、疎水性基材の表面に塗布する微細セルロース塗布工程と、
前記微細セルロース分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させる第1乾燥工程と、
耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥後耐水処理剤塗布工程と、
前記耐水処理剤分散液を塗布された前記疎水性基材を乾燥させ、複合体シートを得る第2乾燥工程と
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
前記微細セルロース塗布工程及び前記乾燥後耐水処理剤塗布工程の両方において、前記濡れ・浸透剤の種類と、前記微細セルロース分散液又は前記耐水処理剤分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、複合体シートの製造方法。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
【請求項4】
更に、前記塗布工程の後かつ前記第1乾燥工程の前に、
耐水処理剤と水とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記表面の前記微細セルロース分散液を塗布された部分に塗布する乾燥前耐水処理剤塗布工程
を具備する、請求項3に記載の複合体シートの製造方法。
【請求項5】
更に、耐水処理剤と水と濡れ・浸透剤とを含有する耐水処理剤分散液を、前記疎水性基材の前記微細セルロース分散液を塗布されるのと反対側の表面に塗布する耐水処理剤裏側塗布工程
を具備する、複合体シートの製造方法であって、
耐水処理剤裏側塗布工程において、前記濡れ・浸透剤の種類と、前記耐水処理剤分散液における前記水と前記濡れ・浸透剤との合計に対する前記濡れ・浸透剤の質量比との組合せが、以下の(a)〜(g)からなる群から選ばれる、請求項1〜4のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
(a)エチルアルコール:濃度20%以上40%未満
(b)1−プロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(c)イソプロピルアルコール:濃度11%以上40%未満
(d)1−ブチルアルコール:濃度1%以上8%以下
(e)2−ブチルアルコール:濃度10%以上13%以下
(f)t−ブチルアルコール:濃度6%以上40%未満
(g)3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール:濃度0.5%以上0.9%以下
【請求項6】
前記微細セルロース分散液が、更に、耐水処理剤を含有する、請求項1〜5のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
【請求項7】
前記耐水処理剤の少なくとも一つが樹脂のエマルジョン及び/又はラテックス類である、請求項6に記載の複合体シートの製造方法。
【請求項8】
前記微細セルロースが、単位質量の微細セルロースが保持しうる水の体積を表す抱水量が10mL/g以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
【請求項9】
前記微細セルロースが、バイオセルロース及び/又はミクロフィブリル化セルロースである、請求項1〜8のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
【請求項10】
前記疎水性基材が、目付量10〜50g/m2の疎水性合成繊維の不織布である、請求項1〜9のいずれかに記載の複合体シートの製造方法。
【請求項11】
前記不織布が、スパンボンド・メルトブローン複合体不織布である、請求項10に記載の複合体シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−240513(P2010−240513A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89014(P2009−89014)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(592034744)株式会社日本吸収体技術研究所 (28)
【Fターム(参考)】