説明

複合型フィン

【課題】非対称船尾フィンに流入する流れを改善し、非対称船尾フィンの抵抗を低減する複合型フィンを提供する。
【解決手段】一方の面を平坦面に構成するとともに他方の面を船体取付部分から開放端側に向けて厚みが減少する断面形状の船尾フィン107a,107bを所定の側面仰角で、かつ、平坦の面がプロペラ109の回転方向に向けて左右両舷にそれぞれ配置し、当該フィンの後端高さが前記プロペラ半径の60〜70%の範囲に配置し、かつ、前記船尾フィンの後端が略0.5ステーションの位置付近に配置してなる非対称船尾フィンの前方の所定位置に後方上向きの傾斜をつけた所定形状の小型フィン1a,1bを船幅が約32.26m相当の船体の両舷側に垂直に取付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶の船尾に取付ける複合型フィンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の船尾フィン構造としては、船尾のプロペラの前方において、船体の外板の両側に渡って整流フィンを取り付けることが行われており、本願出願人は、既に、特開2004−42881号公報に開示のものを提案している。
【0003】
当該特開2004−42881号公報に開示のものは、発明名称「非対称船尾フィン構造」に係り、「フィンの固有抵抗を打ち消し、船体抵抗を減少させると同時に、プロペラへの非対象流れを発生させることにより自航要素を改善させた非対称船尾フィン構造を提供すること」を目的として(同公報明細書段落番号0008参照)、「一方の面を平坦面に構成するとともに他方の面を船体取付部分から開放端側に向けて厚みが減少する断面形状とした船尾フィンを、その平坦の面がプロペラの回転方向に向けて左右両舷にそれぞれ配置し、かつ、前記船尾フィンの船体取付部分の側面仰角を所定の値にし、前記船尾フィンの後端高さをプロペラ半径の60〜70%の範囲に配置し、かつ、前記船尾フィンの後端が略0.5ステーションの位置付近に配置してなる」の構成により(同公報特許請求の範囲請求項1の記載参照)、「(1)プロペラの推力が補助されて、船体抵抗値および自航要素が所定の値改善される・・・また、(2)同船尾フィン構造のうち、右舷の船尾フィンを所定位置だけ後退せしめて、左右の位置をずらした構造のものは、自航要素の推力減少係数において,さらに、改善される」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0032参照)。
【0004】
図5は、同公報に開示の第1の実施の形態に係る非対称船尾フィン構造を示す右舷側面図(同公報添付図1)である。
図5において、101は、非対称船尾フィン構造、103は、船舶、105は、船尾、107aは、船尾フィン、109は、プロペラ、111は、舵、A.P.は、船尾垂線(Aft. perpendicular)、S.T.は、ステーション、L1、L2は、前記船尾フィン107aの平坦面側を流れる流体である。
【0005】
図5に示されるように、特開2004−42881号公報に開示の非対称船尾フィン構造101は、一方の面を平坦面に構成するとともに他方の面を船体取付部分から開放端側に向けて厚みが減少する断面形状とした船尾フィン107a、107bを当該平坦面がプロペラ109の回転方向に向けて左右両舷にそれぞれ配置し、かつ、前記船尾フィン107a、107b船体取付部分の側面仰角を5度〜16度の上向角に配置し、前記船尾フィン107a,107bの後端高さをプロペラ半径の60〜70%の範囲に配置し、かつ、前記船尾フィン107a(107b)の後端が略0.5ステーションの位置付近にし、前記船尾フィン107a(107b)の前端が略1.0ステーションより後方の所定位置の付近に配置したものである。
【0006】
このように、特開2004−42881号公報に開示の非対称船尾フィンにおいては、最適な取り付け位置及び形状は、船型毎に異なるが、後方を上向きに傾斜をつけることが多く、この場合には、フィンを長くればするほど船体周りの流れを整流し、抵抗を低減する効果が大きくなるが、同時にフィンの固有抵抗も増加するため、フィン自体の抵抗低減効果を十分に得ることができないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−42881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑み、非対称船尾フィンに流入する流れを改善し、非対称船尾フィンの抵抗を低減する複合型フィンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本願請求項1に係る発明は、複合型フィンにおいて、一方の面を平坦面に構成するとともに他方の面を船体取付部分から開放端側に向けて厚みが減少する断面形状の船尾フィンを所定の側面仰角で、かつ、平坦の面がプロペラの回転方向に向けて左右両舷にそれぞれ配置し、当該フィンの後端高さが前記プロペラ半径の60〜70%の範囲に配置し、かつ、前記船尾フィンの後端が略0.5ステーションの位置付近に配置してなる非対称船尾フィンの前方の所定位置に後方上向きの傾斜をつけた所定形状の小型フィンを船幅が約32.26m相当の船体の両舷側に垂直に取付けたことを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に係る複合型フィンにおいて、前記小型フィンは、単板とそれを支える副板とからなり、前記副板は、前記単板の上面又は下面に取り付けられ、船側から見た場合、上部が下部より小さい正台形形状を呈する小型フィンであることを特徴とする。
また、本願請求項3に係る発明は、前記請求項1または2に係る複合型フィンにおいて、前記小型フィンは、前記非対称船尾フィンの長さ(L)の約60〜70%の長さ((0.6〜0.7)×L)で、かつ前記非対称船尾フィンの幅(B)の約60〜70%の幅からなることを特徴とする。
さらに、本願請求項4に係る発明は、前記請求項1ないし3のいずれかに係る複合型フィンにおいて、前記小型フィンの取り付け位置は、その後端の位置が、前記非対称船尾フィンの前端位置に略一致しまたは1フレーム前方で、かつ、前記非対称船尾フィンの後端から1/5〜1/3の位置の高さをその後端高さ位置とすることを特徴とする。
また、本願請求項5に係る発明は、前記請求項1ないし4のいずれかに記載の複合型フィンにおいて、前記小型フィンの前端の高さ位置は、前記非対称船尾フィンの平坦面(長辺)の延長線上で、前記非対称船尾フィンの前端から前記非対称船尾フィンの長さ(L)の約10%の範囲で下がった高さの範囲((0〜1/10)×L)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、上述のとおり構成されているので、次に記載する効果を奏する。
(1)非対称船尾フィンに流入する流れを前方の小型フィンでコントロールして抵抗を低減することにより、非対称船尾フィンを単独装備の場合より約1.5〜2%推進性能を向上することができるという効果を有する。(図3参照)
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本実施例1に係る複合型フィンの左舷側配置図、同(b)は、同右舷側配置図、
【図2】図2は、図1(b)に示すA−A断面及びB−B断面における本実施例1に係る複合型フィンの配置図、
【図3】(a)本実施例1に係る複合型フィンを装備した場合の水槽試験結果のグラフ、(b)本実施例1に係る複合型フィンを装備した場合の馬力低減効果のグラフ、
【図4】(a)非対称船尾フィン単独の場合の概念図、(b)本実施例1に係る複合型フィンを装備した場合の概念図、
【図5】特開2004−42881号公報に開示の第1の実施の形態に係る非対称船尾フィン構造を示す右舷側面図(同公報添付図1)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る複合型フィンを実施するための形態として一実施例を示す図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1(a)(b)は、本発明に係る複合型フィンを実施するための形態の一実施例である複合型フィンの実施例1を示す図であり、そのうち、図1(a)本実施例1に係る複合型フィン1bの左舷側配置図、(b)同右舷側配置図(図5に相当)であり、図2は、図1(b)に示すA−A断面及びB−B断面における本実施例1に係る前方フィン1a、1bの配置図であり、船体後方から見た図である。
【0014】
図1(a)(b)において、1a、1bは、実施例1に係る複合型フィンであり、そのうち、1aは、右舷に配置される実施例1に係る複合型フィン、1bは、左舷に配置される実施例1に係る複合型フィンである。図1(a)(b)において、107a、107bは、特開2004−42881号公報に開示の非対称船尾フィンであり、また、A−Aは、前記非対称船尾フィン107a、107bの船体横方向断面線、B−Bは、本発明に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの船体横方向断面線であり、その余の符号は、図5に示した部材と同じ部材は同じ符号を用いて示している。
【0015】
また、図2において、107a、107bは、前記特開2004−42881号公報に開示の非対称船尾フィン、1a、1bは、本実施例1に係る複合型フィン、2a、2bは、本実施例1に係る複合型フィンを構成する鋼板製単板、3a、3bは、同単板2a、2bを支える副板である。
【0016】
図1(a)(b)に示すように、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bは、前記非対称船尾フィン107a、107bの前方に、所定形状・所定位置に小型フィンを取付けて、前記非対称船尾フィン107a、107bと合わせて複合型フィン1a、1bとしている。すなわち、図1(a)(b)に示すように、前記非対称船尾フィン107a、107bの前方に、後方上向きに傾斜をつけた所定形状の小型のフィンを取付けて、前記非対称船尾フィン107a、107bに流入する流れを上向きに変化させながら加速することにより、前記非対称船尾フィン107a、107bに働く抗力(進行方向と逆向きの揚力)を低減させるようにしたものである。
【0017】
また、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bは、鋼板製単板2a、2bとそれを支える副板3a、3bからなり、図2に示すように、単板2a、2bは、船体103表面に対し略垂直となるように溶接にて取り付ける。
【0018】
また、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1b共に、前記副板3a、3bは、前記単板2a、2bの上面に取り付けられる構造とし、船側から見た場合、上部が下部より小さい台形形状を呈する。この点が、前記非対称船尾フィン107a、107bでは、図1(a)(b)に示すように、プロペラ109の回転方向との関係で、右舷に配置される前記非対称船尾フィン107aは、上底が下底より短い台形断面を呈し、左舷に配置される前記非対称船尾フィン107bは、上底が下底より長い逆台形形状を呈するのと異なる。
【0019】
図1(a)(b)に示すように、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bは、前記非対称船尾フィン107a、107bの前方に、前記非対称船尾フィン107a、107bの長さ(L)の約60〜70%の長さ((0.6〜0.7)×L)で、かつ前記非対称船尾フィン107a、107bの幅(B)の約60〜70%の幅からなる本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを後方上向きに傾斜を付けて取り付ける。
【0020】
傾斜は、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端の位置が、前記非対称船尾フィン107a、107bの前端位置に略一致し、取付け高さに関しては、前記非対称船尾フィン107a、107bの前端高さ位置から、当該非対称船尾フィン107a、107bの後端から1/4〜1/3の位置の高さを本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端高さ位置とする。すなわち、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端の前後方向の取付け位置は、前記非対称船尾フィン107a、107bの前端に合わせ、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端高さは、前記非対称船尾フィン107a、107bの後端の高さ位置より、同非対称船尾フィン107a、107bの後端から1/3〜1/4下がった位置((1/3〜1/4)×L)とする。
【0021】
また、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの前端の高さは、前記非対称船尾フィン107a、107bの前端から、当該非対称船尾フィン107a、107bの平坦面(長辺)の延長線上で、その延長線から前記非対称船尾フィンの長さ(L)の約10%の範囲で下がった高さの範囲((0〜1/10)×L)とする。
【0022】
このように、実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの長さ及び幅を前記非対称船尾フィン107a、107bの長さ(L)の約60〜70%の長さ及び約60〜70%の幅とするのは、フィンにはそれぞれ固有抵抗がはたらき、後方に配置される前記非対称船尾フィン107a、107bと同等かそれ以上の大きさにすると、当該非対称船尾フィン107a、107bとほぼ同等の固有抵抗が前方フィンにはたらく為、当該非対称船尾フィン107a、107bの固有抵抗を低減する効果以上の抵抗となる。また、反対に小さくしすぎると、前記非対称船尾フィン107a、107bに流入する流れを上向きに変化させながら加速する効果を十分に得られないからである。そこで、水槽試験により最適な長さ及び幅である約60〜70%長さ(L)及び約60〜70%幅とした。
【0023】
また、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端の位置を前記非対称船尾フィン107a、107bの前端に一致させるようにするのは、この種のフィンの端部は、船殻のフレーム位置に合わせる方が強度が高まり工作上都合が良いからであり、また、前方に配置される本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端位置が前記非対称船尾フィン107a、107bの前端位置より後方に配置すると、フィン同士の間隔が狭くなり、その結果、水の流れが妨げられ、抵抗が増加することになるおそれがあるからである。
【0024】
しかしながら、その後の水槽試験によれば、前方に配置される本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端位置を前記非対称船尾フィン107a、107bの前端よりも、1フレーム程度前方に配置しても、同程度の効果を得られた。したがって、この部分の配置関係は、前方に配置される本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端位置が前記非対称船尾フィン107a、107bの前端位置と一致させることに限定されるわけではなく、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端位置が前記非対称船尾フィン107a、107bの前端位置と一致させ、または、それより1フレーム程度前方に配置されるようにしても良いものである。
【0025】
また、前記非対称船尾フィン107a、107bの後端から1/4〜1/3長さ(L)における高さ位置に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端高さ位置としたのは、基本的には、前述するように、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後端を前記非対称船尾フィン107a、107b後端より高くしても、前記非対称船尾フィン107a、107bに流入する流れはそれほど変化しないのに対し、前方に配置される本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bが大きくなる分、抵抗大となる懸念があるからである。
【0026】
なお、その後の水槽試験では、この高さに関し、約1/5×Lの高さ位置に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1b後端を配置しても同等の効果を得られることが分かったので、結果的には、この後端高さは、前記非対称船尾フィン107a、107bの後端から1/5〜1/3長さ((1/5〜1/3)×L)における高さであっても良いものである。
【0027】
さらに、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの前端の高さは、前記非対称船尾フィン107a、107bの前端から、当該非対称船尾フィン107a、107bの長辺の延長線上で、その延長線から前記非対称船尾フィンの長さ(L)の約10%の範囲で下がった高さの範囲((0〜1/10)×L)とするのは、前方に配置される本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後方の上向きの角度を前記非対称船尾フィン107a、107bより小さくすると、前記非対称船尾フィン107a、107bに流入する流れを上向きに変化させながら加速する効果を十分に得られない。
【0028】
しかしながら、前記非対称船尾フィン107a、107bの角度によっては必ずしもこの範囲に入るとは限らないので、この条件は「前方に配置される本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの後方の上向きの角度は、前記非対称船尾フィン107a、107bと同じか、それより大きいこととなる。
【0029】
(水槽試験)
本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bの水槽試験を実施した。試験は本願出願人会社に設置の水槽において、模型を用いて、フルード数(Fn)と剰余抵抗係数(rR)の相関水槽試験結果及び本実施例1に係る複合型フィンの馬力低減効果を検証した。
【0030】
図3(a)は、本実施例1に係る複合型フィンを装備した場合の船体フルード数(Fn)と剰余抵抗係数(rR)の相関を示す水槽試験結果のグラフであり、同図(b)は、本実施例1に係る複合型フィンを装備した場合の馬力と速力の間の馬力低減効果のグラフである。図3(a)において、実線は、非対称船尾フィン107a、107bを単独で装備した場合の船体フルード数(Fn)と剰余抵抗係数(rR)の相関を示すグラフであり、一点鎖線は、非対称船尾フィン107a、107bの前方に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを装備した場合の船体フルード数(Fn)と剰余抵抗係数(rR)の相関を示すグラフであり、図3(b)において、波線は、非対称船尾フィンを単独装備の場合の速力−馬力を示すグラフであり、実線は、非対称船尾フィン107a、107bの前方に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを装備した場合の速力−馬力を示すグラフである。
【0031】
図3(a)から知りうるように、非対称船尾フィン107a、107bの前方に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを装備した場合には、これを装備しない場合よりも、どのようなフルード数に対しても、剰余抵抗係数(rR)が高く、また、図3(b)から知りうるように、非対称船尾フィン107a、107bの前方に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを装備した場合には、これを装備しない場合よりも、馬力低減効果が見いだされ、およそ1.5〜2%の推進性能を向上することが知りうる。
【0032】
図4は、本実施例1に係る複合型フィンの動作原理を示す図であり、図4(a)は、非対称船尾フィンを単独装備の場合の原理、図4(b)は、非対称船尾フィン107a、107bの前方に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを装備した場合の原理図である。
【0033】
図4(a)、(b)において、太実線α、β、γ、δは、それぞれ、非対称船尾フィンにより減速された流れα、非対称船尾フィンにより加速された流れβ、前方フィンにより減速された流れγ、前方フィンにより加速された流れδを示し、非対称船尾フィンにより加速した流れβによる非対称船尾フィン下方の圧力P3の低下分より、非対称船尾フィンにより減速された流れαによる非対称船尾フィン上方の圧力P1が大きくなることにより、非対称船尾フィンに揚力が発生し、該揚力の前進方向成分が非対称船尾フィンにかかる固有抵抗F1となる。また、前方フィンにより加速された流れδにより、非対称船尾フィン上方の圧力P2が低下し、非対称船尾フィンに発生する揚力の前進方向成分、つまり、非対称船尾フィンにかかる固有抵抗F2が固有抵抗F1よりも低減する。
【0034】
つまり、非対称船尾フィン107a、107bの前方に本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bを装備した場合には、本実施例1に係る複合型フィンの前方フィン1a、1bによる抵抗増加量より、非対称船尾フィン107a、107bに係る抵抗減少分の方が大きくなり、全体として抵抗を低減する。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、非対称船尾フィンを有する船体に配置して効果を上げることができる。
【符号の説明】
【0036】
1a、1b 前方フィン
2a、2b 単板
3a、3b 副板
α 非対称船尾フィンにより減速された流れ
β 非対称船尾フィンにより加速された流れ
γ 前方フィンにより減速された流れ
δ 前方フィンにより加速された流れ
101 非対称船尾フィン構造
103 船体
107a、107b 非対称船尾フィン
109 プロペラ
F1、F2 抵抗
P1、P2、P3 圧力


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面を平坦面に構成するとともに他方の面を船体取付部分から開放端側に向けて厚みが減少する断面形状の船尾フィンを所定の側面仰角で、かつ、平坦の面がプロペラの回転方向に向けて左右両舷にそれぞれ配置し、当該フィンの後端高さが前記プロペラ半径の60〜70%の範囲に配置し、かつ、前記船尾フィンの後端が略0.5ステーションの位置付近に配置してなる非対称船尾フィンの前方の所定位置に後方上向きの傾斜をつけた所定形状の小型フィンを船幅が約32.26m相当の船体の両舷側に垂直に取付けたことを特徴とする複合型フィン。
【請求項2】
前記小型フィンは、単板とそれを支える副板とからなり、前記副板は、前記単板の上面又は下面に取り付けられ、船側から見た場合、上部が下部より小さい正台形形状を呈する小型フィンであることを特徴とする請求項1に記載の複合型フィン。
【請求項3】
前記小型フィンは、前記非対称船尾フィンの長さ(L)の約60〜70%の長さ((0.6〜0.7)×L)で、かつ前記非対称船尾フィンの幅(B)の約60〜70%の幅からなることを特徴とする請求項1または2に記載の複合型フィン。
【請求項4】
前記小型フィンの取り付け位置は、その後端の位置が、前記非対称船尾フィンの前端位置に略一致しまたは1フレーム前方で、かつ、前記非対称船尾フィンの後端から1/5〜1/3の位置の高さをその後端高さ位置とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の複合型フィン。
【請求項5】
前記小型フィンの前端の高さ位置は、前記非対称船尾フィンの平坦面(長辺)の延長線上で、前記非対称船尾フィンの前端から前記非対称船尾フィンの長さ(L)の約10%の範囲で下がった高さの範囲((0〜1/10)×L)であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の複合型フィン。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−158210(P2012−158210A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17483(P2011−17483)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000146814)株式会社新来島どっく (101)