説明

複合型肝細胞組織体およびその作製方法

【課題】肝細胞と肝細胞以外の細胞からなる複合型肝細胞組織体を作製するための新規手法を提供する。
【解決手段】2つ以上の入口と、入口それぞれに接続する入口流路と、入口流路が同時又は段階的に合流する1つ以上の合流点と、合流点より下流に存在する合流流路と、合流流路の下流に存在する出口を有する、流路構造に対し、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞を懸濁させた第一の水溶液を、入口を介して、また、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞以外の細胞を懸濁させた第二の水溶液を、入口を介して、それぞれ流路構造に連続的に導入し、流路構造の内部において、第一の水溶液及び第二の水溶液を接触させ、更に流路構造の内部及び/又は流路構造の外部において、第一の水溶液及び第二の水溶液をゲル化剤水溶液と接触させることによって、第一の水溶液および第二の水溶液が接触した状態で連続的にゲル化したハイドロゲル材料を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体外において複合型肝細胞組織体を作製するための手法及び、当該手法を利用して作製された複合型肝細胞組織体に関する。
【背景技術】
【0002】
生体外に単離された肝細胞(肝実質細胞)は、薬物代謝試験やドラッグスクリーニング、あるいはバイオ人工肝臓のソースとして利用されている。また、疾患によって低下した肝機能を補助するために、分離した肝細胞を移植する細胞移植療法が行われている。
【0003】
肝細胞は生体内では高い再生能力を持つことが知られているが、生体外において通常のプレート上での単層培養を行うと、その機能が急速に失われてしまう。そのため、これまでに、生体外において肝細胞の機能維持を可能とする様々な培養方法が研究・開発されてきた。たとえば、特許文献1に示されるように、立体的なスフェロイド(球状細胞集塊)を形成することで、単層培養と比較して、その機能を長期間維持できる手法が開発されており、また、特許文献2に示されるように、中空糸を用いた立体的な培養手法なども開発されている。
【0004】
さらに、特許文献3および非特許文献1に示されるように、プレート上で単層培養を行う場合であっても、肝細胞と、肝細胞以外の細胞を共培養することで、肝細胞の機能をより長期にわたって高く維持できることが知られている。肝細胞以外の細胞としては、実験的にはマウス胎児由来繊維芽細胞である3T3細胞が頻繁に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2008−289362
【特許文献2】特許公開2002−247978
【特許文献3】特許公開2002−510969
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature BIotechnology)」、26巻1号、120−126、2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生体の肝臓において、肝細胞(肝実質細胞)は規則的かつ一列に配列し、中心静脈から放射状に伸びる肝細胞索構造を形成している。そして、その周囲は類洞内皮細胞や星細胞によって取り囲まれている。生体の肝細胞索構造を模倣した複合型組織体を構築できれば、肝細胞の機能をより長期にわたって維持することが可能となりうると考えられる。
【0008】
しかしながら、従来法である立体的なスフェロイド形成手法や、中空糸を用いた細胞集塊の形成手法では、直径数百ミクロン程度の比較的大きな細胞集塊の形成は可能であったものの、2種類以上の細胞を正確に配置した複合的な組織体を作製することは困難であった。そのため、肝細胞が直線的に配置しつつ、その周囲を他の細胞が取り囲むような、生体の肝細胞索構造を模倣した複合型肝細胞組織体を形成することは不可能であった。
【0009】
また、これまでのプレート上でのパターン化共培養では、マイクロメートルの正確さで肝細胞と他の細胞を配置することは可能であるものの、肝細胞の周囲を他の細胞が3次元的に取り囲んだ微小な培養環境を形成することは不可能であった。
【0010】
そのため、上記した既存の手法では、通常のプレート上での単層培養と比較して肝細胞の機能をより長期にわたり高く維持できるものの、その期間・程度が不十分であった。
【0011】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、従来の、スフェロイド形成法や中空糸培養系、あるいはプレート上でのパターン化共培養では困難であった、肝細胞と肝細胞以外の細胞からなる複合型肝細胞組織体を簡便かつ大量に作製するための新規手法を提供しようとするものである。
【0012】
また本発明は、既存の手法と比較してより生体内に近い環境における肝細胞の培養を可能とし、その機能維持を可能とする新規複合型肝細胞組織体を提供しようとするものである。
【0013】
さらに本発明は、肝細胞を用いた薬剤代謝試験やバイオ人工肝臓の作製において有用な、新規複合型肝細胞組織体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の一観点に係る発明は、少なくとも2つの入口I1〜In(n≧2)と、入口I1〜Inにそれぞれ接続する入口流路C1〜Cnと、入口流路C1〜Cnが同時あるいは段階的に合流する少なくとも1つの合流点P1〜Pm(m≧1)と、合流点P1〜Pmより下流に存在する合流流路Gと、合流流路Gの下流に存在する出口Oを有する、流路構造Xに対し、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞を懸濁させた、第一の水溶液を、入口I1を介して、また、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞以外の細胞を懸濁させた、第二の水溶液を、入口I2を介して、それぞれ流路構造Xに連続的に導入し、流路構造Xの内部において、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液を接触させ、さらに流路構造Xの内部および/あるいは前記流路構造Xの外部において、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液をゲル化剤水溶液と接触させることによって、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液が接触した状態で連続的にゲル化した、ハイドロゲル材料を作製する、というものである。この操作により、肝細胞が直線的に配列し、その周囲が肝細胞以外の細胞によって取り囲まれた、複合型肝細胞組織体を作製することが可能となる。
【0015】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル材料中に埋包された前記肝細胞および前記肝細胞以外の細胞に対し培養操作を行うことが望ましい。このようにすることで、細胞同士がハイドロゲル材料中で集塊を形成するため、複合型肝細胞組織体を効率的に作製することが可能となる。
【0016】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル材料中に埋包された前記肝細胞および前記肝細胞以外の細胞に対し、酸素濃度30%以上の雰囲気下において培養操作を行うことが好ましい。このようにすることで、作製したハイドロゲル材料に内包した細胞に対し酸素を効率的に供給でき、酸素濃度20%雰囲気下における通常の培養と比較して、その生存率をより高く維持することが可能となる。
【0017】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記流路構造Xは入口I3を有しており、入口I3を介して、前記流路構造Xに対して前記ゲル化剤水溶液を連続的に導入する、という操作を行うことが可能である。このようにすることで、流路内部において、連続的に細胞が埋包されたハイドロゲル材料を作製することが可能となる。
【0018】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記流路構造Xは入口I4を有しており、入口I4を介して、前記流路構造Xに対してゲル化剤を含まないバッファー水溶液を導入することにより、合流点P1〜Pmのいずれにおいても、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液と、前記ゲル化剤水溶液は直接接触しないことが好ましい。このようにすることで、流路の内部において、第一の水溶液および第二の水溶液がゲル化する速度を調節することが可能となり、急激なゲル化による流路の閉塞を防ぎ、安定的な送液および均一な断面形状を有するハイドロゲルの作製が可能となる。
【0019】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、合流点P1〜Pmのうち少なくとも一つの合流点において、前記第一の水溶液は、その上下、左右、あるいは周囲が前記第二の水溶液と接触することが好ましい。このようにすることで、肝細胞が中心に位置し、その上下、左右、あるいは周囲が肝細胞以外の細胞によって構成された肝細胞組織体を、効率的に作製することが可能となる。
【0020】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、入口流路C1〜Cnのうち少なくとも一つは、入口I1〜Inと合流点P1〜Pmの間に存在する分岐点において分岐し、合流点P1〜Pmにおいて再合流していても良い。このようにすることで、肝細胞を含む第一の水溶液の左右に、第二の水溶液、ゲル化剤水溶液、および/あるいはバッファー水溶液を導入する際に、それぞれ単一の入口を用いた操作が可能となり、操作およびシステムの簡略化が可能となる。
【0021】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、少なくとも部分的に、微細加工を施した平板状のポリマー基板と、平面状の他のポリマー基板を貼り合せることによって形成されていることが好ましい。このようにすることで、平面的に加工された比較的シンプルなマイクロ流路構造を用いた場合であっても、溶液の導入、ゲル材料の作製、および複合型肝細胞組織体の作製が可能となる。
【0022】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、少なくとも部分的に2重管によって構成されていても良い。このようにすることで、2重管の中心から第一の水溶液を、外側から第二の水溶液をそれぞれ導入することができ、肝細胞の周囲に肝細胞以外の細胞が配置した組織体の構築が可能となる。
【0023】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xにおける前記出口Oは、前記ゲル化剤水溶液に浸されていても良い。このようにすることで、流路内にゲル化剤水溶液を導入しない場合であっても、流路の外において細胞を含む溶液の流れをゲル化することが可能となる。
【0024】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、流路構造Xは、その幅・深さ・直径等の値の少なくともいずれか一つが、少なくとも部分的に300マイクロメートル以下であることが好ましい。このようにすることで、直径100ミクロン程度以下のハイドロゲル材料を容易に作製することが可能となる。
【0025】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムは、その構成単位であるウロン酸における、グルロン酸の割合が60%以上であり、マンヌロン酸の割合が40%以下である、ことが好ましい。このようにすることで、作製したハイドロゲル材料を、リン酸等を含む培養液中に浸した際の膨潤を抑制することが可能であり、細胞を高密度に埋包することが可能となる。
【0026】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、それぞれの水溶液100mLあたり1g以下であることが好ましい。このようにすることで、ゲル材料の強度が低い材料を作製することが可能となるため、細胞が集塊を形成しやすくなる。
【0027】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ゲル化剤水溶液は、塩化バリウムを含むことが好ましい。このようにすることで、ゲル化剤として塩化カルシウムを含み塩化バリウムを含まないものを用いた場合と比較して、リン酸等を含む培養液中に浸した際の膨潤を抑えることが可能となり、細胞を高密度に埋包することが可能となる。
【0028】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ゲル化剤水溶液および/あるいは前記バッファー水溶液は、増粘剤を含むことが好ましい。このようにすることで、流路内に形成した層流の流れを安定化することが可能となり、径の均一なハイドロゲル材料の作製が可能となる。
【0029】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記増粘剤とは、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコール、あるいはそれらの任意の組み合わせであることが好ましい。このようにすることで、生体適合性の高い材料を用いることで、細胞へのダメージを抑制することが可能となる。
【0030】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、前記ゲル化剤水溶液、前記バッファー水溶液の中で、最小の粘度のものと最大の粘度のものの粘度の比率が、室温において、1:1〜1:10の範囲にあることが好ましい。このようにすることで、複数種類の溶液を流路内で安定的に送液することが可能となる。
【0031】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液に懸濁させた肝細胞の密度は、1立方センチメートル当たり1000万個以上であることが好ましい。このようにすることで、肝細胞を高密度に埋包したゲル材料を得ることが可能となる。
【0032】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第二の水溶液に懸濁させた肝細胞以外の細胞の密度は、1立方センチメートル当たり100万個以上である、
ことが好ましい。このようにすることで、肝細胞以外の細胞を高密度に播種することができ、効率的に複合型肝細胞組織体の形成を行うことが可能となる。
【0033】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第一の水溶液に懸濁させた前記肝細胞は、肝実質細胞、肝前駆細胞、肝幹細胞、ES細胞・IPS細胞・間葉系幹細胞のいずれかから分化させた肝細胞様細胞、のいずれかであることが好ましい。このようにすることで、医療において有用な応用を行うことが可能となる。
【0034】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記第二の水溶液に懸濁させた肝細胞以外の細胞は、繊維芽細胞、肝非実質細胞、血管内皮細胞、中皮細胞、肝以外の臓器細胞、あるいはこれらのうちの任意の組み合わせであることが好ましい。このようにすることで、肝細胞の機能を維持することが可能な細胞を、肝細胞とともに埋包することが可能となる。
【0035】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記繊維芽細胞は、3T3細胞であってもよい。このようにすることで、肝細胞機能を長期わたり活性化・安定化することが可能となる。
【0036】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記肝非実質細胞は、星細胞および/あるいは類洞内皮細胞であってもよい。このようにすることで、より生体内の肝臓に似た環境を提供可能な複合型肝細胞組織体の形成が可能となる。
【0037】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、培養操作を行った後に、アルギン酸リアーゼによって前記ハイドロゲル材料を溶解することも可能である。このようにすることで、ハイドロゲル材料中で形成した複合型肝細胞組織体を、ハイドロゲルから取り出すことができ、種々の応用を行うことが可能となる。
【0038】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル材料は、直径100マイクロメートル以下のファイバー状であっても良い。このようにすることで、内部の肝細胞により効率的に栄養分を供給することが可能となる。
【0039】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、前記ハイドロゲル材料は、厚さ100マイクロメートル以下のシート状であっても良い。このようにすることで、大量の細胞を迅速にハイドロゲル材料中に埋包することが可能となる。
【0040】
また、本発明の他の観点に係る発明は、請求項1乃至25のいずれか一項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法を用いて作製した、複合型肝細胞組織体である。このような複合型組織体は、生体に類似した培養環境を提供することが可能であるため、肝細胞の機能を維持する上で非常に好ましい。
【0041】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、複合型肝細胞組織体の形状は、線状であり、その直径が少なくとも部分的に100マイクロメートル以下であることが好ましい。このようにすることで、内部の肝細胞に対し効率的な酸素や栄養分の供給を行うことが可能となる。
【0042】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、複合型肝細胞組織体の形状は、線状であり、その長さが100マイクロメートル以上であることが好ましい。このようにすることで、肝細胞が直線的に少なくとも数個連なった組織体の構築が可能となるため、その機能をより維持しやすくなる。
【0043】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、複合型肝細胞組織体は、生体内あるいは生体外において、血液凝固第VII因子、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子のいずれか1つ以上を産生することが好ましい。このようにすることで、血友病の治療において効果的な因子を発現するため、血友病患者の生体内に移植した場合に、優れた効果を発揮する。
【0044】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、複合型肝細胞組織体は、肝不全症、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、血友病、凝固異常症状、肝酵素欠損症、あるいは感染症のうち、少なくともいずれか一つを対象とした治療のために利用する、もしくは、肝機能補佐のために利用することも可能である。
【0045】
また、本観点に係る発明において、限定されるわけではないが、複合型肝細胞組織体は、その移植対象となる部位が、生体内の腹腔内、肝臓、腎臓、筋肉、皮下組織のうちの少なくともいずれか1か所であることが好ましい。このようにすることで、生体内に移植した複合型肝細胞に対し、効率的に栄養分を供給することが可能となる。
【発明の効果】
【0046】
本発明は、以上に述べられたように構成されているため、複雑な装置や操作を必要とせず、マイクロ流路構造を用いることで、肝細胞が列を形成し、その周囲が他の細胞によって取り囲まれたハイドロゲル材料を作製することができる。そして、必要に応じて培養操作を行うことによって、既存の細胞培養手法では不可能であった、肝細胞と肝細胞以外の細胞を立体的かつ密接した状態において培養することが可能となり、生体外において複合型肝細胞組織体を構築することが可能となる。そのため、このように生体内の環境を模倣することで、肝細胞の機能維持を行うことが可能となり、薬物代謝試験のためのモデルや、生体外での肝組織モデルとしての利用が可能となる。また、必要に応じてハイドロゲル材料を溶解することで、作製した複合型肝細胞組織体を取り出すことが可能となる
【0047】
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、ハイドロゲルに埋包した状態で体内に移植することにより、免疫排除を抑制可能な移植用細胞キャリアとしての応用を可能とする肝細胞組織体の提供が可能となる。
【0048】
また本発明は、以上に述べられたように構成されているため、通常は困難な、肝細胞の大量培養系の構築が可能となり、たとえば劇症肝炎あるいは急性肝炎を患者に対する応急的な処置を可能とする、体外における循環型人工肝臓の構築が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施形態に係る、肝細胞および肝細胞以外の細胞を埋包したハイドロゲル材料を作製するための最も基本的な流路構造と、その内部における細胞および溶液の流れを模式的に示した概略図である。
【図2】実施形態に係る、肝細胞および肝細胞以外の細胞を埋包したハイドロゲル材料を作製するための別の形態を有する流路構造と、その内部における細胞および溶液の流れを模式的に示した概略図である。
【図3】実施形態に係る、複合型肝細胞組織体を作製するための、流路構造が内部に形成された第一のマイクロ流体デバイスの概略図であり、図3(a)は図3(b)におけるB矢視図であり、図3(b)は図3(a)におけるA1−A2線における断面図である。
【図4】実施形態に係る、複合型肝細胞組織体を作製するための、流路構造を形成した第二のマイクロ流体デバイスの概略図であり、図4(a)は図4(b)におけるB矢視図であり、図4(b)は図4(a)におけるA1−A2線における断面図である。
【図5】実施形態に係る、肝細胞および肝細胞以外の細胞を埋包したハイドロゲル材料、ハイドロゲル材料内部における複合型肝細胞組織体、および、ハイドロゲル材料を溶解した後の複合型肝細胞組織体を模式的に示した概略図であり、それぞれ線形のハイドロゲル材料および/あるいは複合型肝細胞組織体の断面を立体的に示した模式図である。
【図6】実施形態に係る、複合型肝細胞組織体を作製するための、流路構造を形成した第三のマイクロ流体デバイスの概略図、および、当マイクロ流体デバイスを用いて作製されるハイドロゲル材料を立体的かつ模式的に示した図であり、図6(a)は図6(b)〜(f)におけるB矢視図であり、図6(b)〜(f)はそれぞれ、図6(a)におけるA1−A2線、A3−A4線、A5−A6線、A7−A8線、A9−A10線における断面図であり、図6(g)はハイドロゲル材料を立体的かつ模式的に示した図である。
【図7】実施例において作製した、ハイドロゲル材料および複合型肝細胞組織体の顕微鏡写真を示しており、図7(a)は、ラット肝細胞および3T3細胞を埋包した、作製直後のハイドロゲル材料の顕微鏡写真であり、図7(b)は、1週間培養した後の、形成された複合型肝細胞組織体を内包する当ハイドロゲル材料である。
【図8】実施例において作製した、ハイドロゲル材料を溶解した後の複合型肝細胞組織体の顕微鏡写真を示しており、図8(a)および図8(b)は、それぞれ異なる倍率で撮影した顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明に係る複合型肝細胞組織体およびその作製方法の最良の形態を詳細に説明するものとする。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例示にのみ限定されるものではない。
【0051】
図1は、肝細胞および肝細胞以外の細胞を埋包したハイドロゲル材料を作製するための最も基本的な流路構造と、その内部における細胞および溶液の流れを模式的に示した概略図である。
【0052】
図1に示す流路構造Xは、3つの入口I1、I2、I2’、1つの出口O、各入口にそれぞれ接続される入口流路C1、C2、C2’、入口流路C1、C2、C2’が合流する合流点P1、合流点P1と出口Oの間に存在する合流流路G、を有しており、平面的に構成されている。
【0053】
この流路構造Xに対して、入口I1からアルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞を懸濁させた第一の水溶液を、入口I2およびI2’からアルギン酸を含み、かつ肝細胞以外の細胞を含む第二の水溶液を、それぞれ連続的に導入すると、合流流路G内部において、第一の水溶液と第二の水溶液を接触しながら流すことが可能である。
【0054】
なお、流路構造X内において、第一の水溶液および第二の水溶液が層流を保ちながら流れることが好ましく、より具体的には、レイノルズ数が1000以下となることが好ましい。しかしながら、アルギン酸ナトリウムを含む水溶液は一般的に粘度が高いため、また、流路構造の直径が1mm以下である場合には、層流を保つことは容易である。
【0055】
図1に示した流路構造Xを用いる場合には、流路の外側において、第一の水溶液および第二の水溶液をゲル化する必要がある。そのために必要な最も簡便な操作は、出口Oをゲル化剤水溶液に浸しつつ、第一の水溶液および第二の水溶液を流路構造Xに連続的に導入し、出口Oから排出するとともに流路構造Xの外部においてゲル化することである。
【0056】
図2は、肝細胞および肝細胞以外の細胞を埋包したハイドロゲル材料を作製するための他の流路構造と、その内部における細胞および溶液の流れを模式的に示した概略図である。
【0057】
図2に示す流路構造Xは、7つの入口I1、I2、I2’、I3、I3’、I4、I4’と、1つの出口Oと、各入口にそれぞれ接続される入口流路C1、C2、C2’、C3、C3’、C4、C4’と、入口流路が段階的に合流する合流点P1、P2、P3と、合流点P3と出口Oの間に存在する合流流路G、を有しており、平面的に構成されている。
【0058】
図2における流路構造Xは、下面に溝構造を有する上側基板と、平らな下側基板を接着することで形成されており、流路の深さは一定である。しかし、流路深さは部分的に異なっていてもよく、さらに、流路構造Xは、径の同じあるいは異なる円管によって少なくとも部分的に接続された構造であっても良い。ただし、流路構造が少なくとも部分的に平面的に構成されているものの方が、流路構造の作製が容易であり、また、精密な流路構造を比較的容易に作製可能であるため、より好ましい。
【0059】
図3は、複合型肝細胞組織体を作製するための、流路構造が内部に形成された第一のマイクロ流体デバイスの概略図であり、図3(a)は図3(b)におけるB矢視図であり、図3(b)は図3(a)におけるA1−A2線における断面図である。
【0060】
図3に示す流路構造Xにおいて、入口流路C1〜C4’および合流流路Gはそれぞれ直線状であるが、これは必ずしも直線状である必要はなく、途中で折れ曲がっていても良い。また、流路構造XはA1−A2線を対称軸として線対称であるが、これは必ずしも線対称な形態を有する必要はない。ただし、入口流路C2およびC2’、C3およびC3’、C4およびC4’はそれぞれ、同じ深さ・幅・長さであることが好ましい。
【0061】
なお、平面的に構成された流路構造を作製する場合、デバイスの材質としては、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、アクリル等の各種ポリマー材料、ガラス、シリコン、セラミクス、ステンレスなどの各種金属、などを用いることができ、また、これらの材料のうちの任意の複数種類の基板を組み合わせて用いることも可能である。ただし、流路を安価に作製するためには、少なくとも部分的にポリマー材料を用いることが好ましい。また、流路構造の加工技術としては、モールディングやエンボッシングといった鋳型を利用した作製技術は、流路構造を容易に作製可能であるという点において好ましいが、その他にも、ウェットエッチング、ドライエッチング、レーザー加工、電子線直接描画、機械加工等の作製技術を用いることも可能である。
【0062】
一方、流路構造Xは、少なくとも部分的に、内径の異なる円管を組み合わせ二重管構造によって構成されていても良い。そのような流路構造を用い、中心の管から第一の水溶液を、外側の管から第二の水溶液を連続的に導入し、ゲル化することで、中心に位置した肝細胞の周囲を、肝細胞以外の細胞が取り囲むような、ハイドロゲル材料の形成が可能となる。
【0063】
なお、流路構造Xは、幅、直径、深さのうちいずれかの値が、少なくとも部分的に、500マイクロメートル以下であることが好ましく、300マイクロメートル以下であることがより好ましい。このようなサイズの流路構造を用いることで、直径100マイクロメートル以下のハイドロゲル材料を容易に作製することが可能となる。
【0064】
図2および図3に示す流路構造Xに対して、入口I1からアルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞を懸濁させた第一の水溶液を、入口I2およびI2’からアルギン酸を含み、かつ肝細胞以外の細胞を含む第二の水溶液を、入口I3およびI3’からゲル化剤水溶液を、入口I4およびI4’からバッファー水溶液を、それぞれ連続的に導入すると、合流流路Gにおいて、第一の水溶液および第二の水溶液は、接触した状態で流れながら、外側からゲル化剤が拡散することによってゲル化され、細胞を埋包するハイドロゲル材料が連続的に形成され、出口Oより回収される。
【0065】
入口I4およびI4’からバッファー水溶液を導入することで、合流点P3において、ゲル化剤水溶液と、アルギン酸ナトリウムを含む第一の水溶液および第二の水溶液とが、直接的に接触することを防ぐことができる。そのため、通常は急激な、アルギン酸ゲル化の速度を低下させることが可能となり、合流点P3においてアルギン酸ハイドロゲルの生成を防ぐことができ、より安定的な送液を可能とする。
【0066】
なお、肝細胞以外の細胞を含む第二の水溶液を導入するための入口を2か所設けることによって、肝細胞の両側面に肝細胞以外の細胞を配置したハイドロゲル材料の作製が可能となる。そのため、肝細胞の一方の側面に肝細胞以外の細胞を配置した場合と比較して、肝細胞が肝細胞以外の細胞と接触する確率が高まり、より効率的に複合型肝細胞組織体を作製することが可能となる。
【0067】
図4は、複合型肝細胞組織体を作製するための、流路構造を形成した第二のマイクロ流体デバイスの概略図であり、図4(a)は図4(b)におけるB矢視図であり、図4(b)は図4(a)におけるA1−A2線における断面図である。
【0068】
図4に示す流路構造Xを用いることによっても、図3に示す流路構造Xと同様の操作によって複合型肝細胞組織体の作製が可能となる。しかしながら、図4のように入口流路が途中で分岐し再合流することによって、ポンプ等による送液装置の個数を減少することが可能となり、操作性の向上に寄与するため、このような流路構造は好ましい。
【0069】
図5には、図1乃至図4に示した流路構造Xを用いた場合に得られる、肝細胞および肝細胞以外の細胞を埋包したハイドロゲル材料、および、培養操作後に作製したハイドロゲル材料中において形成される複合型肝細胞組織体、および、ハイドロゲル材料を溶解した後の複合型肝細胞組織体を、それぞれ模式的に示した図が示されている。
【0070】
第一の水溶液および第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムは、多価のカチオンの存在下でハイドロゲルを形成するものであれば、どのような分子量のものを用いても良い。しかしながら、ハイドロゲル作製時の操作性の観点から、水100mLに1g溶解し室温に保った場合の粘度が、10cP〜400cPの範囲にあるものが好ましい。また、作製されたゲルの強度が一定以上であれば、作製したハイドロゲル材料を培養液中に浸した際の膨潤の程度が低くなるほうが、複合型肝細胞組織体の形成において都合が良いため、アルギン酸ポリマーを構成する単位であるウロン酸のうち、グルロン酸の割合が60%以上のものを用いることが好ましい。
【0071】
第一の水溶液および/あるいは第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、各溶液100mLあたり、5g以下であることが好ましく、さらには1g以下であることがより好ましい。比較的低粘度のアルギン酸ナトリウム水溶液を用いることで、作製されたアルギン酸ハイドロゲル材料が固くなりすぎることを防ぎ、内包した細胞が集塊を形成しやすくなるためである。
【0072】
また、第一の水溶液および/あるいは第二の水溶液には、アルギン酸ナトリウム以外の成分として、コラーゲン、アルブミン、HEPES、塩化ナトリウム、などを添加することも可能である。これらの成分を加えることで、懸濁させた細胞の機能を高く維持することが可能である。なお、細胞へのダメージを低減するためにも、これらの水溶液の浸透圧をあらかじめ適切な値に調節することが望ましい。
【0073】
ゲル化剤水溶液に含まれるゲル化剤としては、アルギン酸をゲル化することのできる多価の金属カチオンであれば、任意のものを用いることが可能である。しかしながら、細胞毒性の観点から、それらのイオンはカルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムうちのいずれかの2価カチオン、あるいはそれらの任意の混合物であることが好ましく、また、これらのイオンは水溶性である必要があるため、ゲル化剤水溶液は、それらの塩化物を溶解した水溶液であることが好ましい。中でも、作製したハイドロゲル材料の培養液中での膨潤を抑制し、複合型肝細胞組織体の形成を促進する、という両観点から、ゲル化剤水溶液は塩化バリウムを含むことがより好ましい。なお、細胞へのダメージを低減するためにも、ゲル化剤水溶液の浸透圧をあらかじめ最適な値に調節することが望ましい。
【0074】
また、アルギン酸ナトリウムを含む水溶液は比較的高粘度であるため、ゲル化剤水溶液および/あるいはバッファー水溶液には、予め増粘剤を添加することが好ましい。なお、増粘剤としては、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコール、あるいはそれらのうちの任意の組み合わせを用いることが可能である。これらの増粘剤を添加することによって、図2に示すように流路内でゲル化を行う際に、層流を安定的に形成することが可能となり、ハイドロゲル材料の作製時の操作性を向上させることが可能である。なお、第一の水溶液、第二の水溶液、ゲル化剤水溶液、バッファー水溶液のうち、室温において、粘度の最小のものと最大のものの粘度の比が、1:1〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:1〜1:10の範囲にあることがより好ましい。なお、流路外においてゲル化を行う場合には、この限りではない。
【0075】
複合型肝細胞組織体を効率的に作製するためにも、作製したハイドロゲル材料中に埋包する肝細胞の細胞密度は、十分に高い必要がある。そのため、肝細胞の密度は、第一の水溶液1mLあたり1000万個以上であることが好ましく、2500万個以上であることがより好ましい。
【0076】
肝細胞としては、目的に応じて様々な種類のものを用いることができる。ヒト由来肝実質細胞を用いる場合には、創薬スクリーニングや薬剤代謝試験のために最適な複合型肝細胞組織体を構築することが可能である。また、ラット・マウス・ブタ等の肝細胞を用いる場合には、実験モデルとしての利用、生体外における肝機能代替リアクターの構築、等において有用な複合型肝細胞組織体を構築することが可能である。また、肝前駆細胞や肝前駆細胞、さらにはES細胞やIPS細胞等の各種幹細胞より分化させた肝細胞様細胞を用いることで、細胞を増殖させた上でソースとして用いた、複合型肝細胞組織体を構築することが可能である。
【0077】
肝細胞以外の細胞としては、目的に応じて様々な種類のものを用いることができる。3T3細胞のようなマウス由来繊維芽細胞培養株を用いる場合には、それらは肝細胞と相互作用するため、肝機能維持効率を高めることが可能となる。また、星細胞、類洞内皮細胞、クッパー細胞等の肝非実質細胞を用いることで、実際の肝小葉の構造に類似した複合型肝細胞組織体を構築することが可能となる。さらに、これらのうちの2種類以上の細胞を用いることによって、より高度に組織化された複合型肝細胞組織体を構築することが可能となる。
【0078】
図5に示すハイドロゲル材料は、ファイバー状である。その直径は、内部に効率的に酸素および栄養分を供給し、さらに、内部に埋包した肝細胞が列を形成するように配置され、さらに、肝細胞と肝細胞以外の細胞が効率的に接触する、という観点から、200マイクロメートル以下であることが好ましく、100マイクロメートル以下であることがより好ましい。またその長さは、連続的な作製プロセスを用いるため、最大数100メートル程度までの長さを有するハイドロゲル材料を作製することが可能である。しかしながら、複合型肝細胞組織体を構築するためには、その長さは100マイクロメートル以上であれば良く、1ミリメートル以上であればより好ましい。
【0079】
図5に示すファイバー状のハイドロゲル材料に内包された細胞に対して、培養操作を行うことによって、肝細胞と肝細胞以外の細胞からなる複合型肝細胞組織体の作製が可能となる。培養操作としては、作製したハイドロゲル材料を培養液中に浸して、制御された温度、酸素濃度、炭酸ガス濃度条件下において保持することが好ましい。ただし、作製したハイドロゲル材料を生体内に移植し、複合型肝細胞を形成させる場合は、必ずしも培養操作を行う必要はない。
【0080】
図5に示す複合型肝細胞組織体を作製するための培養操作において、酸素濃度30%以上の雰囲気下において培養を行うことも可能である。このようにすることによって、ハイドロゲル材料中の細胞に対し効率的な酸素の供給が可能となるため、複合型肝細胞組織体の作製をより迅速に行うことができ、また、細胞の機能および生存率をより長期にわたり維持しやすくなるため、都合が良い。
【0081】
培養操作において用いる培養液としては、対象とする細胞種に応じた一般的な肝細胞培養用培養液を用いることができる。また、培養時には、ハイドロゲル材料を、シャーレやフラスコ等に満たした培養液中に浸し、CO2インキュベーター等の培養装置を用いて培養することが好ましい。また、必要に応じて振盪操作を行うことも可能である。
【0082】
培養操作を行うことで、肝細胞同士が凝集し、ハイドロゲル材料の方向に沿って配列する。肝細胞の近傍に存在する肝細胞以外の細胞は、少なくともその一部は、肝細胞表面に接着し進展するため、肝細胞および肝細胞以外の細胞からなる複合型肝細胞組織体の作製が可能となる。なお、形成された複合型肝細胞組織体の内部において、各肝細胞は少なくとも部分的に肝細胞以外の細胞と接触していることが望ましい。つまり、ハイドロゲル材料の中心部に、肝細胞は一列のみではなく、複数列を形成して配置されていても構わないが、肝細胞のみに囲まれた肝細胞の割合が、極力低くなることが望ましい。そのためにも、複合型肝細胞組織体の直径は、100マイクロメートル以下であることが望ましい。
【0083】
なお、図2〜4に示した流路構造Xと比較して、第二の水溶液を導入するための入口をより多数形成した流路構造Xを用い、2種類の肝細胞以外の細胞をそれぞれ含む第二の水溶液を用意し、第一の水溶液とともに流路構造X内に導入しゲル化することで、肝細胞を含めて3種類の細胞が層状に配置されたハイドロゲル材料を作製することも可能である。その場合、たとえば中心に肝細胞、その外側に星細胞、さらにその外側に内皮細胞を配置した、複合型肝細胞組織体を作製することが可能となる。
【0084】
また、図5に示すように、目的に応じて、ハイドロゲル材料を溶解することにより、複合型肝細胞組織体をハイドロゲル材料中より回収することも可能である。ハイドロゲル材料を溶解する場合には、アルギン酸溶解酵素であるアルギン酸リアーゼを適切なバッファー水溶液に溶解させ、その水溶液にハイドロゲル材料を一定時間浸すことで行うことが可能である。
【0085】
なお、図5に示したファイバー状のハイドロゲル材料以外に、シート状のハイドロゲルの作製による、複合型肝細胞組織体の構築も可能である。
【0086】
図6には、複合型肝細胞組織体を作製するための、流路構造を形成した第三のマイクロ流体デバイスの概略図、および、当マイクロ流体デバイスを用いて作製されるハイドロゲル材料を立体的かつ模式的に示した図が示されており、図6(a)は図6(b)〜(f)におけるB矢視図であり、図6(b)〜(f)はそれぞれ、図6(a)におけるA1−A2線、A3−A4線、A5−A6線、A7−A8線、A9−A10線における断面図であり、図6(g)はハイドロゲル材料を立体的かつ模式的に示した図である。
【0087】
図6に示したマイクロ流体デバイスは、微細加工を施した3枚の平板状の基板によって構成されている。そして流路構造Xにおいて、入口流路C1およびC2は、その途中で分岐しており、それらが交互に配置された合流点P1〜P8を有している。また、合流点P1〜P8より下流において、合流流路Gが存在し、その下流に出口Oが存在する。
【0088】
このマイクロ流体デバイスの入口1と入口2から、それぞれ第一の水溶液および第二の水溶液を連続的に導入すると、それらの水溶液は合流流路Gにおいて並行な層流を保って流れる。そのため、出口Oをゲル化剤溶液に浸すことによって、図6(g)に示すような、肝細胞と肝細胞以外の細胞がそれぞれ存在する領域がストライプ状になった、シート状のハイドロゲル材料の作製が可能となる。シート状のハイドロゲル材料は、ファイバー状のハイドロゲル材料と比較して体積が大きいため、より大量の細胞を埋包したハイドロゲル材料を迅速に作製する場合に好適である。なお、ファイバー状のハイドロゲル材料の場合と同様の培養操作を行うことにより、シート状のハイドロゲル材料内部において、図5下部に示した複合型肝細胞組織体と同様の形態を有する複合型組織体を、複数並列に形成することが可能である。
【0089】
なお、通常の肝実質細胞組織体は、生体内において、血液凝固第VII因子、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子等を産生している。そのため、作製した複合型肝細胞組織体を血友病患者に移植することで、血友病の治療において効果的な因子を持続的に投与することが可能となる。また、生体外において、複合型肝細胞組織体にそれらの因子を産生させることにより、通常の培養と比較して、効率的かつ長期にわたり持続可能な産生が可能となる。
【0090】
さらにまた、肝細胞の機能不全を起こす疾病として、肝不全症、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、血友病、凝固異常症状、肝酵素欠損症、感染症などが挙げられるが、作製した複合型肝細胞組織体を移植することによって、のうち、少なくともいずれか一つを対象とした治療のために利用する、もしくは、肝機能補佐のために利用することも可能である。
【0091】
作製した複合型肝細胞組織体を移植する部位としては、生体内の腹腔内、肝臓、腎臓、筋肉、皮下組織などを利用することが可能である。これらの部位は、血流に接触する可能性が高い部位であるため、生体内に移植した複合型肝細胞に対し、効率的に栄養分を供給することが可能となる。

【実施例】
【0092】
以下、上記実施形態に係る複合型肝細胞組織体およびその作製方法を実際に行うことで、本発明の効果を確認した。以下説明する。
【0093】
まず、マイクロ流体デバイスは、シリコーンゴムの一種である、ポリジメチルシロキサンを用いて作製した。この材料は、微細加工基板およびマイクロ流路構造を作製する上で好適であるため使用したが、流路の素材は、ポリマー、ガラス、シリコン等無機材料、金属材料、あるいはこれらのうちの任意の組み合わせによって作製されたものを用いることも可能である。
【0094】
流路構造Xの各部分における流路幅は、たとえば、各入口流路100マイクロメートル、合流流路の幅400マイクロメートルであった。また深さは均一で、160マイクロメートルであった。合流流路の長さは50ミリメートルであった。なおこれらの値が大きくなればなるほど、径の大きなファイバー状のハイドロゲル材料を作製しやすくなるため、必要に応じてより太い流路構造、あるいはより細い流路構造を使用した。
【0095】
肝細胞としては、コラゲナーゼ還流法によって得たラット初代肝細胞を用いた。これらの細胞は予め遠心分離操作を行うことによって、非実質細胞および死細胞を除いて使用した。
【0096】
肝細胞以外の細胞としては、マウス由来繊維芽細胞株である、SwIss 3T3細胞を用いた。当細胞は、予めプレート上で培養することで一定量増殖させ、酵素処理によってプレートから剥離し、遠心分離によって培養液を除くことによって調製した。
【0097】
第一の水溶液としては、水100mLに対し、アルギン酸ナトリウム0.7g、コラーゲン0.05g、ウシ血清アルブミン1g、塩化ナトリウム0.9g、HEPES 10mMを加えた水溶液を調製し、得られた肝細胞を、細胞の体積を含めて1mLあたり約3000万個懸濁させることによって調製した。なお、これらの成分のうち、コラーゲンおよびウシ血清アルブミンは、肝細胞機能の維持のため、HEPESはpH調整のため、また塩化ナトリウムは浸透圧調整のため、それぞれ使用したが、必要に応じて他の成分を加える、あるいは他の成分と置き換えることも可能である。
【0098】
第二の水溶液としては、第一の水溶液と同じ組成の水溶液を調製した後に、SwIss3T3細胞を、細胞の体積を含めて1mLあたり約1000万個懸濁させることによって調製した。
【0099】
また、ゲル化剤水溶液としては、ゲル化剤として塩化バリウムを20mM、増粘剤として分子量50万のデキストランを10%(w/v)、浸透圧調整のための塩化ナトリウムを120mM、pH調整のためのHEPESを10mM含む水溶液を用いた。
【0100】
バッファー水溶液としては、増粘剤として分子量50万のデキストランを10%(w/v)、浸透圧調整のための塩化ナトリウムを150mM、pH調整のためのHEPESを10mM含む水溶液を用いた。
【0101】
なおこれらの全ての溶液は、予め加熱あるいはフィルター処理を施すことによって滅菌操作を行った。
【0102】
これらの溶液を、シリンジポンプを用いて、流路構造Xに連続的に導入した。なお、シリンジと、流路構造Xにおける各入口を接続するために、PTFEチューブを使用した。
【0103】
各入口から導入する溶液の流量は、作製対象とするハイドロゲル材料および複合型肝細胞組織体のサイズに応じて変化させた。各入口からの導入流量は、合流流路Gの幅が400マイクロメートル、深さが160マイクロメートルの場合には、入口I1より導入する第一の水溶液は10〜50マイクロリットル毎分、入口I2およびI2’より導入する第二の水溶液は各5〜20マイクロリットル毎分、入口I3およびI3’より導入するゲル化剤水溶液は各50〜300マイクロリットル毎分、入口I4およびI4’より導入するバッファー水溶液は各5〜20マイクロリットル毎分であった。
【0104】
図7は、図3に示した流路構造Xを用いて実際に作製したハイドロゲル材料および、ハイドロゲル材料中で形成された複合型肝細胞組織体の顕微鏡写真を示しており、図7(a)は、ラット肝細胞および3T3細胞を埋包した、作製直後のハイドロゲル材料の顕微鏡写真であり、図7(b)は、1週間培養した後の、形成された複合型肝細胞組織体を内包する当ハイドロゲル材料の顕微鏡写真である。
【0105】
図7に示したハイドロゲル材料は、入口I1より導入した第一の水溶液の流量が20マイクロリットル毎分、入口I2およびI2’より導入した第二の水溶液の流量が各10マイクロリットル毎分、入口I3およびI3’より導入したゲル化剤水溶液の流量が各100マイクロリットル毎分、入口I4およびI4’より導入したバッファー水溶液の流量が各5マイクロリットル毎分の場合に得られたものである。図7(a)に示すように、直径70〜90マイクロメートルのハイドロゲル材料が得られ、中心部に肝細胞が密に列をなして配置され、その左右に3T3細胞が配置されている様子が確認された。
【0106】
また、図7(b)に示すように、酸素濃度35%、CO濃度5%雰囲気下において無血清培養液を用いて1週間培養を行ったところ、ハイドロゲル材料中に、肝細胞と3T3細胞からなる複合型肝細胞組織体が形成されていることが確認された。
【0107】
さらに、ハイドロゲル材料に内包された複合型肝細胞組織体を培養した培養液中、のアルブミン濃度および尿素濃度を測定したところ、プレート上での平面培養および、ハイドロゲル材料中に3T3を内包せず肝細胞のみを内包して作製した肝細胞集塊の場合と比較して、どちらも産生量が増加したこと確認された。特に、培養日数が長期にわたるにつれ、複合型肝細胞組織体の場合にはそれらの産生が高く維持される一方で、平面培養および肝細胞のみの集塊培養では、産生量が低下した。結果として、たとえば培養後30日においては、複合型肝細胞組織体の場合には、細胞あたりのアルブミン産生が40倍以上に、尿素合成が6倍以上に高く保たれることが確認された。
【0108】
また、ハイドロゲル材料に内包された複合型肝細胞組織体を、酵素処理によってハイドロゲル材料から単離し、遺伝子発現を定量的に解析したところ、プレート上での平面培養および、ハイドロゲル材料中に3T3を内包せず肝細胞のみを内包して作製した肝細胞集塊と比較して、肝細胞機能に係る遺伝子の発現量に有意な増加が確認された。
【0109】
図8は、実施例において作製した、ハイドロゲル材料を溶解した後の複合型肝細胞組織体の顕微鏡写真を示しており、図8(a)および図8(b)は、それぞれ異なる倍率で撮影した顕微鏡写真である。
【0110】
図8に示した複合型肝細胞組織体は、図7に示したハイドロゲル材料を作製した場合と同じ条件で作製したハイドロゲル材料に対し、アルギン酸リアーゼを1mLあたり約1ユニット含む、等張のバッファー水溶液を用いて2〜3分処理することによって得られたものである。
【0111】
図8に示された複合型肝細胞組織体のサイズは、長さが最小で約100マイクロメートル、最長で数ミリメートルであり、径は部分的に異なるものの、30〜70マイクロメートル程度であった。ハイドロゲル材料作製時の流量条件および流路構造のサイズを変更することで、より系の太い、あるいは細い複合型肝細胞組織体の形成も可能であった。
【0112】
図8に示した肝細胞組織体をパラフィンに埋包し凍結切片を作製し、免疫染色によって肝細胞と3T3細胞を識別したところ、その断面において、肝細胞が中央に3〜4個配置し、その周囲を3T3細胞が一層となってほぼ完全に取り囲んでいる様子が観察された。

【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明は、以上説明したように構成されているため、肝細胞を生体外で培養する場合に、その機能を長期にわたって高く維持することが可能である。創薬スクリーニングや、細胞を用いた薬剤代謝・毒性評価試験などにおいて、培養肝細胞は広く用いられており、非常に重要であるが、それらの応用において、本発明によって作製した複合型肝細胞組織体は非常に有用であり、医学・生化学等の研究分野、あるいは製薬の現場において重要な新材料となりうると考えられる。
【0114】
また本発明は、以上説明したように構成されているため、作製した複合型肝細胞組織体をハイドロゲルに埋包したまま、高密度に液体培養を行うことが可能となる。そのため、劇症肝炎あるいは急性肝炎を発症した患者の一時的な肝機能補助のための、体外循環型バイオリアクター・人工肝臓における肝細胞のソースとして利用できる可能性がある。なおその場合、異種動物由来の肝細胞を用いて複合型肝細胞組織体を作製することで、細胞ソースの問題を解決できる可能性がある。
【0115】
さらに本発明は、以上説明したように構成されているため、肝機能障害を持つ患者、あるいは血友病患者に対し、肝細胞機能の少なくとも一部を代替できる移植用キャリアとしての利用が可能であると考えられる。その場合、アルギン酸ゲルによる免疫排除抑制効果を期待でき、また、たとえばES細胞あるいはIPS細胞などの幹細胞由来の肝細胞を用いることによって、肝機能障害治療における革新的な材料となりうる。
【0116】
さらに本発明は、以上説明したように構成されているため、血液凝固因子等の肝機能の産生する有用物質を生産する上で、肝細胞の機能を長期にわたり維持可能であるため、肝細胞を利用した物質生産プロセスにおいて利用することにより、肝細胞単体を用いた培養系と比較して、その生産量を飛躍的に増加させることが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの入口I1〜In(n≧2)と、入口I1〜Inにそれぞれ接続する入口流路C1〜Cnと、入口流路C1〜Cnが同時あるいは段階的に合流する少なくとも1つの合流点P1〜Pm(m≧1)と、合流点P1〜Pmより下流に存在する合流流路Gと、合流流路Gの下流に存在する出口Oを有する、流路構造Xに対し、
アルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞を懸濁させた、第一の水溶液を、入口I1を介して、
また、アルギン酸ナトリウムを含み、かつ肝細胞以外の細胞を懸濁させた、第二の水溶液を、入口I2を介して、
それぞれ流路構造Xに連続的に導入し、
流路構造Xの内部において、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液を接触させ、
さらに流路構造Xの内部および/あるいは前記流路構造Xの外部において、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液をゲル化剤水溶液と接触させることによって、
前記第一の水溶液および前記第二の水溶液が接触した状態で連続的にゲル化した、ハイドロゲル材料を作製する、複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項2】
前記ハイドロゲル材料中に埋包された前記肝細胞および前記肝細胞以外の細胞に対し培養操作を行う請求項1に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項3】
前記ハイドロゲル材料中に埋包された前記肝細胞および前記肝細胞以外の細胞に対し、酸素濃度30%以上の雰囲気下において培養操作を行う請求項1乃至2のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項4】
前記流路構造Xは入口I3を有しており、入口I3を介して、前記流路構造Xに対して前記ゲル化剤水溶液を連続的に導入する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項5】
前記流路構造Xは入口I4を有しており、入口I4を介して、前記流路構造Xに対してゲル化剤を含まないバッファー水溶液を導入することにより、合流点P1〜Pmのいずれにおいても、前記第一の水溶液および前記第二の水溶液と、前記ゲル化剤水溶液は直接接触しない請求項1乃至4のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項6】
合流点P1〜Pmのうち少なくとも一つの合流点において、前記第一の水溶液は、その上下、左右、あるいは周囲が前記第二の水溶液と接触する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項7】
入口流路C1〜Cnのうち少なくとも一つは、入口I1〜Inと合流点P1〜Pmの間に存在する分岐点において分岐し、合流点P1〜Pmにおいて再合流する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項8】
流路構造Xは、少なくとも部分的に、微細加工を施した平板状のポリマー基板と、平面状の他のポリマー基板を貼り合せることによって形成されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項9】
流路構造Xは、少なくとも部分的に2重管によって構成されている請求項1乃至8のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項10】
流路構造Xにおける前記出口Oは、前記ゲル化剤水溶液に浸されている請求項1乃至9のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項11】
流路構造Xは、その幅・深さ・直径等の値の少なくともいずれか一つが、少なくとも部分的に300マイクロメートル以下である請求項1乃至10のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項12】
前記第一の水溶液および前記第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムは、その構成単位であるウロン酸における、グルロン酸の割合が60%以上であり、マンヌロン酸の割合が40%以下である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項13】
前記第一の水溶液および前記第二の水溶液に含まれるアルギン酸ナトリウムの濃度は、それぞれの水溶液100mLあたり1g以下である請求項1乃至12のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項14】
前記ゲル化剤水溶液は、塩化バリウムを含む請求項1乃至13のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項15】
前記ゲル化剤水溶液および/あるいは前記バッファー水溶液は、増粘剤を含む請求項1乃至14のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項16】
前記増粘剤とは、デキストラン、ポリエチレングリコール、ポリメチルセルロース、アルギン酸プロピレングリコール、あるいはそれらの任意の組み合わせである請求項1乃至15のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項17】
前記第一の水溶液、前記第二の水溶液、前記ゲル化剤水溶液、前記バッファー水溶液の中で、最小の粘度のものと最大の粘度のものの粘度の比率が、室温において、1:1〜1:10の範囲にある請求項1乃至16のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項18】
前記第一の水溶液に懸濁させた肝細胞の密度は、1mL当たり1000万個以上である請求項1乃至17のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項19】
前記第二の水溶液に懸濁させた肝細胞以外の細胞の密度は、1mL当たり100万個以上である請求項1乃至18のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項20】
前記第一の水溶液に懸濁させた前記肝細胞は、肝実質細胞、肝前駆細胞、肝幹細胞、ES細胞・IPS細胞・間葉系幹細胞のいずれかから分化させた肝細胞様細胞、のいずれかである請求項1乃至19のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項21】
前記第二の水溶液に懸濁させた肝細胞以外の細胞は、繊維芽細胞、肝非実質細胞、血管内皮細胞、中皮細胞、肝以外の臓器細胞、あるいはこれらのうちの任意の組み合わせである請求項1乃至20のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項22】
前記繊維芽細胞は、3T3細胞である請求項1乃至21のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項23】
前記肝非実質細胞は、星細胞および/あるいは類洞内皮細胞である請求項1乃至22のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項24】
培養操作を行った後に、アルギン酸リアーゼによって前記ハイドロゲル材料を溶解する請求項1乃至23のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項25】
前記ハイドロゲル材料は、直径100マイクロメートル以下のファイバー状である請求項1乃至24のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項26】
前記ハイドロゲル材料は、厚さ100マイクロメートル以下のシート状である請求項1乃至25のいずれか1項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法。
【請求項27】
請求項1乃至26のいずれか一項に記載の複合型肝細胞組織体の作製方法を用いて作製した複合型肝細胞組織体。
【請求項28】
形状が線状であり、その直径が少なくとも部分的に100マイクロメートル以下である請求項27に記載の複合型肝細胞組織体。
【請求項29】
形状が線状であり、その長さが100マイクロメートル以上である請求項27乃至28のいずれか一項に記載の複合型肝細胞組織体。
【請求項30】
生体内あるいは生体外において、血液凝固第VII因子、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子のいずれか1つ以上を産生することを特徴とする請求項27乃至29のいずれか一項に記載の複合型肝細胞組織体。
【請求項31】
肝不全症、急性肝炎、慢性肝炎、劇症肝炎、肝硬変、血友病、凝固異常症状、肝酵素欠損症、あるいは感染症のうち、少なくともいずれか一つを対象とした治療のために利用する、もしくは、肝機能補佐のために利用することを特徴とする請求項27乃至30のいずれか一項に記載の複合型肝細胞組織体。
【請求項32】
移植対象となる部位が、生体内の腹腔内、肝臓、腎臓、筋肉、皮下組織のうちの少なくともいずれか1か所である請求項27乃至31のいずれか一項に記載の複合型肝細胞組織体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9598(P2013−9598A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123856(P2011−123856)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(304021831)国立大学法人 千葉大学 (601)
【出願人】(591173198)学校法人東京女子医科大学 (48)
【Fターム(参考)】