複合弁、油圧駆動ユニット
【課題】一般の油圧回路及び特に油圧駆動ユニットにおいて、非常用手動弁とリリーフ弁とを一体化して、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現する複合弁を提供する。
【解決手段】油圧駆動ユニット10において、油圧シリンダ2と油圧ポンプ1との間に用いるリリーフ弁(符号7tなど)と、油圧ポンプ1の停止時に油圧ポンプ1と油圧シリンダ2との間の作動流体をタンク3に逃がすことを可能とする非常用手動弁(符号7iなど)とを同軸上に一体化した複合弁7。
【解決手段】油圧駆動ユニット10において、油圧シリンダ2と油圧ポンプ1との間に用いるリリーフ弁(符号7tなど)と、油圧ポンプ1の停止時に油圧ポンプ1と油圧シリンダ2との間の作動流体をタンク3に逃がすことを可能とする非常用手動弁(符号7iなど)とを同軸上に一体化した複合弁7。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路で用いられ、作動流体を圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動する油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、前記油圧ポンプの停止時に前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁との双方の機能を発揮する複合弁、電動モータを備え作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプと、この作動油により作動する油圧アクチュエータ、この両者間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁、作動油を貯留するタンク、このタンクと前記油圧ポンプ間の正逆双方向の流れを制御する切換弁などを備え、独立して被駆動体に油圧による駆動力を与える油圧駆動ユニットで用いられる前記複合弁、この複合弁を備えた油圧駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧配管をすることなく、電源さえあれば、簡易に油圧による駆動力を与える油圧駆動ユニットは、たとえば、農業用特殊車両の耕地面に対する作業機器の昇降などに用いられ、今後、多方面に産業上の利用分野が期待され、拡大されるものである。
【0003】
図11は、その油圧駆動ユニットの基本的な構成を示す油圧回路図である。
【0004】
油圧駆動ユニットOUは、独立して、つまり作動油を閉鎖系で循環させながら、被駆動体Wに油圧による駆動力を与えるため、正逆回転モータMにより作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプOPと、この作動油により作動し前記駆動力を発生させる油圧アクチュエータOA(ここでは、油圧シリンダ)、閉鎖空間内に作動油を貯留するタンクOT、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAとの間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁OC、油圧ポンプOPとタンクOTとの間の正逆双方向の作動油の流れを制御する切換弁OIを基本構成要素として備えている。
【0005】
オペレートチェック弁OCは、基本的に油圧ポンプOPから油圧アクチュエータOAへの作動油の流れのみを許容する一対のチェック弁OCaと、それぞれチェック弁OCaへの作動油圧を他のチェック弁OCaへパイロットする一対のパイロットラインOCbとを備えている。
【0006】
この一対のチェック弁OCaは、油圧ポンプOPの一方のポートと油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAaとを連結する管路と、油圧ポンプOPの他方のポートと油圧アクチュエータOAのロッド側油室OAbとを連結する管路とに、それぞれ設けられている。
【0007】
切換弁OIは、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbとの間のいずれかの管路とタンクOTとの間を切換断接するものである。
【0008】
なお、以下の説明では、左右一対で配置されたチェック弁OCaなどの図上左側のものを、油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAaに入出する作動油に関するものとしてボトム側、右側のものを、ロッド側油室OAbに入出する作動油に関するものとしてロッド側と称することがある。同様に、油圧ポンプOPのポートも、左側をボトム側、右側をロッド側と称することがある。
【0009】
このような構成で、この油圧駆動ユニットOUによれば、油圧ポンプOPが停止している状態では、オペレートチェック弁OCにより、油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbのいずれの側からも作動油の流出が阻止され、所定の外力に抗して油圧アクチュエータOAの現状静止状態が維持される。
【0010】
油圧ポンプOPがボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、油圧ポンプOPからボトム側チェック弁OCaを通過してボトム側油室OAaへ作動油が供給され、同時にボトム側パイロットラインOCbの作動油圧によりロッド側チェック弁OCaが押し開かれ、ロッド側油室OAbから油圧ポンプOPへの作動油の流出を許容し、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAとの間を時計回りに循環する作動油の流れが生じ、油圧アクチュエータOAに伸び方向への駆動力が発生する。
【0011】
この際、油圧アクチュエータOAが図示したような油圧シリンダの場合を考えると、この油圧シリンダのピストンの移動量に対して、ボトム側油室OAaに流入する作動油量に比べ、ロッド側油室OAbから流出する作動油量が、このピストンのロッドの分だけ少なくなるが、より高い油圧のボトム側の作動油に押されて切換弁OIがロッド側油室OAbへの管路とタンクOTとの間を接続するように切り換わり、不足分の作動油がタンクOTから供給されるようになっている。
【0012】
一方、油圧ポンプOPがロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、上記と逆の作動油の循環流れが生じて、油圧アクチュエータOAに縮み方向への駆動力が発生し、ボトム側油室OAaから油圧ポンプOPへ流入する作動油が余分になるが、その余分の作動油は、上記と逆の切換弁OIの作用によりボトム側油室OAaへの管路とタンクOTとが接続され、タンクOTへ戻されるようになっている。
【0013】
なお、油圧アクチュエータOAである油圧シリンダのピストンの位置により、密閉されたタンクOT内の作動油量が増減し、このタンクOT内に封止された気体圧力が変動するが、この封止気体体積を適当なものとすることで、この気体圧力の変動が、油圧駆動ユニットOUの作動に影響を与えないようにしている。
【0014】
こうして、閉鎖系であって、その作動により作動油の入出量に差がある油圧アクチュエータOAを用いながら、油圧駆動ユニットOUの機能が発揮保持されているのである。
【0015】
この油圧駆動ユニットOUには、既述の基本構成要素以外に以下の付加的要素が備えられている。
【0016】
油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbとオペレートチェック弁OCのそれぞれのチェック弁OCaとの間の管路には、それぞれの油室OAa、OAbからチェック弁OCaへの作動油の流れのみを絞るスローリターン弁SRがそれぞれ設けられている。
【0017】
このスローリターン弁SRは、油圧ポンプOPの作動中に被駆動体Wから外力が生じた場合に発生するハンチングを防止するためのものである。
【0018】
前記それぞれのスローリターン弁SRとチェック弁OCaとの間の管路からは、それぞれリリーフ弁RV1を設けた管路がタンクOTへ分岐している。同様に、油圧ポンプOPとボトム側、ロッド側のチェック弁OCaとの間の管路からは、それぞれリリーフ弁RV2を設けた管路がタンクOTへ分岐している。
【0019】
これらのリリーフ弁RV1、RV2は、分岐元の管路に異常圧が生じた場合に過剰な作動油をタンクOTへ逃がすものである。
【0020】
更に、ロッド側、ボトム側のスローリターン弁SRとチェック弁OCaとの間の管路からは、非常用手動弁MVを設けた管路がタンクOTへ分岐しており、油圧ポンプOPが電源が得られず停止した場合などに、この非常用手動弁MVで、油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbの管路をタンクOTへ解放して、油圧アクチュエータOAを手動操作できるようにしている。
【0021】
このような構成で、この油圧駆動ユニットOUは、その基本機能を良好に達成しながら、異常事態が発生した場合にも、それがユニットOUの破損に繋がらないようにして、安全性、信頼性、事故回避性を確保している。
【0022】
しかしながら、上記油圧駆動ユニットOUにおいては、非常用手動弁MVとリリーフ弁RV1が別個独立して設けられているため、それだけスペースを要し、相互間を結ぶ管路も必要とされ、より一層のコンパクト化を実現し得なかった。このコンパクト化の要請は、必要な場所で油圧による駆動力を簡易・安価に提供すべき油圧駆動ユニットとしては、より重要度の高いものであった。
【0023】
また、この問題は、上記のような油圧駆動ユニットの部品としてでななく、油圧ポンプOP、油圧アクチュエータOA、タンクOTと共に、組み合わせて用いられる非常用手動弁、リリーフ弁についても共通するものである。
【0024】
また、油圧駆動ユニットの他の具体的な従来例としては、特許文献1、特許文献2に記載されたものなどもあるが、いずれも上記の問題を解決するものではなかった。
【特許文献1】特許第2824659号公報(第1図)
【特許文献2】特開2003−172307号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、一般の油圧回路及び特に油圧駆動ユニットにおいて、非常用手動弁とリリーフ弁とを一体化して、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現する複合弁、この複合弁を備えた油圧駆動ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の複合弁は、油圧回路で用いられ、作動流体を圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動する油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、前記油圧ポンプの停止時に前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁とを同軸上に一体化したことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の油圧駆動ユニットは、かかる特徴を有する複合弁を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の複合弁によれば、リリーフ弁と非常用手動弁とを一体化したので、一般の油圧回路、特に油圧駆動ユニットにおいて、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現する。また、この複合弁を備えた油圧駆動ユニットとしても、同様の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの一例を概念的に示す構成図、図2は、図1の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図である。
【0031】
この油圧駆動ユニット10は、独立して簡易に油圧による駆動力が必要とされる、たとえば、農業用特殊車両の耕地面に対する作業機器の昇降などに用いられ、また、この油圧駆動ユニット10に含まれる複合弁7は、このような油圧駆動ユニットにおいてだけでなく、一般の油圧回路において、油圧ポンプ、油圧アクチュエータ、タンクと共に、組み合わせて用いられ、非常用手動弁、リリーフ弁の双方の機能が必要とされる複合弁としても用いられるものである。
【0032】
そのユニット10の構成は、電動モータMを備え作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプ1と、この作動油により作動し被駆動体Wへの駆動力を発生させる油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ2、閉鎖空間内に作動油を貯留するタンク3、油圧ポンプ1と油圧シリンダ2との間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁4、油圧ポンプ1とタンク3との間の正逆双方向の作動油の流れを制御する切換弁5、上述の複合弁7からなることを基本とし、複合弁7が非常用手動弁(図10の符号MV)とオペレートチェック弁4と油圧シリンダ2との間に設けられるリリーフ弁(図10の符号RV1)とを一体化したものである点を特徴とする。
【0033】
これらの油圧ポンプ1、油圧シリンダ2、タンク3、オペレートチェック弁4、切換弁5の基本的な機能、相互関係は、従来例の油圧駆動ユニットOUを構成する油圧ポンプOP、油圧アクチュエータOA、タンクOT、オペレートチェック弁OC、切換弁OIと同じであるので、重複説明を省略する。なお、油圧シリンダ2の符号2aはボトム側油室、符号2bはロッド側油室である。
【0034】
また、ここでは、図10の油圧回路図で示したスローリターン弁SR、リリーフ弁RV2は示されていないが、これらは必要に応じて備えられているものとする。なお、この図においては、油圧駆動ユニット10を構成するオペレートチェック弁4、切換弁5は油圧記号で示しているが、その内容は、図3を用いて詳細に説明する。
【0035】
複合弁7は、非常用手動弁、リリーフ弁の機能を発揮する部分を同軸上に収容する弁収容部7a、非常用手動弁としての機能を主に分担する手動弁部7i、この手動弁部7iに対してスライドして弁開閉するリリーフ弁体7t、リリーフ弁体7tを手動弁部7iに向けて弁を閉じる方向に付勢するスプリング7zを備えている。
【0036】
上記の構成要素の内、手動弁部7i、リリーフ弁体7t、スプリング7zは、それぞれ、弁収容部7a内に同軸上に対向して二つずつ全く同じものが収容され、これに対応して、弁収容部7aに設けられた収容部分も中心部を除いては、各部分が対向して設けられているものである。
【0037】
このような構造としているのは、この1個の複合弁7は、図10の油圧駆動ユニットOUを構成するロッド側、ボトム側の一対の二つのリリーフ弁RV1と非常用手動弁MVとを一体化し、これらの機能を発揮するものだからである。なお、より正確には、この複合弁7における非常用手動弁は、図10の油圧駆動ユニットOUの非常用手動弁MVに比べ、ロッド側、ボトム側の管路それぞれに設けられた一対のものとなっている。
【0038】
したがって、必要に応じて、複合弁7を構成するリリーフ弁、非常用手動弁の一方あるいは双方を除いたより簡単な構成とすることも可能である。
【0039】
弁収容部7aは、この例では、全体が筒状のものと想定されており、その端面から対向する他端面に貫通する複数段付き孔が中心対向に形成されたものである。
【0040】
この弁収容部7aは、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、上記段付き孔が形成されるようにするものも含まれる。複合弁7が単体として用いられる場合は、このような弁収容部7aを用いるのが望ましい。
【0041】
この段付き孔は、弁収容部7aの上記対向する端面から、この両端面の中心に向かって形成された、最大径の開口孔7b、これに続くより小径の中間孔7c、この中間孔7cよりわずかに大径の凹孔7d、これに続く、中間孔7cより小径の通路孔7e、これに続くより小径のネジ孔7f、これに続くより小径で、スプリング7zを収容するスプリング孔7gと、前記両端面の中心に位置し最小径であって、対向するスプリング孔7gを連通させる連通孔7hで構成されている。
【0042】
弁収容部7aには、更に、上記筒状の外周の一方側から上記通路孔7eを通り他方側に貫通する作動油通路73が一対で設けられ、これらの作動油通路73がそれぞれ、油圧シリンダ2のボトム側油室2aとオペレートチェック弁4のボトム側、油圧シリンダ2のロッド側油室2bとオペレートチェック弁4のロッド側を接続する管路を構成している。
【0043】
更に、弁収容部7aには、連通孔7hから作動油を外部へ導く作動油通路74が設けられ、この作動油通路74がタンク3に接続されている。
【0044】
手動弁部7iは、弁収容部7aの開口孔7bからネジ孔7fに渡って収容されるもので、開口孔7bよりは小径で中間孔7cよりは大径のツバ部7j、これに続く、中間孔7cにスライド可能な中間部7k、これに続く、通路孔7eに対して油密を保持しながらスライド可能な通路部7m、これに続く、ネジ孔7fに係合する雄ねじを形成した雄ネジ部7qで構成される外部形状となっている。
【0045】
手動弁部7iの内部側には、その雄ネジ部7qの端面から所定深さの弁収容孔7rと、これに続く、より小径で底付きの作動油通路穴7pが形成されている。
【0046】
手動弁部7iの中間部7kは、弁収容部7aの中間孔7cと凹孔7dにちょうど対応した長さとなっており、その外周であって、凹孔7dに対応する適所に、リング溝7lが形成され、このリング溝7lに弁体脱落防止手段となるストップリング72が嵌め込まれている。
【0047】
このストップリング72は、凹孔7dに規制されており、よって、手動弁部7iは、この規制範囲内だけにおいて、弁収容部7a内で回動スライド可能となっている。
【0048】
手動弁部7iの通路部7mの外周には、手動弁部7iが弁収容部7a内で雄ネジ部7qとネジ孔7fの間でネジ係合しながら上記規制範囲内で回動スライドする区間で、弁収容部7aに設けられた作動油通路73との作動油の流通を可能とするリング油溝7nが設けられ、このリング油溝7nには、この油溝7nとその内部側の作動油通路穴7pを貫通する作動油通路7oが設けられている。
【0049】
手動弁部7iのツバ部7jの外側面には、この手動弁部7iを手動で回動させるための六角穴7sが形成されている。
【0050】
リリーフ弁体7tは、手動弁部7iの弁収容孔7r内にスライド可能に収容され、その外部側は、作動油通路孔7pを油密に開閉する弁部7u、これに続く弁収容孔7rより小径の肩部7vと、これに続く、弁収容孔7rに対してスライド可能とされたスライド部7wで構成され、その内部側は、この弁体7tを弁閉止方向に付勢するスプリング7zを収容し、弁部7uの反対側に開口したスプリング穴7yで構成されている。
【0051】
リリーフ弁体7tには、また、その外部側の肩部7vと内部側のスプリング穴7yとの間の作動油の流通を可能とする油通路7xが形成されている。
【0052】
スプリング7zは、弁収容部7aのスプリング孔7gと、リリーフ弁体7tのスプリング穴7yとに渡って収容され、その一端がスプリング孔7gの底部で規制され、その他端で他方のスプリング穴7yの底部を、リリーフ弁体7tの弁閉止方向に、つまり、リリーフ弁体7tの弁部7uが作動油通路孔7pを閉止するように付勢する。
【0053】
このような複合弁7は、図1を見ると解るように、例えば、ロッド側の作動油通路73に所定以上の高圧が生じると、リリーフ弁体7tがスプリング7zの付勢力に抗して開き、リング油溝7n、作動油通路7o、作動油通路穴7p、弁収容孔7r、油通路7x、スプリング穴7y、弁収容孔7r、スプリング孔7g、連通孔7h、作動油通路74を通じて、タンク3に余剰の作動油が逃がされる。
【0054】
ボトム側の場合も同様であり、この複合弁7は、ロッド側、ボトム側のそれぞれについて、リリーフ弁の機能を発揮する。
【0055】
一方、図2を見ると、ロッド側の手動弁部7iが手動操作され、上記ストップリング72と凹孔7dとによる規制範囲内で最大限、弁収容部7aの軸方向中心から外方向に回動スライドしており、この際、スプリング7zの自由長を越えて付勢力の効いていないリリーフ弁体7tに対して、手動弁部7iの作動油通路穴7pが開かれた状態となっている。
【0056】
この状態では、ロッド側の作動油通路73、リング油溝7n、作動油通路7o、作動油通路穴7p、弁収容孔7r、油通路7x、スプリング穴7y、弁収容孔7r、スプリング孔7g、連通孔7h、作動油通路74を通じて、タンク3に通路が形成されており、油圧シリンダ2のロッド側の作動油を逃がすことが可能で、また、ボトム側は吸い込みのみ可能な状態となって、手動で油圧シリンダ2を伸び出す方向に動かすことができ、非常用手動弁の機能を発揮している。
【0057】
なお、油圧シリンダ2を押し込む方向に動かすようにする場合は、ボトム側の手動弁部7iを手動操作する必要がある。
【0058】
また、上記で説明した通り、手動弁部7iは、ストップリング72と凹孔7dとの相互作用により規制されて、弁収容部7aから脱落しないようになっている。
【0059】
したがって、内蔵部品である手動弁部の脱落、脱落の発見漏れを防ぎ、また再組み付けの必要がなくなる、再組み付けの際には、コンタミ(異物の侵入)に配慮する必要があるが、それが不要となるという効果を発揮する。このことは、非常用手動弁機能を現場で素人でも扱えるということを意味し、フールプルーフが図られる。
【0060】
また、このような構成の手動弁部7iは、非常用手動弁として開弁した後も、また、手動で通常状態の閉弁状態に復帰させることができ、繰り返し使用が可能である。
【0061】
こうして、この複合弁7によれば、油圧駆動ユニットにおいて、非常用手動弁とリリーフ弁とを一体化して、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現することができ、その効果は、一般の油圧回路においても発揮されるものである。また、この複合弁を備えた油圧駆動ユニット10は、その複合弁の効果をユニットとして発揮する。
【実施例2】
【0062】
図3は、図1の油圧駆動ユニットにおいて、オペレートチェック弁の詳細構成を概念的に示した構成図である。これより、既に説明した部分と同じ部分については、同じ符号を付して重複説明を省略する。また、各部分の集合体について別個の符号がある場合については、煩雑さを避けるために、集合体の符号だけを示すようにすることがある。
【0063】
この図3では、図1では説明できなかったオペレートチェック弁の特徴について、説明する。この特徴は、本発明の複合弁7を備えた油圧駆動ユニット10の他の特徴点である。
【0064】
オペレートチェック弁4は、弁収容部4a、この弁収容部4a内の中央部に収容された切換弁5、この切換弁5を挟み込んで相互に対向するように収容された一対のチェック弁4bを備え、図1で示した切換弁5を収容一体化している点を特徴とする。
【0065】
弁収容部4aは、この例では筒状体の収容筒4aaと、その両端開口を油密に閉止する収容筒蓋4abとから構成される。
【0066】
この弁収容部4aは、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、弁収容部4aの内部収容空間が形成されるようにするものも含まれる。オペレートチェック弁4が単体として用いられる場合は、このような弁収容部4aを用いるのが望ましい。
【0067】
この弁収容部4aの収容筒4aaの内部収容空間に切換弁5と一対のチェック弁4bが油密に収容されている。
【0068】
切換弁5は、収容筒4aaの内部収容空間の中央に隙間なく収容された円筒状のスプール筒5aと、このスプール筒5aの内部円柱空間にスライド可能に収容されたスプール5bとを備えている。
【0069】
スプール筒5aには、その筒部に油圧ポンプ1からの二つの管路と接続され、これらの管路との間で作動油の流通を可能とするための二つの開口5abと、この二つの開口5abに干渉せず、かつ両開口5abのスプール筒5aの筒軸方向の中央となる位置に、タンク3への管路との作動油の流通を可能とする開口5acとが設けられている。
【0070】
スプール5bは、二つの円板をこの円板の外径より小さい外径の円柱体で串刺しにした形状をしており、この円板部5bbの外径がスプール筒5aの内周に対してスライド可能となる程度の外径となっている。
【0071】
この二つの円板部5bb相互間の距離は、図示するように、スプール5bが中央に位置した際に、上記二つの油圧ポンプ1側の開口5abとタンク3側への開口5acとの間の作動油の流通を阻止するものとなっている。また、どちらか一方、例えばボトム側にスプール5bがスライドした場合には、二つの油圧ポンプ1側の開口5abのボトム側だけと、タンク3側への開口5acとの作動油の流通を許可するものとなっている。
【0072】
円柱体の二つの円板部5bbに挟まれる中軸部5bcの外径は、スプール5b全体の構造的強度を保持する程度以上に太く、また、その外周とスプール筒5a内周との間に作動油が抵抗なく流通する程度以上に細くなっている。
【0073】
円板部5bbの外側に伸び出している外軸部5baの突出長さは、スプール5bが最大限移動した際に対向するチェック弁4bを全開するものとされ、その外径は、後述するチェック弁4bの弁座穴4cbを支障なく通過し、弁座穴4cbとの間で作動油の流通を容易に可能とする程度とされている。
【0074】
スプール5bを構成する上記各部は、相互に固定され、全体が一体的にスライドするものである。
【0075】
このような構成で、スプール5bは、円板部5bbの上記機能に加え、一方の外軸部5baがその側のチェック弁4bを開いている際には、この側のチェック弁4b、油圧ポンプ1、タンク3相互間の作動油の流通を許可するものとなっている。
【0076】
一対のチェック弁4bは、相互にまったく同じもので構成され、弁座体4cと、この弁座体4c内でスライドする弁体4dと、この弁体4dを常時閉方向に付勢するスプリング4hとを備えている。
【0077】
弁座体4cは、一方がより小さい開口である弁座穴4cbとなっている筒状体であり、その弁座穴4cb側近辺の筒部に油圧シリンダ2のロッド側油室2b(反対側では、ボトム側油室2a)への管路との作動油の流通を可能とする開口4caが設けられている。
【0078】
弁体4dは先端が円錐状の弁部4eとして閉止され、他方開口となっている筒状体であり、その内筒部4fに、上記スプリング4hが収容され、このスプリング4h後端と弁座体4cの後端を弁収容部4aの収容筒蓋4abが規制している。
【0079】
弁座体4cの弁座穴4cbが、スプリング4hで付勢された弁体4dの弁部4eにより閉止されている。
【0080】
弁体4dの弁部4e終了端より後方には、開口4caから流通してきた作動油を内筒部4fへも流通させる開口4gが設けられている。
【0081】
このような構成で、このオペレートチェック弁4がチェック弁機能と、切換弁機能の双方を発揮する点を以下に説明する。
【0082】
この図1自体は静止状体、つまり、油圧ポンプ1が回転していない状態を示しており、この状態では、油圧ポンプ1側からは作動油に圧力は付加されず、油圧ポンプ1とオペレートチェック弁4に内蔵された切換弁5の両側内部油室に間に含まれる作動油、切換弁5
の中央側内部油室とタンク3との間に含まれる作動油は静止している。
【0083】
オペレートチェック弁4の左右のチェック弁4bは、スプリング4hの付勢力により閉止されており、油圧シリンダ2のボトム側油室2a、ロッド側油室2bのいずれからの作動油もチェック弁4bで閉止され、油圧シリンダ2の静止状態が維持される。
【0084】
ここで、油圧ポンプ1がボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、この油圧により、ボトム側のチェック弁4bが開き、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに作動油が供給される。
【0085】
同時に切換弁5のスプール5bもこの油圧により図の右方、ロッド側へ移動し、油圧ポンプ1のロッド側ポートとタンク3との間の作動油の流通を許すと同時に、スプール5bのロッド側の外軸部5baがロッド側のチェック弁4bを開いて、油圧シリンダ2のロッド側油室2bからの作動油の流れを許容し、油圧シリンダ2に伸び方向への駆動力を発生させる。
【0086】
この際、油圧シリンダ2のロッド側油室2bと、ロッド側のチェック弁4b、タンク3間の作動油の流通が許可されており、油圧シリンダ2のロッド側油室2bからの作動油に加え、タンク3からの作動油が油圧ポンプ1のロッド側ポートに流入して、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに対するロッド側油室2bの作動油流量の不足分をカバーしている。
【0087】
一方、油圧ポンプ1がロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、切換弁4、チェック弁4bに逆の動作が生じ、油圧シリンダ2に縮み方向への駆動力を発生させ、油圧シリンダ2のロッド側油室2bに対するボトム側油室2aの作動油流量の過剰分をタンク3へ戻すようにしている。
【0088】
こうして、オペレートチェック弁4に収容された中央の切換弁5、これを挟むように対向する一対のチェック弁4bの相互作用により、従来のオペレートチェック弁の機能を果たしながら、切換弁の機能も果たしている。
【0089】
つまり、本発明のオペレートチェック弁4は、単体としては、これまでの切換弁を吸収一体化したものであり、これにより、オペレートチェック弁の多機能化が図れ、別個に切換弁を設けるスペース、費用、切換弁とチェック弁とを接続する管路などが不要になる。
【0090】
また、このようなオペレートチェック弁4を備えた油圧駆動ユニット10としては、複合弁7の効果に加え、そのユニットとしての機能を維持しながら、装置のコンパクト化、コストダウンを更に図ることができる。
【実施例3】
【0091】
図4(a)は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は、(a)の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図である。なお、このユニット10′では、複合弁7′のみ相違しているので、他の部分は省略しているが、図1〜3と同様のものが配置されているものである。
【0092】
この図4に示す油圧駆動ユニット10′は、図1〜3の油圧駆動ユニット10に比べ、それを構成する複合弁7′が、一方側の手動弁部7iだけの操作で、ロッド側、ボトム側の双方の管路をタンク3へ開放して、油圧シリンダ2を伸び出し方向へも、押し込み方向へも動かすことができるようにしたものである点が異なっている。
【0093】
この複合弁7′は図1の複合弁7に比べ、ロッド側、ボトム側で同じものが対向配置されているのではなく、一方側、この例では、図の右側のロッド側の手動弁部7i、これに対応した弁収容部7a′のロッド側の形状は共通するが、他方側つまりボトム側の手動弁部7i′、これに対応した弁収容部7a′のボトム側の形状が異なっている。
【0094】
具体的には、ボトム側の手動弁部7i′は、ロッド側の手動弁部7iに比べ、外側形状については、ツバ部7j、雄ネジ部7q、六角穴7sが共通し、中間部7kがなく、通路部7m′がこの中間部7kの無い分だけ延長されてツバ部7jの首下に達するものとなっている。
【0095】
内側形状については、共通で、同じ弁収容孔7r、作動油通路穴7pを備えている。
【0096】
手動弁部7i′の通路部7m′の外周には、手動弁部7i′が弁収容部7a′のボトム側に収容された状態(図の状態)で、弁収容部7a′に設けられた作動油通路73との作動油の流通を可能とするリング油溝7n′が設けられ、これに連通する作動油通路7oは手動弁部7iと共通する。
【0097】
弁収容部7a′のボトム側は、ロッド側に比べ、中間孔7c、凹孔7dがなく、その分、通路孔7eが延長されて、手動弁部7i′の通路部7m′対応して、開口孔7bにまで達している。
【0098】
図1の弁収容部7aの中央部分の対向するスプリング孔7gと、これらを連通させる連通孔7hは、この図4の弁収容部7a′では、スプリング孔7gの内径のままで貫通した連通孔7h′となっており、この連通孔7h′、左右のリリーフ弁体7tのスプリング穴7yに、複合弁7で用いられた一対のスプリング7zを繋げて、更に、元の連通孔7hの長さ分だけ長いスプリング7z′が収容されている。
【0099】
リリーフ弁体7tは複合弁7と同じものであって、スプリング7z′に付勢され通常は、それぞれボトム側、ロッド側の手動弁部7iの作動油通路穴7pを図4(a)に示すように閉止している。
【0100】
このような構成の複合弁7′において、ロッド側の手動弁部7iを手動操作して開くと、図4(b)のような状態となる。
【0101】
この際、図2と同様にスプリング7z′が自然長を越えた状態となって、ロッド側のリリーフ弁体7tへの付勢力が効かなくなると同時に、ボトム側のリリーフ弁体7tへの付勢力も効かなくなり、油圧シリンダ2のロッド側だけでなくボトム側の作動油もタンク3へ逃がすことが可能となり、手動で油圧シリンダ2を伸び出す方向、押し込む方向の双方に動かすことができ、非常用手動弁の機能をより良く発揮する。
【0102】
この際、ボトム側の手動弁部7i′は操作する必要がないので、脱落の問題は生ぜず、ロッド側の手動弁部7iには、弁体脱落防止手段となるストップリング72が装着されているので、脱落することがなく、この点では、複合弁7と同様の効果を維持している。
【0103】
こうして、この複合弁7′、油圧駆動ユニット10′によれば、図1〜3の複合弁7、油圧駆動ユニット10の効果に加え、上記複合弁7′の効果を、弁およびユニットとしてとして発揮する。
【0104】
また、以下の実施例4から9で用いる複合弁7の変わりに、この実施例3の複合弁7′を用いることができ、その場合にも、上記複合弁7′の効果を弁及びユニットとして発揮する。
【実施例4】
【0105】
図5は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0106】
この油圧駆動ユニット10Aは、図1〜図3の油圧駆動ユニット10に比べ、複合弁7を備えている点は共通するが、オペレートチェック弁4Aが切換弁を吸収一体化しない点、切換弁5Aをポペット式とした点が異なり、このポペット式の切換弁5Aが特徴点となっている。
【0107】
オペレートチェック弁4Aは、弁収容部4a、この弁収容部4a内の中央部に収容されたパイロット部45i、このパイロット部45iを挟み込んで相互に対向するように収容された一対のチェック弁4bを備えている。
【0108】
弁収容部4aは、この例では筒状体の収容筒4aaと、その両端開口を油密に閉止する収容筒蓋4abとから構成される。
【0109】
この弁収容部4aは、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、弁収容部4aの内部収容空間が形成されるようにするものも含まれる。オペレートチェック弁4Aが単体として用いられる場合は、このような弁収容部4aを用いるのが望ましい。
【0110】
この弁収容部4aの収容筒4aaの内部収容空間にパイロット部45iと一対のチェック弁4bが油密に収容されている。
【0111】
パイロット部45iは、収容筒4aaの内部収容空間の中央に隙間なく収容された円筒状のスプール筒45jと、このスプール筒45jの内部円柱空間にスライド可能に収容されたパイロットスプール45lとを備えている。
【0112】
スプール筒45jには、その筒部に油圧ポンプ1の二つポートへの管路と接続され、かつ、切換弁5Aの二つの開口5ccへの管路とも接続され、これらの管路、つまり、油圧ポンプ1、切換弁5Aとの間の作動油の流通を可能とする四つの開口45kが設けられている。
【0113】
スプール45lは、外径がスプール筒45j内周にスライド可能とされた円柱体45laの両端に小径のパイロット突起45lbがそれぞれ設けられた構造である。スプール筒45j内は、スプール45lによって仕切られ、それぞれの開口45kに通じた二つ油室が形成されている。
【0114】
このような構成で、パイロットスプール45lは、常時、油圧ポンプ1、タンク3相互間の作動油の流通を許可しながら、油圧ポンプ1が回転すると、その吐出側と接続された油室の油圧がより高くなるので、これにより、非吐出側へと移動するようになっている。
【0115】
つまり、パイロット部45iは、図11の油圧駆動ユニットにおけるパイロットラインOCbの機能を発揮している。
【0116】
一対のチェック弁4bは、相互にまったく同じもので構成され、弁座体4cと、この弁座体4c内でスライドする弁体4dと、この弁体4dを常時閉方向に付勢するスプリング4hとを備えている。
【0117】
弁座体4cは、一方がより小さい開口である弁座穴4cbとなっている筒状体であり、その弁座穴4cb側近辺の筒部に油圧シリンダ2のロッド側油室2b(反対側では、ボトム側油室2a)への管路との作動油の流通を可能とする開口4caが設けられている。
【0118】
弁体4dは先端が円錐状の弁部4eとして閉止され、他方開口となっている筒状体であり、その内筒部4fに、上記スプリング4hが収容され、このスプリング4h後端と弁座体4cの後端を弁収容部4aの収容筒蓋4abが規制している。
【0119】
弁座体4cの弁座穴4cbが、スプリング4hで付勢された弁体4dの弁部4eにより閉止されている。
【0120】
弁体4dの弁部4e終了端より後方には、開口4caから流通してきた作動油を内筒部4fへも流通させる開口4gが設けられている。
【0121】
このチェック弁4bの機能、効果は、図11で説明したオペレートチェック弁OCに内蔵されたチェック弁OCaと同じであり、結局、このオペレートチェック弁4Aは、全体として、図11のオペレートチェック弁OCと同一の機能、効果を発揮する。
【0122】
切換弁5Aは、図11の切換弁OIと同じ役割を持つものであるが、弁の構造がポペット式である点を特徴とする。
【0123】
その構成は、一対の全く同じものを対向させて、弁収容部51内の中央部分に収容したものであり、それぞれ弁座筒5c、この弁座筒5c内でスライドする弁体5d、弁体5dを相互に相手方方向へ付勢するスプリング5eを備えている。
【0124】
弁収容部51は、筒状体の収容筒51aと、その両端開口を油密に閉止する収容筒蓋51bとから構成され、この収容筒51aの内部収容空間に一対の弁座筒5cが油密に収容されている。
【0125】
この弁収容部51は、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、弁収容部51の内部収容空間が形成されるようにするものも含まれる。切換弁5Aが単体として用いられる場合は、このような弁収容部51を用いるのが望ましい。
【0126】
弁座筒5cは、内周側が1段の段付きとなった筒状体であり、その外周は収容筒51aの内周に隙間なくまた油密に嵌合している。内周側は小径部5caと大径部5cbで構成され、この小径部5caが対向する弁座筒5cの小径部5caと連接するようになっている。大径部5cbの最も小径部5ca寄りの周壁には、油圧ポンプ1への管路との作動油の流通を可能とする開口5ccが設けられ、小径部5caの周壁には、タンク3への管路との作動油の流通を可能とする開口5cdが設けられている。
【0127】
弁体5dは、円板の両側中心の一方に一段の段付き突起を設けた形状であり、この円板部5daの外径が弁座筒5cの大径部5cbの内周に対してスライド可能とされている。
【0128】
段付き突起は、最先端の小径部5db、これに続くより大径の中径部5dc、これに続く弁勾配部5ddから構成され、中径部5dcが弁座筒5cの小径部5caに対して所定の隙間をもって嵌合し、弁勾配部5ddが弁座筒5cの小径部5caから大径部5cbへの段縁に当接して、双方間の作動油の流通を完全に阻止するようになっており、これがポペット式と称される由縁である。
【0129】
円板部5daには、段付き突起側から突起なし側への作動油の流通を可能とする貫通孔5deが設けられている。
【0130】
なお、弁体5dは、その小径部5dbの先端が、対向する弁体5dの小径部5dbの先端と当接するように弁座筒5cに組み込まれている。
【0131】
スプリング5eは、弁体5dの後面と弁収容部51の収容筒蓋51bとの間に挿入されている。
【0132】
この切換弁5Aは、一対のポペット弁(弁座筒5cと弁体5d)を同軸状に対向配置させ、一方のポペット弁の閉方向作動により、他方のポペット弁が開方向作動し得るように構成したものであり、このような構成の切換弁5Aの機能を以下に説明する。
【0133】
この図5自体は静止状体、つまり、油圧ポンプ1が回転していない状態を示しており、この状態では、油圧ポンプ1側からは作動油に圧力は付加されず、油圧ポンプ1とオペレートチェック弁4Aのパイロット部45iの両側内部油室に間に含まれる作動油、切換弁5Aの内部油室とタンク3との間に含まれる作動油は静止している。
【0134】
オペレートチェック弁4Aの左右のチェック弁4bは、スプリング4hの付勢力により閉止されており、油圧シリンダ2のボトム側油室2a、ロッド側油室2bのいずれからの作動油もチェック弁4bで閉止され、油圧シリンダ2の静止状態が維持される。
【0135】
ここで、油圧ポンプ1がボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、この油圧により、ボトム側のチェック弁4bが開き、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに作動油が供給され、同時にパイロット部45iのパイロットスプール45lもこの油圧により図の右方、ロッド側へ移動し、そのロッド側の外軸部45lbがロッド側のチェック弁4bを開いて、油圧シリンダ2のロッド側油室2bからの作動油の流れを許容して、油圧シリンダ2に伸び方向への駆動力を発生させる。
【0136】
これと同時に、切換弁5Aのボトム側弁体5dが図の右方、ロッド側へ移動し、ロッド側の弁体5dをロッド側へ移動させ、ボトム側弁体5dの段付き突起側の油室は、弁座筒5cの開口5cdを介して、タンク3とも作動油の流通が可能となっており、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに対するロッド側油室2bの作動油量の不足分がタンク3から供給される。
【0137】
一方、油圧ポンプ1がロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、オペレートチェック弁4Aの一対のチェック弁4b、パイロット部45iと、切換弁5Aは、上記と逆の作動をし、油圧シリンダ2に縮み方向への駆動力を発生させ、その際の余分の作動油は、ボトム側弁体5dにおいてタンク3への作動油の流通が可能とされ、タンク3へ戻される。
【0138】
上記、いずれの駆動の場合にも、切換弁5Aの弁体5dと弁座筒5cとの間の閉止がポペット式として構成され、作動油の流れを完全に閉止でき、図11のようなスプール式の切換弁65に比べ、ボトム側とロッド側及びタンク間のリークを防止でき、ポンプ効率を向上させることができる。
【0139】
また、切換弁5Aの弁体5dの中径部5dcの外径と弁座筒5cの小径部5caとの間の所定の隙間は、この両者間を通過する作動油の量を適度に絞ることで、段付き突起側だけ中径部5dcの面積にタンク3側の油圧が作用するようにし、弁体5dの円板部5daの両面に作用する力のうち、相対的に段なし側に作用する力を大きくして、切換作用が発揮されるようにしている。
【0140】
また、スプリング5eは常時、対向する弁体5dを中央(対向)方向に付勢し、双方の弁体5dともその中径部5dcが弁座筒5cの小径部5caに係入し(図示の状態)、上記切換作用が発揮され得る待機状態、を維持する待機状態維持手段を構成するものである。
【0141】
このような待機状態維持手段としては、この例のスプリングに限られず、弾性的な付勢力を発生し、かつ、作動油に耐性のあるもの、例えば、耐油性ゴム、耐油性弾性合成樹脂などであってもよい。
【0142】
上記、図5で説明した切換弁5Aは、それぞれ油圧駆動ユニット10の部品として上記機能、効果を発揮すると共に、正逆双方向の作動油の流れを制御するためにオペレートチェック弁と組み合わせて用いられる切換弁としても上記機能、効果を発揮する。
【0143】
また、そのような切換弁5Aを備えた油圧駆動ユニット10は、上記複合弁7の効果に加え、これらの機能、効果をユニットとして発揮する。
【実施例5】
【0144】
図6(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図、(c)は(b)のAA矢視図である。
【0145】
この油圧駆動ユニット10Bは、図5の油圧駆動ユニット10Aに比べ、複合弁7を備えている点は共通しているが、切換弁5Bがポペット式ではなく、従来用いられていたスプール式である点、オペレートチェック弁4Bが、固定式のスローリターン弁を吸収一体化したものである点が異なっており、このオペレートチェック弁4Bを特徴としている。
【0146】
オペレートチェック弁4Bは、弁収容部4a、この弁収容部4a内の中央部に収容されたパイロット部45m、このパイロット部45mを挟み込んで相互に対向するように収容された一対のチェック弁4iを備えている。
【0147】
この弁収容部4aの収容筒4aaの内部収容空間にパイロット部45mと一対のチェック弁4iが油密に収容されている。
【0148】
パイロット部45mは、収容筒4aaの内部収容空間の中央に隙間なく収容された円筒状のスプール筒45nと、このスプール筒45nの内部円柱空間にスライド可能に収容されたパイロットスプール45p及び移動規制手段45oとを備えている。
【0149】
スプール筒45nには、その筒部に油圧ポンプ1の二つポートへの管路と接続され、かつ、切換弁5Bの二つの開口5faへの管路とも接続され、これらの管路、つまり、油圧ポンプ1、切換弁5Bとの間の作動油の流通を可能とする四つの開口45kが設けられている。また、移動規制手段45oは、このスプール筒45nの内周にストップリングとして設けられている。
【0150】
スプール45pは、外径がスプール筒45n内周にスライド可能とされた円柱体45paの両端に小径のパイロット突起45pbがそれぞれ設けられた構造である。スプール筒45n内は、スプール45pによって仕切られ、それぞれの開口45kに通じた二つ油室が形成されている。
【0151】
このパイロット突起45pbの長さは、チェック弁4iを構成する弁体4jの先端突部4kaを押し込んで、チェック弁をパイロット開する程度のものである。
【0152】
移動規制手段45oは、パイロットスプール45pのパイロット移動量、つまり、ポンプ1から吐出する作動油に押されて反吐出側に移動する際のチェック弁4iの移動量を、チェック弁4iの弁体4j先端の絞り通路4kcが機能する範囲に規制するものであり、これによりスローリターンの絞り機能が発揮される。
【0153】
このパイロット部45mの基本構成は、移動規制手段45oを除けば、図5で説明したオペレートチェック弁4Aに内蔵されたパイロット部45iと同じ構成であり、同じ機能、効果、つまり、パイロット機能を発揮する。
【0154】
一対のチェック弁4iは、相互にまったく同じもので構成され、弁座体4cと、この弁座体4c内でスライドする弁体4iと、この弁体4iを常時閉方向に付勢するスプリング4hとを備えている。
【0155】
弁座体4cは、一方がより小さい開口である弁座穴4cbとなっている筒状体であり、その弁座穴4cb側近辺の筒部に油圧シリンダ2のロッド側油室2b(反対側では、ボトム側油室2a)への管路との作動油の流通を可能とする開口4caが設けられている。
【0156】
弁体4jは先端が円錐状の弁部4kとして閉止され、他方開口となっている筒状体であり、その内筒部4fに、上記スプリング4hが収容され、このスプリング4h後端と弁座体4cの後端を弁収容部4aの収容筒蓋4abが規制している。
【0157】
弁座体4cの弁座穴4cbが、スプリング4hで付勢された弁体4dの弁部4kにより閉止されている。
【0158】
弁体4jの弁部4k終了端より後方には、開口4caから流通してきた作動油を内筒部4fへも流通させる開口4gが設けられている。
【0159】
このチェック弁4jの基本構成、機能、効果は、図5で説明したオペレートチェック弁4Aに内蔵されたチェック弁4bと同じであるが、その弁体4jの円錐状の弁部4kの先端側が一段の段付き突起となっている点は異なる。
【0160】
この段付き突起の先端突部4kaは、油圧ポンプ1から吐出される作動油に押されて、弁体4jが最後端(弁体4jの後端が収容蓋4abに当接する状態)となった際に、弁座穴4cbに位置する状態になり、弁4iを全開する。
【0161】
先端突部4kaに続く段部4kbは、その外径が弁座穴4cbの内径に対してスライド可能で作動油の流通は阻止する程度のものとなっており、その幅は、チェック弁4iの全閉からパイロット部45mのパイロット作用により開かれる開度まで弁座穴4cbに対して、下記の固定絞り通路4kcによるもの以外の作動油の流通を阻止するものとなっている。
【0162】
この段部4kbには、その前端から円錐勾配に達する位置まで、その外周から一定深さの固定絞り通路4kcが設けられ、チェック弁4iがパイロット作用により開かれている間、所定流量の作動油の逆流を許可するものである。
【0163】
この固定絞り通路4kcは、チェック弁4iの中に組み込まれることで、油圧ポンプ1から油圧シリンダ2への作動油の流入は許可し、このチェック弁4iがパイロット作用により所定開度開いて、油圧シリンダ2から油圧ポンプ1への作動油の逆流を許容する場合に、この絞り通路4kcの分だけ油圧シリンダ2から油圧ポンプ1への作動油の流れを許可するものであり、図11のスローリターン弁SRの役割をも果たすことができるようになっている。
【0164】
なお、チェック弁に固定絞りを設ける方法は、上記のような固定絞り通路4kcとする他、この通路面積に相当するように、段部の外径を、チェック弁4iの弁座穴4cbの内径に対して小さくする方法でもよい。
【0165】
切換弁5Bは、弁収容部51と、この弁収容部51内に隙間なく収容された円筒状のスプール筒5fと、このスプール筒5fの内部円柱空間にスライド可能に収容されたスプール5gとを備え、図5の切換弁5Aと同じ機能を発揮するもので、その弁収容部51は共通するが、この弁収容部51に収容された弁が従来用いられているスプール式となっている点が異なっている。
【0166】
弁収容部51を構成する収容筒51a、収容筒蓋51bは、図5の弁収容部51と共通する。
【0167】
スプール筒5fには、その筒部にオペレートチェック弁4Bからの二つの管路と接続され、これらの管路との間で作動油の流通を可能とするための二つの開口5faと、この二つの開口5faに干渉せず、かつ両開口5faのスプール筒5fの筒軸方向の中央となる位置に、タンク3への管路との作動油の流通を可能とする開口5fbとが設けられている。
【0168】
スプール5gは、二つの円板をこの円板の外径より小さい外径の円柱体で串刺しにした形状をしており、この円板部5gbの外径がスプール筒5fの内周に対してスライド可能となる程度の外径となっている。
【0169】
この二つの円板部5gb相互間の距離は、図示するように、スプール5gが中央に位置した際に、上記二つのオペレートチェック弁4B側の開口5faとタンク3側への開口5fbとの間の作動油の流通を阻止するものとなっている。また、どちらか一方向に、例えばボトム側にスプール5gがスライドした場合には、二つのオペレートチェック弁4B側の開口5faの内ボトム側だけと、タンク3側への開口5fbとの作動油の流通を許可するものとなっている。
【0170】
円柱体の二つの円板部5gbに挟まれる中軸部5gcの外径は、スプール5g全体の構造的強度を保持する程度以上に太く、また、その外周とスプール筒5f内周との間に作動油が抵抗なく流通する程度以上に細くなっている。
【0171】
円板部5gbの外側に伸び出している外軸部5gaの突出長さは、その先端が弁収容部51の例えばボトム側の収容筒蓋51bに当接した際に、オペレートチェック弁4B側の開口5faのボトム側だけと、タンク3側への開口5fbとの間の作動油の流通を維持するものとなっている。
【0172】
スプール5gを構成する上記各部は、相互に固定され、全体が一体的にスライドするものである。
【0173】
このような構成で、スプール5gは、円板部5gbの上記機能に加え、一方の外軸部5gaに油圧ポンプ1の吐出側のより高圧な作動油が供給されている場合は、非吐出側へ移動し、油圧ポンプ1の吸込側とタンク3を結ぶ。油圧ポンプ1の回転が逆になり、吐出側と吸込側が逆になった場合には、スプール5gは上記と逆の作動をする。
【0174】
このような構成で、この油圧駆動ユニット10Bを構成するオペレートチェック弁4B、切換弁5Bは、従来例である図11の油圧駆動ユニットOUを構成するオペレートチェック弁OC、切換弁OIと同一の機能、効果を発揮する。
【0175】
加えて、このオペレートチェック弁4Bには、固定絞り通路4kcと移動規制手段45oとの共働により、チェック弁4iがパイロット開している間、油圧アクチュエータ2から流出する作動流体の流量をこの固定絞り通路4kcの分だけに制限つまり調節する機能を発揮する。
【0176】
つまり、本発明のオペレートチェック弁4Bは、これまでの固定式のスローリターン弁を吸収一体化したものであり、これにより、オペレートチェック弁の多機能化が図れ、別個にスローリターン弁を設けるスペース、費用、スローリターン弁とチェック弁とを接続する管路などが不要になる。また、このようなオペレートチェック弁4Bを備えた油圧駆動ユニット10としては、複合弁7を備えた効果に加え、その機能を維持しながら、装置のコンパクト化、コストダウンを更に図ることができる。
【0177】
なお、このユニット10Bで用いている切換弁5Bを、図5のポペット式の切換弁5Aとすることもでき、その場合には、図5のユニット10Aと同様に、ポペット式の切換弁5Aの効果を発揮する。
【実施例6】
【0178】
図7(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図である。
【0179】
この図7に示す油圧駆動ユニット10Cは、図6の油圧駆動ユニット10Bに比べ、複合弁7を備え、オペレートチェック弁4Cにスローリターン弁を収容した点では共通するが、そのスローリターン弁が、スローリターンの絞り量を変化させることのできない固定式ではなく、その絞り量を変化させることができる可変式である点が異なっている。
【0180】
具体的には、本ユニット10Cと図6のユニット10Bとで、複合弁7、切換弁5B、オペレートチェック弁4B、4Cの中央に収容されたパイロット部45mは共通する。
【0181】
異なるのは、一対のチェック弁4lが、可変絞りを備え、オペレートチェック弁4Cの弁収容部4a′に対して出し入れ調整可能となっている点である。以下、説明する。
【0182】
このチェック弁4lは、図6のチェック弁4iに比べ、弁座体4mが弁収容部4a′に対して出し入れ調節可能に収容されている点、弁体4nの弁部4oに絞り勾配部4oaが設けられている点が異なっている。
【0183】
弁座体4mのパイロット部45m側部分は、図6のチェック弁4iの弁座体4cと共通する。
【0184】
弁座体4mの反パイロット部45m側部分には、内周にスプリング4hの後端を規制する円板4ma、この円板4maの位置決めをするストップリング4mb、弁座体4mの後方開口を油密に閉止する蓋4mcが備えられ、外周に雄ねじ4mdが形成され、この雄ねじ4mdには、止めナット4meが外嵌されている点で異なっている。
【0185】
弁収容部4a′は、図6の弁収容部4aに比べ、収容筒蓋4abがなく、代わりに、収容筒4aa′の両端開口内部に、弁座体4mの雄ねじ4mdに対応した雌ねじ4acが形成されている点が異なっている。
【0186】
これにより、弁座体4mの雄ねじ4mdを弁収容部4a′の雌ねじ4acにネジ嵌合させ、その任意の位置での嵌合状態を止めナット4meで固定することができる。
【0187】
弁部4oの絞り勾配部4oaは、弁部4oの閉止のための円錐勾配に比べ、より緩やかなものとなっている。その先端の突起4obは、図6のチェック弁4iの突起4kaと同じものである。
【0188】
このような構成で、このチェック弁4lを備えたオペレートチェック弁4Cによれば、スローリターン機能を発揮するだけでなく、弁体4nを収容した弁座体4mの出し入れ位置を調節することで、弁部4oの絞り勾配部4oaのどの部分で、スローリターンの絞りが発揮されるかを調節することができ、可変絞りとなっている。
【0189】
また、この絞り勾配部4oaの勾配をより緩やかなものとすることで、可変絞りの調節をより微妙に調節できるようにすることができる。
【0190】
可変絞りは、この例のような円錐の勾配により実現可能であるが、図6で示したチェック弁4iの弁体4j先端の固定絞り通路4kcを、弁体の軸方向にその断面積が変化するような変化絞り通路としてもよい。
【0191】
このオペレートチェック弁4Cは、可変式のスローリターン弁を一体化した点を特徴とし、それらの効果をチェック弁4C、ユニット10Cとして発揮する。また、ユニット10Cとしては、複合弁7を備えているので、その効果をも、ユニットとして発揮する。
【0192】
このユニット10Cでも、スプール式の切換弁5Bを図5のポペット式の切換弁5Aとすることができる点は、図6のユニット10Cと同様である。
【0193】
また、上記実施例5,6では、固定式あるいは可変式の絞りをチェック弁側に設けているが、本出願と同一出願人による特願2004−291251号で示したように、その絞りをパイロット部側に設けるようにすることもできる。
【実施例7】
【0194】
図8は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0195】
この油圧駆動ユニット10Dは、図5の油圧駆動ユニット10Aに比べ、複合弁7、オペレートチェック弁4Aは共通するが、切換弁5Cがポペット式ではなく、スプール式であって、リリーフ弁を吸収一体化したものである点が異なり、特徴となっている。
【0196】
切換弁5Cは、弁収容部51と、この弁収容部51内に隙間なく油密に収容された円筒状のスプール筒5fと、このスプール筒5fの内部円柱空間にスライド可能に収容されたスプール5hとを備えている。
【0197】
弁収容部51を構成する収容筒51a、収容筒蓋51b、スプール筒5fを構成する二つの開口5fa、タンク3への開口5fbは、それぞれ図6の切換弁5Bの相当部品と同じものである。
【0198】
異なるのは、リリーフ弁機能を備えたスプール5hであり、このスプール5hは、二枚の円筒板5ha、この円筒板5haに挟まれて円筒板5haを相互に離れるように付勢するスプリング5hb、円筒板5haが相互に離れる範囲を規定するストップリング5hc、これらの円筒板5ha、スプリング5hb、ストップリング5hcの中心を貫通する貫通軸5hdとを備えている。
【0199】
円筒板5haの外径は、スプール筒5fの内径にスライド可能となっており、円筒板5haの内径は貫通軸5hdの外径にスライド可能となっている。スプリング5hbは貫通軸5hdの二枚の円筒板5haの間に外嵌される。ストップリング5hcは、貫通軸5hdの所定位置に設けられた溝に嵌められ、円筒板5haがスプリング5hbに付勢され相互に離れる最大範囲を規定する。
【0200】
貫通軸5hdの両端は、対向する収容筒蓋51bに当接する。
【0201】
スプリング5hbに付勢され、ストップリング5hcによる規制位置で相互に離れた状態の二枚の円筒板5haは、図6の切換弁5Bのスプール5gの二つの円板部5gbと同じ位置関係にあり、同様の機能を発揮し、通常は、このスプール5hを備えた切換弁5Cも、図6の切換弁5Bと同様の機能、効果を発揮する。
【0202】
油圧ポンプ1が作動中で、スプール5hで仕切られた両側の油室のうち、ポンプ1の吐出側ポートと流通しタンク3と流通していない吐出側油室に、なんらかの理由で所定以上の高圧が生じた場合、この吐出側の円筒板5haが反吐出側方向へスプリング5hbの付勢力に抗して移動し、タンク3への開口5fbを通過するようになり、その高圧の作動油がタンク3に戻される。
【0203】
こうして、この構成のスプール5hによって、図11の油圧駆動ユニットOUのリリーフ弁RV2の機能も実現され、このリリーフ弁RV2が切換弁5Cに吸収一体化されたことになり、油圧駆動ユニット10Dとしては、複合弁7の効果に加え、更に、コストダウン、省資源、コンパクト化という効果を発揮する。
【0204】
また、切換弁5Cとしては、多機能化、省スペース、省資源、コストダウンという効果を発揮する。
【実施例8】
【0205】
図9は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0206】
この油圧駆動ユニット10Eは、図8の油圧駆動ユニット10Dに比べ、複合弁7を備えている点では共通するが、リリーフ弁を吸収一体化したのが、切換弁5Bではなく、オペレートチェック弁4Dである点が異なっている。
【0207】
つまり、このオペレートチェック弁4Dに収容されたチェック弁4bは、図8と共通するが、中央のパイロット部46が、リリーフ弁を吸収一体化したものとなり、切換弁5Bからは、リリーフ弁機能が排除され、図6の切換弁5Bと同じものとなっている。
【0208】
切換弁5Bは、図6の切換弁5Bと共通し、各部分、弁収容部51(収容筒51a、収容筒蓋51b)、スプール筒5f(開口5fa、開口5fb)、スプール5g(外軸部5ga、円板部5gb、中軸部5gc)もそれぞれ対応部分と共通し、その機能、効果も同一である。
【0209】
パイロット部46はスプール筒46aとスプール46dとを備えている。
【0210】
スプール46dは、その全体形状は、図5のパイロット部45iと同様であり、同様の位置に同様の機能を果たす二つの開口46bを備えている。異なるのは、この二つの開口46bに干渉しないように、スプール46dの筒軸方向の中心部に、タンク3への管路に接続された開口46cを備えている点である。
【0211】
リリーフ弁機能を備えたスプール46dは、二枚の円筒板46e、この円筒板46eに挟まれて円筒板46eを相互に離れるように付勢するスプリング46f、円筒板46eが相互に離れる範囲を規定するストップリング46g、これらの円筒板46e、スプリング46f、ストップリング46gを貫通する貫通軸46hとを備えている。
【0212】
円筒板46eの外径は、スプール筒46aの内径にスライド可能となっており、円筒板46eの内径は貫通軸46hの外径にスライド可能となっている。スプリング46fは貫通軸46hの二枚の円筒板46eの間に外嵌される。ストップリング46gは、貫通軸46hの所定位置に設けられた溝に嵌められ、円筒板46eがスプリング46fに付勢され相互に離れる最大範囲を規定する。
【0213】
貫通軸46hの両端は、対向するチェック弁4bを構成する弁体4dの弁部4eに当接し、この弁体4dを押し開き、作動油の流通を可能とする。
【0214】
スプリング46fに付勢され、ストップリング46gによる規制位置で相互に離れた状態の二枚の円筒板46eは、パイロット機能を発揮している通常の作動の間は、そのパイロット移動のどの位置にあっても、油圧ポンプ1への二つの開口46bとタンク3への開口46c間の作動油の流通を許可しないものとなっており、作動油は、開口46bを介して、油圧ポンプ1と切換弁5Bとの間を、それぞれ油圧ポンプ1の吐出側、吸込側とで混じり合わない状態で流通する。
【0215】
油圧ポンプ1が作動中で、スプール46dで仕切られた両側の油室の一方、例えば、吐出側の作動油に押されてスプール46dが最も反吐出側へパイロット移動している際、なんらかの理由で所定以上の高圧が生じた場合、この吐出側の円筒板46eが反吐出側方向へスプリング46fの付勢力に抗して移動し、タンク3への開口46cを通過するようになり、その高圧の作動油がタンク3に戻される。
【0216】
こうして、この構成のパイロット部46によって、図11の油圧駆動ユニットOUのリリーフ弁RV2の機能も実現され、このリリーフ弁RV2がオペレートチェック弁4Dに吸収一体化されたことになり、油圧駆動ユニット10Eとしては、複合弁7の効果に加え、更にコストダウン、省資源、コンパクト化という効果を発揮する。
【0217】
また、オペレートチェック弁4Dとしては、多機能化、省スペース、省資源、コストダウンという効果を発揮する。
【0218】
なお、この例においては、切換弁5Bを、一対のポペット弁を同軸状に対向配置させたポペット式の切換弁5A(図5参照。)とすることが可能で、その場合、このスプール式の切換弁5Bに比べ、弁体と弁座間の作動油の流れを完全に閉止でき、ボトム側とロッド側及びタンク間のリークを防止でき、ポンプ効率を向上させることができる。
【実施例9】
【0219】
図10は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0220】
この油圧駆動ユニット10Fは、図1〜3のユニット10とは、複合弁7を備えた点、オペレートチェック弁4Eが切換弁5A′を吸収一体化した点で共通し、図5のユニット10Aとは、その切換弁5A′がポペット式となっている点で共通し、図7のユニット10Cとは、オペレートチェック弁4Eに可変式のスローリターン弁を吸収一体化した点で共通する。
【0221】
つまり、この油圧駆動ユニット10Fは、図11の油圧駆動ユニットのリリーフ弁RV1と非常用手動弁MVとを一体化した複合弁7を備えたことを基本としながら、オペレートチェック弁への切換弁の吸収一体化、切換弁のポペット化、オペレートチェック弁への可変式スローリターン弁の吸収一体化を同時に組み合わせたものである。
【0222】
具体的には、オペレートチェック弁4Eについては、弁収容部4a′とチェック弁4lとは、図7のオペレートチェック弁4Cと共通している。
【0223】
切換弁5A′については、図3のオペレートチェック弁4に収容された切換弁5が、図5の切換弁5Aの弁収容部51に収容されたものと共通のポペット式となっているものである。
【0224】
この際、図5の切換弁5Aにあるスプリング5eが不要となっているが、これは、切換弁5A′と組み合わされるチェック弁4lのスプリング4hが代替しているからである。
【0225】
こうして、このユニット10Fによれば、上記、種々の組み合わせの効果を相乗的に発揮する。
【0226】
なお、上記実施例1から9では、リリーフ弁、非常用手動弁を一体化して複合弁とすることを基本としながら、切換弁のオペレートチェック弁への吸収一体化、切換弁のポペット化、スローリターン弁のオペレートチェック弁への吸収一体化、リリーフ弁の切換弁、オペレートチェック弁への吸収一体化の種々の組み合わせについて説明したが、これらの組み合わせは、ここに例示したものに限られず、それ以外の組み合わせも可能であり、その場合には、組み合わせの相乗的効果を発揮する。
【0227】
また、油圧アクチュエータとしては、ここで説明する油圧シリンダ以外に、作動油の出入量の調整の問題は少ないが、油圧による駆動力をトルクとして出力する油圧ロータリアクチュエータも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0228】
また、本発明の複合弁は、省スペース、コンパクト化が要請される一般の油圧回路、特に、油圧駆動ユニットにおいて、好適に用いられる。
【0229】
また、本発明の油圧駆動ユニットは、かかる複合弁を備えて、独立して被駆動体に油圧による駆動力を与え、コンパクト化が要請されるあらゆる産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの一例を概念的に示す構成図
【図2】図1の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図
【図3】図1の油圧駆動ユニットにおいて、オペレートチェック弁の詳細構成を概念的に示した構成図
【図4】(a)は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は、(a)の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図
【図5】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図6】(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図、(c)は(b)のAA矢視図
【図7】(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図
【図8】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図9】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図10】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図11】油圧駆動ユニットの基本的な構成を示す油圧回路図
【符号の説明】
【0231】
1 油圧ポンプ
2 油圧アクチュエータ
3 タンク
4〜4E オペレートチェック弁
4a 弁収容部
4b チェック弁
5〜5B 切換弁
7 複合弁
7a 弁収容部
7i 非常用手動弁の弁体
7t リリーフ弁の弁体
72 弁体脱落防止手段
10〜10F 油圧駆動ユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧回路で用いられ、作動流体を圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動する油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、前記油圧ポンプの停止時に前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁との双方の機能を発揮する複合弁、電動モータを備え作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプと、この作動油により作動する油圧アクチュエータ、この両者間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁、作動油を貯留するタンク、このタンクと前記油圧ポンプ間の正逆双方向の流れを制御する切換弁などを備え、独立して被駆動体に油圧による駆動力を与える油圧駆動ユニットで用いられる前記複合弁、この複合弁を備えた油圧駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧配管をすることなく、電源さえあれば、簡易に油圧による駆動力を与える油圧駆動ユニットは、たとえば、農業用特殊車両の耕地面に対する作業機器の昇降などに用いられ、今後、多方面に産業上の利用分野が期待され、拡大されるものである。
【0003】
図11は、その油圧駆動ユニットの基本的な構成を示す油圧回路図である。
【0004】
油圧駆動ユニットOUは、独立して、つまり作動油を閉鎖系で循環させながら、被駆動体Wに油圧による駆動力を与えるため、正逆回転モータMにより作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプOPと、この作動油により作動し前記駆動力を発生させる油圧アクチュエータOA(ここでは、油圧シリンダ)、閉鎖空間内に作動油を貯留するタンクOT、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAとの間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁OC、油圧ポンプOPとタンクOTとの間の正逆双方向の作動油の流れを制御する切換弁OIを基本構成要素として備えている。
【0005】
オペレートチェック弁OCは、基本的に油圧ポンプOPから油圧アクチュエータOAへの作動油の流れのみを許容する一対のチェック弁OCaと、それぞれチェック弁OCaへの作動油圧を他のチェック弁OCaへパイロットする一対のパイロットラインOCbとを備えている。
【0006】
この一対のチェック弁OCaは、油圧ポンプOPの一方のポートと油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAaとを連結する管路と、油圧ポンプOPの他方のポートと油圧アクチュエータOAのロッド側油室OAbとを連結する管路とに、それぞれ設けられている。
【0007】
切換弁OIは、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbとの間のいずれかの管路とタンクOTとの間を切換断接するものである。
【0008】
なお、以下の説明では、左右一対で配置されたチェック弁OCaなどの図上左側のものを、油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAaに入出する作動油に関するものとしてボトム側、右側のものを、ロッド側油室OAbに入出する作動油に関するものとしてロッド側と称することがある。同様に、油圧ポンプOPのポートも、左側をボトム側、右側をロッド側と称することがある。
【0009】
このような構成で、この油圧駆動ユニットOUによれば、油圧ポンプOPが停止している状態では、オペレートチェック弁OCにより、油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbのいずれの側からも作動油の流出が阻止され、所定の外力に抗して油圧アクチュエータOAの現状静止状態が維持される。
【0010】
油圧ポンプOPがボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、油圧ポンプOPからボトム側チェック弁OCaを通過してボトム側油室OAaへ作動油が供給され、同時にボトム側パイロットラインOCbの作動油圧によりロッド側チェック弁OCaが押し開かれ、ロッド側油室OAbから油圧ポンプOPへの作動油の流出を許容し、油圧ポンプOPと油圧アクチュエータOAとの間を時計回りに循環する作動油の流れが生じ、油圧アクチュエータOAに伸び方向への駆動力が発生する。
【0011】
この際、油圧アクチュエータOAが図示したような油圧シリンダの場合を考えると、この油圧シリンダのピストンの移動量に対して、ボトム側油室OAaに流入する作動油量に比べ、ロッド側油室OAbから流出する作動油量が、このピストンのロッドの分だけ少なくなるが、より高い油圧のボトム側の作動油に押されて切換弁OIがロッド側油室OAbへの管路とタンクOTとの間を接続するように切り換わり、不足分の作動油がタンクOTから供給されるようになっている。
【0012】
一方、油圧ポンプOPがロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、上記と逆の作動油の循環流れが生じて、油圧アクチュエータOAに縮み方向への駆動力が発生し、ボトム側油室OAaから油圧ポンプOPへ流入する作動油が余分になるが、その余分の作動油は、上記と逆の切換弁OIの作用によりボトム側油室OAaへの管路とタンクOTとが接続され、タンクOTへ戻されるようになっている。
【0013】
なお、油圧アクチュエータOAである油圧シリンダのピストンの位置により、密閉されたタンクOT内の作動油量が増減し、このタンクOT内に封止された気体圧力が変動するが、この封止気体体積を適当なものとすることで、この気体圧力の変動が、油圧駆動ユニットOUの作動に影響を与えないようにしている。
【0014】
こうして、閉鎖系であって、その作動により作動油の入出量に差がある油圧アクチュエータOAを用いながら、油圧駆動ユニットOUの機能が発揮保持されているのである。
【0015】
この油圧駆動ユニットOUには、既述の基本構成要素以外に以下の付加的要素が備えられている。
【0016】
油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbとオペレートチェック弁OCのそれぞれのチェック弁OCaとの間の管路には、それぞれの油室OAa、OAbからチェック弁OCaへの作動油の流れのみを絞るスローリターン弁SRがそれぞれ設けられている。
【0017】
このスローリターン弁SRは、油圧ポンプOPの作動中に被駆動体Wから外力が生じた場合に発生するハンチングを防止するためのものである。
【0018】
前記それぞれのスローリターン弁SRとチェック弁OCaとの間の管路からは、それぞれリリーフ弁RV1を設けた管路がタンクOTへ分岐している。同様に、油圧ポンプOPとボトム側、ロッド側のチェック弁OCaとの間の管路からは、それぞれリリーフ弁RV2を設けた管路がタンクOTへ分岐している。
【0019】
これらのリリーフ弁RV1、RV2は、分岐元の管路に異常圧が生じた場合に過剰な作動油をタンクOTへ逃がすものである。
【0020】
更に、ロッド側、ボトム側のスローリターン弁SRとチェック弁OCaとの間の管路からは、非常用手動弁MVを設けた管路がタンクOTへ分岐しており、油圧ポンプOPが電源が得られず停止した場合などに、この非常用手動弁MVで、油圧アクチュエータOAのボトム側油室OAa、ロッド側油室OAbの管路をタンクOTへ解放して、油圧アクチュエータOAを手動操作できるようにしている。
【0021】
このような構成で、この油圧駆動ユニットOUは、その基本機能を良好に達成しながら、異常事態が発生した場合にも、それがユニットOUの破損に繋がらないようにして、安全性、信頼性、事故回避性を確保している。
【0022】
しかしながら、上記油圧駆動ユニットOUにおいては、非常用手動弁MVとリリーフ弁RV1が別個独立して設けられているため、それだけスペースを要し、相互間を結ぶ管路も必要とされ、より一層のコンパクト化を実現し得なかった。このコンパクト化の要請は、必要な場所で油圧による駆動力を簡易・安価に提供すべき油圧駆動ユニットとしては、より重要度の高いものであった。
【0023】
また、この問題は、上記のような油圧駆動ユニットの部品としてでななく、油圧ポンプOP、油圧アクチュエータOA、タンクOTと共に、組み合わせて用いられる非常用手動弁、リリーフ弁についても共通するものである。
【0024】
また、油圧駆動ユニットの他の具体的な従来例としては、特許文献1、特許文献2に記載されたものなどもあるが、いずれも上記の問題を解決するものではなかった。
【特許文献1】特許第2824659号公報(第1図)
【特許文献2】特開2003−172307号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、上記問題を改善しようとするもので、一般の油圧回路及び特に油圧駆動ユニットにおいて、非常用手動弁とリリーフ弁とを一体化して、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現する複合弁、この複合弁を備えた油圧駆動ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の複合弁は、油圧回路で用いられ、作動流体を圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動する油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、前記油圧ポンプの停止時に前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁とを同軸上に一体化したことを特徴とする。
【0027】
また、本発明の油圧駆動ユニットは、かかる特徴を有する複合弁を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の複合弁によれば、リリーフ弁と非常用手動弁とを一体化したので、一般の油圧回路、特に油圧駆動ユニットにおいて、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現する。また、この複合弁を備えた油圧駆動ユニットとしても、同様の効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、本発明の実施の形態(実施例)について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの一例を概念的に示す構成図、図2は、図1の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図である。
【0031】
この油圧駆動ユニット10は、独立して簡易に油圧による駆動力が必要とされる、たとえば、農業用特殊車両の耕地面に対する作業機器の昇降などに用いられ、また、この油圧駆動ユニット10に含まれる複合弁7は、このような油圧駆動ユニットにおいてだけでなく、一般の油圧回路において、油圧ポンプ、油圧アクチュエータ、タンクと共に、組み合わせて用いられ、非常用手動弁、リリーフ弁の双方の機能が必要とされる複合弁としても用いられるものである。
【0032】
そのユニット10の構成は、電動モータMを備え作動油を正逆双方向に圧送する油圧ポンプ1と、この作動油により作動し被駆動体Wへの駆動力を発生させる油圧アクチュエータとしての油圧シリンダ2、閉鎖空間内に作動油を貯留するタンク3、油圧ポンプ1と油圧シリンダ2との間の作動油の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁4、油圧ポンプ1とタンク3との間の正逆双方向の作動油の流れを制御する切換弁5、上述の複合弁7からなることを基本とし、複合弁7が非常用手動弁(図10の符号MV)とオペレートチェック弁4と油圧シリンダ2との間に設けられるリリーフ弁(図10の符号RV1)とを一体化したものである点を特徴とする。
【0033】
これらの油圧ポンプ1、油圧シリンダ2、タンク3、オペレートチェック弁4、切換弁5の基本的な機能、相互関係は、従来例の油圧駆動ユニットOUを構成する油圧ポンプOP、油圧アクチュエータOA、タンクOT、オペレートチェック弁OC、切換弁OIと同じであるので、重複説明を省略する。なお、油圧シリンダ2の符号2aはボトム側油室、符号2bはロッド側油室である。
【0034】
また、ここでは、図10の油圧回路図で示したスローリターン弁SR、リリーフ弁RV2は示されていないが、これらは必要に応じて備えられているものとする。なお、この図においては、油圧駆動ユニット10を構成するオペレートチェック弁4、切換弁5は油圧記号で示しているが、その内容は、図3を用いて詳細に説明する。
【0035】
複合弁7は、非常用手動弁、リリーフ弁の機能を発揮する部分を同軸上に収容する弁収容部7a、非常用手動弁としての機能を主に分担する手動弁部7i、この手動弁部7iに対してスライドして弁開閉するリリーフ弁体7t、リリーフ弁体7tを手動弁部7iに向けて弁を閉じる方向に付勢するスプリング7zを備えている。
【0036】
上記の構成要素の内、手動弁部7i、リリーフ弁体7t、スプリング7zは、それぞれ、弁収容部7a内に同軸上に対向して二つずつ全く同じものが収容され、これに対応して、弁収容部7aに設けられた収容部分も中心部を除いては、各部分が対向して設けられているものである。
【0037】
このような構造としているのは、この1個の複合弁7は、図10の油圧駆動ユニットOUを構成するロッド側、ボトム側の一対の二つのリリーフ弁RV1と非常用手動弁MVとを一体化し、これらの機能を発揮するものだからである。なお、より正確には、この複合弁7における非常用手動弁は、図10の油圧駆動ユニットOUの非常用手動弁MVに比べ、ロッド側、ボトム側の管路それぞれに設けられた一対のものとなっている。
【0038】
したがって、必要に応じて、複合弁7を構成するリリーフ弁、非常用手動弁の一方あるいは双方を除いたより簡単な構成とすることも可能である。
【0039】
弁収容部7aは、この例では、全体が筒状のものと想定されており、その端面から対向する他端面に貫通する複数段付き孔が中心対向に形成されたものである。
【0040】
この弁収容部7aは、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、上記段付き孔が形成されるようにするものも含まれる。複合弁7が単体として用いられる場合は、このような弁収容部7aを用いるのが望ましい。
【0041】
この段付き孔は、弁収容部7aの上記対向する端面から、この両端面の中心に向かって形成された、最大径の開口孔7b、これに続くより小径の中間孔7c、この中間孔7cよりわずかに大径の凹孔7d、これに続く、中間孔7cより小径の通路孔7e、これに続くより小径のネジ孔7f、これに続くより小径で、スプリング7zを収容するスプリング孔7gと、前記両端面の中心に位置し最小径であって、対向するスプリング孔7gを連通させる連通孔7hで構成されている。
【0042】
弁収容部7aには、更に、上記筒状の外周の一方側から上記通路孔7eを通り他方側に貫通する作動油通路73が一対で設けられ、これらの作動油通路73がそれぞれ、油圧シリンダ2のボトム側油室2aとオペレートチェック弁4のボトム側、油圧シリンダ2のロッド側油室2bとオペレートチェック弁4のロッド側を接続する管路を構成している。
【0043】
更に、弁収容部7aには、連通孔7hから作動油を外部へ導く作動油通路74が設けられ、この作動油通路74がタンク3に接続されている。
【0044】
手動弁部7iは、弁収容部7aの開口孔7bからネジ孔7fに渡って収容されるもので、開口孔7bよりは小径で中間孔7cよりは大径のツバ部7j、これに続く、中間孔7cにスライド可能な中間部7k、これに続く、通路孔7eに対して油密を保持しながらスライド可能な通路部7m、これに続く、ネジ孔7fに係合する雄ねじを形成した雄ネジ部7qで構成される外部形状となっている。
【0045】
手動弁部7iの内部側には、その雄ネジ部7qの端面から所定深さの弁収容孔7rと、これに続く、より小径で底付きの作動油通路穴7pが形成されている。
【0046】
手動弁部7iの中間部7kは、弁収容部7aの中間孔7cと凹孔7dにちょうど対応した長さとなっており、その外周であって、凹孔7dに対応する適所に、リング溝7lが形成され、このリング溝7lに弁体脱落防止手段となるストップリング72が嵌め込まれている。
【0047】
このストップリング72は、凹孔7dに規制されており、よって、手動弁部7iは、この規制範囲内だけにおいて、弁収容部7a内で回動スライド可能となっている。
【0048】
手動弁部7iの通路部7mの外周には、手動弁部7iが弁収容部7a内で雄ネジ部7qとネジ孔7fの間でネジ係合しながら上記規制範囲内で回動スライドする区間で、弁収容部7aに設けられた作動油通路73との作動油の流通を可能とするリング油溝7nが設けられ、このリング油溝7nには、この油溝7nとその内部側の作動油通路穴7pを貫通する作動油通路7oが設けられている。
【0049】
手動弁部7iのツバ部7jの外側面には、この手動弁部7iを手動で回動させるための六角穴7sが形成されている。
【0050】
リリーフ弁体7tは、手動弁部7iの弁収容孔7r内にスライド可能に収容され、その外部側は、作動油通路孔7pを油密に開閉する弁部7u、これに続く弁収容孔7rより小径の肩部7vと、これに続く、弁収容孔7rに対してスライド可能とされたスライド部7wで構成され、その内部側は、この弁体7tを弁閉止方向に付勢するスプリング7zを収容し、弁部7uの反対側に開口したスプリング穴7yで構成されている。
【0051】
リリーフ弁体7tには、また、その外部側の肩部7vと内部側のスプリング穴7yとの間の作動油の流通を可能とする油通路7xが形成されている。
【0052】
スプリング7zは、弁収容部7aのスプリング孔7gと、リリーフ弁体7tのスプリング穴7yとに渡って収容され、その一端がスプリング孔7gの底部で規制され、その他端で他方のスプリング穴7yの底部を、リリーフ弁体7tの弁閉止方向に、つまり、リリーフ弁体7tの弁部7uが作動油通路孔7pを閉止するように付勢する。
【0053】
このような複合弁7は、図1を見ると解るように、例えば、ロッド側の作動油通路73に所定以上の高圧が生じると、リリーフ弁体7tがスプリング7zの付勢力に抗して開き、リング油溝7n、作動油通路7o、作動油通路穴7p、弁収容孔7r、油通路7x、スプリング穴7y、弁収容孔7r、スプリング孔7g、連通孔7h、作動油通路74を通じて、タンク3に余剰の作動油が逃がされる。
【0054】
ボトム側の場合も同様であり、この複合弁7は、ロッド側、ボトム側のそれぞれについて、リリーフ弁の機能を発揮する。
【0055】
一方、図2を見ると、ロッド側の手動弁部7iが手動操作され、上記ストップリング72と凹孔7dとによる規制範囲内で最大限、弁収容部7aの軸方向中心から外方向に回動スライドしており、この際、スプリング7zの自由長を越えて付勢力の効いていないリリーフ弁体7tに対して、手動弁部7iの作動油通路穴7pが開かれた状態となっている。
【0056】
この状態では、ロッド側の作動油通路73、リング油溝7n、作動油通路7o、作動油通路穴7p、弁収容孔7r、油通路7x、スプリング穴7y、弁収容孔7r、スプリング孔7g、連通孔7h、作動油通路74を通じて、タンク3に通路が形成されており、油圧シリンダ2のロッド側の作動油を逃がすことが可能で、また、ボトム側は吸い込みのみ可能な状態となって、手動で油圧シリンダ2を伸び出す方向に動かすことができ、非常用手動弁の機能を発揮している。
【0057】
なお、油圧シリンダ2を押し込む方向に動かすようにする場合は、ボトム側の手動弁部7iを手動操作する必要がある。
【0058】
また、上記で説明した通り、手動弁部7iは、ストップリング72と凹孔7dとの相互作用により規制されて、弁収容部7aから脱落しないようになっている。
【0059】
したがって、内蔵部品である手動弁部の脱落、脱落の発見漏れを防ぎ、また再組み付けの必要がなくなる、再組み付けの際には、コンタミ(異物の侵入)に配慮する必要があるが、それが不要となるという効果を発揮する。このことは、非常用手動弁機能を現場で素人でも扱えるということを意味し、フールプルーフが図られる。
【0060】
また、このような構成の手動弁部7iは、非常用手動弁として開弁した後も、また、手動で通常状態の閉弁状態に復帰させることができ、繰り返し使用が可能である。
【0061】
こうして、この複合弁7によれば、油圧駆動ユニットにおいて、非常用手動弁とリリーフ弁とを一体化して、省スペース、コストダウン、コンパクト化を実現することができ、その効果は、一般の油圧回路においても発揮されるものである。また、この複合弁を備えた油圧駆動ユニット10は、その複合弁の効果をユニットとして発揮する。
【実施例2】
【0062】
図3は、図1の油圧駆動ユニットにおいて、オペレートチェック弁の詳細構成を概念的に示した構成図である。これより、既に説明した部分と同じ部分については、同じ符号を付して重複説明を省略する。また、各部分の集合体について別個の符号がある場合については、煩雑さを避けるために、集合体の符号だけを示すようにすることがある。
【0063】
この図3では、図1では説明できなかったオペレートチェック弁の特徴について、説明する。この特徴は、本発明の複合弁7を備えた油圧駆動ユニット10の他の特徴点である。
【0064】
オペレートチェック弁4は、弁収容部4a、この弁収容部4a内の中央部に収容された切換弁5、この切換弁5を挟み込んで相互に対向するように収容された一対のチェック弁4bを備え、図1で示した切換弁5を収容一体化している点を特徴とする。
【0065】
弁収容部4aは、この例では筒状体の収容筒4aaと、その両端開口を油密に閉止する収容筒蓋4abとから構成される。
【0066】
この弁収容部4aは、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、弁収容部4aの内部収容空間が形成されるようにするものも含まれる。オペレートチェック弁4が単体として用いられる場合は、このような弁収容部4aを用いるのが望ましい。
【0067】
この弁収容部4aの収容筒4aaの内部収容空間に切換弁5と一対のチェック弁4bが油密に収容されている。
【0068】
切換弁5は、収容筒4aaの内部収容空間の中央に隙間なく収容された円筒状のスプール筒5aと、このスプール筒5aの内部円柱空間にスライド可能に収容されたスプール5bとを備えている。
【0069】
スプール筒5aには、その筒部に油圧ポンプ1からの二つの管路と接続され、これらの管路との間で作動油の流通を可能とするための二つの開口5abと、この二つの開口5abに干渉せず、かつ両開口5abのスプール筒5aの筒軸方向の中央となる位置に、タンク3への管路との作動油の流通を可能とする開口5acとが設けられている。
【0070】
スプール5bは、二つの円板をこの円板の外径より小さい外径の円柱体で串刺しにした形状をしており、この円板部5bbの外径がスプール筒5aの内周に対してスライド可能となる程度の外径となっている。
【0071】
この二つの円板部5bb相互間の距離は、図示するように、スプール5bが中央に位置した際に、上記二つの油圧ポンプ1側の開口5abとタンク3側への開口5acとの間の作動油の流通を阻止するものとなっている。また、どちらか一方、例えばボトム側にスプール5bがスライドした場合には、二つの油圧ポンプ1側の開口5abのボトム側だけと、タンク3側への開口5acとの作動油の流通を許可するものとなっている。
【0072】
円柱体の二つの円板部5bbに挟まれる中軸部5bcの外径は、スプール5b全体の構造的強度を保持する程度以上に太く、また、その外周とスプール筒5a内周との間に作動油が抵抗なく流通する程度以上に細くなっている。
【0073】
円板部5bbの外側に伸び出している外軸部5baの突出長さは、スプール5bが最大限移動した際に対向するチェック弁4bを全開するものとされ、その外径は、後述するチェック弁4bの弁座穴4cbを支障なく通過し、弁座穴4cbとの間で作動油の流通を容易に可能とする程度とされている。
【0074】
スプール5bを構成する上記各部は、相互に固定され、全体が一体的にスライドするものである。
【0075】
このような構成で、スプール5bは、円板部5bbの上記機能に加え、一方の外軸部5baがその側のチェック弁4bを開いている際には、この側のチェック弁4b、油圧ポンプ1、タンク3相互間の作動油の流通を許可するものとなっている。
【0076】
一対のチェック弁4bは、相互にまったく同じもので構成され、弁座体4cと、この弁座体4c内でスライドする弁体4dと、この弁体4dを常時閉方向に付勢するスプリング4hとを備えている。
【0077】
弁座体4cは、一方がより小さい開口である弁座穴4cbとなっている筒状体であり、その弁座穴4cb側近辺の筒部に油圧シリンダ2のロッド側油室2b(反対側では、ボトム側油室2a)への管路との作動油の流通を可能とする開口4caが設けられている。
【0078】
弁体4dは先端が円錐状の弁部4eとして閉止され、他方開口となっている筒状体であり、その内筒部4fに、上記スプリング4hが収容され、このスプリング4h後端と弁座体4cの後端を弁収容部4aの収容筒蓋4abが規制している。
【0079】
弁座体4cの弁座穴4cbが、スプリング4hで付勢された弁体4dの弁部4eにより閉止されている。
【0080】
弁体4dの弁部4e終了端より後方には、開口4caから流通してきた作動油を内筒部4fへも流通させる開口4gが設けられている。
【0081】
このような構成で、このオペレートチェック弁4がチェック弁機能と、切換弁機能の双方を発揮する点を以下に説明する。
【0082】
この図1自体は静止状体、つまり、油圧ポンプ1が回転していない状態を示しており、この状態では、油圧ポンプ1側からは作動油に圧力は付加されず、油圧ポンプ1とオペレートチェック弁4に内蔵された切換弁5の両側内部油室に間に含まれる作動油、切換弁5
の中央側内部油室とタンク3との間に含まれる作動油は静止している。
【0083】
オペレートチェック弁4の左右のチェック弁4bは、スプリング4hの付勢力により閉止されており、油圧シリンダ2のボトム側油室2a、ロッド側油室2bのいずれからの作動油もチェック弁4bで閉止され、油圧シリンダ2の静止状態が維持される。
【0084】
ここで、油圧ポンプ1がボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、この油圧により、ボトム側のチェック弁4bが開き、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに作動油が供給される。
【0085】
同時に切換弁5のスプール5bもこの油圧により図の右方、ロッド側へ移動し、油圧ポンプ1のロッド側ポートとタンク3との間の作動油の流通を許すと同時に、スプール5bのロッド側の外軸部5baがロッド側のチェック弁4bを開いて、油圧シリンダ2のロッド側油室2bからの作動油の流れを許容し、油圧シリンダ2に伸び方向への駆動力を発生させる。
【0086】
この際、油圧シリンダ2のロッド側油室2bと、ロッド側のチェック弁4b、タンク3間の作動油の流通が許可されており、油圧シリンダ2のロッド側油室2bからの作動油に加え、タンク3からの作動油が油圧ポンプ1のロッド側ポートに流入して、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに対するロッド側油室2bの作動油流量の不足分をカバーしている。
【0087】
一方、油圧ポンプ1がロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、切換弁4、チェック弁4bに逆の動作が生じ、油圧シリンダ2に縮み方向への駆動力を発生させ、油圧シリンダ2のロッド側油室2bに対するボトム側油室2aの作動油流量の過剰分をタンク3へ戻すようにしている。
【0088】
こうして、オペレートチェック弁4に収容された中央の切換弁5、これを挟むように対向する一対のチェック弁4bの相互作用により、従来のオペレートチェック弁の機能を果たしながら、切換弁の機能も果たしている。
【0089】
つまり、本発明のオペレートチェック弁4は、単体としては、これまでの切換弁を吸収一体化したものであり、これにより、オペレートチェック弁の多機能化が図れ、別個に切換弁を設けるスペース、費用、切換弁とチェック弁とを接続する管路などが不要になる。
【0090】
また、このようなオペレートチェック弁4を備えた油圧駆動ユニット10としては、複合弁7の効果に加え、そのユニットとしての機能を維持しながら、装置のコンパクト化、コストダウンを更に図ることができる。
【実施例3】
【0091】
図4(a)は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は、(a)の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図である。なお、このユニット10′では、複合弁7′のみ相違しているので、他の部分は省略しているが、図1〜3と同様のものが配置されているものである。
【0092】
この図4に示す油圧駆動ユニット10′は、図1〜3の油圧駆動ユニット10に比べ、それを構成する複合弁7′が、一方側の手動弁部7iだけの操作で、ロッド側、ボトム側の双方の管路をタンク3へ開放して、油圧シリンダ2を伸び出し方向へも、押し込み方向へも動かすことができるようにしたものである点が異なっている。
【0093】
この複合弁7′は図1の複合弁7に比べ、ロッド側、ボトム側で同じものが対向配置されているのではなく、一方側、この例では、図の右側のロッド側の手動弁部7i、これに対応した弁収容部7a′のロッド側の形状は共通するが、他方側つまりボトム側の手動弁部7i′、これに対応した弁収容部7a′のボトム側の形状が異なっている。
【0094】
具体的には、ボトム側の手動弁部7i′は、ロッド側の手動弁部7iに比べ、外側形状については、ツバ部7j、雄ネジ部7q、六角穴7sが共通し、中間部7kがなく、通路部7m′がこの中間部7kの無い分だけ延長されてツバ部7jの首下に達するものとなっている。
【0095】
内側形状については、共通で、同じ弁収容孔7r、作動油通路穴7pを備えている。
【0096】
手動弁部7i′の通路部7m′の外周には、手動弁部7i′が弁収容部7a′のボトム側に収容された状態(図の状態)で、弁収容部7a′に設けられた作動油通路73との作動油の流通を可能とするリング油溝7n′が設けられ、これに連通する作動油通路7oは手動弁部7iと共通する。
【0097】
弁収容部7a′のボトム側は、ロッド側に比べ、中間孔7c、凹孔7dがなく、その分、通路孔7eが延長されて、手動弁部7i′の通路部7m′対応して、開口孔7bにまで達している。
【0098】
図1の弁収容部7aの中央部分の対向するスプリング孔7gと、これらを連通させる連通孔7hは、この図4の弁収容部7a′では、スプリング孔7gの内径のままで貫通した連通孔7h′となっており、この連通孔7h′、左右のリリーフ弁体7tのスプリング穴7yに、複合弁7で用いられた一対のスプリング7zを繋げて、更に、元の連通孔7hの長さ分だけ長いスプリング7z′が収容されている。
【0099】
リリーフ弁体7tは複合弁7と同じものであって、スプリング7z′に付勢され通常は、それぞれボトム側、ロッド側の手動弁部7iの作動油通路穴7pを図4(a)に示すように閉止している。
【0100】
このような構成の複合弁7′において、ロッド側の手動弁部7iを手動操作して開くと、図4(b)のような状態となる。
【0101】
この際、図2と同様にスプリング7z′が自然長を越えた状態となって、ロッド側のリリーフ弁体7tへの付勢力が効かなくなると同時に、ボトム側のリリーフ弁体7tへの付勢力も効かなくなり、油圧シリンダ2のロッド側だけでなくボトム側の作動油もタンク3へ逃がすことが可能となり、手動で油圧シリンダ2を伸び出す方向、押し込む方向の双方に動かすことができ、非常用手動弁の機能をより良く発揮する。
【0102】
この際、ボトム側の手動弁部7i′は操作する必要がないので、脱落の問題は生ぜず、ロッド側の手動弁部7iには、弁体脱落防止手段となるストップリング72が装着されているので、脱落することがなく、この点では、複合弁7と同様の効果を維持している。
【0103】
こうして、この複合弁7′、油圧駆動ユニット10′によれば、図1〜3の複合弁7、油圧駆動ユニット10の効果に加え、上記複合弁7′の効果を、弁およびユニットとしてとして発揮する。
【0104】
また、以下の実施例4から9で用いる複合弁7の変わりに、この実施例3の複合弁7′を用いることができ、その場合にも、上記複合弁7′の効果を弁及びユニットとして発揮する。
【実施例4】
【0105】
図5は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0106】
この油圧駆動ユニット10Aは、図1〜図3の油圧駆動ユニット10に比べ、複合弁7を備えている点は共通するが、オペレートチェック弁4Aが切換弁を吸収一体化しない点、切換弁5Aをポペット式とした点が異なり、このポペット式の切換弁5Aが特徴点となっている。
【0107】
オペレートチェック弁4Aは、弁収容部4a、この弁収容部4a内の中央部に収容されたパイロット部45i、このパイロット部45iを挟み込んで相互に対向するように収容された一対のチェック弁4bを備えている。
【0108】
弁収容部4aは、この例では筒状体の収容筒4aaと、その両端開口を油密に閉止する収容筒蓋4abとから構成される。
【0109】
この弁収容部4aは、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、弁収容部4aの内部収容空間が形成されるようにするものも含まれる。オペレートチェック弁4Aが単体として用いられる場合は、このような弁収容部4aを用いるのが望ましい。
【0110】
この弁収容部4aの収容筒4aaの内部収容空間にパイロット部45iと一対のチェック弁4bが油密に収容されている。
【0111】
パイロット部45iは、収容筒4aaの内部収容空間の中央に隙間なく収容された円筒状のスプール筒45jと、このスプール筒45jの内部円柱空間にスライド可能に収容されたパイロットスプール45lとを備えている。
【0112】
スプール筒45jには、その筒部に油圧ポンプ1の二つポートへの管路と接続され、かつ、切換弁5Aの二つの開口5ccへの管路とも接続され、これらの管路、つまり、油圧ポンプ1、切換弁5Aとの間の作動油の流通を可能とする四つの開口45kが設けられている。
【0113】
スプール45lは、外径がスプール筒45j内周にスライド可能とされた円柱体45laの両端に小径のパイロット突起45lbがそれぞれ設けられた構造である。スプール筒45j内は、スプール45lによって仕切られ、それぞれの開口45kに通じた二つ油室が形成されている。
【0114】
このような構成で、パイロットスプール45lは、常時、油圧ポンプ1、タンク3相互間の作動油の流通を許可しながら、油圧ポンプ1が回転すると、その吐出側と接続された油室の油圧がより高くなるので、これにより、非吐出側へと移動するようになっている。
【0115】
つまり、パイロット部45iは、図11の油圧駆動ユニットにおけるパイロットラインOCbの機能を発揮している。
【0116】
一対のチェック弁4bは、相互にまったく同じもので構成され、弁座体4cと、この弁座体4c内でスライドする弁体4dと、この弁体4dを常時閉方向に付勢するスプリング4hとを備えている。
【0117】
弁座体4cは、一方がより小さい開口である弁座穴4cbとなっている筒状体であり、その弁座穴4cb側近辺の筒部に油圧シリンダ2のロッド側油室2b(反対側では、ボトム側油室2a)への管路との作動油の流通を可能とする開口4caが設けられている。
【0118】
弁体4dは先端が円錐状の弁部4eとして閉止され、他方開口となっている筒状体であり、その内筒部4fに、上記スプリング4hが収容され、このスプリング4h後端と弁座体4cの後端を弁収容部4aの収容筒蓋4abが規制している。
【0119】
弁座体4cの弁座穴4cbが、スプリング4hで付勢された弁体4dの弁部4eにより閉止されている。
【0120】
弁体4dの弁部4e終了端より後方には、開口4caから流通してきた作動油を内筒部4fへも流通させる開口4gが設けられている。
【0121】
このチェック弁4bの機能、効果は、図11で説明したオペレートチェック弁OCに内蔵されたチェック弁OCaと同じであり、結局、このオペレートチェック弁4Aは、全体として、図11のオペレートチェック弁OCと同一の機能、効果を発揮する。
【0122】
切換弁5Aは、図11の切換弁OIと同じ役割を持つものであるが、弁の構造がポペット式である点を特徴とする。
【0123】
その構成は、一対の全く同じものを対向させて、弁収容部51内の中央部分に収容したものであり、それぞれ弁座筒5c、この弁座筒5c内でスライドする弁体5d、弁体5dを相互に相手方方向へ付勢するスプリング5eを備えている。
【0124】
弁収容部51は、筒状体の収容筒51aと、その両端開口を油密に閉止する収容筒蓋51bとから構成され、この収容筒51aの内部収容空間に一対の弁座筒5cが油密に収容されている。
【0125】
この弁収容部51は、ここでは、説明を解りやすくするために、筒状の別個独立の部品として示しているが、実際の油圧駆動ユニットにおいては、ユニット全体の構造体の一部分として構造体の中に組み込まれ、その内部に、弁収容部51の内部収容空間が形成されるようにするものも含まれる。切換弁5Aが単体として用いられる場合は、このような弁収容部51を用いるのが望ましい。
【0126】
弁座筒5cは、内周側が1段の段付きとなった筒状体であり、その外周は収容筒51aの内周に隙間なくまた油密に嵌合している。内周側は小径部5caと大径部5cbで構成され、この小径部5caが対向する弁座筒5cの小径部5caと連接するようになっている。大径部5cbの最も小径部5ca寄りの周壁には、油圧ポンプ1への管路との作動油の流通を可能とする開口5ccが設けられ、小径部5caの周壁には、タンク3への管路との作動油の流通を可能とする開口5cdが設けられている。
【0127】
弁体5dは、円板の両側中心の一方に一段の段付き突起を設けた形状であり、この円板部5daの外径が弁座筒5cの大径部5cbの内周に対してスライド可能とされている。
【0128】
段付き突起は、最先端の小径部5db、これに続くより大径の中径部5dc、これに続く弁勾配部5ddから構成され、中径部5dcが弁座筒5cの小径部5caに対して所定の隙間をもって嵌合し、弁勾配部5ddが弁座筒5cの小径部5caから大径部5cbへの段縁に当接して、双方間の作動油の流通を完全に阻止するようになっており、これがポペット式と称される由縁である。
【0129】
円板部5daには、段付き突起側から突起なし側への作動油の流通を可能とする貫通孔5deが設けられている。
【0130】
なお、弁体5dは、その小径部5dbの先端が、対向する弁体5dの小径部5dbの先端と当接するように弁座筒5cに組み込まれている。
【0131】
スプリング5eは、弁体5dの後面と弁収容部51の収容筒蓋51bとの間に挿入されている。
【0132】
この切換弁5Aは、一対のポペット弁(弁座筒5cと弁体5d)を同軸状に対向配置させ、一方のポペット弁の閉方向作動により、他方のポペット弁が開方向作動し得るように構成したものであり、このような構成の切換弁5Aの機能を以下に説明する。
【0133】
この図5自体は静止状体、つまり、油圧ポンプ1が回転していない状態を示しており、この状態では、油圧ポンプ1側からは作動油に圧力は付加されず、油圧ポンプ1とオペレートチェック弁4Aのパイロット部45iの両側内部油室に間に含まれる作動油、切換弁5Aの内部油室とタンク3との間に含まれる作動油は静止している。
【0134】
オペレートチェック弁4Aの左右のチェック弁4bは、スプリング4hの付勢力により閉止されており、油圧シリンダ2のボトム側油室2a、ロッド側油室2bのいずれからの作動油もチェック弁4bで閉止され、油圧シリンダ2の静止状態が維持される。
【0135】
ここで、油圧ポンプ1がボトム側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、この油圧により、ボトム側のチェック弁4bが開き、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに作動油が供給され、同時にパイロット部45iのパイロットスプール45lもこの油圧により図の右方、ロッド側へ移動し、そのロッド側の外軸部45lbがロッド側のチェック弁4bを開いて、油圧シリンダ2のロッド側油室2bからの作動油の流れを許容して、油圧シリンダ2に伸び方向への駆動力を発生させる。
【0136】
これと同時に、切換弁5Aのボトム側弁体5dが図の右方、ロッド側へ移動し、ロッド側の弁体5dをロッド側へ移動させ、ボトム側弁体5dの段付き突起側の油室は、弁座筒5cの開口5cdを介して、タンク3とも作動油の流通が可能となっており、油圧シリンダ2のボトム側油室2aに対するロッド側油室2bの作動油量の不足分がタンク3から供給される。
【0137】
一方、油圧ポンプ1がロッド側ポートへ作動油を吐出するように回転すると、オペレートチェック弁4Aの一対のチェック弁4b、パイロット部45iと、切換弁5Aは、上記と逆の作動をし、油圧シリンダ2に縮み方向への駆動力を発生させ、その際の余分の作動油は、ボトム側弁体5dにおいてタンク3への作動油の流通が可能とされ、タンク3へ戻される。
【0138】
上記、いずれの駆動の場合にも、切換弁5Aの弁体5dと弁座筒5cとの間の閉止がポペット式として構成され、作動油の流れを完全に閉止でき、図11のようなスプール式の切換弁65に比べ、ボトム側とロッド側及びタンク間のリークを防止でき、ポンプ効率を向上させることができる。
【0139】
また、切換弁5Aの弁体5dの中径部5dcの外径と弁座筒5cの小径部5caとの間の所定の隙間は、この両者間を通過する作動油の量を適度に絞ることで、段付き突起側だけ中径部5dcの面積にタンク3側の油圧が作用するようにし、弁体5dの円板部5daの両面に作用する力のうち、相対的に段なし側に作用する力を大きくして、切換作用が発揮されるようにしている。
【0140】
また、スプリング5eは常時、対向する弁体5dを中央(対向)方向に付勢し、双方の弁体5dともその中径部5dcが弁座筒5cの小径部5caに係入し(図示の状態)、上記切換作用が発揮され得る待機状態、を維持する待機状態維持手段を構成するものである。
【0141】
このような待機状態維持手段としては、この例のスプリングに限られず、弾性的な付勢力を発生し、かつ、作動油に耐性のあるもの、例えば、耐油性ゴム、耐油性弾性合成樹脂などであってもよい。
【0142】
上記、図5で説明した切換弁5Aは、それぞれ油圧駆動ユニット10の部品として上記機能、効果を発揮すると共に、正逆双方向の作動油の流れを制御するためにオペレートチェック弁と組み合わせて用いられる切換弁としても上記機能、効果を発揮する。
【0143】
また、そのような切換弁5Aを備えた油圧駆動ユニット10は、上記複合弁7の効果に加え、これらの機能、効果をユニットとして発揮する。
【実施例5】
【0144】
図6(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図、(c)は(b)のAA矢視図である。
【0145】
この油圧駆動ユニット10Bは、図5の油圧駆動ユニット10Aに比べ、複合弁7を備えている点は共通しているが、切換弁5Bがポペット式ではなく、従来用いられていたスプール式である点、オペレートチェック弁4Bが、固定式のスローリターン弁を吸収一体化したものである点が異なっており、このオペレートチェック弁4Bを特徴としている。
【0146】
オペレートチェック弁4Bは、弁収容部4a、この弁収容部4a内の中央部に収容されたパイロット部45m、このパイロット部45mを挟み込んで相互に対向するように収容された一対のチェック弁4iを備えている。
【0147】
この弁収容部4aの収容筒4aaの内部収容空間にパイロット部45mと一対のチェック弁4iが油密に収容されている。
【0148】
パイロット部45mは、収容筒4aaの内部収容空間の中央に隙間なく収容された円筒状のスプール筒45nと、このスプール筒45nの内部円柱空間にスライド可能に収容されたパイロットスプール45p及び移動規制手段45oとを備えている。
【0149】
スプール筒45nには、その筒部に油圧ポンプ1の二つポートへの管路と接続され、かつ、切換弁5Bの二つの開口5faへの管路とも接続され、これらの管路、つまり、油圧ポンプ1、切換弁5Bとの間の作動油の流通を可能とする四つの開口45kが設けられている。また、移動規制手段45oは、このスプール筒45nの内周にストップリングとして設けられている。
【0150】
スプール45pは、外径がスプール筒45n内周にスライド可能とされた円柱体45paの両端に小径のパイロット突起45pbがそれぞれ設けられた構造である。スプール筒45n内は、スプール45pによって仕切られ、それぞれの開口45kに通じた二つ油室が形成されている。
【0151】
このパイロット突起45pbの長さは、チェック弁4iを構成する弁体4jの先端突部4kaを押し込んで、チェック弁をパイロット開する程度のものである。
【0152】
移動規制手段45oは、パイロットスプール45pのパイロット移動量、つまり、ポンプ1から吐出する作動油に押されて反吐出側に移動する際のチェック弁4iの移動量を、チェック弁4iの弁体4j先端の絞り通路4kcが機能する範囲に規制するものであり、これによりスローリターンの絞り機能が発揮される。
【0153】
このパイロット部45mの基本構成は、移動規制手段45oを除けば、図5で説明したオペレートチェック弁4Aに内蔵されたパイロット部45iと同じ構成であり、同じ機能、効果、つまり、パイロット機能を発揮する。
【0154】
一対のチェック弁4iは、相互にまったく同じもので構成され、弁座体4cと、この弁座体4c内でスライドする弁体4iと、この弁体4iを常時閉方向に付勢するスプリング4hとを備えている。
【0155】
弁座体4cは、一方がより小さい開口である弁座穴4cbとなっている筒状体であり、その弁座穴4cb側近辺の筒部に油圧シリンダ2のロッド側油室2b(反対側では、ボトム側油室2a)への管路との作動油の流通を可能とする開口4caが設けられている。
【0156】
弁体4jは先端が円錐状の弁部4kとして閉止され、他方開口となっている筒状体であり、その内筒部4fに、上記スプリング4hが収容され、このスプリング4h後端と弁座体4cの後端を弁収容部4aの収容筒蓋4abが規制している。
【0157】
弁座体4cの弁座穴4cbが、スプリング4hで付勢された弁体4dの弁部4kにより閉止されている。
【0158】
弁体4jの弁部4k終了端より後方には、開口4caから流通してきた作動油を内筒部4fへも流通させる開口4gが設けられている。
【0159】
このチェック弁4jの基本構成、機能、効果は、図5で説明したオペレートチェック弁4Aに内蔵されたチェック弁4bと同じであるが、その弁体4jの円錐状の弁部4kの先端側が一段の段付き突起となっている点は異なる。
【0160】
この段付き突起の先端突部4kaは、油圧ポンプ1から吐出される作動油に押されて、弁体4jが最後端(弁体4jの後端が収容蓋4abに当接する状態)となった際に、弁座穴4cbに位置する状態になり、弁4iを全開する。
【0161】
先端突部4kaに続く段部4kbは、その外径が弁座穴4cbの内径に対してスライド可能で作動油の流通は阻止する程度のものとなっており、その幅は、チェック弁4iの全閉からパイロット部45mのパイロット作用により開かれる開度まで弁座穴4cbに対して、下記の固定絞り通路4kcによるもの以外の作動油の流通を阻止するものとなっている。
【0162】
この段部4kbには、その前端から円錐勾配に達する位置まで、その外周から一定深さの固定絞り通路4kcが設けられ、チェック弁4iがパイロット作用により開かれている間、所定流量の作動油の逆流を許可するものである。
【0163】
この固定絞り通路4kcは、チェック弁4iの中に組み込まれることで、油圧ポンプ1から油圧シリンダ2への作動油の流入は許可し、このチェック弁4iがパイロット作用により所定開度開いて、油圧シリンダ2から油圧ポンプ1への作動油の逆流を許容する場合に、この絞り通路4kcの分だけ油圧シリンダ2から油圧ポンプ1への作動油の流れを許可するものであり、図11のスローリターン弁SRの役割をも果たすことができるようになっている。
【0164】
なお、チェック弁に固定絞りを設ける方法は、上記のような固定絞り通路4kcとする他、この通路面積に相当するように、段部の外径を、チェック弁4iの弁座穴4cbの内径に対して小さくする方法でもよい。
【0165】
切換弁5Bは、弁収容部51と、この弁収容部51内に隙間なく収容された円筒状のスプール筒5fと、このスプール筒5fの内部円柱空間にスライド可能に収容されたスプール5gとを備え、図5の切換弁5Aと同じ機能を発揮するもので、その弁収容部51は共通するが、この弁収容部51に収容された弁が従来用いられているスプール式となっている点が異なっている。
【0166】
弁収容部51を構成する収容筒51a、収容筒蓋51bは、図5の弁収容部51と共通する。
【0167】
スプール筒5fには、その筒部にオペレートチェック弁4Bからの二つの管路と接続され、これらの管路との間で作動油の流通を可能とするための二つの開口5faと、この二つの開口5faに干渉せず、かつ両開口5faのスプール筒5fの筒軸方向の中央となる位置に、タンク3への管路との作動油の流通を可能とする開口5fbとが設けられている。
【0168】
スプール5gは、二つの円板をこの円板の外径より小さい外径の円柱体で串刺しにした形状をしており、この円板部5gbの外径がスプール筒5fの内周に対してスライド可能となる程度の外径となっている。
【0169】
この二つの円板部5gb相互間の距離は、図示するように、スプール5gが中央に位置した際に、上記二つのオペレートチェック弁4B側の開口5faとタンク3側への開口5fbとの間の作動油の流通を阻止するものとなっている。また、どちらか一方向に、例えばボトム側にスプール5gがスライドした場合には、二つのオペレートチェック弁4B側の開口5faの内ボトム側だけと、タンク3側への開口5fbとの作動油の流通を許可するものとなっている。
【0170】
円柱体の二つの円板部5gbに挟まれる中軸部5gcの外径は、スプール5g全体の構造的強度を保持する程度以上に太く、また、その外周とスプール筒5f内周との間に作動油が抵抗なく流通する程度以上に細くなっている。
【0171】
円板部5gbの外側に伸び出している外軸部5gaの突出長さは、その先端が弁収容部51の例えばボトム側の収容筒蓋51bに当接した際に、オペレートチェック弁4B側の開口5faのボトム側だけと、タンク3側への開口5fbとの間の作動油の流通を維持するものとなっている。
【0172】
スプール5gを構成する上記各部は、相互に固定され、全体が一体的にスライドするものである。
【0173】
このような構成で、スプール5gは、円板部5gbの上記機能に加え、一方の外軸部5gaに油圧ポンプ1の吐出側のより高圧な作動油が供給されている場合は、非吐出側へ移動し、油圧ポンプ1の吸込側とタンク3を結ぶ。油圧ポンプ1の回転が逆になり、吐出側と吸込側が逆になった場合には、スプール5gは上記と逆の作動をする。
【0174】
このような構成で、この油圧駆動ユニット10Bを構成するオペレートチェック弁4B、切換弁5Bは、従来例である図11の油圧駆動ユニットOUを構成するオペレートチェック弁OC、切換弁OIと同一の機能、効果を発揮する。
【0175】
加えて、このオペレートチェック弁4Bには、固定絞り通路4kcと移動規制手段45oとの共働により、チェック弁4iがパイロット開している間、油圧アクチュエータ2から流出する作動流体の流量をこの固定絞り通路4kcの分だけに制限つまり調節する機能を発揮する。
【0176】
つまり、本発明のオペレートチェック弁4Bは、これまでの固定式のスローリターン弁を吸収一体化したものであり、これにより、オペレートチェック弁の多機能化が図れ、別個にスローリターン弁を設けるスペース、費用、スローリターン弁とチェック弁とを接続する管路などが不要になる。また、このようなオペレートチェック弁4Bを備えた油圧駆動ユニット10としては、複合弁7を備えた効果に加え、その機能を維持しながら、装置のコンパクト化、コストダウンを更に図ることができる。
【0177】
なお、このユニット10Bで用いている切換弁5Bを、図5のポペット式の切換弁5Aとすることもでき、その場合には、図5のユニット10Aと同様に、ポペット式の切換弁5Aの効果を発揮する。
【実施例6】
【0178】
図7(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図である。
【0179】
この図7に示す油圧駆動ユニット10Cは、図6の油圧駆動ユニット10Bに比べ、複合弁7を備え、オペレートチェック弁4Cにスローリターン弁を収容した点では共通するが、そのスローリターン弁が、スローリターンの絞り量を変化させることのできない固定式ではなく、その絞り量を変化させることができる可変式である点が異なっている。
【0180】
具体的には、本ユニット10Cと図6のユニット10Bとで、複合弁7、切換弁5B、オペレートチェック弁4B、4Cの中央に収容されたパイロット部45mは共通する。
【0181】
異なるのは、一対のチェック弁4lが、可変絞りを備え、オペレートチェック弁4Cの弁収容部4a′に対して出し入れ調整可能となっている点である。以下、説明する。
【0182】
このチェック弁4lは、図6のチェック弁4iに比べ、弁座体4mが弁収容部4a′に対して出し入れ調節可能に収容されている点、弁体4nの弁部4oに絞り勾配部4oaが設けられている点が異なっている。
【0183】
弁座体4mのパイロット部45m側部分は、図6のチェック弁4iの弁座体4cと共通する。
【0184】
弁座体4mの反パイロット部45m側部分には、内周にスプリング4hの後端を規制する円板4ma、この円板4maの位置決めをするストップリング4mb、弁座体4mの後方開口を油密に閉止する蓋4mcが備えられ、外周に雄ねじ4mdが形成され、この雄ねじ4mdには、止めナット4meが外嵌されている点で異なっている。
【0185】
弁収容部4a′は、図6の弁収容部4aに比べ、収容筒蓋4abがなく、代わりに、収容筒4aa′の両端開口内部に、弁座体4mの雄ねじ4mdに対応した雌ねじ4acが形成されている点が異なっている。
【0186】
これにより、弁座体4mの雄ねじ4mdを弁収容部4a′の雌ねじ4acにネジ嵌合させ、その任意の位置での嵌合状態を止めナット4meで固定することができる。
【0187】
弁部4oの絞り勾配部4oaは、弁部4oの閉止のための円錐勾配に比べ、より緩やかなものとなっている。その先端の突起4obは、図6のチェック弁4iの突起4kaと同じものである。
【0188】
このような構成で、このチェック弁4lを備えたオペレートチェック弁4Cによれば、スローリターン機能を発揮するだけでなく、弁体4nを収容した弁座体4mの出し入れ位置を調節することで、弁部4oの絞り勾配部4oaのどの部分で、スローリターンの絞りが発揮されるかを調節することができ、可変絞りとなっている。
【0189】
また、この絞り勾配部4oaの勾配をより緩やかなものとすることで、可変絞りの調節をより微妙に調節できるようにすることができる。
【0190】
可変絞りは、この例のような円錐の勾配により実現可能であるが、図6で示したチェック弁4iの弁体4j先端の固定絞り通路4kcを、弁体の軸方向にその断面積が変化するような変化絞り通路としてもよい。
【0191】
このオペレートチェック弁4Cは、可変式のスローリターン弁を一体化した点を特徴とし、それらの効果をチェック弁4C、ユニット10Cとして発揮する。また、ユニット10Cとしては、複合弁7を備えているので、その効果をも、ユニットとして発揮する。
【0192】
このユニット10Cでも、スプール式の切換弁5Bを図5のポペット式の切換弁5Aとすることができる点は、図6のユニット10Cと同様である。
【0193】
また、上記実施例5,6では、固定式あるいは可変式の絞りをチェック弁側に設けているが、本出願と同一出願人による特願2004−291251号で示したように、その絞りをパイロット部側に設けるようにすることもできる。
【実施例7】
【0194】
図8は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0195】
この油圧駆動ユニット10Dは、図5の油圧駆動ユニット10Aに比べ、複合弁7、オペレートチェック弁4Aは共通するが、切換弁5Cがポペット式ではなく、スプール式であって、リリーフ弁を吸収一体化したものである点が異なり、特徴となっている。
【0196】
切換弁5Cは、弁収容部51と、この弁収容部51内に隙間なく油密に収容された円筒状のスプール筒5fと、このスプール筒5fの内部円柱空間にスライド可能に収容されたスプール5hとを備えている。
【0197】
弁収容部51を構成する収容筒51a、収容筒蓋51b、スプール筒5fを構成する二つの開口5fa、タンク3への開口5fbは、それぞれ図6の切換弁5Bの相当部品と同じものである。
【0198】
異なるのは、リリーフ弁機能を備えたスプール5hであり、このスプール5hは、二枚の円筒板5ha、この円筒板5haに挟まれて円筒板5haを相互に離れるように付勢するスプリング5hb、円筒板5haが相互に離れる範囲を規定するストップリング5hc、これらの円筒板5ha、スプリング5hb、ストップリング5hcの中心を貫通する貫通軸5hdとを備えている。
【0199】
円筒板5haの外径は、スプール筒5fの内径にスライド可能となっており、円筒板5haの内径は貫通軸5hdの外径にスライド可能となっている。スプリング5hbは貫通軸5hdの二枚の円筒板5haの間に外嵌される。ストップリング5hcは、貫通軸5hdの所定位置に設けられた溝に嵌められ、円筒板5haがスプリング5hbに付勢され相互に離れる最大範囲を規定する。
【0200】
貫通軸5hdの両端は、対向する収容筒蓋51bに当接する。
【0201】
スプリング5hbに付勢され、ストップリング5hcによる規制位置で相互に離れた状態の二枚の円筒板5haは、図6の切換弁5Bのスプール5gの二つの円板部5gbと同じ位置関係にあり、同様の機能を発揮し、通常は、このスプール5hを備えた切換弁5Cも、図6の切換弁5Bと同様の機能、効果を発揮する。
【0202】
油圧ポンプ1が作動中で、スプール5hで仕切られた両側の油室のうち、ポンプ1の吐出側ポートと流通しタンク3と流通していない吐出側油室に、なんらかの理由で所定以上の高圧が生じた場合、この吐出側の円筒板5haが反吐出側方向へスプリング5hbの付勢力に抗して移動し、タンク3への開口5fbを通過するようになり、その高圧の作動油がタンク3に戻される。
【0203】
こうして、この構成のスプール5hによって、図11の油圧駆動ユニットOUのリリーフ弁RV2の機能も実現され、このリリーフ弁RV2が切換弁5Cに吸収一体化されたことになり、油圧駆動ユニット10Dとしては、複合弁7の効果に加え、更に、コストダウン、省資源、コンパクト化という効果を発揮する。
【0204】
また、切換弁5Cとしては、多機能化、省スペース、省資源、コストダウンという効果を発揮する。
【実施例8】
【0205】
図9は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0206】
この油圧駆動ユニット10Eは、図8の油圧駆動ユニット10Dに比べ、複合弁7を備えている点では共通するが、リリーフ弁を吸収一体化したのが、切換弁5Bではなく、オペレートチェック弁4Dである点が異なっている。
【0207】
つまり、このオペレートチェック弁4Dに収容されたチェック弁4bは、図8と共通するが、中央のパイロット部46が、リリーフ弁を吸収一体化したものとなり、切換弁5Bからは、リリーフ弁機能が排除され、図6の切換弁5Bと同じものとなっている。
【0208】
切換弁5Bは、図6の切換弁5Bと共通し、各部分、弁収容部51(収容筒51a、収容筒蓋51b)、スプール筒5f(開口5fa、開口5fb)、スプール5g(外軸部5ga、円板部5gb、中軸部5gc)もそれぞれ対応部分と共通し、その機能、効果も同一である。
【0209】
パイロット部46はスプール筒46aとスプール46dとを備えている。
【0210】
スプール46dは、その全体形状は、図5のパイロット部45iと同様であり、同様の位置に同様の機能を果たす二つの開口46bを備えている。異なるのは、この二つの開口46bに干渉しないように、スプール46dの筒軸方向の中心部に、タンク3への管路に接続された開口46cを備えている点である。
【0211】
リリーフ弁機能を備えたスプール46dは、二枚の円筒板46e、この円筒板46eに挟まれて円筒板46eを相互に離れるように付勢するスプリング46f、円筒板46eが相互に離れる範囲を規定するストップリング46g、これらの円筒板46e、スプリング46f、ストップリング46gを貫通する貫通軸46hとを備えている。
【0212】
円筒板46eの外径は、スプール筒46aの内径にスライド可能となっており、円筒板46eの内径は貫通軸46hの外径にスライド可能となっている。スプリング46fは貫通軸46hの二枚の円筒板46eの間に外嵌される。ストップリング46gは、貫通軸46hの所定位置に設けられた溝に嵌められ、円筒板46eがスプリング46fに付勢され相互に離れる最大範囲を規定する。
【0213】
貫通軸46hの両端は、対向するチェック弁4bを構成する弁体4dの弁部4eに当接し、この弁体4dを押し開き、作動油の流通を可能とする。
【0214】
スプリング46fに付勢され、ストップリング46gによる規制位置で相互に離れた状態の二枚の円筒板46eは、パイロット機能を発揮している通常の作動の間は、そのパイロット移動のどの位置にあっても、油圧ポンプ1への二つの開口46bとタンク3への開口46c間の作動油の流通を許可しないものとなっており、作動油は、開口46bを介して、油圧ポンプ1と切換弁5Bとの間を、それぞれ油圧ポンプ1の吐出側、吸込側とで混じり合わない状態で流通する。
【0215】
油圧ポンプ1が作動中で、スプール46dで仕切られた両側の油室の一方、例えば、吐出側の作動油に押されてスプール46dが最も反吐出側へパイロット移動している際、なんらかの理由で所定以上の高圧が生じた場合、この吐出側の円筒板46eが反吐出側方向へスプリング46fの付勢力に抗して移動し、タンク3への開口46cを通過するようになり、その高圧の作動油がタンク3に戻される。
【0216】
こうして、この構成のパイロット部46によって、図11の油圧駆動ユニットOUのリリーフ弁RV2の機能も実現され、このリリーフ弁RV2がオペレートチェック弁4Dに吸収一体化されたことになり、油圧駆動ユニット10Eとしては、複合弁7の効果に加え、更にコストダウン、省資源、コンパクト化という効果を発揮する。
【0217】
また、オペレートチェック弁4Dとしては、多機能化、省スペース、省資源、コストダウンという効果を発揮する。
【0218】
なお、この例においては、切換弁5Bを、一対のポペット弁を同軸状に対向配置させたポペット式の切換弁5A(図5参照。)とすることが可能で、その場合、このスプール式の切換弁5Bに比べ、弁体と弁座間の作動油の流れを完全に閉止でき、ボトム側とロッド側及びタンク間のリークを防止でき、ポンプ効率を向上させることができる。
【実施例9】
【0219】
図10は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図である。
【0220】
この油圧駆動ユニット10Fは、図1〜3のユニット10とは、複合弁7を備えた点、オペレートチェック弁4Eが切換弁5A′を吸収一体化した点で共通し、図5のユニット10Aとは、その切換弁5A′がポペット式となっている点で共通し、図7のユニット10Cとは、オペレートチェック弁4Eに可変式のスローリターン弁を吸収一体化した点で共通する。
【0221】
つまり、この油圧駆動ユニット10Fは、図11の油圧駆動ユニットのリリーフ弁RV1と非常用手動弁MVとを一体化した複合弁7を備えたことを基本としながら、オペレートチェック弁への切換弁の吸収一体化、切換弁のポペット化、オペレートチェック弁への可変式スローリターン弁の吸収一体化を同時に組み合わせたものである。
【0222】
具体的には、オペレートチェック弁4Eについては、弁収容部4a′とチェック弁4lとは、図7のオペレートチェック弁4Cと共通している。
【0223】
切換弁5A′については、図3のオペレートチェック弁4に収容された切換弁5が、図5の切換弁5Aの弁収容部51に収容されたものと共通のポペット式となっているものである。
【0224】
この際、図5の切換弁5Aにあるスプリング5eが不要となっているが、これは、切換弁5A′と組み合わされるチェック弁4lのスプリング4hが代替しているからである。
【0225】
こうして、このユニット10Fによれば、上記、種々の組み合わせの効果を相乗的に発揮する。
【0226】
なお、上記実施例1から9では、リリーフ弁、非常用手動弁を一体化して複合弁とすることを基本としながら、切換弁のオペレートチェック弁への吸収一体化、切換弁のポペット化、スローリターン弁のオペレートチェック弁への吸収一体化、リリーフ弁の切換弁、オペレートチェック弁への吸収一体化の種々の組み合わせについて説明したが、これらの組み合わせは、ここに例示したものに限られず、それ以外の組み合わせも可能であり、その場合には、組み合わせの相乗的効果を発揮する。
【0227】
また、油圧アクチュエータとしては、ここで説明する油圧シリンダ以外に、作動油の出入量の調整の問題は少ないが、油圧による駆動力をトルクとして出力する油圧ロータリアクチュエータも含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0228】
また、本発明の複合弁は、省スペース、コンパクト化が要請される一般の油圧回路、特に、油圧駆動ユニットにおいて、好適に用いられる。
【0229】
また、本発明の油圧駆動ユニットは、かかる複合弁を備えて、独立して被駆動体に油圧による駆動力を与え、コンパクト化が要請されるあらゆる産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0230】
【図1】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの一例を概念的に示す構成図
【図2】図1の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図
【図3】図1の油圧駆動ユニットにおいて、オペレートチェック弁の詳細構成を概念的に示した構成図
【図4】(a)は、本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は、(a)の油圧駆動ユニットにおいて複合弁の非常用手動弁が開作動している状態の構成図
【図5】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図6】(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図、(c)は(b)のAA矢視図
【図7】(a)は本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図、(b)は(a)のチェック弁要部詳細図
【図8】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図9】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図10】本発明の複合弁を備えた油圧駆動ユニットの他例を概念的に示す構成図
【図11】油圧駆動ユニットの基本的な構成を示す油圧回路図
【符号の説明】
【0231】
1 油圧ポンプ
2 油圧アクチュエータ
3 タンク
4〜4E オペレートチェック弁
4a 弁収容部
4b チェック弁
5〜5B 切換弁
7 複合弁
7a 弁収容部
7i 非常用手動弁の弁体
7t リリーフ弁の弁体
72 弁体脱落防止手段
10〜10F 油圧駆動ユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧回路で用いられ、作動流体を圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動する油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、前記油圧ポンプの停止時に前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁とを同軸上に一体化したことを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記複合弁に一体化された非常用手動弁の弁体が弁収容部から脱落するのを防止する弁体脱落防止手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の複合弁。
【請求項3】
独立して被駆動体に油圧による駆動力を与える油圧駆動ユニットにおいて用いられ、電動モータを備え作動流体を正逆双方向に圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動し、前記駆動力を発生させる油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁と、前記油圧アクチュエータとの間で用いられ、前記オペレートチェック弁と前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、
前記油圧ポンプの停止時に前記オペレートチェック弁と前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁とを一体化したことを特徴とする請求項1または2記載の複合弁。
【請求項4】
請求項3記載の複合弁を備えたことを特徴とする油圧駆動ユニット。
【請求項1】
油圧回路で用いられ、作動流体を圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動する油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、前記油圧ポンプの停止時に前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁とを同軸上に一体化したことを特徴とする複合弁。
【請求項2】
前記複合弁に一体化された非常用手動弁の弁体が弁収容部から脱落するのを防止する弁体脱落防止手段を設けたことを特徴とする請求項1記載の複合弁。
【請求項3】
独立して被駆動体に油圧による駆動力を与える油圧駆動ユニットにおいて用いられ、電動モータを備え作動流体を正逆双方向に圧送する油圧ポンプと、この作動流体により作動し、前記駆動力を発生させる油圧アクチュエータとの間に介在し、前記油圧ポンプと前記油圧アクチュエータとの間の作動流体の正逆双方向の流れを制御するオペレートチェック弁と、前記油圧アクチュエータとの間で用いられ、前記オペレートチェック弁と前記油圧アクチュエータとの間の作動流体が所定以上の高圧となった場合に、この作動流体をタンクに逃がすリリーフ弁と、
前記油圧ポンプの停止時に前記オペレートチェック弁と前記油圧アクチュエータとの間の作動流体を前記タンクに逃がすことを可能とする非常用手動弁とを一体化したことを特徴とする請求項1または2記載の複合弁。
【請求項4】
請求項3記載の複合弁を備えたことを特徴とする油圧駆動ユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−132604(P2006−132604A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−320165(P2004−320165)
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月4日(2004.11.4)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]