説明

複合菓子及びその製造法

【課題】 ビスケット、クッキー、クラッカー等の焼成菓子に、チョコレート等の油脂性菓子を強固に付着させた複合菓子及びその製造法を提供する。
【解決手段】 孔12を有する形状をなす焼成菓子11を作り、予め所定形状に成形された第1油脂性菓子13を焼成菓子11の下面に当接させて前記孔12を覆う。焼成菓子11の上面から前記孔12内に、溶融した第2油脂性菓子14を充填し固化させて、第1油脂性菓子13に第2油脂性菓子14を接合させる。その結果、第1油脂性菓子13と第2油脂性菓子14とが、焼成菓子11の孔12を通してリベット状に結合する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、焼成菓子と油脂性菓子とを接合してなる複合菓子及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】ビスケット、クッキー、クラッカー等の焼成菓子に、チョコレート等の油脂性菓子を付着させた製品が知られている。従来のこの種の製品としては、■焼成菓子の片面に凹部を設けて、溶融した油脂性菓子生地をその凹部に注入して固化させたもの、■油脂性菓子生地をまずモールドに充填し、油脂性菓子生地が固まる前に、焼成菓子を落として油脂性菓子生地に接触させ、冷却、固化して両者を接着させる方法(例えば特開平5−68480号参照)、■二枚の焼成菓子の間に溶融した油脂性菓子生地を挟んで、油脂性菓子生地を固化させることにより、二枚の焼成菓子を接合させる方法などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来のいずれの方法においても、油脂性菓子生地を焼成菓子に強固に接合させることができず、包装工程や輸送工程における取扱い中に剥離してしまうことがあった。また、油脂性菓子生地として、焼成菓子に接着しやすい材質のものを選択する必要があるため、チョコレート本来の風味や食感を有する生地を用いることが困難であった。
【0004】したがって、本発明の目的は、ビスケット、クッキー、クラッカー等の焼成菓子に、チョコレート等の油脂性菓子を強固に付着させた複合菓子及びその製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明の一つは、孔開き形状をなす焼成菓子と、この焼成菓子の一方の面に付着され、前記孔を覆う予め成形された第1油脂性菓子と、前記焼成菓子の他方の面から前記孔内に注入され、前記第1油脂性菓子に接合して固化した第2油脂性菓子とを有することを特徴とする複合菓子を提供するものである。
【0006】本発明のもう一つは、孔開き形状をなす焼成菓子を作る工程と、予め所定形状に成形された第1油脂性菓子を作る工程と、前記焼成菓子の一方の面に前記第1油脂性菓子を当接させて前記孔を覆う工程と、前記焼成菓子の他方の面から前記孔内に、溶融した油脂性菓子生地を充填し固化させて、前記第1油脂性菓子に一部が接合された第2油脂性菓子を作る工程とを含むことを特徴とする複合菓子の製造法を提供するものである。
【0007】なお、本発明の複合菓子の好ましい態様においては、前記孔が複数設けられ、前記第1油脂性菓子は、前記焼成菓子の一方の面において前記複数の孔を覆い、前記第2油脂性菓子は、前記焼成菓子の他方の面から前記複数の孔のそれぞれに充填されている。
【0008】また、本発明の複合菓子の製造法の好ましい態様においては、前記第1油脂性菓子を、完全に固まらない半固化状態で前記焼成菓子の一方の面に当接させ、その状態で前記溶融した油脂性菓子生地を充填する。
【0009】本発明によれば、焼成菓子の一方の面に当接された第1油脂性菓子に、焼成菓子の他方の面から孔内に充填された第2油脂性菓子が接合して一体化することにより、油脂性菓子が焼成菓子に機械的に結合して、強固に付着した製品を提供することができる。このため、包装工程や輸送工程における取扱い中に剥離してしまうことをほぼ確実に防止でき、また、食べる際にも両者が容易にばらけてしまうことを防止して、焼成菓子の食感、風味と、油脂性菓子の食感、風味とを同時に味わうことができる。
【0010】本発明の複合菓子の好ましい態様において、前記孔が複数設けられ、前記第1油脂性菓子と前記第2油脂性菓子とが複数の孔を通して接合している場合には、油脂性菓子と焼成菓子との接合力をより高めることができると共に、上記複数の孔に充填された第2油脂性菓子によって模様を構成し、デザインの多様化を図ることができる。
【0011】本発明の複合菓子の製造法の好ましい態様において、前記第1油脂性菓子を、完全に固まらない半固化状態で前記焼成菓子の一方の面に当接させ、その状態で前記溶融した油脂性菓子生地を充填する場合には、第1油脂性菓子と第2油脂性菓子との接着性を良好にすると共に、第1油脂性菓子と焼成菓子との接着性も良好にすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明において、焼成菓子としては、例えば、ビスケット、クッキー、クラッカー、ウエファース、乾パン、プレッツェル、パイ、カットパン等のいわゆるビスケット類が好ましく使用できる。この中でも、孔開き形状に作りやすいことから、ビスケットが好ましく、特にロータリービスケットが好ましい。
【0013】これらビスケット類の原料としては、特に限定されないが、小麦粉、糖類、食用油脂、食塩等が使用され、必要に応じて澱粉、乳製品、卵製品、膨脹剤、食品添加物等が使用される。また、クッキー等を作る場合には、ナッツ、乾果等を添加してもよい。
【0014】ビスケット類の製造は、目的とする種類に応じて常法に従えばよいが、本発明においては、孔開き形状に成形することが必要である。孔開き形状にする方法としては、孔開き形状となるような形に成形された型中に生地を充填して抜き出すことにより成形する方法や、シート状等に成形したものを孔開き形状に打ち抜いて成形する方法や、二重管状のノズル等から生地を円筒状等に押出し、所定の厚さでカットする方法などが採用できる。この孔は、1個でもよいが、比較的近接した位置に複数設けることもできる。こうして成形した生地を常法によって焼成することにより、本発明で用いる焼成菓子として好適なビスケット類を得ることができる。
【0015】一方、油脂性菓子としては、例えば、カカオマス、ココアパウダー、油脂類、糖類、粉乳、乳化剤、香料等を原料とするチョコレート生地が好ましく用いられる。ただし、本発明の油脂性菓子生地は、純チョコレート生地、準チョコレート生地に限らず、ココアバター代用脂等を用いた、法規上はチョコレートに分類されないような油脂性菓子の生地をも含む。好ましい原料配合としては、カカオマス及び/又はココア10〜40重量%、糖類20〜50重量%、粉乳5〜30重量%、ココアバター及び/又はココアバター代用脂20〜40重量%、乳化剤0〜1重量%、香料0〜1重量%が採用される。
【0016】第1油脂性菓子は、上記のような原料からなる油脂性菓子生地を型に充填し固化する等の方法で、予め所定形状に成形し固化ておく。この場合、焼成菓子との接着性を良好にするため、第1油脂性菓子が完全に固化する前に、焼成菓子と接合することが好ましい。
【0017】また、第2油脂性菓子生地としては、上記第1油脂性菓子と同じ原料配合からなるものを用いてもよいが、色や、風味、食感等が異なる別の原料配合からなるものを用いてもよい。色違いにした場合には、製品の外観に変化をもたらすことができる。
【0018】図1〜3には、上記のような焼成菓子と油脂性菓子を用いて製造した本発明の複合菓子の一実施形態が示されている。図1(a)は複合菓子の平面図、同図(b)は底面図、同図(c)は(a)のA−A’矢示線に沿った断面図である。また、図2は、焼成菓子に第1油脂性菓子を当接させる状態を示す説明図であり、図3R>3は、焼成菓子の他方の面から孔内に第2油脂性菓子を注入する状態を示す説明図である。
【0019】すなわち、図2に示すように、焼成菓子11を孔12を有する形状、この実施態様ではドーナツ状に成形し、第1油脂性菓子13を所定の形状、この実施態様では円板状に成形する。そして、第1油脂性菓子13が、好ましくは完全に固化しない半固化状態のとき、焼成菓子11を第1油脂性菓子13の上に載せ、焼成菓子11の下面において第1油脂性菓子13で孔12を覆わせる。
【0020】次いで、図3に示すように、焼成菓子11の上面から孔12内に、第2油脂性菓子生地を注入し、固化させて、第2油脂性菓子14を形成する。
【0021】なお、第2油脂性菓子14を注入するとき、第1油脂性菓子13が固化しすぎていると、第1油脂性菓子13と第2油脂性菓子14との接着性が悪く、第1油脂性菓子13が全く固化していないと、第2油脂性菓子14が、第1油脂性菓子13に混入したり、焼成菓子11と第1油脂性菓子13との隙間に流れ込んで、定量分注しても見かけのばらつきが生じやすくなる。
【0022】図1に示すように、こうして製造された複合菓子10は、焼成菓子11の下面に、第1油脂性菓子13が接合され、焼成菓子11の上面から孔12内に第2油脂性菓子14が充填され、第1油脂性菓子13と第2油脂性菓子14とが孔12を通して接合し、焼成菓子11にリベットのように機械的に結合した構造をなしている。
【0023】図4には、本発明の複合菓子の他の実施形態が示されている。図4(a)は複合菓子の平面図、同図(b)は底面図、同図(c)は(a)のB−B’矢示線に沿った断面図である。
【0024】この複合菓子20は、焼成菓子21が、平面的に見て動物、例えば牛の形状をなし、その内部に2つの孔22a、22bを有する。焼成菓子21の下面には、上記孔22a、22bを覆うように楕円形の第1油脂性菓子13が付着し、焼成菓子21の上面には、上記孔22a、22bのそれぞれに注入されて固化した第2油脂性菓子24a、24bが付着している。そして、第1油脂性菓子23と第2油脂性菓子24a、24bとが、孔22a、22bを通して接合し、焼成菓子21にリベットのように機械的に結合した構造をなしている。この複合菓子20では、2つの孔22a、22bに充填された第2油脂性菓子24a、24bが牛の腹の模様をなしており、デザイン化が図られている。
【0025】
【実施例】ビスケットにチョコレートを接合して、図5〜9に示すような複合菓子を製造した。図5〜8は比較例1〜4、図9は実施例に相当するものである。
【0026】焼成菓子としてのビスケット31としては、下記表1の配合の原料を混合し、ロータリーマシン等を用いて、図5〜9に示すような各種の形状に成形し、常法に従ってオーブンで焼成したものを用いた。
【0027】
【表1】


(表中、炭安は、炭酸水素アンモニウムを意味する。)
【0028】第1油脂性菓子としての第1チョコレート41としては、下記表2(a)の配合の原料を混合し、常法に従って微粒化、精練を行って調製したチョコレート生地を用いた。
【0029】第2油脂性菓子としての第2チョコレート42としては、下記表2(b)の配合の原料を混合し、常法に従って微粒化、精練を行って調製したチョコレート生地を用いた。
【0030】
【表2】


【0031】図5(比較例1)は、第1チョコレート41を型に注入し、完全に固化する前にビスケット31を載せて、第1チョコレート41とビスケット31とを接合したものである。
【0032】図6(比較例2)は、ビスケット31に凹部32を形成し、この凹部32に第1チョコレート41を流し込んで固化させたものである。
【0033】図7(比較例3)は、第1チョコレート41を成形し、この第1チョコレート41上に、溶融したチョコレート生地を少量載せ、その上にビスケット31を載せて接着したものである。
【0034】図8(比較例4)は、第1チョコレート41を型に注入し、完全に固化する前に上面に凹部32を有するビスケット31を載せて、第1チョコレート41とビスケット31とを接合し、更にビスケット31の凹部32内に第2チョコレート42を流し込んで固化させたものである。
【0035】図9(実施例)は、ビスケット31を孔開き形状に成形し、このビスケット31の下面に板状に成形した第1チョコレート41を当接し、ビスケット31の上面から前記孔内に第2チョコレート42を流し込んで固化させたものである。
【0036】こうして得られた比較例1〜4及び実施例の複合菓子について、剥離のしやすさ、手の汚れ、裏側の美観、風味を評価した。
剥離のしやすさは、○…剥離しない、△…少し剥離する、×…剥離しやすい、という基準で評価した。
手の汚れは、○…チョコレートを持たずに食べられる、×…チョコレートを持たないと食べられず、手が汚れる、という基準で評価した。
裏側の美観は、○…裏側に成形チョコレートの模様が見える、×…裏側にビスケットしか見えない、という基準で評価した。
風味は、○…ビスケットと、色の異なる2種類のチョコレートとの3種類の風味を同時に味わえる、△…ビスケットと、チョコレートとの2種類の風味を同時に味わえる、という基準で評価した。この結果を表3に示す。
【0037】
【表3】


【0038】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、焼成菓子の一方の面に当接された第1油脂性菓子に、焼成菓子の他方の面から孔内に充填された第2油脂性菓子が接合して一体化することにより、油脂性菓子が焼成菓子に機械的に結合して、強固に付着した製品を提供することができる。このため、包装工程や輸送工程における取扱い中に剥離してしまうことをほぼ確実に防止でき、また、食べる際にも両者が容易にばらけてしまうことを防止して、焼成菓子の食感、風味と、油脂性菓子の食感、風味とを同時に味わうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合菓子の一実施形態を示し、(a)は同複合菓子の平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のA−A’矢示線に沿った断面図である。
【図2】焼成菓子に第1油脂性菓子を当接させる状態を示す説明図である。
【図3】焼成菓子の他方の面から孔内に第2油脂性菓子を注入する状態を示す説明図である。
【図4】本発明の複合菓子の他の実施形態を示し、(a)は同複合菓子の平面図、(b)は底面図、(c)は(a)のB−B’矢示線に沿った断面図である。
【図5】ビスケットとチョコレートの複合菓子の第1比較例を示す断面図である。
【図6】ビスケットとチョコレートの複合菓子の第2比較例を示す断面図である。
【図7】ビスケットとチョコレートの複合菓子の第3比較例を示す断面図である。
【図8】ビスケットとチョコレートの複合菓子の第4比較例を示す断面図である。
【図9】本発明の複合菓子の実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
10、20 複合菓子
11、21 焼成菓子
12、22a、22b 孔
13、23 第1油脂性菓子
14、24a、24b 第2油脂性菓子
31 ビスケット
41 第1チョコレート
42 第2チョコレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 孔開き形状をなす焼成菓子と、この焼成菓子の一方の面に付着され、前記孔を覆う予め成形された第1油脂性菓子と、前記焼成菓子の他方の面から前記孔内に注入され、前記第1油脂性菓子に接合して固化した第2油脂性菓子とを有することを特徴とする複合菓子。
【請求項2】 前記孔が複数設けられ、前記第1油脂性菓子は、前記焼成菓子の一方の面において前記複数の孔を覆い、前記第2油脂性菓子は、前記焼成菓子の他方の面から前記複数の孔のそれぞれに充填されている請求項1記載の複合菓子。
【請求項3】 孔開き形状をなす焼成菓子を作る工程と、予め所定形状に成形された第1油脂性菓子を作る工程と、前記焼成菓子の一方の面に前記第1油脂性菓子を当接させて前記孔を覆う工程と、前記焼成菓子の他方の面から前記孔内に、溶融した油脂性菓子生地を充填し固化させて、前記第1油脂性菓子に一部が接合された第2油脂性菓子を作る工程とを含むことを特徴とする複合菓子の製造法。
【請求項4】 前記第1油脂性菓子を、完全に固まらない半固化状態で前記焼成菓子の一方の面に当接させ、その状態で前記溶融した油脂性菓子生地を充填する請求項3記載の複合菓子の製造法。

【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図4】
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