説明

複合部材及びその製造方法

【課題】織編物を簡素に基材に固定でき、意匠性に優れた複合部材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】複合部材は、第1の熱可塑性樹脂からなる基材1と、基材1の表面を被覆し基材1の表面に一部が固定された織編物2とからなる。織編物2は、主繊維と、主繊維よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなる融着部とから構成されており、融着部は主繊維とともに製織製編されるか又は主繊維を被覆している。基材1の表面には、織編物2の周縁部の少なくとも一部に沿って延びる周縁溝部10が形成されている。織編物2の周縁部の少なくとも一部の融着部は、周縁溝部10の溝壁面に溶着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合部材及びその製造方法に関し、特に織編物を基材表面に固定してなる複合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車室内には、織編物を樹脂製の部材に固定してなる内装部材が配設されている。例えば、図11に示すように、内装部材として、座席の背面に配設されてポケット部9を有するシートバック部材90がある。シートバック部材90は、シートバックボード92と、ネット状の織編物93と、押さえプレート94とで構成されている。図12に示すように、織編物93の周縁部は、シートバックボード92の裏面側に折り返されて裏面に接着されている。織編物93を配置したシートバックボード92の表面には、シートバックボード92の周縁を押さえる押さえプレート94が配置されて、この押さえプレート94とシートバックボード92とは織編物93を挟持した状態で押さえプレート94とシートバックボード92とを熱かしめで一体に固定されている。
【0003】
しかしながら、シートバック部材90にポケット部9を形成するために、織編物93とシートバックボード92と押さえプレート94との3部品を用いていた。このため、部品数が多かった。また、織編物93は、シートバックボード92の表面に配置し、その周縁部を裏面に折り返して接着していた。このため、織編物93のシートバックボード92への取付け作業に手間がかかっていた。
【0004】
また、図13に示すように、座席の背面に、ネット91の適宜拡張した形状を維持し、ネット91の節目91aにインサート成形されたフレーム98を取り付けてポケット部9を形成することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、ネット91の節目91aがインサートされるようにネット91の網目構造に合わせてフレーム98を設計する必要があった。このため、フレーム98の形状に制約があり、ポケット部9の意匠のデザイン自由度が制限されていた。
【0006】
また、車両の内装部材として、ドアトリムやコンソールリッドには、表面に織編物を固定することで意匠性を高める工夫がなされている。内装部材への織編物の固定方法としては、例えば、以下の3つがある。
【0007】
第1の方法は、図14に示すように、織編物93を、TPOやPVCなどのシート部材95に貼着し、賦形して賦形シート99となした後に、賦形シート99を、内装部材98の表面に接着する方法である。
【0008】
第2の方法は、図15に示すように、所望形状に裁断された織編物93を金型96の型面に配置した状態で、金型96のキャビティ97に樹脂を射出して内装部材を形成する方法である。
【0009】
第3の方法は、図16に示すように、金型96の割面に沿って織編物93を配置し、型締め後に金型96のキャビティ97に樹脂を射出して内装部材98を成形し、内装部材98からはみ出した織編物93のはみ出し分をカットする方法である。
【0010】
しかしながら、第1の方法では、織編物93を予め金型などで賦形する必要があり、手間がかかっていた。第2の方法では、金型96のキャビティ97内に織編物93を設置した状態で樹脂材料を射出すると、流動する樹脂材料により織編物93が正確な位置からずれたり、よじれたり、皺が生じたりするおそれがある。第3の方法では、内装部材98からの織編物93のはみ出し分を後工程でカットする必要があり、工数が余分にかかっていた。また、第1〜第3のいずれも方法でも、織編物の平面方向の全体の裏面側が内装部材に埋まった状態で固定される。このため、織編物が平面的な意匠として視認されてしまい、織編物が本来備えている立体感が損なわれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−335953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本願発明者は、部品点数が少なく簡素な方法でポケット部を作製でき、また内装部材の表面に織編物を簡素な製法で、しかも織編物の風合いを十分に残した状態で固定できる構成を鋭意探求した。
【0013】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、織編物を簡素に基材に固定でき、意匠性に優れた複合部材及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明の複合部材は、第1の熱可塑性樹脂からなる基材と、前記基材の表面を被覆し前記基材の表面に一部が固定された織編物とからなる複合部材であって、前記織編物は、主繊維と、前記主繊維よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなる融着部とから構成されており、前記融着部は前記主繊維とともに製織製編されるか又は前記主繊維を被覆しており、前記基材の表面には、前記織編物の周縁部の少なくとも一部に沿って延びる周縁溝部が形成されており、前記織編物の周縁部の少なくとも一部の前記融着部は、前記周縁溝部の溝壁面に溶着していることを特徴とする。
【0015】
上記構成によれば、基材は、第1の熱可塑性樹脂からなり、織編物は、主繊維と、主繊維よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなる融着部とから構成されている。この織編物を、基材の表面に配置して、基材に形成された周縁溝部に加熱しながら押し当てることで、織編物の周縁部が周縁溝部に進入する。織編物の周縁溝部に進入した部分の融着部が、主繊維を取り込んだ状態で周縁溝部の溝壁面に溶着する。このため、織編物は、周縁溝部の溝壁面に強固に接合される。
【0016】
また、織編物の周縁部以外の部分は、基材に固定されていない一般部をもつ。織編物の一般部は、基材の上に載置されているにすぎない織編物のように、織編物の全体が基材上に現れているため、織編物自体に形成されている凹凸模様や風合いをそのまま視認することができる。
【0017】
また、織編物の周縁溝部に進入していない一般部は、織編物の周縁溝部に進入した部分に対して、浮き上がって見える。
【0018】
このように、織編物は、それ自体の凹凸模様や風合いを維持しつつ、しかも基材表面に浮き上がったように立体的に見える。このため、本発明の複合部材は、見栄えがよく、意匠性に優れている。
【0019】
また、織編物の周縁部にほつれがある場合にも、基材に形成した周縁溝部に凹状に押し込められているため、織編物の周縁部のほつれが目立たない。しかも、織編物の周縁部では、融着部が主繊維を取り込んだ状態で溝壁面に溶着しているため、主繊維のほつれを防止することができる。
【0020】
また、織編物の周縁溝部への接合によって凹凸が形成される。この織編物の凹凸の配置は、基材表面に形成される周縁溝部の配置を種々に変えることで、自在に変えることができる。ゆえに、織編物の凹凸のデザインの自由度が高く、意匠性に優れている。
【0021】
また、基材と織編物の一般部との間には、隙間が形成されている。後述のように、織編物と基材との間に隙間に繋がる開口部を形成するか、又は織編物自体に開口部を形成することで、隙間を小物収容用のポケットとして使用することができる。
【0022】
また、基材の周縁溝部に、織編物を構成する融着部を溶着させることで複合部材が作製される。このため、部品点数が少なく、また工数も少なく抑えることができる。
【0023】
また、織編物は、融着部が主繊維とともに製織製編されるか又は主繊維を被覆することで一体品を構成している。この織編物を基材表面に配置し、織編物の周縁部を周縁溝部の溝壁面に加熱しながら押し当てることで溝壁面に溶着する。このため、従来のように2部材間への挟持や賦形などの作業をする必要がなく、織編物の基材表面への固定が容易である。
【0024】
(2)前記基材の表面に形成された前記周縁溝部は、前記織編物の周縁部の全体に沿って延びており、前記織編物の周縁部の全体に設けられた前記融着部は、前記周縁溝部の溝壁面に溶着していることが好ましい。織編物の周縁部の全体が周縁溝部の溝壁面に溶着することで、織編物の周縁部の全体が、周縁溝部に進入して凹状に窪む。このため、織編物の周縁部の全体が、目立たず、見栄えがよい。
【0025】
(3)前記織編物の周縁部よりも内側には、前記織編物と前記基材との間に形成されている隙間に、収容物を出し入れすることが可能な開口部が形成されていることが好ましい。この場合には、開口部から隙間に小物を出し入れすることができ、織編物の一般部と基材との間の隙間を、ポケット部として用いることができる。
【0026】
(4)前記織編物の周縁部の一部は、前記溝壁面に接合されておらず、前記基材との間に、収容物を出し入れすることが可能で前記織編物と前記基材との間の隙間に通じる開口部が形成されていることが好ましい。織編物の周縁部の一部が周縁溝部の溝壁面に溶着していることで、織編物の溝壁面に溶着されていない一般部と基材との間に、隙間が形成される。織編物の周縁部の一部が周縁溝部の溝壁面に固定されることなく開口している。このため、この開口部から隙間に小物を出し入れすることができ、織編物の非接合部分と基材との間の隙間を、ポケット部として用いることができる。
【0027】
(5)更に、前記基材の表面の前記周縁溝部よりも内側には、内側溝部が形成されており、前記織編物の周縁部よりも内側に設けられた前記融着部は、前記内側溝部の溝壁面に溶着していることが好ましい。この場合には、織編物は周縁溝部だけでなく内側溝部にも収容されて、織編物の周縁部だけでなく、それ以外の一般部にも凹状の窪み部が形成される。ゆえに、織編物にいくつかの凹凸が形成され、織編物を立体的に基材表面に固定することができる。
【0028】
(6)前記織編物は、網目をもつメッシュ材料であることが好ましい。織編物がメッシュ材料であるため、複合部材の軽量化を図ることができる。また、メッシュ材料に形成されている網目を通じて、基材表面を透かし見ることができる。ゆえに、複合部材の表面には、基材とメッシュ材料の双方からなる意匠が形成され、デザイン性に優れる。
【0029】
(7)前記融着部は、繊維で構成しており、前記主繊維とともに製織製編されて前記織編物を構成していることが好ましい。融着部は主繊維とともに製織製編されて織編物を構成しているため、主繊維との交絡部分が多い。このため、主繊維を周縁溝部や内側溝部の溝壁面に強固に接合することができる。
【0030】
(8)前記融着部を構成する前記第2の熱可塑性樹脂の融点は、前記基材を構成する前記第1の熱可塑性樹脂の融点に対して±50℃の範囲にあることが好ましい。織編物の融着部の融点は基材の融点に近いため、織編物の融着部が周縁溝部や内側溝部の溝壁面に確実に溶着して、主繊維を周縁溝部や内側溝部の溝壁面に強固に接合させることができる。
【0031】
(9)前記融着部を構成する前記第2の熱可塑性樹脂の種類は、前記基材を構成する前記第1の熱可塑性樹脂の種類と同じであることが好ましい。織編物の融着部の融点を、基材の融点に近づけることができるとともに、互いに相溶性がよいため、融着部と周縁溝部や内側溝部の溝壁面とが確実に溶着して、主繊維が周縁溝部や内側溝部の溝壁面に強固に接合される。
【0032】
(10)本発明の複合部材の製造方法は、主繊維及び前記主繊維よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなり前記主繊維とともに製織製編されるか又は前記主繊維を被覆する融着部から構成された織編物を、前記織編物の周縁部の少なくとも一部に沿った形状に延びる周縁溝部を有するとともに第1の熱可塑性樹脂からなる基材の表面に配置する配置工程と、前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂が溶融可能であって且つ前記主繊維が溶融及び変性しない温度に加熱しながら、前記織編物を前記基材の前記周縁溝部の溝壁面に押し当てることにより、前記織編物の前記周縁部の前記融着部を前記周縁溝部の溝壁面に溶着させる溶着工程と、をもつことを特徴とする。
【0033】
上記製造方法によれば、織編物を加熱しながら周縁溝部の溝壁面に押し当てることにより、織編物の融着部を、主繊維を取り込んだ状態で溝壁面に溶着させている。このため、織編物を周縁溝部に強固に接合させることができる。
【0034】
また、織編物は、一体品として基材表面に配置される。このため、従来のように2部材間への挟持や賦形などの作業をする必要がなく、織編物の基材表面への固定が容易である。
【0035】
また、織編物の周縁部を溝壁面に押し当てることで、織編物の周縁部は凹状に窪む。このため、織編物の周縁溝部に入り込まない一般部が、織編物の周縁溝部に入り込んだ周縁部よりも、浮き上がってみえる。また、織編物の一般部では、織編物自体の凹凸模様や風合いを視認できる。ゆえに、基材表面に固定された織編物は、立体感があり、見栄えがよい。
【0036】
(11)前記溶着工程において、加熱された押刃を前記周縁溝部に進入させて、前記織編物の前記周縁部を前記周縁溝部の溝壁面に押し当てることが好ましい。織編物の周縁部は、加熱された押刃により周縁溝部に押し込められて、周縁溝部の溝壁面に確実に接合される。
【発明の効果】
【0037】
本発明の複合部材及びその製造方法によれば、織編物の周縁部の融着部は、基材表面に形成した周縁溝部の溝壁面に溶着している。このため、織編物は、基材表面から浮き上がって見え、また、基材に簡素に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例1の複合部材の斜視図である。
【図2】実施例1の複合部材の使用状態を示す斜視図である。
【図3】実施例1の基材の斜視図である。
【図4】実施例1の、織編物の網目構造の説明図(a)及び織編物の組織編成図(b)である。
【図5】図1のA−A矢視断面図である。
【図6】実施例1における、織編物の周縁部を溝壁面の底部及び内側部に熱溶着する方法を示すための図1のB−B矢視断面図である。
【図7】実施例1における、織編物の周縁部を溝壁面の内側部に熱溶着する方法を示すための、複合部材の要部断面図である。
【図8】実施例1における、織編物の周縁部を溝壁面の底部、内側部及び外側部に熱溶着する方法を示すための、複合部材の要部断面図である。
【図9】実施例2の複合部材の斜視図である。
【図10】実施例3の複合部材の斜視図である。
【図11】従来例における、車両の座席の背面側から見た斜視図である。
【図12】従来例における、表面側から見たシートバック部材の分解斜視図(a)、及び裏面側から見たシートバック部材の分解斜視図(b)である。
【図13】他の従来例における、ポケットの平面図である。
【図14】従来の内装部材の第1の製造方法を示す説明図である。
【図15】従来の内装部材の第2の製造方法を示す説明図である。
【図16】従来の内装部材の第3の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の実施形態に係る複合部材及びその製造方法について説明する。
【0040】
複合部材は、基材の表面に織編物の周縁部を固定してなる。
【0041】
基材は、第1の熱可塑性樹脂から構成されている。第1の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などを用いることができる。基材には、第1の熱可塑性樹脂の他に、タルク、繊維などのフィラーが含まれていてもよい。
【0042】
基材の表面には、織編物の周縁部が配置される部分に周縁溝部が形成されている。周縁溝部は、基材表面における、織編物の周縁部の少なくとも一部が配置される部分に形成されている。例えば、周縁溝部は、基材表面における、織編物の周縁部の一部が配置される部分に、周縁部の一部の延び方向に沿って形成されている。この場合、織編物の周縁部の一部の融着部が、基材の周縁溝部を囲む溝壁面に溶着する。また、周縁溝部は、基材表面における、織編物の周縁部の全体が配置される部分に形成されていてもよい。この場合、織編物の周縁部の全体が、基材の周縁溝部を囲む溝壁面に溶着する。
【0043】
周縁溝部の溝深さH1は、1〜5mmであることが好ましく、更には2〜3mmであることが望ましい。この場合には、織編物の周縁部が周縁溝部に入り込んで、周縁部以外の一般部が浮き上がって立体的に見える。また、溝壁面全体に織編物の融着部が溶着して、織編物を強固に接合することができる。
【0044】
周縁溝部の溝幅L1は、2〜10mmであることが好ましく、更には3〜5mmであることが望ましい。この場合には、溝壁面全体に織編物の融着部が溶着して、織編物を強固に接合することができる。
【0045】
基材の表面には、周縁溝部よりも内側に内側溝部を形成してもよい。内側溝部には、織編物の一部が進入されて、その溝壁面に織編物の一部の融着部が溶着する。内側溝部の溝深さH2は、前記周縁溝部の溝深さH1と同様に、1〜5mmであることが好ましく、2〜3mmであることが望ましい。また、内側溝部の溝幅L2は、前記周縁溝部の溝幅L1と同様に、2〜10mmであることが好ましく、3〜5mmであることが望ましい。
【0046】
織編物は、織物又は編物である。織編物が織物である場合には、平織り、綾織り、及び朱子織りのいずれか1つ又はこれらの組み合わせなどで製織されているとよい。織編物が編物である場合には、トリコット編み、レース編み、メッシュ編み、アフガン編み、棒針編み、かぎ針編みなどで製編されているとよい。
【0047】
織編物は、網目をもつメッシュ材料であることが好ましい。溶着時に、加熱装置から印加された熱が、網目の空間を伝ってメッシュ材料の表裏間で伝わりやすく、メッシュ材料が押し付けられる溝壁面に熱が十分に伝わり、融着部が溝壁面に溶着することによりメッシュ材料を溝壁面に確実に固定することができる。また、加熱温度を低くでき、また加熱時間を短くすることができる。
【0048】
メッシュ材料の網目は、ほぼ四角形をなす貫通穴であり、網目の大きさ(長幅と短幅がある場合は長幅の大きさ)は、網目を囲む編脚の径の3倍以上であることが好ましい。この場合には、網目を通じて、メッシュ材料の表裏間及び溝壁面に熱が伝達されやすく、メッシュ材料の融着部が溝壁面に確実に溶着することができる。
【0049】
メッシュ材料の網目構造の主要組織は主繊維で製編されていることが好ましい。溝壁面に融着部を溶着したときに、主繊維は溶融しないので、メッシュ材料の網目構造を維持することができる。
【0050】
織編物の周縁部よりも内側には、開口部が形成されていてもよい。開口部は、織編物と基材との間に形成されている隙間に、収容物の出し入れが可能な大きさに開口していることが好ましい。この場合には、織編物をポケット部として使用することができる。
【0051】
また、複合部材にポケット部を形成するに当たり、織編物の周縁部の一部に基材と溶着しない部分を残すことで、隙間に通じる開口部を形成してもよい。
【0052】
織編物は、主繊維と融着部とから構成されている。主繊維は、織編物の組織を形成している。融着部は、繊維状の融着繊維を構成していてもよい。融着繊維は、主繊維とともに束ねられて複合糸を構成していてもよいし、主繊維とは独立して融着繊維のみを束ねて単一糸を構成していてもよい。これらの糸は、短繊維を撚り合わせた紡績糸であってもよいし、長繊維を撚り合わせたフィラメント糸であってもよい。
【0053】
融着繊維が主繊維と別々に糸を構成する場合には、主繊維からなる糸で網目を形成し、融着繊維からなる糸は、主繊維からなる糸に絡めながら製編するとよい。
【0054】
また、融着部は、主繊維の表面を被覆していてもよい。融着部が、主繊維の表面を被覆している場合には、融着部と主繊維とは、主繊維がコア部を、融着部がカバー部を構成するコアカバーの複合繊維を形成している。
【0055】
融着部は、織編物のすべての部分において、主繊維とともに織物又は編物されているか主繊維の表面を被覆していてもよい。また、融着部は、織編物のうちの一部において、主繊維とともに製織又は製編されているか又は主繊維の表面を被覆していてもよい。融着部は、織編物の少なくとも基材表面と接合する部分のみ、即ち、織編物の周縁溝部や内側溝部に入り込む進入部分のみまたは当該進入部分及びその周囲において、主繊維とともに織物又は編物されているか主繊維の表面を被覆していればよい。
【0056】
織編物の主繊維は、どのような材質で構成されていてもよい。主繊維は、例えば、ポリアリレート繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維などのポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリアリレート繊維などの合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維などの鉱物繊維、木綿、麻、絹、毛などの天然繊維であることがよい。
【0057】
主繊維は、強化繊維であることがよい。この場合には、織編物の強度が向上し、織編物が破れにくくなる。強化繊維としては、例えば、ポリアリレート繊維、PETなどのポリエステル繊維、ガラス繊維、ポリアミド繊維、炭素繊維などがある。
【0058】
強化繊維として用いられる材料の曲げ弾性率(JISK−7171)は、3000MPa以上であることが好ましく、更には5000MPa以上であることが望ましい。この場合には、織編物の剛性を高くすることができる。
【0059】
主繊維は、短繊維であっても長繊維であってもよい。また、主繊維は、単一の材質のものを複数束ねて糸を構成してもよく、複数種の材質のものを複数束ねて糸を構成してもよい。
【0060】
融着部は、主繊維の材質の融点よりも低い融点の第2の熱可塑性樹脂からなる。第2の熱可塑性樹脂の融点は、基材を構成する第1の熱可塑性樹脂の融点と近似しているとよい。第2の熱可塑性樹脂の融点と第1の熱可塑性樹脂の融点との差は、±50℃以内であることが好ましく、更には±30℃以内、望ましくは±10℃以内である。この場合には、融着部は、加熱時に周縁溝部の溝壁面とともに溶融するため、当該溝壁面に確実に溶着することができる。
【0061】
融着部を構成する第2の熱可塑性樹脂としては、例えば、PP、PEを用いることができる。融着部は、第2の熱可塑性樹脂に、フィラーやタルクを混合したものであってもよい。
【0062】
融着部を構成する第2の熱可塑性樹脂の融点と基材を構成する第1の熱可塑性樹脂の融点とは、比較的近似しており、主繊維となり得る材質の融点は、第1,第2の熱可塑性樹脂の融点に比べてかなり高いことがよい。例えば、主繊維となり得る材質の融点は、第1,第2の熱可塑性樹脂の融点に比べて55℃以上高いことがよい。
【0063】
第2の熱可塑性樹脂は、基材を構成する第1の熱可塑性樹脂と同じ種類であることが好ましい。第2の熱可塑性樹脂の融点を第1の熱可塑性樹脂の融点に近似させやすいだけでなく、互いの相溶性もよいため、融着部は基材に形成された周縁溝部や内側溝部の溝壁面に確実に溶着し、主繊維を当該溝壁面に強固に接合させることができる。ここで、「種類」とは、熱可塑性樹脂を構成する高分子の成分が同じだけでなく、熱可塑性樹脂を構成する高分子の主な単量体が同じであることを意味する。第1と第2の熱可塑性樹脂の分子量が若干相違したり、構造が若干相違したりする場合も、「同じ種類」に含まれる。
【0064】
第1の熱可塑性樹脂と第2の熱可塑性樹脂とは、例えば、いずれも、PPであるか、またはPEであることがよい。
【0065】
表1に、主繊維、融着部、及び基材の材質の一例と、その軟化点、融点及び熱伝導率を示した。
【0066】
【表1】

織編物の中の少なくとも溝壁面に溶着される部分では、主繊維100質量部に対する融着部の質量比率が、例えば、5〜60質量部であるとよい。5質量部未満では、融着部が主繊維に対して相対的に少なすぎ、主繊維の溝壁面への接合性が低下するおそれがある。60質量部を超える場合には、溝壁面へ接合する主繊維の相対量が少なく、織編物の溝壁面への接合部分の強度が低下するおそれがある。
【0067】
複合部材を製造するに当たっては、以下の配置工程と溶着工程とを行う。
【0068】
配置工程では、織編物を、基材の表面に配置する。基材の表面には、織編物の周縁部の少なくとも一部に沿った形状に延びる周縁溝部が形成されている。織編物を基材表面に配置するときに、織編物の周縁部が、周縁溝部の上に位置するように織編物を配置する。織編物の周縁部は、周縁溝部を囲む溝壁面の内側部のみを被覆してもよいし(図7)、内側部及び底部を被覆してもよいし(図6)、又は内側部、底部及び外側部を被覆してもよい(図8)。
【0069】
溶着工程では、織編物の周縁部を加熱しながら周縁溝部の溝壁面に押し当てる。このとき、織編物の加熱温度は、基材を構成する第1の熱可塑性樹脂及び融着部を構成する第2の熱可塑性樹脂が溶融可能であって、主繊維は溶融しないで且つ変形しない温度とするとよい。この加熱温度は、第1及び第2の熱可塑性樹脂の融点よりも高く、且つ主繊維を構成する材質の軟化点よりも低いことがよい。
【0070】
例えば、基材を構成する第1の熱可塑性樹脂がPP(融点150〜170℃)であり、融着部を構成する第2の熱可塑性樹脂が、PP(融点173℃)であり、主繊維がポリエステル(軟化点240℃、融点250℃)から形成されている場合には、加熱温度は、173℃を超えて大きく、240℃未満であるとよく、更には、180〜230℃であることがよい。
【0071】
織編物の加熱時間は、20〜180秒であることが好ましく、更には、30〜90秒であることが望ましい。この場合には、織編物の融着部と基材の溝壁面とが互いに溶着して、織編物を溝壁面に強固に接合することができる。
【0072】
織編物の溝壁面と対向している部分のみを、集中的に加熱することがよい。織編物の溝壁面に溶着する部分のみを溶融させることで、織編物の溝壁面に対向する部分以外の一般部が、基材表面に溶着することを防止できる。
【0073】
織編物の溝壁面と対向している部分のみを加熱するには、加熱された押刃を、織編物を被覆した周縁溝部に進入させて、押刃で織編物を溝壁面に押し当てることがよい。
【0074】
本発明の複合部材は、例えば、車両内装部品に用いられる。このような車両内装部品としては、シートバックボード、コンソールリッド、インストルメントパネル、ドアトリム、トノカバー、トランクルームのフロア部材、カーゴルームのパネル部材などが挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明の複合部材は、車両内装部品以外にも、家具、建築部材、網棚などとしても用いることができる。特に、織編物をポケット部として用いる場合には、例えば、複合部材は、シートバックボードなどとして用いることができる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
本例の複合部材は、図1、図2に示すように、基材1の表面に織編物2の周縁部20を固定して、収容物7を出し入れ可能なポケット部4を形成している。
【0076】
基材1は、車両の前側座席のシートバックボードである。基材1の材質は、フィラー入りPPであり、PP50〜70質量部とフィラー(タルク)20質量部とからなる。フィラー入りPPの軟化点は150℃、融点は165℃、熱伝導率は3.3×10cal/cm・sec・℃である(表1)。
【0077】
図3に示すように、基材1の表面には、織編物2の周縁部20に沿って枠状に延びる周縁溝部10が形成されている。基材1の表面には、更に、周縁溝部10の内側に、横方向に延びる内側溝部12が形成されている。周縁溝部10及び内側溝部12の溝深さH1は3mmであり、溝幅L1は、5mmである(図6)。
【0078】
図4に示すように、織編物2は、網目28をもつメッシュ材料であり、多軸編み機で製編されたものである。織編物2は、網目28の拡張や縮小によって伸縮可能とされている。
【0079】
織編物2は、主繊維糸21と、融着繊維糸22とで製編されている。メッシュ材料は、経編み(縦編み)で網目構造が形成されている。網目構造の網目28の過剰な変形を防止するために、網目28を横切るように緯編み糸(横編み糸)23が、経編み糸(縦編み糸)24と交絡している。緯編み糸23は、主繊維糸21のみで構成されている。経編み糸24は、1本の主繊維糸21と1本の融着繊維糸22とで構成されている。融着繊維糸22は、織編物2の全体に、主繊維糸21とともに経編み糸24として製編されている。網目28の短幅Aは13mm、長幅Bは20mmである。網目28を囲む編脚25の幅Cは2mmである。
【0080】
主繊維糸21及び融着繊維糸22は、いずれも、長繊維を複数撚りあわせたフィラメント糸である。主繊維糸21は、強化繊維の一種であるポリアリレート繊維(700テックス)からなり、融着繊維糸22はポリプロピレン繊維(300テックス)からなる。主繊維糸21を構成するポリアリレートの軟化点は300℃、融点は400℃であり、熱伝導率は3.5×10cal/cm・sec・℃である。融着繊維糸22を構成するPPの軟化点は145℃であり、融点は173℃であり、熱伝導率は3.3×10cal/cm・sec・℃である(表1)。
【0081】
融着繊維糸22は、主繊維糸21の主繊維を100質量部としたときに、融着繊維糸22の質量比は、40質量部である。
【0082】
図5に示すように、基材1表面に形成した周縁溝部10を囲む溝壁面11には、織編物2の周縁部20が接合されている。溝壁面11には、織編物2の融着繊維糸22が溶着して、主繊維糸21を取り込んだ状態で織編物2の周縁部20が接合している。
【0083】
図1に示すように、織編物2の周縁部20よりも内側には、開口部25が形成されている。開口部25は、左右方向に延び、織編物2と基材1との間の隙間に小物を出し入れ可能な程度に開口している。開口部25の周縁部の上部は、基材1表面に形成した内側溝部12の溝壁面に溶着している。開口部25の周縁部の下部は、ほつれ防止のために、バイアステープ25aで縁取りされている。
【0084】
複合部材を製造するにあたっては、基材1と、織編物2とを準備する。基材1の表面には、図3に示すように、周縁溝部10及び内側溝部12を形成する。基材1の表面に、織編物2を配置し、織編物2の周縁部20を周縁溝部10に位置させる。
【0085】
一方で、図6に示すように、周縁溝部10及び内側溝部12の形状に沿って突出する押刃30をもつ溶着装置を準備する。押刃30の中には、図略の電熱線が埋設されていて、温度調整可能になっている。押刃30を、織編物2を配置した基材1の上に位置させ、徐々に基材1に近接させる。やがて、押刃30を周縁溝部10及び内側溝部12に押し入れて、織編物2を周縁溝部10及び内側溝部12の溝壁面11に押し当てる。押刃30は、200℃とし、0.2MPaの荷重で、60秒間、溝壁面11に押し当てる。これにより、織編物2の融着繊維糸22が溶融又は軟化するとともに、周縁溝部10及び内側溝部12の溝壁面11も溶融又は軟化して、融着繊維糸22が、溝壁面11に溶着する。
【0086】
ここで、図6に示すように、織編物2の周縁部20は、周縁溝部10の溝壁面11の内側部及び底部と対面させている。しかし、織編物2の周縁部20は、周縁溝部10の溝壁面11の内側部のみに対面させてもよく(図7)、また、内側部、底部及び外側部に対面させてもよい(図8)。いずれも場合にも、織編物2の周縁部20は、周縁溝部10の溝壁面11に確実に接合される。
【0087】
また、基材1の周縁溝部10に、織編物2を溶着させることで複合部材が作製されるため、部品点数が少なく、また工数も少なく抑えることができる。
【0088】
また、織編物2の周縁部以外の部分である一般部27は、基材1に接合されていない非接合部分をもつ。織編物2の一般部27は、基材1の上に載置されているにすぎない織編物のように、織編物2の全体が基材1上に現れているため、織編物2自体に形成されている凹凸模様や風合いをそのまま視認することができる。
【0089】
また、織編物2の周縁溝部10に進入していない一般部27は、織編物2の周縁溝部10に進入した周縁部20に対して、浮き上がって見える。
【0090】
このように、織編物2は、それ自体の凹凸模様や風合いを維持しつつ、しかも基材1表面に浮き上がったように立体的に見える。このため、本例の複合部材は、見栄えがよく、意匠性に優れている。
【0091】
また、織編物2の周縁部20にほつれがある場合にも、基材1に形成した周縁溝部10に凹状に入り込んでいるため、織編物2の周縁部20のほつれが目立たない。しかも、織編物2の周縁部20では、融着繊維糸22が主繊維糸21と絡み合いながら溝壁面11に溶着している。このため、主繊維糸21のほつれを防止することができる。たとえ、織編物2の周縁部10にほつれ部分がある場合にも、周縁溝部10に凹状に入り込んでいるため、織編物2の周縁部20のほつれ部分は、目立たない。
【0092】
また、織編物2は、融着繊維糸22が主繊維糸21とともに製織製編されることで一体品を構成している。この織編物2を基材1表面に配置し、基材1表面に形成された周縁溝部10及び内側溝部12の溝壁面11に加熱しながら押し当てることで溝壁面11に溶着する。このため、従来のように2部材間への挟持や賦形などの作業をする必要がなく、織編物の基材表面への固定が容易である。
【0093】
(実施例2)
本例の複合部材は、図9に示すように、織編物2の周縁部20の左右両側部及び下部は基材2の周縁溝部10の溝壁面11に接合しているが,上部は開口して開口部26を形成している。開口部26の大きさは、小物、雑誌、本などの収容物を出し入れ可能な大きさである。織編物2は、基材1との間の隙間に収容物を収容可能なポケット部を構成している。織編物2の周縁部20の上部には、ゴムバンドが通されていて、開口部26が基材1表面近くに保持して、隙間に収容した収容物の開口部26からの脱落を防止している。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0094】
(実施例3)
本例の複合部材は、図10に示すように、織編物2には開口部はなく、織編物2の周縁部20の全体が、基材1表面に形成された周縁溝部10の溝壁面に接合されている。基材1は、ドアトリムである。本例において、織編物2は、実施例1で用いた織編物と同様にメッシュ材料であり、ドアトリムを加飾する加飾材として用いられている。
【0095】
織編物2の周縁部20だけでなく、一般部27の一部も、基材1に形成された内側溝部12の溝壁面に接合されている。内側溝部12は、基材1表面に、周縁溝部10で囲まれた領域の中央を横断するように形成されている。内側溝部12の溝壁面には、織編物2の一般部27の中央部分を構成する融着繊維糸が溶着している。内側溝部12の溝深さH2は3mmであり、溝幅L2は5mmである。その他の構成は、実施例3と同様である。
【0096】
織編物2の一般部27は、基材2に接合されていない部分をもつ。織編物2の一般部27は、織編物2の全体が基材1上に現れているため、織編物2自体に形成されている凹凸模様や風合いをそのまま視認することができる。
【0097】
また、織編物2の周縁部20は、周縁溝部10に入り込んで凹状に窪んでいる。一方、織編物2の周縁溝部20に入りこんでいない一般部27は、織編物2の周縁溝部10に入り込んだ周縁部20に対して、浮き上がって見える。このため、織編物2の一般部27は、基材1の表面に浮き上がって立体的に見える。したがって、ドアトリムの織編物2を配設した部分を立体的に飾ることができ、ドアトリムの意匠性が高まる。
【0098】
このように、織編物2は、それ自体の凹凸模様や風合いを維持しつつ、しかも基材表面に浮き上がったように立体的に見え、意匠性に優れている。
【0099】
また、基材1表面に形成される周縁溝部10の配置を種々に変えることで、周縁溝部10への接合によって形成される織編物2の凹凸の配置を、自在に変えることができる。ゆえに、織編物2に形成される凹凸のデザインの自由度が高く、意匠性に優れている。
【0100】
<実験例>
本実験例では、複合部材のテストピースを作製し、ピーリング強度を測定した。
【0101】
複合部材のテストピースは、上記実施例1と同様の構成である。テストピースは、基材の表面に織編物を接合したものである。基材は、厚みが10mmの短冊状とした。織編物は,幅50mmの短冊状とし、基材の中央に配置させた。実施例1と同様に、織編物は、メッシュ材料からなり、主繊維糸と融着繊維糸とで製編されている。基材表面には、織編物の周縁部に沿って延びる周縁溝部が形成されており、周縁溝部には織編物が配設され、溝壁面に織編物の周縁部の融着繊維糸が溶着している。
【0102】
テストピースの一端の織編物の周縁部を剥離させて、引張試験機のつかみを剥離させた織編物の一端に取り付け、引張荷重曲線を測定し、その最大引張り荷重を求め、ピーリング強度とした。
【0103】
その結果、テストピースのピーリング強度は、59.6N/50mmであった。この程度のピーリング強度は、織編物をポケット部として用いた場合に織編物に加わると想定される荷重よりもはるかに高い。このことから、織編物の周縁部は、基材の周縁溝部に強固に接合していることがわかる。
【符号の説明】
【0104】
1:基材、2:織編物、3:溶着装置、4:ポケット部、10:周縁溝部、11:溝壁面、12:内側溝部、20:周縁部、21:主繊維糸、22:融着繊維糸、23:経編み糸、24:緯編み糸、25,26:開口部、27:一般部、28:網目、30:押刃。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱可塑性樹脂からなる基材と、前記基材の表面を被覆し前記基材の表面に一部が固定された織編物とからなる複合部材であって、
前記織編物は、主繊維と、前記主繊維よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなる融着部とから構成されており、前記融着部は前記主繊維とともに製織製編されるか又は前記主繊維を被覆しており、
前記基材の表面には、前記織編物の周縁部の少なくとも一部に沿って延びる周縁溝部が形成されており、前記織編物の周縁部の少なくとも一部の前記融着部は、前記周縁溝部の溝壁面に溶着していることを特徴とする複合部材。
【請求項2】
前記基材の表面に形成された前記周縁溝部は、前記織編物の周縁部の全体に沿って延びており、前記織編物の周縁部の全体に設けられた前記融着部は、前記周縁溝部の溝壁面に溶着している請求項1記載の複合部材。
【請求項3】
前記織編物の周縁部よりも内側には、前記織編物と前記基材との間に形成されている隙間に、収容物を出し入れすることが可能な開口部が形成されている請求項2記載の複合部材。
【請求項4】
前記織編物の周縁部の一部は、前記溝壁面に接合されておらず、前記基材との間に、収容物を出し入れすることが可能で前記織編物と前記基材との間の隙間に通じる開口部が形成されている請求項1記載の複合部材。
【請求項5】
更に、前記基材の表面の前記周縁溝部よりも内側には、内側溝部が形成されており、前記織編物の周縁部よりも内側に設けられた前記融着部は、前記内側溝部の溝壁面に溶着している請求項1〜4のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項6】
前記織編物は、網目をもつメッシュ材料である請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項7】
前記融着部は、繊維で構成しており、前記主繊維とともに製織製編されて前記織編物を構成している請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項8】
前記融着部を構成する前記第2の熱可塑性樹脂の融点は、前記基材を構成する前記第1の熱可塑性樹脂の融点に対して±50℃の範囲にある請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項9】
前記融着部を構成する前記第2の熱可塑性樹脂の種類は、前記基材を構成する前記第1の熱可塑性樹脂と同じである請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合部材。
【請求項10】
主繊維及び前記主繊維よりも融点が低い第2の熱可塑性樹脂からなり前記主繊維とともに製織製編されるか又は前記主繊維を被覆する融着部から構成された織編物を、前記織編物の周縁部の少なくとも一部に沿った形状に延びる周縁溝部を有するとともに第1の熱可塑性樹脂からなる基材の表面に配置する配置工程と、
前記第1の熱可塑性樹脂及び前記第2の熱可塑性樹脂が溶融可能であって且つ前記主繊維が溶融及び変性しない温度に加熱しながら、前記織編物を前記基材の前記周縁溝部の溝壁面に押し当てることにより、前記織編物の前記周縁部の前記融着部を前記周縁溝部の溝壁面に溶着させる溶着工程と、をもつことを特徴とする複合部材の製造方法。
【請求項11】
前記溶着工程において、加熱された押刃を前記周縁溝部に進入させて、前記織編物の前記周縁部を前記周縁溝部の溝壁面に押し当てる請求項10記載の複合部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−153078(P2012−153078A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15925(P2011−15925)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【出願人】(511025732)向陽株式会社 (1)
【Fターム(参考)】