説明

複層建築物に敷設する立体庭園における樹木の支持システム

【課題】複層建築物に敷設する立体庭園における樹木の支持システム。
【解決手段】複層建築物の各階層の建築躯体64に取り付けた格子、網状等の樹枝支持用骨組40と、前記樹枝支持用骨組40の上で緊結された樹木を支持する支柱81と、前記支柱81と前記樹枝支持用骨組40、または、樹木を連結する連結金物80と、前記建築躯体64に取り付けた、一つまたは複数の樹枝を支える、支柱65または架構とからなり、前記樹枝支持用骨組40、前記樹木または樹枝を支える支柱81、65、架構、または、連結金物80を交換、追加、削減可能なように構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複層建築物に敷設する立体庭園における樹木の支持システムに関するものである。立体庭園は、屋上庭園を含む。樹木の支持方法については、高木を植えるにしても用土等による建築物への荷重負担を最小限にすること、建築躯体への水の浸入を防ぐこと、維持管理が容易であることがポイントになる。
【背景技術】
【0002】
屋上庭園の建築の防水と関係付けた施工方法の技術があった。(特許文献1、2参照)
【0003】
植物の倒伏防止装置及び自動潅水装置を備えた分割ユニット式庭園の技術があった。(特許文献3参照)
【0004】
人口地盤上での樹木の支持方法の技術があった。(特許文献4参照)
【特許文献1】特開2002−84875
【特許文献2】特開2004−293031
【特許文献3】特開2004−49156
【特許文献4】特開平10−14419
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
都市はますます高層化し、緑が少なくなってきている。高層ビル群の中では地上の緑だけでは十分ではない。ヒートアイランドの公害も発生している。二酸化炭素削減の課題もある。建築物に敷設した立体庭園(バーチカルガーデン)が望まれる。
【0006】
立体庭園の樹木の支持方法においては、外観上の配慮から支柱を使わず(仮支柱を除く)、なおかつ用土の荷重を減らして建築物への荷重負担を減らすことが望まれる。また、高木を植栽する場合、強風に対して転倒しないようにするためには、高木を容器に入れて置くだけでなく建築躯体と連結して支持することが必要となる。その場合建築物への防水性を図りながらどのように高木を建築躯体で支持するのかが課題になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
複層建築物に敷設する立体庭園の樹木の支持において、
複層建築物の各階層の建築躯体に取り付けた格子、網状等の樹枝支持用骨組と、前記樹枝支持用骨組の上で緊結された樹木を支持する支柱と、前記支柱と前記樹枝支持用骨組、または、樹木を連結する連結金物と、前記建築躯体に取り付けた、一つまたは複数の樹枝を支える、支柱または架構とからなり、前記樹枝支持用骨組、前記樹木または樹枝を支える支柱、架構、または、連結金物を交換、追加、削減可能なように構成する。
【0008】
前記建築躯体に樹枝支持用骨組を、建築躯体に取り付けたアンカーにボルト接合するなど、容易に取り付け、取り外し可能な方法で、取り付け、前記樹枝支持用骨組に、前記格子、網状等の樹枝支持用骨組、前記樹木または樹枝を支える支柱、架構、または、連結金物を取り付ける。
【0009】
前記建築躯体に支柱を取り付けまたは一体施工し、建築躯体上に施工した防水層を、支柱上部に取り付けまたは一体施工された笠木下まで立ち上げ、前記笠木に腕木を取り付け、前記腕木または笠木に、前記樹枝支持用骨組または連結金物を取り付ける。
【0010】
前記樹枝支持用骨組に連結金物を取り付け、連結金物に鋼線を連結し、前記鋼線と樹木を連結して樹木を支持する。
【0011】
前記樹枝支持用骨組に連結金物を取り付け、前記連結金物と丸太などの支柱脚に外嵌した連結金物を接合して、前記支柱上部と樹木を連結することによって、樹木を支持する
【0012】
複層建築物に敷設する立体庭園の樹木の支持において、
丸太などの支柱上部に外嵌した筒状等の連結金物と、樹木に外嵌した筒状等の連結金物を接合する。
【0013】
前記筒状等の連結金物を、二つに分割、双方をヒンジ接合する等によって、樹木に外嵌、取り外しできるようにして、樹木に被し、ボルト等の連結金物で、前記筒状等の連結金物を樹木に外嵌、固定し、前記筒状等の連結金物に取り付けられた連結金物と、丸太などの支柱上部に外嵌した連結金物を接合することによって、樹木を支持する。
【0014】
複層建築物に敷設する立体庭園の樹木の支持において、
樹木に布、革製等のベルトを締め付け、前記ベルトに取り付けられた連結金物と、丸太などの支柱上部に外嵌した連結金物を接合することによって、樹木を支持する。
【0015】
前記連結金物を、片方はヒンジ付きボルトまたはヒンジ付きボルト付き、別な片方はヒンジ付きプレートまたはヒンジ付きプレート付きとして、連結金物を相互にヒンジ接合して支柱等を自由な角度に調整できる。
【0016】
樹木の根を前記樹枝支持用骨組に絡ませた後立体庭園へ搬入し、建築躯体に前記樹枝支持用骨組を取り付ける。
【0017】
前記樹枝支持用骨組を3次元網状体とする。
【0018】
前記樹枝支持用骨組、前記樹木または樹枝を支える支柱、架構、または、連結金物を建築躯体の替りに防水層上のコンクリートに取り付け、防水層上に張り付けまたは設置する。
【0019】
前記樹枝支持用骨組、支柱または架構等に、炭素繊維、合成樹脂、金属または木材を用いる。
以上を特徴とする立体庭園における樹木の支持システムである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
図1〜図7参照。本発明は、複層建築物に敷設する立体庭園の樹木(51)の支持において、
複層建築物の各階層の建築躯体(64)に取り付けた格子、網状等の樹枝支持用骨組(40)と、前記樹枝支持用骨組(40)の上で緊結された樹木(51)を支持する支柱(81)と、前記支柱(81)と前記樹枝支持用骨組(40)、または、樹木(51)を連結する連結金物(80)と、前記建築躯体(64)に取り付けた、一つまたは複数の樹枝を支える、支柱(65)または架構とからなり、前記樹枝支持用骨組(40)、前記樹木(51)または樹枝を支える支柱(81、65)、架構、または、連結金物(80)を交換、追加、削減可能なように構成したことを特徴とする。
図1は、樹枝支持用骨組(40)を、平面視所定の間隔で配置した複数の同心円バー(52)とそれに直交する放射状バー(53)で構成してなる円形格子状骨組(55)とし、円形格子状骨組(55)を、立体庭園(50)の床(56)上に取り付け、円形格子状骨組(55)の上に樹木(51)を置き、その根(36)を円形格子状骨組(55)に被覆鋼線、生分解材等の緊結材(60)で緊結して、樹木を支持する実施例である。円形格子状骨組(55)は、縦横の格子状骨組であっても良いが、円形格子状骨組の方が、力学的に合理的で、骨組の質量は少なくてすむ。
図2、図3は、樹木(51)の根(36)が片根(根が片側だけ)の場合、根だけを固定するだけでは樹木の支持が充分ではないので、支柱(81,81a)を併用した例を示している。図2は、支持柱に鋼線(81)を使った例で、図3は、支持柱に丸太(81a)を使った例である。樹枝支持用骨組(40)に連結金物(80)を取り付け、連結金物(80)に鋼線(81)または丸太(81a)などの支柱を連結し、前記支柱上部と樹木(51)を連結して、樹木を支持し、根(36)が樹枝支持用骨組(40)に絡んだ後支柱を撤去することができる。
【0021】
図6参照。建築躯体(64)に樹枝支持用骨組(40(65))を、建築躯体(64)に取り付けたアンカー(96)にボルト(90)接合するなど、容易に取り付け、取り外し可能な方法で、取り付け、前記樹枝支持用骨組(40)に、前記格子、網状等の樹枝支持用骨組(40(55))、前記樹木または樹枝を支える支柱(81)、架構、または、連結金物(80)を取り付ける。
【0022】
図5、図6参照。建築躯体(64)に支柱(65)を取り付けまたは一体施工し、建築躯体(64)上に施工した防水層(63)を、支柱(65)上部に取り付けまたは一体施工された笠木(66、67)下まで立ち上げ、前記笠木(66,67)に腕木(68)を取り付け、前記腕木(68)または笠木(66,67)に、前記樹枝支持用骨組(40(55))または連結金物(80)を取り付ける。図5は、コンクリート打ちする前に支柱(65)を建築躯体(64)にアンカーした例を示し、図6は、コンクリート打ちまたは防水施工した後に支柱(65)を取り付けた例を示す。
図6において、防水層を養生するための養生管(95)、潅水スペースを造るための成型透水板(97)が示されている。
樹枝支持用骨組(40)の替りに、花壇等を取り付けても良い。
【0023】
図3、図4の(1)、(2)参照。樹枝支持用骨組(40)に連結金物(80)を取り付け、連結金物(80)と丸太(81a)などの支柱脚に外嵌した連結金物(82)を接合して、前記支柱(81a)上部と樹木(51)を連結することによって、樹木(51)を支持する。
【0024】
図3、図4参照。丸太などの支柱(81a)上部に外嵌した筒状等の連結金物(85)と、樹木に外嵌した筒状等の連結金物(87)を接合する。
【0025】
図4の(3)、図3の(1)参照。前記連結金物(87)において、連結金物(87)を二つに分割、双方をヒンジ接合する等によって、樹木(51)に外嵌、取り外しできるようにして、樹木(51)に被し、ボルト等の連結金物(80)で、前記筒状等の連結金物(87)を樹木(51)に外嵌、固定し、前記筒状等の連結金物(87)に取り付けられた連結金物(80)と、丸太などの支柱上部に外嵌した連結金物(85)を接合することによって、樹木(51)を支持する。実施例においては、連結金物(87)に複数の孔(94)を横列にあけておき、連結金物(87)を開いて樹木(51)に被せ、連結金物(87)を閉じて双方の孔(94)を合わせて双方の孔(94)にボルト等の連結金物(80,89)を差込み、固定し、連結金物(87)の直径を樹木(51)の直径に合わせ、複数の孔(94)を用いて複数のボルト等の連結金物(80,89)を取り付けとしている。連結金物(87)と樹木(51)の隙間には、養生シート(93)または楔が挟まれることになる。ボルト(91)は、支柱(81a)に連結金物(87)を固定するためのボルトである。
【0026】
図7参照。樹木に布、革製等のベルト(98)を締め付け、前記ベルト(98)に取り付けられた連結金物(80)と、丸太などの支柱上部に外嵌した連結金物を接合することによって、樹木を支持する。実施例では、ベルト(98)に連結金物差込孔(100)を横にあけておき、連結金物(80)をベルト裏側から差込み、90度回転、縦向きにして使用している。連結金物(80)の裏側には、裏板(101)があって、連結金物(80)が、ベルト(98)から抜けることはない。
【0027】
図4参照。前記連結金物を、片方はヒンジ付きボルト(84)またはヒンジ付きボルト(84)付き、別な片方はヒンジ付きプレート(80)またはヒンジ付きプレート(86)付きとして、連結金物(80,82,87)を相互にヒンジ接合して支柱等を自由な角度に調整できる。前記、図4及び図7に図示された連結金物(80、82,85,87)、ヒンジ付きボルト(84,89)及びベルト(98)は、複層建築物での建築躯体(64)、樹枝支持用骨組(40)、樹枝を支える支柱(65,81,81a)と連携、組み合わせすると効果的である。
【0028】
図1参照。樹木の根(36)を前記樹枝支持用骨組(40)に絡ませた後立体庭園へ搬入し、建築躯体に前記樹枝支持用骨組(40)を取り付ける。
【0029】
図4(1)、図5(1)、図6(2)参照。前記樹枝支持用骨組(40)を3次元網状体とすることによって、樹木の根をより多く樹枝支持用骨組(40)に絡ませ、より強固な樹木の支持をすることができる。
【0030】
前記樹枝支持用骨組(40)、前記樹木(51)または樹枝を支える支柱(65,81、81a)、架構、または、連結金物(80)を建築躯体(64)の替りに防水層(63)上のコンクリートに取り付け、防水層(63)上に張り付けまたは設置する。図示を省略する。
【0031】
前記樹枝支持用骨組、支柱または架構等に、炭素繊維、合成樹脂、金属または木材を用いる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】(1)は、樹木の支持方法を示す断面図。(2)は、平面図。
【図2】(1)は、別な樹木の支持方法を示す断面図。(2)は、平面図。
【図3】(1)は、別な樹木の支持方法を示す断面図。(2)は、平面図。
【図4】(1)は、支柱脚の取り付けを示す正面図。(2)は、(1)のB―B断面図。(3)は、樹木と支柱上部の取り付けを示す平面図。
【図5】(2)、(3)は、別な樹木の支持方法を示す平面図、(1)は、(2)(3)のA―A断面図。
【図6】(1)は、別な樹木の支持方法を示す平面図、(2)は、(1)のC―C断面図。
【図7】(1)は、別な樹木の支持方法を示す正面図、(2)は平断面図。
【符号の説明】
【0033】
36 根
40 樹枝支持用骨組
51 樹木
52 同心円バー
53 放射状バー
54 脚
55 円形格子状骨組
59 用土
60 緊結材
63 防水層
64 建築躯体
65 支柱
66、67 笠木
68 腕木
69 接合金物
70、71 締め付ナット
72 リブプレート
73、93 保護シート
80 連結金物
86 ヒンジ付きプレート
81 支柱(鋼線)
81a 支柱(丸太など)
82、85、87連結金物
83、88 締め付けナット
84、89 ヒンジ付きボルト
90 ボルト
91 押えボルト
92 座金
93 養生シート
94 孔
95 養生管
96 アンカー
97 成型透水板
98 ベルト
99 ベルト止め金具
100 連結金物差込孔
101 裏板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層建築物に敷設する立体庭園の樹木の支持において、
複層建築物の各階層の建築躯体に取り付けた格子、網状等の樹枝支持用骨組と、前記樹枝支持用骨組の上で緊結された樹木を支持する支柱と、前記支柱と前記樹枝支持用骨組、または、樹木を連結する連結金物と、前記建築躯体に取り付けた、一つまたは複数の樹枝を支える、支柱または架構とからなり、前記樹枝支持用骨組、前記樹木または樹枝を支える支柱、架構、または、連結金物を交換、追加、削減可能なように構成したことを特徴とする立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項2】
前記建築躯体に樹枝支持用骨組を、建築躯体に取り付けたアンカーにボルト接合するなど、容易に取り付け、取り外し可能な方法で、取り付け、前記樹枝支持用骨組に、前記格子、網状等の樹枝支持用骨組、前記樹木または樹枝を支える支柱、架構、または、連結金物を取り付けたことを特徴とする請求項1記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項3】
前記建築躯体に支柱を取り付けまたは一体施工し、建築躯体上に施工した防水層を、支柱上部に取り付けまたは一体施工された笠木下まで立ち上げ、前記笠木に腕木を取り付け、前記腕木または笠木に、前記樹枝支持用骨組または連結金物を取り付けたことを特徴とする請求項1記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項4】
前記樹枝支持用骨組に連結金物を取り付け、連結金物に鋼線を連結し、前記鋼線と樹木を連結して樹木を支持することを特徴とする請求項1〜3記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項5】
前記樹枝支持用骨組に連結金物を取り付け、前記連結金物と丸太などの支柱脚に外嵌した連結金物を接合して、前記支柱上部と樹木を連結することによって、樹木を支持することを特徴とする請求項1〜3記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項6】
複層建築物に敷設する立体庭園の樹木の支持において、
丸太などの支柱上部に外嵌した筒状等の連結金物と、樹木に外嵌した筒状等の連結金物を接合することによって、樹木を支持することを特徴とする樹木の支持システム。
【請求項7】
前記筒状等の連結金物を、二つに分割、双方をヒンジ接合する等によって、樹木に外嵌、取り外しできるようにして、樹木に被し、ボルト等の連結金物で、前記筒状等の連結金物を樹木に外嵌、固定し、前記筒状等の連結金物に取り付けられた連結金物と、丸太などの支柱上部に外嵌した連結金物を接合することによって、樹木を支持することを特徴とする請求項6記載の樹木の支持システム。
【請求項8】
複層建築物に敷設する立体庭園の樹木の支持において、
樹木に布、革製等のベルトを締め付け、前記ベルトに取り付けられた連結金物と、丸太などの支柱上部に外嵌した連結金物を接合することによって、樹木を支持することを特徴とする樹木の支持システム。
【請求項9】
前記連結金物を、片方はヒンジ付きボルトまたはヒンジ付きボルト付き、別な片方はヒンジ付きプレートまたはヒンジ付きプレート付きとして、連結金物を相互にヒンジ接合して支柱等を自由な角度に調整できることを特徴とする請求項1〜3までまたは4〜7までのいずれか一つに記載の樹木の支持システム。
【請求項10】
樹木の根を前記樹枝支持用骨組に絡ませた後立体庭園へ搬入し、建築躯体に前記樹枝支持用骨組を取り付けることを特徴とする請求項1〜5までのいずれか一つに記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項11】
前記樹枝支持用骨組を3次元網状体としたことを特徴とする請求項1〜5までまたは10のいずれか一つに記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項12】
前記樹枝支持用骨組、前記樹木または樹枝を支える支柱、架構、または、連結金物を建築躯体の替りに防水層上のコンクリートに取り付け、防水層上に張り付けまたは設置したことを特徴とする請求項1〜5または10〜11までのいずれか一つに記載の立体庭園における樹木の支持システム。
【請求項13】
前記樹枝支持用骨組、支柱または架構等に、炭素繊維、合成樹脂、金属または木材を用いたことを特徴とする請求項1〜5または10〜12までいずれか一つに記載の立体庭園における樹木の支持システム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate