説明

複数ポイント式サーボプレス装置

【課題】複数のクランク構造により昇降されるスライドをもつサーボプレス装置において、各クランク構造を駆動するメインギヤ同士の同期を完全にとるとともに、簡単な構造で、効率がよく小型な動力伝達構造が実現できるサーボプレス装置を提供する。
【解決手段】複数のクランク構造により昇降されるスライド301をもつ複数ポイント式サーボプレス装置において、サーボモータ321a,321bによって駆動される同期分配ギヤ313a,313b,315a,315bと、前記同期分配ギヤによって同期されながら駆動される複数のメインギヤ317a,317bと、前記各メインギヤにより各クランク構造を駆動することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサーボプレス装置、特に複数ポイントで加圧する大型のサーボプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータで駆動されるサーボプレス機械は、様々なスライドモーションができることから、例えば、プレス負荷直前に減速して絞り加工をしやすくしたり、あるいは、同じくプレス負荷時に減速して騒音を下げたり、または、スライドの下死点付近でスライドを上下させるいわゆる振り子運転による生産性向上などに利用される。大型のサーボプレス装置はスライドを複数点で加圧する複数ポイント駆動が採用される。これに伴い、各ポイントを駆動するメインギヤ同士を直接的または間接的にギヤで機械的に接続し、互いに加圧ポイントの同期をとって駆動する方式が採用される。サーボモータによりメインギヤを直接または間接的に駆動して、複数ポイント式サーボプレスを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−17089号公報
【特許文献2】米国特許第7102316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、2モータによって大型サーボプレス化を実現することが記載されている。2ポイント機ではメインギヤ同士を直接的に接続、または、中間ギヤを介して間接的に接続することが記載されている。
【0005】
また、特許文献2によれば、同期専用の中間ギヤを介してメインギヤ同士を間接的に接続することが記載されている。
【0006】
このような接続方法は2つの加圧ポイント(クランク構造)の力の分配はできるものの、偏心荷重等で各ポイント点での負荷は同一ではない場合、次の課題がある。すなわち、同期専用の中間ギヤを介してメインギヤ同士を接続する方式では、各ポイントから受けて各メインギヤで負担するトルク(負荷)が違う場合、このアンバランス分をメインギヤ同士を結ぶ中間ギアで負担することになる。この場合、メインギヤを結ぶギヤ歯のバックラッシュの影響を受けるが、中間ギアの介在でギア段数が多くなってギヤのバックラッシュの総和が大きく、トルクが遅れて伝わる。従って、過渡的に各ポイント負荷のアンバランス分が遅れて伝わるので、2つのポイント間の精度が出ない(スライド水平度が出ない)問題がある。また、同期専用の中間ギヤが別途必要となって、その分だけ損失が増加すると共に、装置が大型化する課題もある。
【0007】
一方、メインギヤ同士を接続して同期をとる方式では、メインギヤの直径が大きいため、ギヤの温度上昇による伸び量が大きくなる。従って、これを考慮してギヤの噛み合わせを円滑に行なわせるため、ギヤのクリアランスが大きめになり、バックラッシュはより大きくなる課題がある。
【0008】
さらに、一方のメインギヤのみをサーボモータによって駆動して、他のメインギヤにトルクを伝える方式は、一方のギヤがまず全駆動トルクを受けるので、一方のメインギヤのギヤ幅が大きくなる課題がある。すなわち、一方のメインギアは、自身のメインギアのクランク機構で消費するトルク分と、他方のメインギヤに受け渡すトルク分の両方のトルクを受けるので、ギヤの歯幅が他方のメインギヤの倍になり、ギヤが大型となる。
【0009】
本発明は前記課題に対してなされたもので、その目的とするところは、複数のポイントにより昇降されるスライドをもつサーボプレス装置において、各クランク構造を駆動するメインギヤ同士の同期を完全にとるとともに、簡単な構造で、効率がよく小型な動力伝達構造が実現できる複数ポイント式サーボプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のクランク構造により昇降されるスライドをもつ複数ポイント式サーボプレス装置において、トルク発生源(サーボモータ)からのトルクを分配機構(同期分配ギヤ)に直接伝え、各クランク構造を構成する各メインギヤに分配機構からトルクを直接的に伝え、同時に分配機構で各メインギアの同期をとることにより、複数ポイント式サーボプレス装置を実現する。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するため、複数のクランク構造により昇降されるスライドをもつ複数ポイント式サーボプレス装置において、サーボモータによって駆動される同期分配ギヤと、前記同期分配ギヤによって同期して駆動される複数のメインギヤと、前記各メインギヤにより各クランク構造を駆動することを特徴とする。
【0012】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記同期分配ギヤは少なくとも一つのサーボモータにより駆動され、該同期分配ギヤにより複数のメインギヤを駆動することを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記同期分配ギヤは2組のサーボモータにより駆動され、一方の組のサーボモータによって駆動される同期分配ギヤにより一方のメインギヤを駆動し、他の組のサーボモータによって駆動される同期分配ギヤにより他方のメインギヤを駆動し、各同期分配ギヤ同士が同期接続されることを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記メインギヤは2組からなり、前記同期分配ギヤはサーボモータのドライブギアと噛合う同期分配大ギアと、前記同期分配大ギアと同時に回転する第1同期分配小ギアと、前記第1同期分配小ギアと噛合う第2同期分配小ギアからなり、前記第1同期分配小ギアが一方の組のメインギヤと噛み合ってトルクを伝えると共に、前記第2同期分配小ギアが他の組のメインギヤと噛合ってトルクを伝達し、前記第1と第2の同期分配小ギヤの噛み合いにより前記2組のメインギアを同期させることを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記サーボモータとメインギアはそれぞれ2組からなり、前記同期分配ギヤは各サーボモータのドライブギアとそれぞれ噛合う第1同期分配大ギアと第2同期分配大ギア、前記第1同期分配大ギアと共に回転する第1同期分配小ギア、および前記第2同期分配大ギアと共に回転する第2同期分配小ギアからなり、前記第1同期分配小ギアが一方の組のメインギヤと噛み合ってトルクを伝えると共に、前記第2同期分配小ギアが他の組のメインギヤと噛合ってトルクを伝達し、前記第1と第2の同期分配小ギヤの噛み合いにより前記2組のメインギアを同期させることを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記サーボモータとメインギアはそれぞれ2組からなり、前記同期分配ギヤは各サーボモータのドライブギアとそれぞれ噛合う第1同期分配大ギアと第2同期分配大ギア、前記第1同期分配大ギアと共に回転する第1同期分配小ギア、および前記第2同期分配大ギアと共に回転する第2同期分配小ギアからなり、前記第1同期分配小ギアが一方の組のメインギヤと噛み合ってトルクを伝えると共に、前記第2同期分配小ギアが他の組のメインギヤと噛合ってトルクを伝達し、前記第1と第2の同期分配大ギヤの噛み合いにより前記2組のメインギアを同期させることを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記サーボモータは前記ドライブギアの駆動軸に複数台のサーボモータが接続されていることを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記サーボモータは前記ドライブギアの両側に複数台のサーボモータが接続されていることを特徴とする。
【0019】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記サーボモータは前記ドライブギアの一方側に複数台のサーボモータが接続されていることを特徴とする。
【0020】
また、上記に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、前記ドライブギアの一方側に接続された複数台のサーボモータは、同一フレーム内に収納されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の動力伝達機構によるサーボプレス装置は、同期分配ギヤにより、各メインギヤに直接トルクを与えた状態で、各メインギヤの同期を図ることができるので、ギヤのバックラッシュを小さくできる。同期専用のギヤを設けないので、ギヤのバックラッシュが小さく、スライド位置精度の低下が少なく応答性がよい。また、少ないギヤによる駆動が可能なために、構造が簡単、損失が小さく、小型化できるので、慣性モーメントもその分小さくでき高速応答が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の基本原理を示す基本構成図。
【図2】本発明の実施例1の構成図。
【図3】本発明の実施例1の断面図。
【図4】本発明の実施例2の構成図。
【図5】本発明の実施例2の上面図。
【図6】本発明の実施例2の制御構成図。
【図7】本発明の実施例3の構成図。
【図8】本発明の実施例3の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図8を利用して説明する。
【0024】
図1は本発明の動力伝達構造の原理を示す基本構成図である。複数の加圧ポイントをもつ大型プレス装置を対象とする。トルク発生源(サーボモータ)からのトルクを分配機構(同期分配ギヤ)に直接伝え、各クランク機構を構成するメインギヤA、メインギヤBに分配機構からのトルクを直接的に伝え、同時に分配機構内で両メインギアの同期をとっており、このような構造を採用することにより、前記課題の解決を図ることができる。
【実施例1】
【0025】
図1の原理を実現するサーボプレスの実施例1の構造例を図2、図3に示す。図は本発明実施例の関係部分を簡易的に表現している。図はエキセンプレスの構造である。
【0026】
サーボプレス装置のフレーム31にサーボモータ21が取り付けられている。サーボモータ21の出力軸は駆動軸11に連結されている。駆動軸11にはドライブギヤ12が設けられている。フレーム31にピン32が設けられ、ピン32の両端はフレーム31に固定されている。ピン32には同期分配軸14aが係合し、同期分配軸14aには同期分配大ギヤ13と同期分配小ギヤ(第1同期分配小ギヤ)15aが設けられている。同期分配小ギア15aは同期分配大ギア13と一体的に形成され同時に回転する。この同期分配大ギヤ13は前記のドライブギヤ12と噛み合ってトルクが伝達される。
【0027】
さらに、フレーム31にはピン33が設けられ、ピン33の両端はフレーム31に固定されている。ピン33には同期分配軸14bが係合し、同期分配軸14bには同期分配小ギヤ(第2同期分配小ギヤ)15bが設けられている。同期分配小ギヤ15bは、前記の同期分配小ギヤ15aと噛み合ってトルクが伝達される。
【0028】
フレーム31にはピン34が設けられ、ピン34の両端はフレーム31に固定されている。ピン34には偏心リング4aが係合し、偏心リング4aにメインギヤ17aが固定され、メインギヤ(一方の組のメインギア)17aは前記同期分配小ギヤ15aと噛み合っている。偏心リング4aはメインギヤ17aと一緒に回転する。
【0029】
さらに、フレーム31にはピン35が設けられ、ピン35の両端はフレーム31に固定されている。ピン35には偏心リング4bが係合し、偏心リング4bにメインギヤ17bが固定され、メインギヤ(他方の組のメインギア)17bは前記同期分配小ギヤ15bと噛み合っている。偏心リング4はメインギヤ17bと一緒に回転する。
【0030】
次に、偏心リング4aの偏心部がコンロッド2aの大径部の穴2a1に係合し、コンロッド2aの下端部はスライド1に連結されている。また、偏心リング4bの偏心部がコンロッド2bの大径部の穴2b1に係合し、コンロッド2bの下端部はスライド1に連結されている。
【0031】
スライド1は偏心リング4aとコンロッド2aにより構成されるクランク機構と、偏心リング4bとコンロッド2bにより構成されるクランク機構との2ポイントで昇降運動を行う。すなわち、メインギヤ17aと17bの回転によるクランク構造によって昇降する。
【0032】
上記構成において、サーボモータ21のトルクは、同期分配ギヤ13、15a、15bを介して直接にメインギヤ17aと17bに伝達され、かつ、同期分配小ギヤ15a、15bでメインギヤ17aと17bの同期を図っている。すなわち、同期分配小ギヤ15a、15bが、メインギヤへのトルクの伝達とメインギヤ同士の同期をとるギアに兼ねている。したがって、メインギヤ同士の同期化を図るための専用のギヤは不要となる。このような構成で左右のメインギヤ17aと17bの同期化、すなわち、スライドの加圧点が同期して昇降がなされる。
【0033】
メインギヤ17a、17bはサーボモータ21の正転、逆転、速度可変制御により自由に回転駆動されるので、クランク機構のスライドモーションだけでなく、クランク機構以外のスライドモーション、成形方法に適合する静止を含む加減速モーション、或いは、正逆振り子モーションなど各種スライドモーションを自在に設定でき、これらの組み合わせや切替使用が可能である。このために、プレス成形体に対する成形精度の向上、生産性や適応性が拡大できる。サーボモータ21のモータとしては、永久磁石を用いた同期モータや、巻線界磁を用いた同期モータ、誘導モータ、リラクタンスモータなどが利用できる。
【0034】
さらに、このような交流モータでなく直流モータでもよい。ここでは、サーボモータ21は永久磁石同期モータとして説明する。また、図2はエキセンプレスによりクランク機構を構成する例を示したが、クランク軸を持ったクランク機構構成とすることもできる。さらに、本実施例の動力伝達構造はクランク機構でないリンクプレスやナックルプレスなど、他の機構のものにも適用できる。本発明ではこのような構造によりスライドを昇降させる構造全部をクランク構造と称する。また、コンロッドは2a、2bの2組を示したが、各加圧ポイントを複数のコンロッドで加圧する構造としてもよい。
【0035】
また、モータの能力、あるいは、プレス装置の所要加圧力から、モータ台数がさらに必要な場合、図2の同期分配大ギヤ13にドライブギヤをもつ別のサーボモータを噛み合わせたり、サーボモータ21の出力軸に2台以上のサーボモータを接続するようにしてもよい。
【0036】
本実施例の動力伝達機構によるサーボプレス装置は、同期分配小ギヤにより直接メインギヤにトルクを与え、各クランク機構を構成する各メインギヤ同士を同期分配小ギヤ同士を噛合わせて完全同期を図りながらスライドの駆動ができる。各メインギヤ同士を噛み合わせる専用のギヤを設けないので、ギヤの段数が少なくバックラッシュが小さく、スライド位置精度の低下が少なく、応答性がよい効果がある。また、熱膨張による変形量の少ない直径の小さな同期分配小ギアを噛合わせてメインギアの同期をとっているので、バックラッシュを小さくすることができる。さらに、メインギアを駆動した状態で同期分配小ギアで同期をとっているので、メインギアの片方の負荷が重くなっても、メインギアと同期分配小ギアの間、および同期分配小ギア同士の間のバックラッシュが小さい。
【0037】
また、各メインギヤ同士を噛み合わせる専用のギヤを設けないので、少ないギヤによる駆動が可能となり、構造が簡単で損失が小さく小型化でき、慣性モーメントもその分小さくなり高応答な駆動が可能、という効果がある。
【実施例2】
【0038】
図4、5は本発明の第2の実施例を示す構成図である。2ポイント式であり、各ポイントは2つのコンロッドで駆動される。図4は正面から見た図、図5は上部から見た模式図を示す。
【0039】
サーボプレス装置のフレーム331にサーボモータ321aが取り付けられ、サーボモータ321aの出力軸は駆動軸311aに連結され、駆動軸311aにはドライブギヤ312aが設けられている。フレーム331にピン332(図示せず)が設けられ、ピン332の両端はフレーム331に固定されている。ピン332には同期分配軸314aが係合している。同期分配軸314aには同期分配大ギヤ(第1同期分配大ギヤ)313aと同期分配小ギヤ(第1同期分配小ギヤ)315aが設けられている。同期分配大ギヤ313aは前記のドライブギヤ312aと噛み合っている。
【0040】
また、フレーム331には両端が固定された状態でピン334が設けられている。ピン334には偏心リング304aと304a−2が係合している。偏心リング304aと304a−2は、メインギヤ317aの両側に固定され、メインギヤ317aと一緒に回転する。メインギヤ(一方の組のメインギア)317aは前記同期分配小ギヤ315aと噛み合っている。
【0041】
偏心リング304aの偏心部がコンロッド302aの大径部の穴302a1に係合している。コンロッド302aの下端部はスライド301に連結されている。偏心リング304a−2の偏心部がコンロッド302a−2(図示せず)の大径部の穴に係合している。コンロッド302a−2の下端部はスライド301に連結されている。
【0042】
次に、フレーム331にサーボモータ321bが取り付けられている。サーボモータ321bの出力軸は駆動軸311bに連結されている。駆動軸311bにはドライブギヤ312bが設けられている。フレーム331にはピン333(図示せず)が設けられている。ピン333の両端はフレーム331に固定されている。ピン333には同期分配軸314bが係合している。同期分配軸314bには同期分配大ギヤ(第2同期分配大ギア)313bと同期分配小ギヤ(第2同期分配小ギア)315bが設けられている。同期分配大ギヤ313bは前記ドライブギヤ312bと噛み合っている。
【0043】
さらに、フレーム331にはピン335が設けられている。ピン335の両端はフレーム331に固定されている。ピン335には偏心リング304bと304b−2が係合している。偏心リング304bと304b−2はメインギヤ317bの両側に固定され、メインギヤ317bと一緒に回転する。メインギヤ(他方の組のメインギア)317bは前記同期分配小ギヤ315bと噛み合っている。偏心リング304bの偏心部がコンロッド302bの大径部の穴302b1に係合している。コンロッド302bの下端部はスライド301に連結されている。偏心リング304b−2の偏心部がコンロッド302b−2(図示せず)の大径部の穴に係合している。コンロッド302b−2の下端部はスライド301に連結されている。また、同期分配小ギヤ315aと同期分配小ギヤ315b同士は噛み合って、同期をとっている。
【0044】
以上のようにして、偏心リング304aとコンロッド302aによりクランク機構を構成し、偏心リング304a−2とコンロッド302a−2(図示せず)によりクランク機構を構成し、さらに、偏心リング304bとコンロッド302bによりクランク機構を構成し、偏心リング304b−2とコンロッド302b−2(図示せず)によりクランク機構を構成する。スライド301はこれらの複数のクランク機構により昇降運動を行う。すなわち、メインギヤ317aと317bの回転によるクランク構造の動作によって昇降する。このように本実施例は、2ポイント駆動であり、各ポイントはメインギヤ317aと317bの両側にそれぞれ配置された2つのコンロッドで駆動される。
【0045】
本実施例では、スライドの停止保持や、非常時の停止のためにメカブレーキ装置を配置している。サーボモータ321aの駆動軸311aにはメカブレーキ装置341aを、サーボモータ321bの駆動軸311bにはメカブレーキ装置341bを接続している。図5の他に、ブレーキ装置は、モータの出力軸(駆動軸に連結)の負荷とは反対側に設置したり、さらに、同期分配軸に配置することもできる。
【0046】
本実施例では、図5に示すように、同期分配小ギア315aと315bの噛合い部分を中心に点対称に、サーボモータ321aと321b、同期分配大ギア313aと313b、ドライブギヤ312aと312b、ブレーキ装置341aと341bがそれぞれ配置されている。また、各偏心リング304がメインギア317の両側に固定されている。したがって、フレーム331に取付けられた機構の重心の位置が装置の中央(中間)付近になり、スライド301を2つのコンロッドでバランス良く駆動することができ、この駆動の際に衝撃があってもサーボプレス装置に捻じれが起きにくい。
【0047】
なお、上記実施例ではサーボモータ321aと321bはフレーム331に取付けられている。プレス構造から、これらのサーボモータをフレーム331の上部に取付けてもフレーム内に取付けることと等価である。
【0048】
図6は2台のサーボモータを用いる場合の制御系の構成例を示すブロック図である。図において、サーボモータ321aの軸端にモータの回転位置を検出するエンコーダ61aが接続され、サーボモータ321bの軸端にモータの回転位置を検出するエンコーダ61bが接続される。エンコーダ61bの回転信号は位置指令/位置/速度制御部63に入力され、エンコーダ61bが接続された駆動軸311bをマスター軸とし、サーボモータ321aの回転位置と回転速度、サーボモータ321bの回転位置と回転速度が制御される。
【0049】
位置指令/位置/速度制御部63は、スライドの位置指令からモータの位置/速度を演算して、時々刻々のモータの位置指令を作り、これに基づいて位置/速度の制御をし、各サーボモータに同一のトルク指令を演算して出力する。位置指令/位置/速度制御部63からのトルク指令は各モータを駆動するトルク制御部62(62a、62b)に入力される。
【0050】
トルク制御部62a、62bは同一構成で、トルク指令に応じて各モータに流れる電流制御を実施する。トルク制御部62はトルク指令に応じて電流指令発生部、電流制御部、PWM制御部、パワー素子から構成されるパワー制御部、モータに流れる電流を検出する電流検出部などから構成され、詳細構成は周知であるので省略する。
【0051】
エンコーダ61(61a、61b)からの信号は、それぞれのモータの磁極位置を検出する信号としても利用され、対応する各トルク制御部62a、62bに入力される。
【0052】
このように構成すると、駆動軸311bをマスター軸、駆動軸311aをスレーブ軸としてマスター、スレーブ駆動が行なえ、各モータが同一トルクを出しながらバランスの良い運転で、スライドの位置、速度が制御される。
【0053】
本実施例の動力伝達機構によるサーボプレス装置は、複数のモータそれぞれが同期分配ギヤを駆動し、各同期分配ギヤがそれぞれのメインギヤを駆動させると同時に、同期分配ギヤ同士を噛み合わせるだけで各クランク機構を構成する各メインギヤ同士の完全同期を図りながらスライドの駆動ができる。
【0054】
各メインギヤ同士を噛み合わせる専用のギヤを設けないので、ギヤの段数が少なくバックラッシュが小さく、スライド位置精度の低下が少なく、応答性がよい効果がある。また、熱膨張による変形量の少ない直径の小さな同期分配小ギアを噛合わせてメインギアの同期をとっているので、バックラッシュを小さくすることができる。さらに、メインギアを駆動した状態で同期分配小ギアで同期をとっているので、メインギアの片方の負荷が重くなっても、メインギアと同期分配小ギアの間、および同期分配小ギア同士の間のバックラッシュの影響は小さい。すなわち、少ないギア伝達噛み合わせでトルク補完するのでバックラッシュの影響を小さくできる。
【0055】
また、メインギア同士の同期をとるのに、同期分配小ギアを噛合わせているので、メインギア同士と共に、各クランク機構を接近させて配置することができ、サーボプレス装置をコンパクトに構成することができる。
【0056】
また、メインギヤにかかるトルクはモータ一組分だけでギヤ責務が小さい。さらに、少ないギヤによる駆動が可能なために、構造が簡単、損失が小さい、小型化できる、慣性モーメントもその分小さくでき高応答な駆動が可能である。
【0057】
本実施例では、複数モータ駆動に適した構造であり、実施例1よりさらに大型のサーボプレスに適用が容易になる。なお、モータの能力、あるいは、プレス装置の所要加圧力から、モータ台数がさらに必要な場合、図4の同期分配大ギヤ313aと313bにドライブギヤをもつ別のサーボモータを噛み合わせたり、サーボモータ321aと321bの出力軸に2台以上のサーボモータを接続するようにしてもよいのは実施例1と同じである。
【実施例3】
【0058】
図7は本発明の実施例3の構成図である。実施例2の構成に対し、メインギアの同期をとるのに同期分配ギヤの噛み合わせたを変えたものである。
【0059】
偏心リング1302aの偏心部がコンロッド1303aの大径部の穴1303a1に係合している。コンロッド1303bの下端部はスライド1301に連結されている。また、偏心リング1302bの偏心部がコンロッド1303bの大径部の穴1303b1に係合している。コンロッド1303aの下端部はスライド1301に連結されている。偏心リング1302a、1302bの一端にはそれぞれメインギヤ1311a(一方の組のメインギア)、1311b(他方の組のメインギア)が接続されている。
【0060】
メインギヤ1311aは同期分配小ギヤ(第1同期分配小ギヤ)1314aと噛み合わされ、その同期分配ギヤ軸に接続された同期分配大ギヤ(第1同期分配大ギヤ)1313aはドライブギヤ1312aと噛み合わされている。ドライブギヤ1312aはサーボモータ群1321aに接続される。また、メインギヤ1311bは同期分配小ギヤ(第2同期分配小ギヤ)1314bと噛み合わされ、その同期分配ギヤ軸に接続された同期分配大ギヤ(第2同期分配大ギヤ)1313bはドライブギヤ1312bと噛み合わされている。ドライブギヤ1312bはサーボモータ群1321bに接続される。
【0061】
さらに、同期分配大ギヤ1313aと1313bは噛み合わされており、これを介してメインギヤ1311aと1311bが互いに同期接続される。このように、左右のメインギヤ1311aと1311bは、同期化が図られながら、サーボモータ群1321aと1321bによって駆動される。図示の例では、メインギヤ1311aと1311bは互いに逆方向の回転である。また、サーボモータ群1321a、1321bは後述するように同一軸に複数のモータが接続されている。
【0062】
実施例2(図4)の構成と比較して、同期分配ギヤによりモータ駆動軸からのトルクが2段減速されてメインギヤ1311a、1311bを駆動する際、同期分配大ギヤ1313aと1313b同士が噛み合っているので、コンロッド1303aと1303bの間隔が自由にとれ、設計の自由度が向上する。
【0063】
すなわち、実施例2と比べ、同期分配大ギア1313aと1313bが噛み合うことで、同期分配大ギア同士の間隔と同期分配小ギア1314a、1314b同士の間隔が広がる。この間隔の広がった同期分配小ギアに噛み合わせるメインギア1311aと1311bの間隔も広げることができる。メインギア1311aと1311bの間隔は、同期分配小ギア1314a、1314bに噛み合った状態で、矢印方向に大きく調整できるので、コンロッド1303aと1303bの間隔調整幅を大きくとることができる。
【0064】
図8はモータ接続の具体構成例を示す。図8において、図7と部品番号が同一のギヤは同一物を表わす。
【0065】
図8(a)、(b)のサーボモータ群1321aは、同一モータ駆動軸に2台のサーボモータが接続されている。サーボモータ群1321bは、同一モータ駆動軸に2台のサーボモータが接続されている。
【0066】
図8(a)はドライブギヤ1312a,1312bの両側にモータを配置した例で、ドライブギヤ1312aの両側にそれぞれサーボモータ1321a1、1321a2が接続され、ドライブギヤ1312bの両側にそれぞれサーボモータ1321b1、1321b2が接続されている。このように、ドライブギヤの両側にサーボモータを配置することで、ドライブギヤが両側からモータ駆動軸で支持されるので、ドライブギアを片方から片持ち状態で支持するものに比べ、バランスの良い回転が出来る。
【0067】
図8(b)はドライブギヤ1312aの一方側にモータ1321a3、1321a4、および、ドライブギヤ1312bの一方側に1321b3、1321b4を配置した例である。このような構成とすることにより、モータ駆動軸の短縮化が可能になる。
【0068】
図8(c)は、複数モータのステータ部とロータ部(図の破線部)を同一フレーム内に収納した例で、いわゆるタンデム構造のモータ1321a5、および、1321b5を配置している。図示のように、外見上は1モータ駆動であり、このような構造とすると、図8(b)と比べてモータ連結部が短いので、さらなる小型化が可能となる。
【0069】
図8に示すように、同期分配小ギア1314が同期分配大ギア1313の片面側に配置されているので、メインギア1311を片面側から同期分配小ギア1314へ噛合わせることができるので、噛合わせ作業が容易である。
【符号の説明】
【0070】
1、301、1301…スライド、2a、2b、302、1303a、1303b…コンロッド、4a、4b、304a、304b、1302a、1302b…偏心リング、11、311…駆動軸、12、312a、312b、1312a、1312b…ドライブギヤ、13、15a、15b、313a、313b、315a、315b、1313a、1313b、1314a、1314b…同期分配ギヤ、14、314a、314b…同期分配軸、17a、17b、317a、317b、1311a、1311b…メインギヤ、21、321a、312b、1321a、1321b…サーボモータ、31、331…フレーム、32、33、34、35、332、333、334、335…ピン、341a、341b…ブレーキ装置、61a、61b…エンコーダ、62a、62b…トルク制御部、63…位置指令/位置/速度制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクランク構造により昇降されるスライドをもつ複数ポイント式サーボプレス装置において、
サーボモータによって駆動される同期分配ギヤと、
前記同期分配ギヤによって同期して駆動される複数のメインギヤと、
前記各メインギヤにより各クランク構造を駆動することを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項2】
請求項1記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記同期分配ギヤは少なくとも一つのサーボモータにより駆動され、該同期分配ギヤにより複数のメインギヤを駆動することを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項3】
請求項1記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記同期分配ギヤは2組のサーボモータにより駆動され、一方の組のサーボモータによって駆動される同期分配ギヤにより一方のメインギヤを駆動し、他の組のサーボモータによって駆動される同期分配ギヤにより他方のメインギヤを駆動し、各同期分配ギヤ同士が同期接続されることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項4】
請求項2に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記メインギヤは2組からなり、前記同期分配ギヤはサーボモータのドライブギアと噛合う同期分配大ギアと、前記同期分配大ギアと同時に回転する第1同期分配小ギアと、前記第1同期分配小ギアと噛合う第2同期分配小ギアからなり、前記第1同期分配小ギアが一方の組のメインギヤと噛み合ってトルクを伝えると共に、前記第2同期分配小ギアが他の組のメインギヤと噛合ってトルクを伝達し、前記第1と第2の同期分配小ギヤの噛み合いにより前記2組のメインギアを同期させることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項5】
請求項3に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記サーボモータとメインギアはそれぞれ2組からなり、前記同期分配ギヤは各サーボモータのドライブギアとそれぞれ噛合う第1同期分配大ギアと第2同期分配大ギア、前記第1同期分配大ギアと共に回転する第1同期分配小ギア、および前記第2同期分配大ギアと共に回転する第2同期分配小ギアからなり、前記第1同期分配小ギアが一方の組のメインギヤと噛み合ってトルクを伝えると共に、前記第2同期分配小ギアが他の組のメインギヤと噛合ってトルクを伝達し、前記第1と第2の同期分配小ギヤの噛み合いにより前記2組のメインギアを同期させることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項6】
請求項3に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記サーボモータとメインギアはそれぞれ2組からなり、前記同期分配ギヤは各サーボモータのドライブギアとそれぞれ噛合う第1同期分配大ギアと第2同期分配大ギア、前記第1同期分配大ギアと共に回転する第1同期分配小ギア、および前記第2同期分配大ギアと共に回転する第2同期分配小ギアからなり、前記第1同期分配小ギアが一方の組のメインギヤと噛み合ってトルクを伝えると共に、前記第2同期分配小ギアが他の組のメインギヤと噛合ってトルクを伝達し、前記第1と第2の同期分配大ギヤの噛み合いにより前記2組のメインギアを同期させることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記サーボモータは前記ドライブギアの駆動軸に複数台のサーボモータが接続されていることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項8】
請求項7に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記サーボモータは前記ドライブギアの両側に複数台のサーボモータが接続されていることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項9】
請求項7に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記サーボモータは前記ドライブギアの一方側に複数台のサーボモータが接続されていることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。
【請求項10】
請求項9に記載の複数ポイント式サーボプレス装置において、
前記ドライブギアの一方側に接続された複数台のサーボモータは、同一フレーム内に収納されていることを特徴とする複数ポイント式サーボプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−6075(P2012−6075A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84798(P2011−84798)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】