複極式電解槽
【課題】電極板のスペーサに対する向きを容易に判別して、複極式電解槽の誤組立てを容易かつ確実に防止することができ、又、電解効率の早期低下を防止することができる複極式電解槽を提供する。
【解決手段】筐体2と、電極板3と、電極板3を配置させる段部を有する板状のスペーサ4とを備え、電極板3の一の板面3aが一方向を向くよう電極板3を段部に配置させたスペーサ4を複数連結し電解室を形成した複極式電解槽1であって、スペーサ4の段部又は電極板3のいずれか一方に被係合部が設けられ、他方に係合部10Aが形成され、被係合部と係合部10Aとは、電極板3をその一の板面3aを一方向に向けて段部に配置させたときには対応する位置関係となって電極板3の段部内への配置を許し、電極板3を他の板面3bを一方向に向けて段部に配置させたときには非対応の位置関係となって電極板の段部内への配置を阻止するよう形成されていることを特徴とする。
【解決手段】筐体2と、電極板3と、電極板3を配置させる段部を有する板状のスペーサ4とを備え、電極板3の一の板面3aが一方向を向くよう電極板3を段部に配置させたスペーサ4を複数連結し電解室を形成した複極式電解槽1であって、スペーサ4の段部又は電極板3のいずれか一方に被係合部が設けられ、他方に係合部10Aが形成され、被係合部と係合部10Aとは、電極板3をその一の板面3aを一方向に向けて段部に配置させたときには対応する位置関係となって電極板3の段部内への配置を許し、電極板3を他の板面3bを一方向に向けて段部に配置させたときには非対応の位置関係となって電極板の段部内への配置を阻止するよう形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解殺菌水を生成する電解水製造装置に備えられた複極式電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品製造分野等においては、食品やこれを製造する機器を殺菌洗浄する電解殺菌水を生成するために、複極式電解槽を備えた電解水製造装置が用いられている(例えば、特許文献1)。この複極式電解槽は、酸化チタン等からなる電極板を多数配列するとともに、隣接する電極板が短絡してしまわないように各電極板の間に絶縁体のスペーサを配して、電極板間がそれぞれ独立した電解室を形成する構成とされている。電解槽の電極板の基材にコーティングする触媒は、白金(Pt)やイリジウム(Ir)など貴金属類からなっており、コストが高いため、比較的に安価で強度・加工性・耐食性に優れたチタン金属の表面に薄く触媒をコーティングすることで、コストを抑えている。また、陰極と陽極では、発生する物質が異なるので、異なる触媒を使用することもある。
塩酸電解用の電極板は、通常、チタンからなる基材上に、PrやIr等の触媒をコーティングしたものを用いる。特に、陽極面における塩素ガスの発生には、PtまたはIrは必須であり、それらのコーティング量に比例して、電極の寿命も長くなることが知られている。
一方、陰極面における水素ガスの発生には、PtまたはIrは必須ではなく、陽極面と異なる触媒をコーティングすることがある。また、基材がチタンの場合、触媒のコーティング無しでも水素ガスの発生は可能であるため、一枚の電極板の表裏で、陰陽両面が存在する電極の最も単純な形態である、片面のみのコーティングも利用することができる。
そして、複極式電解槽の組み立てにおいては、プラチナ、酸化イリジウム等でコーティングした一の板面をプラス側となる向きにして、電極板及びスペーサを配置し、この板面において塩素を発生させ、他の板面において水素を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−058052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の複極式電解槽によれば、電極板の板面の表裏面の確認により板面の向きを判別してスペーサに配置していたため、電極板の向きを誤ってスペーサに配置することにより、正常な電気分解ができなくなる電解槽を組み立てる可能性があるという問題があった。
【0005】
また、電極板の誤配置により複極式電解槽の電気分解効率を早期に低下させてしまうという問題があった。
【0006】
また、電極板の誤配置を防止するためには、電極板の表裏面を十分に確認して行う必要があるため、複極式電解槽の組立作業の効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電極板のスペーサに対する向きを容易に判別して、複極式電解槽の誤組立てを容易かつ確実に防止することができ、また、電解効率の早期低下を防止することができる複極式電解槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の手段を提供している。
すなわち、本願の請求項1に係る複極式電解槽は、筐体と、電解質溶液を電気分解して電解生成物質を生成する電極板と、該電極板を配置させる段部を有する板状のスペーサとを備え、前記電極板の一の板面が一方向を向くように該電極板を前記段部に配置させた前記スペーサを複数連結し、これら電極板とスペーサとによって電解室を形成して前記筐体の内部に配置した複極式電解槽であって、前記スペーサの段部又は前記電極板のいずれか一方に被係合部が設けられるとともに、前記一方に対する他方に係合部が形成され、前記被係合部と前記係合部とは、前記電極板をその一の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには互いに対応する位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を許すとともに、前記電極板をその他の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには相互に非対応の位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を阻止するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項2に係る複極式電解槽は、請求項1に記載の複極式電解槽であって、前記被係合部は、前記段部に形成された突出壁部又は突起部であり、前記係合部は、前記電極板に形成された切欠部又は孔であることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項3に係る複極式電解槽は、請求項1又は2に記載の複極式電解槽であって、前記スペーサには、その板面上に形成された掛止部と、他のスペーサの前記掛止部を掛止させて該他のスペーサと連結させる被掛止部とが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項4に係る複極式電解槽は、請求項3に記載の複極式電解槽であって、前記スペーサの一の板面には、嵌合凸部が形成され、前記スペーサの他の板面には、前記他のスペーサの前記一の板面の嵌合凸部を嵌合させて前記スペーサ同士の前記連結を保持する嵌合凹部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複極式電解槽によれば、電極板の一の板面を一方向に向けて前記段部に配置させたときには互いに対応する位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を許すとともに、前記電極板の他の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには相互に非対応の位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を阻止する係合部及び被係合部が電極板及びスペーサのそれぞれに形成されている。すなわち、電極板を所定の向き以外でスペーサに組み込むことができないようになっている。したがって、電極板の表裏面の別を設けている場合に電極板を誤った向きで配置させることがなく、電極板の誤配置による該電極板の腐食を回避し、電極板の寿命が短くなるのを防止することができるという効果を奏する。
【0013】
また、複極式電解槽の電解効率を長期間維持することができるという効果を奏する。
【0014】
また、電極板の向きの判別が容易になるため、複極式電解槽の組み立てを簡便かつ効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽を示す図であって、複極式電解槽を一方向から見た分解斜視図である。
【図2】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の縦断面図である。
【図3】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽のスペーサを示した図であり、(a)は該スペーサの正面図であり、(b)は該スペーサの側面図であり、(c)は該スペーサの背面図である。
【図4】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽のスペーサを示した図であり、(a)は該スペーサを背面方向から見た斜視図であり、(b)は該スペーサを正面方向から見た斜視図である。
【図5】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサを示した図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図であり、(c)は電極板の背面図であり、(d)はスペーサの正面図である。
【図6】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽のスペーサ同士の連結状態を一部を拡大して示した斜視図である。
【図7】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサの連結方法を示した説明図である。
【図8】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサの連結した状態を示した斜視図である。
【図9】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサの変形例を示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図である。
【図10】は、本発明の第2の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサを示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図であり、(c)は電極板の背面図であり、(d)はスペーサの正面図である。
【図11】は、本発明の第3の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサを示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図であり、(c)は電極板の背面図であり、(d)はスペーサの正面図である。
【図12】は、本発明の第1の実施形態の複極式電解槽の電極板及びスペーサの変形例を示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図である。
【図13】は、本発明の第2の実施形態の複極式電解槽の電極板及びスペーサの変形例を示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る複極式電解槽の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明による複極式電解槽の第1の実施形態を示す図であって、複極式電解槽1を一方向から見た分解斜視図である。
この図に示すように、複極式電解槽1は、筐体2内に複数の電極板3、複数のスペーサ4を配して構成されたものである。
【0018】
筐体2は、側板5A、5Bと胴体6とからなるものであり、これらは塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂により形成されたものである。
【0019】
側板5A、5Bは、所定の厚みを有する外観矩形の板状体であり、それぞれその中央部に厚み方向に貫通する電極棒挿入孔7が形成され、側板5Aの下部には、厚み方向に貫通する電解質溶液供給用の供給孔8が形成され、側板5Bの上部には、厚み方向に貫通する電解生成物取出し用の取出孔9が形成されている。
【0020】
図2は、組み立てられた状態の複極式電解槽1の縦断面図であって、図1における電極棒挿入孔7の中心における断面を示している。
図2に示すように、側板5A、5Bには、それぞれ対向する内面に係合段部11が形成され、外面中央部に凹部12が形成されている。また、前述した供給孔8は大径部8aと小径部8bとからなっており、取出孔9は大径部9aと小径部9bとからなっている。
また、側板5Aの内面中央部には、電極板3を嵌合させるための段部13が形成されている。
【0021】
胴体6は、円筒状に形成された部材であって、その一端部側に側板5Aが固定され、他端部側に側板5Bが固定されるようになっている。
【0022】
電極板3は、チタン合金等の金属製の板体であり、一の板面3aに例えば陽極用としてプラチナ等によるコーティングがなされている。他の板面3bには、陰極用としてコーティングがなされていることが望ましいが、本実施形態においてはコーティングはなされていない。
【0023】
また、図1に示すように、電極板3は、略正方形に形成されているとともに、電極板3の外縁の一端側に縁部の形状が略U字形となる切欠部10Aが形成されている。
【0024】
この切欠部10Aは、後述するスペーサ4の被係合部と対をなす係合部を構成するものであり、電極板3の一の板面3aを平面視して該切欠部10Aを有する外縁が上端に位置する向きにした場合、右端側において上方に向かって開口するように形成されている。
【0025】
各電極板3、3・・は、所定寸法を隔てて対向して配置された側板5A、5B間に、コーティングがなされた一の板面3aを側板5A、5B間方向の一方向に向けて並べて配置されており、図2に示すように、各電極板3、3・・のうち、両端に配置される電極板3には、その中央部に金属製の電極棒21A,21Bが固定されている。
【0026】
電極棒21A,21Bは、一端部に頭部22が形成され、他端部外面に雄螺子部23が形成されたものであり、頭部22が電極板3の中央部に固定されている。
【0027】
スペーサ4は、図1に示すように、塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂等の合成樹脂により形成された板状の部材であり、円筒状の胴体6内に収まるように円形に形成されたものである。
各スペーサ4、4・・は、各電極板3、3・・間に位置するように、各電極板3、3・・と交互に配置され、それぞれ一の板面を側板5A、5B間方向の一方向に向けて並べて配置されている。
【0028】
図3(a)〜(c)、図4(a)、(b)は、スペーサ4の構成を示している。
これらの図に示すようにスペーサ4は、円形の板状体の中央部に、その板面間方向、すなわち厚み方向に貫通する中空孔24が形成されたものである。中空孔24は、その輪郭が正方形であり、前述した電極板3よりも各辺の寸法がやや小寸法となるように形成されている。
【0029】
このスペーサ4の一方の板面4aには、中空孔24の内壁面に沿って、その厚み方向に凹む段部25が形成されている。すなわち、段部25は、中空孔24の各辺に略沿う一定の幅寸法をもって、スペーサ4の厚み方向に凹むように形成されたものであり、前記各辺に沿う4つの凹部25a〜25dからなっている。
【0030】
凹部25aの一端部側の底面yには、スペーサ4の板面4a,4b間方向に突出した突起部35が形成されている。
この突起部35は、図4(b)に示すように、略円柱形状に形成され、被係合部を構成するものであり、図5(a),(b)に示すように、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させたときには切欠部10Aと対応する位置関係となって互いに係合して電極板3の段部25内への配置を許すが、同図(c)、(d)に示すように、コーティングがなされた一の板面3aを段部25の底面yに対向させた向きにしたときには電極板3の切欠部10Aと突起部35とが互いに非対応の位置関係となって、すなわち相互の係合位置がずれて電極板3の段部25内への配置を阻止するように形成されているものである。
【0031】
すなわち、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させた場合(図5(a)の場合)には、図5(b)に示すスペーサ4の突起部35と切欠部10Aとの位置が対応するため、両者を係合させることができるが、同図(a)に示す該電極板3を裏返して図(c)に示す向きにした場合には、他の板面3bをどの角度に回転させても突起部35と切欠部10Aとの位置が合わずに電極板3が突起部35に当接してしまい、電極板3の段部25への配置ができない構成になっている。
【0032】
突起部35の周辺においては、該突起部35を迂回するように、その周を廻って段部25が設けられている。
【0033】
このようにスペーサ4の段部25内には、図5(a),(b)に示すように、電極板3が一方向に向けられた場合にのみ嵌入可能になっている。
【0034】
また、段部25は、略中空孔24の各辺に沿う矩形の形状となっているが、この矩形形状の各辺外側の寸法は、電極板3の各辺より僅かに大きい寸法となっており、この段部25内に電極板3がしっくりと嵌合し、電極板3がスペーサ4の板面に沿う方向に徒に動かないようになっている。
また、段部25の前記厚み方向の深さは、電極板3の厚みと略同一寸法とされており、電極板3を嵌合させたときに、電極板3の板面3aとスペーサ4の板面4aとが面一状態となるように形成されている。
【0035】
スペーサ4には、図4(a),(b)に示すように、中空孔24の上下部において、掛止部26,26が形成されており、中空孔24の左右両側方の縁部において、掛止部26,26を掛止させる被掛止部27,27が形成されている。これら掛止部26及び被掛止部27は、図6に示すように隣接するスペーサ4,4同士を結合させるものであり、互いに隣接するスペーサ4、4において、一方のスペーサ4の被掛止部27、27に他方のスペーサ4の掛止部26、26を掛止させることによって、各スペーサ4、4が連結・結合するようになっている。
【0036】
図4(a),(b)に示すように、被掛止部27は、スペーサ4の縁部に形成されており、スペーサ4の中空孔24側に凹んで掛止部26を進入させる凹所27aと、凹所27aの外周方向の側方においてスペーサ4の厚み方向に窪んだ掛止段部27bとを備えている。
【0037】
掛止部26は、前記被掛止部27の形成位置から90度回転させた縁部に形成されており、板面4aから立ち上がる立ち上がり壁部26aと、立ち上がり壁部26aから板面4aに平行に、かつスペーサ4の外周に沿って側方に折曲した延在部26bとを備えている。
【0038】
延在部26bの厚みは、図6に示すように、被掛止部27の掛止段部27bの窪み深さ寸法と同寸法に形成されており、掛止部26の延在部26bが被掛止部27の掛止段部27bに重なって掛止された際に延在部26bの板面26cと他のスペーサ4の板面4aとが略面一になるように形成されている。また延在部26bの下方は、空間部Sとなっている。
【0039】
延在部26bの下方に位置する空間部Sの外周方向の側方には、嵌合凸部36が形成されており、被掛止部27の掛止段部27bの側方には、隣接する一方のスペーサ4の掛止部26を他方のスペーサ4の被掛止部27に掛止させた際に嵌合凸部36を嵌合させる嵌合凹部37形成されている。
【0040】
なお、複数のスペーサ4、4・・のうち、側板5Bに一番近いスペーサ4の掛止部26は側板5Bに形成された被掛止部(不図示)に掛止されるようになっており、側板5Aに一番近いスペーサ4の被掛止部27には側板5Aに形成された掛止部(不図示)が掛止されるようになっている。
【0041】
また、図4(b)に示すように、このスペーサ4には、段部25を形成する凹部25a,25cの左右方向中央部の外方と、凹部25b、25dの上下方向中央部の外方のそれぞれに、電解質溶液を通す通液孔28,28・・が形成されている。
【0042】
通液孔28は、スペーサ4の板面4a,4b間方向に貫通する孔である。この通液孔28と中空孔24との間は、板面4bに形成された流路30によって結ばれており、後述するように通液孔28に導入された電解質溶液が流路30を通って中空孔24内に導かれるようになっている。
【0043】
流路30は、図4(a)に示すように、板面4bに形成された溝であり、図3(c)に示すように、通液孔28から中空孔24へ向けて直線的に延びる溝30aと、通液孔28から中空孔24の端縁に沿って両側方に延び、途中から折れ曲がって中空孔24へ向けて上方へ伸びる溝30b、30cとからなっている。
【0044】
このスペーサ4の通液孔28は、図2に示すように、筐体2内への配置時に電解室Cの下部に位置するものが電解質溶液を供給する導入孔となり、電解室Cの上部に位置するものが電解質溶液の電解生成物質の導出孔となり、電解室Cの左右に位置するものが流路30を通じて各電解室C内と連通し、該電解室Cに浸入する電解質溶液の液面を調整する液面調整孔となる。
【0045】
上記の構成要素からなる複極式電解槽1は、次のようにして組み立てられる。
まず、図5(b)に示すように、電極板3を、その切欠部10Aがスペーサ4の突起部35に係合する向きとなるよう、コーティングが施されていない他の板面3bを段部25の底面yに対向させて段部25内に配置する。この際、図5(c)に示すように電極板3の向きが上記と反対、すなわちコーティングがされている一の板面3aを段部25の底面yに対向させて配置しようとした場合には、切欠部10Aと突起部35との位置が合わないため、突起部35によって電極板3を段部25に配置することが阻止される。
【0046】
そして、図7に示すように、電極板3を配置したスペーサ4を、電極板3を配置した他のスペーサ4に重ね合わせて固定する。すなわち、一方のスペーサ4の掛止部26を他のスペーサ4の被掛止部27の凹所27aに進入させるとともに、掛止部26の延在部26bの先端を被掛止部27の掛止段部27bの先端に掛け、スペーサ4,4の相互に対向する板面4a,4b同士を接近させる。そうすると、スペーサ4の板面4aに形成された嵌合凸部36が他のスペーサ4の板面4bに当接して板面4a,4b同士の密着が阻止されるとともに、掛止部26および被掛止部27の嵌合段部27bが弾性変形する。
【0047】
この状態で、スペーサ4を、他のスペーサ4に対して相対的に移動するようにスライドさせると、嵌合凸部36が嵌合凹部37に嵌合して延在部26bと掛止段部27bとが当接するとともに、スペーサ4,4同士の板面4a,4bが密に当接し、その結果スペーサ4,4同士が不用意に移動しないよう固定される。この際、各電極板3は、隣接するスペーサ4によって該電極板3の周辺部分がカバーされるので、自己が嵌合するスペーサ4の段部25内に移動不能に保持される。
【0048】
上記の要領で、スペーサ4,4を順次連結し、図8に示すように、それぞれに電極板3を組み込んだスペーサ4,4・・の連結体Mが得られる。
【0049】
そして、図2に示すように、側板5Aに一番近い電極板3に固定された電極棒21Aを側板5Aの電極棒挿入孔7に挿通するとともに、側板5Bに一番近い電極板3に固定された電極棒21Bを側板5Bの電極棒挿入孔7に挿通し、側板5Bに一番近い電極板3を前記連結体Mの一端側に位置するスペーサ4の段部25に嵌入させ、更に連結体Mに胴体6を被せ、側板5Aを供給孔8と通液孔28が連通するように合わせ、各電極棒21A,21Bの雄螺子部23にワッシャ43、スプリングワッシャ44を介在させた状態でナット45を緊締することにより、側板5A、胴体6、側板5B、スペーサ4、4・・を強固に固定する。なお、側板5Aに一番近い電極板3は、側板5Aの段部13内に嵌着させている。
【0050】
上記の構成において、各スペーサ4の通液孔28は互いに連通している。また、互いに連通した通液孔28のうちの下方に位置するものが側板5Aの供給孔8と連通しており、上方に位置する通液孔28は、側板5Bの取出孔9と連通している。
【0051】
また、各スペーサ4の中空孔24は、隣接する2枚の電極板3、3によって覆われることになるが、この内部が電解質溶液を電気分解する電解室Cとなる。
【0052】
また、各スペーサ4の流路30は、それぞれ隣接するスペーサ4及びこれに嵌合している電極板3によって覆われ、通液孔28と中空孔24内と連通する流体通路となる。
【0053】
また、供給孔8及び取出孔9と連通した通液孔28,28以外の、左右両側方に位置する通液孔28及びこれらに連通した流路30は、それぞれ隣接するスペーサ4及びこれに嵌合している電極板3によって覆われ、通液孔28と中空孔24内とを連通する流体通路となり、各スペーサ4の中空孔24内が互いに連通する構造となる。
【0054】
次に、上記の複極式電解槽1での電解生成物質の生成について、図2を参照して説明する。
まず、供給孔8に電解質溶液を供給する。電解質溶液は、互いに連通する各スペーサ4の下方に位置する通液孔28内に流入し、各スペーサ4の流路30を通って電解室C内に流入する。電解室C内において電解質溶液が所定の量に達したとき、電極棒21Aを、21Bがそれぞれ陽極、陰極となるようにこれらの間に通電すると、電極板3の一の板面3a面上において電解質溶液が電気分解され、電解室C内で塩素等の気体と液体の混濁した状態の、若しくは、主として塩素等となった電解生成物質が生成される。電解生成物質は、電解室C内から各スペーサ4の流路30を通って導出孔を構成する上方の通液孔28内に至り、取出孔9を経て取り出される。
【0055】
この場合、上述したとおり、電極板3のコーティングされていない板面3bが必ずスペーサ4の段部25の底面yに対向するように配置されているため、電極棒21A,21B間に上記のように通電した場合には、陽極用にコーティングがなされた一の板面3aが常にプラス側となり該板面3aにおいて塩素が発生するため、正常な電気分解が可能となる。また、複極式電解槽1の電解効率の低下を長期に亘って防止することができる。
【0056】
以上に説明したように、複極式電解槽1によると、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させたときには、突起部35と切欠部10Aとが互いに対応する位置関係となって電極板3の段部25内への配置を許すが、電極板3の一の板面3aを段部25の底面yに対向させたときには、突起部35と切欠部10Aとが相互に非対応の位置関係となって、即ち互いの位置が合わずに電極板3の段部25内への配置を阻止する。即ち、電極板3を所定の向きと反対の向きでスペーサ4に組み込むことができないようになっている。
したがって、電極板3の表裏を区別している場合、電極板3を誤った向きでスペーサ4に配置させることがなく、正常な電気分解ができなくなる電解槽の誤組立てを防止することができるという効果が得られる。
【0057】
また、電極板3の向きの判別が容易になるため、複極式電解槽1の組み立てを簡便かつ効率的に行うことができるという効果が得られる。
【0058】
また、掛止部26と被掛止部27とが設けられているとともに、嵌合凸部36と嵌合凹部37とが形成されているため、スペーサ4,4同士の連結を簡便することができるとともに、該連結状態を堅固にすることができるという効果が得られる。
【0059】
なお、本実施形態において、切欠部10Aは、その縁部の形状が略U字型となるように形成されているがこれに限られるものではなく、例えば図9に示すように、切欠部10Aの縁部の形状が略V字型となるように形成されたものであっても、その他の多角形に形成されたものであってもよく、要は、突起部35の外縁を囲み、かつ、電極板3の一端縁外方に向けて開口しているものであればよい。
【0060】
また、突起部35は、必ずしもスペーサ4の段部25の上部側を構成する凹部25aの右側端部に形成されている必要はなく、段部25の角部25s,25s又は段部25の一辺を2等分する点p、pを通る仮想中心線L1〜L4上(すなわち段部25の外周縁を線対称となるように二等分する線上)に形成されたものでなければ、段部25のいずれの位置に形成されたものであってもよい。
【0061】
すなわち、突起部35が上記仮想中心線L1〜L4上に形成された場合には、これに係合させる切欠部10Aを有する電極板3が、いずれの板面3a,3bをスペーサ4に向けても互いに対応する位置関係となり、電極板3を段部25に配置し得ることとなるが、突起部35が上記仮想中心軸線L1〜L4上からずれた位置に形成され、電極板3の切欠部10Aが該突起部35を囲むように形成されている場合には、電極板3の一の板面3aと他の板面3bとの間で切欠部10Aの形成位置が常にずれるものとなり、電極板3の一の板面3aを常に一方向に向けてスペーサ4に配置させることが可能となる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態について、図10(a)〜(d)を用いて説明する。本実施形態において、同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の複極式電解槽1は、電極板3の切欠部10Bの形状において、第1の実施形態と異なっているが、それ以外の点については第1の実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態の切欠部10Bは、電極板3を一の板面3aを正面視した場合に、スペーサ4の突起部35に対応する電極板3の角部3sが直線状に切截され、切截された結果形成された2つの角θ1,θ2が相互に異なる角度となるよう形成されている。
電極板3をこのような構成とすることにより、電極板3の一の板面3aを一方向に向けた場合と電極板3の他の板面3bを一の方向に向けた場合とで電極板3の形状が異なることとなる。
【0064】
したがって、上述した第1の実施形態の場合と同様に、図10(a),(b)に示すように、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させたときにのみ、突起部35と切欠部10Bとが互いに対応する位置関係となって電極板3の段部25内への配置を許し、同図(c),(d)に示すように電極板3を所定の向きと反対の向きでスペーサ4に組み込んだ場合には、切欠部10Bの突起部35に係合する部分が突起部35の位置とずれてしまい、電極板3が突起部35と係合して段部25に嵌合できない構成となっている。
【0065】
したがって、本実施形態においても上述した第1の実施形態と同様に、電極板3の他の板面3bを段部25に対向させた場合にのみ電極板3をスペーサ4に配置させることが可能となり、第1の実施形態で示した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
次に、本発明の第3の実施形態について、図11(a)〜(d)を用いて説明する。本実施形態において、同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の複極式電解槽1は、係合部が切欠ではなく、突起部35を嵌入させる孔40とされている点で、第1の実施形態と異なっているが、それ以外の点については第1の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態において、孔40は、突起部35の円柱の径よりも僅かに大径に形成されており、該孔40に突起部35を嵌着できるようになっている。
【0068】
図11(a),(b)に示すように、本実施形態においては、突起部35が仮想中心線L1〜L4上に位置しないよう形成されているとともに、電極板3の孔40が、他の板面3bをスペーサ4の段部25の底面yに対向させて配置した場合に突起部35に係合する位置に形成されている。したがって、上記の場合には、突起部35に孔40が係合し、電極板3の段部25への配置を許すこととなるが、同図(c),(d)に示すように、一の板面3aを段部25の底面yに対向させて配置した場合には、孔40の形成位置が突起部35の位置とずれてしまい、電極板3の段部25への嵌着を許さない構成となる。
したがって、本実施形態においても上述した第1及び第2の実施形態と同様に、電極板3の他の板面3bを段部25に対向させた場合にのみ電極板3をスペーサ4に配置させることが可能となり、第1の実施形態で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、上記第1の実施形態、その変形例、及び第2の実施形態においては、被係合部を突起部35とし、該突起部35を備えたスペーサ4に対して、切欠部10Aを有する電極板3又は切欠部10Bを有する電極板3のいずれをも適用できるように構成としたが、被係合部を、突起部35に代えて、例えば図12,図13に示すように、切欠部10A又は10Bに嵌着し得る突出壁部50又は51としたものであってもよい。
被係合部を突出壁部50又は51とした場合にも、電極板3を一方向に向けた場合にのみ該電極板3を段部25に配置し得ることとなり、上述した第1及び第2の実施形態の場合と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
1 複極式電解槽
2 筐体
3 電極板
3a 一の板面
3b 他の板面
4 スペーサ
10A、10B 切欠部(係合部)
25 段部
26 掛止部
27 被掛止部
35 突起部(被係合部)
36 嵌合凸部
37 嵌合凹部
40 孔(係合部)
50,51 突出壁部(被係合部)
C 電解室
【技術分野】
【0001】
この発明は、電解殺菌水を生成する電解水製造装置に備えられた複極式電解槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食品製造分野等においては、食品やこれを製造する機器を殺菌洗浄する電解殺菌水を生成するために、複極式電解槽を備えた電解水製造装置が用いられている(例えば、特許文献1)。この複極式電解槽は、酸化チタン等からなる電極板を多数配列するとともに、隣接する電極板が短絡してしまわないように各電極板の間に絶縁体のスペーサを配して、電極板間がそれぞれ独立した電解室を形成する構成とされている。電解槽の電極板の基材にコーティングする触媒は、白金(Pt)やイリジウム(Ir)など貴金属類からなっており、コストが高いため、比較的に安価で強度・加工性・耐食性に優れたチタン金属の表面に薄く触媒をコーティングすることで、コストを抑えている。また、陰極と陽極では、発生する物質が異なるので、異なる触媒を使用することもある。
塩酸電解用の電極板は、通常、チタンからなる基材上に、PrやIr等の触媒をコーティングしたものを用いる。特に、陽極面における塩素ガスの発生には、PtまたはIrは必須であり、それらのコーティング量に比例して、電極の寿命も長くなることが知られている。
一方、陰極面における水素ガスの発生には、PtまたはIrは必須ではなく、陽極面と異なる触媒をコーティングすることがある。また、基材がチタンの場合、触媒のコーティング無しでも水素ガスの発生は可能であるため、一枚の電極板の表裏で、陰陽両面が存在する電極の最も単純な形態である、片面のみのコーティングも利用することができる。
そして、複極式電解槽の組み立てにおいては、プラチナ、酸化イリジウム等でコーティングした一の板面をプラス側となる向きにして、電極板及びスペーサを配置し、この板面において塩素を発生させ、他の板面において水素を発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−058052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の複極式電解槽によれば、電極板の板面の表裏面の確認により板面の向きを判別してスペーサに配置していたため、電極板の向きを誤ってスペーサに配置することにより、正常な電気分解ができなくなる電解槽を組み立てる可能性があるという問題があった。
【0005】
また、電極板の誤配置により複極式電解槽の電気分解効率を早期に低下させてしまうという問題があった。
【0006】
また、電極板の誤配置を防止するためには、電極板の表裏面を十分に確認して行う必要があるため、複極式電解槽の組立作業の効率が低下するという問題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、電極板のスペーサに対する向きを容易に判別して、複極式電解槽の誤組立てを容易かつ確実に防止することができ、また、電解効率の早期低下を防止することができる複極式電解槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するべく、以下の手段を提供している。
すなわち、本願の請求項1に係る複極式電解槽は、筐体と、電解質溶液を電気分解して電解生成物質を生成する電極板と、該電極板を配置させる段部を有する板状のスペーサとを備え、前記電極板の一の板面が一方向を向くように該電極板を前記段部に配置させた前記スペーサを複数連結し、これら電極板とスペーサとによって電解室を形成して前記筐体の内部に配置した複極式電解槽であって、前記スペーサの段部又は前記電極板のいずれか一方に被係合部が設けられるとともに、前記一方に対する他方に係合部が形成され、前記被係合部と前記係合部とは、前記電極板をその一の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには互いに対応する位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を許すとともに、前記電極板をその他の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには相互に非対応の位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を阻止するように形成されていることを特徴とする。
【0009】
本願の請求項2に係る複極式電解槽は、請求項1に記載の複極式電解槽であって、前記被係合部は、前記段部に形成された突出壁部又は突起部であり、前記係合部は、前記電極板に形成された切欠部又は孔であることを特徴とする。
【0010】
本願の請求項3に係る複極式電解槽は、請求項1又は2に記載の複極式電解槽であって、前記スペーサには、その板面上に形成された掛止部と、他のスペーサの前記掛止部を掛止させて該他のスペーサと連結させる被掛止部とが形成されていることを特徴とする。
【0011】
本願の請求項4に係る複極式電解槽は、請求項3に記載の複極式電解槽であって、前記スペーサの一の板面には、嵌合凸部が形成され、前記スペーサの他の板面には、前記他のスペーサの前記一の板面の嵌合凸部を嵌合させて前記スペーサ同士の前記連結を保持する嵌合凹部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複極式電解槽によれば、電極板の一の板面を一方向に向けて前記段部に配置させたときには互いに対応する位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を許すとともに、前記電極板の他の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには相互に非対応の位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を阻止する係合部及び被係合部が電極板及びスペーサのそれぞれに形成されている。すなわち、電極板を所定の向き以外でスペーサに組み込むことができないようになっている。したがって、電極板の表裏面の別を設けている場合に電極板を誤った向きで配置させることがなく、電極板の誤配置による該電極板の腐食を回避し、電極板の寿命が短くなるのを防止することができるという効果を奏する。
【0013】
また、複極式電解槽の電解効率を長期間維持することができるという効果を奏する。
【0014】
また、電極板の向きの判別が容易になるため、複極式電解槽の組み立てを簡便かつ効率的に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽を示す図であって、複極式電解槽を一方向から見た分解斜視図である。
【図2】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の縦断面図である。
【図3】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽のスペーサを示した図であり、(a)は該スペーサの正面図であり、(b)は該スペーサの側面図であり、(c)は該スペーサの背面図である。
【図4】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽のスペーサを示した図であり、(a)は該スペーサを背面方向から見た斜視図であり、(b)は該スペーサを正面方向から見た斜視図である。
【図5】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサを示した図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図であり、(c)は電極板の背面図であり、(d)はスペーサの正面図である。
【図6】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽のスペーサ同士の連結状態を一部を拡大して示した斜視図である。
【図7】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサの連結方法を示した説明図である。
【図8】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサの連結した状態を示した斜視図である。
【図9】は、本発明の第1の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサの変形例を示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図である。
【図10】は、本発明の第2の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサを示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図であり、(c)は電極板の背面図であり、(d)はスペーサの正面図である。
【図11】は、本発明の第3の実施形態として示した複極式電解槽の電極板及びスペーサを示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図であり、(c)は電極板の背面図であり、(d)はスペーサの正面図である。
【図12】は、本発明の第1の実施形態の複極式電解槽の電極板及びスペーサの変形例を示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図である。
【図13】は、本発明の第2の実施形態の複極式電解槽の電極板及びスペーサの変形例を示す図であり、(a)は電極板の正面図であり、(b)は(a)に示す電極板を嵌合させたスペーサの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る複極式電解槽の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明による複極式電解槽の第1の実施形態を示す図であって、複極式電解槽1を一方向から見た分解斜視図である。
この図に示すように、複極式電解槽1は、筐体2内に複数の電極板3、複数のスペーサ4を配して構成されたものである。
【0018】
筐体2は、側板5A、5Bと胴体6とからなるものであり、これらは塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂、アクリル樹脂等の合成樹脂により形成されたものである。
【0019】
側板5A、5Bは、所定の厚みを有する外観矩形の板状体であり、それぞれその中央部に厚み方向に貫通する電極棒挿入孔7が形成され、側板5Aの下部には、厚み方向に貫通する電解質溶液供給用の供給孔8が形成され、側板5Bの上部には、厚み方向に貫通する電解生成物取出し用の取出孔9が形成されている。
【0020】
図2は、組み立てられた状態の複極式電解槽1の縦断面図であって、図1における電極棒挿入孔7の中心における断面を示している。
図2に示すように、側板5A、5Bには、それぞれ対向する内面に係合段部11が形成され、外面中央部に凹部12が形成されている。また、前述した供給孔8は大径部8aと小径部8bとからなっており、取出孔9は大径部9aと小径部9bとからなっている。
また、側板5Aの内面中央部には、電極板3を嵌合させるための段部13が形成されている。
【0021】
胴体6は、円筒状に形成された部材であって、その一端部側に側板5Aが固定され、他端部側に側板5Bが固定されるようになっている。
【0022】
電極板3は、チタン合金等の金属製の板体であり、一の板面3aに例えば陽極用としてプラチナ等によるコーティングがなされている。他の板面3bには、陰極用としてコーティングがなされていることが望ましいが、本実施形態においてはコーティングはなされていない。
【0023】
また、図1に示すように、電極板3は、略正方形に形成されているとともに、電極板3の外縁の一端側に縁部の形状が略U字形となる切欠部10Aが形成されている。
【0024】
この切欠部10Aは、後述するスペーサ4の被係合部と対をなす係合部を構成するものであり、電極板3の一の板面3aを平面視して該切欠部10Aを有する外縁が上端に位置する向きにした場合、右端側において上方に向かって開口するように形成されている。
【0025】
各電極板3、3・・は、所定寸法を隔てて対向して配置された側板5A、5B間に、コーティングがなされた一の板面3aを側板5A、5B間方向の一方向に向けて並べて配置されており、図2に示すように、各電極板3、3・・のうち、両端に配置される電極板3には、その中央部に金属製の電極棒21A,21Bが固定されている。
【0026】
電極棒21A,21Bは、一端部に頭部22が形成され、他端部外面に雄螺子部23が形成されたものであり、頭部22が電極板3の中央部に固定されている。
【0027】
スペーサ4は、図1に示すように、塩化ビニル樹脂、カーボネイト樹脂等の合成樹脂により形成された板状の部材であり、円筒状の胴体6内に収まるように円形に形成されたものである。
各スペーサ4、4・・は、各電極板3、3・・間に位置するように、各電極板3、3・・と交互に配置され、それぞれ一の板面を側板5A、5B間方向の一方向に向けて並べて配置されている。
【0028】
図3(a)〜(c)、図4(a)、(b)は、スペーサ4の構成を示している。
これらの図に示すようにスペーサ4は、円形の板状体の中央部に、その板面間方向、すなわち厚み方向に貫通する中空孔24が形成されたものである。中空孔24は、その輪郭が正方形であり、前述した電極板3よりも各辺の寸法がやや小寸法となるように形成されている。
【0029】
このスペーサ4の一方の板面4aには、中空孔24の内壁面に沿って、その厚み方向に凹む段部25が形成されている。すなわち、段部25は、中空孔24の各辺に略沿う一定の幅寸法をもって、スペーサ4の厚み方向に凹むように形成されたものであり、前記各辺に沿う4つの凹部25a〜25dからなっている。
【0030】
凹部25aの一端部側の底面yには、スペーサ4の板面4a,4b間方向に突出した突起部35が形成されている。
この突起部35は、図4(b)に示すように、略円柱形状に形成され、被係合部を構成するものであり、図5(a),(b)に示すように、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させたときには切欠部10Aと対応する位置関係となって互いに係合して電極板3の段部25内への配置を許すが、同図(c)、(d)に示すように、コーティングがなされた一の板面3aを段部25の底面yに対向させた向きにしたときには電極板3の切欠部10Aと突起部35とが互いに非対応の位置関係となって、すなわち相互の係合位置がずれて電極板3の段部25内への配置を阻止するように形成されているものである。
【0031】
すなわち、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させた場合(図5(a)の場合)には、図5(b)に示すスペーサ4の突起部35と切欠部10Aとの位置が対応するため、両者を係合させることができるが、同図(a)に示す該電極板3を裏返して図(c)に示す向きにした場合には、他の板面3bをどの角度に回転させても突起部35と切欠部10Aとの位置が合わずに電極板3が突起部35に当接してしまい、電極板3の段部25への配置ができない構成になっている。
【0032】
突起部35の周辺においては、該突起部35を迂回するように、その周を廻って段部25が設けられている。
【0033】
このようにスペーサ4の段部25内には、図5(a),(b)に示すように、電極板3が一方向に向けられた場合にのみ嵌入可能になっている。
【0034】
また、段部25は、略中空孔24の各辺に沿う矩形の形状となっているが、この矩形形状の各辺外側の寸法は、電極板3の各辺より僅かに大きい寸法となっており、この段部25内に電極板3がしっくりと嵌合し、電極板3がスペーサ4の板面に沿う方向に徒に動かないようになっている。
また、段部25の前記厚み方向の深さは、電極板3の厚みと略同一寸法とされており、電極板3を嵌合させたときに、電極板3の板面3aとスペーサ4の板面4aとが面一状態となるように形成されている。
【0035】
スペーサ4には、図4(a),(b)に示すように、中空孔24の上下部において、掛止部26,26が形成されており、中空孔24の左右両側方の縁部において、掛止部26,26を掛止させる被掛止部27,27が形成されている。これら掛止部26及び被掛止部27は、図6に示すように隣接するスペーサ4,4同士を結合させるものであり、互いに隣接するスペーサ4、4において、一方のスペーサ4の被掛止部27、27に他方のスペーサ4の掛止部26、26を掛止させることによって、各スペーサ4、4が連結・結合するようになっている。
【0036】
図4(a),(b)に示すように、被掛止部27は、スペーサ4の縁部に形成されており、スペーサ4の中空孔24側に凹んで掛止部26を進入させる凹所27aと、凹所27aの外周方向の側方においてスペーサ4の厚み方向に窪んだ掛止段部27bとを備えている。
【0037】
掛止部26は、前記被掛止部27の形成位置から90度回転させた縁部に形成されており、板面4aから立ち上がる立ち上がり壁部26aと、立ち上がり壁部26aから板面4aに平行に、かつスペーサ4の外周に沿って側方に折曲した延在部26bとを備えている。
【0038】
延在部26bの厚みは、図6に示すように、被掛止部27の掛止段部27bの窪み深さ寸法と同寸法に形成されており、掛止部26の延在部26bが被掛止部27の掛止段部27bに重なって掛止された際に延在部26bの板面26cと他のスペーサ4の板面4aとが略面一になるように形成されている。また延在部26bの下方は、空間部Sとなっている。
【0039】
延在部26bの下方に位置する空間部Sの外周方向の側方には、嵌合凸部36が形成されており、被掛止部27の掛止段部27bの側方には、隣接する一方のスペーサ4の掛止部26を他方のスペーサ4の被掛止部27に掛止させた際に嵌合凸部36を嵌合させる嵌合凹部37形成されている。
【0040】
なお、複数のスペーサ4、4・・のうち、側板5Bに一番近いスペーサ4の掛止部26は側板5Bに形成された被掛止部(不図示)に掛止されるようになっており、側板5Aに一番近いスペーサ4の被掛止部27には側板5Aに形成された掛止部(不図示)が掛止されるようになっている。
【0041】
また、図4(b)に示すように、このスペーサ4には、段部25を形成する凹部25a,25cの左右方向中央部の外方と、凹部25b、25dの上下方向中央部の外方のそれぞれに、電解質溶液を通す通液孔28,28・・が形成されている。
【0042】
通液孔28は、スペーサ4の板面4a,4b間方向に貫通する孔である。この通液孔28と中空孔24との間は、板面4bに形成された流路30によって結ばれており、後述するように通液孔28に導入された電解質溶液が流路30を通って中空孔24内に導かれるようになっている。
【0043】
流路30は、図4(a)に示すように、板面4bに形成された溝であり、図3(c)に示すように、通液孔28から中空孔24へ向けて直線的に延びる溝30aと、通液孔28から中空孔24の端縁に沿って両側方に延び、途中から折れ曲がって中空孔24へ向けて上方へ伸びる溝30b、30cとからなっている。
【0044】
このスペーサ4の通液孔28は、図2に示すように、筐体2内への配置時に電解室Cの下部に位置するものが電解質溶液を供給する導入孔となり、電解室Cの上部に位置するものが電解質溶液の電解生成物質の導出孔となり、電解室Cの左右に位置するものが流路30を通じて各電解室C内と連通し、該電解室Cに浸入する電解質溶液の液面を調整する液面調整孔となる。
【0045】
上記の構成要素からなる複極式電解槽1は、次のようにして組み立てられる。
まず、図5(b)に示すように、電極板3を、その切欠部10Aがスペーサ4の突起部35に係合する向きとなるよう、コーティングが施されていない他の板面3bを段部25の底面yに対向させて段部25内に配置する。この際、図5(c)に示すように電極板3の向きが上記と反対、すなわちコーティングがされている一の板面3aを段部25の底面yに対向させて配置しようとした場合には、切欠部10Aと突起部35との位置が合わないため、突起部35によって電極板3を段部25に配置することが阻止される。
【0046】
そして、図7に示すように、電極板3を配置したスペーサ4を、電極板3を配置した他のスペーサ4に重ね合わせて固定する。すなわち、一方のスペーサ4の掛止部26を他のスペーサ4の被掛止部27の凹所27aに進入させるとともに、掛止部26の延在部26bの先端を被掛止部27の掛止段部27bの先端に掛け、スペーサ4,4の相互に対向する板面4a,4b同士を接近させる。そうすると、スペーサ4の板面4aに形成された嵌合凸部36が他のスペーサ4の板面4bに当接して板面4a,4b同士の密着が阻止されるとともに、掛止部26および被掛止部27の嵌合段部27bが弾性変形する。
【0047】
この状態で、スペーサ4を、他のスペーサ4に対して相対的に移動するようにスライドさせると、嵌合凸部36が嵌合凹部37に嵌合して延在部26bと掛止段部27bとが当接するとともに、スペーサ4,4同士の板面4a,4bが密に当接し、その結果スペーサ4,4同士が不用意に移動しないよう固定される。この際、各電極板3は、隣接するスペーサ4によって該電極板3の周辺部分がカバーされるので、自己が嵌合するスペーサ4の段部25内に移動不能に保持される。
【0048】
上記の要領で、スペーサ4,4を順次連結し、図8に示すように、それぞれに電極板3を組み込んだスペーサ4,4・・の連結体Mが得られる。
【0049】
そして、図2に示すように、側板5Aに一番近い電極板3に固定された電極棒21Aを側板5Aの電極棒挿入孔7に挿通するとともに、側板5Bに一番近い電極板3に固定された電極棒21Bを側板5Bの電極棒挿入孔7に挿通し、側板5Bに一番近い電極板3を前記連結体Mの一端側に位置するスペーサ4の段部25に嵌入させ、更に連結体Mに胴体6を被せ、側板5Aを供給孔8と通液孔28が連通するように合わせ、各電極棒21A,21Bの雄螺子部23にワッシャ43、スプリングワッシャ44を介在させた状態でナット45を緊締することにより、側板5A、胴体6、側板5B、スペーサ4、4・・を強固に固定する。なお、側板5Aに一番近い電極板3は、側板5Aの段部13内に嵌着させている。
【0050】
上記の構成において、各スペーサ4の通液孔28は互いに連通している。また、互いに連通した通液孔28のうちの下方に位置するものが側板5Aの供給孔8と連通しており、上方に位置する通液孔28は、側板5Bの取出孔9と連通している。
【0051】
また、各スペーサ4の中空孔24は、隣接する2枚の電極板3、3によって覆われることになるが、この内部が電解質溶液を電気分解する電解室Cとなる。
【0052】
また、各スペーサ4の流路30は、それぞれ隣接するスペーサ4及びこれに嵌合している電極板3によって覆われ、通液孔28と中空孔24内と連通する流体通路となる。
【0053】
また、供給孔8及び取出孔9と連通した通液孔28,28以外の、左右両側方に位置する通液孔28及びこれらに連通した流路30は、それぞれ隣接するスペーサ4及びこれに嵌合している電極板3によって覆われ、通液孔28と中空孔24内とを連通する流体通路となり、各スペーサ4の中空孔24内が互いに連通する構造となる。
【0054】
次に、上記の複極式電解槽1での電解生成物質の生成について、図2を参照して説明する。
まず、供給孔8に電解質溶液を供給する。電解質溶液は、互いに連通する各スペーサ4の下方に位置する通液孔28内に流入し、各スペーサ4の流路30を通って電解室C内に流入する。電解室C内において電解質溶液が所定の量に達したとき、電極棒21Aを、21Bがそれぞれ陽極、陰極となるようにこれらの間に通電すると、電極板3の一の板面3a面上において電解質溶液が電気分解され、電解室C内で塩素等の気体と液体の混濁した状態の、若しくは、主として塩素等となった電解生成物質が生成される。電解生成物質は、電解室C内から各スペーサ4の流路30を通って導出孔を構成する上方の通液孔28内に至り、取出孔9を経て取り出される。
【0055】
この場合、上述したとおり、電極板3のコーティングされていない板面3bが必ずスペーサ4の段部25の底面yに対向するように配置されているため、電極棒21A,21B間に上記のように通電した場合には、陽極用にコーティングがなされた一の板面3aが常にプラス側となり該板面3aにおいて塩素が発生するため、正常な電気分解が可能となる。また、複極式電解槽1の電解効率の低下を長期に亘って防止することができる。
【0056】
以上に説明したように、複極式電解槽1によると、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させたときには、突起部35と切欠部10Aとが互いに対応する位置関係となって電極板3の段部25内への配置を許すが、電極板3の一の板面3aを段部25の底面yに対向させたときには、突起部35と切欠部10Aとが相互に非対応の位置関係となって、即ち互いの位置が合わずに電極板3の段部25内への配置を阻止する。即ち、電極板3を所定の向きと反対の向きでスペーサ4に組み込むことができないようになっている。
したがって、電極板3の表裏を区別している場合、電極板3を誤った向きでスペーサ4に配置させることがなく、正常な電気分解ができなくなる電解槽の誤組立てを防止することができるという効果が得られる。
【0057】
また、電極板3の向きの判別が容易になるため、複極式電解槽1の組み立てを簡便かつ効率的に行うことができるという効果が得られる。
【0058】
また、掛止部26と被掛止部27とが設けられているとともに、嵌合凸部36と嵌合凹部37とが形成されているため、スペーサ4,4同士の連結を簡便することができるとともに、該連結状態を堅固にすることができるという効果が得られる。
【0059】
なお、本実施形態において、切欠部10Aは、その縁部の形状が略U字型となるように形成されているがこれに限られるものではなく、例えば図9に示すように、切欠部10Aの縁部の形状が略V字型となるように形成されたものであっても、その他の多角形に形成されたものであってもよく、要は、突起部35の外縁を囲み、かつ、電極板3の一端縁外方に向けて開口しているものであればよい。
【0060】
また、突起部35は、必ずしもスペーサ4の段部25の上部側を構成する凹部25aの右側端部に形成されている必要はなく、段部25の角部25s,25s又は段部25の一辺を2等分する点p、pを通る仮想中心線L1〜L4上(すなわち段部25の外周縁を線対称となるように二等分する線上)に形成されたものでなければ、段部25のいずれの位置に形成されたものであってもよい。
【0061】
すなわち、突起部35が上記仮想中心線L1〜L4上に形成された場合には、これに係合させる切欠部10Aを有する電極板3が、いずれの板面3a,3bをスペーサ4に向けても互いに対応する位置関係となり、電極板3を段部25に配置し得ることとなるが、突起部35が上記仮想中心軸線L1〜L4上からずれた位置に形成され、電極板3の切欠部10Aが該突起部35を囲むように形成されている場合には、電極板3の一の板面3aと他の板面3bとの間で切欠部10Aの形成位置が常にずれるものとなり、電極板3の一の板面3aを常に一方向に向けてスペーサ4に配置させることが可能となる。
【0062】
次に、本発明の第2の実施形態について、図10(a)〜(d)を用いて説明する。本実施形態において、同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の複極式電解槽1は、電極板3の切欠部10Bの形状において、第1の実施形態と異なっているが、それ以外の点については第1の実施形態と同様である。
【0063】
本実施形態の切欠部10Bは、電極板3を一の板面3aを正面視した場合に、スペーサ4の突起部35に対応する電極板3の角部3sが直線状に切截され、切截された結果形成された2つの角θ1,θ2が相互に異なる角度となるよう形成されている。
電極板3をこのような構成とすることにより、電極板3の一の板面3aを一方向に向けた場合と電極板3の他の板面3bを一の方向に向けた場合とで電極板3の形状が異なることとなる。
【0064】
したがって、上述した第1の実施形態の場合と同様に、図10(a),(b)に示すように、電極板3の他の板面3bを段部25の底面yに対向させたときにのみ、突起部35と切欠部10Bとが互いに対応する位置関係となって電極板3の段部25内への配置を許し、同図(c),(d)に示すように電極板3を所定の向きと反対の向きでスペーサ4に組み込んだ場合には、切欠部10Bの突起部35に係合する部分が突起部35の位置とずれてしまい、電極板3が突起部35と係合して段部25に嵌合できない構成となっている。
【0065】
したがって、本実施形態においても上述した第1の実施形態と同様に、電極板3の他の板面3bを段部25に対向させた場合にのみ電極板3をスペーサ4に配置させることが可能となり、第1の実施形態で示した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
次に、本発明の第3の実施形態について、図11(a)〜(d)を用いて説明する。本実施形態において、同一の構成については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の複極式電解槽1は、係合部が切欠ではなく、突起部35を嵌入させる孔40とされている点で、第1の実施形態と異なっているが、それ以外の点については第1の実施形態と同様である。
【0067】
本実施形態において、孔40は、突起部35の円柱の径よりも僅かに大径に形成されており、該孔40に突起部35を嵌着できるようになっている。
【0068】
図11(a),(b)に示すように、本実施形態においては、突起部35が仮想中心線L1〜L4上に位置しないよう形成されているとともに、電極板3の孔40が、他の板面3bをスペーサ4の段部25の底面yに対向させて配置した場合に突起部35に係合する位置に形成されている。したがって、上記の場合には、突起部35に孔40が係合し、電極板3の段部25への配置を許すこととなるが、同図(c),(d)に示すように、一の板面3aを段部25の底面yに対向させて配置した場合には、孔40の形成位置が突起部35の位置とずれてしまい、電極板3の段部25への嵌着を許さない構成となる。
したがって、本実施形態においても上述した第1及び第2の実施形態と同様に、電極板3の他の板面3bを段部25に対向させた場合にのみ電極板3をスペーサ4に配置させることが可能となり、第1の実施形態で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【0069】
なお、上記第1の実施形態、その変形例、及び第2の実施形態においては、被係合部を突起部35とし、該突起部35を備えたスペーサ4に対して、切欠部10Aを有する電極板3又は切欠部10Bを有する電極板3のいずれをも適用できるように構成としたが、被係合部を、突起部35に代えて、例えば図12,図13に示すように、切欠部10A又は10Bに嵌着し得る突出壁部50又は51としたものであってもよい。
被係合部を突出壁部50又は51とした場合にも、電極板3を一方向に向けた場合にのみ該電極板3を段部25に配置し得ることとなり、上述した第1及び第2の実施形態の場合と同様の作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0070】
1 複極式電解槽
2 筐体
3 電極板
3a 一の板面
3b 他の板面
4 スペーサ
10A、10B 切欠部(係合部)
25 段部
26 掛止部
27 被掛止部
35 突起部(被係合部)
36 嵌合凸部
37 嵌合凹部
40 孔(係合部)
50,51 突出壁部(被係合部)
C 電解室
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、電解質溶液を電気分解して電解生成物質を生成する電極板と、該電極板を配置させる段部を有する板状のスペーサとを備え、前記電極板の一の板面が一方向を向くように該電極板を前記段部に配置させた前記スペーサを複数連結し、これら電極板とスペーサとによって電解室を形成して前記筐体の内部に配置した複極式電解槽であって、
前記スペーサの段部又は前記電極板のいずれか一方に被係合部が設けられるとともに、前記一方に対する他方に係合部が形成され、
前記被係合部と前記係合部とは、前記電極板をその一の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには互いに対応する位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を許すとともに、前記電極板をその他の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには相互に非対応の位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を阻止するように形成されていることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項2】
請求項1に記載の複極式電解槽であって、
前記被係合部は、前記段部に形成された突出壁部又は突起部であり、
前記係合部は、前記電極板に形成された切欠部又は孔であることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複極式電解槽であって、
前記スペーサには、その板面上に形成された掛止部と、他のスペーサの前記掛止部を掛止させて該他のスペーサと連結させる被掛止部とが形成されていることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項4】
請求項3に記載の複極式電解槽であって、
前記スペーサの一の板面には、嵌合凸部が形成され、
前記スペーサの他の板面には、前記他のスペーサの前記一の板面の嵌合凸部を嵌合させて前記スペーサ同士の前記連結を保持する嵌合凹部が形成されていることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項1】
筐体と、電解質溶液を電気分解して電解生成物質を生成する電極板と、該電極板を配置させる段部を有する板状のスペーサとを備え、前記電極板の一の板面が一方向を向くように該電極板を前記段部に配置させた前記スペーサを複数連結し、これら電極板とスペーサとによって電解室を形成して前記筐体の内部に配置した複極式電解槽であって、
前記スペーサの段部又は前記電極板のいずれか一方に被係合部が設けられるとともに、前記一方に対する他方に係合部が形成され、
前記被係合部と前記係合部とは、前記電極板をその一の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには互いに対応する位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を許すとともに、前記電極板をその他の板面を前記一方向に向けて前記段部に配置させたときには相互に非対応の位置関係となって前記電極板の前記段部内への配置を阻止するように形成されていることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項2】
請求項1に記載の複極式電解槽であって、
前記被係合部は、前記段部に形成された突出壁部又は突起部であり、
前記係合部は、前記電極板に形成された切欠部又は孔であることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の複極式電解槽であって、
前記スペーサには、その板面上に形成された掛止部と、他のスペーサの前記掛止部を掛止させて該他のスペーサと連結させる被掛止部とが形成されていることを特徴とする複極式電解槽。
【請求項4】
請求項3に記載の複極式電解槽であって、
前記スペーサの一の板面には、嵌合凸部が形成され、
前記スペーサの他の板面には、前記他のスペーサの前記一の板面の嵌合凸部を嵌合させて前記スペーサ同士の前記連結を保持する嵌合凹部が形成されていることを特徴とする複極式電解槽。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−205982(P2012−205982A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72048(P2011−72048)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】
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