説明

褐変を低減させたオリゴグルコサミン及び該オリゴグルコサミンの製造方法

【課題】本発明は、大量生産が容易に可能であり、従来のオリゴグルコサミンと比較して、褐変が低減したオリゴグルコサミン及び該オリゴグルコサミンの製造方法を提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】オリゴグルコサミンの製造工程において、溶解後に、pHを3.5〜4.5に調整することにより、従来のオリゴグルコサミンと比較して、褐変が抑制されかつ純度が高いオリゴグルコサミンを製造することにより、上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐変を低減させたオリゴグルコサミン及び該オリゴグルコサミンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(グルコサミン)
グルコサミンは、キチンを加水分解することで製造されるヘキソサミンの一種で、代表的な天然アミノ糖である。
グルコサミは、一般的にはカニ、エビ由来の殻を原料として製造する。まず、殻を希塩酸水溶液で脱カルシウム、次いで希水酸化ナトリウム水溶液で脱タンパクしてキチンを得る。さらに、キチンを濃塩酸水溶液で加水分解させた後、精製し、目的のグルコサミンを得ることができる。
加えて、オリゴグルコサミンは、2〜10個程度のグルコサミンが重合したものを意味する。
【0003】
グルコサミンは、グルコサミノグリカンの構成糖である。グルコサミノグリカンは、基本的にはグルコサミンとグルクロン酸または各々の異性体であるガラクトサミンとイズロン酸が対になって反復する重合物である。このグルコサミノグルカンが、コアタンパク質と結合したものが糖タンパク質の一つであるプロテオグリカンで、ヒアルロン酸を軸にコンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、デルマタン硫酸といった集合体をつくり、結合組織や軟骨などでコラーゲン線維、水分などと組み合って各器官の強度、柔軟性、弾力性に寄与している。
【0004】
グルコサミン、特にオリゴグルコサミンは、軟骨の成分になるのみならず、好中球を介した抗炎症作用で関節炎に有効なことや、血液の流動性向上、血小板機能抑制及びプロテログリカンの合成促進と考えられる美肌作用が認められている。
特に、被験者に、グルコサミンを経口摂取することにより短時間で血流改善効果を確認している(参照:非特許文献1)。
【0005】
(N−アセチルグルコサミン)
本出願人は、アルカリによる脱タンパク工程、及び酸による脱カルシウム工程を経て得られるキチンを濃塩酸で加水分解することにより高純度のN−アセチルグルコサミンの結晶に得ることに成功している(参照:特許文献1)。しかしながら、該N−アセチルグルコサミンは、ほぼ白色であるが、褐変を十分に抑えることができなかった(参照:特許文献1の段落0016)。
加えて、グルコサミンの粉末外観形状は、白色結晶である。しかし、従来のオリゴグルコサミンの粉末外観形状は、淡黄色〜淡褐色である(参照:非特許文献2の表9)。
【0006】
上記で述べたようにグルコサミン、特にオリゴグルコサミンは、化粧品分野、食品分野、医療分野、健康食品分野の製品として経口摂取する場合が多い。
褐変が生じているオリゴグルコサミンを摂取しても人体に悪影響を与えるものではないが、摂取者に該オリゴグルコサミンの品質が劣化したような印象を与える。
【0007】
(褐変の抑制方法)
食品分野では、褐変を抑制するための方法がいくつか報告されている(特許文献2〜4)。
しかしながら、大量生産が可能な褐変が低減したグルコサミン、特にオリゴグルコサミンの製造方法は開示されていない。
特許文献4は、「還元糖(キシロオリゴ糖)とタンパク質を含む食品(豆乳加工飲料)の褐変抑制の方法であって、豆乳加工飲料のpHを5.5以下にすることで褐変防止すること」を開示している。よって、本発明の褐変が低減されているオリゴグルコサミンとは明らかに異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-167140号公報
【特許文献2】特開2007-510431号公報
【特許文献3】特開平9-9862号公報
【特許文献4】特開2006-280274号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】日本炎症・再生医学会雑誌23(3)164-169(2003)
【非特許文献2】食品新素材有効利用技術シリーズ No.1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した問題点を解決することを課題とした。より詳しくは、大量生産が容易に可能であり、従来のオリゴグルコサミンと比較して、褐変が低減したオリゴグルコサミン及び該オリゴグルコサミンの製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、オリゴグルコサミンの製造工程において、溶解後に、pHを3.5〜4.5に調整することにより、従来のオリゴグルコサミンと比較して、褐変が抑制させ、さらに高純度のオリゴグルコサミンを製造することに成功し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は以下の通りである。
「1.以下の工程を含むオリゴグルコサミンの製造方法:
(1)1〜20重量%のキトサン分散液を作製する工程;
(2)5.0〜40.0%酸を上記(1)の溶液に添加する工程;
(3)キトサナーゼを上記(2)の溶液に添加する工程;
(4)上記(3)の溶液をpH3.5〜4.5に調整する工程;
(5)上記(4)の溶液を50〜85℃で加温する工程;
(6)上記(5)の溶液を乾燥する工程。
2.前記(5)の加温工程の後に、濃縮工程を含む前項1に記載のオリゴグルコサミンの製造方法。
3.前記(5)の加温工程の後又は前記濃縮工程の前に、1.0〜15.0(w/w)%になるように活性炭を添加する工程を含む前項1又は2に記載のオリゴグルコサミンの製造方法。
4.前項1〜3のいずれか1に記載の製造方法で得られるオリゴグルコサミン。
5.色差のL値は60〜100及び/又は色差のWB値は15〜100である前項4に記載のオリゴグルコサミン。
6.1〜6糖の全糖に対する割合は80〜98%及び/又は1〜8糖の全糖に対する割合は83〜100%である前項4又は5に記載のオリゴグルコサミン。」
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によって得られるオリゴグルコサミンは、大量生産が容易に可能であり、かつ褐変が抑制されており、さらに高純度である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のオリゴグルコサミンの製造例
【図2】各オリゴグルコサミンの色差測定結果及び糖組成割合結果
【図3】10%オリゴグルコサミン溶液における活性炭添加量と吸光度(脱色)の関係
【図4】10%オリゴグルコサミン溶液における活性炭添加量とBrixの関係
【発明を実施するための形態】
【0015】
(褐変が低減及び純度が高いオリゴグルコサミン)
本発明のオリゴグルコサミンは、従来のオリゴグルコサミンと比較して、褐変が低い。具体的には、本発明の褐変が低減したオリゴグルコサミンの色差のL値は、60〜100、好ましくは70〜98、より好ましくは85〜96、並びに/又は色差のWB値は、15〜100、好ましくは30〜90、より好ましくは50〜80である。
加えて、本発明のオリゴグルコサミンは、従来のオリゴグルコサミンと比較して、純度が高い。具体的には、1〜6糖の全糖に対する割合は、80〜98%、好ましくは81〜96%であり、並びに/又は1〜8糖の全糖に対する割合は、83〜100%、好ましくは85〜100%である。
加えて、オリゴグルコサミンの分子量に関し、一般的には、重量平均分子量(標準品にプルランを用いGPC分子量測定により算出)が、Mwの場合においては、1200〜2500、好ましくは1400〜2400、より好ましくは1500〜2300であり、Mnの場合においては、350〜900、好ましくは400〜850、より好ましくは500〜800である。
加えて、粘度は、20℃において0.5%W/W溶液粘度が20〜300mPa・s、より好ましくは30〜250mPa・s、さらに好ましくは35〜200mPa・sである。
【0016】
(褐変)
褐変とは、一般に、食品が加工中や保存中に褐色に変化することをいい、酵素的褐変と非酵素的褐変とに大別され、後者には糖類を単独で加熱した場合の褐色変化であるカラメル化、およびアミノ化合物とカルボニル化合物との間に起きる化学反応であるアミノカルボニル反応が含まれる。
【0017】
(褐変が低減及び純度が高いオリゴグルコサミンの製造方法)
本発明の褐変が低減したオリゴグルコサミンの製造方法は、以下に記載する。しかしながら、溶解工程後に、pHを3.5〜4.5に調整すること以外は、適宜変更、省略可能である。
(1)キトサン分散液の作製
(2)溶解工程
(3)酵素反応工程
(4)pH3.5〜4.5に調整工程
(5)酵素失活工程
(6)活性炭処理工程
(7)濃縮工程
(8)乾燥工程
【0018】
(使用するキトサン)
使用するキトサンの脱アセチル化率は、一般的には、70〜100%程度のものが使用され、好ましくは80〜100%である。また、重量平均分子量(標準品にプルランを用いGPC分子量測定により算出)が1万〜400万程度のものが使用され、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下である。
粘度は、20℃において0.5%W/W溶液粘度が10〜300mPa・s、より好ましくは250mPa・s以下、さらに好ましくは200mPa・s以下である。
【0019】
(1)キトサン分散液の作製
1〜20重量%のキトサン分散液を作製するために、キトサンを水、好ましくは純水又はRO水に懸濁させて、キトサン分散液を作製する。
【0020】
(2)溶解工程
5.0〜40.0%酸、好ましくは塩酸(35%濃塩酸)を上記(1)のキトサン分散液に添加して、該溶液中のキトサンを溶解させる。なお、塩酸添加量は、キトサンのアミノ基1モルに対し、HCIを0.3〜1.0モル、好ましくは0.4〜0.9モル、より好ましくは0.5〜0.8モルであり、溶液のpHは、4.0〜6.0に調整する。なお本工程では、キトサンは完全に溶解しなくても良い。
【0021】
(3)酵素反応工程
キトサンをオリゴ糖に分解するために、キトサナーゼを上記(2)の溶解工程後の溶液に添加する。酵素反応時間は4〜60時間、酵素反応温度は20〜45℃である。
好ましくは、酵素反応中のpHを、塩酸、好ましくは2N 塩酸で4.5〜6.0に調整しながら、酵素反応を行う。
なお、キトサナーゼ添加量は、所定量のキトサン1g当たり5単位を添加する。なお、キトサナーゼは必要により複数回に分けて添加しても良い。加えて、酵素反応終了後においてろ過を行うことにより不純物を除去しても良い。
【0022】
(4)pH3.5〜4.5に調整工程
塩酸、好ましくは2N 塩酸を、上記(3)の酵素反応終了後の溶液に滴下して、pH3.5〜4.5、好ましくはpH4.0〜4.5に調整する。なお、本pH3.5〜4.5に調整する工程により、後工程である酵素失活工程で溶液を加温したとしても、オリゴグルコサミンの褐変を低減させることができる。
【0023】
(5)酵素失活工程
上記pH3.5〜4.5に調整した溶液中の酵素を失活させるために、該溶液を70〜100℃、10〜60分加温する。さらに、好ましくは、加温後終了後においてろ過を行うことにより不純物を除去する。
【0024】
(6)活性炭処理工程
好ましくは、活性炭を上記(5)の酵素失活後の溶液に添加する。なお、pH3.5〜4.5に調整工程単独よりも活性炭処理工程を組わせることにより、より褐変を低減させることができる。さらに、活性炭処理工程終了後において、ろ過を行うことにより不純物を除去する。
【0025】
(7)濃縮工程
効率的な乾燥を行う目的、または、目的のかさ比重の粉末を得るため、溶液の濃縮を行う。従って、本工程を行わなくてもオリゴグルコサミンの粉末化を行うことができる。溶液の濃縮は、一般的なエバポレーターや濃縮装置を使用し、減圧濃縮する。
【0026】
(8)乾燥工程
スプレードライや凍結乾燥機等の乾燥装置を用いて乾燥することにより、オリゴグルコサミン粉末を得ることができる。
【0027】
本発明に用いる各濃度の測定方法は以下の通りである。なお、以下の実施例でも使用した。
【0028】
(色差の測定方法)
本発明で使用した色差の測定条件及び測定装置は、以下の通りである。
試料台にOキャップを置き、外光を遮断し、ゼロ合わせを行った後、試料台に標準白板を置き、標準合わせを行う。φ30丸セルにオリゴグルコサミン試料を入れ、試料台に置き、色差測定を行う。
色差の測定条件:粉末の反射測定を行う
試料の種類:粉末
試料面積:30mmφ
試料台:粉末ペースト試料台+丸セルO-キャップ
標準:標準白板
色差の測定装置:測色色差計ZE-2000(日本電色工業株式会社製)
【0029】
(Brixの測定方法)
本発明で使用したBrixの測定条件及び測定装置は、以下の通りである。
プリズム面をきれいに拭き、水道水、蒸留水、イオン交換水または超純水をプリズム面に完全に覆うように適下し、ゼロ合わせを行う。ティッシュペーパーできれいにふき取った後、試料溶液をプリズム面に適下し、Brix測定を行う。
色差の測定条件:測定範囲:Brix0.0〜45.0%
測定温度:5〜40℃自動温度補正
環境温度:5〜40℃
色差の測定装置:デジタル糖度計(濃度計)パレットPR-101α(株式会社アタゴ製)
【0030】
(吸光度の測定方法)
本発明で使用した吸光度の測定条件及び測定装置は、以下の通りである。
1cmセルにブランク試料(純水又は超純水)を入れ、0合わせを行う。その後、オリゴグルコサミン溶液試料を1cmセルに入れ、420nmの吸光度を測定する。
吸光度の測定条件:測定波長:420nm
光源:WIランプ
セル長さ:1cmセル
吸光度の測定装置:U-2900形分光光度計(HITACHI製)
【0031】
(脱アセチル化度の測定方法)
脱アセチル化度(DAC度)は、キトサン試料(非晶質キチン又はキトサン)を0.5%(w/w) 酢酸溶液に0.5%(w/w)になるように溶解し、指示薬としてトルイジンブルー溶液を用い、ポリビニル硫酸カリウム水溶液でコロイド滴定して乾物当たりのDAC度を求めたものである。
【0032】
(粘度の測定方法)
粘度は、キトサン試料(非晶質キチン又はキトサン)を0.5%(w/w) 酢酸溶液に0.5%(w/w)になるように溶解し、室温で3時間撹拌し、さらにホモジナイザーで2分間撹拌する。この溶液を恒温槽中で20℃に保ちながらB型粘度計で回転粘度(mPa・s)を測定したものである。
【0033】
(キチン及びキトサンの分類)
本発明では、各キトサンの特性を以下のように表現する。
FMは、中粘度キトサン(DAC度 85%以上、0.5%粘度10〜100mPa・s)を意味する。
DAC100は、キトサン(DAC度95%以上、0.5%粘度100mPa・s以下)を意味する。
【0034】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0035】
(本発明のオリゴグルコサミンの製造)
下記の実施例で使用する本発明のオリゴグルコサミンの製造を行った。製造方法は以下の通りである。
【0036】
1.製造例1(Lot.1103151)
DAC100%のキトサン(Lot.No.0715-22)200gを純水1800gに投入して、10.0%キトサン分散液を作製し、ホモジナイザーで十分に撹拌した。
次に、35% HCl 90.6g、続いてキトサナーゼL(HBI製)2gを該溶液に添加した。
添加したHCI量の計算は以下の通りである。
「HCl量の計算:キトサン(DAC100)のアミノ基1モルに対し、HClを0.7モル加える:DAC100量(200g)/キトサン1ユニット分子量(161)×塩酸分子量(36.5)/濃塩酸濃度(35%)=200g/161×0.7×36.5/0.35=90.6」
添加したキトサナーゼL量の計算は以下の通りである。
「キトサナーゼLの所定量は、キトサン(g)に対し、5単位を加える。キトサナーゼLの酵素分解能力は250単位/g。従って酵素所定量の計算は、200g×5単位/250単位/g=4g(所定量)。なお、所定の1/2量を添加している。」
次に、2N HCIを該溶液に添加してpH5.33にして、40℃、一番撹拌した(撹拌終了後にはpH5.62)。さらに、2N HCIを該溶液に添加してpH5.22にした。
次に、キトサナーゼL(HBI製)2gを添加して、40℃、26時間酵素分解を行った。
次に、該酵素分解後の溶液をフィルター(ADVANTEC,No.2)でろ過した。
次に、ろ過後の溶液のpH 5.62を2NHCI添加により、pH4.2にした。
次に、酵素を失活させるために、該pH調整済溶液を80℃、20分間加温した。
次に、活性炭(カルボラフィンEX)を加温後の該溶液に添加した(0.25重量%となるように添加)。
次に、活性炭添加済溶液を30分間撹拌して、メンブランフィルター(ADVANTEC,A045A047A,0.45μm)でろ過した。
最後に、ろ過後の溶液を噴霧乾燥(スプレードライ)して、オリゴグルコサミン(収量:168.8g、収率:105.5%)を得た。
【0037】
2.製造例2(Lot. 110301)
DAC100%のキトサン(Lot.No.0715-22)450gを純水3050gに投入して、12.5%キトサン分散液を作製した。
次に、35% HCl 180g、続いて、キトサナーゼL(HBI製)9gを該溶液に添加し、撹拌した。さらに、純水500gを添加して、10%溶液にした。
次に、バイオリアクター(卓上型培養装置MD-N型 10L,株式会社丸菱バイオエンジ製)で、40℃、29時間で酵素分解(pH調整,35%HCl)を行った。さらに、キトサナーゼL(HBI製)9gを添加して、40℃ 16時間で酵素分解(pH調整,2NHCl)を行った。
次に、該酵素分解後の溶液をフィルター(ADVANTEC,No.2)でろ過した。
次に、ろ過後の溶液のpH 4.81を2NHCIにより調整して、pH4.2にした。
次に、酵素を失活させるために、該pH調整済溶液を80℃、20分間加温した。
次に、活性炭(精製白鷺)を加温後の溶液に添加した(0.25重量%となるように添加)。
次に、活性炭添加済溶液を30分間撹拌して、メンブランフィルター(ADVANTEC,A045A047A,0.45μm)でろ過した。
最後に、ろ過後の溶液を噴霧乾燥(スプレードライ)して、オリゴグルコサミン(収量:423.8g、収率:94.2%)を得た。
【0038】
3.製造例3(Lot. 1104081)
DAC100%のキトサン(Lot.No.0715-22)140gを純水6860gに投入して、2%キトサン分散液を作製した。
次に、35% HClを該溶液に添加して、pHを5.54に調整した。
次に、キトサナーゼL(HBI製)2.8gを該pH調整済溶液に添加し、40℃、6時間で酵素分解を行った。
次に、該酵素分解後の溶液をフィルター(ADVANTEC,No.2)でろ過した。なお、ろ過後の溶液のpHは5.63であった。
次に、ろ過後の溶液のpH 5.63を2NHCI (添加量は56ml)により調整して、pH4.2にした。
次に、酵素を失活させるために、該pH調整済溶液を75℃、20分間加温した。
次に、酵素失活後の溶液5000mlをメンブランフィルター0.45μmでろ過した。
次に、該ろ過後の溶液をエバポレーターで濃縮して、濃縮物を得た。
次に、該濃縮物を75℃、20分で滅菌した。
最後に、滅菌後の濃縮物を噴霧乾燥(スプレードライ)して、オリゴグルコサミン(収量:104g、収率:104%)を得た。
【0039】
4.製造例4(Lot. 1104082)
DAC100%のキトサン(Lot.No.0715-22)140gを純水6860gに投入して、2%キトサン分散液を作製した。
次に、35% HClを該溶液に添加して、pHを5.54に調整した。
次に、キトサナーゼL(HBI製)2.8gを該pH調整済溶液に添加し、40℃、6時間で酵素分解を行った。
次に、該酵素分解後の溶液をフィルター(ADVANTEC,No.2)でろ過した。なお、ろ過後の溶液のpHは5.63であった。
次に、ろ過後の溶液のpH 5.63を2NHCI (添加量は56ml)により調整して、pH4.2にした。
次に、酵素を失活させるために、該pH調整済溶液を75℃、20分間加温した。
次に、活性炭(精製白鷺)を、酵素失活後の溶液2000mlに添加した(0.25重量%となるように添加)。
次に、活性炭添加済溶液を30分間撹拌して、メンブランフィルター0.45μmでろ過した。
次に、該ろ過後の溶液をエバポレーターで濃縮して、濃縮物を得た。
次に、該濃縮物を75℃、20分で滅菌した。
最後に、滅菌後の濃縮物を噴霧乾燥(スプレードライ)して、オリゴグルコサミン(収量:24g、収率:60%)を得た。
【0040】
上記以外の製造例5(1103152)、製造例6(1103231)、製造例7(1103232)及び製造例8(1103233)は、図1に示す。
【0041】
(従来のオリゴグルコサミンの製造)
下記の実施例で使用する従来のオリゴグルコサミンの製造を行った。該製造では、pH4.0〜4.5に調整する工程を行っていない。製造方法は以下の通りである。
【0042】
既存のオリゴグルコサミン(Lot.No.100807)
DAC100%のキトサン150kgをRO水7000Lに投入して、2%キトサン分散液を作製した。
次に、35% HClを該溶液に添加して、pHを5.2〜5.6に調整した。
次に、キトサナーゼL(HBI製)3.0kg(キトサンg当たり5単位)を該pH調整済溶液に添加し、40℃、6時間で酵素分解を行った。
次に、酵素を失活させるために、該酵素分解後の溶液を70℃、20分間加温した。
次に、酵素失活後の溶液をろ過フィルタープレス(酸洗珪藻土120kg、プレコート2種各40kg、ボディーフィード1種40kg)でろ過した。
次に、該ろ過後の溶液をエバポレーターで濃縮して、濃縮溶液を得た。
次に、該濃縮溶液を60メッシュでろ過した。
次に、該ろ過済溶液を75℃、20分で滅菌した。
最後に、滅菌後の濃縮物を噴霧乾燥して、オリゴグルコサミンを得た。
【実施例2】
【0043】
(オリゴグルコサミンの色差測定)
実施例1で製造した各オリゴグルコサミンの色差測定を行った。色差測定結果を図2に示す。加えて、pHを3.5に調整したオリゴグルコサミンも同様の色差測定を行った(図なし)。
溶解工程後にpHを3.5〜4.5に調整した製造例1〜8のオリゴグルコサミンは、従来の溶解工程後にpHを調整していないオリゴグルコサミンと比較して、褐変を抑制できたことを確認した。また、製造例4のオリゴグルコサミンは、製造例3のオリゴグルコサミンと比較して、さらに褐変を抑制できたことを確認した。
加えて、キトサン初期濃度10%にすることで、濃縮工程を行わない(熱をかけない)ことで褐変を抑制することができることを確認した。
以上に、オリゴグルコサミン製造工程において、溶解工程後にpHを3.5〜4.5に調整する工程及び/又は活性炭処理工程を含むことにより、オリゴグルコサミンの褐変を抑えることができる。
【実施例3】
【0044】
(オリゴグルコサミンの糖組成割合測定)
オリゴグルコサミンの糖組成割合の測定方法は、以下の通りである。
キトサンオリゴ糖ミクスチャー(Citosan-Oligosaccharides Mixture 生化学バイオ製)を約20mg量り取り、水1mlを加えて溶解し、0.45μmフィルターでろ過し、標準溶液とした。
試料は、105℃で3時間乾燥し、20mgを秤量し、水1mlを加えて溶解し、0.45μmフィルター(ADVANTEC、DISMIC)でろ過し、試験溶液とする。
さらに、下記条件でHPLC分析を行なった。
<分析条件>
カラム:TSK-GEL AMIDE-80 4.6×250mm
移動相:アセトニトリル/250mMリン酸緩衝液=2/3
流速:0.8ml/min
温度:室温
注入量:20μl
検出器:示差屈折計
装置:島津製作所製 LC- 20A 又は、日本分光製 液体クロマトグラフィー
<計算方法>
試験液及び標準液の各重合度のオリゴグルコサミンのピーク面積を測定し、下記式1により含量を求めて1〜8糖を合算して含有量とする。なお、7糖と8糖については6糖の標準ピークから計算した。
【0045】
【数1】

【0046】
実施例1で製造した各オリゴグルコサミンの糖組成割合の測定を行った。糖組成割合の測定結果を図2に示す。
溶解工程後にpHを3.5〜4.5に調整した製造例1〜8のオリゴグルコサミンは、従来の溶解工程後にpHを調整していないオリゴグルコサミンと比較して、1〜6糖の全糖に対する割合並びに/又は1〜8糖の全糖に対する割合が高いことを確認した。すなわち、本発明のオリゴグルコサミンは、従来のオリゴグルコサミンと比較して、純度が高いことを確認した。
加えて、純度が高い理由は、溶解工程後にpHを3.5〜4.5に調整することにより、製造工程中の酵素失活工程、濃縮工程及び殺菌工程での純度低下を防ぐことができることを新たに見出している。
以上により、褐変が低減したオリゴグルコサミンは、従来のオリゴグルコサミンと比較して、1〜6糖の全糖に対する割合並びに/又は1〜8糖の全糖に対する割合が高い。
【実施例4】
【0047】
(活性炭の添加量の検討)
オリゴグルコサミンの製造における最適な活性炭の添加量を検討した。詳細は、以下の通りである。
【0048】
10(w/w)%キトサンを塩酸で溶解させ、キトサナーゼを加え、酵素分解を行い、ろ過を行い、さらに、pH調整(4.2)を行って10%オリゴグルコサミン溶液を得た。
該溶液の全量に対し0.025%〜10%の活性炭(精製白鷺)を加え、室温で30分撹拌した後、吸光度(Abs.420nm)及びBrixを測定した。
なお、活性炭添加量(%)は、10%オリゴグルコサミン溶液全量(g)に対する割合で活性炭を添加した。
【0049】
10%オリゴグルコサミン溶液における活性炭添加量と吸光度(脱色)の関係を図3に示す。
活性炭の添加量に応じて吸光度(Abs.420nm)が低下したが、添加量の増加に比例して吸光度の低下量も低下した。
また、活性炭の添加量は1回で行っても、2回に分けて行っても、添加量の総量が同じであれば、吸光度に大きな変化は見られなかった。
10%オリゴグルコサミン溶液における活性炭添加量とBrixの関係を図4に示す。
活性炭の添加量に応じてBirxが低下した。
以上により、オリゴグルコサミンの製造における最適な活性炭の添加量は、キトサン分散液の1.0〜15.0(w/w)%であることを特定した。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、大量生産が容易に可能であり、かつ褐変が抑制されかつ純度が高いオリゴグルコサミンを提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含むオリゴグルコサミンの製造方法:
(1)1〜20重量%のキトサン分散液を作製する工程;
(2)5.0〜40.0%酸を上記(1)の溶液に添加する工程;
(3)キトサナーゼを上記(2)の溶液に添加する工程;
(4)上記(3)の溶液をpH3.5〜4.5に調整する工程;
(5)上記(4)の溶液を50〜85℃で加温する工程;
(6)上記(5)の溶液を乾燥する工程。
【請求項2】
前記(5)の加温工程の後に、濃縮工程を含む請求項1に記載のオリゴグルコサミンの製造方法。
【請求項3】
前記(5)の加温工程の後又は前記濃縮工程の前に、1.0〜15.0(w/w)%になるように活性炭を添加する工程を含む請求項1又は2に記載のオリゴグルコサミンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1に記載の製造方法で得られるオリゴグルコサミン。
【請求項5】
色差のL値は60〜100及び/又は色差のWB値は15〜100である請求項4に記載のオリゴグルコサミン。
【請求項6】
1〜6糖の全糖に対する割合は80〜98%及び/又は1〜8糖の全糖に対する割合は83〜100%である請求項4又は5に記載のオリゴグルコサミン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79217(P2013−79217A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220627(P2011−220627)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(391003130)甲陽ケミカル株式会社 (17)
【Fターム(参考)】