説明

視神経炎治療のためのTACI−免疫グロブリン融合タンパク質

本発明は、視神経炎の治療のためのTACI−免疫グロブリン融合タンパク質に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、視神経炎の分野におけるものである。より詳細には、これは、視神経炎、特に臨床的に孤立した症候群(clinically isolated syndrome)としての視神経炎の治療のためのTACI−免疫グロブリン(Ig)融合タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
BLySリガンド/受容体ファミリー
2種の増殖因子BLyS(Bリンパ球刺激因子)及びAPRIL(増殖誘発リガンド)に関する独自の結合親和性を有する、3種の受容体TACI(膜貫通アクチベーター及びCAML−インターアクター)、BCMA(B細胞成熟抗原)及びBAFF−R(B細胞活性化因子の受容体)が同定されている(Marstersら、2000;Thompsonら、2001)。
【0003】
TACI及びBCMAは、BLyS及びAPRILの両方に結合するが、BAFF−Rは、BLySのみに高親和性で結合することが可能であるように見える(Marstersら、2000;Thompsonら、2001)。結果として、BLySは、3種全ての受容体を通じてシグナル伝達することができるのに対し、APRILは、TACI及びBCMAのみを通じてシグナル伝達することが可能であるように見える。加えて、BLyS及びAPRILの循環性ヘテロ三量体型複合体(BLyS及びAPRILの各サブユニットの1個又は2個のコピーを含む、3個のタンパク質サブユニットのグループ化)が、全身性免疫−ベースのリウマチ疾患の患者から採取された血清試料中において同定され、かつインビトロにおいてB細胞増殖を誘導することが示されている(Roschkeら、2002)。
【0004】
BLyS及びAPRILは、B細胞の成熟、増殖及び生存の強力な刺激因子である(Mooreら、1999;Schneiderら、1999;Doら、2000)。BLyS及びAPRILは、自己免疫疾患、特にB細胞に関与した疾患の持続に必要であることがある。高レベルのBLySを発現するように操作されたトランスジェニックマウスは、免疫細胞障害を示し、かつ全身性紅斑性狼瘡患者において認められる症状に類似した症状を呈する(Grossら、2000;Mackayら、1999)。同様に増大したレベルのBLyS/APRILが、全身性紅斑性狼瘡患者及び関節リウマチのような他の様々な自己免疫疾患の患者から採取された血清試料中で測定され(Roschke、2002;Cheemaら、2001;Groomら、2002)、BLyS及び/又はAPRILとB細胞媒介型疾患の関係を、動物モデルからヒトまで拡大している。BLyS及びAPRILの発現は、MS患者の末梢血単球及びT細胞においてアップレギュレートされる(Thangarajhら、2004;Thangarajhら、2005)。MS病巣において、BLyS発現は、BAFF−Rを発現している免疫細胞近くに局在化された星状膠細胞上で強力にアップレギュレートされることがわかった(Krumbholzら、2005)。
【0005】
アタシセプト
アタシセプト(atacicept)(INN)は、受容体TACI(膜貫通アクチベーター及びカルシウムモジュレーター及びシクロフィリンリガンド(CAML)−インターアクター)の細胞外リガンド結合部分及びヒトIgGの修飾されたFc部分を含む、組換え融合タンパク質である。アタシセプトは、BLyS(Bリンパ球刺激因子)及びAPRIL(増殖誘発リガンド)に対するアンタゴニストとして作用し、これらは両方共腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーの一員である。BLyS及びAPRILは、B細胞成熟機能及び生存の重要な調節因子であることが示されている。
【0006】
アタシセプトは、ヒトIgG1−FcとBLyS受容体TACIの細胞外ドメインとの融合から生じる、313個のアミノ酸を含む可溶性糖タンパク質であり、推定質量は35.4キロダルトン(kDa)である。この生成物の高次構造は、二量体であり、推定質量は73.4kDaである。アタシセプトは、チャイニーズはムスター卵巣(CHO)細胞から、組換え技術により作製される。
【0007】
アタシセプトにおいて、ヒトIgG1−Fcは、補体C1q成分へのFc結合及び抗体受容体との相互作用を低下するように修飾された(Taoら、1993;Canfieldら、1991)。アタシセプトは、これらのFcエフェクター機能について試験されかつ確認された。
【0008】
視神経炎及び多発性硬化症
視神経炎(ON)は、視神経の炎症として定義されている。それは、疼痛に関連した視力の急減な喪失の原因の1つである。ONの診断は、通常、臨床的になされる。ONの典型的な臨床的兆候は、(a)視力喪失、(b)眼痛及び(c)正確な色覚障害を意味する色弱からなる。成人の事例の70%は片側性である(Optic Neuritis Study Group, 1991)。
【0009】
視神経の炎症は、脱髄を引き起こし、特発性であり、区分され得る。しかしながら、この疾患は、多発性硬化症(MS)と非常に強い関連性を有する。MSの約20%がONを現し、MS患者の38〜50%がその疾患の過程のいくつかの点でONを発症する(Chen and Gordon, 2005)。視神経炎の長期間の経過観察試験の1つ、視神経炎治療試験(Optic Neuritis Treatment Trial)によれば、患者の28%及び35%は、それぞれ5年及び10年内に再発する(Beckら, 2003)。驚くべきことでないが、再発は、MSと後で診断された患者においてより一般的であった。
【0010】
脱髄するONの発症は、100,000人/年当たり約5例であり(Rodriguezら, 1995)、100,000当たり約4.2のMS発症に続く(Hirtzら, 2007)。MSにおけるのと同様に、ONの患者は、一般的に人生の30代及び40代にある;視神経炎治療試験における平均年齢は、32歳であった。女性は男性よりも罹患している(Optic Neuritis Study Group, 1991)。
【0011】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系(CNS)の慢性の炎症性脱髄疾患であり、かつ若年成人の神経性身体障害の最も一般的原因のひとつである。これは、変動する回復を伴う神経学的症状及び徴候の多病巣性再発性攻撃(再発)により特徴づけられる。最終的に、これらの被験者の大半は、進行性の臨床経過を呈する。
【0012】
世界中で、成人およそ150万人が罹患している。本疾患は、女性の方が男性よりも2倍罹患し、時間とともに注目に値する身体障害を引き起こし、かつ該患者の生涯にわたり継続する。
【0013】
MSの正確な原因は不明であるが、自己免疫プロセスが関与している。遺伝的易罹患性は、疾患開始において非常に良好に役割を果たすように見えるが、現在確定されていない環境因子も恐らく関与しているであろう。CNS抗原と自己反応性であるT細胞は、末梢循環において刺激され、かつCNSへ動員されることが推定されている。抗原提示細胞による再刺激時に、自己反応性T細胞は増殖し、かつ脳内で前炎症カスケードを開始する。この炎症は、時間をかけて脱髄を生じ、最終的には軸索及び脳容積を喪失する。
【0014】
主にT細胞媒介型疾患であるMSのパラダイムは、近年変化している(Klawiterら、2007)。医学界には、B細胞は、主に以下の2つの機序によりON及びMS病理に貢献するという共通の理解が存在する:1)CD4 T細胞を再刺激しかつ前炎症性サイトカインを生じる抗原提示細胞として働くことにより、細胞レベルで、並びに、2)CNS成分に対する抗体の産生により、液性免疫のレベルで。組織学的分析は、ON及びMS集団の顕著な割合におけるB細胞及び抗体媒介型病理を示唆している。異常な鞘内免疫グロブリンG(IgG)合成は、脳脊髄液(CSF)中のオリゴクローナルバンドの存在として反映され、孤立したONの患者の60〜70%において見られる。このことは、MSに類似の免疫的病理生理学を示唆している。組織病理学的分析は、MS集団の顕著な割合での、B細胞及び抗体介在病因を示唆している。このことは、MS及び視神経脊髄炎におけるリツキシマブ(Rituximab)の使用に関する報告によって確認されている。そのため、当然のことながら、MS療法としてのB細胞免疫を標的する物質を探求することになる。
【0015】
MSのための疾患修飾性治療、すなわちMSの経過を修飾する治療である現在のMS薬物治療は、免疫系を調節又は抑制する。再発性MSに関してFDAが承認した免疫調節薬が存在する:3種のβインターフェロン(レビフ(Rebif)(登録商標)-Merck Serono社;ベタセロン(Betaseron)(登録商標)-Berlex社;アボネックス(Avonex)(登録商標)-Biogen社)、及び酢酸グラチラマー(コパクソン(Copaxone)(登録商標)-Teva社)。FDAは、再発性多発性硬化症の単剤療法として特別に制限された流通(distribution)プログラムの下で、ナタリズマブ(Tysabri(登録商標)-Biogen社とElan社)も承認している。加えて、進行性又は慢性MSのためのFDAが承認した1種の免疫抑制薬、ミトキサントロン(Novantrone(登録商標)-Merck Serono社)が存在する。
【0016】
MSの治療において、例えばクラドリビン、塩素化されたプリンアナログである2−クロロ−2’デオキシアデノシン(2−CdA)などの、いくつかの他の免疫抑制薬が評価されつつあるが、まだFDAは承認していない(EP 626 853)。
【0017】
視神経炎は重度の疾患であり、視神経炎は通常、多発性硬化症に転換するので、視神経炎を治療し、MSへの発症を予防するための、新規かつ有効な可能性を有することが有益であろう。
【発明の概要】
【0018】
発明の概要
本発明は、臨床的に孤立した症候群(CIS)としての視神経炎に罹患した患者におけるアタシセプトの有益な効果を評価する臨床試験を基にしている。
【0019】
従って本発明は、視神経炎の治療のためのTACI−Ig融合タンパク質、及び視神経炎を治療するのに有効な量でTACI−Ig融合タンパク質を含有する組成物を患者へ投与することを含む視神経炎の治療方法に関する。
【0020】
本発明の態様では、TACI−Ig融合タンパク質は、臨床的に孤立した症候群としての視神経炎の治療用である。
【0021】
別の態様では、TACI−Ig融合タンパク質は、視神経炎の、再発性多発性硬化症(RMS)又は臨床的に規定された多発性硬化症(CDMS)への転換の予防、及び視神経炎の再発の予防のためである。
【0022】
本発明に従い、本TACI−Ig融合タンパク質は、
a)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はそれらの断片もしくは変種;並びに
b)ヒト免疫グロブリン−定常ドメイン
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、実施例1において説明された2アームのランダム二重盲検プラセボ-対照多施設共同第II相試験の治験デザインを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明の詳細な説明
本発明は、視神経炎がアタシセプトの有効量の投与によって治療され得ることの発見に基づいている。
【0025】
そのため、本発明は、視神経炎の治療のためのTACI−Ig融合タンパク質、及び視神経炎を治療するのに有効な量でTACI−Ig融合タンパク質を含有する組成物を患者へ投与することを含む視神経炎の治療方法に関する。
【0026】
視神経炎の診断は、a)視力喪失;(b)眼痛;及び、(c)色弱(正確な色覚の機能障害)の評価により、臨床的に行うことができる。
【0027】
本発明の1態様では、TACI−Igは、臨床的に孤立した症候群(CIS)としての視神経炎の治療用である。
【0028】
臨床的に孤立した症候群(CIS)は、第1の神経学的エピソード又は第1の臨床的事象であり、少なくとも24時間続き、中枢神経系(CNS)中の1以上の部位における炎症及び/又は脱髄によって起こる。CISの人は、1つの病変によって起こる視神経炎の発病のような単一の神経学的兆候又は症状を有することがある。この場合に、CISは、単焦点性である。CISを有する人はまた、1超の場所での病変によって起こる、片側の衰弱を伴う視神経炎の発病のような、1超の兆候又は症状を有することがある。この場合、CISは多焦点性であると言われる。
【0029】
本発明によれば、TACI−Ig融合タンパク質は多焦点性としての、又は好ましくは単焦点性の臨床的に孤立した症候群としての、視神経炎の治療にために使用される。
【0030】
視神経炎は、両眼又は片側の眼を冒すことがある。一実施態様では、本発明によって治療されるべき視神経炎は、片側の眼を冒す、すなわち、症候性片側性視神経炎である。症候性視神経炎は、視力喪失(例えば、かすみ目)、眼痛及び色弱によって特定される。
【0031】
視神経炎に罹患している患者は、通常、再発を繰り返す(すなわち、視神経炎の最初の臨床的事象の後に任意の視神経炎事象、例えば同じ眼での視神経炎の次の発病)。そのため、本発明の態様は、TACI−Ig融合タンパク質の使用による視神経炎の再発の予防に関する。臨床的に孤立した症候群としての視神経炎を経験する個体は、多発性硬化症を発症するかもしれないしあるいはしないかもしれない。
【0032】
本発明の更なる態様では、TACI−Ig融合タンパク質は、視神経炎の、再発性多発性硬化症(RMS)又は臨床的に規定された多発性硬化症(CMDS)、すなわち、CISとしての視神経炎後のRMS又はCDMSの発症、への転換の予防のために使用される。
【0033】
再発性多発性硬化症(RMS)は、例えば、再発寛解型多発性硬化症(RRMS)、表生的な再発を伴った二次性進行型多発性硬化症(SPMS)でよく、又は進行型再発性多発性硬化症(PRMS)でよい。
【0034】
臨床的に明確な多発性硬化症は、患者が第二の神経学的な(脱髄)事象を経験するときに確立される。
【0035】
RMSの診断は、例えばPolmanら, 2005又は以下の実施例1の付表Aに記載の改訂McDonald基準に従って行われる。
【0036】
再発性MSにおいて、臨床再発は一般に、少なくとも1ヶ月隔てられる。
【0037】
臨床的攻撃又は再発は、以下の3つの判定基準によって規定することができる(同じく実施例1の付表C参照):
(1)(i)先行する臨床事象の発症から少なくとも30日隔てられた神経学的異常、及び(ii)少なくとも24時間持続する神経学的異常、の両方により特定された異常を伴う、新たに出現した又は再出現したのいずれかの神経学的異常;
(2)発熱又は既知の感染症が存在しないこと(温度(腋窩、経口又は尿道で(intrauriculary)測定)37.5℃/99.5°F以上の発熱);
(3)i)EDSSの機能別障害度の少なくとも1の上昇、又はii)総EDSSスコアの増加:のいずれかとして規定された、被験者の報告された症状に相関する、主観的神経学的機能障害。
【0038】
病変の時間的散在性に関する核磁気共鳴画像法(MRI)判定基準は、初期臨床事象の発症後少なくとも30日で実行されたいわゆる参照スキャン以降、任意の時点で生じる少なくとも1カ所の新規T2病変として規定されている。あるいは、MRIスキャンは、症状の発症後少なくとも3ヶ月間行われ、かつ時間的散在性は、少なくとも1カ所の新規ガドリニウム(Gd)−増強病変により確立される。「新規」病変とは、初期臨床事象に関与した部位では生じていない病変である。
【0039】
下記判定基準のうちの3項目が満たされる場合に、脳の異常及び空間的散在性が、MRIにより明らかにされる:(1)少なくとも1カ所のガドリニウム−増強病変、又はGd−増強病変が存在しない場合には、9カ所のT2−高信号病変;(2)少なくとも1カ所の側頭下病変;(3)少なくとも1カ所の傍皮質病変;(4)少なくとも3カ所の室周囲病変。脊髄病変は、脳側頭下病変と同等と考えることができる。増強する脊髄病変は、増強する脳病変と同等と考えられ、個々の脊髄病変は、個々の脳病変と一緒に、必要数のT2病変に達するのに貢献する。
【0040】
本発明の状況において用語「治療」は、本疾患に関する任意の有益な作用をいい、これは、病理学的顕在化又は本疾患の発症もしくは診断の後の患者により顕在化された1種以上の症状の、減弱、軽減、減少、減退又は緩和を含み、更には本疾患の又はそれらの症状の進行の遅延も含む。
【0041】
本発明に従う視神経炎の治療は、以下:(a)光干渉断層法(OCT)によって評価された、網膜神経線維層(RNFL)厚の保持;(b)低コントラスト文字への鋭敏さ及びコントラスト感受性等の視覚的成果の維持;(c)色覚、視野及び高コントラスト感受性の維持、の少なくとも1つによって特徴付けられる:
【0042】
更に、以下のパラメータは、本発明に従うTACI−Ig融合タンパク質による治療効果を評価するために使用することができる:
−5%又は10%又は15%又は20%以下、あるいは罹患した眼と他眼との5μm又は10μm又は15μm又は20μm以下のRNFL厚、の維持又は減少;
−5%又は10%又は15%又は20%以下、あるいは長期間罹患した眼における5μm又は10μm又は15μm又は20μm以下のRNFL厚、の維持又は減少;
−治療期間に渡って、罹患した眼の中心窩周囲3mmでの斑状厚における、5%又は10%又は15%又は20%以下の維持又は減少;
−治療期間に渡って、罹患した眼の中心窩周囲6mmでの斑状厚における、5%又は10%又は15%又は20%以下の維持又は減少;
−治療期間に渡って、罹患した眼の中心窩周の5%又は10%又は15%又は20%以下の維持又は減少;
−治療期間に渡る低コントラスト文字への鋭敏さの維持(例えばTripら, 2005によって記載されたSloanチャート);
−治療期間に渡るコントラスト感受性の維持(例えばFisherら, 2006によって記載されたPelli-Robsonチャート)。
【0043】
少なくとも3、6又は9ケ月間、McDonald判定基準によるRMA又はCDMSへの転換(第二の臨床攻撃)がない;
−高コントラスト文字への鋭敏さの維持(糖尿病網膜症の早期治療研究(ETDRS)チャート(例えば米国特許第5,078,486号明細書の開示に従って測定可能))
−視野の維持(Humphrey自動視野計(例えばTrope及びBritton, 1987に従って測定可能));及び
−色相の維持(Farnsworth Munsell D15試験(Farnsworth-Munsell Dichotomous D-15 Test、例えばwww.munsell.euから入手可能)。
【0044】
EDSSは、疾患重症度を説明する分類スキーム(等級化基準)であり、臨床試験に登録されることが容認される病期を規定するために使用される。これは神経科医により、患者の類似した群別のために、多発性硬化症の身体障害の進行を経過観察し、かつ治療結果を評価するためにも使用される。機能別障害度(FS)の基準は、その全般的フレームワーク内に組込まれている。
【0045】
EDSS尺度は、以下のように規定されている(Kurtzke, Neurology, 1983, 33:1444-52):
0.0−神経学的検査で正常;
1.0−身体障害なし、1FSの極軽い徴候;
1.5−身体障害なし、7FSの2の極軽い徴候;
2.0−7FSの1の極軽い身体障害;
2.5−2FSの極軽い身体障害;
3.0−1FSの中等度身体障害;又は、完全に歩行可能であるが、3−4FSの軽度の身体障害;
3.5−完全に歩行可能であるが、1FSの中等度身体障害、及び1もしくは2FSの軽度身体障害;又は、2FSの中等度身体障害;又は、5FSの軽度身体障害;
4.0−補助なしで完全に歩行可能、比較的高度身体障害にもかかわらず1日約12時間起き上がって動き回る。補助なし歩行可動域が500m;
4.5−補助なし完全な歩行、一日の大半を起きあがって動き回る、終日の十分な活動ができる、そうでなければ十分な活動に若干の制限があるか、もしくは最小限の補助を必要とすることがある。比較的高度身体障害。補助なし歩行可動域が300m;
5.0−補助なし約200m歩行。終日の十分な活動を損なう身体障害;
5.5−100m歩行、終日の十分な活動ができない身体障害;
6.0−休憩を入れてもしくは入れずに100m歩行するために必要な、断続的又は片側付きっきりの補助(杖、松葉杖、もしくは装具);
6.5−休憩を入れずに20m歩行するために必要な、両側付きっきりの補助(杖、松葉杖、もしくは装具);
7.0−補助あっても5m以上歩けず、車椅子に本質的に制限される、車椅子を自分で動かせ、独りで乗降できる;1日約12時間の車椅子での活動;
7.5−2、3歩以上歩けず、車いすに制限される、動かすのに補助必要なことがある;車椅子を自分で動かせるが、終日の活動のために電動椅子が必要なことがある;
8.0−ベッド、椅子又は車椅子に本質的に制限されるが、1日の大半はベッド外であることができる;身の回りのことを行う機能は維持され、一般に腕は有効に使える;
8.5−一日の大半は本質的にベッドに制限、腕の使用はある程度有効、身の回りのことを行う機能はある程度維持されている;
9.0−体が不自由なベッド生活、意思伝達及び飲食はできる;
9.5−有効な意思伝達又は飲食/嚥下できず;
10.0−死亡。
【0046】
機能別障害度(FS)の基準は、以下に言及する(Kurtzke, Neurology, 1983, 33:1444-52):
身体機能を調節するCNS領域:錐体路(歩行能)、小脳(協調)、脳幹(発語及び嚥下)、感覚(触覚及び疼痛)、直腸(bowel)及び膀胱;視覚;精神;並びに、その他(多発性硬化症による他の神経学的所見を含む)。各機能別障害度(FS)は、一番近い可能なグレードに等級化され、かつVは、異常不明を示す;これらは、追加スコアではなく、個々の項目の比較のためにのみ使用される。
【0047】
錐体路
0−正常
1−異常徴候あるが障害なし;
2−極軽い身体障害;
3−軽度/中等度の不全対麻痺又は片不全麻痺;高度の単不全麻痺;
4−顕著な不全対麻痺又は片不全麻痺;中等度の四肢麻痺又は単不全麻痺;
5−対麻痺、片麻痺、又は顕著な不全対麻痺;
6−四肢麻痺;
V−不明。
【0048】
小脳機能
0−正常;
1−異常徴候あるが身体障害なし;
2−軽度の失調;
3−中等度の躯幹又は四肢の失調;
4−高度の失調;
5−協調運動の実行不能;
V−不明;
X−衰弱。
【0049】
脳幹機能
0−正常;
1−徴候のみ;
2−中等度の眼振、又は軽度の他の身体障害;
3−高度の眼振、顕著な外眼筋麻痺、又は中等度の他の脳神経障害;
4−顕著な構音障害、又は他の顕著な機能障害;
5−発語又は嚥下の不能;
V−不明。
【0050】
感覚機能
0−正常;
1−1〜2肢での、振動覚又は描字覚のみの低下;
2−1〜2肢での、軽度の触覚・痛覚・位置覚の低下、及び/もしくは中等度の振動覚の低下;又は、3〜4肢での、振動覚の低下;
3−1〜2肢での、中等度の触覚・痛覚・固有覚の低下、及び/もしくは本質的に振動覚の喪失;又は、3〜4肢での、軽度の触覚もしくは痛覚の低下、及び/もしくは中等度の全ての固有覚検査での低下;
4−1〜2肢の単独又は一緒での、顕著な触覚・痛覚の低下、もしくは固有覚の消失;又は2肢以上での、中等度の触覚・痛覚の低下、及び/もしくは高度の固有覚の消失;
5−1〜2肢での、全感覚の消失;又は、顎以下の体のほとんどでの、中等度の触覚・痛覚の低下、及び/もしくは固有覚の消失;
6−顎以下での、本質的に全感覚消失;
V−不明。
【0051】
直腸及び膀胱機能
0−正常;
1−軽度の排尿困難、尿意逼迫、又は尿閉;
2−直腸又は膀胱での、中程度の困難、逼迫、又は尿閉、又は稀な尿失禁;
3−頻繁な尿失禁;
4−ほぼ常に導尿;
5−膀胱機能消失;
6−直腸機能消失;
V−不明。
【0052】
視覚機能
0−正常;
1−暗点があり、視力>20/30(矯正);
2−悪い方の眼に暗点あり、最高視力20/30〜20/59;
3−悪い方の眼に大きな暗点、又は視野障害、視力20/60〜20/99;
4−高度視野狭窄、視力20/100〜20/200;グレード3と良眼の最高視力<20/60;
5−悪い方の眼の視力<20/200;グレード4と良眼の視力<20/60;
V−不明。
【0053】
精神機能
0−正常;
1−情動の変化のみ;
2−軽度の知能低下;
3−中等度の知能低下;
4−高度の知能低下;
5−痴呆;
V−不明。
【0054】
その他の機能
0−正常;
1−その他の神経学的所見あり。
【0055】
多発性硬化症機能的要素検査(MSFC)は、更に頻繁に適用される評価尺度基準である(例えばRudickら、2001)。これは、MS患者の下記の能力を評価する:25歩の時間の2回測定;9−HPT(9穴釘試験)による利き手の2回検査;9−HPTによる非利き手の2回検査;ペース聴覚連続足し算試験(PASAT−3’)。これらの検査は、例えば全米多発性硬化症協会(NMSS)により出版されたFischerらにより作成されたマニュアル(2001)に従って、又はFisher JSらの文献「多発性硬化症機能的要素検査(MSFC)に関する投与と評価マニュアル」、ニューヨーク、Demos Medical Publishing、1999に説明されたように実行される。
【0056】
本発明の実施態様において、TACI−Ig融合タンパク質は、視神経炎の治療のためである。該TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質は、(a)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はそれらの断片もしくは変種;並びに、(b)ヒト免疫グロブリン−定常ドメインを含むか又はそれからなる。
【0057】
本発明の範囲内で、用語「TACI細胞外ドメイン」は、TACI細胞外ドメイン(配列番号1)と少なくとも80%又は85%、好ましくは少なくとも90%又は95%又は99%同一である、それらの任意の変種もいう。用語「TACI細胞外ドメイン」は、50個を超えない又は40個又は30個又は20個又は10個又は5個又は3個又は2個又は1個の保存的アミノ酸置換を含む変種も含む。任意のそのような変種は、BLyS及び/又はAPRIL及び/又は任意のBLyS−APRILヘテロ三量体に結合することができる。好ましくは、このような変種も、BLyS及び/又はAPRIL及び/又は任意のBLyS−APRILヘテロ三量体の生物活性を阻害する。BLyS又はAPRILの生物活性は、例えばB細胞増殖である。
【0058】
TACI細胞外ドメインの断片(活性断片)及び変種は、該断片がBLyS及び/又はAPRIL及び/又はBLyS−APRILヘテロ三量体に結合することができる限りは、本発明の状況において使用することができる。好ましくはこのような断片は、BLyS及び/又はAPRIL及び/又はBLyS−APRILヘテロ三量体の生物活性も阻害又は低下させる。
【0059】
任意のTACI細胞外ドメイン、TACI−Ig融合タンパク質、又はそれらの任意の変種もしくは断片のBLyS及び/又はAPRIL及び/又はBLyS/APRILヘテロ三量体に結合する能力は、例えば下記実施例2に従って評価することができる。BLyS、APRIL又はBLyS/APRILヘテロ三量体の生物活性を阻害又は低下する能力は、例えば下記実施例3に従い、評価することができる。
【0060】
本発明の状況において、TACI細胞外ドメインのそのような断片もしくは変種又はTACI−Ig融合タンパク質は、アタシセプト、すなわち配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質、の活性を有意に低下する生物活性を有さないことが好ましい。
【0061】
本明細書において使用される用語「免疫グロブリン(Ig)−定常ドメイン」は、「Fcドメイン」とも称され、ヒト又は動物の免疫グロブリン(Ig)に由来し、好ましくはIgGである。このIgGは、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4でよい。このFcドメインは、好ましくはヒンジ領域と一緒に、IgG1の少なくともCH2、CH3ドメインを含むことが好ましい。
【0062】
本発明の別の態様では、Ig定常ドメインは、ヒトIgG1ドメインである。
【0063】
一実施態様において、ヒトIgG1定常ドメインは、補体依存性細胞傷害性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を低下するように、修飾されている。
【0064】
ADCCにおいて、抗体のFcドメインは、ナチュラルキラー細胞及びマクロファージなどの、免疫エフェクター細胞の表面上のFc受容体(FcγR)に結合し、標的化された細胞のファゴサイトーシス又は溶解につながる。CDCにおいて、これらの抗体は、細胞表面で補体カスケードの引き金を引くことにより、標的化された細胞を死滅する。IgGの活性FcγR(FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIIa及びFcγRIIIb)並びに阻害FcγR(FcγRIIb)又は補体第一成分(C1q)への結合は、ヒンジ領域及びCH2ドメインに位置した残基によって決まる。CH2ドメインの二つの領域は、FcγR及び補体C1q結合にとって重要であり、かつIgG2及びIgG4で独自の配列を有する。例えば、IgG2残基の233−236位でのヒトIgG1への置換は、ADCC及びCDCを大きく低下する(Armourら、1999、及びShieldsら、2001)。EUインデックス位置(Kabatら、1991)に従い、下記Fc変異を、例えばIgG1由来のFcへ導入することができる:
T250Q/M428L
M252Y/S254T/T256E+H433K/N434F
E233P/L234V/L235A/ΔG236+A327G/A330S/P331S
E333A;K322A。
【0065】
更にFc変異は、例えば330、331、234、又は235、又はそれらの組合せから選択されたEUインデックス位置における置換であってよい。CH2ドメイン内のEUインデックス位置297でのアミノ酸置換も、本発明の状況においてFcドメインに導入され、N−連結された糖結合(carbohydrate attachment)の可能性のある部位を排除する。EUインデックス位置220のシステイン残基もセリン残基と置換され、通常免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合を形成するシステイン残基を排除する。
【0066】
本発明に従い使用されるTACI−Ig融合タンパク質に適した特定のFcドメインは、調製されている。
【0067】
具体的には、修飾されたヒトIgG1 Fcの6種の形が、Fc融合タンパク質の作出のために作製され、かつFc−488、更にはFc4、Fc5、Fc6、Fc7、及びFc8と命名されている。Fc−488(配列番号4のDNA配列及び配列番号5のアミノ酸配列を有する)は、ヒトγ1 Fc領域を含む融合タンパク質の通常のクローニングのためにデザインされ、並びにこれは鋳型として野生型ヒト免疫グロブリンγ1定常領域を用いて構築された。対合していないシステイン残基に起因した可能性のある有害作用に関する懸念は、通常免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合するシステインをセリン残基と置換するという決断につながる。追加の変化は、EUインデックス位置218をコードしているコドンへの、その後のDNA操作が容易になるようにBgIII制限酵素認識部位の導入であった。これらの変化は、PCRプライマーでコードされたPCR産物に導入された。BgIII部位の位置により、及びFcヒンジ領域を完全にするために、EUインデックス位置216及び217のコドンは、この融合タンパク質パートナー配列に取り込まれた。
【0068】
Fc4、Fc5、及びFc6は、FcγRI結合及び補体C1q結合を低下することにより、Fcにより媒介されたエフェクター機能を低下する変異を含む。Fc4は、Fc−488に導入されたものと同じアミノ酸置換を含む。追加のアミノ酸置換は、可能性のあるFc媒介したエフェクター機能を低下するために導入された。具体的には、FcγRI結合を低下するために、3つのアミノ酸置換が導入された。これらは、EUインデックス位置234、235、及び237での置換である。これらの位置での置換は、FcγRIへの結合を低下することが示されている(Duncanら、1988)。これらのアミノ酸置換は、FcγRIIa結合に加え、FcγRIII結合も低下することができる(Sondermannら、2000;Winesら、2000)。
【0069】
いくつかの基が、補体C1q結合及びそれに続く補体固定におけるEUインデックス位置330及び331に関して説明されている(Canfield及びMorrison、1991;Taoら、1993)。これらの位置でのアミノ酸置換は、補体固定を低下するために、Fc4において導入された。Fc4のCH3ドメインは、クローニングされたDNAが大腸菌のdamプラス株において増殖される場合に可能性のあるdamメチル化部位を排除するために、TGAからTAAへ変更された、停止コドンを除いて、対応する野生型ポリペプチドにおいて認められるものと同一である。
【0070】
Fc5において、BgIIIクローニングスキームは、この特定のFcを含む融合タンパク質において使用されないので、EUインデックス位置218のアルギニン残基は、リシンに戻し変異される。Fc5配列の残りは、Fc4に関する先の説明と一致する。
【0071】
Fc6は、そのカルボキシル末端リシンコドンが排除されること以外は、Fc5と同じである。成熟免疫グロブリンのC−末端リシンは、B細胞から分泌される前に、翻訳後に成熟免疫グロブリンから除去されるか、又は血清循環時に除去されることが多い。結果的にこのC−末端リシン残基は、典型的には、循環している抗体中には認められない。先のFc4及びFc5のように、Fc6配列の停止コドンは、TAAに変更される。
【0072】
Fc7は、CH2ドメインに配置されたEUインデックス位置297でのアミノ酸置換以外は、野生型γ1Fcと同じである。EUインデックス位置Asn−297は、N−連結された糖結合の位置である。N−連結された糖は、その糖構造のバッチ毎の変動の可能性のために、組換えにより発現されたタンパク質における可能性のある変動性の源を導入する。この可能性のある変動性を排除する試みにおいて、Asn−297は、グルタミン残基に変異され、その残基位置でのN−連結された糖の結合を防止する。残基297の糖は、FcRIIIへのFc結合にも関与している(Sondermannら、Nature 406:267 (2000))。従ってこの糖の除去は、概して組換えFc7を含有する融合タンパク質の、FcγRへの結合を減少するはずである。前述のように、Fc7配列中の停止コドンは、TAAに変異された。
【0073】
Fc8は、EUインデックス位置220のシステイン残基が、セリン残基と交換されていること以外は、配列番号4に示された野生型免疫グロブリンγ1領域と同じである。この変異は、通常免疫グロブリン軽鎖定常領域とジスルフィド結合するシステイン残基を除去する。
【0074】
TACI−Ig融合タンパク質の形成のためのこれらの特定されたFcドメインのいずれかの使用は、本発明の範囲内である。
【0075】
TACI−Igの免疫グロブリン定常ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はTACI−Ig融合タンパク質の全般的生物活性に影響がなく、及びTACI−Igタンパク質の免疫原性が、アタシセプト(配列番号3)のそれよりも有意に高くない限りは、配列番号2のIg定常ドメインと少なくとも80%もしくは85%、好ましくは少なくとも90%もしくは95%もしくは99%同一であるそれらの変種、又は50個未満、もしくは40個もしくは30個もしくは20個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を含む変種を有するポリペプチドを含んでなるか又はからなることが好ましい。
【0076】
本発明の状況において、用語「同一性」は、これらの配列を比較することにより決定された、2つ以上のポリペプチド配列の間の関係を反映している。概して、同一性は、比較される配列の長さにわたり、2つのポリペプチド配列のそれぞれの正確なアミノ酸毎の対応をいう。
【0077】
正確な対応のない配列に関して、「同一率%」を決定することができる。一般に比較される2つの配列は、これらの配列間の最大相関をもたらすように、並置される。これは、いずれか一方又は両方の配列へ「ギャップ」を挿入し、並置度を増大することを含むことができる。同一率%は、同じ又は非常に似た長さの配列について特に適しているように、比較される各配列の長さ全体にわたり決定されてよいか(いわゆるグローバルアラインメント)、又は等しくない長さの配列についてより適しているように、より短い規定された長さの配列について決定されてよい(いわゆるローカルアラインメント)。
【0078】
二つ以上の配列の同一性の比較法は、当該技術分野において周知である。従って例えば、Wisconsin Sequence Analysis Package、9.1版において利用可能なプログラム(Devereux Jら、1984)、例としてプログラムBESTFIT及びGAPは、二つのポリヌクレオチド間の同一率%及び二つのポリペプチド配列間の同一率%を決定するために使用することができる。BESTFITは、Smith及びWaterman(1981)の「ローカルホモロジー」アルゴリズムを利用し、二つの配列間の類似性の最良の単独領域を発見する。配列の同一性を決定するその他のプログラムも、当該技術分野において公知であり、例えばBLASTプログラムファミリー(Altschul S Fら、1990、Altschul S Fら、1997、NCBIのホームページ(www.ncbi.nlm.nih.gov)でアクセス可能)、及びFASTA(Pearson W R、1990)などがある。
【0079】
本発明による好ましいアミノ酸置換は、「保存的」置換として公知のものである。TACIの細胞外ドメイン又はTACI−Ig融合タンパク質の免疫グロブリン定常ドメイン部分の保存的アミノ酸置換は、群内のメンバーの置換がその分子の生物学的機能を保存するような、十分に類似した物理化学特性を有するような、群内の同義アミノ酸を含む(Grantham、1974)。先に規定された配列において、特に挿入又は欠失が、数個のアミノ酸、例えば50個以下又は30個以下、20個以下、もしくは好ましくは10個以下もしくは5個以下のアミノ酸残基にのみ関与し、例えばシステイン残基などの、機能的高次構造に重要であるアミノ酸を除去もしくは移動しない場合に、それらの機能を変更することなく、アミノ酸の挿入及び欠失も行われ得ることは明らかである。そのような欠失及び/又は挿入により生成されたタンパク質及び変種は、その生物活性が、アタシセプト(配列番号3のアミノ酸配列を有するタンパク質)の生物活性よりも有意に低くない限りは、再発性MSの治療に使用することができる。
【0080】
WO 00/40716及びWO 02/094852として公開された国際特許出願は、TACIの細胞外ドメインに加え、そのリガンドBLyS及びAPRILと相互作用するTACI細胞外ドメインの特異断片の配列を開示している。
【0081】
WO 00/40716に開示されたように、TACI細胞外ドメインは、TACI受容体が属する腫瘍壊死因子(TNF)受容体スーパーファミリーの一員にとって特徴的である、2個のシステイン(Cys)−リッチな反復配列を含む。WO 00/40716において、2番目の保存性の低いCys−リッチ反復配列のみを含む、BR42x2と称されるTACIのスプライシング変種は、BLySに結合することができることも確立されている。従って本発明のフレームにおいて、本TACI細胞外ドメイン断片は、好ましくは、2番目のCys−リッチ反復配列に相当する配列番号1のアミノ酸残基71から104を少なくとも含んでなるか又はからなる。本TACI−Ig融合タンパク質は、1番目のCys−リッチ反復配列に相当する配列番号1のアミノ酸残基34から66を更に含んでなることは更に好ましい。
【0082】
更なる本発明の実施態様において、BLyS及び/又はAPRIL活性に結合しかつ阻害する該TACI細胞外ドメイン断片は、配列番号1のアミノ酸残基30〜110を含んでなるか又はからなる。
【0083】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号3の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか又はからなる。
【0084】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号8の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか又はからなる。
【0085】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号10の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか又はからなる。
【0086】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号12の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか又はからなる。
【0087】
より更なる本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、配列番号14の配列を有するポリペプチド、又はそれらと少なくとも90%もしくは95%もしくは98%もしくは99%同一であるか、又は30個未満もしくは20個もしくは15個もしくは10個もしくは5個もしくは3個もしくは2個の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含んでなるか又はからなる。
【0088】
再発性多発性硬化症の治療のためのTACI−Ig融合タンパク質の投薬は、好ましくは約10〜約400mg/患者/週の範囲であり、より好ましくは約20〜約300mg/患者/週の範囲である。
【0089】
本発明の一実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、25又は75又は150mg/患者/週の量での投与のために調製又は製剤される。本発明の一実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、150mg/患者の量で週1回投与される。好ましくは、本TACI−Ig融合タンパク質は、150mg/患者/週での量で投与される。
【0090】
本発明の別の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、50又は150又は300mg/患者の量で週2回投与される。好ましくは、本TACI−Ig融合タンパク質は、300mg/患者/週での量で投与される。
【0091】
本出願において特定された様々な範囲の数値の使用は、別に明確に記さない限りは、記載された範囲内の最小値及び最大値は両方とも語句「約」に優先するように、近似値として記載される。この様式で、記載された範囲を上回る及び下回るわずかな変動を使用し、該範囲内の数値と実質的に同じ結果を実現することができる。同じく明らかにされた範囲は、言及された最小値と最大値の間の全ての値に加え、それらにより形成可能である任意の範囲を含む、連続した範囲であることが意図されている。
【0092】
本TACI−Ig融合タンパク質は、毎日又は1日おきの、好ましくは週2回又は週1回の投与のために調製又は製剤されてよい。好ましくはTACI−Igの投与は、週1回のボーラス投与である。
【0093】
別の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、隔週又は月1回の投与のために調製又は製剤される。
【0094】
一実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、負荷期間中の1週間に2回(週2回)の投与のために調製又は製剤される。負荷期間中は、TACI−Ig融合タンパク質は、300mg/患者/週の量で投与されることが好ましい。更なる実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、維持期間中の1週間に1回(週1回)の投与のために調製又は製剤される。維持期間中は、TACI−Ig融合タンパク質は、150mg/患者/週の量で投与されることが好ましい。
【0095】
本発明の実施態様により、負荷期間は、好ましくは少なくとも1、2又は3週間であり、かつ好ましくは最大1ヶ月であり、並びに維持期間は、好ましくは少なくとも3又は5又は6又は7又は8ヶ月間であるか、又は少なくとも1年もしくは2年もしくは3年もしくは5年である。実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、長期的に使用される。
【0096】
本発明の実施態様に従って、負荷期間は、好ましくは、少なくとも1、2又は3週、好ましくは最高1ケ月であり、維持期間は、好ましくは、少なくとも1ケ月又は2ケ月又は3ケ月又は5ケ月又は6ケ月又は7ケ月又は8ケ月又は9ケ月又は10ケ月又は12ケ月又は13ケ月又は14ケ月又は15ケ月又は16ケ月又は17又はケ月18ケ月である。
【0097】
本TACI−Ig融合タンパク質は、例えば静脈内、皮下又は筋肉内経路のために製剤されることができる。
【0098】
本発明の実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、皮下投与のために調製又は製剤される。
【0099】
非経口(例えば静脈内、皮下、筋肉内)投与に関して、本TACI−Ig融合タンパク質は、医薬として許容し得る非経口溶剤(例えば、水、食塩水、デキストロース溶液)及び等張性を維持する添加剤(例えばマンニトール)又は化学安定性を維持する添加剤(例えば保存剤及び緩衝剤)と一緒に、液剤、懸濁剤、乳剤又は凍結乾燥散剤として製剤することができる。この製剤は、通常使用される技術により滅菌される。
【0100】
本発明の一実施態様において、本TACI−Ig融合タンパク質は、酢酸ナトリウム緩衝液及びトレハロースを含有する製剤中、好ましくは約pH5の10mM酢酸ナトリウム緩衝液中にである。
【0101】
更なる実施態様では、本発明は、
a)BLySに結合するTACI細胞外ドメイン又はそれらの断片もしくは変種;及び
b)ヒト免疫グロブリン−定常ドメイン、又はそれらの断片もしくは変種
を含む融合分子を含む組成物、再発性多発性硬化症を治療するために有効な量で患者に投与することを含む、好ましくは臨床的に孤立した症候群としての視神経炎を治療する方法、及び再発性MS又は再発性視神経炎攻撃の発症を予防する方法に関する。
【0102】
本発明は更に、視神経炎、特に同じ眼での第二の視神経炎攻撃のような再発性視神経炎又はCDMSに転換する患者の再発を、コルチコステロイドと組合せたTACI−Ig融合タンパク質を用いて治療する使用、及び方法に関する。コルチコステロイドは、好ましくはメチルプレドニゾロンである。一実施態様において、メチルプレドニゾロンは、経静脈的に1000mg/患者/日で使用される。
【0103】
本発明による方法及び使用は、再発性多発性硬化症の他の治療法、例えばインターフェロン−β、クラドリビン、ミトキサントロン、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、リツキシマブ、テリフルノミド、フィンゴリモド、ラキニモド、又はBG−12による治療などと組合せることができる。この組合せ治療は、同時、個別又は逐次であることができる。
【0104】
ここで本発明を完全に説明する上で、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、かつ過度の実験を行うことなく、広範な同等のパラメータ、濃度及び条件で、同じ事を実行することができることは、当業者には明らかであろう。
【0105】
本発明は、それらの具体的実施態様に結びつけて説明されているが、更なる修飾が可能であることは理解されるであろう。本出願は、概して本発明の原理に従い、かつ本発明が属する技術分野において公知の又は慣習的実践となるような、並びに添付された「特許請求の範囲」に従い先に示された本質的特徴に適用されるような、本発明の開示からのそのような逸脱を含む、本発明のあらゆる変化、使用又は適応を含むことが意図されている。
【0106】
雑誌記事又は要約、公開又は非公開の米国もしくは外国の特許出願、発行された米国もしくは外国の特許又は任意の他の参考文献を含む、本明細書に引用された参考文献は全て、引用された参考文献内に示されたデータ、表、図面及び本文を含む全体が参照により本明細書中に組み込まれている。加えて、本明細書に引用された参考文献内に引用された参考文献の全内容も、全面的に参照により組込まれている。
【0107】
公知の方法の段階、通常の方法の段階、公知の方法又は通常の方法の言及は、いかなる意味においても、本発明のいずれかの態様、説明又は実施態様が、関連技術分野において明らかにされ、教示され又は示唆されることの承認ではない。
【0108】
先の具体的実施態様の説明は、他者(others)が、過度の実験をすることなく、本発明の全般的概念から逸脱することなく、そのような具体的実施態様の様々な適用に関して、当業者の知識(本明細書に引用された参考文献の内容を含む)の適用により、容易に修飾及び/又は適合することができる、本発明の全般的性質を完全に明らかにするであろう。従って、そのような適応及び修飾は、本明細書に示された教示及び指針を基に、明らかにされた実施態様の一連の同等物の意味内であることが意図されている。ここでの表現及び用語は、説明を目的とし、限定を目的とせず、その結果本明細書の用語又は表現は、当業者の知識と組合せて、ここで示された教示及び指針を鑑み当業者により理解されるべきであることも理解されるべきである。
【0109】
ここで本発明を説明する上で本発明は、例証として提供され、本発明の限定を意図するものではない、以下の例証的臨床試験の概略の実施例を参照しより容易に理解されるであろう。
【実施例】
【0110】
実施例1:36週間の治療コースにわたる臨床的に孤立した視神経炎(CIS)としての視神経炎(ON)の被験者における、安全性及び忍容性を評価するための、及び光干渉断層法(OCT)によって評価されるアタシセプトの神経保護的効果を探求するための、2アームのランダム二重盲検プラセボ対照多施設共同第II相試験
【0111】
略語リスト
AE 有害事象
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
ANCOVA 共分散分析
AP アルカリホスファターゼ
APRIL 増殖誘発リガンド
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
BCMA B細胞成熟抗原
BIW 1週2回
BLyS Bリンパ球刺激因子
CA 薬事当局
CDMS 臨床的に規定されたMS
CI 信頼区間
CIS 臨床分離された症候群
CJD クロイツフェルト・ヤコブ病
CNS 中枢神経系
CQA 企業の品質保証(Corporate Quality Assurance)
CRF 症例報告書
CRO 治験受託機関(Clinical Research Organisation)
CRP C−反応性タンパク質
CTCAE 有害事象に関する共通用語基準(Common Terminology Criteria for Adverse Events)
CTS 治験薬
DMD 疾患修飾型薬剤(Disease-Modifying Drug)
DMPK 薬物代謝及び薬物動態
DMC データモニタリング委員会
DQA 開発品質保証(Development Quality Assurance)
DST データ標準化チーム(Data Standards Team)
EC 倫理委員会
ECG 心電図
ECRF 電子症例報告書
EDSS 総合障害度
ESR 赤血球沈降速度
ETDRS 初期治療糖尿病性網膜症分類
EU 欧州連合
FDA 米食品医薬品局
GCP 医薬品の臨床試験の実施に関する基準
Gd ガドリニウム
GEE 一般化推定方程式
GDS 総合薬物安全性(Global Drug Safety)
HBsAg B型肝炎表面抗原
HIPAA 医療保険の携行性と責任に関する法律
HIV ヒト免疫不全ウイルス
IB 治験薬概要書
ICH 日米欧医薬品規制調和国際会議
IEC 独立倫理委員会
IMP 治験薬
IRB 独立治験審査委員会
ITT 治療目的に即した
IUD 子宮内用具
IVIg 静脈内免疫グロブリン
IVRS 双方向音声応答システム
KFS Kurtzke機能別障害度
LD 負荷用量
LPLV 最終症例の最終観察
mcg マイクログラム
MD 維持用量
ml ミリリットル
MRI 核磁気共鳴画像法
MRI−AC 核磁気共鳴画像分析センター
MS 多発性硬化症
NYHA ニューヨーク心臓(Health)協会
OCT 光干渉断層法
ON 視神経炎
PCFR 親子関係報告書(Parent-Child/Foetus Report)
PD 薬力学
PGx 薬理遺伝学/薬理ゲノム学
PK 薬物動態
PP プロトコールに適合(Per Protocol)
QW 1週1回
R&D 研究開発
RA 関節リウマチ
RD 相対的差異
RGC 網膜神経節細胞
RMS 再発性多発性硬化症
RNFL 網膜神経線維束
RoW 海外部門(Rest of the World)
SAE 重篤有害事象
SAP 統計解析計画
sc 皮下(的)
SD1 試験第1日目
SEC 安全性・倫理委員会
SLE 全身性紅斑性狼瘡
SOP 標準操作手順書
SRB 安全性審査委員会
SUSAR 重篤未知の疑いのある有害反応
TACI 膜貫通アクチベーター及びシクロフィリンリガンド−インターアクター
TD 治療量
TIW 1週3回
TNF 腫瘍壊死因子
ULN 正常上限
WBC 白血球数
【0112】
試験の概要
目的
主要目的
本試験の主要目的は、頻回MRIにより判定されたRMS被験者において、CNS炎症を軽減するための、アタシセプト3用量の有効性を評価することである。
【0113】
二次目的
感染症の発症率及び重症度を含む、RMS被験者における、アタシセプト3用量の安全性及び忍容性の評価。
RMS被験者における、最低有効量(MED)を決定するための、アタシセプト3用量の評価。
【0114】
三次及び探索的目的
RMS被験者におけるアタシセプトの薬力学(PD)プロファイルと疾患活動の相関により、RMS病理におけるB細胞免疫の関与に関する情報を更に得ること。
被験者のサブセットにおいて、薬理ゲノム学/薬理遺伝学(PGx)試験を行い、遺伝子多型又は遺伝子発現プロファイルと薬物反応の間の、各々、可能性のある関係を同定する。
試験された用量と用法(負荷相:最初の4週間についてBW;維持相:32週間についてQW)で、アタシセプトの薬物動態(PK)を評価。
【0115】
エンドポイント
主要エンドポイント
−主要エンドポイントは、12週目から36週目までの1回のスキャンで被験者1名当たりのT1ガドリニウム(Gd)−増強病変の平均数である。
【0116】
副次的エンドポイント
有効性エンドポイント
−12、24及び36週でのON患者の罹患した眼と他眼とのRNFL厚の差;
−ベースラインから12〜24週までのON患者の罹患した眼のRNFL厚の変化;
−ベースラインから12、24及び36週までのON患者の罹患した眼の中心窩周囲3mmでの斑状厚の変化;
−ベースラインから12、24及び36週までのON患者の罹患した眼の中心窩周囲6mmでの斑状点厚の変化;
−ベースラインから12、24及び36週までのON患者の罹患した眼の斑状体積の変化;
−12、24及び36週での低いコントラスト文字視力(Sloanチャート);
−12、24及び36週でのコントラスト感度(Pelli-Robsonチャート)。
【0117】
安全性エンドポイント
−感染症を含む有害事象の性質、重症度及び発症率:
−臨床検査値異常の発生率及び重症度:
−注射部位反応:
−バイタルサイン、ECGにおける変化:
−本試験経過途中にアタシセプトに対する抗体を生じた被験者の割合;
−36週の治療期間におけるMcDonald判定基準によるRMS又はCDMS(第二の臨床攻撃)に転換する被験者の割合;
−36週でのEDSS変化(ベースラインに対する)。
【0118】
三次/探索的エンドポイント
−12、24及び36週での、高いコントラスト文字視力(糖尿病網膜症の早期治療研究(ETDRS)チャート);
−12、24及び36週での自動視野(Farnsworth Munsell D15試験);
−薬物動力学的(PK)測定:遊離のアタシセプト、コンポジットアタシセプト(遊離のアタシセプト+アタシセプトBLys複合体)、総アタシセプト(遊離のアタシセプト+アタシセプト−BLyS複合体+アタシセプト−APRIL複合体)、アタシセプト−BLyS複合体;
−対象亜群において、それぞれ遺伝子多型又は遺伝子発現プロファイルと薬物反応との可能な関係を特定するために、薬理ゲノム学的/薬理遺伝学的(PGx)研究が行われることになる。
【0119】
これは、36週間の治療コースにわたるON被験者における、安全性及び忍容性を評価し、及びOCTによって評価されたアタシセプトの神経保護的効果対合致するプラセボを探索するための、2アームのランダム二重盲検プラセボ対照多施設共同第II相試験である。
【0120】
被験者は、1:1のランダム化比でアタシセプト又はプラセボを受け取ることになる。アタシセプトは、36週の治療コースの最初の4週間は負荷投与量150mg SCで週2回(BIW)、引き続き150mg SCで毎週(QW)提供する。対照群は合致するプラセボを受け取る。この試験中、1回のスクリーニング来院(試験第1日(SD1)の前の28日以内)があり、SD1来院は、被験者がランダム化され、試験治療が開始する時期であり、及び1、4、8、1216、20、24、30及び36週での次の来院がある。規則的な電話によるコンタクトは、計画された来院の間に行われる。コルチコステロイドの使用は、最初のON事象の治療について任意である。次のコルチコステロイドの使用は、付表Bで規定されたCDMSに転換する患者又は同じ眼での第二ON攻撃を発症している患者における再発の治療に限定される。
【0121】
該被験者は、最後の投薬後12週間、経過観察されることになる。OCT、視覚機能及び安全性評価は48週での経過観察来院において行われることになる。
【0122】
全てのランダム化された被験者について、被験者が、CDMSに転換し、研究者が指定された疾患修飾型薬剤による治療を考慮する場合には、レビフ(登録商標)(本試験経過にわたり44mcgを週3回[TIW])による救済治療の選択肢がある。救済投薬を受ける任意の被験者は、IMPから離脱されるが、本試験に留まり、来院スケジュールに従い全ての予定された評価を行う。
【0123】
治験集団
この試験に適格である患者は、第1の臨床的事象(臨床的に孤立した症候群、CIS)としての兆候性片側ONと診断されるはずである。包括的基準は、ONを示すCIS対象の記録を確実にし、そして治験中の安全性及び効率の評価を混同し得た前治療を避けることを目的とする。更に、治験中に再発し、安全性評価を混同し得た過去の感染症及び合併症が除かれる。
【0124】
脱髄疾患の最初の臨床的兆候としてのONは、別の種類の臨床的攻撃を示すMS患者においてよりもこの症状において、より目立ったRNFL喪失に因る治療効果のより粗野な評価を可能にするかもしれず(RNFL厚は、症候的な視野関連がない場合でもMSにおいて減少する)、そのため、安定なベースラインを確実にする。単焦点ONを有する患者の選択は、治験集団中の重度の両側性視力障害の危険性を避け、そして、一般的に両側性の、刺激性でかつ通常重度であるONの存在によってもMSから識別されている、視神経脊髄炎のような別の症状を有する患者の包括を避ける(Cross, 2007)。それに基づいて、両側性ONを示す患者がMSへの進行の危険性がほとんどないことが示されている。
この研究は、世界中の約30箇所で行われることになる。
【0125】
適格判定基準
組入れ基準
1.症状の始まりとSD1との間の28日間内の、最初の臨床兆候としての片側性症候的視神経炎の診断;
2.インフォームドコンセントが得られた時点で、18〜60歳の男性又は女性;
3.任意の試験-関連手段の前に与えられる書面によるインフォームドコンセント。被験者は、インフォームドコンセントフォームを読み、理解する必要があり、そして試験の要件を十分に理解し、試験来院及び評価に従う意思がなければならない;
4.妊娠の可能性のある女性は、投与前に授乳してはならず、かつ投薬前の初回スクリーニング時の陰性血清妊娠検査及び試験第1日目(SD1)の尿妊娠検査を有していなけらばならない。本治験の目的に関して、妊娠の可能性のある女性とは、「閉経後少なくとも2年間経過、又は手術により不妊である以外の、思春期以後の全ての女性被験者」と定義される。
5.妊娠の可能性のある女性被験者は、SD1の前およそ4週間、治験投薬期間中及び治験投薬の最終投与後12週間、適切な避妊方法を用いることにより、避妊することが求められる。この必要要件は、手術により不妊の被験者又は閉経後少なくとも2年経過した被験者には適用されない。適切な避妊は、二種の障壁法、又は殺精子剤もしくは子宮内用具もしくは経口女性避妊薬の使用を伴う一種の障壁法として規定される;
6.被験者は、本試験期間中試験手順に従う意志がありかつ可能であること;
7.米国に関して、通常の医療の一部ではないあらゆる試験関連手順の前に、医療保険の携行性と責任に関する法律(HIPAA)の下での被験者承諾を含み、かつ被験者は自身の将来の医療を棄損することなくいかなる時点においてもコンセントを撤回してよいことを理解した上での、書面によるインフォームドコンセントの自発的提出(あらゆる治験関連手順の前に入手)。
【0126】
除外基準:
1.現在のON攻撃の前のONの病歴;
2.両側性視神経炎;
3.MSの診断;
4.Devic病の診断;
5.視神経炎に関連しない眼の合併疾患(緑内障、視神経の低形成、黄斑円孔、硝子体黄斑牽引症候群、糖尿病又は視神経の他の疾患を含む詳細な病的及び試験によって確認された);
6.以下で定義される罹患した眼の水腫に因るスクリーニング来院での評価できないOCT
2以上のセクターでの正常を超えて10μm超のRNFL厚、又は12以上のセクターのいずれかでの200μm超のRNFL厚;
7.±6視度を超える屈折障害;
8.研究者の見解において、本試験において被験者の参加についての危険性又は禁忌を構成する、又は試験目的、行為又は評価を邪魔し得た、研究室的発見及び病歴での発見又は前試験評価での発見を含む任意の症状(顕著な神経系、腎臓、肝臓、内分泌又は胃腸疾患を含むはこれらに限定されない);
9.リツキシマブもしくはベリムマブなどの、B細胞変更療法による、先行する治療。
10.インターフェロンβ又は酢酸グラチラマーなどの免疫調節療法への曝露;
11.非限定的に、クラドリビン、ミトキサントロン、アレムツズマブ、シクロホスファミド、アザチオプリン、メトトレキセート、又はナタリズマブを含む、免疫抑制薬又は細胞毒性物質への過去の曝露;
12.リンパ節照射、又は骨髄移植などの、先行する骨髄抑制/細胞毒性療法;
13.SD1以前6ヶ月以内の、サイトカイン又は抗−サイトカイン療法、静脈内免疫グロブリン(IVIg)又は血漿交換の先行する使用;
14.SD1以前60日以内の、経口又は全身性のコルチコステロイド又は副腎皮質刺激ホルモンによる治療;初期ONを治療するための光学的コルチコステロイドコースを除いて;
15.本試験中の長期又は月1回のパルスコルチコステロイドの必要性。
16.SD1以前1ヶ月以内の生ワクチン又はIg治療によるによる免疫化、又は本試験中のそのような治療の必要性。
17.SD1以前2ヶ月以内(又は本治験化合物の5半減期以内の、いずれか長い期間の)何らかの介入的臨床試験への参加;
18.中等度から重度の腎臓機能障害(Cockcroft-Gault式に従い、クレアチニンクリアランス<50ml/分);
19.ガドリニウムに対するアレルギー又は過敏症;
20.アタシセプト又は製剤されたアタシセプトの任意の成分に対する公知の過敏症;
21.クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)の診断又は家族歴;
22.管理できない又はニューヨーク健康協会(NYHA)クラス3もしくは4のうっ血性心不全の病歴又は存在;
23.適切に治療された皮膚の基底細胞癌、子宮頸部異形成症、又は皮膚もしくは頸部に発生(in situ)した癌腫を除く、癌の病歴;
24.スクリーニング時に、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)又はアルカリホスファターゼ(AP)レベルが、>2.5×ULN、総ビリルビンが>1.5×ULN;
25.スクリーニング時の血液学的試験における臨床的に有意な異常(例えば、ヘモグロビン<100g/L(6.21mmol/L)、WBC<3×109/L、リンパ球<0.8×109/L、血小板<140×109/L);
26.SD1以前3ヶ月以内に行われた胸部X線検査又はスクリーニング時に行われたECGにおける、臨床的に有意な異常;
27.既知の活動期の臨床的に有意な急性もしくは慢性の感染症、又はSD1評価の4週間以内の入院もしくは非経口抗感染薬による治療が必要となるような感染症の任意の主要エピソード;
28.陽性のHIV、C型肝炎又はB型肝炎(HBsAg)血清(スクリーニング時に行われる試験);
29.スクリーニング以前過去1年以内の活動期又は潜伏期結核の存在。被験者は、国家及び/又は地域の推奨に従い、活動期又は潜伏期結核について評価されかつスクリーニングされなければならない;
30.スクリーニング時の血清IgGが6g/L未満。
【0127】
治験薬
アタシセプト製剤は、各々容量1mL中アタシセプト150mgを含有する、予め充填された注射器中の、透明からわずかに不透明で、わずかに黄色から黄色の注射用滅菌液剤として供給される。
【0128】
プラセボは、各々1mL含有する、アタシセプトが予め充填された注射器と合致する、予め充填された注射器中の、透明な、注射用滅菌液剤として供給される。
【0129】
治験医薬品の予め充填された注射器は、被験者及び治験従事者がこれらの液剤の色の差がわからないように不透明なラベルにより被覆される。
【0130】
データ解析及び統計
サンプルサイズの決定
総数82名の患者(1アームにつき患者41名がランダム化される)は、一次的エンドポイントの差異を検出するための検出力80%を提供する。これは、RNFLが、36週目に、プラセボ及びアタシセプト治療アームそれぞれにおいて20μm及び10μm喪失すると想定したものであり、50%の相対的差異(RD)に相当する。この計算は、プラセボにおいて両側タイプの5%の1型誤判別率及び20μmの標準偏差(SD)、並びに治療アームにおいて4μmの標準偏差と想定して行った。この計算は、15%の評価不能率を想定する。計算は、不等分散のための2サンプルのSatterthwaite t-検定(NQuery5.0)に基づく。
【0131】
ランダム化
被験者は、二重盲検様式で、アタシセプト又はプラセボのいずれかを受け取るように比1:1でランダム化される。被験者は、適格であることが確認された後のみランダム化される。ランダム化は、性別及びMRI病変(スクリーニング時のMRI病変の有無)により階層化される。ランダム並べ替えブロックデザインを使用し、層別因子内で1:1比で治療のバランスを得る。治療群への割付けは、音声自動応答システム(IVRS)により中央集中型ランダム化を用い決定される。
【0132】
解析集団
治療目的に即した(ITT)集団は、全てランダム化された被験者からなる。被験者は、それらのランダム化された治療に従い解析される。本プロトコールに適合した集団は、36週間の治療を完了し、かつ大きいプロトコール逸脱を有さないと見なされる、全てランダム化された被験者からなる。主要エンドポイントの解析に関して、本プロトコールに適合した集団は、妥当な(valid)36週目のOCT評価、更には入手可能なベースラインOCTを有さなければならない。PP集団は、主要エンドポイントの主要解析セットである。全ての有効性エンドポイントは、ITT及びPPの両集団について解析される。PP解析とITT解析の間の結論の差異を調べ、考察する。安全性集団は、経過観察安全性データを伴う、試験治療の少なくとも一つの用量を受け取った全ての被験者を含む。
【0133】
統計方法論
36週目のRNFL厚さの保持の主要エンドポイントを、アタシセプト150mgとプラセボの間で、不均等分散に関して両側t−検定を用い、比較する。極値又は非正規性(目視により評価)が存在する場合、治療群間の比較は、主要な方法としてウイルコクソン順位和検定を用いて行う。2つの層別因子(性別及びスクリーニングMRI病変(非存在又は存在))を含むANCOVA解析を行い、治療作用が、これら2つの因子により影響を受けるかどうかを評価する。加えて、スクリーニング相における領域、ベースラインRNFL、喫煙歴及びコルチコステロイドの使用の作用によるANCOVAは、治療作用が、これらの共変量因子により影響を受けるかどうか評価するために反復する。12、24及び36週に測定された、視神経病理及び視覚機能の変化に関連した二次及び三次エンドポイントは、主要エンドポイントと同じアプローチを用いて解析される。95%信頼区間を伴う記述統計は、治療アームにより提供され、長期にわたるエンドポイントの変化を評価する。これらの解析は、RNFL喪失の主要エンドポイントに対するアタシセプトの作用の時機を調べるためにも役立つ。
【0134】
治験薬
アタシセプト及びプラセボが予め充填された注射器は、治験依頼者により供給される。医薬品は、7.3項に説明されたように、治療キット中で提供される。
【0135】
アタシセプト
アタシセプト製剤は、各々1mL含有する、予め充填された注射器中に、透明からわずかに不透明で、わずかに黄色から黄色の注射用滅菌液剤として供給される。
【0136】
本治験に使用される製剤は、アタシセプトを150mg/mLの強度で、トレハロース及び賦形剤として10mmol酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)を含有する。
【0137】
プラセボ
プラセボは、各々1mL含有する、アタシセプトが予め充填された注射器と合致する、予め充填された注射器中の、透明な、注射用滅菌液剤として供給される。
【0138】
本治験に使用されるプラセボ製剤は、トレハロース及び10mmol酢酸ナトリウム緩衝液(pH5)を含有する。
【0139】
用量及び投与
適格の被験者は、皮下注射により投与されるアタシセプト又は合致するプラセボを受け取るように、ランダム化される。
治療は、割付けられた用量が週2回(BIW;試験1、4、8、11、15、22及び25日目)投与される、最初の4週間の負荷期間、それに続く割付けられた用量が週1回(QW)投与され、第29日目/第5週に始まり、次の32週間にわたる維持期間からなる。
【0140】
アタシセプト群:アタシセプト150mg SC、週2回(BIW)を4週間、それに続く150mg SC、週1回(QW)を32週間;
プラセボ群:プラセボSC、週2回(BIW)を4週間、それに続くプラセボSC、週1回(QW)を32週間。
【0141】
アタシセプト及びプラセボは、提供された予め充填された注射器を用い、前腹壁にSC注射される。各場合に注射される溶液の容量は、1.0mLである。注射部位は循環しなければならない。
【0142】
救済投薬
救済療法として、レビフ(登録商標)44mcgが予め充填された注射器が、治験依頼者により供給される。初回用量の力価決定後のレビフ用量は、sc注射により、週3回(tiw)投与される44mcgである。レビフは、鍵のかかる調剤室内で、2〜8℃(36〜46°F)で、冷蔵貯蔵しなければならない。本医薬品は、凍結してはならない。
【0143】
治療開始時の可能性のある副作用は、図1に概略されたような、最初の4週間の用量漸増により、最小化することができる。各用量は、用量の容量及び投与の日付と時間と共に、被験者において毎日記録されなければならない。
【0144】
Rebiject II(商標)自動注射器は、予め充填されたガラス製注射器内のレビフの自動化された皮下注射が意図される装置の選択肢であり、これは求めに応じて提供される。
【0145】
全ての被験者は、適切な医薬品の取り扱い、自己注射の手順、薬物力価及び投与、使用に関して、治験施設の担当者により指導されなければならない。
【0146】
レビフ投与に関する完全な情報について、患者情報リーフレットを含む地域の承認されたラベリングを参照することができる。
【0147】
付表:方法論
付表A:改訂McDONALD判定基準
改訂されたMcDonald判定基準(2005)は、以下のように、多発性硬化症病変の空間的及び時間的散在性を規定している:
空間的散在性:
被験者は、下記病変の3つを有さなければならない:
−少なくとも1カ所のガドリニウム−増強病変、又はGd−増強病変が存在しない場合には、9カ所のT2−高信号病変;
−少なくとも1カ所のテント下病変;
−少なくとも1カ所の傍皮質病変;
−少なくとも1カ所の室周囲病変。
【0148】
注記:脊髄病変は、脳側頭下病変と同等であるとみなすことができる。増強する脊髄病変は、増強する脳病変と同等であるとみなされ、かつ個々の脊髄病変は、T2病変の必要数に達するよう、個々の脳病変と一緒に寄与することができる。
【0149】
時間的散在性(図2参照):
造影を使用し、時間的散在性を示す方法が二つある:
−最初の臨床事象の開始後少なくとも3ヶ月経過した時点での、この最初の事象に対応しない部位でのGd−増強の検出;及び
−最初の臨床事象の開始後少なくとも30日間で実行された参照スキャンと比較し、任意の時点で現れる、新規T2病変の検出。
【0150】
付表B:MS臨床攻撃/再発に関する判定基準
下記判定基準(a、b、c)全てに合致しなければならない:
1.(i)先行する臨床事象の発症から少なくとも30日隔てられた神経学的異常、及び(ii)少なくとも24時間持続する、神経学的異常:の両方により特定される異常を伴う、新たに出現した又は再出現したのいずれかの、神経学的異常。
2.発熱又は既知の感染症が存在しないこと(温度(腋窩、経口又は尿道で測定)37.5℃/99.5°F以上の発熱)。
3.i)EDSS機能別障害度の少なくとも1つの上昇、又はii)総EDSSスコアの増加:のいずれかにより規定される、被験者の報告された症状と相関する、主観的神経学的機能障害。
【0151】
いかなる追加症状も伴わない、感覚異常、疲労、精神症状、及び/又は自律神経症状の出現は、MS臨床攻撃としては分類されない。
【0152】
実施例2:TACI−Ig融合タンパク質、それらの変種及び断片のBLYS又はAPRILへの結合を試験する結合アッセイ
二つのアプローチを使用し、TACI−Ig融合タンパク質並びにそれらの変種及び断片(以後:TACI−Fc構築体)のBLySとの結合特性を試験することができる。
【0153】
一つのアプローチは、TACI−Fc構築体の、121I−標識されたBLySの結合に関して、TACI−コートされたプレートと競合する能力を測定する。第二のアプローチにおいて、漸増する濃度の121I−標識されたBLySは、各TACI−Fc構築体と一緒にインキュベーションし、かつ沈殿したBLyS−TACI−Fc複合体に関連した放射活性が決定される。
【0154】
A.競合結合アッセイ
BLySは、標準方法に従い、ヨードビーズ(Pierce社)により放射性ヨウ素化される。簡単に述べると、BLyS 50μgを、単独のヨードビーズを用い、121I 4mCiでヨウ素化する。この反応を、0.25%ウシ血清アルブミン溶液で停止し、遊離125Iを、PD−10カラム(Pierce社)を使用するゲル濾過により除去する。125I−BLyS調製品の比放射能は、脱塩工程の前後の、トリクロロ酢酸沈殿により決定する。
【0155】
「TACI−N」と称されるTACI受容体のN−末端断片を、96−ウェルプレート(100u.、Iは0.1ug/ml)に添加し、4℃で一晩インキュベーションする。このプレートを洗浄し、Superblock(Pierce社)でブロックし、再度洗浄する。0〜11.5ng/mlの範囲の様々な濃度のTACI−Fc構築体を、一定濃度の125I−BLYS(20ng/ml)と混合し、TACI−Nでコートされたプレート上で37℃で2時間インキュベーションする。対照は、溶液中TACI−Nを含むか、TACI−Fcを欠いているかのいずれかである。インキュベーション後、これらのプレートを洗浄し、計測する。各測定は、3つ組で行う。
【0156】
これらの結果は、所定のTACI−Fc構築体は、濃度約100ng/ml以上で125I−BLyS結合を完全に阻害するかどうかを示し、かつTACIの完全細胞外ドメインを含む構築体(すなわち配列番号1を含む構築体)などの、公知のTACI−Fc構築体と比較することができる。
【0157】
Fc断片単独は、更なる対照として試験することができ、これは結合を阻害しない。
【0158】
IC50値は、3回の実験で各構築体について算出することができ、その後平均値が示される。
【0159】
B.溶液結合アッセイ
濃度0.05nMで、各TACI−Fc構築体は、0.4pM〜1.5nMの125I−BLYSと共に、総容積0.25ml/チューブで、室温で30分間インキュベーションする。Pansorbin(Staph A)懸濁液を各チューブに添加し、15分後、これらの試料を遠心し、2回洗浄し、ペレットを計測する。
【0160】
非特異的結合は、130nM非標識BLySの125I−BLyS/TACI−Fc混合物への添加により決定する。特異的結合は、非標識BLySの存在中の結合したcpmを、各濃度の125I−BLYSで結合した総cpmから減算することにより算出する。各測定は、3つ組で行う。結合定数は、GraphPad Prismソフトウェア(Macintosh(登録商標)社 v. 3.0)を用いて算出する。
【0161】
先の(A)及び(B)に説明されたアッセイは、BLySをAPRILと交換することにより、TACI−Ig、それらの変種又は断片の、APRILへの結合の測定に使用することができる。
【0162】
実施例3:TACI−Ig融合タンパク質、それらの変種及び断片によるBlys又はBlys/APRILヘテロ三量体活性の阻害を試験するための、ヒトB細胞増殖バイオアッセイ
本アッセイは、例えばRoschkeらの論文(2002)に説明されている。
【0163】
ヒト及びマウスB細胞の増殖
ヒト扁桃B細胞を、フィコール遠心分離、それに続くMACS磁気ビーズ(Miltenyi Biotec社, Auburn, CA)を使用する陰性選択により、単離する。脾細胞を、6〜10週齢の雌のBALB/cマウスから、フィコール遠心分離により単離する。B細胞増殖は、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)細胞(最終希釈1/100,000;Pansorbin;Calbiochem社, ラホヤ, CA)の存在下、タンパク質濃度範囲90ng/ml〜0.01 pg/mlで評価する。細胞は、1×10-5M 2−MEを含有する10%FBS含有RPMIの最終容積中に1×105/ウェルで再懸濁し、かつBLyS、APRIL又はBLyS/APRILヘテロ三量体の存在下でインキュベーションし、72時間試験する。その後細胞を、[H3]チミジン0.5μCi/ウェルで更に20時間パルス処理する。チミジンの取込みは、細胞増殖の測定として使用する。
【0164】
TACI−Ig融合タンパク質、それらの変種又は断片による、BLyS、APRIL又はBLyS/APRILヘテロ三量体の阻害を試験するために、細胞を、BLyS、APRIL又はAPRIL/BLySヘテロ三量体のいずれかの3ng/ml存在下でインキュベーションし、かつ中和活性を、濃度範囲10μg/ml〜100pg/ml(6回の10倍希釈)で試験する。
【0165】
実施例4:Blysアンタゴニストの作製
4種のTACI−Fcアミノ末端切断型が作製された。4種全て、配列番号6のアミノ酸残基番号30に融合された、WO 02/094852に開示されたような修飾されたヒト組織プラスミノーゲン活性化因子シグナル配列(配列番号25)を有する。しかし、これら4種のタンパク質は、Fc5が配列番号6のTACIアミノ酸配列に融合される点の位置が異なる。表1は、4種の融合タンパク質の構造を概説している。
【0166】
【表1】

【0167】
タンパク質をコードしている発現カセットは、標準技術を用いる、オーバーラップPCRにより作製した(例えば、Hortonら、1989参照)。TACIをコードしている核酸分子及びFc5をコードしている核酸分子を、PCR鋳型として使用する。オリゴヌクレオチドプライマーは、表2及び3に確定されている。
【0168】
【表2】

【0169】
【表3】

【0170】
PCR増幅の第一ラウンドは、4種のアミノ末端切断型の各々に関する2反応からなった。これらの2反応は、各型に関して1つの反応において5’及び3’TACIオリゴヌクレオチドを用い、並びに別の反応において5’及び3’Fc5オリゴヌクレオチドを用い、個別に行った。第一ラウンドのPCR増幅の条件は、以下であった。最終容積25μlに、鋳型DNA約200ng、10×Pfu反応緩衝液(Stratagene社)2.5μl、2.5mM dNTPを2μl、20μMの各5’オリゴヌクレオチド及び3’オリゴヌクレオチドを0.5μl、並びにPfuポリメラーゼ0.5μl(2.5単位、Stratagene社)を添加した。増幅の熱プロファイルは、94℃で3分間;94℃で15秒間、50℃で15秒間、72℃で2分間を35サイクル;その後72℃で2分間の伸長からなる。この反応生成物は、アガロースゲル電気泳動により分画し、かつ予想されるサイズに対応するバンドをゲルから切り出し、QIAGEN QIAQUICKゲル抽出キット(Qiagen社)を製造業者の指示に従い使用し、回収した。
【0171】
PCR増幅の第二ラウンド、又はオーバーラップPCR増幅反応は、DNA鋳型として、第一ラウンドPCR由来のゲルで精製された断片を用いて行った。第二ラウンドPCR増幅の条件は、以下であった。最終容積25μlに、TACI断片及びFc5断片の各々の鋳型DNA約10ng、10×Pfu反応緩衝液(Stratagene社)2.5μl、2.5mM dNTPを2μl、20μMのZC24,903(配列番号15)及びZC24,946(配列番号18)を各々0.5μl、並びにPfuポリメラーゼ0.5μl(2.5単位、Stratagene社)を添加した。増幅の熱プロファイルは、94℃で1分間;94℃で15秒間、55℃で15秒間、72℃で2分間を35サイクル;その後72℃で2分間の伸長からなる。この反応生成物は、アガロースゲル電気泳動により分画し、かつ予想されるサイズに対応するバンドをゲルから切り出し、QIAGEN QIAQUICKゲル抽出キット(Qiagen社)を製造業者の指示に従い使用し、回収した。
【0172】
4種の型のアミノ末端切断型TACI−Fc PCR産物の各々は、Invitrogen社のZEROBLUNT TOPO PCRクローニングキットを製造業者の推奨プロトコールに従い用い、個別にクローニングした。表4は、これらのTACI−Fc構築体のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を確定している。
【0173】
【表4】

【0174】
これらのヌクレオチド配列を確認した後、アミノ末端切断型TACI−Fc融合体の4つの型の各々を含むプラスミドを、FseI及びAscIで消化し、このアミノ酸コードしているセグメントを放出した。FseI−AscI断片を、CMVプロモーター及びSV40ポリAセグメントを含む、哺乳類発現ベクターにライゲーションした。発現ベクターは、以下に説明されたようにチャイニーズハムスター卵巣細胞に導入した。
【0175】
実施例5:チャイニーズハムスター卵巣細胞によるTACI−Fcタンパク質の生成
前記TACI−Fc発現構築体を使用し、電気穿孔法により、動物タンパク質−非含有培地において増殖した懸濁−適合されたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)DG44細胞を、トランスフェクションした(Urlaubら、1986)。CHO DG44細胞は、両方のジヒドロ葉酸レダクターゼ染色体座における欠失のために、機能的ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を欠いている。漸増濃度のメトトレキセート存在下での細胞の増殖は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子の増幅を生じ、かつ本発現構築体上に連結された組換えタンパク質−コードされた遺伝子を生じた。
【0176】
CHO DG44細胞は、PFCHO培地(JRH Biosciences社, Lenexa, KS)、4mM L−グルタミン(JRH Biosciences社)、及び1×ヒポサンキシン(hypothanxine)−チミジン補充物(Life Technologies社)中で継代し、これらの細胞を、回転振盪プラットフォーム上で、120RPMで、コーニング振盪フラスコ内、37℃及び5%CO2でインキュベーションした。これらの細胞は、直線化された発現プラスミドにより個別にトランスフェクションした。無菌性を確実にするために、1回のエタノール沈殿工程を、エッペンドルフチューブ内のプラスミドDNAの200μgを、剪断サケ精子担体DNA(5'→3' Inc. ボールダー, CO, 10mg/ml)20μl、3M NaOAc(pH5.2)の22μl、及び100%エタノール(Gold Shield Chemical社, Hayward, CA)484μlと混合することにより、氷上で25分間かけて行った。インキュベーション後、このチューブを、4℃のコールドルームに配置された微量遠心機において、14,000RPMで遠心し、上清を除去し、ペレットを70%エタノール0.5mlで2回洗浄し、風乾させた。
【0177】
このDNAペレットが乾燥する間に、25mlコニカル遠心チューブ中で106個の総細胞(16.5ml)を900RPMで5分間遠心することにより、CHO DG44細胞を調製した。CHO DG44細胞を、総容積300μlのPFCHO増殖培地に再度懸濁し、0.4cmの電極ギャップ(Bio-Rad社)を備えるGene-Pulserキュベット内に配置した。およそ50分間の乾燥時間の後、前記DNAを、PFCHO増殖培地500μlに再度懸濁し、総容積は800μlを超えないよう、キュベット中の細胞に添加し、これを室温で5分間静置し、泡の発生を鎮めた。このキュベットを、BioRad Gene Pulser IIユニットセットに0.296kV(キロボルト)及び0.950HC(高キャパシタンス)で配置し、直ちに電気穿孔した。
【0178】
これらの細胞を、室温で5分間インキュベーションし、その後CoStar T-75フラスコ中の総容積20mlのPFCHO培地中に配置した。このフラスコを、37℃及び5%CO2に48時間配置し、次にこれらの細胞は、トリパンブルー色素排除法を利用し、血球計によりカウントし、ヒポサンキシン−チミジン補充物を含まないが200mMメトトレキセートを含有するPFCHO選択培地(Cal Biochem社)に入れた。
【0179】
メトトレキセート選択プロセスの回収時に、分泌されたTACI−Fcタンパク質を含有する馴化培地を、ウェスタンブロット分析により試験した。
【0180】
文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
臨床的に孤立した症候群(clinically isolated syndrome)としての視神経炎の治療のための、
a)BLyS及び/又はAPRILに結合するTACI細胞外ドメイン又はそれらの断片もしくは変種;並びに
b)免疫グロブリン−定常ドメイン:
を含んでなる、TACI−免疫グロブリン(TACI−Ig)融合タンパク質。
【請求項2】
視神経炎の、再発性多発性硬化症又は臨床的に明確な多発性硬化症への転換の予防のための、請求項1記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項3】
視神経炎の再発の予防のための、請求項1又は2記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項4】
症候性片側性視神経炎の治療のための、請求項1〜3のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項5】
視神経炎の治療のための、請求項1〜4のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項6】
前記TACI細胞外ドメインが、配列番号1の配列、又は配列番号1と少なくとも90%もしくは95%もしくは99%同一であるそれらの変種、又は20個未満の保存的アミノ酸置換を含むそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項7】
前記断片が、配列番号1のアミノ酸残基34〜66及び/又はアミノ酸残基71〜104を含む、請求項1〜6のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項8】
前記断片が、配列番号1のアミノ酸残基30〜110、それらと少なくとも90%同一であるか、又は10個未満の保存的アミノ酸置換を含むそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含む、請求項1〜7のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項9】
前記免疫グロブリン−定常ドメインが、ヒトIgG1定常ドメインである、請求項1〜8のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項10】
ヒトIgG1定常ドメインが、低下した補体依存性細胞傷害性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞傷害性(ADCC)のために修飾されている、請求項9記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項11】
前記ヒト免疫グロブリン−定常ドメインが、配列番号2の配列又は20個未満の保存的アミノ酸置換を含むそれらの変種を有する、請求項1〜10のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項12】
配列番号3の配列、又はそれらと少なくとも90%同一であるかもしくは30個未満の保存的アミノ酸置換を有するそれらの変種であって、BLyS及び/又はAPRILに結合する変種を含む、請求項1〜11のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項13】
1週間に患者1名につき150mgの量での投与のために製剤された、請求項1〜12のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項14】
1週間に2回又は毎週の投与のために製剤された、請求項1〜13のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項15】
負荷期間には1週間に2回の投与のために製剤され、かつ維持期間には1週間に1回の投与のために製剤される、請求項1〜14のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項16】
負荷期間は最大1ヶ月であり、かつ維持期間は少なくとも8ヶ月間である、請求項15記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項17】
皮下投与のために製剤される、請求項1〜16いずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。
【請求項18】
トレハロースを含有するpH5の酢酸ナトリウム緩衝液中に製剤される、請求項1〜17のいずれか1項記載のTACI−Ig融合タンパク質。

【図1】
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【公表番号】特表2011−503035(P2011−503035A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532613(P2010−532613)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/065252
【国際公開番号】WO2009/062916
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504104899)アレス トレーディング ソシエテ アノニム (59)
【Fターム(参考)】