説明

視覚障害者誘導用ブロック、その形成シート、その製造方法、及び路面表示体

【課題】 弱視の視覚障害者が夜間でも識別し易く、比較的簡単に製造可能な視覚障害者誘導用ブロックを提供する。
【解決手段】 この視覚障害者誘導用ブロック1は、底部10とその表面に配列された突起部11とを有するもので、底部10のみに設けられたガラスビーズ層13及び蓄光層14と、少なくとも蓄光層14の上に設けられた硬質のアクリル樹脂である保護層15及びガラスビーズが疎らに配置された滑り止め層16と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光層を有する視覚障害者誘導用ブロックに関する。また、その形成シート、その製造方法、及び蓄光層を有する路面表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
視覚障害者の歩行を補助するものとして、点状及び線状の視覚障害者誘導用ブロック(「点字ブロック」と略称される場合もある)がある。この視覚障害者誘導用ブロックは、注意を促したり進行方向を示すべく歩道や駅のプラットホームなどに設置されるものであり、視覚障害者が足先又は杖の先端部で感知し易いように表面に突起部を有している。また、弱視の視覚障害者が識別し易いように、黄色をはじめとする目立つ色に着色されている。この視覚障害者誘導用ブロックは、視覚障害者の感知又は識別のために様々な改良の提案がなされている。例えば、特許文献1には、弱視の視覚障害者が昼夜間を問わず識別できるように、発光ダイオードを設けた視覚障害者誘導用ブロックが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−3434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような視覚障害者誘導用ブロックは、歩道の多くの場所に設置されたものに適用させる場合には、大がかりな電気配線などの設備や工事を必要とする。
【0005】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、弱視の視覚障害者が夜間でも識別し易く、かつ、設置に際して大がかりな設備や工事を必要としない視覚障害者誘導用ブロックを提供することにある。また、耐久性が良好であり、比較的簡単に製造可能な視覚障害者誘導用ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の視覚障害者誘導用ブロックは、底部と底部から突出する複数の突起部とを表面側に有した下地体と、下地体の底部のみの表面に設けられた蓄光層と、少なくとも蓄光層を覆うように設けられた保護層と、を備えてなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の視覚障害者誘導用ブロックは、請求項1に記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、前記蓄光層と前記下地体の底部の間にガラスビーズ層を更に備えることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の視覚障害者誘導用ブロックは、請求項1又は2に記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、前記保護層は硬質のアクリル樹脂であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の視覚障害者誘導用ブロックは、請求項1乃至3のいずれかに記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、前記保護層は蓄光層と突起部を覆うように設けられ、この保護層の上に滑り止め層が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の視覚障害者誘導用ブロックは、請求項1乃至4のいずれかに記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、隣接する突起部間の隙間は2cm以下であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートは、請求項1乃至5のいずれかに記載された視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートであって、剥離紙と、剥離紙の上に粘着層を介して設けられ、視覚障害者誘導用ブロックの突起部に対応する複数の空孔部を有する蓄光層と、を備えてなることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートは、請求項6に記載された視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートにおいて、前記蓄光層と前記粘着層の間に設けられ、蓄光層と実質的に同一の平面形状のガラスビーズ層を更に備えることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の視覚障害者誘導用ブロックの製造方法は、請求項6又は7に記載された視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートの剥離紙を取り除く工程と、その形成シートの粘着層を視覚障害者誘導用ブロックの下地体の底部に密着させる工程と、を備えてなることを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の路面表示体は、路面の下地体の表面に設けられたガラスビーズ層と、ガラスビーズ層の上に設けられ、ガラスビーズ層と実質的に同一の平面形状の蓄光層と、少なくとも蓄光層を覆うように設けられた硬質のアクリル樹脂である保護層と、保護層の上に設けられた滑り止め層と、を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る視覚障害者誘導用ブロックは、底部のみに蓄光層(又は、蓄光層及びガラスビーズ層)を設けることにより、弱視の視覚障害者が夜間でも識別し易くなり、しかも、設置に際して大がかりな設備や工事を必要としない。また、耐久性が良好である。また、本発明に係る視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートを用いることにより、比較的簡単に蓄光層を有する視覚障害者誘導用ブロックが製造できる。また、本発明に係る路面表示体は、視覚障害者でなくても識別し易く、耐久性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の望ましい実施形態に係る視覚障害者誘導用ブロックを図面を参照しながら説明する。図1は本発明の望ましい実施形態に係る点状の視覚障害者誘導用ブロックの平面形状を示すものである。この視覚障害者誘導用ブロック1は、四角形の底部10と、底部10から突出してマトリックス状に配列された円形の突起部11とを有する。この視覚障害者誘導用ブロック1は、現在のJIS規格に適合しており、外形寸法が約30cm四方であり、直径が約2.2cmの突起部11が5個×5個だけ配列されている。
【0017】
図2は、視覚障害者誘導用ブロック1の表面付近を拡大して示す断面図である。下地体12は、アスファルト、コンクリートモルタルなどが材質であり、その表面側に底部10と、底部10から5mm程度突出する突起部11と、を有し、目立つ色(例えば黄色)に着色されている。下地体12の底部10の表面上にはガラスビーズ層13を介して蓄光層14が設けられている。更に、蓄光層14と蓄光層14が存在しない下地体12の突起部11の表面上にはこれらを覆うように保護層15が設けられ、この保護層15の上に滑り止め層16が設けられている。
【0018】
ガラスビーズ層13は、夜間にライトが当てられたときにライトの方向に反射し、蓄光層14と共に、弱視の視覚障害者が視覚障害者誘導用ブロック1を識別し易くするものである。ガラスビーズ層13は、ガラスビーズ保持用の有色(例えば白色又は銀色)の樹脂の表面に小さな粒径(例えば50μm前後)のガラスビーズが密に埋め込まれている。
【0019】
蓄光層14は、昼間に蓄光を行い夜間に光ることで、弱視の視覚障害者が視覚障害者誘導用ブロック1を識別し易くするものである。蓄光層14は、紫外線を吸収することで蓄光する蓄光顔料を容量比で10%〜30%含む。その他は透明性の樹脂である。上述のガラスビーズ層13にライトの光を透過させるためには、蓄光顔料はほぼ10%が望ましい。
【0020】
蓄光層14の上に設けられた保護層15は、比較的柔軟な蓄光層14を保護して耐久性を良好にするものである。更に、下地体12の突起部11の上に設けられた保護層15は突起部11の下地体12の摩耗を抑制している。保護層15の材質は、望ましくは、硬質のアクリル樹脂である。硬質のアクリル樹脂は、耐薬品性が高く、経時による変色が少ない。しかも、路面や大気が低温(例えば零下30℃)でも塗布後にラジカル重合により硬化するので、施工が早く、夜間のうちに作業を完了することが可能になる。また、この保護層15はほぼ透明性のものであり、蓄光層14のために紫外線吸収剤などの紫外線をカットする成分は含まないようにする。
【0021】
滑り止め層16は、靴やタイヤなどが滑るのを抑制するものである。滑り止め層16は、形が一定でない大きな粒径(例えば1mm)のガラスビーズが疎らに配置されることで、表面に僅かな凹凸が設けられる。
【0022】
このように、視覚障害者誘導用ブロック1は、ガラスビーズ層13及び蓄光層14を設けることにより、弱視の視覚障害者が夜間でも識別し易くなり、しかも、設置に際して大がかりな設備や工事を必要としない。また、底部10のみにガラスビーズ層13及び蓄光層14を設けているので、視覚障害者誘導用ブロック1の上を通るものの重さがガラスビーズ層13及び蓄光層14にかかり難いため、耐久性が良好である。
【0023】
図3は本発明の望ましい別の実施形態に係る点状の視覚障害者誘導用ブロックの平面形状を示すものである。この視覚障害者誘導用ブロック2は、視覚障害者誘導用ブロック1を変形したもので、外形寸法が約30cm四方であり、直径が約2.2cmの突起部11が7個×7個だけ配列されている。隣接する突起部11、11間の隙間は、視覚障害者誘導用ブロック2の上を通るものにより直接に蓄光層14が損傷を受けることを抑制するために、短くしている。この間隔の長さ(図3のL又はL)は、靴や自転車のタイヤに触れにくくするためには、2cm以下が望ましい。なお、視覚障害者誘導用ブロック2の断面構造は視覚障害者誘導用ブロック1と同様である。
【0024】
上述のように、底部10のみにガラスビーズ層13及び蓄光層14が設けられているが、これらを設ける望ましい視覚障害者誘導用ブロック1、2の製造方法を次に説明する。図4は、視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シート、詳しくは、視覚障害者誘導用ブロック1、2のガラスビーズ層13と蓄光層14を形成するための形成シート40を示している。この形成シート40は、剥離紙41の上に粘着層42を介してガラスビーズ層13と蓄光層14を有している。ガラスビーズ層13と蓄光層14は、図1、図3の突起部11に対応する複数の空孔部43を有しており、この2層は実質的に同一の平面形状である。形成シート40は、視覚障害者誘導用ブロック1、2の下地体12とほぼ同じ大きさである。形成シート40を用いて視覚障害者誘導用ブロック1、2を製造するには、まず、形成シート40を用意し、形成シート40の剥離紙41を取り除く。そして、粘着層42を下地体12の底部10に載置し、加圧して密着させる。これにより、底部10のみにガラスビーズ層13及び蓄光層14が設けられる。作業の効率を上げるために、形成シート40をテープ状に連続してつなぎ、複数の視覚障害者誘導用ブロック1、2に同時にガラスビーズ層13及び蓄光層14を設けることも可能である。この製造方法は、作業効率やコスト面から比較的簡単にガラスビーズ層13及び蓄光層14を形成することができる。なお、形成シート40に更に保護層15を有するようにすることも可能である。
【0025】
次に、本発明が適用された線状の視覚障害者誘導用ブロックについて説明する。図5は本発明の望ましい実施形態に係る線状の視覚障害者誘導用ブロックの平面形状を示すものである。この視覚障害者誘導用ブロック3は、四角形の底部30と、底部30から突出して線状に配列された突起部31と、を有する。この視覚障害者誘導用ブロック3は、外形寸法が約30cm四方である。そして、幅が約2cm前後の突起部31が6個だけ配列されている。また、隣接する突起部31、31間の隙間が比較的広い箇所30aと比較的狭い箇所30bがある。これらの点は現在のJIS規格と異ならせてある。この比較的狭い箇所30bの長さL’は図3の視覚障害者誘導用ブロック2における間隔の長さLと同様の長さである。また、視覚障害者誘導用ブロック3の断面構造も視覚障害者誘導用ブロック2と同様である。
【0026】
視覚障害者誘導用ブロック3は、視覚障害者誘導用ブロック1、2と同様に、弱視の視覚障害者が夜間でも識別し易くなり、しかも、設置に際して大がかりな設備や工事を必要としない。また、耐久性が良好であり、隣接する突起部31、31間の隙間が比較的狭い箇所30bは視覚障害者誘導用ブロック1の上を通るものにより直接に蓄光層14が損傷を受けることが抑制される。
【0027】
なお、下地体12、ガラスビーズ層13、蓄光層14、保護層15、滑り止め層16の順からなる構造は、視覚障害者誘導用ブロック以外でも夜間に識別し易くなるので、他の路面(例えば一般車両の道路、ヘリポートなど)の表示体に応用可能である。
【0028】
また、ガラスビーズ層13は、視覚障害者誘導用ブロック1、2、3の識別にとって望ましいが、蓄光層14で効果が十分な場合は省略することも可能である。この場合、上述の形成シート40にはガラスビーズ層13は設けられない。
【0029】
以上、本発明の実施形態である視覚障害者誘導用ブロックについて説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、実施形態に記載した平面形状又は断面構造を変形し、感知性又は識別性について様々な改良をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る視覚障害者誘導用ブロックの平面形状を示す図である。
【図2】同上の視覚障害者誘導用ブロックの断面を示す図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る視覚障害者誘導用ブロックの平面形状を示す図である。
【図4】同上の視覚障害者誘導用ブロックのための形成シートの断面を示す図である。
【図5】本発明の更に別の実施形態に係る視覚障害者誘導用ブロックの平面形状を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
1、2、3 視覚障害者誘導用ブロック
10、30 底部
11、31 突起部
12 視覚障害者誘導用ブロックの下地体
13 ガラスビーズ層
14 蓄光層
15 保護層
16 滑り止め層
40 視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シート
41 剥離紙
42 粘着層
43 突起部に対応する空孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と底部から突出する複数の突起部とを表面側に有した下地体と、
下地体の底部のみの表面に設けられた蓄光層と、
少なくとも蓄光層を覆うように設けられた保護層と、
を備えてなることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、
前記蓄光層と前記下地体の底部の間にガラスビーズ層を更に備えることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、
前記保護層は硬質のアクリル樹脂であることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、
前記保護層は蓄光層と突起部を覆うように設けられ、この保護層の上に滑り止め層が設けられていることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された視覚障害者誘導用ブロックにおいて、
隣接する突起部間の隙間は2cm以下であることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートであって、
剥離紙と、
剥離紙の上に粘着層を介して設けられ、視覚障害者誘導用ブロックの突起部に対応する複数の空孔部を有する蓄光層と、
を備えてなることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シート。
【請求項7】
請求項6に記載された視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートにおいて、
前記蓄光層と前記粘着層の間に設けられ、蓄光層と実質的に同一の平面形状のガラスビーズ層を更に備えることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シート。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された視覚障害者誘導用ブロック形成用の形成シートの剥離紙を取り除く工程と、
その形成シートの粘着層を視覚障害者誘導用ブロックの下地体の底部に密着させる工程と、
を備えてなることを特徴とする視覚障害者誘導用ブロックの製造方法。
【請求項9】
路面の下地体の表面に設けられたガラスビーズ層と、
ガラスビーズ層の上に設けられ、ガラスビーズ層と実質的に同一の平面形状の蓄光層と、
少なくとも蓄光層を覆うように設けられた硬質のアクリル樹脂である保護層と、
保護層の上に設けられた滑り止め層と、
を備えてなることを特徴とする路面表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−249786(P2006−249786A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−68171(P2005−68171)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(397029873)株式会社大木工藝 (21)
【Fターム(参考)】