説明

角質繊維染色剤組成物

【構成】 次の成分(A)及び(B)
(A)直接染料(B)炭素数8〜36の分岐アシル、分岐アルキル又は分岐アルケニル基を有し、HLBが2〜12である非イオン性界面活性剤を含有し、pHが2.0〜4.5である角質繊維染色剤組成物。
【効果】 コンディショニング効果に優れているため、すすぎ時及び仕上り時の毛髪の感触が極めて良好であり、かつ染色効果に優れる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、コンディショニング効果に優れているためすすぎ時及び仕上り時の髪の感触が良好であり、かつ染色力に優れた角質繊維染色剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より広く使用されている酸化染毛剤は、基本的に酸化染料と酸化剤とからなり、施術時にアルカリ存在下で過酸化水素を作用させるために、その扱い方によっては毛髪の損傷や頭皮に対し一次刺激を生じる危険がある。このような酸化染毛剤の毛髪や頭皮への悪影響を克服した染毛剤として、直接染料を用いた毛髪、頭皮に対して影響の少ない半永久染毛剤が開発されている。
【0003】しかし、一般にかかる半永久染毛剤は、比較的多量の溶剤を用いるために、すすぎ時及び仕上がり時の髪の指通り、滑り及び柔かさ等の髪の感触が悪くなるという欠点がある。特に近年上市されたヘアリンスの様に素手で、剤を毛髪へ塗布した後、すすいで用いる半永久染毛剤では、ヘアリンスと同様の使い方をするためすすぎ時から乾燥時までの髪の感触が、重要なポイントとなり、より高いコンディショニング効果を有するものが求められている。
【0004】一方、毛髪にコンディショニング効果を付与する方法として、特開昭58−157713号公報では、水溶性陽イオン重合体と水溶性陰イオン性活性剤を用いて、ある程度持続性のある整髪効果を付与する方法が、英国特許第21753515号では、直接染料とカチオン性シリコーン活性剤、水酸化シリコーン誘導体を組み合わせて、毛髪にコンディショニング効果を付与する方法が開示されているが、いずれもすすぎ時及び仕上がり時のコンディショニング効果は充分満足できるものではなかった。また、直接染料として酸性染料を使用し、通常ヘアケア製品においてコンディショニング剤として用いられているカチオン性界面活性剤と組み合せて用いた場合、コンディショニング効果は優れるものの染色性は著しく低下するという問題もあった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明の目的は、直接染料を配合した角質繊維染色剤であって、染色性に優れ、かつコンディショニング効果の良好な角質繊維染色剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる実情において本発明者らは直接染料及び特定の非イオン性界面活性剤を組み合わせて用いれば、すすぎ時及び仕上がり時のいずれにおいても髪等の感触が良好な角質繊維染色剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は次の成分(A)及び(B)
(A)直接染料(B)炭素数8〜36の分岐アシル、分岐アルキル又は分岐アルケニル基を有し、HLBが2〜12である非イオン性界面活性剤を含有し、pHが2.0〜4.5である角質繊維染色剤組成物を提供するものである。
【0008】本発明に用いられる直接染料(A)としては、例えば、ニトロ系の染料である3−アミノ−4−ヒドロキシニトロベンゼン、2−アミノ−5−ヒドロキシニトロベンゼン、2−アミノ−3−ヒドロキシニトロベンゼン、2−アミノ−5−N,N−ビス−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−アミノ−4−クロロ−5−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−アミノ−4−メチル−5−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、3,4−ビス−(N−β−ヒドロキシエチルアミノ)ニトロベンゼン、2−アミノ−4−メチル−5−N−β,γ−ジヒドロキシプロピルアミノニトロベンゼン、2−アミノ−4−メチル−5−β−アミノエチルアミノニトロベンゼン、2−アミノ−4−ヒドロキシニトロベンゼン、及び特に有利なものとして;3,4−ジアミノニトロベンゼン、2,5−ジアミノニトロベンゼン、2−アミノ−5−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−N−β−ヒドロキシエチルアミノ−5−N,N−ビス−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−N−メチルアミノ−5−N,N−ビス(β−ヒドロキシエチル)アミノニトロベンゼン、2−N−メチルアミノ−5−N−メチル−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−N−β−ヒドロキシエチルアミノ−5−ヒドロキシニトロベンゼン、3−メトキシ−4−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、4−ニトロ−3−メチルアミノフェノキシエタノール、2−N−β−ヒドロキシエチルアミノ−5−アミノニトロベンゼン、2−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、3−アミノ−4−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、3−β−ヒドロキシエチロキシ−4−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−アミノ−5−N−メチルアミノニトロベンゼン、2−アミノ−3−メチルニトロベンゼン、2−N−β−ヒドロキシエチルアミノ−5−β,γ−ジヒドロキシプロピロキシニトロベンゼン、3−ヒドロキシ−4−N−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、3−ヒドロキシ−4−アミノニトロベンゼン、2,5−N,N′−β−ヒドロキシエチルアミノニトロベンゼン、2−N−メチルアミノ−4−o−β,γ−ジヒドロキシプロピロキシニトロベンゼン、2−N−β−アミノエチルアミノ−5−N,N−ビス−(β−ヒドロキシエチル)アミノニトロベンゼン、2−N−β−アミノエチルアミノ−4−メトキシニトロベンゼン、2−N−β−アミノエチルアミノ−5−β−ヒドロキシエチロキシニトロベンゼン、1−アミノ−4−メチルアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン;
【0009】酸性染料である赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号、青色2号、赤色201号、赤色227号、赤色230号、赤色231号、赤色232号、橙色205号、橙色207号、黄色202号、黄色203号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、青色202号、青色203号、青色205号、かっ色201号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色402号、黄色402号、黄色403号、黄色406号、黄色407号、緑色401号、緑色402号、紫色401号、黒色401号;油溶性染料である赤色215号、赤色218号、赤色225号、橙色201号、橙色206号、黄色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号、赤色501号、赤色505号、橙色403号、黄色404号、黄色405号、青色403号;分散染料である赤色215号、赤色218号、赤色223号、赤色225号、橙色201号、橙色206号、黄色201号、黄色204号、緑色202号、紫色201号、赤色501号、赤色505号、黄色404号、黄色405号、青色403号;塩基性染料である赤色213号、赤色214号;及びWilliams社の塩基性染料であるSienna Brown、Mahogany、Madder Red、Steel Blue、Straw Yellow、分散染料であるDisperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4等が挙げられる。
【0010】本発明染色剤組成物を素手で使用し得るリンスタイプの形態とする場合には、これらの直接染料のうち酸性染料が好ましく、特に黄色4号、緑色204号、赤色2号、赤色102号、緑色3号、青色1号、青色205号、黄色403号、赤色106号、赤色201号、橙色205号、黒色401号、緑色201号又は紫色401号が好ましく、その中でも更に黒色401号、紫色401号、橙色205号、黄色403号又は赤色106号が好ましい。
【0011】これらの直接染料は単独で、又は二種以上を混合して用いることができ、本発明染色剤組成物中に0.02〜5重量%(以下、単に%で示す)、特に0.02〜0.1%配合するのが好ましい。直接染料の配合量が0.01%未満の場合には充分な染色効果が得られず、5%を超えると手肌の汚れが著しく、実使用上問題がある。本発明染色剤組成物を素手で使用し得るリンスタイプの形態とする場合には、染毛力と手肌の汚れの抑制を両立させる観点より、0.02〜0.1%程度が好ましい。
【0012】本発明で用いる(B)成分の非イオン性界面活性剤は、炭素数が8〜36で分岐鎖を持つアシル、アルキル又はアルケニル基を有し、2〜12のHLB値を有するものである。HLBが2未満では、油性感が強く、12を超えるとコンディショニング効果が低く好ましくない。特に好ましい範囲は3〜10である。なお、HLBとは親水性−親油性のバランス(Hydrophilic−Lypophilic Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
【0013】
【数1】


【0014】(B)成分の例としては分岐脂肪酸エステル、分岐脂肪酸のポリオールエステル、分岐脂肪酸のポリオールエステルのアルキレンオキシド付加物、分岐脂肪酸のアルキレンオキシド付加物、分岐脂肪酸アミド、分岐アルコールのアルキレンオキシド付加物、分岐アルコールのモノ、ジ又はトリグリセリルエーテル、分岐アルコールのグリセリルエーテルのアルキレンオキシド付加物、ポリオールグリセリル分岐アルキルエーテル、トリメチロール分岐アルカンが挙げられるが特に次の一般式(1)で表わされるグリセリル化ポリオール類、Ax(G) (1)
〔式中、Gはペンタエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、グルコース、フルクトース及びアルキルグリコシドから選ばれるポリオールよりx個の水酸基を用いた残基を示し、Aは
【0015】
【化1】


【0016】及び/又は
【0017】
【化2】


【0018】を示し(ここでR1 は炭素数10〜36の分岐アルキル基又はアルケニル基を示す)、xは1以上の数であり前記ポリオール水酸基の総数を超えない数を示す〕及び次の一般式(2)
R−OCH2CH(OH)CH2OH (2)
〔式中、Rは炭素数12〜24のメチル分岐飽和炭化水素基を示すが、Rは次の一般式
【0019】
【化3】


【0020】(式中、mは2〜14の整数を、nは3〜11の整数を示し、mとnの和は9〜21である)で示される基が好ましい。〕で表わされるα−モノ(メチル分岐アルキル)グリセリルエーテル等が好ましい。
【0021】これらの非イオン性界面活性剤の分岐アシル基、分岐アルキル基又は分岐アルケニル基としては、上述の如くα位で分岐したもの、β位で分岐したもの、多分岐したものが挙げられる。かかる分岐アシル基の素材となる分岐脂肪酸としては例えば、ダイマー酸合成の副生反応、オキソ反応、コッホ反応等によって合成されるメチル分岐型、ガーベットアルコールの酸化、アルドールの酸化などによって合成される長鎖アルキル分岐型が挙げられ;分岐アルキル基、分岐アルケニル基の素材となる分岐高級アルコールとしてはオキソ反応によって合成されるもの等が挙げられる。上記のグリセリル化ポリオール類(1)は、例えば次式に従い、ポリオールと対応する分岐アルキルグリシジルエーテルとを、塩基性触媒の存在下で反応させることにより製造される。
【0022】
【化4】


【0023】〔式中、A、x、G及びR1は前記の意味を示す〕
【0024】この反応におけるポリオールと分岐アルキルグリシジルエーテル(3)との反応モル比は、目的とするグリセリル化ポリオール類のエーテル化度によって適宜選択することができる。例えば、目的とするグリセリル化ポリオール類の1モル付加体含量の高いものを得るには、通常1.2:1.0〜10.0:1.0の比率でポリオールを過剰に使用すればよく、1モル付加体の生成量及びポリオールの回収とを考慮すれば、1.5:1.0〜5.0:1.0の比率が好ましい。また、目的とするグリセリル化ポリオールの2モル付加体含量の高いものを得るには、通常0.3:1.0〜1.1:1.0の比率で分岐アルキルグリシジルエーテルを過剰に使用すればよく、2モル付加体の生成量を考慮すれば、0.4:1.0〜0.8:1.0の比率が好ましい。
【0025】反応は、通常無溶媒で行われるが、ポリオールと分岐アルキルグリシジルエーテルの混合を助ける目的で有機溶媒を使用するのが好ましい。かかる有機溶媒としては、例えばジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ、ポリオールに対して0.1〜10.0倍量用いるのが好ましい。
【0026】また、触媒としては、一般にエポキシ基の反応触媒として知られている酸又は塩基性触媒を用いることができるが、酸触媒を用いた場合、副反応として、生成したグリセリル化ポリオール類のエーテル結合の分解反応や水酸基の脱水反応が生じるため好ましくなく、塩基性触媒を用いるのが好ましい。用いられる塩基性触媒としては、特に限定されないが、反応性及び経済性の点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、水素化ナトリウム等が挙げられる。これら塩基性触媒は、ポリオールに対して0.01〜20.0%、特に0.1〜10.0%の範囲で用いるのが好ましい。
【0027】反応は、50〜200℃、好ましくは80〜150℃で行われる。反応温度が50℃未満では反応速度が遅く、200℃を超えると生成物が着色してしまうので好ましくない。
【0028】反応終了後、例えば酢酸、クエン酸等の有機酸又は硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸を加えて触媒を中和し、次いで反応に用いた有機溶媒を除去する。有機溶媒は、反応生成物の熱分解を避けるため、減圧下、通常120℃以下の温度で除去するのが好ましい。
【0029】グリセリル化ポリオール類(1)は、通常、ポリオール1分子に分岐アルキルグリシジルエーテル(3)が1分子付加した1モル付加体、2分子付加した2モル付加体のほかにポリオール1分子に3分子以上の分岐アルキルグリシジルエーテル(3)が付加した多モル付加体の混合物として得られる。このようにして得られたグリセリル化ポリオール類(1)は、通常これら1モル付加体、2モル付加体、あるいは多モル付加体の混合物として使用されるが、性能や製品への配合上の理由等で問題がある場合、シリカゲルカラムや溶媒抽出等の公知の精製方法を用いて精製することができる。グリセリル化ポリオール類(1)には、目的とする1モル付加体、2モル付加体、あるいは多モル付加体の他に、未反応のグリコシドが含有される場合がある。このような未反応グリコシドは、実用上問題がなければ含有したまま使用することができるが、問題がある場合には、例えば酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、クロロホルム等の有機溶媒を用いた2層の抽出溶媒系を用いる方法や、スミス薄膜蒸留などの公知の精製方法により除去することができる。
【0030】一方、一般式(2)で表わされるα−モノ(メチル分岐アルキル)グリセリルエーテルは特開昭57−120513号公報記載の方法により製造することができる。
【0031】本発明の角質繊維染色剤組成物は、pHが2〜4.5に設定されている。従って、上記の非イオン性界面活性剤の内、エステル結合等の酸性条件下で分解し易い官能基を含まないものが好ましい。この好ましい例としてはメチル分岐イソステアリルアルコール、2−ヘキシルデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−ドデシルヘキサデカノール等の分岐アルコールのアルキレンオキシド付加物;メチル分岐イソステアリルアルコールのモノグリセリルエーテル、2−オクチルドデカノールのモノグリセリルエーテル等の分岐アルキルグリセリルエーテル;ペンタエリスリトール、ソルビトール、マルチトール、グルコース、フルクトース及びグリセリン等のポリオールとメチル分岐イソステアリルグリシジルエーテル、2−ドデシルヘキサデカノール等の分岐グリシジルエーテルとの反応物であるポリオールグリセリル分岐アルキルエーテル;メチル分岐イソステアリルアルコール等の分岐アルコールの酸化生成物であるアルデヒドとホルムアルデヒドを反応させたトリメチロール分岐アルカン等が挙げられる。
【0032】(B)成分の配合量は0.01〜10%、特に0.1〜5%が好ましい。この量が0.01%未満であると、本発明の充分な効果が得られず、10%を超えるとべたつくことがあり好ましくない。
【0033】本発明の角質繊維染色剤組成物において、上記(A)及び(B)成分に加え、(C)成分として炭素数8〜36の直鎖アシル、直鎖アルキル又は直鎖アルケニル基を有し、HLBが7以下、好ましくは5以下である油剤を配合すれば、感触を更に向上させることができる。なお、ここでいう直鎖とは、すべてのアシル、アルキル、アルケニル基において分岐鎖を一部でも含まないという意味である。(C)成分の例としては飽和又は不飽和の直鎖アシル、直鎖アルキル又は直鎖アルケニル基を有する高級アルコール、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸のポリオールエステル、これらの化合物のアルキレンオキサイド付加物、炭化水素、コレステロール類等が挙げられる。就中好ましくは、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸である。特に好ましくは、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコールである。(C)成分の配合量は0.1〜10%、特に0.5〜5%が好ましい。
【0034】本発明染色剤組成物のpH(10重量%水溶液として測定)は、2.0〜4.5であり好ましくは2.5〜4.5、特に好ましくは2.5〜4.0である。pHが4.5以上であると染色力が低下するか又は塗布した後の放置時間が長くなり好ましくなく、pHが2.0未満であると酸成分の手肌への刺激が問題となる。
【0035】また、本発明染色剤組成物は、手袋等を使用して毛髪等の角質繊維に塗布し、一定時間放置後洗い流すことによって使用する通常の染色剤の形態とすることもできるが、手袋等を用いず、素手で毛髪等に直接塗布し、30〜120秒の短時間放置した後、すすぐことにより使用するヘアリンスタイプの染色剤の形態とすることが好ましい。後者のようなヘアリンスタイプとした場合、髪質や使用方法によっても異なるが、通常約5〜10回の使用で白髪が目立たなくなる等の染毛効果が得られる。
【0036】このような素手で使用する染色剤組成物とする場合、上記(A)、(B)及び(C)成分以外に、有機溶剤を配合することが好ましい。ここで用いられる有機溶剤としては、次式(D−1)で表わされる化合物、次式(D−2)で表わされるN−アルキルピロリドン又は炭素数1〜4のアルキレンカーボネートが挙げられる。
【0037】
【化5】


【0038】
【化6】


【0039】これらの有機溶剤の具体例としては、例えばエタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ベンジルアルコール、シンナミルアルコール、フェネチルアルコール、p−アニシルアルコール、p−メチルベンジルアルコール、フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、グリセリン、N−メチルピロリドン、N−オクチルピロリドン、N−ラウリルピロリドン等が挙げられる。かかる有機溶剤の配合量は本発明染色剤組成物中0.5〜50%、特に1〜35%が好ましい。0.5%未満では短い放置時間で充分な染毛効果が得られず、50%を超えて配合しても、効果の向上は認められない。
【0040】また、このような素手で使用するタイプの本発明染色剤組成物は、その10%水溶液の緩衝能が0.005〜0.2グラム当量/lを示すような組成を持つ場合、塗布後の放置時間が短縮されるため、特に好ましい。ここで、本発明における緩衝能とは、25℃における染色剤組成物の10%水溶液のpHを初期の値から1上昇させるのに要する塩基の濃度を尺度として次式により求められる値である。
【0041】
【数2】


【0042】当該緩衝能が0.005グラム当量/l未満であると短い放置時間では充分な効果が得られず、0.2グラム当量/lを超えると、染毛効果の目立った向上は見られず、緩衝能を付与するpH緩衝剤やその他の配合成分が溶解しにくくなる等の理由から好ましくない。なお、より好ましい緩衝能は0.01〜0.05グラム当量/lである。
【0043】このような緩衝能は、染色剤組成物にpH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、防腐剤等を添加することによって付与することができる。このうち、pH緩衝剤としては、pH2.0〜4.5の範囲で緩衝作用を有する有機酸又は無機酸及び/又はその塩を用いることができる。有機酸としては、例えばクエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、乳酸、フマル酸、リンゴ酸、レブリン酸、酪酸、吉草酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、マンデル酸等を挙げることができ、無機酸としては、例えばリン酸、硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、これらの酸の塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩などのアルカノールアミン塩等を挙げることができる。緩衝能を与える化合物の配合量は特に規定されるものではなく、緩衝能を与える化合物の種類によって異なる。例えば、主に緩衝能を与える化合物として、クエン酸ナトリウム塩を用いた場合は、約2〜2.5%以上の濃度で配合される。
【0044】また、本発明の染色剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で(B)成分以外の各種界面活性剤、カチオン性重合体、油性成分、ヒドロキシエチルセルロースやキサンタンガム等の増粘剤、シリコーン誘導体、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、殺菌剤、パール化剤、濁り剤等を配合してもよい。
【0045】ここで界面活性剤としてはオレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、脂肪酸アルキルエーテルカルボン酸、N−アシルアミノ酸等のアニオン界面活性剤;アミドベタイン、カルボベタイン、ヒドロキシスルホベタイン等の両性界面活性剤;モノもしくはジアルキル第4級アンモニウム塩等のカチオン界面活性剤;ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の分岐アルキル基を含まない非イオン界面活性剤のいずれも用いることができる。また、カチオン性重合体としてはカチオン化セルロース、カチオン化澱粉、カチオン化グアーガム、ジアリル4級アンモニウム塩重合物、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリル4級アンモニウム共重合物等が挙げられる。
【0046】本発明染色剤組成物は上記成分を混合して常法により製造でき、その使用方法は前述の通りである。
【0047】
【発明の効果】本発明の角質繊維染色剤組成物は、染色効果に優れ、かつコンディショニング効果に優れているため、すすぎ時及び仕上がり時の毛髪の感触が極めて良好である。
【0048】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】合成例1ペンタエリスリトール82g、ジメチルスルホキシド200g及び水酸化ナトリウム1gを500mlフラスコに入れ、105℃に加熱して溶解し、乾燥窒素ガスを吹き込み、水及びジメチルスルホキシドを約20g留出させて反応系中の水分を除去した。これにイソステアリルグリシジルエーテル39gを1時間かけて滴下した後、105℃で4時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応混合物に酢酸1.5gを加えて触媒を中和し、減圧下、ジメチルスルホキシドを80℃で完全に蒸留除去し、その残留物に99%エタノールを加えて析出した未反応ペンタエリスリトールを濾別した。得られた濾液を、減圧下でエタノールを留去した後、残渣に水500ml及び酢酸エチル500mlを加えて酢酸エチル抽出を行い、酢酸エチル可溶性画分より溶媒を留去して淡黄色のペンタエリスリトール・イソステアリルグリシジルエーテルの付加体の粗精製物63gを得た。この粗精製物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い、アセトン:ヘキサン=2:1の溶出溶媒で分離精製を行うと、目的とするペンタエリスリトール・イソステアリルグリシジルエーテルの1モル付加体が溶出し、その溶出画分を集めて溶媒を留去して、目的とするペンタエリスリトール・イソステアリルグリシジルエーテルの1モル付加体16g(収率30%)を得た。
水酸基価482(計算値486)
NMR(CDCl3):δ(ppm)
3.95(1H,m,-OCH2-CHOH-CH2O-), 3.67(6H,s,-C(CH2OH)3),3.46(8H,m,-OCH2-), 1.30-1.59(29H,b,-CH2-,-CH-), 0.88(6H,m,-CH3)IR(液膜)cm-1:νO-H(-OH) 3200〜3400;
νC-H(伸縮)(-CH-,-CH2-,-CH3) 2850, 2920;
νC-H(変角)(-CH-,-CH2-,-CH3) 1375, 1460;
νC-O(-C-O-) 1110, 1035, 1010
【0050】実施例1〜3乾燥した白髪の毛束約10gをシャンプーした後、水を切り、これに表1の組成物各3gを素手で素早く均一に塗布した。35℃にて30秒間放置し、すすいで、乾燥させ、すすぎ時及び乾燥時の毛髪に対して、専門パネラー10名で、以下の評価を行った。得られた結果を表1に示す。
コンディショニング効果の評価a)すすぎ時の指通り◎:きしみがなく、指通りが非常に良い。
○:きしみが弱く、指通りが良い。
△:きしみがやや強く、指が通りづらい。
×:きしみが強く、指通りが悪い。
b)すすぎ時及び乾燥時の柔らかさ○:非常に柔らかく、しなやか。
△:柔らかい。
×:柔らかさにかける。
c)乾燥時のくし通り○:くし通りが良く滑らか。
△:くしを通すのに多少ひっかかる。
×:毛先等のくし通りが悪くひっかかる。
【0051】
【表1】


【0052】実施例4前頭部の白髪率が約10%である40歳台の女性モニター10名に対して、シャンプーした後、美容師が実施例3(表1)の組成物を約15g塗布し、35℃で60秒間放置した後、すすぎ、更にドライヤーで乾燥させた。同様な操作を更に4回繰り返した後、10名のパネラーにより白髪の目立ちを目視で評価した。その結果を表2に示した。
【0053】
【表2】


【0054】実施例5下記組成物(pH3.5)を、欧米人ブロンド毛束約5gに対して、2.5g塗布し、30℃で30分間放置した。その後、流水ですすぎ、乾燥させた。すすぎ時及び乾燥時の髪の感触が良好であった。
(組成) (%)
(1)黄色4号 0.025(2)橙色205号 0.025(3)ペンタエリスリトールグリセリルイソステアリル エーテル*4 3.0(4)クエン酸 4.0(5)プロピレングリコール 20.0(6)ベンジルアルコール 5.0(7)NaOH pH3.5に調整量(8)キサンタンガム 1.5*4:ペンタエスリトールとモノメチル分岐型のイソステアリルグリシジルエーテルとの反応生成物 HLB9.2(合成例1で得たもの)
【0055】実施例6下記組成物(pH4.0)を、欧米人ブロンド毛束約5gに対して、2.5g塗布し、30℃で30分間放置した。その後、流水ですすぎ、乾燥させた。すすぎ時及び乾燥時の髪の感触が良好であった。
(組成) (%)
(1)赤色106号 0.025(2)橙色205号 0.025(3)グリセリングリセリルイソステアリルエーテル 4.0(4)乳酸 5.0(5)エタノール 20.0(6)2−ベンジルオキシエタノール 5.0(7)ステアリルアルコール(HLB2.8) 1.0(8)ポリオキシエチレンラウリルエーテル(EO15) 3.0(9)NaOH pH4.0に調整量(10)キサンタンガム 1.5*4:グリセリンとモノメチル分岐型のイソステアリルグリシジルエーテルとの反応生成物 HLB7.9

【特許請求の範囲】
【請求項1】 次の成分(A)及び(B)
(A)直接染料(B)炭素数8〜36の分岐アシル、分岐アルキル又は分岐アルケニル基を有し、HLBが2〜12である非イオン性界面活性剤を含有し、pHが2.0〜4.5である角質繊維染色剤組成物。
【請求項2】 次の成分(A)、(B)及び(C)
(A)直接染料(B)炭素数8〜36の分岐アシル、分岐アルキル又は分岐アルケニル基を有し、HLBが2〜12である非イオン性界面活性剤(C)炭素数8〜36の直鎖アシル、直鎖アルキル又は直鎖アルケニル基を有し、HLBが7以下である油剤を含有し、pHが2.0〜4.5である角質繊維染色剤組成物。

【公開番号】特開平5−246831
【公開日】平成5年(1993)9月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−49573
【出願日】平成4年(1992)3月6日
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)