説明

解体用手持工具

【課題】情報通信機器等の物品を効率よく短時間で手解体する。
【解決手段】解体用手持工具は、第1の部材1と第2の部材2とからなる。第1の部材1と第2の部材2とは、軸部3を中心として回動自在に連結され、第1の部材1と第2の部材2の各々が、軸部3で交差する部位から一方の側に隙間挿入用の先端部4,5を有すると共に軸部3で交差する部位から他方の側に握り柄部6,7を有し、握り柄部6,7の操作によって先端部4,5が互いに接近または離反するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも筐体の一部がプラスチック材料からなる情報通信機器等の物品のリサイクルにおいて、当該物品を容易に解体するための解体用手持工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の情報通信機器をリサイクルのために解体するには、従来、筺体を固定しているネジ止めを手で外していたが、ネジの種類が多く、かつ隠しネジになっている場合が多いため時間を要していた。そこで、解体を容易にするために、近年、情報通信機器を加温し、当該機器のプラスチック筺体を軟化させて手解体する手法が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、情報通信機器に内蔵されているLCDモジュール、振動モータ、スピーカ等の部品を再利用するには、これらの部品を熱破壊しないために筺体の温度上昇を抑える必要がある。このため、プラスチック筐体を十分に加温して軟化させることができず、解体する際にドライバー、プライヤーなどの手工具を利用することが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−21339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドライバーなどの手持工具を使用する場合、手解体で生じた筺体接合部の隙間を大きく拡大させることが難しく、力の入れる方向によっては工具が筺体接合部の隙間から外れたり、逆に筺体接合部の隙間に深く挿入された工具により再利用予定の部品を破損したりすることがあり、解体効率と部品再利用の歩留まりが悪いという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、効率よく短時間での手解体を可能にする解体用手持工具を提供することを目的とする。
また、本発明は、再利用予定部品の破損を防止して部品再利用の歩留まりを上げることができる解体用手持工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも筐体の一部がプラスチック材料からなる物品を手解体する解体用手持工具であって、第1の部材と第2の部材とからなり、前記第1の部材と前記第2の部材とは、軸部を中心として回動自在に連結され、前記第1の部材と前記第2の部材の各々が、前記軸部で交差する部位から一方の側に前記筐体の隙間への挿入用の先端部を有すると共に前記軸部で交差する部位から他方の側に握り柄部を有し、前記握り柄部の操作によって前記第1、第2の部材の先端部が互いに接近または離反することを特徴とするものである。
また、本発明の解体用手持工具の1構成例は、さらに、前記第1、第2の部材の先端部に滑り止め突起または滑り止め材料を有することを特徴とするものである。
また、本発明の解体用手持工具の1構成例は、さらに、前記第1、第2の部材の先端部に過挿入防止突起または過挿入防止部品を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、握り柄部の操作によって第1、第2の部材の先端部が離反するような構造とすることにより、物品の筐体接合部の隙間に先端部を挿入した状態で握り柄部を操作すれば、筺体接合部の隙間を容易に大きく拡大させることができる。その結果、本発明では、情報通信機器等の物品を効率よく短時間で手解体することが可能になる。
【0009】
また、本発明では、第1、第2の部材の先端部に滑り止め突起または滑り止め材料を設けることにより、解体用手持工具が筺体接合部の隙間から外れることを防止することができ、物品の解体を容易にすることができる。
【0010】
また、本発明では、第1、第2の部材の先端部に過挿入防止突起または過挿入防止部品を設けることにより、筺体接合部の隙間への解体用手持工具の過挿入によって筐体内の部品が破損することを防止することができ、部品再利用の歩留まりを上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態に係る解体用手持工具の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る解体用手持工具の先端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1(A)〜図1(C)は本発明の実施の形態に係る解体用手持工具の構造を示す図、図2はこの解体用手持工具の先端部の拡大図である。
本実施の形態の解体用手持工具は、第1の部材1と第2の部材2とからなり、第1の部材1と第2の部材2とは、軸部3を中心として回動自在に連結され、第1の部材1と第2の部材2の各々が軸部3で交差する部位から一方の側に隙間挿入用の先端部4,5を有すると共に軸部3で交差する部位から他方の側に握り柄部6,7を有し、握り柄部6,7の操作によって先端部4,5が互いに接近または離反するようになっている。
【0013】
第1の部材1と第2の部材2とは、例えば金属材料からなる。作業者が握り柄部6,7を握り易くするために、握り柄部6,7に例えば樹脂製のカバーを装着してもよい。
先端部4,5は、筐体20の隙間21への挿入を容易にするために、先が細く鋭くなる鋭角的な形状に加工されている。先端部4,5の各々には、情報通信機器等の物品の筐体20と接する外側の面に滑り止め突起8,9が設けられ、さらに滑り止め突起8,9よりも軸部3寄りの位置に過挿入防止突起10,11が設けられている。
【0014】
滑り止め突起8,9は、断面形状が例えば鋸歯状をしており、解体用手持工具の先端から過挿入防止突起10,11の位置までそれぞれ複数個設けられている。滑り止め突起8,9の高さH1は例えば0.5mmである。過挿入防止突起10,11は、解体用手持工具の先端からの距離がD(例えばD=10mm)の位置に設けられている。過挿入防止突起10,11の高さH2は例えば3mmである。本実施の形態では、第1、第2の部材1,2を加工して、金属製の滑り止め突起8,9および金属製の過挿入防止突起10,11を第1、第2の部材1,2と一体で形成するようにしている。
【0015】
次に、本実施の形態の解体用手持工具の使い方を説明する。第1の部材1と第2の部材2とは軸部3を中心として回動自在に連結されているので、作業者が解体用手持工具の握り柄部6,7を閉じるように(握り柄部6,7が接近するように)操作すると、先端部4,5が開く(先端部4,5が離反する)。一方、作業者が握り柄部6,7を開くように(握り柄部6,7が離反するように)操作すると、先端部4,5が閉じる(先端部4,5が接近する)。
【0016】
情報通信機器等の物品を解体しようとする作業者は、握り柄部6,7を操作して先端部4,5を閉じた状態にして、図1(A)に示すように先端部4,5を物品の筐体20の隙間21に挿入し、図1(B)に示すように過挿入防止突起10,11が筐体20に当たるまで挿入を続ける。そして、作業者は、過挿入防止突起10,11が筐体20に当たった時点で、握り柄部6,7を操作して先端部4,5を開く。これにより、筐体20をこじ開けるようにして分解することができる。
【0017】
本実施の形態では、ドライバーなどの手持工具を使用する場合に比べて、筺体接合部の隙間を容易に大きく拡大させることができる。本実施の形態の解体用手持工具を用いて情報通信機器の解体を行ったところ、ドライバーなどの手持工具を使用する場合に比べて約1/2の時間で筐体を解体できることを確認した。また、本実施の形態では、先端部4,5に滑り止め突起8,9を設けることにより、解体用手持工具が筺体接合部の隙間から外れることを防止することができる。さらに、本実施の形態では、先端部4,5に過挿入防止突起10,11を設けることにより、筺体接合部の隙間への解体用手持工具の過挿入によって筐体内の部品が破損することを防止することができる。
【0018】
なお、本実施の形態では、第1、第2の部材1,2の先端部4,5を加工して鋸歯状の滑り止め突起8,9を形成しているが、滑り止め突起8,9の代わりに、摩擦力の大きなプラスチック、ゴム等からなる滑り止め材料を先端部4,5に取り付けるようにしてもよい。
また、本実施の形態では、第1、第2の部材1,2の先端部4,5を加工して過挿入防止突起10,11を形成しているが、過挿入防止突起10,11の代わりに、金属やプラスチック等からなる過挿入防止部品を先端部4,5に取り付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、情報通信機器等の物品を解体する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0020】
1…第1の部材、2…第2の部材、3…軸部、4,5…先端部、6,7…握り柄部、8,9…滑り止め突起、10,11…過挿入防止突起。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも筐体の一部がプラスチック材料からなる物品を手解体する解体用手持工具であって、
第1の部材と第2の部材とからなり、
前記第1の部材と前記第2の部材とは、軸部を中心として回動自在に連結され、前記第1の部材と前記第2の部材の各々が、前記軸部で交差する部位から一方の側に前記筐体の隙間への挿入用の先端部を有すると共に前記軸部で交差する部位から他方の側に握り柄部を有し、
前記握り柄部の操作によって前記第1、第2の部材の先端部が互いに接近または離反することを特徴とする解体用手持工具。
【請求項2】
請求項1記載の解体用手持工具において、
さらに、前記第1、第2の部材の先端部に滑り止め突起または滑り止め材料を有することを特徴とする解体用手持工具。
【請求項3】
請求項1記載の解体用手持工具において、
さらに、前記第1、第2の部材の先端部に過挿入防止突起または過挿入防止部品を有することを特徴とする解体用手持工具。

【図1】
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【図2】
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