説明

計算機合成ホログラム

【課題】 フルカラーの画像再生が可能であると共に、計算負荷や加工負荷を抑える計算機合成ホログラムを提供する。
【解決手段】 ホログラムの記録面上に多数の平行な切断面によって水平方向に分割することで多数の線状の分割領域が設定され、多数の分割領域を横断する方向に周期的に異なる波長に対応する振幅情報と位相情報とが記録されており、所定の照明により再生した場合に、再生光が、前記ホログラム記録面上の前記各分割領域を通ってそれぞれ平行な平面内を進行するように構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機合成ホログラム及びその作製方法に関し、特に、フルカラーの画像再生が可能な計算機合成ホログラムとその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、白色光の下でフルカラーの画像再生が可能な計算機ホログラム(計算機合成ホログラム)とその作製方法が開示されている。特許文献1に記載の計算機ホログラムは、
○記録媒体を単位領域に分け、
○この単位領域の中に赤領域、緑領域、青領域にあたる3つの分割領域を設け、
○さらに、分割領域と同一の数の色R,G,Bの情報を持った点光源アレイをフルカラーの原画像表面に設定し、
○単位領域内の赤領域内、緑領域内、青領域内にRGB色の情報を持った点光源の対応するそれぞれの色の情報を記録するものである。
【0003】
以下、その作製方法を説明する。図17は特許文献1に記載の記録方法の具体例を示す斜視図である。この例では、原画像10及び記録媒体(記録面)20を、それぞれ多数の平行線(平行な切断面)によって水平方向に分割し、多数の線状の単位領域を定義している。すなわち、図17に示す通り、原画像10は、合計M個の単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMに分割されており、記録媒体20は、同じく合計M個の単位領域C1,C2,C3,…,Cm,…CMに分割されている。原画像10が立体画像の場合、各単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMは、この立体の表面部分を分割することによって得られる領域になる。ここで、原画像10上のM個の単位領域と記録媒体20上のM個の単位領域とは、それぞれが1対1の対応関係にある。たとえば、原画像10上の第m番目の単位領域Amは、記録媒体20上の第m番目の単位領域Cmに対応している。
【0004】
そして、原画像10の個々の単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMは、点光源が一列に並んだ線状の領域になっている。図17に示す例では、例えば、第m番目の単位領域Amには、N個の点光源Pm1〜PmNが一列に並んでいる(なお、原画像10の物体の形状によっては、単位領域Amは一本線でない場合もある。例えば3つの球が並んでいれば、切断面は3つの円形状となり、それぞれの円上に点光源が並んで配列されることになる。)。また、記録媒体20の各単位領域C1,C2,C3,…,Cm,…CMは、図18にそれぞれ破線で示すように3分割して分割領域を形成している。ここで、分割領域C1r,C1g,C1bは、図17に示す単位領域C1を分割して得られた分割領域である。
【0005】
そして、記録媒体20の任意の単位領域中の任意の分割領域上の演算点Qについての干渉縞は、次のようにして求められる。ここで、任意の分割領域として、Cmrを選択するが、Cmg,Cmbについても同様である。まず、この演算点Qが所属する単位領域Cmに対応する原画像10上の単位領域Amを演算対象単位領域として定める。そして、この演算対象単位領域Am内の点光源Pm1〜PmNから発せられた色Rの物体光Om1r〜OmNr(分割領域がCmg,Cmbの場合は、それぞれ色Gの物体光Om1g〜OmNg、色Bの物体光Om1b〜OmNb)の位相を含めた合成光と、同じ色Rの参照光Lθmrとによって演算点Qで形成される干渉縞を求めれば、目的とする演算点Qにおける干渉縞である。ここで、参照光Lθmrは、YZ平面に平行な単色平行光線である。なお、参照光Lθmrは、YZ平面に平行でなく斜めからの参照光でもよい。
【0006】
図19は、このような演算処理の概念を説明するための上面図であり、図18に示す原画像10及び記録媒体20を、図の上方から見た状態を示している。図19に示す通り、演算点Qにおける干渉縞を求めるのに必要な物体光は、色Rの分割領域Cmrに関しては、演算対象単位領域Am内のN個の点光源Pm1,…,Pmi,…,PmNから発せられた色Rの物体光Om1r,…,Omir,…,OmNrのみに限定され、色Gの分割領域Cmgに関しては、演算対象単位領域Am内のN個の点光源Pm1,…,Pmi,…,PmNから発せられた色Gの物体光Om1g,…,Omig,…,OmNgのみに限定され、色Bの分割領域Cmbに関しては、演算対象単位領域Am内のN個の点光源Pm1,…,Pmi,…,PmNから発せられた色Bの物体光Om1b,…,Omib,…,OmNbのみに限定され、原画像10を構成する全点光源からの物体光を考慮する必要はない。こうして、記録媒体20上に定義した全ての演算点Qについて、それぞれ所定の干渉縞を求めれば、記録媒体20上に干渉縞の分布が得られることになる。
【0007】
図20は、上述のような方法で記録されたカラー原画像を再生している状態を示す側面図である。記録媒体20には、仮想照明として設定された白色照明光Lw(YZ平面に平行な平行光線)が記録媒体20に対して角度αをもって照射されている。ここで、記録媒体20の上方に位置する分割領域C1r,C1g,C1bには、点光源P1(P11,…,P1i,…,P1Nの集合を点光源P1で表す。Pm,PMについても同様。)のそれぞれ色R,G,Bの成分の情報が記録されているが、再生時には、図のように、各色成分の再生光は何れも仮想視点Eの方向に進行することになる。これは、記録媒体20の中程に位置する分割領域Cmr,Cmg,Cmbからの再生光や、記録媒体20の下方に位置する分割領域CMr,CMg,CMbからの再生光についても同様である。結局、仮想視点Eの位置に視点を置けば、分割領域C1r,C1g,C1bからは、それぞれ点光源P1に関する色R,G,Bの再生光が得られ、分割領域Cmr,Cmg,Cmbからは、それぞれ点光源Pmに関する色R,G,Bの再生光が得られ、分割領域CMr,CMg,CMbからは、それぞれ点光源PMに関する色R,G,Bの再生光が得られることになり、点光源P1,Pm,PMから構成されるカラー原画像が高い色再現性をもって観察されることになる。
【0008】
また、特許文献2に記載の計算機ホログラムは、再生時には、スリット群内の各色成分の再生光を平行に出射し、再生光が仮想視点の方向に進行することになる。結局、仮想視点の位置に視点を置けば、色R,G,Bの再生光のいずれか1つが得られることになり、他の2つの色は波長が異なるので、多少の収差等を生じるが、ある程度カラー原画像に近い像が観察されることになる。
【特許文献1】特開2000−214751号公報
【特許文献2】特開2001−331085号公報
【特許文献3】特開2002−72837号公報
【特許文献4】特開2005−215570号公報
【特許文献5】特開2004−309709号公報
【特許文献6】特開2004−264839号公報
【非特許文献1】「3次元画像コンファレンス‘99−3D Image Conference‘99−」講演論文集CD−ROM(1999年6月30日〜7月1日 工学院大学新宿校舎)、論文「EB描画によるイメージ型バイナリCGH(3)−隠面消去・陰影付けによる立体感の向上−」
【非特許文献2】辻内順平著「ホログラフィー」pp.33〜36((株)裳華房、1997年11月5日発行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2の作製方法による計算機合成ホログラムでは、各波長の垂直方向の主な空間周波数が上端から下端に向かうにつれてわずかずつ変化するので、分割領域の各波長の垂直方向の主な空間周波数を計算し直す必要があり、計算負荷がかかる。
また、垂直方向の主な空間周波数の逆数である周期が加工時のアドレス単位(加工図形の描画データとして座標指定できる単位)の整数倍であれば、同じパターンを繰り返し加工すればよいが、計算機合成ホログラムの上端から下端まで分割領域ごとに垂直方向の主な空間周波数が異なるので、すべての分割領域で加工時のアドレス単位の整数倍の周期とすることができず、分割領域内の上端から下端まで全ての干渉縞パターンを演算し、加工する必要があり、計算負荷が増大し、加工用データ量も飛躍的に増加するので、加工負荷も高くなる。
【0010】
本発明は、従来技術のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、フルカラーの画像再生が可能であると共に、計算負荷や加工負荷を抑える計算機合成ホログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであって、計算機を用いた演算を利用して所定の記録媒体上に複数の波長により表現されたカラー原画像の振幅情報と位相情報を記録した計算機合成ホログラムにおいて、ホログラムの記録面上に多数の平行な切断面によって水平方向に分割することで多数の線状の分割領域が設定され、多数の分割領域を横断する方向に周期的に異なる波長に対応する振幅情報と位相情報とが記録されており、所定の照明により再生した場合に、各分割領域に記録された振幅情報と位相情報とから回折された周期的に異なる波長の再生光が、前記ホログラム記録面上の前記各分割領域を通ってそれぞれ平行な平面内を進行するように構成されていることを特徴とする。
【0012】
前記再生光は、前記ホログラム記録面に直交する平面内を進行するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
また、同一の分割領域に属する個々の点には、原画像の同一部分に関する情報が記録されており、異なる分割領域に属する個々の点には、原画像の対応する異なる部分に関する情報が記録されていることを特徴とする。
【0014】
また、各分割領域に記録された振幅情報と位相情報が物体光と参照光との干渉縞として記録されていることを特徴とする。
【0015】
また、各分割領域に記録された振幅情報と位相情報が、溝の深さで位相を、溝の幅で振幅を記録した1面に溝を持った3次元セルとして記録されていることを特徴とする。
【0016】
また、分割領域に記録されている周期的に異なる波長が3つであり、それぞれ赤色、緑色、青色の波長であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、再生時に、各色成分の再生光は何れもホログラム記録面上の各分割領域を通ってそれぞれ平行な平面内を進行するので、上端から下端までの全分割領域で、同じ色に関してはそれぞれ同じ垂直方向の空間周波数となる。例えば、赤色の垂直方向の空間周波数は上端から下端までの赤色の分割領域ですべて同じであり、緑色の垂直方向の空間周波数は上端から下端までの緑色の分割領域ですべて同じであり、青色の垂直方向の空間周波数は上端から下端までの青色の分割領域ですべて同じである。したがって、同じ色の垂直方向の空間周波数は分割領域ごとに計算し直す必要がない。
【0018】
また、各色の垂直方向の空間周波数が全分割領域でそれぞれ共通なので、分割領域ごとの色それぞれの垂直方向の空間周波数が一定となり、その逆数の周期も一定となる。したがって、色ごとに加工アドレスの整数倍の周期を設定すれば、同じパターンの繰り返し加工で目的の干渉縞パターンを加工することができ、分割領域の全部の干渉縞パターンを演算する必要がなく、演算負荷が減少する。さらに、加工用データ量も少なくて済み、加工負荷も低くなる。
【0019】
また、ホログラムからの観察距離の設定も不要となり、どんな観察位置の場合にも作製可能である。さらに、ホログラムの上端から下端まで垂直方向の視域が広くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照にして本発明の計算機合成ホログラム(CGH)の作製方法とその作製方法で得られた計算機合成ホログラムの実施例を説明する。図1は本発明による記録方法の概念の1実施例を示す斜視図である。この実施例では、原画像10及び記録媒体(記録面)20を、それぞれ多数の平行線(平行な切断面)によって水平方向に分割し、多数の線状の分割領域を定義している。すなわち、図1に示す通り、原画像10は、合計3M個の分割領域A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMbに分割されており、記録媒体20は、同じく合計3M個の分割領域C1r,C1g,C1b,C2r,C2g,C2b,…,Cmr,Cmg,Cmb,…,CMr,CMg,CMbに分割されている。原画像10が立体画像の場合、各分割領域A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMbは、この立体の表面部分を分割することによって得られる領域になる。ここで、原画像10上の3M個の分割領域と記録媒体20上の3M個の分割領域とは、それぞれが1対1の対応関係にある。たとえば、原画像10上のr,g,bの繰り返し番号m番目の中の1番目(第mr番目とする。以下同様。)の分割領域Amrは、記録媒体20上のr,g,bの繰り返し番号m番目の中の1番目の分割領域Cmrに対応している。
【0021】
そして、原画像10の個々の分割領域A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMbは、点光源が一列に並んだ線状の領域になっている。図1に示す例では、例えば、第mr番目の分割領域Amrには、N個の色R(赤色)の光を分割領域Amrと分割領域Cmrを含む平面内で扇状に発する点光源Pmr1〜PmrNが一列に並んでいる。同様に、第mg番目の分割領域Amgには、N個の色G(緑色)の光を分割領域Amgと分割領域Cmgを含む平面内で扇状に発する点光源Pmg1〜PmgNが一列に並んでおり、第mb番目の分割領域Ambには、N個の色B(青色)の光を分割領域Ambと分割領域Cmbを含む平面内で扇状に発する点光源Pmb1〜PmbNが一列に並んでいる。
【0022】
そして、記録媒体20の任意の分割領域中の演算点Qについての干渉縞は、次のようにして求められる。ここで、任意の分割領域として、Cmrを選択するが、Cmg,Cmbについても同様である。まず、この演算点Qが所属する分割領域Cmrに対応する原画像10上の分割領域Amrを演算対象分割領域として定める。そして、この演算対象分割領域Amr内の点光源Pmr1〜PmrNから発せられた色Rの物体光Omr1〜OmrN(分割領域がCmg,Cmbの場合は、それぞれ色Gの物体光Omg1〜OmgN、色Bの物体光Omb1〜OmbN)の位相を含めた合成光(物体光)と、同じ色Rの参照光Lθmrとによって演算点Qで形成される干渉縞を求めれば、目的とする演算点Qにおける干渉縞である。ここで、参照光Lθmrは、YZ平面に平行な単色平行光線である。なお、参照光Lθmrは、YZ平面に平行でなく斜めからの参照光でもよい。
【0023】
図2は、このような演算処理の概念を説明するための上面図であり、図1に示す原画像10及び記録媒体20を、図の上方から見た状態を示している。図2に示す通り、演算点Qにおける干渉縞を求めるのに必要な物体光は、色Rの分割領域Cmrに関しては、演算対象分割領域Amr内のN個の点光源Pmr1,…,Pmri,…,PmrNから発せられたOmr1,…,Omri,…,OmrNのみに限定され、色Gの分割領域Cmgに関しては、演算対象分割領域Amg内のN個の点光源Pmg1,…,Pmgi,…,PmgNから発せられたOmg1,…,Omgi,…,OmgNのみに限定され、色Bの分割領域Cmbに関しては、演算対象分割領域Amb内のN個の点光源Pmb1,…,Pmbi,…,PmbNから発せられたOmb1,…,Ombi,…,OmbNのみに限定され、原画像10を構成する全点光源からの物体光を考慮する必要はない。こうして、記録媒体20上に定義した全ての演算点Qについて、それぞれ所定の干渉縞を求めれば、記録媒体20上に干渉縞の分布が得られることになる。
【0024】
以上のような記録方法をとっているので、原画像10上では、R色用スライス面、G色用スライス面、B色用スライス面を1つのまとまりとした繰り返し単位が、M個並列配置されている。そして、記録媒体20上では、それに対応してそれぞれ色RGBの干渉縞が記録されるR色用スライス面、G色用スライス面、B色用スライス面を1つのまとまりとした繰り返し単位が、M個並列配置されていることになる。
【0025】
図3は、以上の例の本発明の計算機合成ホログラムの作製方法を模式的に示す図であり、上記したように、原画像(物体)10は、水平方向の多数の線状の分割領域A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMbに分割されており、記録媒体20も原画像(物体)10の分割領域A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMbに対応して水平方向の多数の線状の分割領域C1r,C1g,C1b,C2r,C2g,C2b,…,Cmr,Cmg,Cmb,…,CMr,CMg,CMbに分割されている。原画像(物体)10の分割領域A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMbの幅又はピッチがh/3のとき、記録媒体20の分割領域C1r,C1g,C1b,C2r,C2g,C2b,…,Cmr,Cmg,Cmb,…,CMr,CMg,CMbの対応する幅又はピッチは同様にh/3となっている。そして、記録媒体20上のRGB繰り返しピッチはh/3×3=hとなっている。
【0026】
図4は、上述のような方法で記録されたカラー原画像を再生している状態を示す側面図である。記録媒体20には、仮想照明として設定された白色照明光Lw(YZ平面に平行な平行光線)が記録媒体20に対して角度αをもって照射されている。ここで、記録媒体20の上方に位置する分割領域C1r,C1g,C1bには、それぞれ点光源P1r(P1r1,…,P1ri,…,P1rNの集合を点光源P1rで表す。P1g,P1b等についても同様。),P1g,P1bのそれぞれ色R,G,Bの情報が記録されているが、再生時には、図のように、ホログラム記録媒体20上の各分割領域C1r,C1g,C1bを通ってそれぞれ平行な平面内を進行するように構成されている。特に、再生光は、ホログラム記録媒体20に直交する平面内を進行するように構成されていることが好ましい。
【0027】
これは、記録媒体20の中程に位置する分割領域Cmr,Cmg,Cmbからの再生光や、記録媒体20の下方に位置する分割領域CMr,CMg,CMbからの再生光についても同様である。
【0028】
結局、仮想視点Eが記録媒体20から十分に離れていると考えれば、分割領域C1r,C1g,C1bからは、それぞれ点光源P1r,P1g,P1bに関する色R,G,Bの再生光が得られ、分割領域Cmr,Cmg,Cmbからは、それぞれ点光源Pmr,Pmg,Pmbに関する色R,G,Bの再生光が得られ、分割領域CMr,CMg,CMbからは、それぞれ点光源PMr,PMg,PMbに関する色R,G,Bの再生光が得られることになり、点光源P1r,P1g,P1b,…,Pmr,Pmg,Pmb,…,PMr,PMg,PMbから構成されるカラー原画像10が高い色再現性をもって観察されることになる。
【0029】
なお、図4では、仮想視点Eには分割領域Cmr,Cmg,Cmbからの再生光のみが進行しているように見えるが、実際には、ホログラム記録媒体20の波長分散により、所定の波長とわずかにずれた波長の光が、上端の分割領域C1r,C1g,C1b乃至下端の分割領域CMr,CMg,CMbの全分割領域から仮想視点Eに進行するので、仮想視点Eでは、原画像(物体)10の上端から下端までの像を見ることができる。
【0030】
このように、再生時に、各色成分の再生光がホログラム記録媒体20上の各分割領域Cmr,Cmg,Cmbを通ってそれぞれ平行な平面内を進行するように構成されているので、上端から下端までの全分割領域Cmr,Cmg,Cmbで、同じ色に関してはそれぞれ同じ垂直方向の空間周波数となる。すなわち、赤色Rの垂直方向の空間周波数は上端から下端までの赤色Rの分割領域Cmrですべて同じであり、緑色Gの垂直方向の空間周波数は上端から下端までの緑色Gの分割領域Cmgですべて同じであり、青色Bの垂直方向の空間周波数は上端から下端までの青色Bの分割領域Cmbですべて同じである。したがって、同じ色の垂直方向の空間周波数に対しては分割領域ごとに計算し直す必要がない。
【0031】
特に、再生光が、ホログラム記録媒体20に直交する平面内を進行するように構成されている場合、再生光の進む角度を考慮する必要がなくなり、計算負荷がより少なくなる。
【0032】
また、ホログラムからの観察距離の設定も不要となり、どんな観察位置の場合にも作製可能である。さらに、上端の場合、視線方向に光が向かう場合と比べ、より上方からも見え、下端の場合、視線方向に光が向かう場合に比べ、より下方からも見えるので、ホログラムの上端から下端まで垂直方向の視域が広くなる。
【0033】
なお、本実施形態では、色R,G,Bに対して、それぞれ別の位置で原画像10をサンプリングしたが、色R,G,Bに対して共通の位置で原画像10をサンプリングし、そのサンプリング位置から平行移動することにより色R,G,Bそれぞれの光源位置を定めてもよい。
【0034】
この場合、まず、図5に示すように、原画像10に対して、スライス面及び単位領域を定め、合計M個の単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMに分割し、色R,G,Bに対して共通のサンプリング位置を定める。
【0035】
次に、図6に示すように、色R,G,Bに対応する分割領域A1r,A1g,A1b,…Amr,Amg,Amb,…AMr,AMg,AMbをそれぞれ定め、各分割領域A1r,A1g,A1b,…Amr,Amg,Amb,…AMr,AMg,AMbの中心に図5に示した共通のサンプリング位置から平行移動することにより、色R,G,Bそれぞれの光源位置を定める。
【0036】
このように、原画像10に対する分割領域を合計M個の単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMとし、色R,G,Bに対して共通の位置でサンプリングすることにより、色ずれの発生をなくすことができる。
【0037】
また、原画像10に対して、点光源P1r,P1g,P1b,…Pmr,Pmg,Pmb,…PMr,PMg,PMbではなく、図7に示すように、線光源L1r,L1g,L1b,…Lmr,Lmg,Lmb,…LMr,LMg,LMbを適用してもよい。
【0038】
このような線光源L1r,L1g,L1b,…Lmr,Lmg,Lmb,…LMr,LMg,LMbを適用する場合を説明する。
【0039】
この場合、まず、原画像10に対して、スライス面及び単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMを定め、それぞれの単位領域A1,A2,A3,…,Am,…AMを色R,G,Bに対応する分割領域A1r,A1g,A1b,…Amr,Amg,Amb,…AMr,AMg,AMbに分割する。
【0040】
そして、図8に示すように、例えば、線光源Lmriからの物体光と参照光Rφとの干渉縞を記録媒体20上に記録する場合を考える。
【0041】
ここで、線光源Lmriは、記録面20に対して平行で、長さhの線分から構成されているものとする。より具体的には、図8に示す例では、Y軸に平行になるように線光源Lmriを定義してあり、この線光源Lmriの中心が単位領域の点光源の基準点Pmriの位置にくるようにしてある。ここでは、分割領域Amr,CmrがX軸に平行になり、記録面20がXY平面上にくるようにXYZ三次元座標系を定義してあるため、線光源LmriはY軸に平行になる。線光源Lmriは、一様な強度をもった線状の光放射要素であり、その強度値は、たとえば、原画像10上の基準点Pmriが有する画素値に基づいて決定すればよい。一般に、線光源からの光は、波面が円筒状となるように広がってゆく光であり、基準点Pmri上の線光源Lmriから進む物体光をXZ平面上に投影すると、図9に一点鎖線で示すような投影像が得られることになるが、これをYZ平面上に投影すると、図10に一点鎖線で示すような投影像が得られることになる。
【0042】
別言すれば、図8に示す系を上方向から観察すると、線光源Lmiからの物体光は図9に示すように放射状に広がってゆくことになるが、この系を横方向から観察すると、線光源Lmriからの物体光は、図10に示すように、いずれも水平方向に進む光となる。結局、線光源Lmiからの物体光は、その広がり角に何ら制限を加えなくても、Y軸方向について幅hをもった単位領域Cmr内にのみ到達することになる。こうして、単位領域Cmr内の各演算点について、線光源Lmriからの物体光と参照光Rφとの干渉波の強度が演算されることになり、単位領域Cmr内に干渉縞が記録されることになる。
【0043】
図8では、図示の便宜上、単位線分Amr上の第i番目の基準点Pmri上に定義された線光源Lmriからの物体光と参照光Rφとの干渉縞が単位領域Cmr内に記録される様子のみが示されているが、実際には、単位線分Amr上にはN個の基準点Pmr1〜PmrNが定義されており、各基準点の位置にそれぞれ線光源Lmr1〜LmrNが定義される(いずれの線光源も長さhを有し、その中心が単位線分Amr上にくるように、Y軸に平行な向きに配置されている)。したがって、単位領域Cmr内には、N個の線光源Lmri〜LmrNからの各物体光と参照光Rφとの干渉縞が重ねて記録されることになる。
【0044】
また、図7に示すように、原画像10上には、所定ピッチhをおいて互いに平行になるように、3M本の単位線分A1r,A1g,A1b,〜Amr,Amg,Amb,〜AMr,AMg,AMbが定義されており(いずれもXZ平面に平行な線分もしくは曲線分となる)、これらすべての単位線分上にそれぞれ複数の基準点が定義され、各基準点について、それぞれ各単位線分に垂直となる(Y軸に平行となる)線光源が定義されている。したがって、図7に示す3M個のすべての分割領域C1r,C1g,C1b,〜Cmr,Cmg,Cmb,〜CMr,CMg,CMbについて、それぞれ対応する単位線分A1r,A1g,A1b,〜Amr,Amg,Amb,〜AMr,AMg,AMb上の複数の基準点に定義された線光源からの物体光と参照光との干渉縞が記録されることになる。
【0045】
図11は、線光源を用いた場合に、同一の干渉縞パターンの繰り返しが生じる理由を示すモデルである。まず、線光源Lmriからは、いずれの部分からも、図の右方向に物体光Oが照射される。ここで、線光源Lmriは、長さ方向に均一な強度をもった光源であり、しかも記録媒体20に対して平行であるから、記録媒体20上で長さhをもった単位領域内のどの位置についても、物体光Oは同一の条件で照射されていることになり、その振幅強度および位相は全く同一になる。このように、物体光Oが全く同一条件で照射されているにもかかわらず、この単位領域に干渉縞パターンが形成されるのは、参照光Rφの位相が各部分で異なるためである。
【0046】
いま、参照光Rφを構成する光束として、図示のように、5本の光束R1〜R5を考える。もともと参照光Rφは、空間的にコヒーレントな光であるから、この5本の光束の位相はすべて揃っている。しかしながら、記録媒体20に対しては、斜めの角度φで入射するため、記録面20に到達するまでの光路長はそれぞれで異なり、到達点F1〜F5におけるそれぞれの位相は互いに異なることになる。たとえば、光束R1の光路長よりも光束R2の光路長は所定長だけ長くなり、光束R2の光路長よりも光束R3の光路長は所定長だけ長くなる。ここでは、この光路長の差がちょうど1波長分であったとすると、点F1,F2では、参照光Rφの位相が2πだけ異なっていることになり、到達点F2,F3でも、参照光Rφの位相が2πだけ異なっていることになる。結局、5つの到達点F1〜F5の間では、いずれも参照光Rφの位相が2πずつずれていることになる。このような理由から、記録媒体20上には、周期dをもった同一の干渉縞パターンが4回繰り返し現れることになる。
【0047】
この原理を色R,G,Bに対して、同じ色ごとの分割領域に適用した場合、色Rの垂直方向の空間周波数が分割領域Cmrで共通、色Gの垂直方向の空間周波数が分割領域Cmgで共通、色Bの垂直方向の空間周波数が分割領域Cmbで共通となるので、色R,G,Bごとのそれぞれの垂直方向の空間周波数が一定となり、その逆数の周期も一定となる。したがって、色R,G,Bごとに加工アドレスの整数倍の周期を設定すれば、同じパターンの繰り返し加工で目的の干渉縞パターンを加工することができ、分割領域Cmr,Cmg,Cmbの全部の干渉縞パターンを演算する必要がなく、演算負荷が減少する。さらに、加工用データ量も少なくて済み、加工負荷も低くなる。
【0048】
次に、以上の本発明の計算機合成ホログラム(CGH)の作製方法をフローチャートに基づいて説明する。
【0049】
CGHの作製方法はよく知られており(例えば、非特許文献1参照)、CGHの例として、干渉縞の強度分布を記録したバイナリホログラムであって、再生像が水平方向の視差のみを持ち、上方からの白色光で観察される場合について、その概要を説明すると、図12に示すように、ステップST1で、CGH化する物体(原画像10)の形状が定義される。次いで、ステップST2で、物体、CGH面(記録媒体20の記録面)、参照光の空間配置が定義される。次いで、ステップST3で、物体は、水平面でのスライスにより垂直方向に上記の分割領域に分割され、さらにスライス面上で点光源の集合(点光源アレイ)に置き換えられる。そして、ステップST4で、これらの空間配置に基き、CGH面上に定義された分割領域の各サンプル点において、物体を構成する各点光源から到達する光と参照光との干渉縞の強度が演算により求められ、干渉縞データが得られる。次に、ステップST5で、得られた干渉縞データは量子化された後、ステップST6で、EB描画用矩形データに変換され、ステップST7で、EB描画装置により媒体に記録され、CGHが得られる。
【0050】
なお、以上の方法において、分割領域上の演算点Qでの物体光の振幅と位相の記録には、上記で説明したような参照光との干渉による干渉縞で記録する方法以外に、特許文献2、3に記載されているように1面に溝を持った3次元セルの溝の深さで位相を、溝の幅で振幅を記録する方法でもよい。
【0051】
あるいは、非特許文献1に記載されたA.W.Lohmann等の方法、Leeの方法等で振幅と位相を記録するようにしてもよい。
【0052】
また、原画像10の個々の分割領域に配置する点光源アレイの色としても、上記のようにRGBの3原色に限定されず、他の色(波長)の組み合わせでもよく、さらには、3色ではなく、2色あるいは4色以上であってもよい。2色とする場合は、3色と比較してデータ量を減らすことができる。4色以上の場合は、3色と比較して色域を広げることができる。
【0053】
次に、本発明のような計算機合成ホログラムの解像度の高いカラー化の手法を他のタイプの計算機合成ホログラムに適用することもできる。
【0054】
まず、特許文献4で提案された計算機合成ホログラムに適用する場合を説明する。図13に示すように、z軸に沿ってプラス方向に仮想点光源群11、CGH12、観察者Mの順に配置し、y軸に垂直な多数のスライス面で仮想点光源群11とCGH12を区切り、そのスライス面内に仮想点光源Qi (x1 ,y1 ,z1 )からCGH12への物体波の入射が制限されている。そのスライス面内で、仮想点光源Qi (x1 ,y1 ,z1 )から視差1方向に出る物体波1には、第1の画像I1 例えば文字“A”の画素位置iでの濃度を振幅として持った波とし、視差2方向に出る物体波1には、第2の画像I2 例えば文字“B”の画素位置iでの濃度を振幅として持った波とし、同様に、視差8方向に出る物体波1には、第8の画像I8 例えば文字“H”の画素位置iでの濃度を振幅として持った波とし、これらの“A”、“B”、・・・、“H”の画素位置iでの濃度を視差方向に応じて同時に持った物体波1を合成する。その物体波1の位相と振幅をホログラフィックに記録することにより、視差方向に応じて異なる画像I1 、I2 、・・・、Im が選択的に再生可能なCGH12が得られる。
【0055】
すなわち、ホログラムの観察側と反対側に空間的に仮想点光源群が設定され、かつ、仮想点光源群の面とホログラムの面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、スライス面内の仮想点光源群の各々の仮想点光源からそのスライス面内で観察側へ発散する発散光の放射輝度角度分布が角度分割されて、それぞれの分割角度内では仮想点光源群の面に位置する別々の画像のその仮想点光源位置での画素の濃度あるいはその濃度と一定の関係にある値に等しい振幅の点からそのスライス面内で発散する発散光に等しいものに設定されてなる発散光が物体光として仮想点光源群の発散光入射側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムである。
【0056】
また、特許文献4で提案されているもう1つの計算機合成ホログラムは、図14に示すように、z軸に沿ってプラス方向にCGH12、仮想集光点群13、観察者Mの順に配置し、y軸に垂直な多数のスライス面でCGH12と仮想集光点群13を区切り、そのスライス面内にCGH12から仮想集光点Qi (x1 ,y1 ,z1 )に物体波の入射が制限されている。そのスライス面内で、仮想集光点Qi (x1 ,y1 ,z1 )に一旦収束して視差1方向に出る物体波1には、第1の画像I1 例えば文字“A”の画素位置iでの濃度を振幅として持った波とし、視差2方向に出る物体波1には、第2の画像I2 例えば文字“B”の画素位置iでの濃度を振幅として持った波とし、同様に、視差8方向に出る物体波1には、第8の画像I8 例えば文字“H”の画素位置iでの濃度を振幅として持った波とし、これらの“A”、“B”、・・・、“H”の画素位置iでの濃度を視差方向に応じて同時に持った物体波1を合成する。その物体波1の位相と振幅をホログラフィックに記録することにより、視差方向に応じて異なる画像I1 、I2 、・・・、Im がCGH12が得られる。
【0057】
すなわち、ホログラムの観察側に空間的に仮想集光点群が設定され、かつ、ホログラムの面と仮想集光点群の面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、スライス面内の仮想集光点群の各々の仮想集光点に観察側と反対側からそのスライス面内で入射する収束光の輝度角度分布が角度分割されて、それぞれの分割角度内では仮想集光点群の面に位置する別々の画像のその仮想集光点位置での画素の濃度あるいはその濃度と一定の関係にある値に等しい振幅の点に収束する収束光に等しいものに設定されてなる収束光が物体光として仮想集光点群の収束光入射側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムである。
【0058】
このような特許文献4で提案されている計算機合成ホログラムにおいて、フルカラーの画像を記録・再生可能にするには、図1〜図4で説明したように、CGH12の面が各スライス面と交差する領域をそのスライス面に平行な3つの分割領域に分割し、一方、仮想点光源Qi (x1 ,y1 ,z1 )からはRGB3色の光を発散させてR、G、Bの色成分をその3つの分割領域に別々に入射させて記録するか、仮想集光点Qi (x1 ,y1 ,z1 )にはCGH12のその3つの分割領域からそれぞれR、G、Bの色成分が集光するようにしてもよいが、この方式では、図1〜図4の計算機合成ホログラムと同様に、微細な構造を持つ物体を記録媒体に記録しようとした場合、記録媒体上に設定する単位領域の幅を決めると、解像度はその幅に限定されることになる。
【0059】
そこで、y軸に垂直なスライス面の密度を3倍にして、その多数のスライス面にスライス面に直交する方向に周期的にRGBを割り当て、Rのスライス面内では、仮想点光源から発散する光あるいは仮想集光点へ集光する光を色Rとし、Gのスライス面内では、仮想点光源から発散する光あるいは仮想集光点へ集光する光を色Gとし、Bのスライス面内では、仮想点光源から発散する光あるいは仮想集光点へ集光する光を色Bとすることで、図1〜図4の計算機合成ホログラムと同様に、再生像の解像度は、仮想点光源群11あるいは仮想集光点群13に設定する点光源あるいは集光点の密度によって決まるので、CGH12の面上での分割領域の寸法(幅)を同じとするなら、点光源あるいは集光点の密度が3倍になっている分、解像度は高くなり微細な構造を持つ物体を記録することが可能になる。ただし、色パターンの再現性については同程度である。
【0060】
以上の物体光の複素振幅が記録され観察方向に応じて複数の画像が選択的に再生可能な計算機合成ホログラムは、ホログラムの観察側と反対側に空間的に仮想点光源群が設定され、かつ、仮想点光源群の面とホログラムの面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、その多数のスライス面にスライス面に直交する方向に周期的に複数の異なる波長の光が割り当てられ、各スライス面内では、仮想点光源から発散する光の波長をその割り当てられた波長とし、スライス面内の仮想点光源群の各々の仮想点光源からそのスライス面内で観察側へ発散する発散光の放射輝度角度分布が角度分割されて、それぞれの分割角度内では仮想点光源群の面に位置する別々の画像のその仮想点光源位置での画素の対応する波長の濃度あるいはその濃度と一定の関係にある値に等しい振幅の点からそのスライス面内で発散する発散光に等しいものに設定されてなる発散光が物体光として仮想点光源群の発散光入射側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムとなる。
【0061】
もう1つの物体光の複素振幅が記録され観察方向に応じて複数の画像が選択的に再生可能な計算機合成ホログラムは、ホログラムの観察側に空間的に仮想集光点群が設定され、かつ、ホログラムの面と仮想集光点群の面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、その多数のスライス面にスライス面に直交する方向に周期的に複数の異なる波長の光が割り当てられ、各スライス面内では、仮想集光点に集光する光の波長をその割り当てられた波長とし、スライス面内の仮想集光点群の各々の仮想集光点に観察側と反対側からそのスライス面内で入射する収束光の輝度角度分布が角度分割されて、それぞれの分割角度内では仮想集光点群の面に位置する別々の画像のその仮想集光点位置での画素の対応する波長の濃度あるいはその濃度と一定の関係にある値に等しい振幅の点に収束する収束光に等しいものに設定されてなる収束光が物体光として仮想集光点群の収束光入射側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムとなる。
【0062】
次に、特許文献5で提案された計算機合成ホログラムに適用する場合を説明する。図15に示すように、z軸に沿ってプラス方向に仮想点光源群11、物体100、CGH12、観察者Mの順に配置し、y軸に垂直な多数のスライス面で仮想点光源群11と物体100とCGH12を区切り、そのスライス面内に仮想点光源Qi (x1 ,y1 ,z1 )からCGH12への物体波の入射が制限されている。そのスライス面内で、CGH12として記録再生可能にする3次元物体100の観察側と反対側に多数の仮想点光源Qi (x1 ,y1 ,z1 )を設定し、各仮想点光源Qi から発散する発散光の輝度角度分布を、観察側からその3次元物体100を通してその仮想点光源Qi を見たときのその3次元物体100表面の輝度角度分布と等しいものに設定し、このような仮想点光源Qi からの発散光をCGH12の面で相互に重畳させて、その重畳された位相と振幅をホログラフィックに記録することにより、3次元物体100を再生可能なCGH12が得られる。
【0063】
すなわち、ホログラムの観察側と反対側に空間的に仮想点光源群が設定され、かつ、仮想点光源群の面とホログラムの面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、スライス面内の仮想点光源群の各々の仮想点光源からそのスライス面内で観察側へ発散する発散光の輝度角度分布が、観察側から当該仮想点光源をそのスライス面内で見たときの記録すべき物体表面の輝度角度分布と等しいものに設定されており、かつ、仮想点光源各々から発散する発散光が相互に重畳して物体光として仮想点光源群の観察側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムである。
【0064】
また、特許文献5で提案されているもう1つの計算機合成ホログラムは、図16に示すように、z軸に沿ってプラス方向にCGH12、物体100、仮想集光点群13、観察者Mの順に配置し、y軸に垂直な多数のスライス面でCGH12と物体100と仮想集光点群13を区切り、そのスライス面内にCGH12から仮想集光点Qi (x1 ,y1 ,z1 )に物体波の入射が制限されている。そのスライス面内で、CGH12として記録再生可能にする3次元物体100の観察側に多数の仮想集光点Qi (x1 ,y1 ,z1 )を設定し、各仮想集光点Qi に物体側から入射する収束光の輝度角度分布を、観察側から仮想集光点Qi を通してその3次元物体100を見たときのその3次元物体100表面の輝度角度分布と等しいものに設定し、このような仮想集光点Qi に入射する収束光をCGH12の面で相互に重畳させて、その重畳された位相と振幅をホログラフィックに記録することにより、3次元物体100を再生可能なCGH12が得られる。
【0065】
すなわち、ホログラムの観察側に空間的に仮想集光点群が設定され、かつ、ホログラムの面と仮想集光点群の面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、スライス面内の仮想集光点群の各々の仮想集光点に観察側と反対側からそのスライス面内で入射する収束光の輝度角度分布が、当該仮想集光点を通して観察側からそのスライス面内で見たときの記録すべき物体表面の輝度角度分布と等しいものに設定されており、かつ、仮想集光点各々に入射する収束光が相互に重畳して物体光として仮想集光点群の観察側と反対側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムである。
【0066】
この場合も、図1〜図4の場合と同様に、y軸に垂直なスライス面の密度を3倍にして、その多数のスライス面にスライス面に直交する方向に周期的にRGBを割り当て、Rのスライス面内では、仮想点光源から発散する光あるいは仮想集光点へ集光する光を色Rとし、Gのスライス面内では、仮想点光源から発散する光あるいは仮想集光点へ集光する光を色Gとし、Bのスライス面内では、仮想点光源から発散する光あるいは仮想集光点へ集光する光を色Bとすることで、図1〜図4の計算機合成ホログラムと同様に、再生像の解像度は、仮想点光源群11あるいは仮想集光点群13に設定する点光源あるいは集光点の密度によって決まるので、CGH12の面上での分割領域の寸法(幅)を同じとするなら、点光源あるいは集光点の密度が3倍になっている分、解像度は高くなり微細な構造を持つ物体を記録することが可能になる。ただし、色パターンの再現性については同程度である。
【0067】
以上の物体光の複素振幅が記録され立体物が再生可能な計算機合成ホログラムは、ホログラムの観察側と反対側に空間的に仮想点光源群が設定され、かつ、仮想点光源群の面とホログラムの面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、その多数のスライス面にスライス面に直交する方向に周期的に複数の異なる波長の光が割り当てられ、各スライス面内では、仮想点光源から発散する光の波長をその割り当てられた波長とし、スライス面内の仮想点光源群の各々の仮想点光源からそのスライス面内で観察側へ発散する発散光の輝度角度分布が、観察側から当該仮想点光源をそのスライス面内で見たときの記録すべき物体表面の対応する波長の輝度角度分布と等しいものに設定されており、かつ、仮想点光源各々から発散する発散光が相互に重畳して物体光として仮想点光源群の観察側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムとなる。
【0068】
もう1つの物体光の複素振幅が記録され立体物が再生可能な計算機合成ホログラムは、ホログラムの観察側に空間的に仮想集光点群が設定され、かつ、ホログラムの面と仮想集光点群の面を横切る平行な多数のスライス面が設定され、その多数のスライス面にスライス面に直交する方向に周期的に複数の異なる波長の光が割り当てられ、各スライス面内では、仮想集光点に集光する光の波長をその割り当てられた波長とし、スライス面内の仮想集光点群の各々の仮想集光点に観察側と反対側からそのスライス面内で入射する収束光の輝度角度分布が、当該仮想集光点を通して観察側からそのスライス面内で見たときの記録すべき物体表面の対応する波長の輝度角度分布と等しいものに設定されており、かつ、仮想集光点各々に入射する収束光が相互に重畳して物体光として仮想集光点群の観察側と反対側の何れかの位置で記録されてなる計算機合成ホログラムとなる。
【0069】
以上、本発明の計算機合成ホログラム及びその作製方法を実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されず種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明による計算機合成ホログラムの記録方法の概念の1実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の演算処理の概念を説明するための上面図である。
【図3】図1、図2の本発明の計算機合成ホログラムの作製方法を模式的に示す図である。
【図4】図1の方法で記録されたカラー原画像を再生している状態を示す側面図である。
【図5】原画像上のRGB共通のサンプリング点を示す図である。
【図6】図5のサンプリング点を平行移動したRGBそれぞれのサンプリング点を示す図である。
【図7】原画像上のRGBそれぞれの線光源を示す図である。
【図8】原画像上の線光源からの物体光を記録面20に記録する方法を示す斜視図である。
【図9】点光源から照射される物体光の進行方向を示す図である。
【図10】線光源から照射される物体光の進行方向を示す図である。
【図11】線光源からの物体光と参照光との干渉縞を記録した際の再生光の進行方向を示す側面図である。
【図12】本発明による計算機合成ホログラムの作製過程の概要を説明するためのフロー図である。
【図13】本発明の手法が適用可能な他のタイプの計算機合成ホログラムの原理を説明するための図である。
【図14】本発明の手法が適用可能な他のタイプの計算機合成ホログラムの原理を説明するための図である。
【図15】本発明の手法が適用可能な他のタイプの計算機合成ホログラムの原理を説明するための図である。
【図16】本発明の手法が適用可能な他のタイプの計算機合成ホログラムの原理を説明するための図である。
【図17】従来の計算機合成ホログラムの記録方法を示す斜視図である。
【図18】従来例において記録媒体の各単位領域を3分割して分割領域を形成する様子を示す平面図である。
【図19】図17の演算処理の概念を説明するための上面図である。
【図20】図17の方法で記録されたカラー原画像を再生している状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0071】
10…原画像
20…記録媒体(記録面)
100…物体
A1r,A1g,A1b,A2r,A2g,A2b,…,Amr,Amg,Amb,…,AMr,AMg,AMb…原画像の分割領域
C1r,C1g,C1b,C2r,C2g,C2b,…,Cmr,Cmg,Cmb,…,CMr,CMg,CMb…記録媒体の分割領域
Pmr1〜PmrN…色Rの光を発する点光源
Pmg1〜PmgN…色Gの光を発する点光源
Pmb1〜PmbN…色Bの光を発する点光源
Q…演算点
Omr1〜OmrN…色Rの物体光
Omg1〜OmgN…色Gの物体光
Omb1〜OmbN…色Bの物体光
Lθmr…参照光
Lw…白色照明光
P1r(P1r1,…,P1ri,…,P1rNの集合)…色Rの光を発する点光源
P1g(P1g1,…,P1gi,…,P1gNの集合)…色Gの光を発する点光源
P1b(P1b1,…,P1bi,…,P1bNの集合)…色Bの光を発する点光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機を用いた演算を利用して所定の記録媒体上に複数の波長により表現されたカラー原画像の振幅情報と位相情報を記録した計算機合成ホログラムにおいて、
ホログラムの記録面上に多数の平行な切断面によって水平方向に分割することで多数の線状の分割領域が設定され、
多数の分割領域を横断する方向に周期的に異なる波長に対応する振幅情報と位相情報とが記録されており、
所定の照明により再生した場合に、各分割領域に記録された振幅情報と位相情報とから回折された周期的に異なる波長の再生光が、前記ホログラム記録面上の前記各分割領域を通ってそれぞれ平行な平面内を進行するように構成されていることを特徴とする計算機合成ホログラム。
【請求項2】
前記再生光は、前記ホログラム記録面に直交する平面内を進行するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の計算機合成ホログラム。
【請求項3】
同一の分割領域に属する個々の点には、原画像の同一部分に関する情報が記録されており、異なる分割領域に属する個々の点には、原画像の対応する異なる部分に関する情報が記録されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の計算機合成ホログラム。
【請求項4】
各分割領域に記録された振幅情報と位相情報が物体光と参照光との干渉縞として記録されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の計算機合成ホログラム。
【請求項5】
各分割領域に記録された振幅情報と位相情報が、溝の深さで位相を、溝の幅で振幅を記録した1面に溝を持った3次元セルとして記録されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の計算機合成ホログラム。
【請求項6】
分割領域に記録されている周期的に異なる波長が3つであり、それぞれ赤色、緑色、青色の波長であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の計算機合成ホログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−86145(P2009−86145A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−253800(P2007−253800)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】