説明

記憶装置及びプローブ駆動方法

【課題】
記録媒体とプローブ間の摩擦力を低減することが可能な記憶装置及びプローブ駆動方法
を提供する。
【解決手段】
実施形態の記憶装置は、信号を記憶する記録媒体と、前記記録媒体に対して第1方向に
離間して設けられ、前記第1方向と略直交する第2方向に回動軸を有する第1部材と、前
記第1部材に設けられ、前記第1方向及び前記第2方向に略直交する第3方向に突出する
プローブと、前記回動軸周りに前記第1部材を回動し、前記プローブと前記記録媒体とを
接触させる駆動部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、記憶装置及びプローブ駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のプローブを用いて、記録媒体に対してデータを記録再生する記憶装置では、記録
再生の際に、記録媒体とプローブとが接触する。この接触状態において記録媒体の平面内
に沿ってプローブが移動する際に、記録媒体とプローブ間には摩擦力が生じる。この摩擦
力は、記録媒体と接触しているプローブの数に応じて大きくなる。
【0003】
そこで、全てのプローブを同時に駆動し、記録媒体に接触させるのではなく、個々のプ
ローブを駆動し、記録再生に必要となるプローブのみを記録媒体に接触させる記憶装置が
提案されている。
【0004】
しかしながら、高速な記録再生を実現するためには、複数のプローブを同時に用いて記
録再生することが好ましく、個々のプローブを独立して駆動することのメリットは少ない
。また、個々のプローブを独立して駆動するためには、記憶装置の構造が複雑になってし
まうことが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報2009−0168636号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
記録媒体とプローブ間の摩擦力を低減することが可能な記憶装置及びプローブ駆動方法
を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の記憶装置は、信号を記憶する記録媒体と、前記記録媒体に対して第1方向に
離間して設けられ、前記第1方向と略直交する第2方向に回動軸を有する第1部材と、前
記第1部材に設けられ、前記第1方向及び前記第2方向に略直交する第3方向に突出する
プローブと、前記回動軸周りに前記第1部材を回動し、前記プローブと前記記録媒体とを
接触させる駆動部とを備える。
【0008】
実施形態のプローブ駆動方法は、前記駆動部が、前記回動軸周りに前記第1部材を回動
し、前記プローブと前記記録媒体とを接触させるステップを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態の記憶装置の概略図。
【図2】実施形態の記憶装置に用いるアクチュエータの構成図。
【図3】実施形態の記憶装置の断面図(図2のA−A断面)。
【図4】実施形態の記憶装置に用いるプローブユニットの構成図。
【図5】実施形態の記憶装置に用いるプローブユニットの断面図(図4のC−C断面)。
【図6】実施形態の記憶装置に用いる制御部の動作を説明する図(z軸駆動)。
【図7】実施形態の記憶装置に用いる制御部の動作を説明する図(プローブ衝突防止時)。
【図8】実施形態の記憶装置に用いる制御部の動作を説明する図(x、y軸駆動)。
【図9】実施形態の記憶装置に用いるプローブユニットの第一の変形例を示す図。
【図10】実施形態の記憶装置に用いるプローブユニットの第二の変形例を示す図。
【図11】実施形態の記憶装置に用いるプローブユニットの製造プロセスを説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための実施形態について説明する。
【0011】
図1乃至図3を参照して、本実施形態に係る記憶装置100の構成について詳細に説明
する。
【0012】
図1は、実施形態の記憶装置100の概略図である。なお、図1(a)は記憶装置10
0の全体を示す図、図1(b)は図1(a)におけるプローブユニット102の裏面を示す
図である。
【0013】
図1に示す記憶装置100は、データ(信号)を保持可能な記録媒体103と、記録媒
体103との間でデータの書き込みと読み出し(以下、記録再生)を行う複数のプローブ
101を有するプローブユニット102と、プローブ101に対して記録媒体103を相
対的に移動するためのアクチュエータ200と、記録再生及びアクチュエータ200の駆
動を制御する制御部500とを備える。
【0014】
プローブユニット102の複数のプローブ101は、第1空間を隔てて記録媒体103
と対向するように配置している。記録再生を行わない非記録再生時には、プローブ101
と記録媒体103とは離間した状態にある。記録再生時には、アクチュエータ200がプ
ローブ101を移動させ、プローブ101を記録媒体103に接触させる。
【0015】
この接触した状態で、たとえば、プローブ101の電極に所定の電圧を加えることによ
り、プローブ101と記録媒体103との間でデータの記録再生を行う。
【0016】
記録媒体103は、例えば電気的な状態変化をデータとして保持することのできる薄膜
である。ここでは、記録媒体103として強誘電体材料の薄膜を用いる。
【0017】
本実施形態では、アクチュエータ200として、2軸(x、y軸)に駆動可能な静電駆動
型アクチュエータ(第1駆動部204及び第2駆動部205)、1軸(z軸)に駆動可能
な静電駆動型アクチュエータ(第3駆動部206)を用いる。なお、ここでは、両者を含
めてアクチュエータ200と呼ぶことにする。
【0018】
図2は、アクチュエータ200の2軸駆動に係る部分の構成を示す図である。
【0019】
アクチュエータ200は、記録媒体103を載置するための矩形状平板のステージ(可
動部)201と、ステージ201の周囲に第2空間を介して設けられる可動フレーム20
2と、可動フレーム202の周囲に第3空間を介して設けられる固定フレーム203とを
備える。
【0020】
固定フレーム203は、導電性の支持部材213、214、215及び216により可
動フレーム202を支持している。また、可動フレーム202は、導電性の支持部材21
7によりステージ201を支持している。
【0021】
ステージ201の平面が図2に示すxy平面に沿って配置されるものとすると、第2空間
には第1駆動部204が設けられて、ステージ201を図2中x軸方向に移動する。第3
空間には第2駆動部205が設けられて、ステージ201及び可動フレーム202を一体
にy軸方向に移動する。
【0022】
第1駆動部204は、それぞれ同一の矩形状で等間隔に一列(y軸方向)に配置してい
る複数の第1可動部電極207及び複数の第1固定部電極208を備える。ステージ20
1の側面に設けられる複数の第1可動部電極207と、可動フレーム202の側面に設け
られる複数の第1固定部電極208とは、それぞれ第2空間内でx軸方向に突出している
。この場合、第1可変部電極207と第1固定部電極208とは、電極間隔の1/2だけ
y軸方向にずれて、互いに噛み合う配置が好ましい。
【0023】
この第1駆動部204は、隣接する第1可動部電極207と第1固定部電極208との
間に働くx軸方向の静電力によりステージ201をx軸方向に移動する。
【0024】
第2駆動部205は、それぞれ同一の矩形状で等間隔に一列(x軸方向)に配置してい
る複数の第2可動部電極209及び複数の第2固定部電極210を備える。可動フレーム
の側面に設けられる複数の第2可動部電極209と、固定フレーム203の側面に設けら
れる複数の第2固定部電極210とは、それぞれ第3空間内でy軸方向に突出している。
この場合、第2可動部電極209と第2固定部電極210とは、電極間隔の1/2だけx
軸方向にずれて、互いに噛み合う配置が好ましい。
【0025】
この第2駆動部205は、隣接する第2可動部電極209と第2固定部電極210との
間に働くy軸方向の静電力によりステージ201及び可動フレーム202を一体にy軸方向
に移動する。
【0026】
なお、本実施形態においては、ステージ201、可動フレーム202、固定フレーム2
03は具体的には、第1可動部電極207と第1固定部電極208とが電気的に絶縁関係
に、第2可動部電極209と第2固定部電極210とが電気的に絶縁関係となるように構
成される。
【0027】
図3は、図2におけるA−A断面図である。
【0028】
詳細は後述するが、図3に示すように、プローブユニット102には、第3駆動部20
6が設けられて、ステージ201をz軸方向に移動する。これによりプローブ101と記
録媒体103とを接触状態にする。
【0029】
キャップ105は、例えばボンディング等によりアクチュエータ200に接合され、記
録媒体103をパッケージしている。このキャップ105はアクチュエータ200と電気
的に絶縁関係であることが好ましい。
【0030】
位置センサ104は、ステージ201の記録媒体103を設ける面の裏面の四隅に設け
る平板電極と、キャップ105の四隅に設けられる平板電極とがそれぞれ互いに向かい合
わせて配置される。そして、この平板電極間の対向面積あるいは距離等の変化により生じ
る静電容量の変化により、ステージ201のx、y軸方向の変位を計測する。
【0031】
制御部500は、前述のようにアクチュエータ200の第1駆動部204、第2駆動部
205、第3駆動部206の駆動を制御する。また、プローブ101を介して記録媒体1
03に対して電圧を印加することで、データの記録再生を行う。この制御部500は、例
えばMPU等の演算処理装置により実現される。
【0032】
なお、第1駆動部204、第2駆動部205及び第3駆動部206としては、静電駆動
型のアクチュエータに限定されるものではなく、例えば磁気駆動型や圧電駆動型のアクチ
ュエータなどを用いることも可能である。
【0033】

(プローブユニットの構成)
以下、図4及び図5を参照して、プローブユニット102の構成及び第3駆動部206
の構成について詳細に説明する。
【0034】
図4はプローブユニット102の構成図である。図4(a)は、プローブユニット10
2の上面図、図4(b)はプローブユニット102の下面図である。
【0035】
プローブユニット102は、基板218、軸部材219を中心に回動可能に基板218
に設けられる梁部材220、梁部材220に複数設けられるプローブ101を備える。
【0036】
基板218は、記録媒体103と対向する面に凹みを有する凹状の部材である。なおこ
の凹みは、xy平面内において記録媒体103と中心軸を一致させ、xy平面内の面積は記録
媒体103と同程度のサイズであることが好ましい。また、xy平面内の形状も記録媒体1
03の形状と同一であることが好ましい。
【0037】
基板218の凹みを形成するために、本実施形態では図5に示すように、基板218は
、底面となる平板部材218aと、平板部材218a上に設けられ、基板218が有する凹
みの側面となる側面部材218bとを備えている。
【0038】
なお、以下の説明においては、図4に示すように側面部材218bの側面のうちx軸方向
に略垂直な両側面を、側面D及び側面Eと定義する。
【0039】
梁部材220は、側面部材218bの側面D及び側面Eに設けられる軸部材219にx軸方
向の両端を支持され、x軸方向に延伸する矩形状の部材である。この軸部材219及び梁
部材220は、y軸方向に沿って複数設けられる(図4の例ではk個)。
【0040】
また、図4(b)に示すように、各々の梁部材220の平板部材218aに対向する面に
は、y軸方向の両端に、2つの第1平板電極211がx軸方向に沿って設けられる。この2
つの第1平板電極211はy軸方向に離間している。
【0041】
また、ここでは、梁部材220のy軸方向に略垂直な両側面を、側面F及びGと定義する

【0042】
なお、梁部材220を支持する軸部材219は、弾性的なねじりが可能であり、第3駆
動部206が梁部材220に対して軸部材周りのモーメントを与えることで、梁部材22
0は、この軸部材219を中心に図中矢印方向に回動することができる。
【0043】
プローブ101は、梁部材220の側面F及びGに設けられ、y軸方向に延伸している。
さらに、それぞれの側面には、x軸方向に沿って複数のプローブ101が設けられる。
【0044】
図4の例では、1つの梁部材220の片側にn本のプローブ101、すなわち両側あわ
せて計2nのプローブ101が設けられている。
【0045】
図5は、図4(a)におけるC−C断面図である。
【0046】
第3駆動部206は、前述の梁部材220に設けられる2つの第1平板電極211と、
この第1平板電極211にそれぞれ対向して、基板218の凹みの底面に設けられる第2
平板電極212とを備える。
【0047】
第3駆動部206は、第1平板電極211及び第2平板電極212間に働くz軸方向の
静電力により、プローブ101をz軸方向へ移動する。より具体的には、図中の左右のい
ずれか一方の電極間に静電力を発生させる。このとき、梁部材220は、軸部材219を
中心として、図中矢印方向に回動することになる。
【0048】
その結果、図中の左右のプローブ101はそれぞれz軸の異なる方向に移動することで
、z軸正の方向(記録媒体103に向かう方向)に移動するプローブ101が記録媒体1
03に接触する。
【0049】
なお、以下の説明では、図中左側の両平板電極を、第1平板電極211a、第2平板電
極212a、図中右側の両平板電極を、第1平板電極211b、第2平板電極212bと定
義する。これらの平板電極211a、211b、212a、212bは、それぞれ異なる電圧
を印加できるよう、図示しない配線によりそれぞれ独立して制御部500に接続されてい
る。
【0050】
図11は、プローブユニット102の製造プロセスを説明するための図である。
【0051】
まず、図11(a)に示す板状の部材の平面(表面)において、パターンで示す側面部
材218bに相当する部分にフォトリソグラフィ等の技術を用いてレジスト等のマスクを
施す。その後、マスク以外の部分、すなわちパターンで示す部分以外の白い部分をDRIE等
のエッチングにより貫通させる。
【0052】
このようにして、図11(b)の断面図に示すように、側面部材218b、軸部材219
、梁部材220、プローブ101がそれぞれ同一の高さで、かつ一体に形成される部材を
得る。
【0053】
次に、図11(c)に示す部材の平面(裏面)において、パターンで示す側面部材21
8bに相当する部分にフォトリソグラフィ等の技術を用いてレジスト等のマスクを施す。
その後、マスク以外の部分をDRIE等のエッチングにより所定の深さまで除去する。
【0054】
このようにして、図11(d)の断面図に示すように、側面部材218b、軸部材219
、梁部材220、プローブ101が一体に形成される部材を得る。
【0055】
そして、この部材の裏面と、平板部材218aとをボンディング等により結合させるこ
とで、図11(e)に示すプローブユニット102を得る。
【0056】
なお、第3駆動部206の第1平板電極211及び第2平板電極212に関しては、一
般的な金属薄膜の蒸着等の技術を用いて作製することができるので、ここでの説明は省略
する。
【0057】

(制御部の動作)
以下、図6乃至図8を参照して、制御部500の動作について説明する。
【0058】
(z軸方向の駆動)
図6は、制御部500の動作を説明する図である。
【0059】
図6(a)は、制御部500が、第1平板電極211aに対して電圧V1、第2平板電極2
12aに対して電圧V2を印加する様子を示している(ただし、V1≠V2)。
【0060】
このとき、第1平板電極211aと第2平板電極212aとの間には、電位差(V1−V2)
による静電力(引力)が発生する。この静電力により、梁部材220は軸部材219を中
心に、図6(b)の矢印で示す方向に回動する。
【0061】
これにより、図中右側のプローブ101はz軸正の方向に移動し、記録媒体103に接
触する。一方図中左側のプローブ101はz軸負の方向に移動し、記録媒体103から離
れる。
【0062】
図6(c)は、制御部500が、第1平板電極211bに対して電圧V1、第2平板電極2
12bに対して電圧V2を印加する様子を示している(ただし、V1≠V2)。
【0063】
このとき、第1平板電極211bと第2平板電極212bとの間には、電位差(V1−V2)
による静電力(引力)が発生する。この静電力により、梁部材220は軸部材219を中
心に、図6(d)の矢印で示す方向に回動する。
【0064】
これにより、図中左側のプローブ101はz軸正の方向に移動し、記録媒体103に接
触する。一方図中右側のプローブ101はz軸負の方向に移動し、記録媒体103から離
れる。
【0065】
なお、制御部500は、第1平板電極211aと第2平板電極212aとの間、及び第1
平板電極211bと第2平板電極212bとの間に対して同時に電位差を与えることもでき
る。
【0066】
このときには、第1平板電極211aと第2平板電極212aとの間に発生する引力と、
第1平板電極211bと第2平板電極212bとの間に発生する引力との大小関係により、
梁部材220を図6(b)または(d)のいずれかに回動することができる。
【0067】
また、図7は、記憶装置100が動作しない非記録再生時等に、制御部500が、第1
平板電極211a及び211bに対して電圧V1、第2平板電極212a、212bに対して電
圧V2を印加する様子を示している。
【0068】
このとき、第1平板電極211aと第2平板電極212aとの間、及び第1平板電極21
1bと第2平板電極212bとの間には、それぞれ電位差(V1−V2)による静電力(引力)
が発生する。この静電力により、梁部材220は軸部材219により支持され、図7の矢
印で示す方向(z軸負の方向)に並進移動する。
【0069】
これにより、図中右側及び左側の両プローブ101はともにz軸負の方向に移動し、記
録媒体103から離れることで、プローブ101の記録媒体103との予期せぬ接触を防
ぐことができる。
【0070】

(x及びy軸駆動)
制御部500は、上記のようにステージ201をz軸方向へ駆動するとともに、x軸及び
y軸方向への駆動を行うことで記録媒体103の平面内でのプローブ101の位置決めを
行う。
【0071】
図8(a)は、図2におけるA−A断面の図である。
【0072】
制御部500は、例えば電極パッド(図示せず)等を介して、第1可動部電極207a
及び第1可動部電極207bに対して電圧V1を印加する。また、同時に第1固定部電極2
08aに対して電圧V2、第1固定部電極208bに対して電圧V3を印加する(ただし、V2>
V1、V3>V1)。
【0073】
このとき、V2>V3であれば、|V2−V1|>|V3−V1|となるために、第1可動部電極2
07aと第1固定部電極208aとの間に生じるx軸方向の静電力が、第1可動部電極20
7bと第1固定部電極208bとの間に生じるx軸方向の静電力を上回ることで、ステージ
201はx軸正の方向へ移動する。
【0074】
逆に、V3>V2であれば、|V3−V1|>|V2−V1|となるために、第1可動部電極207
bと第1固定部電極208bとの間に生じるx軸方向の静電力が、第1可動部電極207aと
第1固定部電極208aとの間に生じるx軸方向の静電力を上回ることで、ステージ201
はx軸負の方向へ移動する。
【0075】
図8(b)は、図2におけるB−B断面の図である。
【0076】
制御部500は、例えば電極パッド(図示せず)等を介して、第2可動部電極209a
に対して電圧V4を、第2可動部電極209bに対して電圧V5を印加する。また、同時に第
2固定部電極210aに対して電圧V6、第2固定部電極210bに対して電圧V7を印加する
(ただし、V6>V4、V7>V5)。
【0077】
このとき、|V6−V4|>|V7−V5|であれば、第2可動部電極209aと第2固定部電
極210aとの間の静電力が、第2可動部電極209bと第2固定部電極210bとの間の
静電力を上回ることで、ステージ201はy軸正の方向へ移動する。
【0078】
逆に、|V7−V5|>|V6−V4|であれば、第2可動部電極209bと第2固定部電極2
10bとの間の静電力が、第2可動部電極209aと第2固定部電極210aとの間の静電
力を上回ることで、ステージ201はy軸負の方向へ移動する。
【0079】
なお、x軸方向及びy軸方向の駆動量の上限値(すなわち、記録再生エリアのサイズ)は
、各駆動部の櫛歯電極が対向する側面に接触しない範囲内において、さらにプローブ10
1の配列により予め決定することができる。
【0080】
また、具体的な電圧の値としては、制御部500が、位置センサ104が計測するステ
ージ201の変位を入力として、例えば変位の目標値との差が0に収束する方向に算出す
る。
【0081】
(記録再生)
プローブ101及び記録媒体103が接触状態において、ステージ201及びプローブ
101の電極は強誘電体材料の記録媒体103を介して部分的な強誘電キャパシタを形成
する。そして、上記のように、プローブ101の記録媒体103に対する相対的な位置決
めを行うとともにデータの記録再生を行う。
【0082】
具体的には、記録時には、制御部500がプローブ101の記録再生部109を介して
記録媒体103に対して電圧を印加し、記録媒体103に電荷の分極を生じさせることで
データの記録を行う。一方で、再生時には、制御部500がプローブ101の記録再生部
109を介して記録媒体103に対してパルス電圧を印加して、電荷の分極反転により生
じる電流を検出することで、データの再生を行う。
【0083】
この際、複数のプローブ101は各々あるいは同時に、記録媒体103に対して電圧を
印加することでデータの記録再生を行うことができる。
【0084】
なお、記録媒体103としては、金属酸化物等の材料から形成される絶縁性の薄膜を用
いることも可能であるが、この際には、プローブ101が印加する電圧により生じる記録
媒体103の抵抗変化をデータとして記録再生を行うことができる。
【0085】
本実施形態の記憶装置100によれば、制御部500は、1つの梁部材220において
は、2箇所の平板電極に対して電圧を印加することで、n本のプローブ101を同時に駆
動し、記録媒体103に対して接触状態にすることができる。したがって、同様にn本の
プローブ101を駆動する際には、個々のプローブ101を独立して駆動する場合と比較
して、平板電極や配線等をより簡単な構成にすることができる。
【0086】
一方で、制御部500は、最大でk×n本のプローブ101を同時に駆動することで記録
再生の速度を担保し、かつ全てのプローブ101を記録媒体103に対して接触させる場
合に比べて、摩擦力を低減させることができる。これにより、少ない駆動力で記録媒体1
03のxy平面内での移動を可能とするために、より低電力での駆動が可能となる。
【0087】

(第一の変形例)
図9は、第一の実施形態に係るプローブユニット102の第一の変形例を示す図である

【0088】
図9に示すプローブユニット302は、内部が肉抜きされた矩形状の梁部材320を備
える点で、図4のプローブユニット102とは異なる。なお、その他の構成については、
プローブユニット102と同様とし、同一の符号を付している。
【0089】
これにより、梁部材320の軽量化に伴い、記録媒体103とプローブ101とを接触
させるための駆動方向とは反対方向に働く重力の影響を低減することができる。したがっ
て、より低電力でプローブ101をz軸方向へ駆動することが可能となる。
【0090】
(第二の変形例)
図10は、第一の実施形態に係るプローブユニット102の第二の変形例を示す図であ
る。
【0091】
図10に示すプローブユニット402は、x軸方向に略垂直な部材C、D、y軸方向に略垂
直な部材E、Fが枠状に一体に形成されるフレームを、周囲に有する梁部材420を備える
。また、平板電極211は、梁部材420のフレームの部材C及びDに設けられる。なお、
その他の構成については、プローブユニット102と同様とし、同一の符号を付している

【0092】
これにより、図4のプローブユニット102と比べて平板電極211とプローブ101
との距離を大きくすることで、制御部500が平板電極211に電圧を印加する際に、梁
部材420を介してプローブ101に伝熱する熱の影響を低減し、プローブ101が熱に
より変形することを防ぐことができる。
【0093】

以上説明した実施形態の記憶装置によれば、記録媒体とプローブ間の摩擦力を低減する
ことが可能になる。
【0094】
この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図して
いない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の
要旨を逸脱しない範囲で、様々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施
形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された
発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
100・・・記憶装置
101・・・プローブ
102、302、402・・・プローブユニット
103・・・記録媒体
104・・・位置センサ
105・・・キャップ
200・・・アクチュエータ
201・・・ステージ
202・・・可動フレーム
203・・・固定フレーム
204・・・第1駆動部
205・・・第2駆動部
206・・・第3駆動部
207(207a、207b)・・・第1可動部電極
208(208a、208b)・・・第1固定部電極
209(209a、209b)・・・第2可動部電極
210(210a、210b)・・・第2固定部電極
211(211a、211b)・・・第1平板電極
212(212a、212b)・・・第2平板電極
213、214、215、216、217・・・支持部材
218・・・基板
218a・・・平面部材
218b・・・側面部材
219・・・軸部材
220、320、420・・・梁部材
500・・・制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号を記憶する記録媒体と、
前記記録媒体に対して第1方向に離間して設けられ、前記第1方向と略直交する第2方
向に回動軸を有する第1部材と、
前記第1部材に設けられ、前記第1方向及び前記第2方向に略直交する第3方向に突出
するプローブと、
前記回動軸周りに前記第1部材を回動し、前記プローブと前記記録媒体とを接触させる
駆動部と、
を備える記憶装置。
【請求項2】
前記プローブは、前記第3方向の両方向に突出する第1のプローブ及び第2のプローブ
とを含む請求項1に記載の記憶装置。
【請求項3】
前記プローブは、前記第2方向に沿って複数設けられる請求項1または2に記載の記憶
装置。
【請求項4】
前記記録媒体に対向して設けられる基板を備え、
前記駆動部は、前記第1部材に設けられる第1電極と、
前記基板に前記第1電極に対向して設けられる第2電極と、
を備える請求項1乃至3いずれか1項に記載の記憶装置。
【請求項5】
前記第1電極は、前記第1部材の前記第2方向の両端に設けられ、
前記第2電極は、前記基板に前記第1電極に対向して設けられる請求項1乃至4いずれ
か1項に記載の記憶装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか1項に記載の記憶装置におけるプローブ駆動方法であって、
前記駆動部が、前記回動軸周りに前記第1部材を回動し、前記プローブと前記記録媒体
とを接触させるステップを有するプローブ駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−73648(P2013−73648A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211656(P2011−211656)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)