記録紙のカール防止装置

【目的】ロール紙から繰り出される記録紙に帯有されるカール癖の除去が均一化される改良された逆カール付与方式のカール防止装置を提案する。
【構成】記録紙収納ボックス１と、この記録紙収納ボックス１に遊転自在にセットされたロール紙Ｒから記録紙Ｐを繰り出すプラテンローラ２との間に、繰出記録紙Ｐを下向きに押えて逆カールを付与する可動ローラ６を両側支持部材７の長孔８に両端軸部６ａを通して上下動自在に設ける。

【考案の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】
本考案は、記録紙にロール紙を用いるファクシミリ装置等の記録装置で利用される記録紙のカール防止装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
普及型のファクシミリ装置では、記録紙として紙管に長尺の感熱紙を巻き取らせたロール紙を使用するのが一般的であるが、この種の記録装置における共通の課題として、ロール紙から繰り出される記録紙に、ロール紙に巻き取られていた時のカール癖を帯びるという問題点が指摘される。そのため、ロール紙を用いるファクシミリ装置には、ロール紙から繰り出される記録紙の繰出経路に様々なカール防止対策が講じられている。
【０００３】
図５は、ファクシミリ装置の記録紙繰出経路に設置されるカール防止機構の好適な一例を示している。この機構は、記録紙収納ボックス１に遊転自在にセットされたロール紙Ｒから繰り出される記録紙Ｐを、一旦Ｖ型のペーパーガイド（紙押え部材）９により下向きに押え付けてからプラテンローラ２上の印字部３に導き、記録紙排出時にプラテンローラ２で繰り出される記録紙Ｐを張力付加の下でペーパーガイド９の下面を通し、この部分で記録紙Ｐをロール紙Ｒでの巻取方向と逆向きに屈曲させて逆カールを付与することにより、記録紙Ｐに帯有されるカール癖を効果的に除去するようにしたものである。
【０００４】
【考案が解決しようとする課題】
しかし、上記カール防止機構の改善すべき点として、ロール紙Ｒから繰り出される記録紙Ｐにペーパーガイド９から付与される逆カール力がロール紙径によって変動し、これがためにカール除去効果が不均一になる不具合が見られる。すなわち、上記の機構では、ロール紙Ｒの残径が大きくロール紙重量が大きいときには、プラテンローラ２でロール紙Ｒに巻き取られている記録紙Ｐを繰り出す抵抗が大きく、そのため繰出記録紙Ｐが大きな張力付加の下でペーパーガイド９により逆カールが付与されることになり、他方、ロール紙Ｒの残径が小さくロール紙重量が小さいときには、記録紙Ｐの繰出抵抗が小さく、繰出記録紙Ｐが相対的に小さな張力付加の下でペーパーガイド９により逆カールが付与されることになって、カール癖の度合いが強くなるロール紙径の残り少ない段階でカール除去効果が不足する傾向が認められる。
【０００５】
本考案は、上述した新たな技術的課題に対処すべく、ロール紙から繰り出される記録紙に帯有されるカール癖の除去が均一化される改良された逆カール付与方式のカール防止装置を提案するものである。
【０００６】
【課題を解決するための手段】
本考案では、上記の目的を達成するために、記録紙収納ボックスと、この記録紙収納ボックスに遊転自在にセットされたロール紙から記録紙を繰り出すプラテンローラとの間に、繰出記録紙を下向きに押えて逆カールを付与する可動ローラを上下動自在に設けている。
【０００７】
【作用】
この改良されたカール防止装置であれば、ロール紙からプラテンローラにより可動ローラの下面を通して繰り出される記録紙が、該繰出記録紙を上から押える可動ローラの自重とバランスする張力が作用した緊張状態に保たれ、可動ローラの下面を通って繰り出される繰出記録紙に均一に逆カール力を付与することができる。
【０００８】
【実施例】
図１〜図３は本考案に基づくカール防止装置をファクシミリ装置に適用した場合の実施例を図示している。
【０００９】
１は記録紙収納ボックスを示し、該収納ボックス１に長尺記録紙Ｐを捲回したロール紙Ｒが遊転自在にセットされている。記録紙収納ボックス１の記録紙繰り出し側には、その上に圧接される印字部（サーマルヘッド）３との間に繰出端を挾み込んで、記録紙収納ボックス１に遊転自在にセットされたロール紙Ｒから記録紙Ｐを繰り出すプラテンローラ２が設けられ、さらにプラテンローラ２から図示しない本体カバーに開口された記録紙排出口５に至る記録紙排出経路に、印字部３で印字された排出記録紙Ｐout を所定の原稿サイズにカットするためのオートカッター４（４ａ、４ｂ）が配置されている。
【００１０】
この記録装置には、記録紙収納ボックス１とプラテンローラ２との間の記録紙繰出経路に、本考案に係る可動ローラ６が記録紙幅方向に設けられている。この可動ローラ６は、図３に示す如く、その両端軸部６ａを図示しないペーパーガイド等に取り付けられている両側支持部材（この場合、長孔リング）７の長孔８に通して上下動自在に設けられ、記録紙収納ボックス１の上端１ａを乗り越えて繰り出される記録紙Ｐが、該可動ローラ６の下面をＶ字型に迂回してプラテンローラ２上へ導通されるようになっている。
【００１１】
すなわち、記録紙収納ボックス１のロール紙Ｒからプラテンローラ２で繰り出される記録紙Ｐは、この可動ローラ６の自重により下向きに押えられて、記録紙Ｐに作用する張力が、ロール紙残径の変化に伴う繰出抵抗の変化に拘らず、可動ローラ６の自重と釣り合う緊張状態に保たれることになる。そして、記録紙繰出時には、可動ローラ６はその下面に巻き付けられる記録紙Ｐと連れ回りして、その軸部６ａの回りに遊転される。
【００１２】
このように構成されたカール防止装置では、記録紙Ｐの印字排出時には、ロール紙Ｒから繰り出される記録紙Ｐが可動ローラ６の下面を通り、繰出記録紙Ｐが可動ローラ６で下向きに押えられて、ロール紙Ｒに巻き取られていた時と逆向きの逆カールが付与されることになる。この際、ロール紙残径が小さくなって、記録紙Ｐの繰出抵抗が小さくなっても、図２に二点鎖線で示す如く、可動ローラ６が降下して、繰出記録紙Ｐが該記録紙Ｐを上から押える可動ローラ６の自重とバランスする張力（可動ローラ６に巻き付く記録紙張力の垂直合成分とローラ自重とが釣り合う）が作用した緊張状態に保持され、従前の固定ガイドの下面を導通させる場合のように、記録紙張力に緩みを生じることがない。
【００１３】
また、その際には、可動ローラ６の下面を迂回される繰出記録紙Ｐの可動ローラ６に対する巻付角が増大し、繰出記録紙Ｐがより鋭角的にターンされることになるため、これによっても逆カールが増強されることになる。
【００１４】
さらに、可動ローラ６が繰出記録紙Ｐの張力変動によって微振動することに伴い、可動ローラ６から記録紙Ｐの接触面にしごき作用が加わり、この作用によるレベリング効果も期待される。
【００１５】
従って、この可動ローラ６を利用したカール防止装置であれば、上記作用の相乗効果として、記録紙残径の変化に拘らず繰出記録紙Ｐに均一なカール除去効果を付与することができる。そして、条件設定を適宜に選ぶことにより、カール癖が強固になるロール紙径の減少につれて繰出記録紙Ｐに付与する逆カールの度合いを強めることも容易に可能となる。
【００１６】
なお、上記可動ローラ６を用いるカール防止装置を採用した場合では、記録紙Ｐの印字排出動作が停止される受信待機状態が長時間継続する場合などに見られる待機癖の防止にも有効な対策手段となり得る。具体的には、図４に示す如く、プラテンローラ２を正逆回転自在（矢印ａ、ｂ）にすることを条件として、次のような記録紙排出動作を行わしめる。すなわち、記録紙Ｐの初期セット時における余長部や受信原稿１枚分に相当する排出原稿Ｐout をオートカッター４でカットした後においては、その都度、プラテンローラ２を逆転ｂして、繰出記録紙Ｐの先端部をプラテンローラ２上の位置まで引き戻すようにする。こうすると、ロール紙Ｒからプラテンローラ２に至る間の繰出記録紙Ｐが、図示点線のように、可動ローラ６の下方で弛んだ状態に待機され、待機時間が長い場合でも、従前の固定ペーパーガイドの場合のように、下向きに屈曲された姿勢のまま緊張状態に拘束されてカール癖と逆向きの中折れした待機癖を生じることがない。
【００１７】
なお、本考案に係るカール防止装置は、ファクシミリ装置に限らず、記録紙にロール紙を用いる記録装置には、一般的に適用可能である。
【００１８】
【考案の効果】
以上のように、本考案によれば、記録紙収納ボックスにセットされたロール紙からプラテンローラに至る記録紙繰出経路に、逆カール付与機構として、繰出記録紙を下向きに押える可動ローラを上下動自在に設けたことにより、ロール紙残径の変化に影響されず、繰出記録紙に均一なカール除去効果を及ぼすことが可能なカール防止装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】カール防止装置の実施例を示すファクシミリ装置要部の断面概要図である。
【図２】実施例の作用を示す図１の要部拡大図である。
【図３】可動ローラの正面図である。
【図４】実施例装置による待機癖防止動作を示す図１相当の断面概要図である。
【図５】従来例を示すファクシミリ装置要部の断面概略図である。
【符号の説明】
Ｒロール紙
Ｐ繰出記録紙
Ｐout 排出記録紙
１記録紙収納ボックス
１ａボックス上端
２プラテンローラ
３印字部（サーマルヘッド）
４（４ａ、４ｂ）オートカッター
５記録紙排出口
６可動ローラ
６ａ軸部
７支持部材（リング）
８長孔
９Ｖ型ペーパーガイド（紙押え部材）

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項１】記録紙収納ボックスと、この記録紙収納ボックスに遊転自在にセットされたロール紙から記録紙を繰り出すプラテンローラとの間に、繰出記録紙を下向きに押えて逆カールを付与する可動ローラを上下動自在に設けたことを特徴とする記録紙のカール防止装置。

【図１】