説明

記録装置、ロール媒体持ち上げ装置

【課題】重量の重いロール媒体であっても、ユーザーが重労働無くロール媒体ホルダーにロール媒体を装着することを考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)のロール媒体持ち上げ装置(2)は、載置部22を有し上下方向Zに昇降可能な昇降部16と、支点Bを中心にして回動可能な操作レバー6と、前記操作レバー6の前記支点B寄りの位置において、当該操作レバー6の上下方向の回動を前記昇降部16の上下動に変換して動力伝達するカム部10と、を備え、前記操作レバー6が回動し前記カム部10が前記昇降部16を上方へ移動させる際、該カム部10における前記昇降部16と当接する箇所10aが、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール媒体を繰り出し可能に保持する軸部を備えたロール媒体ホルダーと、該ロール媒体ホルダーにロール媒体を装着するのに先立ってロール媒体を仮置する仮置き部とを備える記録装置およびロール媒体持ち上げ装置に関する。
【0002】
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0003】
大型のインクジェットプリンター等の記録装置では、下記の特許文献1に示すようにロール紙の重量が重いことからロール紙を一旦、記録装置の仮置き台に置いてから、記録装置に取り付けられているロール紙ホルダーに装着するようになっている。
従来は、前記ロール紙を仮置き台に置いてから、ロール紙ホルダーの軸部の高さ位置まで、ユーザーが手で約2〜5cm程度持ち上げてロール芯の芯口と前記軸部との位置合わせを行い、その後ロール紙ホルダーを軸方向に水平にスライドさせて前記軸部を前記芯口に装着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−23171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ロール紙の重量は20〜30kg、更に40kg、50kgのものまであり、このようなロール紙の高重量化に伴い、前記人手によるロール紙の持ち上げ作業をユーザーに委ねることは、ユーザーに重労働を強いることになるという問題が顕在化してきた。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ロール媒体の高重量化に対応して重量の重いロール媒体であっても、ユーザーが重労働無くロール媒体ホルダーにロール媒体を装着することを考慮した記録装置およびロール媒体持ち上げ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、ロール媒体を繰り出し可能に保持する軸部を備えたロール媒体ホルダーと、前記ロール媒体を仮置きする仮置き部と、ロール媒体が載る載置部を備え、前記仮置き状態のロール媒体の端部を前記載置部に載せて前記ロール媒体ホルダーの軸部の高さ位置まで持ち上げてロール媒体のロール芯の芯口と前記軸部との位置合わせを可能にするロール媒体持ち上げ装置と、を備え、前記ロール媒体持ち上げ装置は、前記載置部を有し上下方向に昇降可能な昇降部と、支点を中心にして回動可能な操作レバーと、前記操作レバーの前記支点寄りの位置において、当該操作レバーの上下方向の回動を前記昇降部の上下動に変換して動力伝達するカム部と、を備え、前記操作レバーが回動し前記カム部が前記昇降部を上方へ移動させる際、該カム部における前記昇降部と当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いていることを特徴とする。
ここで、「当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いている」は、厳密に方向が一致していなくてもよく、誤差を含んで略移動方向を向いていればよい。
【0008】
本態様によれば、従来、ユーザーが手作業で行っていたロール媒体を仮置き部からロール媒体ホルダーの軸部の高さ位置まで持ち上げる作業を、ロール媒体が載る載置部を備えたロール媒体持ち上げ装置を使用することで重労働無く実行することができる。
また、てこの原理により比較的小さな力でロール媒体を持ち上げることができる。
またさらに、前記当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いている。ここで、前記カム部から前記昇降部に対しては、前記当接する箇所の法線方向への力が大きく作用する。そのため、上方へ移動する方向の力が前記昇降部に対して大きく作用する。一方、上下方向に対する横方向の力は前記昇降部に対して殆ど作用しない。従って、ロール媒体持ち上げ装置における前記昇降部およびカム部以外の部材と前記昇降部との間の摩擦力を略無にすることができる。その結果、前記昇降部を上昇させる際の力の伝達効率がよく、容易にロール媒体を持ち上げることができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記操作レバーが回動し前記カム部が前記昇降部を上方へ移動させ始めてから、前記操作レバーが停止し前記昇降部の上方への移動が停止するまでの間、前記カム部における前記昇降部と当接している箇所は、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いている構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、前記昇降部を上昇させる際の力の伝達効率をさらによくすることができる。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記昇降部は、移動方向に対して直交し、前記カム部と当接する面を有しており、前記カム部は、上方に凸となる曲面と有しており、前記昇降部が移動した際、前記昇降部における前記カム部と当接する箇所は移動しない構成であることを特徴とする。
本態様によれば、容易に前記当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向くように構成することができる。
また、前記昇降部における前記カム部と当接する箇所は移動しないように構成することにより、前記昇降部における前記カム部から力を受ける箇所を一定にすることができる。その結果、前記昇降部の姿勢を安定させることができる。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1から第3のいずれか一の態様において、前記昇降部が上方へ移動した際に前記昇降部とロール媒体持ち上げ装置の基体部との間に隙間が生じる構成であり、前記昇降部が上方へ移動する途中で該昇降部と当接することにより、前記昇降部と共に上方へ移動し前記隙間を塞ぐカバー部材をさらに備えていることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第3のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記隙間に指や物が挟み込まれることを防止することができる。つまり、安全対策である。ロール媒体が重く、例えば60kg程度ある場合、仮にうっかり指を挟んでしまったときに事故が生じる虞があるので、係る場合に特に有効である。
【0012】
本発明の第5の態様は、第1から第4のいずれか一の態様において、前記仮置き部は、ロール媒体の幅方向に並設された少なくとも二本の棒体を備え、ロール媒体持ち上げ装置の基体部は、前記棒体に対してスライド可能に取り付けられると共に、前記ロール媒体の端部を仮置き可能に構成されており、前記操作レバーには穴部が設けられており、該穴部に一本の前記棒体が通され、前記基体部に前記二本の棒体が通され、前記基体部は、前記操作レバーの回動の軸方向の両側から該操作レバーと接触し、前記昇降部を上下方向にスライド可能に保持する構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、前記ロール媒体持ち上げ装置を、ねじを使用しない構成とすることができる。従って、前記ロール媒体持ち上げ装置の組立を容易にすることができる。また、コスト面および美感面に優れる。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1から第5のいずれか一の態様において、前記昇降部における前記載置部は、前記操作レバーの回動の軸方向から見て、置かれたロール媒体と接触する二つの辺を有しており、該二つの辺は、下方に進むに従って互いの距離が短くなる構成であることを特徴とする。
本態様によれば、第1から第5のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、載置した状態において、ロール媒体がぐらぐらすることを防止することができる。従って、ロール媒体が載置されたときロール媒体の位置を安定させることができる。
【0014】
本発明の第7の態様は、前記第1から第6の態様のいずれか一に記載されたロール媒体持ち上げ装置である。
ここで、当該ロール媒体持ち上げ装置は、記録装置用の持ち上げ装置に限定されない。
本態様によれば、ロール媒体使用装置において、前記各態様に記載の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例のプリンターの全体構成の概略を示す側断面図。
【図2】本実施例の持ち上げ装置を示す斜視図。
【図3】(A)〜(C)は本実施例の持ち上げ装置の組立方を示す斜視図。
【図4】本実施例の持ち上げ装置の動作を示す側断面図(持ち上げ前)。
【図5】図4の状態の正面図。
【図6】本実施例の持ち上げ装置の動作を示す側断面図(持ち上げ途中)。
【図7】本実施例の持ち上げ装置の動作を示す側断面図(持ち上げ途中)。
【図8】本実施例の持ち上げ装置の動作を示す側断面図(持ち上げた状態)。
【図9】図8の状態の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例の記録装置としての大型のインクジェットプリンター1(以下、単にプリンターという。)の全体構成の概略を示す側断面図である。
図1に示す如く、プリンター1は、媒体繰り出し手段26と、記録部28と、巻き取り手段37と、を備えている。このうち、媒体繰り出し手段26は、ロール状に巻かれたロール媒体Rを解いて送り方向Aへ送り出すことができるように構成されている。具体的には、第1ホルダー部3と、ローラー対29と、を有している。
【0017】
このうち、第1ホルダー部3は、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持することができるように設けられている。第1ホルダー部3は、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12に嵌る軸部13と、ロール媒体Rの端部と接触可能なフランジ部9と、を有している。軸部13は、回動自在な構成でも、図示しないモーターの動力によって駆動する構成でもよい。回動自在な構成の場合は、送り方向下流側の駆動するローラー対29によってロール媒体Rが引っ張られて解かれるからである。
尚、第1ホルダー部3は、向い合わせで一対配設されている。そして、このうち少なくとも一方の第1ホルダー部3が、ロール媒体Rの幅寸法の違いに対応して幅方向Xにスライドし取付け位置を調整できるように構成されている。
【0018】
また、第1ホルダー部3の下方には、詳しくは後述する仮置き部としての仮置き台5と、持ち上げ手段としての持ち上げ装置2とが設けられている。ここでは簡単に説明するが、仮置き台5は、ロール媒体Rを第1ホルダー部3に取り付ける前に仮に置くための台である。一例として、幅方向Xに延設された二本の棒体7a、7bによって構成されている。また、持ち上げ装置2は、仮置き台5に置かれた重たいロール媒体Rを容易に上方に持ち上げ、ロール媒体Rの側端を容易に第1ホルダー部3に取り付けることができるように構成されている。
【0019】
具体的に、持ち上げ装置2は、二本の棒体7a、7bに対して幅方向Xに摺動可能な基体部8と、操作レバー6と、昇降部16と、を備えている。そして、操作レバー6を一方向へ回動させることにより、昇降部16は上昇し、ロール媒体Rを持ち上げることができる。一方、操作レバー6を反対方向へ回動させることにより、昇降部16は下降し、ロール媒体Rを下ろすことができる。
【0020】
また、記録部28は、プリンター本体19を有している。プリンター本体19には、幅方向Xに延設されたキャリッジガイド軸21と、キャリッジ23と、記録ヘッド25と、媒体支持部27とが設けられている。キャリッジ23は、キャリッジガイド軸21にガイドされながら幅方向Xへ移動可能に設けられている。また、記録ヘッド25は、キャリッジ23における媒体支持部27と対向する位置に設けられ、インクをロール媒体Rに対して吐出して記録することができるように構成されている。またさらに、媒体支持部27は、ロール媒体Rを支持し、ロール媒体Rと記録ヘッド25との間の距離を所定の距離にすることができるように設けられている。
【0021】
尚、ローラー対29は、プリンター本体19の内部に設けたが、外部でもよい。ロール媒体Rを送り方向Aへ送ることができればよいからである。
また、プリンター本体19より送り方向上流側にはプレヒーター31が設けられている。ロール媒体Rに対して記録を実行する前の段階で予めロール媒体Rを温めることにより、記録を実行した際、ロール媒体Rに着弾したインクが乾燥しやすくするためである。
またさらに、プリンター本体19より送り方向下流側にはアフターヒーター33が設けられている。ロール媒体Rに着弾したインクを、記録を実行した後から巻き取り手段37によって巻かれる前までの間に、確実に乾燥させるためである。
【0022】
またさらに、巻き取り手段37は、動力によってロール媒体Rを巻き取り、二本の棒体39に取り付けられた第2ホルダー部40に巻き取ったロール媒体Rを保持することができるように構成されている。
尚、プリンター1は、下端部に移動用のキャスター15を有する側面視逆T字形の支持フレーム17を対向するように左右両端部に備えている。そして、支持フレーム17の上部にプリンター本体19が設けられている。また、支持フレーム17に取り付けられたサブフレーム35に、仮置き台5が取り付けられている。
【0023】
続いて、本実施例の持ち上げ装置2について詳しく説明する。
図2に示すのは、本実施例の持ち上げ装置2を示す斜視図である。尚、持ち上げ装置2は、ロール媒体Rの両端近傍の下方に同じ構成のものが一対設けられるので、一方のみ図示するものとする。
図2に示す如く、二本の棒体7a、7bの端部は、サブフレーム35に取り付けられた棒保持部24によって保持されている。そして、二本の棒体7a、7bに持ち上げ装置2が取り付けられている。持ち上げ装置2は、基体部8と、昇降部16と、操作レバー6と、を備えている。
【0024】
このうち、基体部8は、二本の棒体7a、7bに対してスライド可能に取り付けられている。
また、昇降部16は、基体部8に対して上下方向Zにスライド可能に取り付けられている。またさらに、基体部8の上側および昇降部16の上側にはロール媒体Rが載置される載置部22が設けられている。本実施例では、昇降部16が下がっている状態において、基体部8の上側および昇降部16の上側は同じ高さに構成されている。
尚、昇降部16の上側のみによって載置部22を構成してもよい。同様の作用効果を得ることができるからである。
【0025】
またさらに、載置部22は、棒体7a、7bの軸方向(X)から見て、中央に対して両側が高く形成されている。言い換えると、ロール媒体Rと接触する上側の二つの辺22a、22bがV字状に見えるように、載置部22の上面が形成されている。これにより、ロール媒体Rを載置したとき、ロール媒体Rが転がらないようにして、ロール媒体Rの位置を安定させることができる。技術的思想としては、V字状でなくても、軸方向(X)から見て、上側の二つの辺22a、22bが、下方に進むに従って互いの距離が短くなるように設けられ、該二つの辺22a、22bがロール媒体Rの外周面と接触する構成であればよい。
【0026】
尚、棒体7a、7bの軸方向(X)から見て、載置部22の上面がU字状に見えるように形成してもよいのは勿論である。
また、操作レバー6は、一の棒体7bを軸に回動可能に設けられている。そして、詳しくは後述するように、てこの原理を利用して、小さい力で昇降部16を上方へ移動させることができるように構成されている。
【0027】
続いて、持ち上げ装置2の組立方について説明する。
図3(A)〜(C)に示すのは、本実施例の持ち上げ装置2の組立方を示す斜視図である。
図3(A)に示す如く、操作レバー6には、穴部4と、カム部10とが設けられている。そして、カム部10が基体部8の内部に入り込むようにして操作レバー6を基体部8に取り付ける。また、カバー部材20を上方から昇降部16に被せる。そして、カバー部材20および昇降部16を、昇降部16に設けられたカムフォロア部18が基体部8の内部に入り込みカム部10と接触するようにして上方から基体部8に取り付ける。
【0028】
すると、図3(B)に示す状態となる。このとき、基体部8の挿通部14bから操作レバー6の穴部4が見える。また、操作レバー6は、基体部8に挟まれた状態である。
そして、図3(C)に示す如く、基体部8に二つの挿通部14a、14bに二本の棒体7a、7bをそれぞれ挿通させる。このとき、操作レバー6の穴部4に一本の棒体7bが挿通される。操作レバー6は、この棒体7bを軸にして回動することができる。また、基体部8を二本の棒体7a、7bに対して摺動させることで、持ち上げ装置全体2を棒体7a、7bが延設されたロール媒体Rの幅方向Xへ移動させることができる。
このようにして容易に持ち上げ装置2を組み立てることができ、ねじを必要としない。
【0029】
続いて、持ち上げ装置2の動作について説明する。
図4に示すのは、ロール媒体Rを載置部22に乗せた状態であり、持ち上げる前の状態を示す持ち上げ装置2の側断面図である。また、図5に示すのは、図4の状態の正面図である。
図4および図5に示す如く、ロール媒体Rを持ち上げ装置2の載置部22に置く。
この際、本実施例のように、載置部22の上面の高さが、二本の棒体7a、7bによって構成される仮置き台5の高さより高い構成である場合、一対の持ち上げ装置2を両側へ退避させ、一度仮置き台5にロール媒体Rを置く。
【0030】
そして、仮置き台5に置いたロール媒体Rを、持ち上げ装置2の載置部22に載せる。載せ方は、ユーザーがロール媒体Rの一端側を持ち上げ、一端の下方近傍へ一対の持ち上げ装置2の一方を摺動させる。そして、ロール媒体Rの一端側を、持ち上げ装置2の前記一方の載置部22に載せる。同様にロール媒体Rの他端側を持ち上げ、他端の下方近傍へ一対の持ち上げ装置2の他方を摺動させる。そして、ロール媒体Rの他端側を、持ち上げ装置2の前記他方の載置部22に載せる。
【0031】
尚、載置部22の上面の高さが、二本の棒体7a、7bによって構成される仮置き台5の高さより低い構成でもよい。係る構成である場合、先ず、仮置き台5にロール媒体Rを置く。そして、ロール媒体Rの両端近傍まで、一対の持ち上げ装置2を摺動させるだけでよい。
また、載置部22の上面の高さが、二本の棒体7a、7bによって構成される仮置き台5の高さより高い構成である場合、載置部22を仮置き部(仮置き台5)としてもよいのは勿論である。
【0032】
図6に示すのは、本実施例の持ち上げ装置2の持ち上げ途中の動作を示す側断面図である。
図6に示す如く、図4の状態から操作レバー6を一の棒体7bを中心に図中の反時計方向へ回動させる。この際、てこの原理に基づいて、操作レバー6の回動中心である支点Bから操作レバー6に力を加える力点Cまでの距離は、操作レバー6の回動中心(支点B)からカム部10におけるカムフォロア部18と当接する箇所10aである作用点Dまでの距離と比較して、十分に長いものとする。
【0033】
操作レバー6の回動に伴い、カム部10が回動する。そして、カム部10が昇降部16のカムフォロア部18に対して上方へ押し上げる力を作用する。これにより、昇降部16は上方へ移動する。そして、昇降部16はロール媒体Rを上方へ移動させる。この際、持ち上げ装置2は、ユーザーの比較的小さい力をてこの原理により大きな力に変換し、重たいロール媒体Rを上方へ持ち上げることができる。
【0034】
また、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、昇降部16の移動方向Zを向いている。従って、カム部10がカムフォロア部18に対して作用する力の向きは、昇降部16の移動方向Zである。言い換えると、昇降部16の移動方向Zに対して横方向の力が作用しない。従って、昇降部16と基体部8との間の摩擦抵抗を限りなく小さくすることができる。その結果、力のロスを最小にすることができ、その分容易にロール媒体Rを持ち上げることができる。
尚、カム部10が回転運動することに対して、カムフォロア部18は直線運動をする。そのため、カム部10とカムフォロア部18との間に摩擦が生じるが、当接箇所を滑らかにすることにより、殆ど影響がないようにすることができる。
【0035】
図7に示すのは、本実施例の持ち上げ装置2の持ち上げ途中の動作を示す側断面図である。
図7に示す如く、図6の状態から操作レバー6を図中の反時計方向へさらに回動させる。すると、カム部10がさらに回動する。これにより、昇降部16はさらに上方へ移動する。そして、昇降部16はロール媒体Rをさらに上方へ移動させる。この際、昇降部16と基体部8との間に取り付けられたカバー部材20は、昇降部16と当接する。本実施例では、昇降部16の外側面とカバー部材20の内側面とが当接する。
尚、突起等を設けてカバー部材20と昇降部16とが当接する構成でもよい。
また、このときも、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、昇降部16の移動方向Zを向いている。従って、昇降部16の移動方向Zに対して横方向の力が作用しない。
【0036】
図8に示すのは、持ち上げた状態の持ち上げ装置2を示す側断面図である。また、図9に示すのは、図8の状態の正面図である。
図8に示す如く、図7の状態から操作レバー6の図8中の反時計方向へさらに回動させる。すると、カム部10がさらに回動する。これにより、昇降部16はさらに上方へ移動する。そして、昇降部16はロール媒体Rをさらに上方へ移動させる。このときも、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、昇降部16の移動方向Zを向いている。従って、昇降部16の移動方向Zに対して横方向の力が作用しない。
【0037】
また、このとき、カバー部材20は、昇降部16と一体となって上方へ移動する。そして、カバー部材20は、昇降部16が上方へ移動することによって生じる昇降部16と基体部8との間の隙間Eを塞ぐように構成されている。従って、前記隙間Eに物が入り込む虞がない。また、誤って前記隙間Eに手を挟んでしまうような事故が生じる虞もない。特に、昇降部16が移動する距離が比較的長い場合に前記隙間Eが生じるので、カバー部材20を有する構成は有効である。また、ロール媒体Rの重量が重たい場合に事故につながる虞があるので、カバー部材20を有する構成は有効である。
【0038】
そして、図9に示す如く、第1ホルダー部3の軸部13の高さまで、ロール媒体Rのロール芯11の芯口12が移動したとき、操作レバー6の回動を停止させ、ロール媒体Rの持ち上げを停止させる。この状態で、第1ホルダー部3をスライドさせて、芯口12に軸部13を嵌める。ロール媒体Rの一端側に対して、第1ホルダー部3を取り付けたら、操作レバー6を手放してよい。そして、ロール媒体Rの他端側に対して、同様に第1ホルダー部3を取り付ける。
【0039】
以上説明したように、ロール媒体Rを持ち上げる間、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aは、常に昇降部16が移動する方向Zを向いている。従って、前述したように、昇降部16が移動する方向Zに対して横方向の力が作用しない。そのため、昇降部16と基体部8との間の摩擦抵抗を限りなく小さくすることができる。その結果、力のロスを最小にすることができ、その分容易にロール媒体Rを持ち上げることができる。
また、カムフォロア部18におけるカム部10と当接する箇所は、一定である。そのため、昇降部16がカム部から力を受ける箇所は常に同じである。従って、昇降部16の姿勢を安定させることができる。尚、該箇所を昇降部16の重心の真下に構成することが望ましい。昇降部16の姿勢をより一層安定させることができるからである。
【0040】
尚、本実施例では、カム部10がカムフォロア部18と当接する箇所10aが常に持ち上げる方向である上方を向く構成としたが、常にでなくてもよい。技術的思想としては、カム部10からカムフォロア部18に対して力が大きく作用するときに、前記当接する箇所10aが持ち上げる方向である上方を向く構成であればよい。例えば、持ち上げ始める前は、上方を向いていなくてもよい。
【0041】
続いて、第1ホルダー部3にセットされたロール媒体Rを下ろす動作について説明する。
一度セットしたロール媒体Rを使い切る場合は、ロール芯11だけ残り、比較的軽いのでそのまま取り外しても問題はない。例えば、一度セットしたロール媒体Rを使い切る前に、他のサイズのロール媒体Rや他の種類のロール媒体Rにセットし直したい場合がある。係る場合、既にセットしてある重量が重いロール媒体Rを第1ホルダーから取り外して下ろす必要がある。
【0042】
係る場合、操作レバー6を回動させて、昇降部16を上方へ移動させてロール媒体Rを迎えに行かせる。具体的には、図8および図9の位置またはそれより上の位置まで昇降部16を移動させる。そして、第1ホルダー部3を外側へスライドさせ、第1ホルダー部3の軸部13をロール媒体Rのロール芯11の芯口12から取り外す。その後、図7、図6、図4の順となるように操作レバー6を回動させて、昇降部16を下方へ移動させる。これにより、ロール媒体Rを下ろすことができる。ロール媒体Rの一端側を取り外したら、他端側を同様に取り外すのは言うまでもない。
【0043】
尚、本実施例では、媒体繰り出し手段26である第1ホルダー部3の下方に持ち上げ装置2を設けたが、巻き取り手段37である第2ホルダー部40の下方に持ち上げ装置2を設けてもよい。係る場合、第2ホルダー部40から取り外して下ろしてそっと所定の場所に置くことができる。巻き取ったロール媒体Rは重量が重いため、第2ホルダー部40の下方に持ち上げ装置2を設けた構成は有効である。
【0044】
また、本実施例では、操作レバー6に設けられたカム部10が直に昇降部16に設けられたカムフォロア部18と接触し、動力を直接伝達する構成としたがこれに限らない。技術的思想としては、ギア等を有する動力伝達手段の動力伝達方向最下流に設けられたカム部10が、昇降部16のカムフォロア部18と接触して動力を伝達する構成であってもよい。ここで、カム部10におけるカムフォロア部18と当接する箇所10aが昇降部16を移動させる方向を向いている構成であればよい。
【0045】
本実施例の記録装置としてのプリンター1は、ロール媒体Rを繰り出し可能に保持する軸部13を備えたロール媒体ホルダーとしての第1ホルダー部3と、ロール媒体Rを仮置きする仮置き部である仮置き台5と、ロール媒体Rが載る載置部22を備え、前記仮置き状態のロール媒体Rの端部を載置部22に載せて第1ホルダー部3の軸部13の高さ位置まで持ち上げてロール媒体Rのロール芯11の芯口12と軸部13との位置合わせを可能にするロール媒体持ち上げ装置である持ち上げ装置2と、を備え、持ち上げ装置2は、載置部22を有し上下方向Zに昇降可能な昇降部16と、支点Bを中心にして回動可能な操作レバー6と、操作レバー6の支点B寄りの位置において、操作レバー6の上下方向Zの回動を昇降部16の上下動に変換して動力伝達するカム部10と、を備え、操作レバー6が回動しカム部10が昇降部16を上方へ移動させる際、カム部10における昇降部16と当接する箇所10aが、昇降部16が上方へ移動するときの移動方向Zを向いていることを特徴とする。
【0046】
また、本実施例において、操作レバー6が回動しカム部10が昇降部16を上方へ移動させ始めてから、操作レバー6が停止し昇降部16の上方への移動が停止するまでの間、カム部10における昇降部16と当接している箇所10aは、昇降部16が上方へ移動するときの移動方向Zを向いている構成であることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、昇降部16は、移動方向に対して直交し、カム部10と当接する面であるカムフォロア部18を有しており、カム部10は、上方に凸となる曲面と有しており、昇降部16が移動した際、カムフォロア部18におけるカム部10と当接する箇所は移動しない構成であることを特徴とする。
【0047】
また、本実施例において、昇降部16が上方へ移動した際に昇降部16と持ち上げ装置2の基体部8との間に隙間Eが生じる構成であり、昇降部16が上方へ移動する途中で昇降部16と当接することにより、昇降部16と共に上方へ移動し隙間Eを塞ぐカバー部材20をさらに備えていることを特徴とする。
またさらに、本実施例において、仮置き台5は、ロール媒体Rの幅方向Xに並設された少なくとも二本の棒体7a、7bを備え、持ち上げ装置2の基体部8は、棒体7a、7bに対してスライド可能に取り付けられると共に、ロール媒体Rの端部を仮置き可能に構成されており、操作レバー6には穴部4が設けられており、穴部4に一本の棒体7bが通され、基体部8に二本の棒体7a、7bが通され、基体部8は、操作レバー6の回動の軸方向(X)の両側から操作レバー6と接触し、昇降部16を上下方向Zにスライド可能に保持する構成であることを特徴とする。
【0048】
また、本実施例において、昇降部16における載置部22は、操作レバー6の回動の軸方向(X)から見て、置かれたロール媒体Rと接触する二つの辺22a、22bを有しており、該二つの辺22a、22bは、下方に進むに従って互いの距離が短くなる構成であることを特徴とする。
【0049】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
1 プリンター、2 持ち上げ装置(持ち上げ手段)、3 第1ホルダー部、
4 穴部、5 仮置き台、6 操作レバー、7a 棒体、7b 棒体、8 基体部、
9 フランジ部、10 カム部、10a 当接する箇所、11 ロール芯、12 芯口、
13 軸部、14a 挿通部、14b 挿通部、15 キャスター、16 昇降部、
17 支持フレーム、18 カムフォロア部、19 プリンター本体、
20 カバー部材、21 キャリッジガイド軸、22 載置部、22a 辺、
22b 辺、23 キャリッジ、24 棒保持部、25 記録ヘッド、
26 媒体繰り出し手段、27 媒体支持部、28 記録部、29 ローラー対、
31 プレヒーター、33 アフターヒーター、35 サブフレーム、
37 巻き取り手段、39 棒体、40 第2ホルダー部、A 送り方向、B 支点、
C 力点、D 作用点、E 隙間、R ロール媒体、X 幅方向(棒体の軸方向)、
Z 上下方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール媒体を繰り出し可能に保持する軸部を備えたロール媒体ホルダーと、
前記ロール媒体を仮置きする仮置き部と、
ロール媒体が載る載置部を備え、前記仮置き状態のロール媒体の端部を前記載置部に載せて前記ロール媒体ホルダーの軸部の高さ位置まで持ち上げてロール媒体のロール芯の芯口と前記軸部との位置合わせを可能にするロール媒体持ち上げ装置と、を備え、
前記ロール媒体持ち上げ装置は、前記載置部を有し上下方向に昇降可能な昇降部と、
支点を中心にして回動可能な操作レバーと、
前記操作レバーの前記支点寄りの位置において、当該操作レバーの上下方向の回動を前記昇降部の上下動に変換して動力伝達するカム部と、を備え、
前記操作レバーが回動し前記カム部が前記昇降部を上方へ移動させる際、該カム部における前記昇降部と当接する箇所が、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いていることを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記操作レバーが回動し前記カム部が前記昇降部を上方へ移動させ始めてから、前記操作レバーが停止し前記昇降部の上方への移動が停止するまでの間、前記カム部における前記昇降部と当接している箇所は、前記昇降部が上方へ移動するときの移動方向を向いている構成である記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記昇降部は、移動方向に対して直交し、前記カム部と当接する面を有しており、
前記カム部は、上方に凸となる曲面と有しており、
前記昇降部が移動した際、前記昇降部における前記カム部と当接する箇所は移動しない構成である記録装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の記録装置において、前記昇降部が上方へ移動した際に前記昇降部とロール媒体持ち上げ装置の基体部との間に隙間が生じる構成であり、
前記昇降部が上方へ移動する途中で該昇降部と当接することにより、前記昇降部と共に上方へ移動し前記隙間を塞ぐカバー部材をさらに備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の記録装置において、
前記仮置き部は、ロール媒体の幅方向に並設された少なくとも二本の棒体を備え、
ロール媒体持ち上げ装置の基体部は、前記棒体に対してスライド可能に取り付けられると共に、前記ロール媒体の端部を仮置き可能に構成されており、
前記操作レバーには穴部が設けられており、該穴部に一本の前記棒体が通され、前記基体部に前記二本の棒体が通され、
前記基体部は、前記操作レバーの回動の軸方向の両側から該操作レバーと接触し、前記昇降部を上下方向にスライド可能に保持する構成である記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記昇降部における前記載置部は、前記操作レバーの回動の軸方向から見て、置かれたロール媒体と接触する二つの辺を有しており、該二つの辺は、下方に進むに従って互いの距離が短くなる構成である記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載されたロール媒体持ち上げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−153456(P2012−153456A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−12131(P2011−12131)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】