説明

記録装置及び記録方法

【課題】記録媒体の品質低下を招くことなく、且つ短時間で記録材を確実に定着させることができる記録装置及び記録方法を提供する。
【解決手段】上流側から下流側に樹脂フィルム12を搬送する搬送機構と、樹脂フィルム12の搬送経路の途中位置で樹脂フィルムの記録処理領域にインクを付着させて記録を施す記録ヘッド31と、記録ヘッド31よりも搬送経路における下流側位置に配設され、インクを加熱して樹脂フィルム12に定着させる加熱乾燥装置44と、搬送機構及び加熱乾燥装置44のうち少なくとも一方を制御する制御装置とを備え、制御装置は、樹脂フィルム12におけるインクが付着されない非記録処理領域に対する品質低下への影響が抑制される温度で加熱すると共に、樹脂フィルム12の記録処理領域に対して樹脂フィルム12の非記録処理領域に付与される温度よりも高い温度で加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式記録装置などの記録装置及び該記録装置における記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流体噴射装置の一つとして、インクジェットヘッドからインクを吐出して記録媒体に文字や画像を印刷するインクジェット式記録装置(以下、「プリンタ」と言う)が広く知られている。このプリンタでは、印刷速度の高速化に伴って記録媒体に印刷が行われてから搬出されるまでの所要時間が短縮されたことにより、印刷処理における装置全体のスループットを高水準で維持するべくインクの乾燥時間を短縮することが望まれていた。そこで、短時間でインクを確実に乾燥させるための乾燥手段を備えたプリンタが種々提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、特許文献1のプリンタでは、ヒータにより所定の乾燥温度まで加熱された空気を記録媒体の印刷面とは反対の裏面側から吹きつけることによりインクの定着処理を行うようになっている。
【特許文献1】特開平5−338126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すように、従来のプリンタでは、インクの乾燥温度は、記録媒体の熱収縮温度に対してインク溶媒が記録媒体から蒸発する際の気化熱を乗じた値として算出される。そのため、この乾燥温度を適用した場合には、インクの加熱乾燥を不要とする記録媒体の非印刷領域が過熱異常を引き起こす虞があった。
【0005】
一方、インクの乾燥温度が記録媒体の熱収縮温度よりも低温となるように設定された場合には、インクを確実に乾燥させるまでの所要時間が増大することにより印刷処理における装置全体のスループットが低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は記録媒体の品質低下を招くことなく、且つ短時間で記録材を確実に定着させることができる記録装置及び記録方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の記録装置は、上流側から下流側に記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体の搬送経路の途中位置で前記記録媒体の記録処理領域に記録材を付着させて記録を施す記録手段と、該記録手段よりも前記搬送経路における下流側位置に配設され、前記記録材にエネルギーを与えて記録媒体に定着させる定着手段と、前記記録媒体における前記記録処理領域及び前記記録材が付着されない非記録処理領域の各々が前記定着手段の配設位置に搬送された場合に、前記非記録処理領域には前記記録媒体に対する品質低下への影響が抑制される低いエネルギーが付与される一方、前記記録処理領域には前記非記録処理領域に付与されるエネルギーよりも高いエネルギーが付与されるように、前記搬送手段及び前記定着手段のうち少なくとも一方を制御する制御手段とを備えた。
【0008】
上記構成によれば、記録媒体に記録材を定着させて記録を施す場合において、記録媒体における記録材が付着されない非記録処理領域には記録媒体に対する品質低下への影響が抑制される低いエネルギーが付与される。その一方、記録媒体の記録処理領域に対しては非記録処理領域に付与されるエネルギーよりも高いエネルギーが付与される。そのため、記録媒体の記録処理領域では、短時間で記録材を確実に定着させることができると共に、記録媒体の非記録処理領域は、その品質低下を伴うことなく定着手段の配設位置を通過することが可能となる。したがって、記録媒体の品質低下を招くことなく、且つ短時間で記録材を確実に定着させることができる。なお、本発明の記録装置では、記録媒体の非記録処理領域に対して付与されるエネルギー量がゼロの場合も含むものとする。
【0009】
また、本発明の記録装置において、前記制御手段は、前記定着手段を制御する場合、当該定着手段により、前記記録処理領域に対しては前記記録材を定着するためのエネルギーが付与されると共に、前記非記録処理領域に対しては前記記録処理領域に付与されるエネルギーよりも低いエネルギーが付与されるように、前記定着手段を制御する。
【0010】
上記構成によれば、定着手段が記録媒体に対して付与するエネルギー量を制御することにより、記録媒体の記録処理領域にのみ高エネルギー量を付与することができる。したがって、記録媒体の品質低下を招くことなく、且つ短時間で記録材を確実に定着させることができる。
【0011】
また、本発明の記録装置は、前記定着手段が前記記録媒体に付与するエネルギーを検出するエネルギー検出手段を更に備え、前記制御手段は、前記搬送手段を制御する場合、前記エネルギー検出手段の検出結果に基づき、前記定着手段が前記記録媒体に対して付与するエネルギー量が前記記録材を前記記録媒体に定着させるために必要な所定のエネルギー量よりも大きい場合には、前記記録媒体の前記記録処理領域が前記定着手段の配設位置に搬送されると共に、前記定着手段が前記記録媒体に対して付与するエネルギー量が前記所定のエネルギー量よりも小さい場合には、前記記録媒体の前記非記録処理領域が前記定着手段の配設位置に搬送されるように、前記搬送手段を制御する。
【0012】
上記構成によれば、定着手段が記録媒体に付与するエネルギー量に基づいて記録媒体を定着手段の配設位置に搬送するタイミングを制御することができるため、記録媒体が定着手段の配設位置を通過する際に定着手段から付与されるエネルギー量を適宜調整することができる。そのため、記録媒体の品質低下を招くことなく、且つ短時間で記録材を確実に定着することができる。
【0013】
また、本発明の記録装置において、前記定着手段は、前記記録媒体に付着した前記記録材を定着すべく加熱する加熱手段であり、前記制御手段は、前記搬送手段を制御する場合、前記加熱手段の加熱乾燥領域における加熱温度が前記記録材を加熱乾燥可能な第1の温度である場合には、前記記録媒体の前記記録処理領域が前記加熱手段の前記加熱領域に搬送されると共に、前記加熱手段の加熱温度が前記第1の温度よりも低温であり、且つ、前記記録媒体の前記非記録処理領域に対する品質低下への影響が抑制される第2の温度以下である場合には、前記記録媒体の前記非記録処理領域が前記加熱手段の前記加熱領域に搬送されるように、前記搬送手段を制御する。
【0014】
上記構成によれば、記録媒体の記録処理領域は、第1の温度に加熱された加熱乾燥領域において、短時間で記録材を確実に乾燥させて定着させることができる。一方、記録媒体の非記録処理領域が加熱乾燥領域を通過する際には、加熱乾燥領域の加熱温度は記録媒体の非記録処理領域に対する品質低下の影響が無視できる程度の温度となる第2の温度となるように設定されているため、記録媒体の非記録処理領域は、その品質低下を招くことなく加熱乾燥領域を通過することができる。したがって、記録媒体の品質低下を招くことなく、且つ短時間で確実に記録材を確実に乾燥させることができる。
【0015】
また、本発明の記録装置において、前記第2の温度は前記記録媒体の熱収縮温度である。
上記構成によれば、記録媒体の記録処理領域を加熱乾燥させる際の加熱温度は、記録媒体の熱収縮温度よりも高温となるように設定されている。そのため、記録媒体の記録処理領域では、短時間で記録材を確実に乾燥させることができる。一方、記録媒体における非記録処理領域が加熱乾燥領域に搬送された時点での加熱温度は、加熱手段の加熱温度が記録媒体の熱収縮温度よりも低温となるように設定されている。そのため、記録媒体の非記録処理領域は、過熱異常を伴うことなく加熱乾燥領域内を通過することができる。したがって、本発明の記録装置では、記録媒体における記録処理領域及び非記録処理領域が加熱手段の加熱温度に応じて加熱手段の加熱乾燥領域に適宜搬送されるため、記録媒体の過熱異常を引き起こすことなく、且つ短時間で記録材を確実に乾燥させることができる。
【0016】
また、本発明の記録装置において、前記制御手段は、前記定着手段が前記記録媒体に対する前記記録材の付着を完了する前に前記加熱手段の前記加熱乾燥領域における前記加熱温度の降下を開始させる。
【0017】
上記構成によれば、記録手段による記録媒体への記録を完了した時点での加熱手段の加熱温度と記録媒体の非記録処理領域に対する品質低下の影響が無視できる程度の温度となる第2の温度との温度差が減少し、その減少分だけ、加熱手段の加熱温度が第2の温度に到達するまで降下させる際の所要時間が短縮される。そのため、記録処理における装置全体のスループットを更に向上させることができる。
【0018】
また、本発明の記録装置において、前記記録媒体は二軸延伸加工された樹脂フィルムである。
一般的に、二軸延伸加工を施した樹脂フィルムは、フィルムの機械的強度が増す一方で熱収縮率も増大する。しかしながら、本発明の記録装置では、加熱手段の加熱温度に基づいて記録媒体の搬送を制御する構成となっているため、このような樹脂フィルムに対しても好適に印刷を行うことができる。
【0019】
また、本発明の記録装置における記録方法は、上流側から下流側に搬送される記録媒体の記録処理領域に記録材を付着させて記録を施す記録装置における記録方法であって、前記記録媒体における前記記録材が付着されない非記録処理領域に対して前記記録媒体の品質低下への影響が抑制された低いエネルギーを付与すると共に、前記記録媒体における前記記録処理領域に対して前記記録媒体の前記非記録処理領域に付与されるエネルギーよりも高いエネルギーを付与する。上記構成によれば、上記記録装置の発明と同様の効果が得られる。
【0020】
また、本発明の記録装置は、長尺の記録媒体を記録部から加熱部へと搬送する記録装置であって、前記加熱部が第1の温度であるタイミングで、前記長尺の記録媒体における一の記録処理領域を当該加熱部へ搬送するステップと、前記加熱部が第1の温度から第2の温度へと温度降下しているタイミングで、前記一の記録処理領域に続く他の記録処理領域を当該加熱部へ搬送するステップと、前記加熱部が前記第2の温度以下となったタイミングで、前記他の記録処理領域に続く非記録処理領域を当該加熱部へ搬送するステップと、を実行する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンタ(以下、「プリンタ」という。)に具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において、「上下方向」、「左右方向」、「前後方向」をいう場合は、図1〜図3に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0022】
図1に示すように、記録装置としてのプリンタ11は、記録媒体としての長尺状の樹脂フィルム12を繰り出す繰り出し部13と、該繰り出し部13から繰り出された樹脂フィルム12に順次印刷を行う本体部14と、該本体部14で印刷が行われた樹脂フィルム12を巻き取る巻き取り部15とを備えている。すなわち、本体部14は直方体状の本体ケース16を備えており、樹脂フィルム12の搬送方向において上流側となる本体ケース16の左側に繰り出し部13が配設されると共に下流側となる本体ケース16の右側に巻き取り部15が配設されている。
【0023】
繰り出し部13は、本体ケース16の左面下端部から左方に延びる支持板17を備えており、該支持板17の前面は鉛直面になっている。支持板17の前面における先端部には前方(図1において紙面と直交する方向の手前側)に向かって延びる巻き軸18が支持板17に対して回転可能に支持されている。そして、巻き軸18には予めロール状に巻かれた樹脂フィルム12が該巻き軸18と一体回転可能に支持されている。なお、本実施形態では、二軸延伸加工が施された樹脂フィルム12が適用されている。
【0024】
また、繰り出し部13は本体ケース16の左面中央部から左方に向かって水平に延びる平板状の繰り出し台19を備えている。そして、繰り出し台19の先端部には巻き軸18から繰り出される樹脂フィルム12を巻き掛けて繰り出し台19の上面に導くための中継ローラ20が回転可能に設けられており、樹脂フィルム12は繰り出し台19の上面に沿って右側(本体部14側)に向かって搬送される。
【0025】
本体部14の本体ケース16内における上下方向の中央部よりやや上寄りの位置には、本体ケース16内を上下に区画する平板状の基台21が設けられており、本体ケース16内における基台21よりも上側の領域は樹脂フィルム12に印刷を行うための印刷室22となっている。
【0026】
本体ケース16の左壁には繰り出し台19の上面から本体ケース16内に樹脂フィルム12を搬入するための図示しない搬入口が設けられており、本体部14には上記搬入口と近傍位置で対向するように搬送手段としての引き込み駆動ローラ23が回転駆動可能に設けられている。なお、引き込み駆動ローラ23の回転駆動は、本体ケース16内の図示しない制御ボックスに配置された制御手段としての制御装置24の制御信号に基づき制御される。
【0027】
また、本体ケース16内における引き込み駆動ローラ23の右斜め下方には中継ローラ25が回転可能に設けられている。そして、引き込み駆動ローラ23の駆動によって本体ケース16内に引き込まれた樹脂フィルム12は、印刷室22の左端部寄りの位置に向かうように中継ローラ25に巻き掛けられている。
【0028】
印刷室22内における中継ローラ25の右斜め上方には中継ローラ26が設けられており、該中継ローラ26には樹脂フィルム12が左側下方から巻き掛けられて右方向に水平に搬送される。
【0029】
印刷室22内における中継ローラ26の右側の領域には、基台21上に支持された短形板状のプラテン27が設けられている。プラテン27の右側には、該プラテン27を挟んで中継ローラ26と対向するように転換ローラ28が設けられている。この場合、中継ローラ26の上面、プラテン27の上面、及び転換ローラ28の上面は、互いに面一になっている。
【0030】
転換ローラ28には中継ローラ26からプラテン27の上面に沿って水平右方向に搬送される樹脂フィルム12が左側上方から巻き掛けられて樹脂フィルム12の搬送方向が水平右方向から鉛直下方向に転換されている。そして、転換ローラ28によって搬送方向が鉛直下方向に転換された樹脂フィルム12は、基台21に設けられた図示しない挿通孔を通って鉛直下方に搬送される。
【0031】
印刷室22内におけるプラテン27の前後両側には左右方向に延びるガイドレール29(図1では二点鎖線で示す)が対をなすように設けられており、該ガイドレール29の上面はプラテン27の上面よりも高くなっている。両ガイドレール29の上面には、短形板状のキャリッジ30が該両ガイドレール29に沿って左右方向へ往復移動可能な状態で支持されている。そして、キャリッジ30は、制御装置24の制御信号に基づき両ガイドレール29上を左右方向に移動する。
【0032】
図1に示すように、キャリッジ30の下面には記録手段としての記録ヘッド31が支持されている。また、印刷室22内における本体ケース16の後壁上部には、記録材としてのインクを一時貯留する複数のバルブユニット34が設けられている。各バルブユニット34には、互いに色の異なるインクが一時貯留されている。
【0033】
そして、各バルブユニット34は、記録ヘッド31とそれぞれ図示しないインク供給チューブを介して接続されており、該各インク供給チューブを介して記録ヘッド31に各インクを供給するようになっている。記録ヘッド31の下面には図示しない複数のインク吐出ノズルが設けられており、各バルブユニットから供給されたインクを該各インク吐出ノズルからプラテン27上に搬送されて停止された状態の樹脂フィルム12に向かって噴射することで印刷が行われる。すなわち、プラテン27上における記録ヘッド31の移動領域が記録部として機能する。
【0034】
また、樹脂フィルム12においては、プラテン27上に支持された状態で印刷が行われるときにプラテン27の左端から右端までと対応する領域が印刷領域Aとされており、樹脂フィルム12は該樹脂フィルム12の搬送経路を上流側から下流側に印刷領域A単位で間欠的に搬送される。
【0035】
なお、本体ケース16内には、互いに色の異なるインクを収容した複数のインクカートリッジ(図示略)が着脱自在な状態で設けられている。これら各インクカートリッジは、図示しないインク供給チューブを介して各バルブユニット34とインク供給可能な状態でそれぞれ接続されている。また、本体ケース16内には、各インクカートリッジ内を加圧するための加圧ポンプ(図示略)が設けられており、該加圧ポンプを駆動させることで各インクカートリッジ内のインクがインク供給チューブを介して各バルブユニット34にそれぞれ加圧供給される。
【0036】
本体ケース16内における転換ローラ28の鉛直下方となる位置には、印刷領域Aに印刷が施された後の樹脂フィルム12を加熱乾燥するための加熱手段(定着手段、加熱部)としての加熱乾燥装置44が設けられている。そして、転換ローラ28に巻き掛けられて鉛直下方に搬送された樹脂フィルム12は、加熱乾燥装置44内を通って該加熱乾燥装置44の下側に回転可能に設けられた反転ローラ38に左側上方から巻き掛けられてやや右斜め上方に向かって搬送される。
【0037】
このように、樹脂フィルム12の搬送経路の途中位置であって樹脂フィルム12の加熱乾燥(定着)が行われる加熱乾燥装置44内の上端から下端までの領域は加熱乾燥領域Bとされている。そして、樹脂フィルム12の搬送方向において、加熱乾燥領域Bの距離と樹脂フィルム12における印刷領域Aの距離とは等しくなるように設定されている。
【0038】
反転ローラ38から右斜め上方に向かって搬送された樹脂フィルム12は、本体ケース16内における反転ローラ38の右方に回転可能に設けられた中継ローラ39に左側下方から巻き掛けられ、本体ケース16内を本体ケース16の右壁に沿うように上方に向かって搬送される。
【0039】
また、本体ケース16の右壁における基台21の近傍位置には樹脂フィルム12を巻き取り部15側へ搬出するための図示しない搬出口が設けられると共に、本体ケース16内における上記搬出口と近傍位置で対向するように搬送手段としての送り出し駆動ローラ40が回転駆動可能に設けられている。そして、制御装置24の制御信号に基づいて送り出し駆動ローラ40を駆動することで、樹脂フィルム12が上記搬入口を介して巻き取り部15側へ送り出されるようになっている。
【0040】
巻き取り部15は、直方体状の巻き取りフレーム41を備えており、巻き取りフレーム41の高さは送り出し駆動ローラ40の高さとほぼ同じになっている。また、巻き取りフレーム41の上端部には中継ローラ42が回転可能に設けられており、上記搬入口から送り出された樹脂フィルム12は、中継ローラ42に左側上方から巻き掛けられ、右斜め下方に向けて搬送される。
【0041】
巻き取りフレーム41における中継ローラ42の右斜め下方には前方に向かって延びる搬送手段としての巻き取り駆動軸43が巻き取りフレーム41に対して回転駆動可能に支持されている。巻き取り駆動軸43には中継ローラ42から右斜め下方に向かって搬送された樹脂フィルム12が巻き付けられており、制御装置24の制御信号に基づき該巻き取り駆動軸43を回転駆動することで巻き取り駆動軸43に樹脂フィルム12が順次巻き取られるようになっている。
【0042】
次に、加熱乾燥装置44の構成について詳述する。
図2及び図3に示すように、加熱乾燥装置44は断面視短形状をなす乾燥ケース45を備えており、該乾燥ケース45内における左右方向のほぼ中央には該乾燥ケース45内を左右2つの区画室に区画する区画プレート46が設けられている。乾燥ケース45内において、区画プレート46の右側の区画室は温風が送入される温風送入室47とされ、区画プレート46の左側の区画室は印刷された後の樹脂フィルム12が乾燥される乾燥室48とされている。
【0043】
区画プレート46には温風送入室47と乾燥室48とを連通する多数の連通孔46aが形成されており、連通孔46aは区画プレート46全体にわたって前後方向及び左右方向に規則的に配列されている。すなわち、区画プレート46には、該区画プレート46全体にわたって多数の連通孔46aが均一に配列形成されている。
【0044】
乾燥ケース45の上下両壁における乾燥室48と対応する位置には、乾燥室48の内外を貫通するように平面視短形状の貫通孔49がそれぞれ設けられている。したがって、転換ローラ28から搬送される樹脂フィルム12は、乾燥ケース45の上側の貫通孔49、乾燥室48、下側の貫通孔49を通って反転ローラ38側へ搬送されるようになっている。この場合、樹脂フィルム12は、乾燥室48内を搬送される際に、印刷された面である表面が区画プレート46の左面と対向するようになっている。
【0045】
乾燥ケースの後側には送風ファン50が設けられており、該送風ファン50の上面には送風ファン50を駆動するためのファンモータ51が設けられている。送風ファン50の前面における右端側には図示しない送風口が設けられており、該送風口は乾燥ケース45の後壁における温風送入室47と対応する位置に温風送入室47の内外を貫通するように設けられた送入口52に臨んでいる。
【0046】
また、乾燥ケース45の後側であって送風ファン50の左斜め前側にはヒータ53が設けられており、該ヒータ53は送風ファン50の前面と左面との間の面に設けられた図示しない吸気口に臨んでいる。したがって、送風ファン50を駆動することで、ヒータ53によって暖められた空気が送風ファン50の吸気口から吸入されて送風ファン50の送風口から温風として温風送入室47内に送入されるようになっている。
【0047】
そして、温風送入室47内に送入された温風が区画プレート46に設けられた各連通孔46aから乾燥室48内を搬送される樹脂フィルム12の表面に均一に吹き付けられることで、該樹脂フィルム12が強制的に均一に乾燥されるようになっている。なお、図2及び図3に示す矢印は、樹脂フィルム12の表面に吹き付けられる温風を示している。
【0048】
また、乾燥ケース45の左壁における上下方向のほぼ中央には、加熱乾燥領域B内の温度を検出するための温度検出手段(エネルギー検出手段)としての温度センサ54が設けられており、この温度センサ54による検出結果がプリンタ11の制御装置24に対して出力されるようになっている。そして、制御装置24は、温度センサ54からの検出信号が入力されると、加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の乾燥を実行するのに適した温度であるか否かを判定し、その判定結果に基づき搬送機構を構成する引き込み駆動ローラ23等の駆動状態を必要に応じて制御するようになっている。
【0049】
次に、上記のように構成されたプリンタ11の作用について説明する。
さて、本実施形態のプリンタ11は、以下に示す複数の処理段階を経て樹脂フィルム12に対する記録処理を実行する。すなわち、樹脂フィルム12にインクを噴射することで記録を行う記録段階と、インクが噴射された樹脂フィルム12の記録処理領域を加熱乾燥領域B内で加熱乾燥させる加熱乾燥段階と、加熱乾燥領域B内の温度に基づいて樹脂フィルム12の非記録処理領域が加熱乾燥領域B内を通過するタイミングを制御する搬送制御段階とを経て樹脂フィルム12に対する記録処理を実行する。
【0050】
まず、記録段階として、記録ヘッド31は、樹脂フィルム12の搬送方向に沿って往復移動する過程で、プラテン27上に搬送されて停止された状態の樹脂フィルム12に対してインクを噴射することにより樹脂フィルム12の表面に記録処理領域としての印刷像55aを形成する(図4(a))。
【0051】
続いて、制御装置24は、図4(b)に示すように、樹脂フィルム12上に形成された印刷像55aが印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止するように、搬送機構を構成する引き込み駆動ローラ23等の駆動状態を制御する。このとき、樹脂フィルム12における印刷像55aは加熱乾燥領域Bに位置することとなる。また、樹脂フィルム12のうち加熱乾燥領域Bにて滞留していた先行する印刷像55bも同じ距離分だけ下流側に搬送され、本体ケース16内の所定位置にて滞留することとなる。さらに、加熱乾燥領域Bの下流側位置となる所定位置に滞留していた更に先行する印刷像55cも同じ距離分だけ下流側へ搬送され、巻き取り部15の巻き取り駆動軸43により巻き取られることとなる。なお、本実施形態のプリンタ11では、各印刷像55a,55b,55cにより一つの印刷ジョブが構成されており、この印刷ジョブの最終頁に相当する印刷像55aの上流側領域にはインクが噴射されない非記録処理領域が形成されることとなる。
【0052】
続いて、制御装置24は、乾燥ケース45内に設けられた温度センサ54から受信した信号に基づいて加熱乾燥領域B内の温度を検出する。そして、加熱乾燥領域B内の加熱温度が樹脂フィルム12の記録処理領域を乾燥可能な第1の温度としての乾燥温度T1の近傍で維持されるように加熱乾燥装置44内に設けられたヒータ53の加熱量をフィードバック制御する。なお、本実施形態では、乾燥温度T1は、樹脂フィルム12の熱収縮温度T2よりもインク溶媒が樹脂フィルム12から蒸発する際の気化熱を乗じた分だけ高温となるように設定されている。
【0053】
そして、印刷像55aを十分に乾燥させる場合の所要時間として予め設定した所定の時間が経過した後、加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の非記録処理領域が通過するのに適した温度条件であるか否かが判定される。具体的には、加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の非記録処理領域に対する品質低下への影響が抑制される第2の温度としての樹脂フィルム12の熱収縮温度T2以下であるか否かが判定される。
【0054】
そして、判定結果が肯定判定である場合、制御装置24は、樹脂フィルム12のうち加熱乾燥領域Bに滞留していた印刷像55aを下流側に搬送すると同時に、印刷像55aの上流側領域に形成された非記録処理領域を加熱乾燥領域B内に通過させる(図4(c))。すなわち、この段階が樹脂フィルム12の搬送タイミングを制御する搬送制御段階として機能する。なお、樹脂フィルム12のうち加熱乾燥領域Bの下流側位置となる所定位置に滞留していた印刷像55bも同時に下流側へ搬送され、巻き取り部15の巻き取り駆動軸43により巻き取られることとなる。
【0055】
一方、判定結果が否定判定である場合、制御装置24は、加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の非記録処理領域が通過するのに適した温度ではないと判断し、時間t1の段階でファンモータ51の駆動を停止することにより加熱乾燥領域Bにおける樹脂フィルム12の加熱を中断させる。そして、加熱乾燥領域B内に滞留している暖気を大気中に放熱させることにより、時間t1から所定時間経過した時間t2において加熱乾燥領域B内の温度を乾燥温度T1から樹脂フィルム12の熱収縮温度T2に至るまで降下させる(図5参照)。なお、このファンモータ51の駆動の停止に伴う加熱乾燥領域B内の温度の降下は、樹脂フィルム12における印刷ジョブの最終頁に相当する印刷像55aの印刷中に実行することが望ましい。この場合、印刷像55aの印刷を完了した時点での加熱乾燥領域B内の温度と樹脂フィルム12の熱収縮温度との温度差が減少し、その減少分だけ、加熱乾燥領域B内の温度を樹脂フィルム12の熱収縮温度に至るまで降下させる際の所要時間を短縮することができる。ただし、この場合、印刷像55aの加熱乾燥時における加熱乾燥領域B内の温度は他の印刷像55b,55cの場合に比べて低温となる。そのため、制御装置24は、印刷ジョブの最終頁に相当する印刷像55aの加熱乾燥時間を印刷像55b,55cの場合よりも相対的に長くするように樹脂フィルム12の搬送タイミングを制御することにより各印刷像55a,55b,55cの乾燥状態がほぼ均一となるようにしている。
【0056】
そして、一つの印刷ジョブの印刷を完了した後、制御装置24は、時間t2から所定時間経過した時間t3において加熱乾燥領域B内の温度を樹脂フィルム12の熱収縮温度T2よりも低温となるように予め設定した待機温度T3の近傍に維持させる。本実施形態では、加熱乾燥領域B内の温度を待機温度T3に至るまで一旦降下させ、加熱乾燥領域B内の温度が待機温度T3を下回った時点で再度ファンモータ51を駆動させ、ヒータ53により加熱された温風を乾燥室48内に送入する。このとき、制御装置24は、ヒータ53による温風の加熱量を制御することにより、加熱乾燥領域B内の空気の温度を待機温度T3の近傍で均衡させる。
【0057】
また、新規の印刷ジョブの印刷を開始する場合、制御装置24は、加熱乾燥領域B内の温度を乾燥温度T1に至るまで上昇させるべくヒータ53による温風の加熱量を増大させる。そして、加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の熱収縮温度T2に到達した時点でプラテン27上にて最初に印刷する部分の印刷が完了すると共に、この最初に印刷が完了した部分が印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送されて一時停止する。このとき、樹脂フィルム12において最初に印刷が完了した部分は加熱乾燥領域B内に配置される。そして、加熱乾燥領域B内の温度が乾燥温度T1に到達した後、この印刷が完了した部分を十分に乾燥させるために要する所定の所要時間が経過した時点で樹脂フィルム12を印刷領域Aの距離だけ下流側に搬送する。このようにして、樹脂フィルム12には印刷領域Aの距離単位で順次印刷が行われる。
【0058】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、加熱乾燥領域B内の温度に基づいて樹脂フィルム12を加熱乾燥領域Bに搬送するタイミングを制御することができるため、樹脂フィルム12が加熱乾燥領域Bを通過する際の加熱乾燥領域B内の温度を適宜調整することができる。そのため、樹脂フィルム12の過熱異常を引き起こすことなく、且つ短時間でインクを確実に乾燥させることができる。
【0059】
(2)上記実施形態では、樹脂フィルム12の記録処理領域を加熱乾燥させる際の乾燥温度T1は、樹脂フィルム12の熱収縮温度T2よりもインク溶媒が樹脂フィルム12から蒸発する際の気化熱を乗じた分だけ高温となるように設定されている。そのため、樹脂フィルム12の記録処理領域では、過熱異常を伴うことなく短時間でインクを確実に乾燥させることができる。一方、樹脂フィルム12における非記録処理領域が加熱乾燥領域Bに搬送される時点では、加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の熱収縮温度T2よりも低温となるように設定されている。そのため、樹脂フィルム12の非記録処理領域は、過熱異常を伴うことなく加熱乾燥領域B内を通過することができる。
【0060】
(3)上記実施形態では、加熱乾燥領域B内の温度の降下は、樹脂フィルム12における印刷ジョブの最終頁に相当する印刷像55aの印刷中に実行している。そのため、記録ヘッド31による樹脂フィルム12への印刷が完了した時点での加熱乾燥領域B内の温度と樹脂フィルム12の熱収縮温度T2との温度差が減少し、その減少分だけ、加熱乾燥領域B内の温度を樹脂フィルム12の熱収縮温度T2に到達するまで降下させる際の所要時間が短縮される。そのため、記録処理における装置全体のスループットを更に向上させることができる。
【0061】
(4)上記実施形態では、記録媒体として、二軸延伸加工された樹脂フィルム12を適用している。そのため、一般的に、二軸延伸加工を施したフィルムは、フィルムの機械的強度が増す一方で熱収縮率も増大するが、本実施形態のプリンタ11では、加熱乾燥領域B内の温度に基づいて記録媒体の搬送を制御する構成となっているため、このような樹脂フィルム12に対しても好適に印刷を行うことができる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態において、加熱乾燥領域B内の温度を降下させる冷却手段を乾燥ケース45内に設けてもよい。この場合、加熱乾燥領域B内の暖気を大気に放熱させる場合に比べ、より迅速に加熱乾燥領域B内の温度を降下させることができる。
【0063】
・上記実施形態において、樹脂フィルム12への記録が完了した時点で加熱乾燥領域Bにおける加熱温度の降下を開始してもよい。
・上記実施形態において、樹脂フィルム12の記録処理領域を加熱乾燥させる際の乾燥温度T1は、樹脂フィルム12の熱収縮温度T2に対してインク溶媒が蒸発する際の気化熱を乗じた温度よりも低温となるように設定してもよい。この場合、樹脂フィルム12に過熱異常が生じることをより確実に抑制することができる。また、乾燥温度T1を設定する場合の基準値は樹脂フィルム12の熱収縮温度T2に限定されない。すなわち、樹脂フィルム12の品質低下に関連するパラメータであれば適用することができる。
【0064】
・上記実施形態において、記録材として熱硬化性樹脂を適用してもよい。この場合、記録材に付与される熱エネルギー量は熱硬化性樹脂の熱硬化温度を基準として設定される。また、記録材として紫外線硬化性樹脂を適用してもよい。この場合、記録材を記録媒体に定着させる定着手段は紫外線照射装置であり、記録材に付与されるエネルギー照射量は紫外線硬化性樹脂の硬化速度を基準として設定される。
【0065】
・上記実施形態において、制御装置24は、加熱乾燥装置44による加熱量を制御しない構成としてもよい。この場合、操作者が加熱乾燥装置44の加熱量を切り替えた後、制御装置24が加熱乾燥領域B内の加熱温度を検出する温度センサ54の検出結果に基づき樹脂フィルム12の記録処理領域を加熱乾燥領域Bに搬送するタイミングを制御する構成とすることが望ましい。また、記録材が紫外線硬化性樹脂の場合には、操作者が紫外線照射装置による紫外線照射量を切り替えた後、制御装置が紫外線照射領域における紫外線照射量を検出する紫外線センサの検出結果に基づき樹脂フィルム12の記録処理領域を紫外線照射装置における紫外線照射領域に搬送するタイミングを制御する構成とすることが望ましい。
【0066】
・上記実施形態において、制御装置24は、樹脂フィルム12の非記録処理領域を加熱乾燥領域B内に搬送するタイミングを制御しない構成としてもよい。この場合、加熱乾燥装置44における加熱乾燥領域B内の加熱温度が記録材を定着するための加熱温度となった時点で、操作者が樹脂フィルム12の記録処理領域を加熱乾燥領域Bに搬送するための手動操作を行うと共に、加熱乾燥装置44における加熱乾燥領域B内の温度が樹脂フィルム12の品質低下への影響を及ぼさない温度まで降下した時点で、操作者が樹脂フィルム12の非記録処理領域を加熱乾燥領域Bに搬送するための手動操作を行う必要がある。また、記録材が紫外線硬化性樹脂の場合には、紫外線照射装置が紫外線の照射を実行している時に操作者が樹脂フィルム12の記録処理領域を紫外線照射領域に搬送するための手動操作を行うと共に、紫外線照射装置が紫外線の照射を実行していない時に操作者が樹脂フィルム12の非記録処理領域を紫外線照射領域に搬送するための手動操作を行う必要がある。
【0067】
・上記実施形態において、記録媒体として一軸延伸加工を施した樹脂フィルム、及び延伸加工を施していない樹脂フィルムを適用してもよい。また、記録媒体として記録紙等の他の素材を適用してもよい。すなわち、長尺状をなす記録媒体であれば適用することができる。
【0068】
・上記実施形態において、記録装置はインクジェット式プリンタ11に限定されない。例えば、熱転写プリンタ、昇華型プリンタ等の他の印刷様式のプリンタにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本実施形態のインクジェット式プリンタの概略正面図。
【図2】本実施形態のインクジェット式プリンタにおける加熱乾燥装置の正断面図。
【図3】本実施形態のインクジェット式プリンタにおける加熱乾燥装置の平面図。
【図4】(a)は記録ヘッドが最終頁の印刷を実行した直後のインクジェット式プリンタの概略正面図。(b)は(a)の状態から樹脂フィルムが印刷領域Aの距離分だけ下流側に搬送された状態のインクジェット式プリンタの概略正面図。(c)は(b)の状態から樹脂フィルムが印刷領域Aの距離分だけ下流側に搬送された状態のインクジェット式プリンタの概略正面図。
【図5】加熱乾燥装置の加熱乾燥領域内の温度変化を示す図。
【符号の説明】
【0070】
12…記録媒体としての樹脂フィルム、23…搬送手段としての引き込み駆動ローラ、24…制御手段としての制御装置、31…記録手段としての記録ヘッド、40…搬送手段としての送り出し駆動ローラ、43…搬送手段としての巻き取り駆動軸、44…加熱乾燥手段(定着手段)としての加熱乾燥装置、54…エネルギー検出手段としての温度センサ、55a,55b,55c…記録媒体における記録処理領域としての印刷像、B…加熱乾燥領域、T1…第1の温度としての乾燥温度、T2…第2の温度としての樹脂フィルムの熱収縮温度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流側から下流側に記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体の搬送経路の途中位置で前記記録媒体の記録処理領域に記録材を付着させて記録を施す記録手段と、
該記録手段よりも前記搬送経路における下流側位置に配設され、前記記録材にエネルギーを与えて記録媒体に定着させる定着手段と、
前記記録媒体における前記記録処理領域及び前記記録材が付着されない非記録処理領域の各々が前記定着手段の配設位置に搬送された場合に、前記非記録処理領域には前記記録媒体に対する品質低下への影響が抑制される低いエネルギーが付与される一方、前記記録処理領域には前記非記録処理領域に付与されるエネルギーよりも高いエネルギーが付与されるように、前記搬送手段及び前記定着手段のうち少なくとも一方を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、
前記制御手段は、前記定着手段を制御する場合、当該定着手段により、前記記録処理領域に対しては前記記録材を定着するためのエネルギーが付与されると共に、前記非記録処理領域に対しては前記記録処理領域に付与されるエネルギーよりも低いエネルギーが付与されるように、前記定着手段を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の記録装置において、
前記定着手段が前記記録媒体に付与するエネルギーを検出するエネルギー検出手段を更に備え、
前記制御手段は、前記搬送手段を制御する場合、前記エネルギー検出手段の検出結果に基づき、前記定着手段が前記記録媒体に対して付与するエネルギー量が前記記録材を前記記録媒体に定着させるために必要な所定のエネルギー量よりも大きい場合には、前記記録媒体の前記記録処理領域が前記定着手段の配設位置に搬送されると共に、前記定着手段が前記記録媒体に対して付与するエネルギー量が前記所定のエネルギー量よりも小さい場合には、前記記録媒体の前記非記録処理領域が前記定着手段の配設位置に搬送されるように、前記搬送手段を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項1〜3のうち何れか一項に記載の記録装置において、
前記定着手段は、前記記録媒体に付着した前記記録材を定着すべく加熱する加熱手段であり、
前記制御手段は、前記搬送手段を制御する場合、前記加熱手段の加熱乾燥領域における加熱温度が前記記録材を加熱乾燥可能な第1の温度である場合には、前記記録媒体の前記記録処理領域が前記加熱手段の前記加熱乾燥領域に搬送されると共に、前記加熱手段の加熱温度が前記第1の温度よりも低温であり、且つ、前記記録媒体の前記非記録処理領域に対する品質低下への影響が抑制される第2の温度以下である場合には、前記記録媒体の前記非記録処理領域が前記加熱手段の前記加熱乾燥領域に搬送されるように、前記搬送手段を制御することを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項4に記載の記録装置において、
前記第2の温度は、前記記録媒体の熱収縮温度であることを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の記録装置において、
前記制御手段は、前記定着手段が前記記録媒体に対する前記記録材の付着を完了する前に前記加熱手段の前記加熱乾燥領域における前記加熱温度の降下を開始させることを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の記録装置において、
前記記録媒体は、二軸延伸加工された樹脂フィルムであることを特徴とする記録装置。
【請求項8】
上流側から下流側に搬送される記録媒体の記録処理領域に記録材を付着させて記録を施す記録装置における記録方法であって、
前記記録媒体における前記記録材が付着されない非記録処理領域に対して前記記録媒体の品質低下への影響が抑制された低いエネルギーを付与すると共に、前記記録媒体における前記記録処理領域に対して前記記録媒体の前記非記録処理領域に付与されるエネルギーよりも高いエネルギーを付与することを特徴とする記録装置における記録方法。
【請求項9】
長尺の記録媒体を記録部から加熱部へと搬送する記録装置であって、
前記加熱部が第1の温度であるタイミングで、前記長尺の記録媒体における一の記録処理領域を当該加熱部へ搬送するステップと、
前記加熱部が第1の温度から第2の温度へと温度降下しているタイミングで、前記一の記録処理領域に続く他の記録処理領域を当該加熱部へ搬送するステップと、
前記加熱部が前記第2の温度以下となったタイミングで、前記他の記録処理領域に続く非記録処理領域を当該加熱部へ搬送するステップと、を実行する記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−196111(P2009−196111A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−37414(P2008−37414)
【出願日】平成20年2月19日(2008.2.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】