説明

記録装置

【課題】ユーザーが重労働無くロール媒体ホルダーにロール媒体を装着すること、および、巻き取ったロール媒体を取り外すことを考慮した記録装置を提供すること。
【解決手段】記録装置(1)は、ロール状のロール媒体Rを送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段2と、繰り出されたロール媒体Rに対して記録する記録部13を有する記録装置本体(11)と、記録されたロール媒体Rをロール状に巻き取る巻き取り手段24と、ロール状のロール媒体Rを載置可能な載置部(5)が上下動する昇降装置3と、を備え、該昇降装置3は、少なくとも前記繰り出し手段2にロール媒体Rを取り付けるときに位置する第1の所定位置B1と、前記巻き取り手段24からロール媒体Rを取り外すときに位置する第2の所定位置B2との間で移動可能な構成であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状のロール媒体を載置可能な載置部が上下動する昇降装置を有する記録装置に関する。
本願において、記録装置には、インクジェットプリンター、ワイヤドットプリンター、レーザープリンター、ラインプリンター、複写機、ファクシミリ等の種類が含まれるものとする。
【背景技術】
【0002】
大型のインクジェットプリンター等の記録装置では、下記の特許文献1に示すようにロール紙の重量が重いことからロール紙を一旦、記録装置の仮置き台に置いてから、記録装置に取り付けられているロール紙ホルダーに装着するようになっている。
従来は、前記ロール紙を仮置き台に置いてから、ロール紙ホルダーの軸部の高さ位置まで、ユーザーが手で約2〜5cm程度持ち上げてロール芯の芯口と前記軸部との位置合わせを行い、その後ロール紙ホルダーを軸方向に水平にスライドさせて前記軸部を前記芯口に装着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−23171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロール紙の重量は20〜30kg、更に40kg、50kgのものまであり、このようなロール紙の高重量化に伴い、前記人手によるロール紙の持ち上げ作業をユーザーに委ねることは、ユーザーに重労働を強いることになるという問題が顕在化してきた。
また、巻き取り手段によって記録したロール紙を巻き取った後において、巻き取り手段のホルダーの軸部からロール紙を取り外して下ろす作業が必要となる。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑み成されたものであり、その課題は、ロール媒体の高重量化に対応して重量の重いロール媒体であっても、ユーザーが重労働無くロール媒体ホルダーにロール媒体を装着すること、および、巻き取ったロール媒体を取り外すことを考慮した記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の第1の態様の記録装置は、ロール状のロール媒体を送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段と、繰り出されたロール媒体に対して記録する記録部を有する記録装置本体と、記録されたロール媒体をロール状に巻き取る巻き取り手段と、ロール状のロール媒体を載置可能な載置部が上下動する昇降装置と、を備え、該昇降装置は、少なくとも前記繰り出し手段にロール媒体を取り付けるときに位置する第1の所定位置と、前記巻き取り手段からロール媒体を取り外すときに位置する第2の所定位置との間で移動可能な構成であることを特徴とする。
ここで、前記第1の所定位置と、前記第2の所定位置との間の移動は、直線移動でなくてもよい。例えば、前記第1の所定位置から迂回して前記第2の所定位置まで移動してもよい。前記第2の所定位置から前記第1の所定位置へ戻るときも同様である。
【0007】
本態様によれば、ロール媒体を前記繰り出し手段にセットする前、前記繰り出し手段の下方の前記第1の所定位置に前記昇降装置を移動させる。これにより、前記載置部をロール媒体の仮置き台とすることができる。そして、前記載置部を上昇させてロール媒体を持ち上げて前記繰り出し手段にセットすることができる。例えば、前記繰り出し手段の第1ホルダー部にロール媒体が保持された状態にする。
【0008】
また、セット後は前記載置部を下降させ、前記巻き取り手段の下方の前記第2の所定位置へ前記昇降装置を移動させる。そして、前記載置部を上昇させて巻き取ったロール媒体を迎えに行き、巻き取ったロール媒体を前記巻き取り手段から外して上昇した状態の前記載置部に載せることができる。例えば、前記巻き取り手段の第2ホルダー部に保持されたロール媒体を第2ホルダー部から取り外して前記載置部に載せる。その後、前記載置部を下降させてロール媒体を下ろすことができる。特にロール媒体の重量が重い場合に有効である。
尚、前記載置部を上下動させる構成は、てことしてレバーを用いた手動の構成でもモーターの動力を用いた自動の構成でもよい。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記昇降装置は、前記記録装置本体と別体に構成されており、車輪と、該車輪をロック可能なロック機構と、を備えており、該ロック機構は、前記載置部が上昇しているとき、前記車輪がロック状態となり、前記ロック状態のときより前記載置部が下降しているとき、前記車輪はロックが解除された状態となる構成であることを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、第1の態様と同様の作用効果に加え、別体であるので、必要なときに前記昇降装置を前記記録装置本体に対して移動させることができる。ここで、前記載置部にロール媒体を載せた状態において、重心が高いときは移動しない。移動させるときは前記載置部を下降させて重心を低くしてから移動させる。従って、重心が高く不安定な状態での移動を防止することができ、前記載置部にロール媒体を載せた状態における前記昇降装置の転倒を防止することができる。安全対策として有効である。
【0011】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記昇降装置を前記記録装置本体に対して前記第1の所定位置に保持する第1保持手段と、前記昇降装置を前記第2の所定位置に保持する第2保持手段と、を備えていることを特徴とする。
本態様によれば、第2の態様と同様の作用効果に加え、前記昇降装置を前記記録装置本体に対して移動させた後は、前記第1の所定位置または前記第2の所定位置へ前記昇降装置を戻す。このとき、前記第1保持手段または第2保持手段によって前記昇降装置を前記第1の所定位置または第2の所定位置に精度よく位置決めすることができる。例えば、前記繰り出し手段の下方である前記第1の所定位置に位置する場合、前記繰り出し手段の第1ホルダー部へのロール媒体の取り付けが容易となる。
また、保持されているので、前記昇降装置が転倒する虞がない。
【0012】
本発明の第4の態様は、第3の態様において、ロール媒体が前記繰り出し手段にセットされ、記録が開始された後、前記第2保持手段が前記昇降装置を保持しているか否かを判定し、前記保持していないと判定した場合、前記第2の所定位置への前記昇降装置の移動を促すためのお知らせをする制御を実行することを特徴とする。
本態様によれば、第3の態様と同様の作用効果に加え、記録開始後において、前記昇降装置が前記第2の所定位置に位置していない場合、前記第2の所定位置へ移動させるようにユーザーに促すことができる。例えば、音声によってその旨をお知らせしてもよいし、表示部にその旨を表示してお知らせしてもよい。これにより、次に必要な位置へ前記昇降装置を予め移動させて準備することができる。
【0013】
本発明の第5の態様は、第2から第4のいずれか一の態様において、前記昇降装置は、記録装置とは別の記録後の処理を行う装置と共用であることを特徴とする。
本態様によれば、第2から第4のいずれか一の態様と同様の作用効果に加え、例えばラミネート加工をする場合、ラミネート装置の繰り出し手段の下方へ前記昇降装置を移動させる。そして、前記載置部を上昇させてロール媒体を持ち上げてロール媒体をセットすることができる。また、裁断加工をする場合、裁断装置の繰り出し手段の下方へ前記昇降装置を移動させる。そして、同様にロール媒体をセットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施例のプリンター全体の概略を示す側面図。
【図2】本実施例の昇降装置の概略を示す斜視図。
【図3】(A)(B)は本実施例の昇降装置のロック機構の原理を示す図。
【図4】本実施例の昇降装置の使い方を説明する図。
【図5】(A)(B)は第1の所定位置における昇降装置の使い方を示す側面図。
【図6】(A)(B)は第2の所定位置における昇降装置の使い方を示す側面図。
【図7】本実施例のプリンターの後工程を示す図(その1)。
【図8】本実施例のプリンターの後工程を示す図(その2)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すのは、本実施例の記録装置としての大型のインクジェットプリンター1(以下、単にプリンターという。)の全体構成の概略を示す側断面図である。
図1に示す如く、プリンター1は、繰り出し手段2と、記録部13と、巻き取り手段24と、を備えている。このうち、繰り出し手段2は、ロール状に巻かれたロール媒体Rを解いて送り方向Aへ送り出すことができるように構成されている。具体的には、第1ホルダー部8と、ローラー対12と、を有している。
【0016】
このうち、第1ホルダー部8は、ロール媒体Rの両端部を回動可能に保持することができるように設けられている。第1ホルダー部8は、ロール媒体Rのロール芯30の芯口31に嵌る第1軸部9と、ロール媒体Rの端部と接触可能なフランジ部10と、を有している。第1軸部9は、回動自在な構成でも、図示しないモーターの動力によって駆動する構成でもよい。回動自在な構成の場合は、送り方向下流側の駆動するローラー対12によってロール媒体Rが引っ張られて解かれるからである。
尚、第1ホルダー部8は、向い合わせで一対配設されている。そして、このうち少なくとも一方の第1ホルダー部8が、ロール媒体Rの幅寸法の違いに対応して幅方向Xにスライドし取付け位置を調整できるように構成されている。具体的には、幅方向Xに延設された第1ガイド軸6に対して摺動可能に設けられている。
【0017】
また、第1ホルダー部8の下方である第1の所定位置B1には、仮置き部としての仮置き台7を兼ねる昇降装置3が移動可能に設けられている。仮置き台7は、ロール媒体Rを第1ホルダー部8に取り付ける前に仮に置くための台である。昇降装置3は、仮置き台7に置かれた重たいロール媒体Rを容易に上方に持ち上げ、ロール媒体Rの側端を容易に第1ホルダー部8に取り付けることができるように構成されている。尚、Z軸方向が上下方向である。
【0018】
具体的に、昇降装置3は、幅方向Xに延設された二本のガイド部35に対して幅方向Xに摺動可能な基体部32と、操作レバー4と、昇降部5と、を備えている。そして、操作レバー4を一方向へ回動させることにより、動力伝達機構の一例である図示しないカム機構を介して昇降部5は上昇し、ロール媒体Rを持ち上げることができる。一方、操作レバー4を反対方向へ回動させることにより、前記カム機構を介して昇降部5は下降し、ロール媒体Rを下ろすことができる。
尚、本実施例では、操作レバー4を手動で回動させることにより、昇降装置3の昇降部5が上下動する構成としたが、これに限らない。例えば、ボタン操作で図示しないモーターを駆動させ、該モーターの動力によって上下動する構成でもよい。
【0019】
また、記録部13は、プリンター本体11を有している。プリンター本体11には、幅方向Xに延設されたキャリッジガイド軸15と、キャリッジ14と、記録ヘッド16と、媒体支持部17とが設けられている。キャリッジ14は、キャリッジガイド軸15にガイドされながら幅方向Xへ移動可能に設けられている。また、記録ヘッド16は、キャリッジ14における媒体支持部17と対向する位置に設けられ、インクをロール媒体Rに対して吐出して記録することができるように構成されている。またさらに、媒体支持部17は、ロール媒体Rを支持し、ロール媒体Rと記録ヘッド16との間の距離を所定の距離にすることができるように設けられている。
【0020】
尚、ローラー対12は、プリンター本体11の内部に設けたが、外部でもよい。ロール媒体Rを送り方向Aへ送ることができればよいからである。
また、プリンター本体11より送り方向上流側にはプレヒーター18が設けられている。ロール媒体Rに対して記録を実行する前の段階で予めロール媒体Rを温めることにより、記録を実行した際、ロール媒体Rに着弾したインクが乾燥しやすくするためである。
またさらに、プリンター本体11より送り方向下流側にはアフターヒーター19が設けられている。ロール媒体Rに着弾したインクを、記録を実行した後から巻き取り手段24によって巻かれる前までの間に、確実に乾燥させるためである。
【0021】
またさらに、巻き取り手段24は、モーター(図示せず)の動力によってロール媒体Rを巻き取ることができるように設けられている。具体的には、二本の第2ガイド軸26に取り付けられた一対の第2ホルダー部28の第2軸部29に巻き取ったロール媒体Rを保持することができるように構成されている。
尚、巻き取る際にロール媒体Rに張力を与えるテンションバー21が設けられている。これにより、撓みを除去してきれいにロール媒体Rをロール状に巻き取ることができる。
【0022】
また、プリンター1は、下端部に移動用のキャスター23を有する側面視逆T字形の支持フレーム22を対向するように左右両端部に備えている。そして、支持フレーム22の上部にプリンター本体11が設けられている。
【0023】
また、ロール媒体Rを繰り出し手段2の第1ホルダー部8に取り付けるとき、および第1ホルダー部8からロール媒体Rを取り外すときがある。これらのとき、昇降装置3は、第1ホルダー部8の下方である第1の所定位置B1に位置することができるように設けられている。さらに、巻き取り手段24の第2ホルダー部28からロール媒体Rを取り外すときがある。
【0024】
このとき、昇降装置3は、第2ホルダー部28の下方である第2の所定位置B2に位置することができるように設けられている。つまり、昇降装置3は、少なくとも、第1の所定位置B1と、第2の所定位置B2との間を移動可能に構成されている。第1の所定位置B1と、第2の所定位置B2との間の移動は、直線移動でなくてもよい。例えば、第1の所定位置B1から迂回して第2の所定位置B2まで移動してもよい。第2の所定位置B2から第1の所定位置B1へ戻るときも同様である。
【0025】
また、ロール媒体Rを繰り出し手段2の第1ホルダー部8に取り付けるとき、および第1ホルダー部8からロール媒体Rを取り外すとき、第1保持手段20によって、昇降装置3は第1の所定位置B1に保持される。同様に、巻き取り手段24の第2ホルダー部28からロール媒体Rを取り外すとき、第2保持手段33によって、昇降装置3は第2の所定位置B2に保持されるように構成されている。
【0026】
第1保持手段20および第2保持手段33は、一例として、凹部と凸部との係合によって保持する構成とすることができる。また、電磁石を用いてもよい。電磁石をONにすることにより、磁力を生じさせて磁力によって昇降装置3を第1の所定位置B1、または第2の所定位置B2に保持することができる。一方、電磁石をOFFにすることにより、磁力を消滅させて保持状態を解除することができる。
【0027】
本実施例では、昇降装置3は、プリンター本体11と別体に構成されている。さらに、昇降装置3の基体フレーム27の下方に車輪25を備えており、自由に移動可能に設けられている。本実施例では、自由に移動可能に設けたが、これに限らない。
一つ目の作用効果として、ユーザーが昇降装置3を仮置き台7とすることができるという作用効果がある。
そして、二つ目として、ロール媒体Rを持ち上げて繰り出し手段2の第1ホルダー部8にセットすることができるという作用効果がある。
【0028】
さらに、三つ目として、セット後は第1の所定位置B1から第2の所定位置B2へ移動させ、巻き取ったロール媒体Rを第2ホルダー部28から外して下ろすことができるという作用効果がある。
これら三つの作用効果を得るためには、技術的思想としては、昇降装置3がプリンター本体11に対して第1の所定位置B1と第2の所定位置B2との間で移動可能であればよい。従って、例えば、昇降装置3がプリンター本体11に対してスライド可能に一体に構成されていてもよい。
【0029】
続いて、本実施例の昇降装置3について詳しく説明する。
図2に示すのは、本実施例の昇降装置3の概略を示す斜視図である。
図2に示す如く、昇降装置3は、前述したように、操作レバー4と、基体部32と、昇降部5と、ガイド部35と、基体フレーム27と、車輪25と、を備えている。このうち、基体部32および昇降部5の上面によって、仮置き台7としてのロール媒体Rが載置される載置部34が構成される。
尚、仮置き台7として、二本のガイド部35に対して直接、ロール媒体Rを載置してもよい。
【0030】
また、載置部34の上面は、幅方向Xから見て、V字やU字状に構成されている。従って、載置されたロール媒体Rの位置を安定させることができる。言い換えると、載置されたロール媒体Rが勝手に転がり落ちることを防止することができる。
またさらに、操作レバー4、基体部32および昇降部5は、一組設けられており、ガイド部35に対して摺動可能に取り付けられている。また、昇降部5がロール媒体Rの両側側端の近傍の下方に位置するように位置を調整する。そして、操作レバー4を回動することにより、昇降部5を上下動させてロール媒体Rの側端を上げ下げすることができるように構成されている。
【0031】
また、昇降装置3には、車輪25の回転をロック可能なロック機構36が設けられている。ロック機構36は、昇降部5の上下動とリンクして、車輪25の回転をロックした状態と、ロックを解除した状態とを切り換えることができるように構成されている。昇降部5が上がった状態では、通常、昇降部5の上にロール媒体Rが乗っている。この状態では、重心が比較的高い位置となり、昇降装置3全体として比較的不安定となる虞がある。
【0032】
従って、この状態で昇降装置3を移動させるべきではない。そこで、昇降部5が上がった状態では、車輪25の回転をロックした状態とする。そして、ロック状態のときよりも昇降部5が下がった状態では、重心が低くなる。従って、昇降装置3全体として安定し、移動に適した状態となる。そこで、昇降部5が下がった状態では、車輪25のロックを解除した状態とする。
【0033】
続いて、本実施例の昇降装置3のロック機構36の原理について説明する。
図3(A)(B)に示すのは、本実施例の昇降装置3のロック機構36の原理を示す図である。このうち、図3(A)はロック状態である。一方、図3(B)はロック解除状態である。
図3(A)(B)に示す如く、本実施例の昇降装置3は、車輪25の回転をロック可能なロック機構36を備えている。ロック機構36は、一例として、スライド部5aと、第1ロックレバー38と、第2ロックレバー39と、ねじりコイルばね37と、車軸25aと、を有している。
【0034】
このうち、スライド部5aは、昇降部5の上下動と連動して例えば上下方向Zへ摺動するように設けられている。また、第1ロックレバー38は、第1支軸38bを中心に揺動可能に設けられている。さらに、第1ロックレバー38の一端側には、第1ロック部38aが形成されている。また、第1支軸38bを中心とした第1ギア38cが第1ロックレバー38と一体に形成されている。第2ロックレバー39も、第1ロックレバー38と同様、第2支軸39bを中心に揺動可能に設けられている。
【0035】
さらに、第2ロックレバー39の一端側には、第2ロック部39aが形成されている。また、第2支軸39bを中心とした第2ギア39cが第2ロックレバー39と一体に形成されている。第2ギア39cと第1ギア38cとが噛み合い、第1ロックレバー38と、第2ロックレバー39とが連動するように構成されている。またさらに、ねじりコイルばね37は、第1ロックレバー38の他端側と、第2ロックレバー39の他端側と接続されている。そして、ねじりコイルばね37は、第1ロック部38aと、第2ロック部39aとが互いに接近する方向へ付勢している。
【0036】
従って、図3(A)に示す如く、スライド部5aが第1ロックレバー38および第2ロックレバー39に対して作用していないとき、第1ロック部38aおよび第2ロック部39aは、車輪25の車軸25aを挟圧する。ここで、車軸25aは軸方向から見て正円でない形、例えば、四角形の断面を有するように設けられている。そして、第1ロック部38aおよび第2ロック部39aは、車軸25aの外周の凹凸と嵌るようにして車軸25aを挟圧する。従って、車軸25aを介して車輪25が回転しないようにロックすることができる。
【0037】
一方、図3(B)に示す如く、昇降部5が下がると、スライド部5aが下方へ摺動する。そして、第1ロックレバー38の他端側と当接し、該他端側をねじりコイルばね37の付勢力に抗して押し下げる。すると、第1ロックレバー38の一端側の第1ロック部38aは、車軸25aから離間する方向へ移動する。このとき、第1ロックレバー38の動力が第1ギア38cおよび第2ギア39cを介して第2ロックレバー39で伝達される。従って、第2ロック部39aも、車軸25aから離間する方向へ移動する。その結果、車輪25のロック状態を解除することができる。
【0038】
尚、昇降部5が上がると、スライド部5aが上方へ摺動する。そして、スライド部5aは、第1ロックレバー38の他端側から離間する。この際、ねじりコイルばね37の付勢力によって、第1ロック部38aおよび第2ロック部39aが、車軸25aに接近する方向へ移動する。そして、図3(A)に示す如く、ねじりコイルばね37の付勢力によって、第1ロック部38aおよび第2ロック部39aが車軸25aを挟圧する。その結果、再び、車輪25が回転しないようにロックした状態となる。
【0039】
続いて、本実施例の昇降装置3の使い方について説明する。
図4に示すのは、本実施例の昇降装置3の使い方の手順について説明する図である。
また、図5(A)(B)に示すのは、第1の所定位置B1における昇降装置3の使い方を示す側面図である。このうち、図5(A)はロール媒体Rをセットする前の昇降部5が下がっているときである。一方、図5(B)は昇降部5を上げてロール媒体Rをセットするときである。
またさらに、図6(A)(B)に示すのは、第2の所定位置B2における昇降装置3の使い方を示す側面図である。このうち、図6(A)は昇降部5を上げてロール媒体Rを外すときである。一方、図6(B)は昇降部5を下げてロール媒体Rを下ろしたときである。
【0040】
以下、図5(A)(B)、図6(A)(B)の具体的な場面を示しながら、図4に示す手順に沿って説明する。
図4に示す如く、ステップS1では、プリンター1による記録を実行する際、先ず、ユーザーが、昇降装置3を第1の所定位置B1へ移動させる(図5(A)参照)。繰り出し手段2の第1ホルダー部8にロール媒体Rをセットするためである。このとき、第1保持手段20によって昇降装置3を第1の所定位置B1に保持する。そして、ステップS2へ進む。
【0041】
ステップS2では、ユーザーが、仮置き台7である載置部34にロール媒体Rを仮置きする(図5(A)参照)。ロール媒体Rの重量が重く、直接第1ホルダー部8にセットすることが困難だからである。
このとき、ロール媒体Rを二本のガイド部35の上に直に置いてもよいし、載置部34に置いてもよい。そして、ステップS3へ進む。
【0042】
ステップS3では、ロール媒体Rを持ち上げるために、ユーザーが、操作レバー4を回動して昇降部5を上昇させる(図5(B)参照)。
ステップS4では、ユーザーが、第1ホルダー部8にロール媒体Rをセットする(図5(B)参照)。
ステップS5では、ユーザーが、操作レバー4を反対方向へ回動して昇降部5を下降させる。
具体的には、先ず、ユーザーが、ロール媒体Rの両側端のうちの一端を、昇降部5を上昇させて持ち上げる。そして、一対の第1ホルダー部8の一方にセットする。その後、昇降部5を下ろす。次に、同様に、ロール媒体Rの他端を、昇降部5を上昇させて持ち上げる。そして、第1ホルダーの他方にセットする。その後、昇降部5を下ろす。
【0043】
ステップS6では、プリンター1が記録の実行を開始したことを、ユーザーが確認する。
ステップS7では、ユーザーが、昇降装置3の位置を確認する。この理由は、記録の実行を開始した後は、昇降装置3は、第1の所定位置B1では不要だからである。そして、記録が終了したとき、巻き取り手段24によって巻き取ったロール媒体Rを第2ホルダー部28から取り外して下ろすために、昇降装置3は、第2の所定位置B2で必要となるからである。従って、記録が終了するまでに昇降装置3を第2の所定位置B2へ移動させて予め準備しておくことが望ましいからである。
【0044】
この際、プリンター1の制御部(図示せず)も、昇降装置3の位置を確認する。確認の仕方は、昇降装置3が第2の所定位置B2に位置しているか否かを判定することにより行う。例えば、第2保持手段33が昇降装置3を保持しているか否かによって判定することができる。第2保持手段33の前述した電磁石がONであれば、第2保持手段33が昇降装置3を保持しており、昇降装置3が第2の所定位置B2に位置していると判定することができる。
尚、第2の所定位置B2における昇降装置3を検出する専用のセンサーを設けてもよい。
【0045】
そして、昇降装置3がまだ第2の所定位置B2に位置していないと判定した場合、ユーザーに対して、第2の所定位置B2への昇降装置3の移動を促すために、その旨の音声をスピーカー(図示せず)から発する制御や、その旨の表示を表示部(図示せず)に表示する制御を実行する。係る場合、ステップS8へ進む。
一方、昇降装置3が既に第2の所定位置B2に位置していると判定した場合、ステップS9へ進む。ユーザーがロール媒体Rを繰り出し手段2の第1ホルダー部8にセットしてから記録実行開始までの間に、ユーザーが昇降装置3を既に第2の所定位置B2へ移動したと考えられるからである。
【0046】
ステップ8では、ユーザーが、昇降装置3を第1の所定位置B1から第2の所定位置B2まで移動させる。具体的には、第1保持手段20を解除して、昇降装置3を第1の所定位置B1から第2の所定位置B2まで移動させる。そして、第2保持手段33によって昇降装置3を第2の所定位置B2に保持する。
尚、この移動は、記録が完了する前でも完了した後でもよい。
【0047】
ステップS9では、記録が完了した後、ユーザーが、操作レバー4を回動して昇降部5を上昇させる(図6(A)参照)。ロール媒体Rを下方から支えることにより、ロール媒体Rを第2ホルダー部28から容易に取り外すことができるからである。また、取り外したロール媒体Rを、長い距離落下させることなく、受け止めることができるからである。尚、取り外す際、取り付けと同様、ロール媒体Rの両側側端の一方を取り外してから他方を取り外す。
ステップS10では、ユーザーが、第2ホルダー部28からロール媒体Rを取り外す(図6(A)参照)。
【0048】
ステップS11では、ユーザーが、操作レバー4を反対方向へ回動して昇降部5を下ろす(図6(B)参照)。
ステップS12では、ユーザーが、昇降装置3を後工程へ搬送する。具体的には、第2保持手段33を解除する。そして、そのままの状態で、出荷待ちの場所へ移動させてもよい。また、記録後の処理を行う場合は、記録後の処理を行う装置がある場所まで移動させる。
【0049】
続いて、プリンター1の巻き取り手段24の第2ホルダー部28からロール媒体Rを下ろした後の昇降装置3の使い方について説明する。
図7に示すのは、本実施例のプリンター1の後工程その1を示す図である。
図7に示す如く、例えば、記録後にラミネート加工処理を行うものとする。プリンター1において、巻き取り手段24の第2ホルダー部28からロール媒体Rを下ろした後、第2保持手段33を解除して、昇降装置3をプリンター1の第2の所定位置B2からラミネート加工装置40がある場所へ移動させる。
【0050】
ここで、ラミネート加工装置40は、一例として、昇降装置46と、媒体繰り出し手段41と、第1フィルム繰り出し手段42と、第2フィルム繰り出し手段43と、加圧ローラー対44と、巻き取り手段45と、を備えている。このうち、昇降装置46は、ロール媒体Rを媒体繰り出し手段41のホルダー部47の高さまで持ち上げることができるように設けられている。また、媒体繰り出し手段41は、記録されたロール媒体Rを加圧ローラー対44へ繰り出すことができるように設けられている。またさらに、第1フィルム繰り出し手段42は、ロール媒体Rの一の面をラミネートする第1フィルムを繰り出すことができるように設けられている。
【0051】
同様に、第2フィルム繰り出し手段43は、ロール媒体Rの前記一の面と反対側の面をラミネートする第2フィルムを繰り出すことができるように設けられている。また、加圧ローラー対44は、繰り出されたロール媒体Rに対して第1フィルムおよび第2フィルムを圧着させることができるように構成されている。つまり、ラミネート加工である。またさらに、巻き取り手段45は、モーターの動力によって、ラミネート加工された媒体を巻き取ることができるように設けられている。
【0052】
ここで、プリンター1の昇降装置3は、ラミネート加工装置40の昇降装置46を兼ねることができるように構成されている。従って、プリンター1の昇降装置3を、ラミネート加工装置40の昇降装置46として所定の位置Cまで移動させる。つまり、プリンター1で巻き取ったロール媒体Rを下ろして、そのままラミネート加工装置40へ搬送することができる。そして、ロール媒体Rを持ち上げて媒体繰り出し手段41のホルダー部47にセットすることができる。
その結果、ユーザーの負担が著しく軽減される。特にロール媒体Rの重量が重い場合に有効である。
【0053】
図8に示すのは、本実施例のプリンター1の後工程その2を示す図である。
図8に示す如く、例えば、記録後に裁断加工処理を行うものとする。プリンター1において、巻き取り手段24の第2ホルダー部28からロール媒体Rを下ろした後、前述した後工程その1と同様、第2保持手段33を解除して、昇降装置3をプリンター1の第2の所定位置B2から裁断加工装置50がある場所へ移動させる。
【0054】
ここで、裁断加工装置50は、一例として、昇降装置56と、媒体繰り出し手段51と、送りローラー対52と、カッター53と、カッター台54と、載置トレイ55と、を備えている。このうち、昇降装置56は、ロール媒体Rを媒体繰り出し手段51のホルダー部57の高さまで持ち上げることができるように設けられている。また、媒体繰り出し手段51は、記録されたロール媒体Rを送りローラー対52へ繰り出すことができるように設けられている。またさらに、送りローラー対52は、図示しないモーターの動力によって、送り方向下流側へ媒体を所定量送り、停止しを繰り返す間欠送りを実行することができるように構成されている。
【0055】
また、カッター53は、送りローラー対52による送りが停止したとき、媒体の幅方向Xへ移動してカッター台54に支持されている媒体を裁断することができるように構成されている。またさらに、載置トレイ55は、裁断された媒体を順番に載置することができるように設けられている。
ここで、プリンター1の昇降装置3は、裁断加工装置50の昇降装置56を兼ねることができるように構成されている。
【0056】
従って、プリンター1の昇降装置3を、裁断加工装置50の昇降装置56として所定の位置Dまで移動させる。つまり、前述した後工程その1と同様、プリンター1で巻き取ったロール媒体Rを下ろして、そのまま裁断加工装置50へ搬送することができる。そして、ロール媒体Rを持ち上げて媒体繰り出し手段51のホルダー部57にセットすることができる。
その結果、ユーザーの負担が著しく軽減される。特にロール媒体Rの重量が重い場合に有効である。
【0057】
本実施例の記録装置としてのプリンター1は、ロール状のロール媒体Rを送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段2と、繰り出されたロール媒体Rに対して記録する記録部13を有する記録装置本体としてのプリンター本体11と、記録されたロール媒体Rをロール状に巻き取る巻き取り手段24と、ロール状のロール媒体Rを載置可能な載置部34の昇降部5が上下動する昇降装置3と、を備え、昇降装置3は、少なくとも繰り出し手段2にロール媒体Rを取り付けるときに位置する第1の所定位置B1と、巻き取り手段24からロール媒体Rを取り外すときに位置する第2の所定位置B2との間で移動可能な構成であることを特徴とする。
【0058】
また、本実施例において、昇降装置3は、プリンター本体11と別体に構成されており、車輪25と、車輪25をロック可能なロック機構36と、を備えており、ロック機構36は、昇降部5が上昇しているとき、車輪25がロック状態となり、ロック状態のときより昇降部5が下降しているとき、車輪25はロックが解除された状態となる構成であることを特徴とする。
【0059】
またさらに、本実施例において、昇降装置3をプリンター本体11に対して第1の所定位置B1に保持する第1保持手段20と、昇降装置3を第2の所定位置B2に保持する第2保持手段33と、を備えていることを特徴とする。
また、本実施例において、ロール媒体Rが繰り出し手段2にセットされ、記録が開始された後、第2保持手段33が昇降装置3を保持しているか否かを判定し、前記保持していないと判定した場合、第2の所定位置B2への昇降装置3の移動を促すためのお知らせをする制御を実行することを特徴とする。
【0060】
またさらに、本実施例において、昇降装置3は、プリンター1とは別の記録後の処理を行う装置としてのラミネート加工装置40、裁断加工装置50等と共用であることを特徴とする。具体的には、プリンター1の昇降装置3は、ラミネート加工装置40の昇降装置46、裁断加工装置50の昇降装置56を兼ねる構成である。
【0061】
尚、本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0062】
1 プリンター、2 繰り出し手段、3 昇降装置、4 操作レバー、5 昇降部、
5a スライド部、6 第1ガイド軸、7 仮置き台、8 第1ホルダー部、
9 第1軸部、10 フランジ部、11 プリンター本体、12 ローラー対、
13 記録部、14 キャリッジ、15 キャリッジガイド軸、16 記録ヘッド、
17 媒体支持部、18 プレヒーター、19 アフターヒーター、
20 第1保持手段、21 テンションバー、22 支持フレーム、23 キャスター、
24 巻き取り手段、25 車輪、25a 車軸、26 第2ガイド軸、
27 基体フレーム、28 第2ホルダー部、29 第2軸部、30 ロール芯、
31 芯口、32 基体部、33 第2保持手段、34 載置部、35 ガイド部、
36 ロック機構、37 ねじりコイルばね、38 第1ロックレバー、
38a 第1ロック部、38b 第1支軸、38c 第1ギア、
39 第2ロックレバー、39a 第2ロック部、39b 第2支軸、
39c 第2ギア、40 ラミネート加工装置、
41 (ラミネート加工装置の)媒体繰り出し手段、42 第1フィルム繰り出し手段、
43 第2フィルム繰り出し手段、44 加圧ローラー対、
45 (ラミネート加工装置の)巻き取り手段、
46 (ラミネート加工装置の)昇降装置、47 ホルダー部、50 裁断加工装置、
51 (裁断加工装置の)媒体繰り出し手段、52 送りローラー対、53 カッター、
54 カッター台、55 載置トレイ、56 (裁断加工装置の)昇降装置、
57 ホルダー部、A 送り方向、B1 第1の所定位置、B2 第2の所定位置、
C (ラミネート加工装置における昇降装置の)所定の位置、
D (裁断加工装置における昇降装置の)所定の位置、R ロール媒体、X 幅方向、
Z 上下方向(鉛直方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状のロール媒体を送り方向下流側へ繰り出し可能な繰り出し手段と、
繰り出されたロール媒体に対して記録する記録部を有する記録装置本体と、
記録されたロール媒体をロール状に巻き取る巻き取り手段と、
ロール状のロール媒体を載置可能な載置部が上下動する昇降装置と、を備え、
該昇降装置は、少なくとも前記繰り出し手段にロール媒体を取り付けるときに位置する第1の所定位置と、前記巻き取り手段からロール媒体を取り外すときに位置する第2の所定位置との間で移動可能な構成である記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記昇降装置は、前記記録装置本体と別体に構成されており、
車輪と、
該車輪をロック可能なロック機構と、を備えており、
該ロック機構は、前記載置部が上昇しているとき、前記車輪がロック状態となり、
前記ロック状態のときより前記載置部が下降しているとき、前記車輪はロックが解除された状態となる構成である記録装置。
【請求項3】
請求項2に記載の記録装置において、前記昇降装置を前記記録装置本体に対して前記第1の所定位置に保持する第1保持手段と、
前記昇降装置を前記第2の所定位置に保持する第2保持手段と、を備えていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録装置において、ロール媒体が前記繰り出し手段にセットされ、記録が開始された後、前記第2保持手段が前記昇降装置を保持しているか否かを判定し、前記保持していないと判定した場合、前記第2の所定位置への前記昇降装置の移動を促すためのお知らせをする制御を実行する記録装置。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1項に記載の記録装置において、前記昇降装置は、記録装置とは別の記録後の処理を行う装置と共用であることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−166915(P2012−166915A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29896(P2011−29896)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】