説明

記録装置

【課題】ロール体の両端部に装着されるフランジと、このフランジの軸孔に嵌合する軸体と、の嵌合状態を確実に解除し、フランジを支持する軸体の変形や破損を防止する。
【解決手段】可動側ホルダ40は固定側ホルダ30に対し接離動可能に設けられ、可動側ホルダ40を固定側ホルダ30側に移動させることによりロール体Rがセット状態となる。可動側ホルダ40には、可動側フランジ19の段差部19dと係合する係合部43が形成されており、ロール体Rのセット状態から、可動側ホルダ40を固定側ホルダ30から離れる方向にスライド移動させると、係合部43に段差部19dが引っ掛かる。更に可動側ホルダ40を移動させると、ロール体Rが、可動側ホルダ40とともに固定側ホルダ30から離れる方向に移動し、固定側ホルダ30の側の駆動軸31と軸孔20cとの嵌合状態が確実に解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体が巻かれて成るロール体(例えば、ロール紙など)をセット可能な、ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ファクシミリやプリンタ等に代表される記録装置においては、被記録媒体としてロール紙が用いられることがある。記録装置においてロール紙本体、即ちロール紙が巻かれて成るロール体をセットするホルダ(ロール紙ホルダ)としては種々の構成があり、その一例が、特許文献1に示されている。特許文献1記載の記録装置は、ロール体の両端にフランジ部材を嵌め込み、このフランジ部材を軸体(支持軸部)により支持させることで、ロール体をセットする構成を備えている。
【0003】
より具体的には、フランジ部材を支持する支持軸部は、一方側が固定フランジ受け、他方側が可動フランジ受けに設けられており、ロール体のセット前状態では、フランジ部材が固定フランジ受けと可動フランジ受けに載置された状態となっている。そしてこの状態から可動フランジ受けを固定フランジ受け側にスライド移動させることにより、ロール体両端のフランジ部材が可動フランジ受け側の支持軸部と固定フランジ側の支持軸部とに嵌め込まれ、ロール体がセットされる様になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−261754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで上記特許文献1記載の記録装置において、セットしたロール体を取り外す場合には、可動フランジ受けを固定フランジ受けから離れる方向に移動させ、即ちロール体両端のフランジと支持軸部との嵌合状態を解除させる操作を行うことが必要となる。しかしながらこの解除操作が不十分であると、フランジに支持軸部が或る程度挿入された状態のまま、ロール体が取り外されようとする虞がある。
【0006】
この様にフランジに支持軸部が或る程度挿入された状態のままロール体が取り外されようとすると、支持軸部に変形や破損が生じ、ロール体を適切な状態で支持できなくなる虞がある。
そこで本発明はこの様な状況に鑑みなされたものであり、その目的は、ロール体の両端部に装着されるフランジと、このフランジの軸孔に嵌合する軸体と、の嵌合状態を確実に解除し、これによりフランジを支持する軸体の変形や破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、被記録媒体に記録を行う記録部と、被記録媒体が巻かれて成るロール体の一方側端部に装着された第1フランジの軸孔に嵌合する第1軸を備えるとともに、前記ロール体の回転軸線方向に移動可能な第1ホルダと、前記ロール体の他方側端部に装着された第2フランジの軸孔に嵌合する第2軸を備えた第2ホルダと、を備えた記録装置であって、前記第1ホルダに設けられ、前記第1軸が前記第1フランジの軸孔から外れた状態において前記第1フランジの外周部と接して当該第1フランジを支持する第1フランジ支持面と、前記第2ホルダに設けられ、前記第2軸が前記第2フランジの軸孔から外れた状態において前記第2フランジの外周部と接して当該第2フランジを支持する第2フランジ支持面と、前記第2ホルダに設けられ、前記第2フランジを前記第2ホルダ側の基準位置に誘導するフランジ誘導手段と、を備え、前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態から、前記第1ホルダを前記第2ホルダから離れる方向に移動させた際、前記第1フランジに設けられた第1被係合部と係合することにより、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させる第1係合部が前記第1フランジ支持面に設けられていることを特徴とする。
【0008】
第2ホルダには、第2フランジを第2ホルダ側の基準位置に誘導するフランジ誘導手段が設けられている為、ロール体のセット状態(前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態。以下同様。)から、第1ホルダを第2ホルダから離れる方向に移動させた際に、第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態が解除されるより先に、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が解除され易い構成となっている。従って第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態の解除が不完全となり、第2フランジの軸孔に第2軸が或る程度挿入された状態のままロール体が取り外され、その結果第2軸を変形させたり破損させる可能性がある。
【0009】
しかしながら第1ホルダの第1フランジ支持面には、ロール体のセット状態から第1ホルダを第2ホルダから離れる方向に移動させた際に、ロール体を第1ホルダとともに第2ホルダから離間する方向に移動させる第1係合部が設けられているので、ロール体が第1ホルダとともに第2ホルダから離間する方向に移動することで、第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態が適切に解除される。従って第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態の解除が不完全となり、第2軸を変形させたり破損させることが確実に防止される。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様に係る記録装置において、前記第2フランジ支持面には、前記第2フランジに設けられた第2被係合部と係合することにより、前記ロール体の前記第1ホルダ側への移動を規制する第2係合部が設けられていることを特徴とする。
【0011】
ロール体のセット状態から第1ホルダを第2ホルダから離れる方向に移動させた際、仮に第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態が、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態より先に解除されてしまうと、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が解除されないままロール体が第1ホルダとともに動いてしまうことになる。そしてその結果第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態の解除が不完全となり、この状態からロール体が取り外されようとすることによって、第1軸を変形させたり破損させる可能性がある。
【0012】
しかしながら第2ホルダの第2フランジ支持面には、第2フランジに設けられた第2被係合部と係合することにより、ロール体の第1ホルダ側への移動を規制する第2係合部が設けられているので、仮に第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が解除されないままロール体が第1ホルダとともに動いてしまっても、やがてロール体の移動が止められ、その結果第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が適切に解除される。従って第1軸を変形させたり破損させることを防止することができる。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1のまたは第2の態様に係る記録装置において、前記フランジ誘導手段が、前記第2フランジの軸孔内部に設けられたボスと、前記第2軸に形成され、当該第2軸の回転に伴い前記ボスを誘導位置へ案内する誘導溝とを備えて構成されていることを特徴とする。本態様によれば、前記フランジ誘導手段を、簡易な構成で低コストに構成することができる。
【0014】
本発明の第4の態様は、被記録媒体に記録を行う記録部と、被記録媒体が巻かれて成るロール体の一方側端部に装着された第1フランジの軸孔に嵌合する第1軸を備えるとともに、前記ロール体の回転軸線方向に移動可能な第1ホルダと、前記ロール体の他方側端部に装着された第2フランジの軸孔に嵌合する第2軸を備えた第2ホルダと、を備えた記録装置であって、前記第1ホルダに設けられ、前記第1軸が前記第1フランジの軸孔から外れた状態において前記第1フランジの外周部と接して当該第1フランジを支持する第1フランジ支持面と、前記第2ホルダに設けられ、前記第2軸が前記第2フランジの軸孔から外れた状態において前記第2フランジの外周部と接して当該第2フランジを支持する第2フランジ支持面と、を備え、前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態から、前記第1ホルダを前記第2ホルダから離れる方向に移動させた際、前記第1フランジに設けられた第1被係合部と係合することにより、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させる第1係合部が前記第1フランジ支持面に設けられ、前記第2フランジ支持面には、前記第2フランジに設けられた第2被係合部と係合することにより、前記ロール体の前記第1ホルダ側への移動を規制する第2係合部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
ロール体のセット状態から、第1ホルダを第2ホルダから離れる方向に移動させた際には、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合強度、および第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合強度、によって、いずれの嵌合状態が先に解除されるかが変化する。従って例えば、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が、第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態より先に解除されると、第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態の解除が不完全となり、この状態のままロール体が取り外されることで、第2軸を変形させたり破損させる可能性がある。
【0016】
逆に第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態が、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態より先に解除されると、第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態の解除が不完全となり、この状態のままロール体が取り外されることで、第1軸を変形させたり破損させる可能性がある。
【0017】
しかし本態様によれば、第1ホルダの第1フランジ支持面には、ロール体のセット状態から第1ホルダを第2ホルダから離れる方向に移動させた際に、ロール体を第1ホルダとともに第2ホルダから離間する方向に移動させる第1係合部が設けられているので、ロール体が第1ホルダとともに第2ホルダから離間する方向に移動することで第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態が適切に解除される。従って第2フランジの軸孔と第2軸との嵌合状態の解除が不完全となり、第2軸を変形させたり破損させることが確実に防止される。
【0018】
加えて第2ホルダの第2フランジ支持面には、第2フランジに設けられた第2被係合部と係合することにより、ロール体の第1ホルダ側への移動を規制する第2係合部が設けられているので、仮に第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が解除されないままロール体が第1ホルダとともに動いてしまっても、やがてロール体の移動が止められ、その結果第1フランジの軸孔と第1軸との嵌合状態が適切に解除される。従って第1軸を変形させたり破損させることを防止することができる。
【0019】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれかに係る記録装置において、前記第1フランジ支持面及び前記第2フランジ支持面は、前記第1フランジ及び前記第2フランジをそれぞれ支持した状態において、前記ロール体の外周角部との当接を回避する形状を成していることを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、第1フランジ支持面及び第2フランジ支持面は、ロール体の外周角部との当接を回避する形状を成しているので、ロール体のセット時或いは取り外し時にロール体の外周角部が第1フランジ支持面や第2フランジ支持面に接触してロール体外周角部(即ち、被記録媒体の側端)にダメージを与えることを防止することができる。
【0021】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれかに係る記録装置において、前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態における、前記第1フランジ及び前記第2フランジの少なくとも一方側の外周面と対向する位置であって、前記第1ホルダ及び前記第2ホルダによる前記ロール体の支持位置へ前記ロール体をセットする際の手前側位置に、壁部が設けられていることを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、ロール体のセット状態においては、前記第1フランジ及び前記第2フランジの少なくともいずれか一方側の外周面と対向する位置であって、前記第1ホルダ及び前記第2ホルダによる前記ロール体の支持位置へ前記ロール体をセットする際の手前側位置に、壁部が設けられているので、この壁部によりロール体が視覚的に取り外し不可能であることをユーザに認識させることができる。従ってロール体がセットされた状態において当該ロール体が不用意に取り外されようとすることが防止され、第1軸または第2軸に、或いは第1軸及び第2軸の双方にダメージを与えることを防止できる。
【0023】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれかに係るロール体ホルダにおいて、前記第1軸及び前記第2軸の回転軸線方向と直交する方向に前記第1ホルダ及び前記第2ホルダから所定距離離れた位置に、前記第1フランジ及び前記第2フランジを装着したロール体ホルダを仮置きする仮置き部を備え、当該仮置き部から、前記第1ホルダ及び前記第2ホルダによる前記ロール体の支持位置に向かって前記ロール体を移動可能な構成を備え、前記仮置き部から前記支持位置に向かって前記ロール体を移動させる際の、前記第1フランジの前記第1軸への衝突コース上、及び前記第2フランジの前記第2軸への衝突コース上、の少なくともいずれか一方側に凸状体が配置されていることを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、ロール体を仮置きする仮置き部からロール体の支持位置に向かってロール体を移動させる際の第1フランジの第1軸への衝突コース上、及び第2フランジの第2軸への衝突コース上、の少なくともいずれか一方側に凸状体が配置されているので、この凸状体により、ロール体の一方側端部に装着された第1フランジが第1軸に衝突することを防止でき、或いは第2フランジが第2軸に衝突することを防止できる。又は、前記いずれの衝突をも防止することができる。従ってロール体を支持する第1軸や第2軸に変形や破損が生じ、その結果ロール体を適切な状態で支持できなくなることが防止される。
【0025】
本発明の第8の態様は、被記録媒体に記録を行う記録部と、被記録媒体が巻かれて成るロール体の一方側端部に装着された第1フランジの軸孔に嵌合する第1軸を備えるとともに、前記ロール体の回転軸線方向に移動可能な第1ホルダと、前記ロール体の他方側端部に装着された第2フランジの軸孔に嵌合する第2軸を備えた第2ホルダと、を備えた記録装置であって、前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態から、前記第1ホルダを前記第2ホルダから離れる方向に移動させた際、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させることにより、前記第1フランジの軸孔から前記第1軸が外れる前に前記第2フランジの軸孔から前記第2軸を外す軸外し手段を備えていることを特徴とする。
【0026】
本態様は、以下の技術的課題を解決することを目的とする。即ちユーザが第1ホルダを操作してロール体の取り外し作業を行う際、ユーザは第1ホルダ側で操作を行うので特にロール体が長尺である場合には第2ホルダ側で第2フランジから第2軸が外れたか否かが視認し難い場合がある。その結果、第2フランジから第2軸が完全に外れていないままロール体を取り外そうとする場合があり、これにより第2軸を曲げてしまったり、第2フランジを破損させてしまう虞がある。
【0027】
そこで本態様では、上記軸外し手段を設けた。これにより、第1ホルダを操作すると、第1ホルダ側で第1フランジの軸孔から第1軸が外れる前に、第2ホルダ側で第2フランジの軸孔から第2軸が外れるので、上記のような不具合の発生を確実に防止することができる。
【0028】
本発明の第9の態様は、第8の態様において、前記軸外し手段が、前記第1フランジに設けられたフランジ側係合部と係合することにより、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させる、前記第1ホルダに設けられたホルダ側係合部を備えて構成されていることを特徴とする。本態様によれば、前記軸外し手段を、構成単純にして且つ低コストに構成することができる。
【0029】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記ホルダ側係合部は、前記第1フランジの軸孔に前記第1軸が嵌合した状態から前記第1ホルダが前記第2ホルダから離れる方向に所定量移動した後、前記フランジ側係合部と係合する場所に配置されていることを特徴とする。
【0030】
本態様によれば、ロール体のセット状態において上記ホルダ側係合部が第1フランジ(フランジ側係合部)と接触することが避けられ、上記ホルダ側係合部がロール体の回転に悪影響を与えることを防止できる。
【0031】
本発明の第11の態様は、第9のまたは第10の態様において、前記ホルダ側係合部は、前記フランジ側係合部に向かって突出する突出位置と、当該突出位置から所定量退避する退避位置との間を変位可能に設けられていることを特徴とする。本態様によれば、ホルダ側係合部が、突出位置と退避位置との間を変位可能に設けられているので、第1フランジを第1ホルダ(第1軸)にセット(嵌合)する際にホルダ側係合部が退避することができ、これにより第1フランジを第1ホルダにセットする際に引っ掛かりなく円滑にセットすることができる。
【0032】
本発明の第12の態様は、第11の態様において、前記ホルダ側係合部には、前記突出位置から前記退避位置に向けて退避する際、付勢手段の付勢力が作用する様構成され、前記付勢手段は、前記ホルダ側係合部が前記突出位置にあるときに、当該ホルダ側係合部に前記付勢力が作用しないよう設けられていることを特徴とする。
【0033】
本態様によれば、付勢手段によってホルダ側係合部が安易に退避位置に退避しないよう規制することができるとともに、ホルダ側係合部が突出位置にあるときには付勢力が作用しないので、前記付勢力がホルダ側係合部或いはその周囲の構成部材に常時作用することに伴う塑性変形を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るプリンタの外観斜視図。
【図2】本発明に係るプリンタの外観斜視図。
【図3】本発明に係るプリンタの要部側面図。
【図4】ロール紙供給部の斜視図。
【図5】ロール紙供給部の斜視図。
【図6】可動側ホルダの斜視図。
【図7】(A)は固定側ホルダの斜視図、(B)は同要部拡大図。
【図8】(A)、(B)は可動側ホルダの平面図。
【図9】可動側ホルダの平面図であって誘導凸部の機能を示す図。
【図10】ロール紙供給部の横断面図。
【図11】ロール紙供給部の横断面図。
【図12】ロール紙供給部の横断面図。
【図13】可動側ホルダの横断面図であって要部を拡大して示す図。
【図14】ロール紙供給部の正面図。
【図15】他の実施形態に係る可動側ホルダの斜視図。
【図16】(A)、(B)ともに他の実施形態に係る可動側ホルダの要部側断面図。
【図17】可動側ホルダ及び固定側ホルダの横断面図。
【図18】可動側ホルダ及び固定側ホルダの横断面図。
【図19】可動側ホルダ及び固定側ホルダの横断面図。
【図20】可動側ホルダ及び固定側ホルダの横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1及び図2は本発明に係る「記録装置」の一実施形態としてのインクジェットプリンタ(以下「プリンタ」と言う)1の外観斜視図、図3は同要部側面図である。また図4及び図5はロール紙供給部の斜視図、図6は可動側ホルダの斜視図、図7(A)は固定側ホルダの斜視図、図7(B)は同要部拡大図、図8(A)、(B)は可動側ホルダの平面図、図9は可動側ホルダの平面図であって誘導凸部の機能を示す図である。更に図10乃至図12はロール紙供給部の横断面図、図13は可動側ホルダの横断面図であって要部を拡大して示す図、図14はロール紙供給部の正面図である。
【0036】
<<プリンタ1の全体構成>>
先ず、図1乃至図3を参照しながらプリンタ1の構成について概説する。プリンタ1は、例えばJIS規格のA0判やB0判などといった大型サイズの幅を有する被記録媒体としてのロール紙Pにまで記録できる大型プリンタであり、ロール紙供給部3及び記録実行部4を備えた本体部2と、本体支持部5とを備えて構成されている。
【0037】
本体部2は、ベース9及び当該ベース9に立設された支柱8を備えて成る本体支持部5の上部に設けられており、記録の行われたロール紙Pを斜め下方に排出する排出口6を有している。排出口6の下方には図示を省略するスタッカが位置しており、記録の行われたロール紙Pが排出口6から下方に向けて排出され、上記スタッカによって受け止められる。
【0038】
ロール紙供給部3は、ロール紙Pが巻かれて成るロール体(以下「ロール」と言う)Rが、開閉自在なカバー18の内側にセット可能に構成され、セットされたロール体Rから解かれたロール紙Pが、記録を実行する記録実行部4へと斜め下方へ供給される。
【0039】
図3において符号20(19)はロール体Rの端部に装着されるフランジ(後述)を示しており、このフランジを介して、ロール体Rがロール紙供給部3に支持される。ロール紙供給時には、ロール紙供給部3が備える駆動機構(後述)によりロール体Rが回転駆動されることにより当該ロール体Rからロール紙Pが解かれ、そして解かれたロール紙Pが案内部材10により案内されながら下流側に供給される。尚、ロール紙供給部3の詳細については後に詳述する。
【0040】
記録実行部(記録部)4は、ロール紙Pに対しインクを吐出する記録手段としての記録ヘッド13と、記録ヘッド13と対向配置される案内部材11と、記録ヘッド13の上流側に設けられ、ロール紙Pを下流側へ搬送する搬送駆動ローラ15及び搬送従動ローラ16と、を有している。
【0041】
搬送駆動ローラ15は図示しないモータにより回転駆動され、搬送従動ローラ16は搬送駆動ローラ15に向けてロール紙Pを押圧しつつ従動回転する様設けられ、これらローラにより、ロール紙Pが下流側へと精密送りされる。
【0042】
ロール紙Pに対しインクを吐出することにより記録を行う記録ヘッド13はキャリッジ12に設けられ、キャリッジ12は、記録ヘッド13の走査方向(主走査方向:図3の紙面表裏方向)に延びるガイド軸14によってガイドされながら、図示しないモータの動力を受けて主走査方向に移動する。
【0043】
記録ヘッド13の下流側には、図示を省略する用紙吸引部が設けられており、この用紙吸引部によって記録ヘッド13の下流側においてロール紙Pが浮き上がらないように規制状態に置かれ、ロール紙Pの浮き上がりによる記録品質の低下が防止されるようになっている。
【0044】
<<ロール紙供給部3の全体構成>>
次に図4乃至図8、及び適宜その他の図をも参照しながら、ロール紙供給部3の全体構成について説明する。図4及び図5に示すように、ロール紙供給部3は、「第1ホルダ」としての可動側ホルダ40と、「第2ホルダ」としての固定側ホルダ30と、ロール体Rを仮置きする仮置き部21と、を備えている。
【0045】
仮置き部21は、ロール体Rを固定側ホルダ30及び可動側ホルダ40にセットする前に、一時的に載置する場所である。即ちプリンタ1は、上述の通りJIS規格のA0判やB0判などといった大型サイズの幅を有するロール紙Pにまで記録できる大型プリンタであり、ロール体Rの重量が極めて重いものとなる場合がある。
【0046】
従って仮置き部21を固定側ホルダ30及び可動側ホルダ40の位置より手前側に設けることにより、ロール体Rを床などの低い位置から固定側ホルダ30及び可動側ホルダ40に支持される位置、即ち装置奥側にまで直接移動させる必要がなく、ロール体Rセット作業の際の負担を軽減させることができる様になっている。
【0047】
次に、ロール体Rにおいて固定側ホルダ30側には、「第2フランジ」としての固定側フランジ20が装着され、可動側ホルダ40側には、「第1フランジ」としての可動側フランジ19が装着される。
【0048】
各フランジの横断面は図11乃至図13に示す通りであり、例えば可動側フランジ19は、ロール体Rの最大外径と略等しいか或いはそれより大きい外径を有する鍔部19aと、ロール体Rの軸孔に挿入される凸部19bと、「第1軸」としての従動軸41(後述)が嵌合する軸孔19cと、を有している。固定側フランジ20も同様に、鍔部20aと、凸部20bと、軸孔20cと、を有している。
【0049】
図4及び図5に戻って、仮置き部21において固定側フランジ20側には位置決めガイド22が設けられており、この位置決めガイド22に固定側フランジ20を当接させることにより、即ちロール体Rを右寄せすることによって、ロール体Rを仮置き部21からセット可能位置まで移動させる際の当該ロール体Rの基準位置(回転軸線方向と直交する方向の位置)が定まるようになっている。尚、ロール体Rの「セット可能位置」とは、ロール体Rが可動側ホルダ40のフランジ支持面42a(後述)と固定側ホルダ30のフランジ支持面32a(後述)に支持される支持位置を言う(図12の状態)。
【0050】
そして図4乃至図5への変化に示すように、ロール体Rを装置奥側に向かって転がすことにより、重いロール体Rを持ち上げることなく、当該ロール体Rを容易にセット可能位置に移すことが可能となっている。
【0051】
可動側ホルダ40と固定側ホルダ30は、それぞれ可動側フランジ受け部材42、固定側フランジ受け部材32、を備えている。可動側フランジ受け部材42は可動側フランジ19の外周部(鍔部19a)と接してこれを支持するフランジ支持面42aを、固定側フランジ受け部材32は固定側フランジ20の外周部(鍔部20a)と接してこれを支持するフランジ支持面32aを、それぞれ備えている。
【0052】
そして仮置き部21から転がされてきたロール体Rは、セット状態(軸孔19cに従動軸41が嵌合し、且つ軸孔20cに駆動軸31が嵌合した状態:図10の状態)となる前に、可動側フランジ受け部材42と固定側フランジ受け部材32とにより一時的に支持されたセット可能状態となる(図12に示す状態)。尚、可動側フランジ受け部材42のフランジ支持面42aと固定側フランジ受け部材32のフランジ支持面32aの詳細な形状については、後に詳述する。
【0053】
可動側ホルダ40は、上記の可動側フランジ受け部材42と、ホルダベース46と、従動軸41と、を備えて構成されており、ロール体Rの回転軸線方向に延びるガイドレール24によってガイドされながら、ロール体Rの回転軸線方向(図4の矢印Xで示す方向)にスライド移動可能に設けられている。
【0054】
ホルダベース46にはハンドル47が形成されており、可動側ホルダ40を操作する際には当該ハンドル47を把持することにより、作業性容易に移動させることが可能となっている。従動軸41は図6に示すように先端側の小径部41aと基端側の大径部41bとを備え、ホルダベース46に対し自由回転可能に設けられている。
【0055】
固定側ホルダ30は、上記固定側フランジ受け部材32と、ホルダフレーム36と、駆動軸31と、を備えて構成されており、可動側ホルダ40とは異なり、固定状態に設けられている。駆動軸31は、図7(A)に示すように先端側の小径部31aと基端側の大径部31bとを備え、ホルダフレーム36に取り付けられる駆動モータ37により回転駆動されるようになっている。
【0056】
ロール体Rのセット可能状態では、従動軸41が可動側フランジ19の軸孔19cから外れており、且つ駆動軸31が固定側フランジ20の軸孔20cから外れた状態となっている。そしてこの状態から可動側ホルダ40を固定側ホルダ30側に移動させると、可動側フランジ19の外周部(鍔部19aの外周部)がフランジ支持面42aと接しながら、従動軸41と軸孔19cとが相対的に接近する。また、固定側フランジ20の外周部(鍔部20aの外周部)がフランジ支持面32aと接しながら、駆動軸31と軸孔20cとが相対的に接近する。そして最終的に従動軸41が軸孔19cに嵌合し、且つ駆動軸31が軸孔20cに嵌合したセット状態となる(図10に示す状態)。
【0057】
尚、固定側ホルダ30により支持される固定側フランジ20の軸孔20c内部にはボス(図7(B)において符号20eで示す)が設けられており、駆動軸31の大径部31bにはボス20eを誘導位置(大径部31bの最も基端側位置)に誘導するスパイラル状の誘導溝31cが形成されている。
【0058】
従って駆動軸31が固定側フランジ20の軸孔20cに挿入された状態で、駆動軸31が逆転駆動されると(図7(B)の矢印a方向)、ボス20eが破線の矢印で示すように大径部31bの基端側に誘導され、これにより固定側フランジ20(即ち、ロール体R)が基準位置に位置決めされるようになっている。この様にボス20eと誘導溝31cとを備えたフランジ誘導手段により、ロール体Rの幅方向位置が一様に定まり、余白が常に一定な、適切な記録結果が得られるようになっている。
【0059】
<<フランジと軸との衝突防止手段>>
以下、図8及び図9と、更にその他の図面をも参照しながらフランジ(可動側フランジ19、固定側フランジ20)と軸(従動軸41、駆動軸31)との衝突防止手段について説明する。
ロール体Rを仮置き部21からセット可能位置へと転がす際、ロール体Rの回転軸線方向における位置は上述の通り位置決めガイド22により規制されるので、本実施形態においては固定側ホルダ30と、固定側フランジ20との位置関係(ロール体Rの回転軸線方向における位置関係)は比較的一様に定まる様になっている。
【0060】
これに対し、可動側ホルダ40はロール体Rの回転軸線方向に移動可能となっているため、ロール体Rを仮置き部21からセット可能位置に向けて転がす際の、可動側ホルダ40と可動側フランジ19との位置関係は、比較的ばらつき易い構成となっている。
【0061】
従ってロール体Rを仮置き部21からセット可能位置に向けて転がす際の、可動側ホルダ40の位置許容度は極力大きく確保することが好ましく、従って本実施形態では可動側フランジ19の位置に対するフランジ支持面42aの位置許容度(図8の符号L1で示す長さ)は、50mm以上確保されている。
【0062】
また可動側ホルダ40を固定側ホルダ30側に向けて移動させる際、ロール体Rの端部がフランジ支持面42aから外れていると、当該フランジ支持面42aの端部がロール体Rの外周角部と衝突し、用紙にダメージを与える虞がある。従ってロール体Rの外周角部に対するフランジ支持面42aの位置許容度(図8の符号L2で示す長さ)も極力大きく確保することが好ましく、本実施形態では20mm以上確保されている。
【0063】
次に、ロール体Rを仮置き部21からセット可能位置へと転がす際、可動側ホルダ40が必要以上に固定側ホルダ30側に近接していると、可動側フランジ19が従動軸41と衝突する虞がある。ロール体Rの重量が非常に重い場合には特に、可動側フランジ19が従動軸41に衝突すると、従動軸41に変形や破損を生じさせてしまう虞がある。この様に従動軸41に変形や破損が生じると、ロール体Rを適切に支持できなくなる。
【0064】
そこで本実施形態では、ロール体Rを仮置きする仮置き部21からロール体Rのセット可能位置に向かってロール体Rを移動させる際の、可動フランジ19の従動軸41への衝突コース上に、凸状体としての誘導凸部45を配置している。
この誘導凸部45は、可動側フランジ受け部材42において、従動軸41の手前側に配置されており、正面視においては図14に示すように固定側ホルダ30側に向かって下がる傾斜形状を成しており、この傾斜形状の終了部分が、従動軸41の先端部よりもやや固定側ホルダ30側に突出する様に形成されている。
【0065】
図9はロール体Rを仮置き部22からセット可能位置に向かって転がした際に、可動側フランジ19が従動軸41に衝突する虞のあるケースを示しており、即ち破線cで示すように可動側フランジ19の端面位置が従動軸41の先端位置よりも基端側に位置しており、このままロール体Rを真っ直ぐ転がすと、可動側フランジ19が従動軸41に衝突する位置にある。
【0066】
しかしながら可動側フランジ19が従動軸41に衝突するコース上に、誘導凸部45が配置されているので、この誘導凸部45により可動側フランジ19の従動軸41への衝突が防止される。従って従動軸41に変形や破損が生じ、その結果ロール体Rを適切な状態で支持できなくなることが防止される。
【0067】
しかも、単に可動側フランジ19の従動軸41への衝突が防止されるのみならず、誘導凸部45の傾斜形状により、図9の符号19’→19’’→19の位置変化に示すように、可動側フランジ19が従動軸41と干渉しない適正位置に向けて誘導されるので、ユーザは特段の操作をすることなく、ロール体Rを適正な位置に位置決めすることができる。即ち、誘導凸部45の傾斜形状が、ロール体Rを適正な位置に誘導する誘導手段を構成する。
【0068】
また、上記の様に傾斜形状とすることにより、可動側ホルダ40を固定側ホルダ30側にスライドさせる際にロール体Rからロール紙Pが解かれていても、このロール紙Pに誘導凸部45が衝突せず、ロール紙Pが上方にすくい上げられるので、ロール体Rから解かれたロール紙Pにダメージを与えることがない。
【0069】
尚、固定側ホルダ30の側においても同様な機能を発揮する誘導凸部35が設けられており、仮に固定側フランジ20が駆動軸31に向かって転がっても、誘導凸部35により両者の衝突が防止され、更にはロール体Rが適正位置に誘導される。
【0070】
以上説明した実施形態では、ロール体Rの両端にフランジ(可動側フランジ19、固定側フランジ20)を装着したが、フランジを装着せず、ロール体Rを単独でセット可能位置に向けて転がした場合でも、同様な作用効果が得られることは言うまでもない。
【0071】
<<フランジとフランジ受け部材との係止手段>>
続いて、図10乃至図14と、更にその他の図面をも参照しながらフランジ(可動側フランジ19、固定側フランジ20)とフランジ受け部材(可動側フランジ受け部材42、固定側フランジ受け部材32)との係止手段について説明する。尚、当該係止手段は固定側ホルダ30の側、及び可動側ホルダ40の側、のいずれにも設けられており、従って以下では可動側ホルダ40の側の構成を用いて上記係止手段を説明する。
【0072】
可動側フランジ受け部材42の上面に形成されたフランジ支持面42aは、可動側フランジ19が備える鍔部19aの外周形状に沿うように凹曲面により形成され、横断面視においては図10に示すように終端側(図10において右側)から基端側(同左側)に向かって段階的に上る傾斜形状を成している。従って可動側ホルダ40が固定側ホルダ30側に移動すると、可動側フランジ19がフランジ支持面42aを上り、これにより軸孔19cが、従動軸41と嵌合可能な位置まで上昇変位するようになっている。
【0073】
次に、可動側フランジ19において鍔部19aの外周部には、「第1被係合部」としての段差部19dが形成されており、一方でフランジ支持面42aには、段差部19dと係合可能な「第1係合部」としての係合部43が形成されている。
【0074】
図10はロール体Rのセット状態を示すものであり、この状態では従動軸41が可動側フランジ19の軸孔19cに完全に嵌合した状態となっている(固定側ホルダ30の側においても同様)。尚この状態では、可動側フランジ19(及びロール体R)は、フランジ支持面42aから離間した非接触状態にある(固定側ホルダ30の側においても同様)。
【0075】
このセット状態から、ロール体Rを取り外すべく可動側ホルダ40を固定側ホルダ30から離れる方向にスライド移動させると、従動軸41が軸孔19cから外れて可動側フランジ19の鍔部19aがフランジ支持面42aにより支持された状態となり、そして係合部43に可動側フランジ19の段差部19dが引っ掛かった状態となる。従って更に可動側ホルダ40を固定側ホルダ30から離れる方向に移動させると、可動側フランジ19(即ちロール体R)が、可動側ホルダ40とともに固定側ホルダ30から離れる方向に移動するようになっている。
【0076】
尚、本実施形態において可動側ホルダ40の側の従動軸41と軸孔19cとの嵌合状態が、固定側ホルダ30の側の駆動軸31と軸孔20cとの嵌合状態より先に解除されるのは、上述した通り固定側ホルダ30の側には固定側フランジ20を基準位置に誘導するフランジ誘導手段が設けられており、当該フランジ誘導手段が、ロール体Rを固定ホルダ30の側に保持する為である。
【0077】
そして図11に示す状態から更に可動側ホルダ40を固定側ホルダ30から離れる方向に移動させると、固定側ホルダ30の側の駆動軸31と軸孔20cとの嵌合状態が解除される。そして固定側ホルダ30の側の「第2係合部」としての係合部33に、「第2被係合部」としての固定側フランジ20の段差部20dが引っ掛かった状態となり、ロール体R(及び可動側ホルダ40)の可動側ホルダ40側への移動が規制された状態となる。
【0078】
この様に、可動側ホルダ40を固定側ホルダ30から離れる方向に移動させると、可動側ホルダ40の側の従動軸41と軸孔19cとの嵌合状態、および固定側ホルダ30の側の駆動軸31と軸孔20cとの嵌合状態、のいずれもが確実に解除されることとなる。従って両嵌合状態の解除が不完全な状態のままロール体Rが取り外され、これにより従動軸41や駆動軸31に変形や破損を招くことを防止できる。
【0079】
尚、本実施形態の様に、可動側ホルダ40を固定側ホルダ30から離れる方向にスライド移動させた際に、一方側(可動側ホルダ40の側)の嵌合状態が他方側(固定側ホルダ30の側)の嵌合状態より先に解除される構成であれば、フランジとフランジ受け部材との係止手段は上記一方側(可動側ホルダ40の側)のみに設けても構わない。しかしいずれの側の嵌合状態が先に解除されるかが不明な場合には、双方に上記係止手段を設けることが好ましい。
【0080】
ところで、ロール体Rのセット可能状態(例えば、図12に示す状態)からセット状態(図10に示す状態)とする為に可動側ホルダ40を固定側ホルダ30側へ移動させる際には、可動側フランジ19の鍔部19aがフランジ支持面42aと摺接するが、このとき図13に示すようにロール体Rの外周角部Sが、フランジ支持面42aと接触しないよう、当該フランジ支持面42aがロール体Rの外周角部Sとの接触を回避する形状を成している。
【0081】
従ってこれにより、ロール体Rの外周角部Sがフランジ支持面42aと接触し、外周角部S(即ち、ロール紙のエッジ)にダメージが形成されることが防止されるようになっている。尚、固定側ホルダ30側のフランジ支持面32aも、フランジ支持面42aと同様に、ロールRの外周角部との接触を回避する形状に形成されている。
【0082】
また、ロール体Rのセット状態において、可動側フランジ受け部材42には、可動側フランジ19の外周面と対向する位置であって、ロール体Rをセットする際の手前側位置に、図6や図14等に示すように壁部44が設けられている。従ってこの壁部44により、ロール体Rが視覚的に取り外し不可能であることをユーザに認識させることができるので、ロール体Rがセットされた状態において当該ロール体Rが不用意に取り外されようとすることが防止され、従動軸41や駆動軸31を保護することができる。
【0083】
<<可動側ホルダの他の実施形態>>
続いて図15乃至図20を参照しながら可動側ホルダの他の実施形態を説明する。ここで図15は他の実施形態に係る可動側ホルダ40’(可動側フランジ受け部材42’)の斜視図、図16(A)、(B)は同要部側断面図、図17〜図20は可動側ホルダ40’及び固定側ホルダ30’の横断面図であって操作時の状態推移を示すものである。尚、図15〜図20において既に説明した構成要素と同一の構成要素については同一符号を付してあり、以下ではその説明は省略する。
【0084】
本実施形態に係る可動側ホルダ(第1ホルダ)40’において既に説明した可動側ホルダ40と主に異なる点は、フランジ支持面42a’であり、より具体的には軸外し手段としてのホルダ側係合部48を備える点にある。
【0085】
このホルダ側係合部48は、樹脂材料により形成される可動側フランジ受け部材42’の一部が切り欠かれた様な形状となることで弾性変形可能に形成された弾性片42bの先端(自由端)に形成されており、この弾性片42bの弾性変形を介して突出位置(図16(A))と退避位置(図16(B))との間を変位可能となっている。
【0086】
このホルダ側係合部48の裏側には付勢手段としての板ばね49が配置されており、ホルダ側係合部48が退避位置に退避する際、図16(B)に示す様にホルダ側係合部48と係合し、当該ホルダ側係合部48に付勢力(弾性力)を付与するようになっている。
【0087】
このホルダ側係合部48の機能を、図17〜図20を参照しながら以下説明する。図17は図10と同様にロール体Rのセット状態を示すものであり、この状態では従動軸41が可動側フランジ19の軸孔19cに完全に嵌合し、且つ固定側ホルダ30’の側においても駆動軸31’が固定側フランジ20の軸孔20cに完全に嵌合した状態となっている。尚「完全に嵌合した状態」とは、可動側ホルダ40’が固定側ホルダ30’に向けて最大限移動した状態(それ以上移動できない状態)でのフランジと軸との関係を意味する。
【0088】
このセット状態から、ロール体Rを取り外すべく可動側ホルダ40’を固定側ホルダ30’から離れる方向(図17〜図20において左方向)にスライド移動させると、可動側フランジ19の「フランジ側係合部」としての段差部19dが、図18に示すようにホルダ側係合部48に引っ掛かる。
【0089】
尚、この引っ掛かりは可動側フランジ19の軸孔19cから従動軸41が外れる前に発生するよう、ホルダ側係合部48がその様な位置に配置されており、図18において符号dで示す間隔は、上記引っ掛かりが生じる際の可動側フランジ19と可動側ホルダ40’との間の間隔を示している。
【0090】
そして、更に可動側ホルダ40’を固定側ホルダ30から離れる方向に移動させると、上述の通り可動側フランジ19の段差部19dがホルダ側係合部48に引っ掛かっているので、可動側フランジ19(即ちロール体R)が、可動側ホルダ40’とともに固定側ホルダ30’から離れる方向に移動し、やがて図19に示すように固定側フランジ20の軸孔20cから、駆動軸31’が外れる。即ち、可動側フランジ19の軸孔19cから従動軸41が外れる前に、必ず固定側フランジ20の軸孔20cから駆動軸31’が外れることとなる。
【0091】
尚、本実施形態に係る固定側ホルダ30’は、既に説明した固定側ホルダ30とは異なり、駆動軸31’にスパイラル状の誘導溝31c(図7(B))を備えておらず、固定側フランジ20の可動側ホルダ40’側への移動を拘束しない様になっている。
【0092】
従って可動側ホルダ40’を固定側ホルダ30’から離れる方向に動かした際、可動側フランジ19の軸孔19cと従動軸41との間の摩擦力、固定側フランジ20の軸孔20cと駆動軸31’との間の摩擦力、のこれら大小関係によっては、可動側フランジ19の段差部19dが、ホルダ側係合部48に引っ掛かることなく、固定側フランジ20の軸孔20cから駆動軸31’が外れる場合もある。しかしながらその逆の場合もあり、この場合にホルダ側係合部48が機能する。
【0093】
そして、可動側フランジ20の軸孔20cから駆動軸31’が外れた後、更に可動側ホルダ40’を移動させると、図19に示すように固定側ホルダ30’の係合部33に、固定側フランジ20の段差部20dが引っ掛かった状態となり、ロール体R(及び可動側ホルダ40)の可動側ホルダ40側への移動が規制された状態となる。そして更に可動側ホルダ40’を移動させると、可動側ホルダ40’の係合部43に、可動側フランジ19の段差部19dが引っ掛かった状態となり、以上により可動側ホルダ40’のそれ以上の移動が規制された状態となる。
【0094】
以上のように本実施形態に係る可動側ホルダ40’は、当該可動側ホルダ40’を固定側ホルダ30’から離れる方向に移動させた際、ロール体Rを可動側ホルダ40’とともに固定側ホルダ30’から離間する方向に移動させることにより、可動側フランジ19の軸孔19cから従動軸41が外れる前に固定側フランジ19の軸孔19cから駆動軸31’外す軸外し手段としてホルダ側係合部48を備えている。
【0095】
従ってユーザが可動側ホルダ40’を操作してロール体Rの取り外し作業を行う際、可動側フランジ20から駆動軸31’が完全に外れていないままロール体Rが取り外されようとすることを防止でき、駆動軸31’を曲げてしまったり、固定側フランジ20を破損させてしまうことを防止できる。
【0096】
また、ホルダ側係合部48は、可動側ホルダ40’が固定側ホルダ30’から離れる方向に所定量移動した後、可動側フランジ19の段差部19dと係合するので、ロール体Rのセット状態においてホルダ側係合部48が可動側フランジ19と接触することが避けられ、ホルダ側係合部48がロール体Rの回転に悪影響を与えることを防止できる。
【0097】
更に、可動側フランジ19を可動側ホルダ40’にセットする際、具体的には図16(B)において可動側ホルダ40’に対して可動側フランジ19が仮想線(符号19’)で示す位置から実線で示す位置に相対的に移動する際に(但し実際には同図において可動側ホルダ40’が右方向に移動する)、ホルダ側係合部48が同図で示すように退避することができる。従ってセット作業時にホルダ側係合部48に可動側フランジ19の段差部19dが引っ掛かることなく、円滑にセット作業を行うことができる。
【0098】
尚、ホルダ側係合部48は退避時に板ばね49から付勢力を受けるので、ロール体Rの取り外し時にはホルダ側係合部48が安易に退避位置に退避することがなく、可動側フランジ19の段差部19dが確実に引っ掛かることができる。即ち板ばね49の付勢力は、ホルダ側係合部48がロール体Rの取り付け作業を実行可能な程度に退避することができる大きさであり、且つ、ロール体Rの取り外し作業時には可動側フランジ19の段差部19dによりホルダ側係合部48が容易に退避せず、ロール体Rを可動側ホルダ40’とともに確実に移動させることができる大きさに調整される。
【0099】
尚、板ばね49の付勢力は、ホルダ側係合部48が突出位置にあるときには作用しないよう構成されているので、板ばね49の付勢力によって弾性片42bに塑性変形を来すことを防止できるようになっている。
【符号の説明】
【0100】
1 インクジェットプリンタ、2 本体部、3 ロール紙供給部、4 記録実行部、5 本体支持部、6 ロール紙排出口、8 支柱、9 ベース、10、11 案内部材、12 キャリッジ、13 記録ヘッド、14 ガイド軸、15 駆動ローラ、16 従動ローラ、18 カバー、19 可動側フランジ(第1フランジ)、19a 鍔部、19b 凸部、19c 軸孔、19d 段差部、20 固定側フランジ(第2フランジ)、20a 鍔部、20b 凸部、20c 軸孔、20d 段差部、20e ボス、21 仮置き部、22 位置決めガイド、24 ガイドレール、30、30’ 固定側ホルダ(第2ホルダ)、31、31’ 駆動軸(第2軸)、31a 小径部、31b 大径部、31c 誘導溝、32 固定側フランジ受け部材、32a フランジ支持面、33 係合部、34 壁部、35 誘導凸部、36 ホルダフレーム、37 駆動モータ、40、40’ 可動側ホルダ(第1ホルダ)、41 従動軸(第1軸)、41a 小径部、41b 大径部、42、42’ 可動側フランジ受け部材、42a フランジ支持面、43 係合部、44 壁部、45 誘導凸部、46 ホルダベース、47 ハンドル、48 ホルダ側係合部、49 板ばね、P ロール紙(被記録媒体)、R ロール体、S ロール角部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体に記録を行う記録部と、
被記録媒体が巻かれて成るロール体の一方側端部に装着された第1フランジの軸孔に嵌合する第1軸を備えるとともに、前記ロール体の回転軸線方向に移動可能な第1ホルダと、
前記ロール体の他方側端部に装着された第2フランジの軸孔に嵌合する第2軸を備えた第2ホルダと、を備えた記録装置であって、
前記第1ホルダに設けられ、前記第1軸が前記第1フランジの軸孔から外れた状態において前記第1フランジの外周部と接して当該第1フランジを支持する第1フランジ支持面と、
前記第2ホルダに設けられ、前記第2軸が前記第2フランジの軸孔から外れた状態において前記第2フランジの外周部と接して当該第2フランジを支持する第2フランジ支持面と、
前記第2ホルダに設けられ、前記第2フランジを前記第2ホルダ側の基準位置に誘導するフランジ誘導手段と、を備え、
前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態から、前記第1ホルダを前記第2ホルダから離れる方向に移動させた際、前記第1フランジに設けられた第1被係合部と係合することにより、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させる第1係合部が前記第1フランジ支持面に設けられている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載の記録装置において、前記第2フランジ支持面には、前記第2フランジに設けられた第2被係合部と係合することにより、前記ロール体の前記第1ホルダ側への移動を規制する第2係合部が設けられている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の記録装置において、前記フランジ誘導手段が、前記第2フランジの軸孔内部に設けられたボスと、
前記第2軸に形成され、当該第2軸の回転に伴い前記ボスを誘導位置へ案内する誘導溝と、を備えて構成されていることを特徴とする記録装置。
【請求項4】
被記録媒体に記録を行う記録部と、
被記録媒体が巻かれて成るロール体の一方側端部に装着された第1フランジの軸孔に嵌合する第1軸を備えるとともに、前記ロール体の回転軸線方向に移動可能な第1ホルダと、
前記ロール体の他方側端部に装着された第2フランジの軸孔に嵌合する第2軸を備えた第2ホルダと、を備えた記録装置であって、
前記第1ホルダに設けられ、前記第1軸が前記第1フランジの軸孔から外れた状態において前記第1フランジの外周部と接して当該第1フランジを支持する第1フランジ支持面と、
前記第2ホルダに設けられ、前記第2軸が前記第2フランジの軸孔から外れた状態において前記第2フランジの外周部と接して当該第2フランジを支持する第2フランジ支持面と、を備え、
前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態から、前記第1ホルダを前記第2ホルダから離れる方向に移動させた際、前記第1フランジに設けられた第1被係合部と係合することにより、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させる第1係合部が前記第1フランジ支持面に設けられ、
前記第2フランジ支持面には、前記第2フランジに設けられた第2被係合部と係合することにより、前記ロール体の前記第1ホルダ側への移動を規制する第2係合部が設けられている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された記録装置において、前記第1フランジ支持面及び前記第2フランジ支持面は、前記第1フランジ及び前記第2フランジをそれぞれ支持した状態において、前記ロール体の外周角部との当接を回避する形状を成している、ことを特徴とする記録装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の記録装置において、前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態における、前記第1フランジ及び前記第2フランジの少なくとも一方側の外周面と対向する位置であって、前記第1ホルダ及び前記第2ホルダによる前記ロール体の支持位置へ前記ロール体をセットする際の手前側位置に、壁部が設けられている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の記録装置において、前記ロール体を仮置きする仮置き部を備え、
前記仮置き部から、前記第1ホルダ及び前記第2ホルダによる前記ロール体の支持位置に向かって前記ロール体を移動させる際の前記第1フランジの前記第1軸への衝突コース上、及び前記第2フランジの前記第2軸への衝突コース上、の少なくともいずれか一方側に、凸状体が配置されている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項8】
被記録媒体に記録を行う記録部と、
被記録媒体が巻かれて成るロール体の一方側端部に装着された第1フランジの軸孔に嵌合する第1軸を備えるとともに、前記ロール体の回転軸線方向に移動可能な第1ホルダと、
前記ロール体の他方側端部に装着された第2フランジの軸孔に嵌合する第2軸を備えた第2ホルダと、を備えた記録装置であって、
前記第1フランジの軸孔と前記第1軸、前記第2フランジの軸孔と前記第2軸、がそれぞれ嵌合した状態から、前記第1ホルダを前記第2ホルダから離れる方向に移動させた際、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させることにより、前記第1フランジの軸孔から前記第1軸が外れる前に前記第2フランジの軸孔から前記第2軸を外す軸外し手段を備えている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項9】
請求項8に記載の記録装置において、前記軸外し手段が、前記第1フランジに設けられたフランジ側係合部と係合することにより、前記ロール体を前記第1ホルダとともに前記第2ホルダから離間する方向に移動させる、前記第1ホルダに設けられたホルダ側係合部を備えて構成されている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項10】
請求項9に記載の記録装置において、前記ホルダ側係合部は、前記第1フランジの軸孔に前記第1軸が嵌合した状態から前記第1ホルダが前記第2ホルダから離れる方向に所定量移動した後、前記フランジ側係合部と係合する場所に配置されている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項11】
請求項9または10に記載の記録装置において、前記ホルダ側係合部は、前記フランジ側係合部に向かって突出する突出位置と、当該突出位置から所定量退避する退避位置との間を変位可能に設けられている、ことを特徴とする記録装置。
【請求項12】
請求項11に記載の記録装置において、前記ホルダ側係合部には、前記突出位置から前記退避位置に向けて退避する際、付勢手段の付勢力が作用する様構成され、
前記付勢手段は、前記ホルダ側係合部が前記突出位置にあるときに、当該ホルダ側係合部に前記付勢力が作用しないよう設けられている、ことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−100187(P2013−100187A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−11892(P2013−11892)
【出願日】平成25年1月25日(2013.1.25)
【分割の表示】特願2008−263985(P2008−263985)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】