説明

設置物固定具

【課題】下地側支持部材内への雨水の浸入を防止し易い設置物固定具を提供する。
【解決手段】上部に開口部4を形成する有底筒状の下地側支持部材5に、フランジ部10を設けると共に、底部に取付下地2への固定部12を備え、開口部4及びフランジ部10を上方から覆う蓋状の設置物支持部材9を設け、フランジ部10の外縁に下方に垂下する第1周壁部13を連設すると共に、フランジ部10を設置物支持部材9で上方から覆った状態で、第1周壁部13の外側を囲繞する第2周壁部14を設置物支持部材9の外縁部に連設し、第1周壁部13と第2周壁部14とに互いに連結自在な連結部15を設け、設置物3に対する連結用ボルト16の頭部を係入自在なボルト挿通部17を設置物支持部材9に設け、ボルト挿通部17の下側にそのボルト挿通部17を通して侵入する雨水を受けて設置物支持部材9の横外方に排出する雨水誘導ガイド部18を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備機器などの設置物を、例えば建物のコンクリート床等に設置して固定するための設置物固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記設置物固定具は、図11に示すように、上部に開口部4を形成する有底筒状の下地側支持部材5に、横外側に延出するフランジ部10を設けると共に、底部に取付下地2への固定部12を備え、前記開口部4及び前記フランジ部10を上方から覆う蓋状の設置物支持部材を設け、固定部12に取付下地2に固定したアンカーボルト8を挿通させてナットNで固定操作を行うための作業孔22を、下地側支持部材5の横外側に設け、フランジ部10と設置物支持部材の上面に、それらを連結するためのボルトの第2挿通孔24を設けると共に、設置物支持部材の上面に設置物3を固定するためのボルト挿通部17を設けてあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−167754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の前記設置物固定具は、前記下地側支持部材5の横外側に形成した大きな作業孔22からの雨水の浸入の虞や、設置物支持部材の上面に形成した第2挿通孔24、及び、ボルト挿通部17から下地側支持部材5内への雨水の侵入の虞があり、下地側支持部材5内へ雨水が侵入すると、固定部12を通して下地に水が侵入して、建物内への漏水の原因になる危険性があり、厳重にシールする防水構造を考えなければならなかった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、下地側支持部材内への雨水の浸入を防止し易い設置物固定具を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、上部に開口部を形成する有底筒状の下地側支持部材に、横外側に延出するフランジ部を設けると共に、底部に取付下地への固定部を備え、前記開口部及び前記フランジ部を上方から覆う蓋状の設置物支持部材を設け、前記フランジ部の外縁に下方に垂下する第1周壁部を連設すると共に、前記フランジ部を前記設置物支持部材で上方から覆った状態で、前記第1周壁部の外側を囲繞する第2周壁部を前記設置物支持部材の外縁部に連設し、前記第1周壁部と前記第2周壁部とに互いに連結自在な連結部を設け、設置物に対する連結用ボルトの頭部を係入自在なボルト挿通部を前記設置物支持部材に設け、前記ボルト挿通部の下側にそのボルト挿通部を通して侵入する雨水を受けて前記設置物支持部材の横外方に排出する雨水誘導ガイド部を設けてあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、固定部にアンカーボルトなどを介して取付下地に固定する作業を、下地側支持部材を上部の開口部を通して行った後には、開口部及びフランジ部を、設置支持部材により蓋として覆わせることにより、開口部は閉じられる。
設置支持部材により開口部を閉じる際に、前記フランジ部の外縁に下方に垂下する第1周壁部を連設すると共に、前記フランジ部を前記設置物支持部材で上方から覆った状態で、前記第1周壁部の外側を囲繞する第2周壁部を前記設置物支持部材の外縁部に連設し、前記第1周壁部と前記第2周壁部とに互いに連結自在な連結部を設けてあることにより、開口部よりも外方で、且つ、フランジ部の外縁よりも低い位置で、設置物支持部材と下地側支持部材とを連結でき、そのために、連結部から雨水が下地側支持部材内に侵入することは無い。
そして、設備機器などの設置物を設置物支持部材に固定するために、連結用ボルトをボルト挿通部に通して係止することで、その連結用ボルトを介して設置物は設置物支持部材に簡単に固定できる。
その上、前記ボルト挿通部の下側にそのボルト挿通部を通して侵入する雨水を受けて前記設置物支持部材の横外方に排出する雨水誘導ガイド部を設けてあることにより、雨水は下地側支持部材内に侵入せずに確実に設置物支持部材の横外方に排出される。
結局、建物内への漏水の原因をなくすことができるようになった。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記第1周壁部に上下方向に沿った第1縦壁部を形成すると共に、前記第2周壁部に上下方向に沿った第2縦壁部を形成し、前記第1縦壁部と前記第2縦壁部に前記連結部を設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、設置物支持部材と下地側支持部材の連結を、前記第1縦壁部と前記第2縦壁部に設けた連結部により行えることにより、連結部で連結するボルトを伝って侵入しようとする雨水は、下地側支持部材の開口部よりも外側で、第1、第2縦壁部に沿って確実に下方に流れ、下地側支持部材内への水の浸入を、より確実に防ぐことができるようになった。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、上部に開口部を形成する有底筒状の下地側支持部材を設けると共に、前記開口部を上方から覆う蓋状の設置物支持部材を設け、前記下地側支持部材の横外側で前記開口部よりも低い位置に周方向にわたって延出するフランジ部を設けると共に、前記下地側支持部材の底部に取付下地への固定部を備え、前記開口部を前記設置物支持部材で上方から覆った状態で、前記フランジ部と連結自在な連結部を、前記設置物支持部材の外周部に連設し、設置物に対する連結用ボルトの頭部を係入自在なボルト挿通部を前記設置物支持部材に設け、前記ボルト挿通部の下側にそのボルト挿通部を通して侵入する雨水を受けて前記設置物支持部材の横外方に排出する雨水誘導ガイド部を設けてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、下地側支持部材と連結する設置物支持部材の連結部を、開口部よりも低い位置に延出したフランジ部と連結させることにより、その連結部から侵入する雨水が開口部内に入ることはなく、しかも、ボルト挿通部を通して侵入する雨水は、雨水誘導ガイド部により設置物支持部材の横外方に排出される。従って、下地側支持部材内への雨水の侵入を防止して、建物内への漏水の原因をなくすことができるようになった。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記連結用ボルトを取り付け位置調整自在な形状に前記ボルト挿通部を形成してあるところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、前記連結用ボルトを取り付け位置調整自在な形状に前記ボルト挿通部を形成してあることにより、設置物支持部材に対する設置物の相対的な固定位置を調整できる。
【0014】
本発明の第5の特徴構成は、前記ボルト挿通部を長孔から形成すると共に、その長孔の長手方向を、前記連結用ボルトの位置調整方向に沿わせて配設し、前記ボルト挿通部の下側に、連結用ボルトの回り止め部を設けてあるところにある。
【0015】
本発明の第5の特徴構成によれば、長孔から形成したボルト挿通孔に連結用ボルトを挿通させることで、長孔の長手方向に沿ってボルト固定位置を調整して、設置物支持部材に対する設置物3の相対的な固定位置を調整でき、そのうえ、ボルト挿通部の下側で回り止め部により連結用ボルトは回り止めされるために、設置物支持部材の上方からナットを締め込み操作するだけで簡単に設置物の固定操作ができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】設置状態を示す全体図である。
【図2】分解斜視図である。
【図3】下方からの分解斜視図である。
【図4】縦断側面図である。
【図5】要部斜視図である。
【図6】要部縦断側面図である。
【図7】別実施形態の分解斜視図である。
【図8】別実施形態の要部縦断面図である。
【図9】別実施形態の要部縦断面図である。
【図10】別実施形態の斜視図である。
【図11】従来例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明の設置物固定具の一実施形態品(以後、単に固定台1という)を使用して、屋上のコンクリート床やベランダ等の建築物(取付下地2の一例)の上に、ソーラーパネルの固定枠や、アンテナの支柱等の設置物3を固定してある状況を示している。
【0018】
前記コンクリート床2の上には、防水シート6が敷設してある。
当該実施形態においては、コンクリート床2の全域に防水シート6が敷設してある状態で、その上に、金属製の当該固定台1を設置して、設置物3を固定台1に固定してある例を示している。従って、固定台1を設置した後、その周囲に、図4に示すように、防水シート6と固定台1の外周部にわたる状態に立上り防水層7を設置し、その上端部をバンド29で縛ると共に、シール剤30を塗布して雨水の浸入を防止し、固定台設置部分から下方への漏水防止を図っている。
コンクリート床2における固定台設置箇所には、予め、アンカーボルト8が設置してあり、このアンカーボルト8に固定台1が固定されている。
【0019】
前記固定台1は、上部に開口部4を形成する有底筒状の下地側支持部材5と、開口部4を上から覆う蓋状の設置物支持部材9とから構成してある。
前記下地側支持部材5の開口部4上縁には、横外側に延出するフランジ部10を設け、有底筒状の底部には、取付下地2に取り付けたアンカーボルト8を挿通する第1挿通孔11を形成して、取付下地2に対する固定部12を構成し、フランジ部10の外縁に下方に垂下する第1周壁部13を連設すると共に、開口部4及びフランジ部10を設置物支持部材9で上方から覆った状態で、第1周壁部13の外側を囲繞する第2周壁部14を設置物支持部材9の外縁部から下方に連設し、第1周壁部13と第2周壁部14とに互いに連結自在な連結部15を設け、設置物3に対する連結用ボルト16の頭部を係入自在な長孔状のボルト挿通部17を設置物支持部材9に設け、ボルト挿通部17の下側にそのボルト挿通部17を通して侵入する雨水を受けて設置物支持部材9の横外方に排出する樋状の雨水誘導ガイド部18を設けてある。つまり、雨水誘導ガイド部18の排水側端部が、設置物支持部材9の第2周壁部14に形成した排水口19に接続してある。
【0020】
前記ボルト挿通部17の長手方向を、設置物支持部材9の対角線上に沿わせて4箇所に夫々配置して、連結用ボルト16の位置調整方向を、対角線上で変位可能にし、各種異なる設置物3の設置プレート20の寸法に対応可能にしてある(図2、図3)。
【0021】
前記長孔状のボルト挿通部17は、大部分が連結用ボルト16の頭部外径よりは小さく、且つ、軸部より少し大きい幅に形成してあると共に、その端部には、連結用ボルト16の頭部が上方から挿通可能な大きさのボルト頭挿通孔部17Aを連設してあり、ボルト頭をボルト頭挿通孔部17Aから挿通させた後に、その長孔内に沿って移動させることにより、連結用ボルト16はボルト挿通部17に係止されて抜け止めされるように構成してある。
尚、ボルト挿通部17の下側には、ロッドを溶接して連結用ボルト16の回り止め部21を形成してあり、連結用ボルト16をボルト挿通部17に挿通させた後には、ナットNを工具で回転操作するだけで、設置物3を固定台1に固定できる(図4〜図6)。
【0022】
第1周壁部13に上下方向に沿った第1縦壁部13Aを形成すると共に、第2周壁部14に上下方向に沿った第2縦壁部14Aを形成し、第1縦壁部13Aと第2縦壁部14Aに両支持部材連結ボルト23に対する第2挿通孔24を備えた連結部15を配設してある。
【0023】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 前記ボルト挿通部17は、長孔状以外に、スリット状であっても良く、また、連結用ボルト16の取り付け位置の調整が不要であるならば、単にボルト頭が係止する大きさの丸孔形状であっても良い。
〈2〉 前記複数のボルト挿通部17が長孔の場合、その長手方向を、設置物支持部材9の対角線上に配置する以外に、図7に示すように、平行線上に配置してあってもよい。
〈3〉 図3に示すように、前記フランジ部10を補強するために、そのフランジ部10の下面にリブ25を設けても良く、また、開口部4を補強するために、図7に示すように、フランジ部10を設置物支持部材9の全周に連続して形成しても良い。
〈4〉 前記第1周壁部13と第2周壁部14の形状は、第1縦壁部13Aと第2縦壁部14Aを形成するだけの形状以外に、図7、図8に示すように、第1縦壁部13Aや第2縦壁部14Aの下端縁部に連接する鍔状の第1、第2横壁部13B、14Bを設け、それらの第1、第2横壁部13B、14Bに連結部15を配設してあっても良い。
〈5〉 前記フランジ部10を、図9に示すように、下地側支持部材5の横外側で開口部4よりも低い位置に周方向にわたって横に延出して鍔状に形成しても良く、開口部4を設置物支持部材9で上方から覆った状態で、前記フランジ部10に連結自在な連結部15を、設置物支持部材9の外周部に連設してあっても良い。
〈6〉 前記雨水誘導ガイド部18を、前記設置物支持部材9におけるボルト挿通部17の下面に溶接付けして一体にする以外に、プレス成形により設置物支持部材9に一体形成して樋状に成形してあっても良い。
〈7〉 前記雨水誘導ガイド部18を、樋状に形成したが、ボルト挿通部17の下方で、そのボルト挿通部17を通して侵入する雨水を受けて設置物支持部材9の横外方に排出する物であれば、形状は問わない。例えば、図10に示すように、設置物支持部材9の内側で、且つ、ボルト挿通部17の下方の全面に内側屋根板18Aを形成し、且つ、第2縦壁部14Aで内側屋根板18Aの上側に排水口19を形成することにより、雨水誘導ガイド部を形成して、ボルト挿通部17を通して侵入する雨水を受けて設置物支持部材9の横外方に排出できるように構成してある。
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0024】
2 取付下地
3 設置物
4 開口部
5 下地側支持部材
9 設置物支持部材
10 フランジ部
12 固定部
13 第1周壁部
14 第2周壁部
15 連結部
16 連結用ボルト
17 ボルト挿通部
18 雨水誘導ガイド部
13A 第1縦壁部
14A 第2縦壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を形成する有底筒状の下地側支持部材に、横外側に延出するフランジ部を設けると共に、底部に取付下地への固定部を備え、
前記開口部及び前記フランジ部を上方から覆う蓋状の設置物支持部材を設け、
前記フランジ部の外縁に下方に垂下する第1周壁部を連設すると共に、前記フランジ部を前記設置物支持部材で上方から覆った状態で、前記第1周壁部の外側を囲繞する第2周壁部を前記設置物支持部材の外縁部に連設し、
前記第1周壁部と前記第2周壁部とに互いに連結自在な連結部を設け、
設置物に対する連結用ボルトの頭部を係入自在なボルト挿通部を前記設置物支持部材に設け、
前記ボルト挿通部の下側にそのボルト挿通部を通して侵入する雨水を受けて前記設置物支持部材の横外方に排出する雨水誘導ガイド部を設けてある設置物固定具。
【請求項2】
前記第1周壁部に上下方向に沿った第1縦壁部を形成すると共に、前記第2周壁部に上下方向に沿った第2縦壁部を形成し、
前記第1縦壁部と前記第2縦壁部に前記連結部を配設してある請求項1に記載の設置物固定具。
【請求項3】
上部に開口部を形成する有底筒状の下地側支持部材を設けると共に、前記開口部を上方から覆う蓋状の設置物支持部材を設け、
前記下地側支持部材の横外側で前記開口部よりも低い位置に周方向にわたって延出するフランジ部を設けると共に、前記下地側支持部材の底部に取付下地への固定部を備え、
前記開口部を前記設置物支持部材で上方から覆った状態で、前記フランジ部と連結自在な連結部を、前記設置物支持部材の外周部に連設し、
設置物に対する連結用ボルトの頭部を係入自在なボルト挿通部を前記設置物支持部材に設け、
前記ボルト挿通部の下側にそのボルト挿通部を通して侵入する雨水を受けて前記設置物支持部材の横外方に排出する雨水誘導ガイド部を設けてある設置物固定具。
【請求項4】
前記連結用ボルトを取り付け位置調整自在な形状に前記ボルト挿通部を形成してある請求項1〜3のいずれか1項に記載の設置物固定具。
【請求項5】
前記ボルト挿通部を長孔から形成すると共に、その長孔の長手方向を、前記連結用ボルトの位置調整方向に沿わせて配設し、前記ボルト挿通部の下側に、連結用ボルトの回り止め部を設けてある請求項4に記載の設置物固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−112933(P2013−112933A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256994(P2011−256994)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(510153113)株式会社ベルテック (4)