説明

試験用光信号発生装置

【課題】 安定で正確な試験を行うことができるようにする。
【解決手段】 第1の電気光変換器24は、ジッタのあるデータ信号によって所定波長の狭帯域な光を強度変調し、その強度変調された光を第1光信号P1として出射する。また、第2の電気光変換器26は、信号発生器25から出力された正弦波の信号E2によって前記所定波長を含む広帯域な光を強度変調し、その強度変調された光を第2光信号P2として出射する。光合成器27は、第1光信号P1と第2光信号P2とを合成し、その合成によって得られた光信号を試験用光信号P3として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスや光ファイバ通信システムを構成する受信器に代表される光通信機器等の試験に用いる試験用光信号発生装置に関し、特に、位相雑音と振幅雑音とを含む試験用光信号を用いた試験を正確に行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
位相雑音と振幅雑音とを含む光信号を用いた試験として、Stressed Eye Conformance Test (以下、SECTと記す)がある。
【0003】
この試験は、次の非特許文献1、2で勧告されており、ジッタを有するデータ信号に他信号を重畳したものを試験用光信号として試験対象に与え、図3のように試験用光信号の試験対象への入力レベルと、試験対象から出力される信号のビット誤り率との関係を、ジッタ量をパラメータとして求めるというものであり、ジッタによる位相雑音と重畳された信号に含まれている振幅雑音とを含む信号に対し、試験対象がどの程度まで小さい光レベルまで動作可能かを把握するための試験である。
【0004】
【非特許文献1】IEEE 802.3ae
【非特許文献2】IEEE 802.3ah
【0005】
図4は、上記試験に用いる光信号を発生する試験用光信号発生装置10の構成例を示している。
【0006】
この試験用光信号発生装置10では、ジッタ発生器11からジッタのあるクロック信号Cをデータ信号発生器12に入力して、クロック信号Cに同期した所定パターンのデータ信号Dを発生させ、LPF13によってデータ信号Dに対する高域遮断処理を行い、第1の信号E1を得る。
【0007】
そして、この第1の信号E1と、信号発生器14から出力される正弦波の第2の信号E2とを合成器15により加算合成し、図5に示すアイパターンように、位相雑音と振幅雑音が付与された第3の信号E3を生成する。
【0008】
そして、この第3の信号E3を電気光変換器16によって所定波長の光信号Pに変換し、これを試験用光信号とし、その消光比、変調度等を規定値に設定した上で、出力レベル可変用のアッテネータ17を介して試験対象1に与え、上記試験を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記のように、電気合成して得られた信号E3を光信号Pに変換する方法では、波長の短い範囲(例えば850nm)で、光信号Pを長時間にわたって安定に出力させることができないという問題がある。
【0010】
即ち、電気光変換器16としては通常、例えば波長850nmの光を出力する光源と、LN変調器とが用いられるが、LN変調器には直流ドリフトがあり、波長が短い程そのドリフトの影響が顕著に現れ、光信号Pの波形を数10分も維持することができない。
【0011】
また、LN変調器のドリフトの影響を抑えるためにバイアス電圧をフィードバック制御することも考えられるが、このフィードバック制御は、LN変調器のVπ範囲全体を使用する消光比の大きい光でないと正しく行うことができず、上記のように振幅雑音成分を付与した消光比の小さい光には使用できない。
【0012】
これを解決するために、信号E1、E2をLN変調器でそれぞれ光信号P1、P2に変換してから、光合成器によって合成することが考えられる。
【0013】
ところが、このように2つの狭帯域な搬送波に対して信号E1、E2で振幅変調をそれぞれ施して、光信号P1、P2を得た場合、光信号P1、P2の各搬送波の周波数差が試験対象の受信帯域内であると、測定対象内でその周波数差のビート雑音信号が大きなレベルで発生して測定に悪影響を与え、正確な試験が行えなくなるという新たな問題が発生する。
【0014】
本発明は、この問題を解決して、安定で正確な試験を行うことができる試験用光信号発生装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の試験用光信号発生装置は、
ジッタを有するクロック信号を発生するジッタ発生器(21)と、
前記ジッタ発生器から出力されるクロック信号に同期した所定パターンのデータ信号を出力するデータ信号発生器(22)と、
所定波長の狭帯域な光を前記データ信号によって強度変調し、該強度変調された光を第1光信号として出射する第1の電気光変換器(24)と、
所定周波数の正弦波の信号を出力する信号発生器(25)と、
前記所定波長を含む広帯域な光を前記信号発生器の出力信号によって強度変調し、該強度変調された光を第2光信号として出射する第2の電気光変換器(26)と、
前記第1光信号と前記第2光信号とを合成し、該合成によって得られた光信号を試験用光信号として出力する光合成器(27)とを備えている。
【発明の効果】
【0016】
このように本発明の試験用光信号発生装置は、第1光信号と第2光信号を合成して試験用光信号を得るとともに、第2光信号を広帯域光としているので、第1光信号の搬送周波数におけるスペクトラム電力密度に比べて、第2光信号の電力密度は広い波長範囲にわたり小さくなるので、両光信号の間で生じるビート成分のレベルも小さくなり、測定に悪影響を与えない。このため、安定で、正確な試験が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明を適用した前記したSECTに用いる試験用光信号発生装置20の構成と、それを用いた試験システムを示している。
【0018】
図1において、試験用光信号発生装置20のジッタ発生器21は、指定されたジッタJを有する所定周波数(例えば10GHz)のクロック信号Cを発生し、データ信号発生器22に出力する。
【0019】
データ信号発生器22は、クロック信号Cに同期した所定パターン(例えば擬似ランダムパターン)のデータ信号Dを、低域通過フィルタ(以下、LPFと記す)23に出力する。
【0020】
LPF23は、データ信号Dに対する帯域制限を行う。このLPF23の高域遮断周波数は、データ信号Dのビットレートが10Gbpsであれば、例えば7.5GHzであり、データ信号Dの立ち上がり、立ち下がりを緩慢にしている。
【0021】
第1の電気光変換器24は、図2の(a)のように、所定波長λ1(例えば850nm)を中心波長とする狭帯域な光を搬送波とし、この搬送波をLPF23からの出力信号E1によって強度変調し、第1光信号P1として出射する。
【0022】
第1の電気光変換器24は、所定波長λ1の狭帯域な光源と前記したLN変調器で構成され、直流ドリフトが生じないようにバイアス電圧のフィードバック制御がされている。なお、短時間動作等のために直流ドリフトが問題にならない場合には、前記フィードバック制御を施さなくてもよい。
【0023】
一方、信号発生器25から出力される所定周波数(200MHz〜2GHz)の正弦波の信号E2は、第2の電気光変換器26に入力され、信号E2によって強度変調された第2光信号P2が生成される。
【0024】
この第2の電気光変換器26は、例えば、VCSEL(面発光レーザダイオード)等のように直接変調が可能で広帯域な光源によって構成され、図2の(b)のように、信号E2により強度変調された所定波長λ1を含む広帯域(例えば840〜860nm)の第2光信号P2を出射する。
【0025】
第1光信号P1と第2光信号P2は、光合成器27に入力されて合成され、その合成された光信号P3が、試験用光信号として出射される。
【0026】
この光合成器27から出射される試験用光信号P3の波形は、前記図5に示したアイパターンとなり、そのスペクトラムは、図2の(c)に示すように、第2光信号P2の広帯域なスペクトラムの中から狭帯域な第1光信号P1のスペクトラムが突出した特性を有している。
【0027】
ここで、例えば第1光信号P1の総電力と第2光信号P2の総電力とが同等であるとしても、第2光信号P2のスペクトラムは広い波長帯域に分散しているのでそのスペクトラム電力密度は、第1光信号P1の搬送波周波数における電力密度に比べて格段に小さい。
【0028】
したがって、第2光信号P2の各スペクトラム成分と第1光信号P1の搬送波周波数との周波数差のビート成分(広い波長帯域に分散する)のレベルも非常に小さくなる。
【0029】
このようにして得られた試験用光信号P3は、例えば、光電変換してサンプリングオシロスコープでアイパターンを観測することにより、その消光比、変調度、VECP(Ver-tical Eye Closure Penalty)等が、SECTの試験で規定されている値に設定された上で、出力レベル可変用のアッテネータ30を介して光通信機器などの試験対象1に与えられる。
【0030】
そして、試験対象1から出力される信号に対するビット誤り率を、誤り測定器31によって測定する。
【0031】
この測定を、クロック信号Cに付与するジッタ量、試験対象1に対する試験用光信号P3の入力レベルを変えて行うことで、前記図3に示した特性を求めることができる。
【0032】
この測定において、光信号P3に含まれる第1光信号P1と第2光信号P2との間のビート成分が試験対象1の受光部内で発生しても、前記したように、そのビート成分のレベルは非常に小さいため、測定に悪影響を与えず、正確な測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の構成を示す図
【図2】実施形態によって生成された光信号のスペクトラムを示す図
【図3】SECT試験の測定結果の一例を示す図
【図4】従来装置の構成を示す図
【図5】試験用信号のアイパターン図
【符号の説明】
【0034】
1……試験対象、20……試験用光信号発生装置、21……ジッタ発生器、22……データ信号発生器、23……低域通過フィルタ、24……第1の電気光変換器、25……信号発生器、26……第2の電気光変換器、27……光合成器、30……アッテネータ、31……誤り測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジッタを有するクロック信号を発生するジッタ発生器(21)と、
前記ジッタ発生器から出力されるクロック信号に同期した所定パターンのデータ信号を出力するデータ信号発生器(22)と、
所定波長の狭帯域な光を前記データ信号によって強度変調し、該強度変調された光を第1光信号として出射する第1の電気光変換器(24)と、
所定周波数の正弦波の信号を出力する信号発生器(25)と、
前記所定波長を含む広帯域な光を前記信号発生器の出力信号によって強度変調し、該強度変調された光を第2光信号として出射する第2の電気光変換器(26)と、
前記第1光信号と前記第2光信号とを合成し、該合成によって得られた光信号を試験用光信号として出力する光合成器(27)とを備えた試験用光信号発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−41681(P2006−41681A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215426(P2004−215426)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】