誘導加熱式暖房装置
【課題】発熱層に損傷を与え難くすると共に、装置表面に対して局部的な荷重が加わっても局部的な凹み変形を生じさせ難くする。
【解決手段】外部荷重の支持を分担できるコア層部2の表側に表層部3が設けられ、コア層部2の裏側に誘導加熱用コイル4が設けられ、表層部3は、装置表面1aを形成する合成樹脂膜製の被覆層5と、被覆層5の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層6と、発熱層6の裏側とコア層部2の表側との間に設けられ、表側から裏側に至る合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部7bを形成した断熱層7とを備えたこと。
【解決手段】外部荷重の支持を分担できるコア層部2の表側に表層部3が設けられ、コア層部2の裏側に誘導加熱用コイル4が設けられ、表層部3は、装置表面1aを形成する合成樹脂膜製の被覆層5と、被覆層5の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層6と、発熱層6の裏側とコア層部2の表側との間に設けられ、表側から裏側に至る合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部7bを形成した断熱層7とを備えたこと。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱方式の暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱方式の暖房装置としては、暖房便座があり、便座本体が座面側から便器側へ向かって順番に、薄板金属からなる発熱層と、発熱層を保温する発泡スチロール樹脂製の断熱層と、誘導加熱用コイルとを設け、誘導加熱用コイルへの通電で生じる磁気誘導作用で発熱層を発熱させて着座面を昇温させるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の暖房装置は、薄板金属からなる発熱層や発泡スチロール樹脂製の断熱層が局部的な押圧に対して弱いために、着座面等となる装置表面に対して使用のときに大きな荷重が局部的に加わると、荷重の加わった箇所の薄板金属製の発熱層に塑性変形を生じさせて装置表面が局部的に凹む等の永久変形を生じさせることがある。また、従来の暖房装置は、薄板金属製の発熱層の表面が装置表面となるため、表面が露出する発熱層に傷が付いたり破損したりし易く発熱機能を発揮できなくなることがある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、発熱層に損傷を与え難くすると共に、装置表面に対して局部的な荷重が加わっても局部的な凹み変形を生じさせ難くした誘導加熱式暖房装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発熱層に損傷を与え難くすると共に、装置表面に対して局部的な荷重が加わっても局部的な凹み変形を生じさせ難い請求項1記載の本発明が採用した手段は、外部荷重の支持を分担できるコア層部の表側に表層部が設けられ、コア層部の裏側に誘導加熱用コイルが設けられた誘導加熱式暖房装置であって、前記表層部は、装置表面を形成する合成樹脂膜製の被覆層と、被覆層の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層と、発熱層の裏側とコア層部の表側との間に設けられ、表側から裏側に至る合成樹脂製の耐圧離隔部で囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部を形成した断熱層とを備えたことを特徴とする誘導加熱式暖房装置である。
【0007】
断熱層を容易に得るために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記断熱層が、合成樹脂製の多孔板からなり、中空部となる貫通孔の周囲を、表側と裏側に離隔させる板の肉部からなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0008】
断熱層を容易に得るために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記断熱層が、合成樹脂製のモノフィラメントからなる径糸及び緯糸で織成され、貫通した中空部となる布目又は網目の周囲を、両糸を当接状態で重ね合わせてなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0009】
断熱層を補強するために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記表層部が、断熱層の中空部の開口側に接合された合成樹脂製の補強層を設けた請求項1、2又は3記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0010】
断熱層の中空部へ他の層が食い込むのを防止するために請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記断熱層の中空部に合成樹脂製の発泡材を充満させた請求項1乃至4のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0011】
暖房便座に適用するために請求項6記載の本発明が採用した手段は、前記コア層部及び前記表層部で着座可能な便座本体を形成すると共に、前記表層部の表面で便座本体の着座面を形成し、誘導加熱用コイルを便座本体の裏面側に便座本体と一体的に設けた請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、金属薄膜製の発熱層を合成樹脂膜製の被覆層で被覆してあるので発熱層に損傷を与え難く、また、断熱機能を発揮する多数の中空部を合成樹脂製の耐圧離隔部で囲んであるので、装置表面に加わった局部的な荷重を耐圧離隔部を介してコア層部へ伝達させることで、断熱層に変形を生じさせることなく発熱層を支持できるので、装置表面に局部的な凹み変形を生じさせ難くい。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、貫通孔の内径寸法や断熱層の単位面積に占める貫通孔の個数を選択することで、中空部の最適な開口率を容易に得ることができる。
【0014】
請求項3記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、モノフィラメントの線径や、径糸間隔及び緯糸間隔を選択することで、中空部の最適な開口率を容易に得ることができる。
【0015】
請求項4記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、装置表面に加わった局部的な荷重で断熱層の中空部の開口側が変形しようとしても、接合された合成樹脂製の補強層で変形を阻止することで、断熱層を補強することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、装置表面に加わった荷重で発熱層等が断熱層の中空部へ食い込もうとしても、断熱層の中空部に充填されている合成樹脂製の発泡体で食い込を防止することができ、発熱層等に変形を生じさせない。
【0017】
請求項6記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、装置表面である着座面に局部的な凹み変形を生じさることがない便座本体を有する誘導加熱式の暖房便座を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る誘導加熱式暖房装置(以下、「本発明暖房装置」と言う。)の第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は本発明暖房装置1の一部破断した平面図、図(B)は本発明暖房装置1の横断面の一部を拡大した断面図である。
【図2】別態様の層構造の断面図である。
【図3】更に別態様の層構造の断面図である。
【図4】合成樹脂製の多孔板からなる断熱層7を示すものであって、図(A)は断面図、図(B)は平面図、図(C)は貫通孔からなる中空部7bに発泡体7eを充填した断面図である。
【図5】合成樹脂製モノフィラメントの径糸7c及び緯糸7dで織成したものからなる断熱層7を示すものであって、図(A)は断面図、図(B)は平面図、図(C)は布目又は網目からなる中空部7bに発泡体7eを充填した断面図である。
【図6】合成樹脂製板にプレス加工等で開口した凹部からなる中空部7bを多数形成したものからなる断熱層を示すものであって、図(A)は断面図、図(B)は平面図、図(C)は凹部からなる中空部7bに発泡体7eを充填した断面図である。
【図7】本発明暖房装置を暖房便座に適用した第2の実施の形態を示すものであって、暖房便座21を一部破断して示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線で断面した暖房便座21の側面図である。
【図9】図7のIX−IX線で断面して拡大した暖房便座21の端面図である。
【図10】図9の四角線Xで囲まれた箇所を拡大した断面図である。
【図11】図(A)は真空成型方法で暖房便座21の表層部3を成型している状態を中間省略して示す側面図、図(B)は成型に用いる便座成形用シート27の拡大した断面図である。
【図12】暖房便座21のコア層部2を成型している状態を中間省略して示す側面図であって、図(A)の右側の図は開いた金型35aのキャビテイ35a−1に表層部3を装填する前の状態を示し、図(A)の左側の図はキャビテイ35a−1に表層部3を装填して金型35aを閉じた状態を示し、図(B)の左側の図はキャビテイ35a−1に合成樹脂を射出してコア層部2を成型している状態を示し、図(B)の右側の図はコア層部2を成型した後に金型35aを開いている状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る誘導加熱式暖房装置を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1乃至図6に示す第1の本実施の形態に係る本発明暖房装置1は、リビングや廊下等の床部又は階段の踏み板等に適用されるものであり、装置表面1aが踏まれる等して圧縮荷重が負荷されるものである。本発明暖房装置1は、図1に示す如く、踏まれて生じる外部荷重の支持を分担できるコア層部2の表側に表層部3が設けられ、コア層部2の裏側に誘導加熱用コイル4が設けられたものであって、誘導加熱用コイル4への通電で生じる磁気誘導作用で発熱層6を発熱させて装置表面1a(表層部3の表面)を昇温させるようになっている。
【0021】
前記表層部3は、装置表面1aを形成する合成樹脂膜製の被覆層5と、被覆層5の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層6と、発熱層6の裏側とコア層部2の表側との間に設けられた断熱層7とを備えている。表層部3は、被覆層5、発熱層6及び断熱層7の層どうしが接合されて一体化されている。
【0022】
前記表層部3の被覆層5は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ABS又はポリアミド等の合成樹脂製で厚み寸法T5が0.02〜0.80mmの範囲で選択される。被覆層5は、単一種類の合成樹脂製のものや、複数種類の合成樹脂の組合せからなる複数層の隣接する層どうしをドライラミネート(一方の合成樹脂製シート材に接着剤(二液硬化型)を塗布した後に乾燥させて他方の合成樹脂製シート材を貼合わせて接合)したものが用いられる。被覆層5は、薄膜金属製の発熱層6の腐食を防止する必要があるときには、ガスバリヤー性に優れたポリアミドを含めるか、又は任意層の樹脂表面に塩化ビニリデン樹脂(PVDC)を塗着したものを含め、装置表面1aから層内を通過しようとする水蒸気や空気を遮断するとよい。被覆層5は、表面から発熱層6を透視できないように着色されることもある。なお、被覆層5は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには熱可塑性の合成樹脂を選択して加熱成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには熱可塑性以外に熱硬化性の合成樹脂を選択することもできる。
【0023】
前記表層部3の発熱層6は、アルミニウム又は銅等の薄膜金属製で厚み寸法T6が0.01〜0.20mmの範囲で選択される。なお、発熱層6は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには塑性変形可能な軟質の薄膜金属を選択して曲げ成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには軟質以外に硬質の薄膜金属を選択することもできる。
【0024】
前記表層部3の断熱層7は、表側から裏側に至るポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)又ABS等の合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部7bを形成したものであって、厚み寸法T7が0.750〜1.500mmの範囲で選択される。断熱層7は、装置表面1aに加わった荷重を耐圧離隔部7aを介してコア層部2へ伝達させ、圧縮による塑性変形(永久ひずみ)を生じさせることなく発熱層6を支持できるようにするために、荷重による圧縮応力α(例えば、α=40〜100kgf/cm2 )が加わっても弾性変形のみを生じさせて塑性変形を生じさせないような耐圧離隔部7aの肉厚み寸法や、中空部7bの開口率A(断熱層7の単位面積に占める複数個の中空部7bの開口面積の総和を単位面積で除した値に100を乗した値。例えば、A=50〜80%)が選択される。また、表層部3をインサート成形用金型の開いた固定金型のキャビテイに装填し、次に、移動金型を前進移動させてキャビテイを閉じ、その後に閉じた金型と表層部3の断熱層7の間の空間へ溶融樹脂を射出し、断熱層7の裏側にコア層部2を形成する場合には、断熱層7は、射出する合成樹脂の射出圧力β(例えば、β=150〜400kgf/cm2 )に耐えるだけの強度を有するものを用いる。なお、断熱層7は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには熱可塑性の合成樹脂を選択して加熱成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには熱可塑性以外に熱硬化性の合成樹脂を選択することもできる。
【0025】
前記断熱層7は、例えば図4に示す如く、合成樹脂製の多孔板からなり、中空部7bとなる貫通孔の周囲を、表側と裏側に離隔させる板の肉部からなる耐圧離隔部7aで形成したもの、図5に示す如く、合成樹脂製の線径が0.35〜0.75mmφのモノフィラメントからなる径糸7c及び緯糸7dで織成され、貫通した中空部7bとなる布目又は網目の周囲を、両糸7c,7dを当接状態で重ね合わせてなる耐圧離隔部7aで形成したもの、または、図6に示す如く、合成樹脂板の片面に軟化温度状態でのプレス加工等で多数の凹部を開口させ、中空部7bとなる凹部の周囲を、表側と裏側に離隔させる耐圧離隔部7aで形成したもの等が選択される。前記断熱層7を多孔板で形成した場合には、貫通孔の内径寸法や断熱層7の単位面積に占める貫通孔の個数を選択することで、中空部7bの最適な開口率Aを容易に得ることができる。また、前記断熱層7を合成樹脂製の多孔板で形成した場合には、モノフィラメントからなる径糸7c及び緯糸7dで織成した布又は網で形成した場合には、モノフィラメントの線径や、径糸間隔Dc及び緯糸間隔Ddを選択することで、中空部7bの最適な開口率Aを容易に得ることができる。
【0026】
前記表層部3は、図2に示す如く、断熱層7を補強するために、断熱層7の中空部7bの開口側にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)又ABS等で厚み寸法T8が0.02〜0.80mmの合成樹脂製の補強層8を接合することもある。多孔板(図4参照)又は織成したもの(図5)からなり貫通した中空部7bを形成した断熱層7の場合には、図2に示すように表側及び裏側に補強層8を設け、一方に開口した凹部(中空部7b)を形成した(図6参照)断熱層7の場合には、図示は省略たが、凹部(中空部7b)の開口側に補強層8を設けるとよい。表層部3は、装置表面1aに加わった荷重で断熱層7の中空部7bの開口側が変形しようとしても、補強層8で変形を阻止して断熱層7を補強することができる。なお、補強層8は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには熱可塑性の合成樹脂を選択して加熱成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには熱可塑性以外に熱硬化性の合成樹脂を選択することもできる。
【0027】
前記断熱層7は、図3、図4(C)、図5(C)及び図6(C)に示す如く、中空部7bへ発熱層6及び/又はコア層部2が食い込むのを防止するために、中空部7bに発泡ウレタン等の合成樹脂製発泡体7eを充満させ、発熱層等6に変形を生じさせないようにすることもある。
【0028】
前記表層部3における被覆層5と発熱層6の接合、発熱層6と断熱層7の接合、及び断熱層7と補強層8の接合の各々は、ドライラミネートによる接着剤(二液硬化型)での接合、又はエクストルージョン式ラミネートによるポリエチレン(PE)樹脂による接合等が選択される。すなわち、表層部3となる積層シート材の製造は、被覆層5となるシート材及び発熱層6となるシート材の接合、発熱層6となるシート材及び断熱層7となるシート材の接合、並びに、断熱層7となるシート材及び補強層8となるシート材の接合を、一方のシート材に接着剤を塗布した後に乾燥させて他方のシート材をドライラミネートする方法、又は二つのシート材の間にダイからポリエチレン(PE)樹脂膜を押し出してラミネートする方法等で接合して得られる。得られた積層シート材は、所定寸法に切断されると共に、必要に応じて湾曲成形されて表層部3となる。
【0029】
前記コア層部2は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ABS又はポリアミド等の合成樹脂製又は天然ゴム等のゴム製で、その表面から裏面までの厚み寸法T2が1.00〜4.00mmの範囲で選択される。前記表層部3の裏側とコア層部2の表側の間には、図示は省略したが、ポリエステル(PET)又はポリプロピレン(PP)等の樹脂からなる保護層を部分的に設けて、コア層部2を射出成型するときの射出溶融樹脂で表層部2に損傷を与えないように保護層で保護することもある。なお、予め所定寸法に成形したコア層部2を表層部3に接着剤で接合するときには、保護層は不要である。
【0030】
前記誘導加熱用コイル6は、図1(A)に示す如く、導線を四角状又は円形状等に巻き上げた薄い面状のものであって、複数個を直列又は並列に接続されている。誘導加熱用コイル6は、フレキシブルプリント基板(FPC)にエッチングして形成したものや、コイル線を面状に巻回してフレキシブル板に接合したものが選択され、コア層部5の裏面に当接又は接近して設けられている。なお、コア層部2の裏面が平坦な場合には、フレキシブルな基板等を用いることなく硬質の基板等とすることも可能である。
【0031】
本発明暖房装置1は、金属薄膜製の発熱層6を合成樹脂膜製の被覆層5で被覆してあるので発熱層6に損傷を与え難く、また、断熱機能を発揮する多数の中空部7bを合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲んであるので、装置表面1aに加わった局部的な荷重を耐圧離隔部7aを介してコア層部2へ伝達させることで、断熱層7に変形を生じさせることなく発熱層6を支持できるので、装置表面1aに局部的な凹み変形を生じさせ難いものとなる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図7乃至図12に示す第2の実施の形態に係る本発明暖房装置は、暖房便座21に適用したものであって、使用者の着座により着座荷重が負担されるものである。
【0033】
暖房便座21は、図7に示す如く、便座支持部22との組合せで誘導加熱式の暖房便座装置20を構成するものであり、便座支持部22に揺動自在に支持され、図示する伏倒状態(着座使用可能状態)から、図示は省略したが、手前側を上昇させた起立状態(男子小便使用可能状態)まで仰伏するようにしてある。暖房便座21は、便座支持部22との間に一次側コイル23a及び二次側コイル23bの組合せからなる給電装置23が設けられ、暖房便座21が伏倒位置に在るとき、対向接近する一次側コイル23aと二次側コイル23bの相互誘導作用により、便座支持部22の電源部(図示略)から暖房便座21の誘導加熱用コイル4へ給電するようにして、便座支持部22との間で給電用コードを無くしてある。給電装置23の一次側コイル23a及び二次側コイル23bは、その配置を図示した箇所に限定するものではなく、暖房便座21を枢支するヒンジ部に配置して、便座21の仰伏に関係なく常時給電可能にすることもある。暖房便座21は、便座支持部22に対して着脱自在になっており、便座支持部22から分離して洗浄等の保守ができるようになっている。なお、便座支持部22から暖房便座21への給電は、上記給電装置23を用いることなく、給電用コードで行うようにしてもよい。
【0034】
暖房便座21は、図7乃至図10に示す如く、上面側に着座面24aを形成する上部24と、上部24の下面側開口部24bを覆蓋する底部25とを備え、上部24が厚肉部26と誘導加熱用コイル4とからなる。暖房便座21が洗浄可能な仕様の場合、底部25は、外部から上部24の内側へ水分が侵入しないように、下面側開口部24bを水密に覆蓋するようになっている。上部24の厚肉部26は、上面側に着座面24aを形成する表層部3と、着座面24aに使用者が着座したときに生じる着座荷重の支持を分担できるコア層部2とからなり、コア層部2の表面に表層部3が設けられ、コア層部2の裏面に誘導加熱用コイル4が当接又は接近して設けられている。
【0035】
前記厚肉部26のコア層部2は、第1の実施の形態と同様に、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ABS又はポリアミド等の熱可塑性合成樹脂製又は天然ゴム等のゴム製からなり、加熱が必要な領域である着座面領域に対応する箇所における表面から裏面までの厚み寸法T2が1.00〜4.00mmの範囲で選択される。また、前記厚肉部26の表層部3は、図10に示す如く、表面が着座面24aとなる被覆層5と、被覆層5の裏面に接合した発熱層6と、一方面に発熱層6が接合され他方面にコア層部2が接合され断熱層7とからなる。前記厚肉部26のコア層部2と表層部3の間には、保護層(図示略)が設けられる場合がある。この保護層は、コア層部2を射出成型するときに、射出する溶融樹脂で表層部3に損傷を与えないように部分的に設けられるものであり、ポリアミド又はポリエステル(PET)等の熱可塑性合成樹脂製で厚み寸法が0.02〜0.80mmの範囲で選択される。予め成形されているコア層部2を表層部3に接着剤で接合する場合には、保護層は不要である。
【0036】
前記表層部3を構成する被覆層5、発熱層6及び断熱層7は、第1の実施の形態(図1(B)乃至図6参照)と同様の仕様のものが用いられ、図示は省略したが、断熱層7の中空部7bの開口側にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)又ABS等で厚み寸法が0.02〜0.80mmの合成樹脂製の補強層8(図2参照)を接合して断熱層7を補強することもある。
【0037】
前記誘導加熱コイル4は、第1の実施の形態と同様の仕様のものが用いられる。誘導加熱用コイル4は、発熱層6との間の距離の違いに応じ導線の捲き数及び/又は平面積(外側の導線で囲まれた内側の面積)を調整して、発熱層6の発熱量を均等化してある。なお、暖房便座21が洗浄可能な仕様の場合には、底部25で水密に覆蓋された上部24の密閉状態の内側の内圧の変動を押さえるために、上部24の内側に充填する発泡樹脂製の充填剤(図示略)で誘導加熱コイル4を固定して、コア層部2の裏面に誘導加熱コイル4を当接又は接近させるとよい。
【0038】
暖房便座21は、発熱層6を覆う合成樹脂製の被覆層5の厚みT5が0.02〜0.80mmと非常に薄いため、発熱層6で生じた熱が被覆層5を短時間に伝達して着座面を迅速に昇温させることができる。また、暖房便座21は、厚肉部26の表層部3の表面(着座面24a)から誘導加熱コイル4が設けられるコア層部2の裏面までの厚み寸法T11を必要最小限(例えば、4.5〜7.5mm)に収めて、発熱層6から誘導加熱コイル4までの距離を短くして、誘導加熱用コイル4への通電で生じる磁気誘導作用で発熱層6を効率良く発熱させるようにしてある。
【0039】
本実施の形態に係る暖房装置21は、金属薄膜製の発熱層6を合成樹脂膜製の被覆層5で被覆してあるので発熱層6に損傷を与え難く、また、断熱機能を発揮する多数の中空部7bを合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲んであるので、装置表面1aに加わった局部的な荷重を耐圧離隔部7aを介してコア層部2へ伝達させることで、断熱層7に変形を生じさせることなく発熱層6を支持できるので、上部表面(着座面)24aに局部的な凹み変形を生じさせ難くいものとなる。
【0040】
前記暖房便座21の上部24の製造方法は、次の通りである。
第1工程:図11(A)(B)に示す便座成形用シート材27を予め製造し、便座成形用シート材27を所定の大きさに切断することである。所定の大きさとは、次の第2工程で所定形状の表層部3を得ることができる大きさである。便座成形用シート材27は、図11(B)に示す如く、被覆層5となるシート材、発熱層6となるシート材及び断熱層7となるシート材を備え、これらシート材どうしをドライラミネートによる接着剤(二液硬化型)での接合、又はエクストルージョン式ラミネートによるポリエチレン(PE)樹脂による接合等で一体化して得る。被覆層5及び断熱層7は、第1の実施の形態(図1(B)乃至図6参照)と同様の仕様のものであって熱可塑性の合成樹脂製のものを用い、また発熱層6は、第1の実施の形態(図1(B)乃至図6参照)と同様の仕様のものであって塑性変形可能な軟質の薄膜金属製のものを用いる。また、断熱層7は、後述する第3工程におけるコア層2を形成するときの合成樹脂の射出圧力β(例えば、β=150〜400kgf/cm2 )に耐えるだけの強度を有するものを用いる。
【0041】
第2工程:図11(A)に示す如く、所定の大きさに切断された便座成形用シート材27を軟化温度にして真空成型方法で表層部3を成型することである。この成型は、便座成形用シート材27の熱可塑性合成樹脂製の被覆層5及び断熱層7の軟化温度までヒータ(図示略)で加熱し、軟化温度を維持させたまま便座成形用シート材27を真空成型装置33の金型34に装填し、その後に金型34の吸引で便座成形用シート材27を成型面34aに圧着させて表層部3の所定形状とし、表層部3を形状維持できる温度まで冷却した後に脱型する。便座成形用シート材27の薄膜金属製の発熱層6は、金型34の吸引で便座成形用シート材27を成型面34aに圧着させるとき、塑性変形して表層部3の所定形状となる。成型された表層部3は、はみ出た余分な部分をカツター等で切除する。なお、表層部3の成型は、上記真空成型方法以外に、プレス成型方法で行なうことも可能である。プレス成型方法による成型は、図示は省略したが、切断された便座成形用シート材27を軟化温度までヒータ(図示略)で加熱し、軟化温度を維持させたまま便座成形用シート材27をプレス成型装置の固定金型に装填し、その後に移動金型を移動させて固定金型と移動金型で便座成形用シート材27を加圧成型して所定形状の表層部3とし、表層部3を形状維持できる温度まで冷却した後に脱型する。
【0042】
第3工程:第2工程で得た表層部3を、図12に示す如く、インサート成型装置35の開いた固定金型35aのキャビテイ35a−1(図12(A)の右側参照)に装填し、次に、移動金型35bを前進移動させてキャビテイ35a−1を閉じ(図12(A)の左側参照)、その後に閉じた金型35bと表層部3の間の空間へ溶融樹脂を射出し、加熱が必要な領域である着座面領域に対応する箇所における表面から裏面までの厚み寸法T2(図10参照)が1.00〜4.00mmのコア層部2を成型(図12(B)の左側参照)し、その後に移動金型35bを後退移動させ(図12(B)の右側参照)、最後に、表層部3とコア層部2が一体となっている厚肉部26を固定金型35aから脱型することである。コア層部2は、射出成型するときに、表層部3に自着して強力に接合されることになる。なお、表層部3が射出する高圧の溶融樹脂で損傷を受ける場合には、損傷を受ける可能性のある表層部3の箇所に、予めシートからなる保護層(図示略)が配置される。
【0043】
第4工程:脱型して得られた厚肉部26のコア層部2の裏面に、誘導加熱コイル4を当接又は接近して設け、図8及び図9に示す如く、暖房便座21の上部24を得る。誘導加熱コイル4は、コア層部2の裏面に対する接着剤による接着又は粘着テープによる粘着で所定位置に固定配置される。なお、上部2の内側に充填する発泡樹脂製の充填剤(図示略)で誘導加熱コイル4を固定して、コア層部2の裏面に誘導加熱コイル4を当接又は接近させることもある。
【0044】
暖房便座21の上部24の製造は、第1工程乃至第4工程の順番で行なわれる。
【0045】
前記暖房便座21の上部24の製造方法は、切断された便座成形用シート材27を軟化温度にして真空成型方法又はプレス成型方法で成型することで、発熱層6を覆う合成樹脂製の被覆層5の厚み寸法T5を0.02〜0.80mmと非常に薄くして、発熱層6で生じた熱が被覆層5を短時間に伝達して着座面24aを迅速に昇温させることができる暖房便座1の表層部3を容易に得ることができると共に、この表層部3をインサート成型装置35のキャビテイ35a−1に装填して、移動金型35bでキャビテイ35a−1を閉じた金型35a,35b内の充填空間へ溶融樹脂を射出してコア層部2を成型することで、表層部3とコア層部2とを接合した便座部分(厚肉部)26を容易に得ることができるため、便座21の生産性を向上させることができる。また、厚肉部26の表層部3の表面から誘導加熱コイル4が設けられるコア層部2の裏面までの厚み寸法T11(図10参照)を必要最小限に収めて暖房便座1の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…本発明暖房装置、1a…装置表面、2…コア層部、3…表層部、4…誘導加熱用コイル、5…被覆層、6…発熱層、7…断熱層、7a…耐圧離隔部、7b…中空部、7e…発泡体、8…補強層、21…暖房便座
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱方式の暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱方式の暖房装置としては、暖房便座があり、便座本体が座面側から便器側へ向かって順番に、薄板金属からなる発熱層と、発熱層を保温する発泡スチロール樹脂製の断熱層と、誘導加熱用コイルとを設け、誘導加熱用コイルへの通電で生じる磁気誘導作用で発熱層を発熱させて着座面を昇温させるものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−345688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の暖房装置は、薄板金属からなる発熱層や発泡スチロール樹脂製の断熱層が局部的な押圧に対して弱いために、着座面等となる装置表面に対して使用のときに大きな荷重が局部的に加わると、荷重の加わった箇所の薄板金属製の発熱層に塑性変形を生じさせて装置表面が局部的に凹む等の永久変形を生じさせることがある。また、従来の暖房装置は、薄板金属製の発熱層の表面が装置表面となるため、表面が露出する発熱層に傷が付いたり破損したりし易く発熱機能を発揮できなくなることがある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するために、発熱層に損傷を与え難くすると共に、装置表面に対して局部的な荷重が加わっても局部的な凹み変形を生じさせ難くした誘導加熱式暖房装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発熱層に損傷を与え難くすると共に、装置表面に対して局部的な荷重が加わっても局部的な凹み変形を生じさせ難い請求項1記載の本発明が採用した手段は、外部荷重の支持を分担できるコア層部の表側に表層部が設けられ、コア層部の裏側に誘導加熱用コイルが設けられた誘導加熱式暖房装置であって、前記表層部は、装置表面を形成する合成樹脂膜製の被覆層と、被覆層の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層と、発熱層の裏側とコア層部の表側との間に設けられ、表側から裏側に至る合成樹脂製の耐圧離隔部で囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部を形成した断熱層とを備えたことを特徴とする誘導加熱式暖房装置である。
【0007】
断熱層を容易に得るために請求項2記載の本発明が採用した手段は、前記断熱層が、合成樹脂製の多孔板からなり、中空部となる貫通孔の周囲を、表側と裏側に離隔させる板の肉部からなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0008】
断熱層を容易に得るために請求項3記載の本発明が採用した手段は、前記断熱層が、合成樹脂製のモノフィラメントからなる径糸及び緯糸で織成され、貫通した中空部となる布目又は網目の周囲を、両糸を当接状態で重ね合わせてなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0009】
断熱層を補強するために請求項4記載の本発明が採用した手段は、前記表層部が、断熱層の中空部の開口側に接合された合成樹脂製の補強層を設けた請求項1、2又は3記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0010】
断熱層の中空部へ他の層が食い込むのを防止するために請求項5記載の本発明が採用した手段は、前記断熱層の中空部に合成樹脂製の発泡材を充満させた請求項1乃至4のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置である。
【0011】
暖房便座に適用するために請求項6記載の本発明が採用した手段は、前記コア層部及び前記表層部で着座可能な便座本体を形成すると共に、前記表層部の表面で便座本体の着座面を形成し、誘導加熱用コイルを便座本体の裏面側に便座本体と一体的に設けた請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、金属薄膜製の発熱層を合成樹脂膜製の被覆層で被覆してあるので発熱層に損傷を与え難く、また、断熱機能を発揮する多数の中空部を合成樹脂製の耐圧離隔部で囲んであるので、装置表面に加わった局部的な荷重を耐圧離隔部を介してコア層部へ伝達させることで、断熱層に変形を生じさせることなく発熱層を支持できるので、装置表面に局部的な凹み変形を生じさせ難くい。
【0013】
請求項2記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、貫通孔の内径寸法や断熱層の単位面積に占める貫通孔の個数を選択することで、中空部の最適な開口率を容易に得ることができる。
【0014】
請求項3記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、モノフィラメントの線径や、径糸間隔及び緯糸間隔を選択することで、中空部の最適な開口率を容易に得ることができる。
【0015】
請求項4記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、装置表面に加わった局部的な荷重で断熱層の中空部の開口側が変形しようとしても、接合された合成樹脂製の補強層で変形を阻止することで、断熱層を補強することができる。
【0016】
請求項5記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、装置表面に加わった荷重で発熱層等が断熱層の中空部へ食い込もうとしても、断熱層の中空部に充填されている合成樹脂製の発泡体で食い込を防止することができ、発熱層等に変形を生じさせない。
【0017】
請求項6記載の本発明に係る誘導加熱式暖房装置は、装置表面である着座面に局部的な凹み変形を生じさることがない便座本体を有する誘導加熱式の暖房便座を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る誘導加熱式暖房装置(以下、「本発明暖房装置」と言う。)の第1の実施の形態を示すものであって、図(A)は本発明暖房装置1の一部破断した平面図、図(B)は本発明暖房装置1の横断面の一部を拡大した断面図である。
【図2】別態様の層構造の断面図である。
【図3】更に別態様の層構造の断面図である。
【図4】合成樹脂製の多孔板からなる断熱層7を示すものであって、図(A)は断面図、図(B)は平面図、図(C)は貫通孔からなる中空部7bに発泡体7eを充填した断面図である。
【図5】合成樹脂製モノフィラメントの径糸7c及び緯糸7dで織成したものからなる断熱層7を示すものであって、図(A)は断面図、図(B)は平面図、図(C)は布目又は網目からなる中空部7bに発泡体7eを充填した断面図である。
【図6】合成樹脂製板にプレス加工等で開口した凹部からなる中空部7bを多数形成したものからなる断熱層を示すものであって、図(A)は断面図、図(B)は平面図、図(C)は凹部からなる中空部7bに発泡体7eを充填した断面図である。
【図7】本発明暖房装置を暖房便座に適用した第2の実施の形態を示すものであって、暖房便座21を一部破断して示す平面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線で断面した暖房便座21の側面図である。
【図9】図7のIX−IX線で断面して拡大した暖房便座21の端面図である。
【図10】図9の四角線Xで囲まれた箇所を拡大した断面図である。
【図11】図(A)は真空成型方法で暖房便座21の表層部3を成型している状態を中間省略して示す側面図、図(B)は成型に用いる便座成形用シート27の拡大した断面図である。
【図12】暖房便座21のコア層部2を成型している状態を中間省略して示す側面図であって、図(A)の右側の図は開いた金型35aのキャビテイ35a−1に表層部3を装填する前の状態を示し、図(A)の左側の図はキャビテイ35a−1に表層部3を装填して金型35aを閉じた状態を示し、図(B)の左側の図はキャビテイ35a−1に合成樹脂を射出してコア層部2を成型している状態を示し、図(B)の右側の図はコア層部2を成型した後に金型35aを開いている状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る誘導加熱式暖房装置を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1乃至図6に示す第1の本実施の形態に係る本発明暖房装置1は、リビングや廊下等の床部又は階段の踏み板等に適用されるものであり、装置表面1aが踏まれる等して圧縮荷重が負荷されるものである。本発明暖房装置1は、図1に示す如く、踏まれて生じる外部荷重の支持を分担できるコア層部2の表側に表層部3が設けられ、コア層部2の裏側に誘導加熱用コイル4が設けられたものであって、誘導加熱用コイル4への通電で生じる磁気誘導作用で発熱層6を発熱させて装置表面1a(表層部3の表面)を昇温させるようになっている。
【0021】
前記表層部3は、装置表面1aを形成する合成樹脂膜製の被覆層5と、被覆層5の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層6と、発熱層6の裏側とコア層部2の表側との間に設けられた断熱層7とを備えている。表層部3は、被覆層5、発熱層6及び断熱層7の層どうしが接合されて一体化されている。
【0022】
前記表層部3の被覆層5は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ABS又はポリアミド等の合成樹脂製で厚み寸法T5が0.02〜0.80mmの範囲で選択される。被覆層5は、単一種類の合成樹脂製のものや、複数種類の合成樹脂の組合せからなる複数層の隣接する層どうしをドライラミネート(一方の合成樹脂製シート材に接着剤(二液硬化型)を塗布した後に乾燥させて他方の合成樹脂製シート材を貼合わせて接合)したものが用いられる。被覆層5は、薄膜金属製の発熱層6の腐食を防止する必要があるときには、ガスバリヤー性に優れたポリアミドを含めるか、又は任意層の樹脂表面に塩化ビニリデン樹脂(PVDC)を塗着したものを含め、装置表面1aから層内を通過しようとする水蒸気や空気を遮断するとよい。被覆層5は、表面から発熱層6を透視できないように着色されることもある。なお、被覆層5は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには熱可塑性の合成樹脂を選択して加熱成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには熱可塑性以外に熱硬化性の合成樹脂を選択することもできる。
【0023】
前記表層部3の発熱層6は、アルミニウム又は銅等の薄膜金属製で厚み寸法T6が0.01〜0.20mmの範囲で選択される。なお、発熱層6は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには塑性変形可能な軟質の薄膜金属を選択して曲げ成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには軟質以外に硬質の薄膜金属を選択することもできる。
【0024】
前記表層部3の断熱層7は、表側から裏側に至るポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)又ABS等の合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部7bを形成したものであって、厚み寸法T7が0.750〜1.500mmの範囲で選択される。断熱層7は、装置表面1aに加わった荷重を耐圧離隔部7aを介してコア層部2へ伝達させ、圧縮による塑性変形(永久ひずみ)を生じさせることなく発熱層6を支持できるようにするために、荷重による圧縮応力α(例えば、α=40〜100kgf/cm2 )が加わっても弾性変形のみを生じさせて塑性変形を生じさせないような耐圧離隔部7aの肉厚み寸法や、中空部7bの開口率A(断熱層7の単位面積に占める複数個の中空部7bの開口面積の総和を単位面積で除した値に100を乗した値。例えば、A=50〜80%)が選択される。また、表層部3をインサート成形用金型の開いた固定金型のキャビテイに装填し、次に、移動金型を前進移動させてキャビテイを閉じ、その後に閉じた金型と表層部3の断熱層7の間の空間へ溶融樹脂を射出し、断熱層7の裏側にコア層部2を形成する場合には、断熱層7は、射出する合成樹脂の射出圧力β(例えば、β=150〜400kgf/cm2 )に耐えるだけの強度を有するものを用いる。なお、断熱層7は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには熱可塑性の合成樹脂を選択して加熱成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには熱可塑性以外に熱硬化性の合成樹脂を選択することもできる。
【0025】
前記断熱層7は、例えば図4に示す如く、合成樹脂製の多孔板からなり、中空部7bとなる貫通孔の周囲を、表側と裏側に離隔させる板の肉部からなる耐圧離隔部7aで形成したもの、図5に示す如く、合成樹脂製の線径が0.35〜0.75mmφのモノフィラメントからなる径糸7c及び緯糸7dで織成され、貫通した中空部7bとなる布目又は網目の周囲を、両糸7c,7dを当接状態で重ね合わせてなる耐圧離隔部7aで形成したもの、または、図6に示す如く、合成樹脂板の片面に軟化温度状態でのプレス加工等で多数の凹部を開口させ、中空部7bとなる凹部の周囲を、表側と裏側に離隔させる耐圧離隔部7aで形成したもの等が選択される。前記断熱層7を多孔板で形成した場合には、貫通孔の内径寸法や断熱層7の単位面積に占める貫通孔の個数を選択することで、中空部7bの最適な開口率Aを容易に得ることができる。また、前記断熱層7を合成樹脂製の多孔板で形成した場合には、モノフィラメントからなる径糸7c及び緯糸7dで織成した布又は網で形成した場合には、モノフィラメントの線径や、径糸間隔Dc及び緯糸間隔Ddを選択することで、中空部7bの最適な開口率Aを容易に得ることができる。
【0026】
前記表層部3は、図2に示す如く、断熱層7を補強するために、断熱層7の中空部7bの開口側にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)又ABS等で厚み寸法T8が0.02〜0.80mmの合成樹脂製の補強層8を接合することもある。多孔板(図4参照)又は織成したもの(図5)からなり貫通した中空部7bを形成した断熱層7の場合には、図2に示すように表側及び裏側に補強層8を設け、一方に開口した凹部(中空部7b)を形成した(図6参照)断熱層7の場合には、図示は省略たが、凹部(中空部7b)の開口側に補強層8を設けるとよい。表層部3は、装置表面1aに加わった荷重で断熱層7の中空部7bの開口側が変形しようとしても、補強層8で変形を阻止して断熱層7を補強することができる。なお、補強層8は、本発明暖房装置1を湾曲成形するときには熱可塑性の合成樹脂を選択して加熱成形できるようにするが、湾曲成形することなく平坦に形成するときには熱可塑性以外に熱硬化性の合成樹脂を選択することもできる。
【0027】
前記断熱層7は、図3、図4(C)、図5(C)及び図6(C)に示す如く、中空部7bへ発熱層6及び/又はコア層部2が食い込むのを防止するために、中空部7bに発泡ウレタン等の合成樹脂製発泡体7eを充満させ、発熱層等6に変形を生じさせないようにすることもある。
【0028】
前記表層部3における被覆層5と発熱層6の接合、発熱層6と断熱層7の接合、及び断熱層7と補強層8の接合の各々は、ドライラミネートによる接着剤(二液硬化型)での接合、又はエクストルージョン式ラミネートによるポリエチレン(PE)樹脂による接合等が選択される。すなわち、表層部3となる積層シート材の製造は、被覆層5となるシート材及び発熱層6となるシート材の接合、発熱層6となるシート材及び断熱層7となるシート材の接合、並びに、断熱層7となるシート材及び補強層8となるシート材の接合を、一方のシート材に接着剤を塗布した後に乾燥させて他方のシート材をドライラミネートする方法、又は二つのシート材の間にダイからポリエチレン(PE)樹脂膜を押し出してラミネートする方法等で接合して得られる。得られた積層シート材は、所定寸法に切断されると共に、必要に応じて湾曲成形されて表層部3となる。
【0029】
前記コア層部2は、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ABS又はポリアミド等の合成樹脂製又は天然ゴム等のゴム製で、その表面から裏面までの厚み寸法T2が1.00〜4.00mmの範囲で選択される。前記表層部3の裏側とコア層部2の表側の間には、図示は省略したが、ポリエステル(PET)又はポリプロピレン(PP)等の樹脂からなる保護層を部分的に設けて、コア層部2を射出成型するときの射出溶融樹脂で表層部2に損傷を与えないように保護層で保護することもある。なお、予め所定寸法に成形したコア層部2を表層部3に接着剤で接合するときには、保護層は不要である。
【0030】
前記誘導加熱用コイル6は、図1(A)に示す如く、導線を四角状又は円形状等に巻き上げた薄い面状のものであって、複数個を直列又は並列に接続されている。誘導加熱用コイル6は、フレキシブルプリント基板(FPC)にエッチングして形成したものや、コイル線を面状に巻回してフレキシブル板に接合したものが選択され、コア層部5の裏面に当接又は接近して設けられている。なお、コア層部2の裏面が平坦な場合には、フレキシブルな基板等を用いることなく硬質の基板等とすることも可能である。
【0031】
本発明暖房装置1は、金属薄膜製の発熱層6を合成樹脂膜製の被覆層5で被覆してあるので発熱層6に損傷を与え難く、また、断熱機能を発揮する多数の中空部7bを合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲んであるので、装置表面1aに加わった局部的な荷重を耐圧離隔部7aを介してコア層部2へ伝達させることで、断熱層7に変形を生じさせることなく発熱層6を支持できるので、装置表面1aに局部的な凹み変形を生じさせ難いものとなる。
【0032】
(第2の実施の形態)
図7乃至図12に示す第2の実施の形態に係る本発明暖房装置は、暖房便座21に適用したものであって、使用者の着座により着座荷重が負担されるものである。
【0033】
暖房便座21は、図7に示す如く、便座支持部22との組合せで誘導加熱式の暖房便座装置20を構成するものであり、便座支持部22に揺動自在に支持され、図示する伏倒状態(着座使用可能状態)から、図示は省略したが、手前側を上昇させた起立状態(男子小便使用可能状態)まで仰伏するようにしてある。暖房便座21は、便座支持部22との間に一次側コイル23a及び二次側コイル23bの組合せからなる給電装置23が設けられ、暖房便座21が伏倒位置に在るとき、対向接近する一次側コイル23aと二次側コイル23bの相互誘導作用により、便座支持部22の電源部(図示略)から暖房便座21の誘導加熱用コイル4へ給電するようにして、便座支持部22との間で給電用コードを無くしてある。給電装置23の一次側コイル23a及び二次側コイル23bは、その配置を図示した箇所に限定するものではなく、暖房便座21を枢支するヒンジ部に配置して、便座21の仰伏に関係なく常時給電可能にすることもある。暖房便座21は、便座支持部22に対して着脱自在になっており、便座支持部22から分離して洗浄等の保守ができるようになっている。なお、便座支持部22から暖房便座21への給電は、上記給電装置23を用いることなく、給電用コードで行うようにしてもよい。
【0034】
暖房便座21は、図7乃至図10に示す如く、上面側に着座面24aを形成する上部24と、上部24の下面側開口部24bを覆蓋する底部25とを備え、上部24が厚肉部26と誘導加熱用コイル4とからなる。暖房便座21が洗浄可能な仕様の場合、底部25は、外部から上部24の内側へ水分が侵入しないように、下面側開口部24bを水密に覆蓋するようになっている。上部24の厚肉部26は、上面側に着座面24aを形成する表層部3と、着座面24aに使用者が着座したときに生じる着座荷重の支持を分担できるコア層部2とからなり、コア層部2の表面に表層部3が設けられ、コア層部2の裏面に誘導加熱用コイル4が当接又は接近して設けられている。
【0035】
前記厚肉部26のコア層部2は、第1の実施の形態と同様に、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PET)、ABS又はポリアミド等の熱可塑性合成樹脂製又は天然ゴム等のゴム製からなり、加熱が必要な領域である着座面領域に対応する箇所における表面から裏面までの厚み寸法T2が1.00〜4.00mmの範囲で選択される。また、前記厚肉部26の表層部3は、図10に示す如く、表面が着座面24aとなる被覆層5と、被覆層5の裏面に接合した発熱層6と、一方面に発熱層6が接合され他方面にコア層部2が接合され断熱層7とからなる。前記厚肉部26のコア層部2と表層部3の間には、保護層(図示略)が設けられる場合がある。この保護層は、コア層部2を射出成型するときに、射出する溶融樹脂で表層部3に損傷を与えないように部分的に設けられるものであり、ポリアミド又はポリエステル(PET)等の熱可塑性合成樹脂製で厚み寸法が0.02〜0.80mmの範囲で選択される。予め成形されているコア層部2を表層部3に接着剤で接合する場合には、保護層は不要である。
【0036】
前記表層部3を構成する被覆層5、発熱層6及び断熱層7は、第1の実施の形態(図1(B)乃至図6参照)と同様の仕様のものが用いられ、図示は省略したが、断熱層7の中空部7bの開口側にポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)又ABS等で厚み寸法が0.02〜0.80mmの合成樹脂製の補強層8(図2参照)を接合して断熱層7を補強することもある。
【0037】
前記誘導加熱コイル4は、第1の実施の形態と同様の仕様のものが用いられる。誘導加熱用コイル4は、発熱層6との間の距離の違いに応じ導線の捲き数及び/又は平面積(外側の導線で囲まれた内側の面積)を調整して、発熱層6の発熱量を均等化してある。なお、暖房便座21が洗浄可能な仕様の場合には、底部25で水密に覆蓋された上部24の密閉状態の内側の内圧の変動を押さえるために、上部24の内側に充填する発泡樹脂製の充填剤(図示略)で誘導加熱コイル4を固定して、コア層部2の裏面に誘導加熱コイル4を当接又は接近させるとよい。
【0038】
暖房便座21は、発熱層6を覆う合成樹脂製の被覆層5の厚みT5が0.02〜0.80mmと非常に薄いため、発熱層6で生じた熱が被覆層5を短時間に伝達して着座面を迅速に昇温させることができる。また、暖房便座21は、厚肉部26の表層部3の表面(着座面24a)から誘導加熱コイル4が設けられるコア層部2の裏面までの厚み寸法T11を必要最小限(例えば、4.5〜7.5mm)に収めて、発熱層6から誘導加熱コイル4までの距離を短くして、誘導加熱用コイル4への通電で生じる磁気誘導作用で発熱層6を効率良く発熱させるようにしてある。
【0039】
本実施の形態に係る暖房装置21は、金属薄膜製の発熱層6を合成樹脂膜製の被覆層5で被覆してあるので発熱層6に損傷を与え難く、また、断熱機能を発揮する多数の中空部7bを合成樹脂製の耐圧離隔部7aで囲んであるので、装置表面1aに加わった局部的な荷重を耐圧離隔部7aを介してコア層部2へ伝達させることで、断熱層7に変形を生じさせることなく発熱層6を支持できるので、上部表面(着座面)24aに局部的な凹み変形を生じさせ難くいものとなる。
【0040】
前記暖房便座21の上部24の製造方法は、次の通りである。
第1工程:図11(A)(B)に示す便座成形用シート材27を予め製造し、便座成形用シート材27を所定の大きさに切断することである。所定の大きさとは、次の第2工程で所定形状の表層部3を得ることができる大きさである。便座成形用シート材27は、図11(B)に示す如く、被覆層5となるシート材、発熱層6となるシート材及び断熱層7となるシート材を備え、これらシート材どうしをドライラミネートによる接着剤(二液硬化型)での接合、又はエクストルージョン式ラミネートによるポリエチレン(PE)樹脂による接合等で一体化して得る。被覆層5及び断熱層7は、第1の実施の形態(図1(B)乃至図6参照)と同様の仕様のものであって熱可塑性の合成樹脂製のものを用い、また発熱層6は、第1の実施の形態(図1(B)乃至図6参照)と同様の仕様のものであって塑性変形可能な軟質の薄膜金属製のものを用いる。また、断熱層7は、後述する第3工程におけるコア層2を形成するときの合成樹脂の射出圧力β(例えば、β=150〜400kgf/cm2 )に耐えるだけの強度を有するものを用いる。
【0041】
第2工程:図11(A)に示す如く、所定の大きさに切断された便座成形用シート材27を軟化温度にして真空成型方法で表層部3を成型することである。この成型は、便座成形用シート材27の熱可塑性合成樹脂製の被覆層5及び断熱層7の軟化温度までヒータ(図示略)で加熱し、軟化温度を維持させたまま便座成形用シート材27を真空成型装置33の金型34に装填し、その後に金型34の吸引で便座成形用シート材27を成型面34aに圧着させて表層部3の所定形状とし、表層部3を形状維持できる温度まで冷却した後に脱型する。便座成形用シート材27の薄膜金属製の発熱層6は、金型34の吸引で便座成形用シート材27を成型面34aに圧着させるとき、塑性変形して表層部3の所定形状となる。成型された表層部3は、はみ出た余分な部分をカツター等で切除する。なお、表層部3の成型は、上記真空成型方法以外に、プレス成型方法で行なうことも可能である。プレス成型方法による成型は、図示は省略したが、切断された便座成形用シート材27を軟化温度までヒータ(図示略)で加熱し、軟化温度を維持させたまま便座成形用シート材27をプレス成型装置の固定金型に装填し、その後に移動金型を移動させて固定金型と移動金型で便座成形用シート材27を加圧成型して所定形状の表層部3とし、表層部3を形状維持できる温度まで冷却した後に脱型する。
【0042】
第3工程:第2工程で得た表層部3を、図12に示す如く、インサート成型装置35の開いた固定金型35aのキャビテイ35a−1(図12(A)の右側参照)に装填し、次に、移動金型35bを前進移動させてキャビテイ35a−1を閉じ(図12(A)の左側参照)、その後に閉じた金型35bと表層部3の間の空間へ溶融樹脂を射出し、加熱が必要な領域である着座面領域に対応する箇所における表面から裏面までの厚み寸法T2(図10参照)が1.00〜4.00mmのコア層部2を成型(図12(B)の左側参照)し、その後に移動金型35bを後退移動させ(図12(B)の右側参照)、最後に、表層部3とコア層部2が一体となっている厚肉部26を固定金型35aから脱型することである。コア層部2は、射出成型するときに、表層部3に自着して強力に接合されることになる。なお、表層部3が射出する高圧の溶融樹脂で損傷を受ける場合には、損傷を受ける可能性のある表層部3の箇所に、予めシートからなる保護層(図示略)が配置される。
【0043】
第4工程:脱型して得られた厚肉部26のコア層部2の裏面に、誘導加熱コイル4を当接又は接近して設け、図8及び図9に示す如く、暖房便座21の上部24を得る。誘導加熱コイル4は、コア層部2の裏面に対する接着剤による接着又は粘着テープによる粘着で所定位置に固定配置される。なお、上部2の内側に充填する発泡樹脂製の充填剤(図示略)で誘導加熱コイル4を固定して、コア層部2の裏面に誘導加熱コイル4を当接又は接近させることもある。
【0044】
暖房便座21の上部24の製造は、第1工程乃至第4工程の順番で行なわれる。
【0045】
前記暖房便座21の上部24の製造方法は、切断された便座成形用シート材27を軟化温度にして真空成型方法又はプレス成型方法で成型することで、発熱層6を覆う合成樹脂製の被覆層5の厚み寸法T5を0.02〜0.80mmと非常に薄くして、発熱層6で生じた熱が被覆層5を短時間に伝達して着座面24aを迅速に昇温させることができる暖房便座1の表層部3を容易に得ることができると共に、この表層部3をインサート成型装置35のキャビテイ35a−1に装填して、移動金型35bでキャビテイ35a−1を閉じた金型35a,35b内の充填空間へ溶融樹脂を射出してコア層部2を成型することで、表層部3とコア層部2とを接合した便座部分(厚肉部)26を容易に得ることができるため、便座21の生産性を向上させることができる。また、厚肉部26の表層部3の表面から誘導加熱コイル4が設けられるコア層部2の裏面までの厚み寸法T11(図10参照)を必要最小限に収めて暖房便座1の生産性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1…本発明暖房装置、1a…装置表面、2…コア層部、3…表層部、4…誘導加熱用コイル、5…被覆層、6…発熱層、7…断熱層、7a…耐圧離隔部、7b…中空部、7e…発泡体、8…補強層、21…暖房便座
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部荷重の支持を分担できるコア層部の表側に表層部が設けられ、コア層部の裏側に誘導加熱用コイルが設けられた誘導加熱式暖房装置であって、前記表層部は、装置表面を形成する合成樹脂膜製の被覆層と、被覆層の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層と、発熱層の裏側とコア層部の表側との間に設けられ、表側から裏側に至る合成樹脂製の耐圧離隔部で囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部を形成した断熱層とを備えたことを特徴とする誘導加熱式暖房装置。
【請求項2】
前記断熱層が、合成樹脂製の多孔板からなり、中空部となる貫通孔の周囲を、表側と裏側に離隔させる板の肉部からなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項3】
前記断熱層が、合成樹脂製のモノフィラメントからなる径糸及び緯糸で織成され、貫通した中空部となる布目又は網目の周囲を、両糸を当接状態で重ね合わせてなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項4】
前記表層部が、断熱層の中空部の開口側に接合された合成樹脂製の補強層を設けた請求項1、2又は3記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項5】
前記断熱層の中空部に合成樹脂製の発泡材を充満させた請求項1乃至4のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項6】
前記コア層部及び前記表層部で着座可能な便座本体を形成すると共に、前記表層部の表面で便座本体の着座面を形成し、誘導加熱用コイルを便座本体の裏面側に便座本体と一体的に設けた請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項1】
外部荷重の支持を分担できるコア層部の表側に表層部が設けられ、コア層部の裏側に誘導加熱用コイルが設けられた誘導加熱式暖房装置であって、前記表層部は、装置表面を形成する合成樹脂膜製の被覆層と、被覆層の裏側に設けられた金属薄膜製の発熱層と、発熱層の裏側とコア層部の表側との間に設けられ、表側から裏側に至る合成樹脂製の耐圧離隔部で囲まれて表側及び/又は裏側が開口する多数の中空部を形成した断熱層とを備えたことを特徴とする誘導加熱式暖房装置。
【請求項2】
前記断熱層が、合成樹脂製の多孔板からなり、中空部となる貫通孔の周囲を、表側と裏側に離隔させる板の肉部からなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項3】
前記断熱層が、合成樹脂製のモノフィラメントからなる径糸及び緯糸で織成され、貫通した中空部となる布目又は網目の周囲を、両糸を当接状態で重ね合わせてなる耐圧離隔部で形成したものである請求項1記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項4】
前記表層部が、断熱層の中空部の開口側に接合された合成樹脂製の補強層を設けた請求項1、2又は3記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項5】
前記断熱層の中空部に合成樹脂製の発泡材を充満させた請求項1乃至4のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置。
【請求項6】
前記コア層部及び前記表層部で着座可能な便座本体を形成すると共に、前記表層部の表面で便座本体の着座面を形成し、誘導加熱用コイルを便座本体の裏面側に便座本体と一体的に設けた請求項1乃至5のいずれかに記載の誘導加熱式暖房装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−165576(P2010−165576A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7439(P2009−7439)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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