説明

誤り率測定装置及び方法

【課題】入力した被測定信号のデータ長を自動検出するとともに、当該被測定信号のビット列波形の波形観測を行う。
【解決手段】誤り率検出部20は、被試験デバイス50を介して入力した被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、その識別結果を示す識別パターンデータと基準パターン発生部10が保持する基準パターンとを比較してエラーレートを算出する。次に、算出したエラーレートと予め設定された基準エラーレート閾値とを比較し、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を下回った場合に、比較した基準パターンと被測定信号とがパターン同期したと判別し、被測定信号とパターン同期した基準パターンのビット数Nを整数倍して分周比Mを取得する。そして、波形観測部40は、分周比Mを示すM分周情報に基づき被測定信号の信号波形を表示制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験デバイスを介して入力される被測定信号のビット誤り率測定と波形測定・表示を行う誤り率測定装置に係り、特に入力した被測定信号のデータ長を自動検出するとともに、当該被測定信号のビット列波形の波形観測が行える誤り率測定装置及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種のディジタル有線通信装置は、利用者数の増加やマルチメディア通信の普及に伴い、より大容量の伝送能力が求められている。そして、これらのディジタル有線通信装置におけるディジタル信号の品質評価の指標の一つとして、受信データのうち符号誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率(Bit Error Rate)が知られている。
【0003】
また、試験対象となる光電変換部品等の被試験デバイス(Device Under Test )に対して固定データを含むテスト信号を送信し、被試験デバイスを介して入力される被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較して、被測定信号の誤り率を検出する装置として、例えば下記特許文献1に開示されるような誤り率測定装置が公知である。
【0004】
図6は、下記特許文献1に開示される誤り率測定装置の概略構成図である。図示のように、ビット誤り測定装置100は、RAM等のメモリによって構成されるデータ記憶部101、比較データ記憶部102、及び位置情報記憶部103と、集積回路等によって構成される信号送信部104、信号受信部105、同期検出部106、比較部107、表示制御部108と、CRTや液晶ディスプレイ等の表示機器109、及びキーボード等の操作部110とによって構成され、測定対象200から受信した入力データと測定対象200から受信されるべき既知のデータとを比較して誤りビットを測定するビット誤り測定装置100において、複数のブロックを有する比較データ記憶部101と、受信した入力データと既知のデータとを比較し、所定の検出条件で検出される1または複数の検出ビットを含むビット列の比較データを、検出されることに応じて複数のブロックへ順次格納する比較部102と、複数のブロックそれぞれに格納された比較データから得られるそれぞれのビット列を、所定の配置条件に従った位置を基準にして並べて表示機器103に表示する表示制御部104とを備えて構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−274474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した特許文献1の誤り率測定装置を含む従来の誤り率測定装置を用いて被試験デバイスの誤り率を測定した際、測定結果に異常が発見されると、オシロスコープ等の信号波形を測定・表示する波形観測器を用いて被試験デバイスから入力した被測定信号の波形測定及び表示して原因の究明を行っている。
【0007】
このとき、例えばNビットのデータ長である被測定信号のビット列波形を波形観測器で表示する場合、被測定信号のパターン周期Nに同期した外部トリガー信号を入力するか、M分周回路に対して被測定信号のパターン周期Nの整数倍となる分周比Mを予め設定し、内部的にパターン周期Nと一致したトリガ信号を生成する必要があった。
このため、外部トリガ信号を取得できない場合や、入力される被測定信号のパターン周期Nが不明であった場合に、波形観測器によるビット列波形を観測することが困難であった。
【0008】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、誤り率測定機能と波形観測機能とを備え、入力した被測定信号のデータ長を自動認識して当該信号のビット列波形が表示可能な誤り率測定装置及び方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、請求項1記載の誤り率測定装置は、被試験デバイス50を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出部20と、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測部40と、を有する誤り率測定装置1であって、
前記誤り率検出部は、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別部21と、
該データ識別部から入力した前記識別パターンデータと当該識別パターンデータのエラーレートを算出するための比較対象となる基準パターンとを比較して算出したエラーレートと、パターン同期の程度を判別するための基準エラーレート閾値とを比較し、前記エラーレートが前記基準エラーレート閾値を下回った場合に、前記被測定信号とパターン同期した前記基準パターンのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析部22と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の誤り率測定装置は、被試験デバイス50を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出部20と、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測部40と、を有する誤り率測定装置1であって、
前記誤り率検出部は、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別部21と、
該データ識別部から入力した最初の識別パターンデータの入力パターンを先頭データとして保持するとともに、前記識別パターンデータのビット数をカウントしながら前記識別パターンデータと前記先頭パターンとを比較し、前記識別パターンデータが一周回して再び前記先頭パターンと一致したときまでカウントした前記識別パターンデータのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析部22と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の誤り率測定装置は、請求項1記載の誤り率測定装置において、前記データ解析部22は、前記算出されたエラーレートと前記基準パターンとの比較に際し、複数の前記基準パターンで構成される基準パターン群における全ての基準パターンについて比較したときに前記エラーレートが前記基準エラーレート閾値を上回った場合に、最もエラーレートの誤差が低くなる前記基準パターンを用いて再度エラーレートを算出することを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の誤り率測定方法は、被試験デバイス50を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出ステップと、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測ステップとを有する誤り率測定方法であって、
前記誤り率検出ステップは、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別ステップと、
該データ識別ステップから出力された前記識別パターンデータと当該識別パターンデータのエラーレートを算出するための比較対象となる基準パターンとを比較して算出したエラーレートと、パターン同期の程度を判別するための基準エラーレート閾値とを比較し、前記エラーレートが前記基準エラーレート閾値を下回った場合に、前記被測定信号とパターン同期した前記基準パターンのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析ステップと、
を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の誤り率測定方法は、被試験デバイス50を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出ステップと、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測ステップとを有する誤り率測定方法であって、
前記誤り率検出ステップは、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別ステップと、
該データ識別ステップから出力された識別パターンデータのうち最初に入力したパターンデータを先頭データとして保持するとともに、前記識別パターンデータのビット数をカウントしながら前記識別パターンデータと前記先頭パターンとを比較し、前記識別パターンデータが一周回して再び前記先頭パターンと一致したときまでカウントした前記識別パターンデータのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の誤り率測定装置によれば、既知のパルスパターンの被測定信号を被試験デバイスを介して入力した際に、基準パターンと比較して被測定信号のビット列のデータ長を自動認識し、そのデータ長のビット数Nの整数倍となる分周比Mを取得することができるため、予め被測定信号のパターン周期が不明であった場合でも、被測定信号の誤り率測定及び波形観測を行うことができる。
【0015】
また、未知のパルスパターンの被測定信号を被試験デバイスから入力した場合であっても、被測定信号のビット数をカウントしてビット列のデータ長を自動認識し、そのデータ長のビット数Nの整数倍となる分周比Mを取得することができるため、予め被測定信号のパターン周期が不明であった場合でも、被測定信号の誤り率測定と波形観測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第1形態の誤り率測定装置の装置概略を示す概略ブロック図である。
【図2】同装置におけるデータ解析部の詳細構成を示すブロック図である。
【図3】遅延制御手段によるクロック遅延制御を示す概念図である。
【図4】本発明に係る第2形態の誤り率測定装置の装置概略を示す概略ブロック図である。
【図5】同装置におけるデータ解析部の詳細構成を示すブロック図である。
【図6】従来の誤り率測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等はすべて本発明の範疇に含まれる。
【0018】
[第1形態]
まず、本発明に係る第1形態の誤り率測定装置について、図1、2を参照しながら説明する。
【0019】
<装置構成>
図1に示すように、第1形態の誤り率測定装置1は、基準パターン発生部10、誤り率検出部20、クロック制御部30、波形観測部40を備えて概略構成され、被試験デバイス50を介して入力した被測定信号(NRZ信号)の誤り率を測定及び入力信号の波形観測して被試験デバイス50の性能評価を行う装置である。
【0020】
また、被試験デバイス50には、複数の基準パターンで構成される基準パターン群(例えば、予め設定された複数のPRBSパターン(Pseudorandom Binary(Bit) Sequence パターン)や、ユーザが任意に設定した任意パターンで構成)から任意に選択された既知のパルスパターンのテスト信号を被試験デバイス50に対して送信するパルスパターン発生器(Pulse Pattern Generator :PPG)の機能を有するパルスパターン発生部60から、基準パターンに基づくテスト信号が出力されている。
【0021】
基準パターン発生部10は、被試験デバイス50のエラーレートを算出ため、比較対象となる基準パターンを後述するエラーレート算出手段22aに出力している。また、基準パターン発生部10は、後述する同期判定手段22bからの基準パターン切替信号を入力すると、基準パターン群の中から比較していない基準パターンを選択してエラーレート算出手段22aに出力している。さらに、基準パターン発生部10は、同期判定手段22bからの基準パターン選択信号を入力すると、その信号に該当する基準パターンをエラーレート算出手段22aに出力している。
【0022】
誤り率検出部20は、データ識別部21と、データ解析部22とで構成され、パルスパターン発生部60が送信したテスト信号を被試験デバイス50を介して被測定信号として入力し、この被測定信号の誤り率を検出する誤り率検出器(Error Detector:ED)の機能を有している。
【0023】
データ識別部21は、クロック制御部30から入力した再生クロックのクロックタイミングに基づき被測定信号における信号レベル(High/Low)のパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとしてデータ解析部22に出力している。
【0024】
データ解析部22は、図2に示すようにエラーレート算出手段22aと、同期判定手段と、データ長検出手段22cとを備えて構成され、データ識別部21から入力した識別パターンデータを解析し、後述するM分周手段32で被測定信号を分周する際に用いる分周比M(Mは自然数)を示すM分周情報を出力している。
【0025】
エラーレート算出手段22aは、データ識別部21から入力した識別パターンデータと、基準パターン発生部10から出力された基準パターンとを比較してエラーレートを算出し、この算出したエラーレートを同期判定手段22bに出力している。
【0026】
同期判定手段22bは、エラーレート算出手段22aで算出したエラーレートと、予め設定された基準エラーレート閾値とを比較し、エラーレート算出手段22bで比較した基準パターンとパターン同期しているか否かを判別している。同期判定手段22bは、判別した結果、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を下回った場合に、比較した基準パターンと被測定信号とがパターン同期したと判別し、この判別結果をデータ長検出手段22cに通知している。また、同期判定手段22bは、比較した結果、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を上回った場合に、比較した基準パターンと被測定信号とがパターン同期していないと判別し、他の基準パターンと比較して再度エラーレートを算出するための基準パターン切替信号を基準パターン発生部10に出力している。
すなわち、同期判定手段22bにおける比較判別では、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を上回った場合に、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を下回るまで基準パターン群の中から比較対象となっていない基準パターンに順次切り替えて比較判別を行っている。
【0027】
なお、同期判定手段22bは、エラーレート算出手段22aで算出されたエラーレートと基準パターンとの比較に際し、前述した基準パターン群における全ての基準パターンと比較した結果、全てのエラーレートが基準エラーレート閾値を上回った場合、最もエラーレートの誤差が低かった基準パターンを用いて再度エラーレートを算出するため、該当する基準パターンを要求する基準パターン選択信号を基準パターン発生部10に出力している。
【0028】
データ長検出手段22cは、同期判定手段22bから入力した判別結果通知に基づき被測定信号とパターン同期した基準パターンのビット数N(Nは自然数)を整数倍した分周比Mの情報をM分周情報としてクロック制御部30に出力している。
【0029】
クロック制御部30は、クロック再生手段31と、M分周手段32とで構成され、被試験デバイス50を介して入力した被測定信号からクロック再生を行うとともに、波形観測部40に対してM分周したクロックを出力している。
【0030】
クロック再生手段31は、被試験デバイス50を介して入力した被測定信号のパターン周期に同期したクロックを抽出し、この抽出したクロックを再生クロックとして誤り率検出部20とM分周手段32に出力している。
【0031】
M分周手段32は、クロック再生手段31から入力した再生クロックの周波数をデータ解析部22から出力されたM分周情報に基づき分周し、このM分周したクロックを波形観測部40に出力している。
【0032】
波形観測部40は、遅延制御手段41と、サンプリング手段42と、A/D変換手段43と、波形表示手段44とで構成され、例えばサンプリングオシロスコープ等のアナログ測定波形をデジタル信号に変換し波形データとしてメモリに取り込むとともに、電圧や電流の値が時間的に変化する事象を離散的にサンプリングして得た波形データに基づき表示画面上に波形画像を再生表示する波形観測器の機能を備えている。
【0033】
遅延制御手段41は、図3に示すようにM分周手段32から入力するM分周されたクロックを被測定周波数帯域やサンプリングクロック周波数に基づき任意に設定した遅延時間ΔT(例えば数フェムト秒とし、ずれ量は任意)ずつずらしたサンプリングクロックとしてサンプリング手段42とA/D変換手段43に出力している。このように、サンプリング開始点からトリガとなるM分周されたクロックを任意の遅延時間ΔTずつずらすことにより、サンプリング対象となる被測定信号を1周回サンプリングすることができる。
【0034】
サンプリング手段42は、遅延制御手段41から入力したサンプリングクロックのクロックタイミングで被測定信号をサンプリングし、このサンプリングしたサンプリング信号をA/D変換手段43に出力している。
【0035】
A/D変換手段43は、遅制制御手段41から入力したサンプリングクロックのクロックタイミングでサンプリング信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換して波形表示手段44に出力している。
【0036】
波形表示手段44は、A/D変換手段43にてディジタル変換されたサンプリング信号の信号波形をユーザが所望する表示形態で表示器(不図示)に表示制御している。
【0037】
<処理動作>
次に、上述した誤り率測定装置1における処理動作について説明する。ここでは、予め既知のパターンのテスト信号を被試験デバイス50に対して送信し、被試験デバイス50を介して入力した被測定信号の誤り率測定及び波形観測を行う際の処理動作について説明する。
【0038】
まず、ユーザが任意に選択した既知のパルスパターンのテスト信号をパスルパターン発生部60で発生して被試験デバイス50に対して送信する。誤り率検出部20は、送信されたテスト信号を被試験デバイス50を介し、被測定信号として入力する。
【0039】
次に、クロック制御部30から入力した再生クロックに基づき入力した被測定信号の信号レベルを識別し、識別結果である識別パターンデータと基準パターン発生部10が保持する基準パターン群の中から任意に選択された基準パターンとを比較してエラーレートを算出する。そして、算出したエラーレートと予め設定された基準エラーレート閾値とを比較する。
【0040】
このとき、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を下回った場合に、比較対象となった基準パターンと被測定信号とがパターン同期したと判別し、この判別結果から被測定信号とパターン同期した基準パターンのビット数N(Nは自然数)を整数倍して分周比Mを取得する。
一方、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を上回った場合は、比較対象となった基準パターンと被測定信号とがパターン同期していないと判別し、他の基準パターンに切り替えて再度エラーレートを算出する。
【0041】
波形観測部40は、誤り率検出部20で取得した分周比Mを示すM分周情報に基づき被測定信号の再生クロックをM分周する。M分周されたクロックは、任意に設定した遅延時間ずつずらしたサンプリングクロックとして、そのクロックタイミングで被測定信号をサンプリングする。そして、サンプリングしたサンプリング信号をサンプリングクロックのクロックタイミングでディジタル信号に変換した後、ディジタル変換したサンプリング信号の信号波形を表示制御する。
【0042】
[第2形態]
次に、本発明における第2形態の誤り率測定装置1について、図4、5を参照しながら説明する。なお、以下に説明する第2形態の誤り率測定装置1では、上述した第1形態の誤り率測定装置1と同様の構成要件については同一の番号を付してその説明を省略し、相違する構成要件についてのみ説明する。
【0043】
図4、5に示すように、第2形態の誤り率測定装置1は、被試験デバイス50から入力する被測定信号のパルスパターンが不明の場合であっても入力した被測定信号におけるビット列のデータ長を検出可能なデータ解析部22を具備し、誤り率測定及び入力信号の波形観測を可能とした装置構成となっている。
【0044】
<装置構成>
図5に示すように、第2形態の誤り率測定装置1におけるデータ解析部22は、先頭パターン保持手段22dと、一致判定手段22eと、ビット数計数手段22fと、データ長検出手段22cとを備えている。
【0045】
先頭パターン保持手段22dは、データ識別部21からの識別パターンデータを入力すると、この入力した識別パターンデータの一部又は全部を保持するとともに、データ保持の開始を示すデータ保持開始信号を一致判定手段22eとビット数計数手段22fに出力している。なお、先頭パターン保持手段22dは、識別データパターンの保持を開始した最初に入力したパターンデータを先頭パターンとして決定している。
【0046】
一致判定手段22eは、先頭パターン保持手段22dからのデータ保持開始信号を入力すると、識別パターンデータが一周回して再び先頭パターンと一致するまで保持された先頭パターンとデータ識別部21から入力する識別パターンデータとを比較する。そして、一致判定手段22eは、比較した結果、入力した識別パターンデータと先頭パターンとが一致すると、ビット数カウントを終了させるためのカウント終了信号をビット数計数手段22fに出力している。
【0047】
ビット数計数手段22fは、先頭パターン保持手段22dからのデータ保持開始信号を入力すると、クロック制御部30から入力した再生クロックに基づき識別パターンデータの先頭パターンから順にビット数のカウントを開始する。そして、ビット数計数手段22fは、一致判定手段22eからのカウント終了信号を入力すると、ビット数のカウントを終了し、ビットカウント数を示すビット数データをデータ長検出手段22cに出力した後、カウント数をリセットする。
【0048】
データ長検出手段22cは、ビット数計数手段22fから入力したビット数データのビット数N(Nは自然数)を整数倍した分周比Mの情報をM分周情報としてクロック制御部30に出力している。
【0049】
<処理動作>
次に、上述した第2形態の誤り率測定装置1における処理動作について説明する。ここでは、被試験デバイス50を介して入力した未知のパルスパターンの被測定信号の誤り率測定及び波形観測を行う際の処理動作について説明する。
【0050】
誤り率検出部20は、被試験デバイス50を介して未知のパルスパターンの被測定信号として入力する。次に、クロック制御部30から入力した再生クロックに基づき入力した被測定信号の信号レベルを識別する。そして、識別結果である識別パターンデータの一部又は全部を保持するとともに、識別パターンデータの先頭パターンから順にビット数のカウントを開始する。
【0051】
次に、識別パターンデータが一周回して再び先頭パターンと一致するまで、保持した先頭パターンとデータ識別部21から入力する識別パターンデータとを比較し、入力した識別パターンデータと先頭パターンとが一致した時点でビット数のカウントを終了する。そして、カウントしたビット数N(Nは自然数)を整数倍して分周比Mを取得する。
【0052】
波形観測部40は、誤り率検出部20で取得した分周比Mを示すM分周情報に基づき被測定信号の再生クロックをM分周する。M分周されたクロックは、任意に設定した遅延時間ずつずらしたサンプリングクロックとして、そのクロックタイミングで被測定信号をサンプリングする。そして、サンプリングしたサンプリング信号をサンプリングクロックのクロックタイミングでディジタル信号に変換した後、ディジタル変換したサンプリング信号の信号波形を表示制御する。
【0053】
以上説明したように、上述した第1形態の誤り率測定装置1は、被試験デバイス50を介して入力した既知のパルスパターンである被測定信号の信号レベルを識別し、その識別結果を示す識別パターンデータと基準パターン発生部10が保持する基準パターンとを比較してエラーレートを算出する。次に、算出したエラーレートと予め設定された基準エラーレート閾値とを比較し、算出したエラーレートが基準エラーレート閾値を下回った場合に、被測定信号とパターン同期した基準パターンのビット数N(Nは自然数)を整数倍して分周比Mを取得する。
【0054】
そして、波形観測部40は、分周比Mを示すM分周情報に基づき被測定信号の再生クロックをM分周した後、任意に設定した遅延時間ずつずらしたサンプリングクロックとして、そのクロックタイミングで被測定信号をサンプリングするとともに、サンプリング信号をサンプリングクロックのクロックタイミングでディジタル信号に変換した後、波形表示手段44にサンプリング信号の信号波形を表示制御する。
【0055】
これにより、既知のパルスパターンの被測定信号を被試験デバイス50から入力した際に、被測定信号におけるビット列のデータ長を自動認識し、且つそのパターン周期の整数倍となる分周比Mを取得することができるため、予め被測定信号のパターン周期が不明であった場合でも、被測定信号の誤り率測定と波形観測を行うことができる。
【0056】
また、第2形態の誤り率測定装置1では、被試験デバイス50を介して入力した未知のパルスパターンである被測定信号の信号レベルを識別し、その識別結果を示す識別パターンデータの一部又は全部を保持するとともに、識別パターンデータの先頭パターンから順にビット数のカウントを開始する。ビット数カウント開始後、識別パターンデータが一周回して再び先頭パターンと一致するまで、保持された先頭パターンとデータ識別部21から入力する識別パターンデータとを比較し、入力した識別パターンデータと先頭パターンとが一致した時点でビット数のカウントを終了し、カウントしたビット数N(Nは自然数)を整数倍して分周比Mを取得する。
【0057】
そして、波形観測部40は、分周比Mを示すM分周情報に基づき被測定信号の再生クロックをM分周した後、任意に設定した遅延時間ずつずらしたサンプリングクロックとして、そのクロックタイミングで被測定信号をサンプリングするとともに、サンプリング信号をサンプリングクロックのクロックタイミングでディジタル信号に変換した後、波形表示手段44にサンプリング信号の信号波形を表示制御する。
【0058】
これにより、未知のパルスパターンの被測定信号を被試験デバイス50から入力した場合であっても、被測定信号におけるビット列のデータ長を自動認識し、且つそのパターン周期の整数倍となる分周比Mを取得することができるため、予め被測定信号のパターン周期が不明であった場合でも、被測定信号の誤り率測定と波形観測を行うことができる。
【0059】
ところで、上述した第1形態では、被試験デバイス50に対しパルスパターン発生部60で発生した予め既知のテスト信号を送信し、被試験デバイス50を介して入力した被測定信号に関する誤り率測定及び波形観測を行う構成として説明したが、被測定信号のパルスパターンが予め既知のパルスパターンであれば良いため、例えば被試験デバイス50に対して予め既知のパルスパターンのテスト信号を外部から送信し、被試験デバイス50を介して入力した信号を被測定信号とした構成でもよい。この際、データ解析部22におけるエラーレート算出時に使用する基準パターンも外部から入力する。
【符号の説明】
【0060】
1…誤り率測定装置
10…基準パターン発生部
20…誤り率検出部
21…データ識別部
22…データ解析部(22a…エラーレート算出手段、22b…同期判定手段、22c…データ長検出手段、22d…先頭パターン保持手段、22e…一致判定手段、22f…ビット数計数手段)
30…クロック制御部
31…クロック再生手段
32…M分周手段
40…波形観測部
41…遅延制御手段
42…サンプリング手段
43…A/D変換手段
44…波形表示手段
50…被試験デバイス
60…パルスパターン発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験デバイス(50)を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出部(20)と、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測部(40)とを有する誤り率測定装置(1)であって、
前記誤り率検出部は、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別部(21)と、
該データ識別部から入力した前記識別パターンデータと当該識別パターンデータのエラーレートを算出するための比較対象となる基準パターンとを比較して算出したエラーレートと、パターン同期の程度を判別するための基準エラーレート閾値とを比較し、前記エラーレートが前記基準エラーレート閾値を下回った場合に、前記被測定信号とパターン同期した前記基準パターンのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析部(22)と、
を備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
被試験デバイス(50)を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出部(20)と、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測部(40)と、を有する誤り率測定装置(1)であって、
前記誤り率検出部は、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別部(21)と、
該データ識別部から入力した識別パターンデータのうち最初に入力したパターンデータを先頭データとして保持するとともに、前記識別パターンデータのビット数をカウントしながら前記識別パターンデータと前記先頭パターンとを比較し、前記識別パターンデータが一周回して再び前記先頭パターンと一致したときまでカウントした前記識別パターンデータのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析部(22)と、
を備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項3】
前記データ解析部(22)は、前記算出されたエラーレートと前記基準パターンとの比較に際し、複数の前記基準パターンで構成される基準パターン群における全ての基準パターンについて比較したときに前記エラーレートが前記基準エラーレート閾値を上回った場合に、最もエラーレートの誤差が低くなる前記基準パターンを用いて再度エラーレートを算出することを特徴とする請求項1記載の誤り率測定装置。
【請求項4】
被試験デバイス(50)を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出ステップと、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測ステップとを有する誤り率測定方法であって、
前記誤り率検出ステップは、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別ステップと、
該データ識別ステップから出力された前記識別パターンデータと当該識別パターンデータのエラーレートを算出するための比較対象となる基準パターンとを比較して算出したエラーレートと、パターン同期の程度を判別するための基準エラーレート閾値とを比較し、前記エラーレートが前記基準エラーレート閾値を下回った場合に、前記被測定信号とパターン同期した前記基準パターンのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析ステップと、
を含むことを特徴とする誤り率測定方法。
【請求項5】
被試験デバイス(50)を介して入力する被測定信号のビット誤り率を検出する誤り率検出ステップと、前記被測定信号の波形観測を行う波形観測ステップを有する誤り率測定方法であって、
前記誤り率検出ステップは、
前記被測定信号のビットレートに同期した再生クロックのクロックタイミングに基づき前記被測定信号の信号レベルのパターンを識別し、この識別したパターンを識別パターンデータとして出力するデータ識別ステップと、
該データ識別ステップから出力された識別パターンデータのうち最初に入力したパターンデータを先頭データとして保持するとともに、前記識別パターンデータのビット数をカウントしながら前記識別パターンデータと前記先頭パターンとを比較し、前記識別パターンデータが一周回して再び前記先頭パターンと一致したときまでカウントした前記識別パターンデータのビット数Nを整数倍した分周比Mの情報をM分周情報として前記波形観測部に出力するデータ解析ステップと、
を含むことを特徴とする誤り率測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146791(P2011−146791A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4096(P2010−4096)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】