説明

誤り率測定装置及び方法

【課題】フィルタ交換等の手間を省いて設計・調整の簡易化が図れ、誤り率測定を含む複数の測定における受信システムに共用可能とする。
【解決手段】誤り率測定装置1は、テスト信号の入力に伴う被試験デバイスWから光信号が入力される1つの入力端1aを有する。光電変換部2は、入力端1aからの光信号を電気信号に変換する。周波数特性調整部5は、フィルタ5aとイコライザ5bとが対をなして複数組設けられ、フィルタ5aの特性を生かして周波数特性を調整する。高周波切替部3a,3bは、周波数特性調整部5の前段と後段に設けられ、所定の規格ビットレートに対応した周波数特性調整部5を選択して高周波信号の経路を切り替えるべく接点が連動して開閉制御される。分岐部6は、周波数特性の調整後に高周波切替部3bを介して入力される信号を等価に分岐して複数の測定部7にそれぞれ出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験デバイスに所定パターンのテスト信号を入力し、このテスト信号の入力に伴う被試験デバイスからの光信号を受けて、ビット誤り率測定を含む複数の測定(波形測定・表示、ジッタ測定等)を同時に行う誤り率測定装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種のディジタル有線通信装置は、利用者数の増加やマルチメディア通信の普及に伴い、より大容量の伝送能力が求められている。そして、これらのディジタル有線通信装置におけるディジタル信号の品質評価の指標の一つとして、受信データのうち符号誤りが発生した数と受信データの総数との比較として定義されるビット誤り率(Bit Error Rate)が知られている。
【0003】
また、試験対象となる光電変換部品等の被試験デバイス(Device Under Test )に対して固定データを含むテスト信号を送信し、被試験デバイスを介して入力される被測定信号と基準となる参照信号とをビット単位で比較して、被測定信号の誤り率を検出する測定器として、例えば下記特許文献1に開示されるような誤り率測定装置が公知である。
【0004】
図2は、下記特許文献1に開示される誤り率測定装置の概略構成図である。図示のように、ビット誤り測定装置100は、RAM等のメモリによって構成されるデータ記憶部101、比較データ記憶部102、及び位置情報記憶部103と、集積回路等によって構成される信号送信部104、信号受信部105、同期検出部106、比較部107、表示制御部108と、CRTや液晶ディスプレイ等の表示機器109、及びキーボード等の操作部110とによって構成され、測定対象200から受信した入力データと測定対象200から受信されるべき既知のデータとを比較して誤りビットを測定するビット誤り測定装置100において、複数のブロックを有する比較データ記憶部101と、受信した入力データと既知のデータとを比較し、所定の検出条件で検出される1または複数の検出ビットを含むビット列の比較データを、検出されることに応じて複数のブロックへ順次格納する比較部102と、複数のブロックそれぞれに格納された比較データから得られるそれぞれのビット列を、所定の配置条件に従った位置を基準にして並べて表示機器103に表示する表示制御部104とを備えて構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−274474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、上述した誤り率測定装置を用いて被試験デバイスの誤り率を測定した際には、測定結果に異常が発見されると、別途サンプリングオシロスコープ等の波形表示測定器を用いて被試験デバイスからの信号の波形測定・表示を行い、原因の究明を行っているが、これら被試験デバイスの誤り率の測定と、信号の波形測定・表示を1つの信号入力で行うことが望まれていた。
【0007】
ところで、所望帯域以外の信号成分を除去するフィルタは、様々な分野で使用されており、特に光通信分野において、上述した誤り率測定装置や波形表示測定器等の受信器では、信号の雑音成分除去とリンギング防止のため、信号ビットレート(信号の通信速度)の75%の遮断周波数を有する4次Bessel−Thomson Low−Pass−Filter(以下、BT−LPFと略称する)の使用が規格にて規定されている。例えばITU−T G.957では、reference receiverの特性として4次bessel LPFが規定されており、その周波数特性の誤差範囲までの規定がなされている。このため、上述した誤り率測定装置を含む各種測定器の受信器においてBT−LPFを使用する必要がある。
【0008】
しかしながら、個々の測定器は、色々な周波数で測定が行えるように様々な規格ビットレートに対応しているので、規格ビットレートの種類分だけBT−LPFが必要となる。また、規格では、受信器全体の特性としてBT−LPF特性を要求しているため、フィルタ単体での設計ではなく、受信システム全体として設計をする必要があり、受信システム毎(測定器毎)に設計をする必要性がある。
【0009】
また、測定した信号の波形を時系列的に表示する波形表示測定器(サンプリングオシロスコープ)では、基準受信器として内蔵フィルタを使用したシステムも存在するが、他の測定器、特に上述した誤り率測定装置では、受信システム特性を積極的にBT−LPFシステムとしたものが存在しなかった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであって、フィルタ交換等の手間を省いて設計・調整の簡易化が図れ、誤り率測定を含む複数の測定における受信システムに共用可能な誤り率測定装置及び方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載された誤り率測定装置は、所定のパルスパターンによるテスト信号の入力に伴う被試験デバイスWからの被測定信号として光信号が入力される1つの入力端1aを有し、該入力端に入力される信号に基づいて誤り率を含む複数の測定を同時に行うための複数の測定部7を備えた誤り率測定装置1であって、
前記1つの入力端から入力される光信号を電気信号に変換する光電変換部2と、
規格で規定された各々の規格ビットレートに対応したフィルタ5aとイコライザ5bとが対をなして複数組設けられ、前記フィルタの特性を生かして周波数特性を調整する周波数特性調整部5と、
前記周波数特性調整部の前段と後段に設けられ、前記周波数特性調整部から所定の規格ビットレートに対応した周波数特性調整部を選択して高周波信号の経路を切り替えるべく接点が連動して開閉制御される高周波切替部3a,3bと、
前記周波数特性調整部で周波数特性が調整され前記高周波切替部を介して入力される信号を等価に分岐して前記複数の測定部にそれぞれ出力する分岐部6とを備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された誤り率測定方法は、所定のパルスパターンによるテスト信号の入力に伴う被試験デバイスWからの被測定信号として光信号が1つの入力端1aから入力され、該入力端に入力される信号に基づいて誤り率を含む複数の測定を複数の測定部7で同時に行う誤り率測定方法であって、
前記1つの入力端から入力される光信号を電気信号に変換するステップと、
規格で規定された各々の規格ビットレートに対応したフィルタ5aとイコライザ5bとが対をなして複数組設けられる周波数特性調整部5から所定の規格ビットレートに対応した周波数特性調整部を選択して高周波信号の経路を切り替えるべく、前記周波数特性調整部の前段と後段に設けられる高周波切替部3a,3bの接点を連動して開閉制御するステップと、
周波数特性が調整された信号を等価に分岐して前記複数の測定部にそれぞれ出力するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、規格ビットレートに対応したフィルタをソフト的に選択することが可能であり、ユーザがフィルタを付け替える等の手間を省くことができる。また、高周波スイッチやケーブル損失、使用している光電交換素子、例えばフォトダイオード(PD)の特性及び分岐回路に起因する特性劣化を補正し、システム全体で見た時にBT−LPFにすることができ、複数の測定における受信システムに共用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る誤り率測定装置のブロック構成図である。
【図2】従来の誤り率測定装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は本発明に係る誤り率測定装置の概略構成を示すブロック図である。
【0016】
本発明に係る誤り率測定装置1は、図1に示すように、テスト信号発生部11から被測定デバイスWへのテスト信号の入力に伴う被測定デバイスWからの被測定信号として光信号が入力される1つの入力端1aを有しており、その後段に光電変換部2、高周波切替部3、制御部4、周波数特性調整部5、分岐部6、測定部7を備えて概略構成される。
【0017】
光電変換部2は、例えばフォトダイオード(PD)からなり、1つの入力端1aから入力される光信号を電気信号に変換している。
【0018】
高周波切替部3は、例えば26GHzの高周波に対応した高周波リレーや高周波スイッチで構成される。この高周波切替部3は、周波数特性調整部5の前段に設けられる入力側の高周波切替部3aと、周波数特性調整部5の後段に設けられる出力側の高周波切替部3bとからなり、それぞれの接点が制御部4により連動して開閉制御される。
【0019】
制御部4は、所定の規格ビットレートに対応した1つの周波数特性調整部5(後述するフィルタ5b)を選択して高周波信号の経路を切り替えるべく、入力側及び出力側の高周波切替部3a,3bの接点を連動してソフト的に開閉制御している。
【0020】
周波数特性調整部5は、フィルタ5aとイコライザ5bとが対をなして入力側の高周波切替部3aと出力側の高周波切替部3bとの間に並列に複数組接続される。この複数組の対をなすフィルタ5aとイコライザ5bは、規格で規定された各々の規格ビットレートに対応している。
【0021】
フィルタ5aは、ローパスフィルタからなり、特定の閾値よりも高い周波数信号を減衰させて遮断し、低域周波数のみを信号として通過させている。
【0022】
イコライザ5bは、フィルタ5aの前後に配置されるハイパスフィルタ特性の半導体抵抗やキャパシタからなり、フィルタ5bの特性を生かして規格を満足するべく半導体抵抗の抵抗値を可変して調整し、高周波切替部3(高周波リレーや高周波スイッチ)やケーブル損失、使用している光電変換部2(PD)の特性及び分岐部6に起因する特性劣化が無くなるように補正している。
【0023】
分岐部6は、周波数特性調整部5により高周波数まで特性が延びた信号を抵抗により等価に分岐して測定部7に出力している。図1の例では、周波数特性調整部5からの信号を等価に2つに分岐して測定部7に出力している。
【0024】
測定部7は、分岐部6で等価に分岐された信号に基づいて各種測定を行っている。図1の例では、エラー測定部7aと波形表示部7bから測定部7が構成される。
【0025】
エラー測定部7aは、分岐部6で分岐された信号が入力されると、その信号と被測定デバイスWに入力しているテスト信号とを比較して信号のビット誤りを測定している。
【0026】
波形表示部7bは、サンプリングオシロスコープ等のように、分岐部6からの信号を波形データとして内部メモリに取り込むとともに、電圧や電流の値が時間的に変化する事象を離散的にサンプリングして得た波形データに基づく波形画像をユーザが所望する表示形態で表示画面上に再生表示している。
【0027】
このように、本例の誤り率測定装置1は、高周波スイッチや高周波リレーからなる高周波切替部3(3a,3b)の接点を制御部4によって切り替え制御する構成である。これにより、規格ビットレートに対応したフィルタ5aをソフト的に選択することが可能となり、ユーザがフィルタを付け替える等の手間を省くことができる。
【0028】
また、システム全体を見た時に、BT−LPFとなるように、高周波切替部3やケーブル損失、使用しているフォトダイオード(光電変換部)の特性及び分岐部6に起因する特性劣化を周波数特性調整部5のイコライザ5bによって補正することができる。
【0029】
さらに、最終段の分岐部6の出力は、測定部7を構成するエラー測定部7aと波形表示部7bと内部的に接続しており、エラー測定部7aと波形表示部7bの両方の受信システムに対して同一の信号を接続している。これにより、高周波スイッチや高周波リレーからなる高周波切替部3(3a,3b)、フィルタ5aとイコライザ5bからなる周波数特性調整部5によって構成されている特性をエラー測定を含む複数の測定において共用可能な構成となり、これまで存在しなかった規格に準拠した受信システムでのエラー測定が可能となる。
【0030】
また、通常は受信システムの数だけ設計を行う必要があるが、本例の誤り率測定装置1では、光電変換部2と測定部7との間の構成(高周波切替部3、周波数特性調整部4、制御部5、分岐部6)を全てのシステムに共用しているため、コストダウンを図って設計・調整を簡易化でき、エラー測定と波形表示を同等の波形で行え、エラー測定と同時に被測定波形の可視化が図れるなど、複数の測定に対応することができる。
【0031】
ところで、上述した実施の形態では、エラー測定部7aと波形表示部7bで測定部7を構成しているが、1つの入力端1aから入力される光信号の各種測定を行うものであれば、図1の構成に限定されるものではない。例えば信号の時間的なズレや揺らぎを測定するジッタ測定部をエラー測定部7a、波形表示部7bにさらに備えた構成であってもよい。また、エラー測定部7aとジッタ測定部によって測定部7を構成することもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 誤り率測定装置
2 光電変換部
3(3a,3b) 高周波切替部
4 周波数特性調整部
4a イコライザ
4b フィルタ
5 制御部
6 分岐部
7 測定部
7a エラー測定部
7b 波形表示部
11 テスト信号発生部
W 被測定デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパルスパターンによるテスト信号の入力に伴う被試験デバイス(W)からの被測定信号として光信号が入力される1つの入力端(1a)を有し、該入力端に入力される信号に基づいて誤り率を含む複数の測定を同時に行うための複数の測定部(7)を備えた誤り率測定装置(1)であって、
前記1つの入力端から入力される光信号を電気信号に変換する光電変換部(2)と、
規格で規定された各々の規格ビットレートに対応したフィルタ(5a)とイコライザ(5b)とが対をなして複数組設けられ、前記フィルタの特性を生かして周波数特性を調整する周波数特性調整部(5)と、
前記周波数特性調整部の前段と後段に設けられ、前記周波数特性調整部から所定の規格ビットレートに対応した周波数特性調整部を選択して高周波信号の経路を切り替えるべく接点が連動して開閉制御される高周波切替部(3a,3b)と、
前記周波数特性調整部で周波数特性が調整され前記高周波切替部を介して入力される信号を等価に分岐して前記複数の測定部にそれぞれ出力する分岐部(6)とを備えたことを特徴とする誤り率測定装置。
【請求項2】
所定のパルスパターンによるテスト信号の入力に伴う被試験デバイス(W)からの被測定信号として光信号が1つの入力端(1a)から入力され、該入力端に入力される信号に基づいて誤り率を含む複数の測定を複数の測定部(7)で同時に行う誤り率測定方法であって、
前記1つの入力端から入力される光信号を電気信号に変換するステップと、
規格で規定された各々の規格ビットレートに対応したフィルタ(5a)とイコライザ(5b)とが対をなして複数組設けられる周波数特性調整部(5)から所定の規格ビットレートに対応した周波数特性調整部を選択して高周波信号の経路を切り替えるべく、前記周波数特性調整部の前段と後段に設けられる高周波切替部(3a,3b)の接点を連動して開閉制御するステップと、
周波数特性が調整された信号を等価に分岐して前記複数の測定部にそれぞれ出力するステップとを含むことを特徴とする誤り率測定方法。

【図1】
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【図2】
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