説明

調理器

【課題】多用途型調理器におけるソフト的な鍋検知方法を提供する。
【解決手段】電気的な加熱手段を有する調理器本体と、該調理器本体に対してセットされ、上記加熱手段によって加熱されて所定の調理を行う主たる調理容器と、該主たる調理容器の温度を検出する温度検出手段と、上記主たる調理容器に対してセットされ、当該主たる調理容器に対する加熱力を利用して他の調理を行う従たる調理容器を備え、複数の調理メニューの調理を可能としてなる調理器であって、調理開始後、昇温工程を経て昇温した上記主たる調理容器の温度が、温調温度に低下するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、調理器本体に対してセットされる調理容器の有無を検知する調理容器検知機能を有した調理器の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に必要に応じて調理容器がセットされるヒータ等の加熱手段を備えた調理器では、調理容器がセットされていない状態での調理実行(加熱)を回避するための調理容器検知手段が設けられている。
【0003】
この調理容器検知手段としては、例えば電気炊飯器などの場合、リードスイッチとマグネットを用い、内鍋の有無に応じたリードスイッチのON,OFF信号によって検出する機械的な検出手段が、比較的多く採用されている(特許文献1を参照)。
【0004】
しかし、このようなリードスイッチやマグネットを用いた機械的な鍋検知手段は、構造が複雑で、コストも高い。
【0005】
そこで、例えば電磁誘導加熱式の電気炊飯器の場合などでは、電磁誘導コイルへの通電時に発生するフィードバック電圧を検出する電圧検出手段と、該フィードバック電圧検出手段により検出されたフィードバック電圧の通電制御手段による再通電時の変化によって内鍋の有無を判定する内鍋判定手段とを設け、電磁誘導コイルへの連続通電状態から、一旦通電OFFにした後の再通電時のフィードバック電圧の変化に基いて内鍋の有無を判定するようにしたものもある(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−317号公報
【特許文献2】特許第3175670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、後者の場合にも、電磁誘導加熱手段ではないヒータ加熱手段による加熱方式の調理器には採用することができない。
【0008】
本願発明は、このような問題を解決するためになされたもので、昇温後の調理容器の温度を検出する温度検出手段の容器温度検出値のオーバーシュート分の熱量の積算値に基いて調理容器の有無を検出することにより、簡単かつ安価な構成で、確実に調理容器の有無を検出できるようにした調理器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0010】
(1) 第1の課題解決手段
この発明の第1の課題解決手段は、電気的な加熱手段を有する調理器本体と、該調理器本体に対してセットされ、上記加熱手段によって加熱されて所定の調理を行う主たる調理容器と、該主たる調理容器の温度を検出する温度検出手段と、上記主たる調理容器に対してセットされ、当該主たる調理容器に対する加熱力を利用して他の調理を行う従たる調理容器を備え、複数の調理メニューの調理を可能としてなる調理器であって、調理開始後、昇温工程を経て昇温した上記主たる調理容器の温度が、温調温度に低下するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにしたことを特徴としている。
【0011】
このような構成の場合、例えば上記調理容器の温度を検出する容器温度検出手段の容器温度検出値を観察し、同検出温度が、調理開始後、昇温工程後のオーバーシュートを経て温調温度に低下するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知することができる。
【0012】
したがって、リードスイッチおよびマグネットによる機械式の検知手段のような複雑かつ高価な構成を必要とせず、また電磁誘導加熱手段を具備しないヒータ式の調理器の場合にも容易に採用することができる。
【0013】
(2) 第2の課題解決手段
この発明の第2課題解決手段は、電気的な加熱手段を有する調理器本体と、該調理器本体に対してセットされ、上記加熱手段によって加熱されて所定の調理を行う主たる調理容器と、該主たる調理容器の温度を検出する温度検出手段と、上記主たる調理容器に対してセットされ、当該主たる調理容器に対する加熱力を利用して他の調理を行う従たる調理容器を備え、複数の調理メニューの調理を可能としてなる調理器であって、調理開始後、昇温工程を経て昇温した上記主たる調理容器の温度が、所定の温度に到達した時から所定の時間が経過するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにしたことを特徴としている。
【0014】
このような構成の場合、例えば上記調理容器の温度を検出する容器温度検出手段の検出値を観察し、同検出温度が、調理開始後、所定の温度に到達した時から所定時間経過するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知することができる。
【0015】
したがって、リードスイッチおよびマグネットによる機械式の検知手段のような複雑かつ高価な構成を必要とせず、また電磁誘導加熱手段を具備しないヒータ式の調理器の場合にも容易に採用することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の結果、本願発明の調理器によると、ヒータ式の調理器の場合にも、確実な調理容器の検出機能が実現され、調理時の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の実施の形態にかかる調理器の全体的な構成を示す正面上方側から見た斜視図である。
【図2】同調理器の操作パネル部の正面図である。
【図3】同調理器の深鍋使用時の構成を示す前後方向中央部の切断断面図である。
【図4】同調理器の蒸しプレート使用時の構成を示す前後方向中央部の切断断面図である。
【図5】同調理器の揚げガード使用時の構成を示す前後方向中央部の切断断面図である。
【図6】同調理器の底部のサーモスタット取付位置を示す図である。
【図7】同調理器の制御回路を示すブロック図である。
【図8】同調理器の鍋検知制御方法を示すフローチャートである。
【図9】同調理器の鍋検知時の温調温度と底センサ検知温度の関係を示すタイムチャートである。
【図10】同調理器の加熱工程を示すタイムチャートである。
【図11】同調理器の熱量積算方法を示すタイムチャートである。
【図12】同調理器の保温移行時の熱量積算値のクリア方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
先ず図1〜図12は、本願発明の実施の形態に係る調理器の構成と作用をそれぞれ示している。
【0019】
(調理器本体の基本的な構成)
図1および図2は、同調理器本体の概観的な構成を、図3〜図5は、同調理器本体の深鍋、蒸しプレート、揚げガードを使用した各々の使用形態を、図6は、同調理器底部の構成を、図7は同調理器本体の制御回路の構成を示している。
【0020】
この実施の形態の調理器は、ヒータプレート13を備えた調理器本体Aと該調理器本体Aの上に載置されてヒータプレート13により直接加熱される深鍋1を中心として、所望に組み合わされる蒸しプレート2、揚げガード3等の複数の調理器具とからなっている。
【0021】
調理器本体Aは、上方側が開いた有底丸角筒状の合成樹脂製の本体ケース11の底部に金属製の遮熱板12を介して円形のヒータプレート13を設置して構成されている。ヒータプレート13の外周部内には、ヒータ14が埋め込まれており、このヒータ14が発熱することによりヒータプレート13の温度が上昇して、その上面側に載置された深鍋1を加熱する。
【0022】
ヒータプレート13の中心部分には、上方から下方に貫通して底センサ嵌装孔が形成されており、該底センサ嵌装孔内に下方から上方側にバネ付勢された状態で底センサ15が昇降自在に嵌装されている。
【0023】
そして、その上端側センサ面を深鍋1の底面1aに伝熱性良く圧接することにより、深鍋1内の水や煮物、また油などの温度を検出して後述するマイコン制御ユニット30に入力する。
【0024】
一方、外ケース11の正面側下部寄り位置には、図1、図2に示すように、液晶等の表示部18を備えたボックス構造の操作パネル部19が設けられている。
【0025】
この実施の形態の調理器は、例えば(1)煮もの、(2)焼もの、(3)鍋もの、(4)揚げもの、(5)蒸しもの、の少なくとも5種類の調理を行う機能を備えており、それらの各機能を選択することができるように、例えば煮ものスイッチ21、焼ものスイッチ22、鍋ものスイッチ23、揚げものスイッチ24、蒸しものスイッチ25が設けられている。
【0026】
そして、それらの何れかが選択されてON操作されると、対応する調理メニューの調理制御シーケンスがマイコンにより選択設定されて調理が行われるが、その際に、具体的な調理メニューに応じて、またユーザーの好みに応じて所定の火力、例えば(a)強火、(b)中火、(c)弱火の複数段階の火力の調節が行えるようになっている。
【0027】
この火力調節は、当該メニューの操作スイッチをメニュー選択の後に操作することによってなされ、同メニュースイッチを1回押すと(a)強火、もう1回押すと(b)中火、さらにもう1回押すと(c)弱火に設定されるようになっており、表示部18の所に三角形状の指示マーカー26で表示されるようになっている。
【0028】
なお、この実施の形態の場合、蒸しものの場合には、(a)強火と(c)弱火との2段階のみの選択セットが可能となっており、(b)の中火はセットされないようになっている。
【0029】
また、この実施の形態の場合、調理タイマー機能が具備されており、例えば(1)煮ものと(5)蒸しものの場合には、例えば(1)煮もの1分〜120分、(5)蒸しもの1分〜40分の範囲で加熱調理の時間が設定できるようになっている。そのための調理タイマースイッチ27も設けられており、同スイッチ27により加熱調理時間が設定されると、設定された時間が表示部18に数字で表示される。
【0030】
さらに、以上の各種設定を取り消したい場合、取消スイッチ28を押して取り消し、再設定することも可能である。
【0031】
他方、深鍋1は、図3〜図5に示すように、外ケース11と同様に全体として有底の丸角筒構造に形成されており、直接調理器本体A内のヒータプレート13上に設置して使用され、それ単体として例えば図4に示すように煮もの用の鍋として使用される場合には、その上部側開口部に直接蓋4が冠合される。
【0032】
すなわち、深鍋1は、上部側開口部周縁に、所定の幅のリブ構造のフランジ部1bとその内周側の蓋等係合用段部1cが形成されており、後者の蓋等係合用段部1c部分に蓋4のフラットな外周縁部4a部分が係合されて安定した状態に蓋4が冠合されるようになっている。
【0033】
また、上記フランジ部1b部分には、その左右両側に位置して深鍋1を持ち運ぶ時の把手1d,1dが取り付けられている。
【0034】
蓋4は、上記外周縁部4aより内側に所定幅の外周部分4bが耐熱性のある合成樹脂材、それよりも内側所定幅部分が耐熱性ガラス等の透明体部分4cとなっており、中央部の円柱体状の把手取付部4dが耐熱性の合成樹脂材となっている。透明体部分4cの内周側端部は、把手取付部4d部中央に嵌装されて固定一体化されている。
【0035】
そして、同把手取付部4dには、片手把持用の把手4eが少し外周方向上方に伸びる状態で一体に成型されている。
【0036】
また、上記把手取付部4d部分には、深鍋1内から外部に連通した蒸気排出孔5が設けられている。深鍋1内の沸とう時の蒸気および蒸気圧は、この蒸気排出孔5から排出される。
【0037】
次に、この深鍋1には、例えば図4に示すように、蒸しプレート(蒸し鍋)2が組み合わせて使用され、これによって上述した「蒸しメニュー」調理を行うことができる。
【0038】
この蒸しプレート2は、全体として深鍋同様の形状をしており、その上端側開口部には、同様の形状、寸法で、リブ構造のフランジ部2b、蓋係合段部2cが設けられており、上述の蓋4が全く同様に冠合される。また、把手2d,2dも設けられている。
【0039】
しかし、一方その筒状の側壁部の所定高さ位置には、深鍋1の蓋係合段部1c部分に係合する係合段部2eが設けられており、図4のように深鍋1の底部1aと底部2a間に所定の上下高さの水留め用の空間を保った状態で深鍋1内に嵌合されて支持される。そして、蒸しプレート2の底部2a部分には、多数の蒸気穴2f,2f・・・が形成されている。
【0040】
したがって、上記深鍋1底部1a上の水留め空間中に留められた水Wがヒータプレート13からの熱により加熱されて沸とうすると、該沸とうによる高温の蒸気が蒸しプレート2の底部2aの蒸気穴2f,2f・・・から蒸しプレート2内に侵入して、蒸しプレート2内の蒸し調理物を蒸し上げる。
【0041】
さらに、上記深鍋1内に、例えば図5に示すように、揚げもの用の天ぷら油Oを入れると、串あげ等の揚げものの調理を行うこともできる。
【0042】
この場合、調理物を入れた時に油Oが飛び散るので、これを防止するために、図示のような筒状の揚げガード3を組み合わせて使用する。
【0043】
この揚げガード3は、その筒体部3aの天板3b側の内周部に外径よりも所定寸法幅が小さい開口部3cを形成するとともに、下端側開口部外周のフランジ部3dを上記深鍋1側開口部の蓋等係合用段部1c上に係合したものとなっている。
【0044】
このような構成の場合、深鍋1の開口部の開口径に比べて揚げガード3の開口部3cの径が小さく、しかも高さも高くなっており、残された天板3b部分が油面開口面部の覆い部となるので、油の飛び散りが確実に阻止される。
【0045】
この揚げガード3の開口面部分には、揚げ網が掛け渡され(セットされ)る。
【0046】
(制御回路部分の概略的な構成)
次に図7は、本実施の形態の調理器の制御回路の構成を示している。
【0047】
図中、符号30は所定のビット数を有し、かつ所定の容量のメモリ(RAM)35を備えたマイコン制御ユニットである。
【0048】
このマイコン制御ユニット30には、上述した各種操作スイッチ21〜27からの操作入力データ、底センサ15の温度検出信号、サーモスタット34の動作信号等が入力されるようになっている。
【0049】
また、それら入力データに基いて処理した所定の表示データを表示部18にマーク、数値など所望の形態で表示する。
【0050】
また、マイコン制御ユニット30は、AC電源回路31を介したAC電源をDC電源に変換したマイコン電源回路32の電源で動作し、上記操作スイッチ21〜26によって設定された調理メニュー、火力、調理時間に応じた調理シーケンスに基いて、ヒータ駆動回路33を介してヒータ14のON,OFFおよびON状態における加熱出力の制御を行う。
【0051】
(鍋検知制御)
この実施の形態の調理器の場合にも、上記深鍋(調理容器)1がセットされていない状態での調理実行(加熱)を回避するための鍋検知手段が設けられている。
【0052】
該鍋検知手段は、以下に述べるように、上記深鍋1の温度Tを検出する容器温度検出手段である底センサ15の検出温度Tを観察し、同検出温度Tが、調理開始後、昇温工程後のオーバーシュートを経て温調温度Toに低下するまでの間の熱量の積算値によって調理容器である深鍋1の有無を検知するようになっている。
【0053】
したがって、同構成によれば、ソフト的に構成することができ、従来のリードスイッチおよびマグネットによる機械式の検知手段のような複雑かつ高価な構成を必要とせず、また電磁誘導加熱手段を具備しないヒータ式の調理器の場合にも容易に採用することができる。
【0054】
図9のA,Bは、一例として、上述した揚げものメニューの時の温調温度To(To=200℃)を基準として、調理開始後、昇温工程(図10の昇温工程1,2)を経て温調工程(一定の目標温度Toに維持するためのヒータ14のON,OFF制御工程)に到る昇温〜温度収束過程における深鍋1の温度変化(底センサ15の検出温度の変化)を示しており、Aは鍋ありの時の温度変化、Bは鍋なしの時の温度変化であり、鍋なし時Aの温調温度Toを超えるオーバーシュート量(上昇温度Tmax、オーバーシュート期間t)は、鍋ありの時Bに比べて遥かに大きい。
【0055】
そして、同オーバーシュート量を基に、その熱量を積算して見ると、同積算値も鍋なしの時A′が鍋ありの時B′よりも遥かに大きい。これらは、上述した各種調理メニューの何れの場合にも共通している。
【0056】
したがって、同積算値を温調温度Toを異にする各調理メニューのすべてを包含できる範囲(レベル)での判定基準値(閾値)msを設定して置けば、この判定基準値を基に各メニューに関係なく共通に深鍋1の有無を検知判定できることになる。
【0057】
今、図8のフローチャートおよび図9〜図12のタイムチャートは、そのような制御の内容を示している。
【0058】
すなわち、同制御では、まずステップS1で、上述した各種操作スイッチ21〜27の操作データを入力する。
【0059】
そして、その上でステップS2に進み、実際に調理が開始された否かを判定する。
【0060】
その結果、実際に調理が開始されているYESの時に初めて具体的な鍋検知制御に入り、まずステップS3で調理開始時における深鍋1の温度Tを検知する(底センサ15の温度検出値を読み込む)。
【0061】
そして、ステップS4で、同検出された深鍋1の温度Tが、その時に選択されている調理メニューの温調工程における温調温度(目標制御温度)To以上となっているか、いないかを判定する。
【0062】
そして、その結果、YESの上記調理開始時点で、すでに深鍋1の温度Tが当該調理メニューの温調温度To以上となっている場合には、後述する鍋の有無による適正なオーバーシュート量の判定は不可能であるから、以下の鍋検知制御を行うことなく制御を終える。
【0063】
この実施の形態の場合、上述の深鍋1を使用して、例えば「焼もの強火(温調温度To=210℃)」を行った後に、「鍋もの強火(温調温度To=120℃)」を連続して調理することができるようになっており、このような連続使用がなされた場合、後者の調理開始時点では、既に新たな調理メニューの温調温度を超えていることがあり、適正なオーバーシュート量の判定が困難であり、また前者の調理開始時における鍋検知制御結果から、通常鍋の存在が想定されることから、このような場合には新たな鍋検知制御は行わない。
【0064】
他方、ステップS4の判定結果がNOの場合には、続いてステップS5の昇温工程に進み、ヒータ14をONにして上記温調温度Toに向けた加熱を実行する(図10のタイムチャートの昇温工程1から昇温工程2の加熱を実行)。
【0065】
これにより、深鍋1の温度Tは、上述した図9のタイムチャート(昇温特性)に示すように大きく上昇する。
【0066】
そこで、次にステップS6に進んで、底センサ15の温度検出値を入力し、続くステップS7で深鍋1の温度Tを検出し、同温度Tが当該調理メニューの温調温度Toを超えたか否かを判定し、同温調温度Toを超えたYESの時は、当該温調温度Toに達した時点で上記ヒータ14をOFFにした上で、ステップS8の温調工程(図10の温調工程1)に進む。
【0067】
そして、同温調工程で、再度底センサ15の温度検出値Tを入力し(ステップS9)、同検出値Tが上記温調温度To以上の状態にあるか否かを判定する(ステップS10)。
【0068】
その結果、YESの上記深鍋1の温度Tが上記温調温度Toよりも高い状態にある時は、ステップS11に進んで、その間の熱量maを積算する。この積算は、深鍋1の温度Tが温調温度Toよりも高い状態にある間繰り返される。この場合、図11に示すように、高温側のオーバーシュートでない温調温度Toより低い負のオーバーシュート分の熱量はゼロとする。
【0069】
そして、その後、さらにステップS12に進み、同積算値maが、上述した図9の各メニュー間に共通した鍋なし判定用の熱量の積算値(判定基準値)ms以上であるか否かを判定する。
【0070】
その結果、基準値以上のYESの時は、深鍋1のない時であり、オーバーシュート量が大きい時であるから、ステップS16に進んで鍋なし判定を行ない、ユーザーに深鍋1が掛けられていない状態であることをブザー等で報知する。
【0071】
他方、NOの時は上記オーバーシュート量が小さく、深鍋1が適正に掛けられている時であるから、ステップS13に進んで鍋ありと判定し、適正な温調工程での加熱制御(温調温度Toに維持するためのヒータ14のON,OFF制御)を開始する。
【0072】
この結果、やがて設定された調理時間が経過して当該調理メニューの調理が終了する。
【0073】
この時、例えば当該終了した調理メニューが「煮込み」、「しみ込み」、「煮込みしみ込み」などであった場合には、例えば図12に示すように、上記調理終了時点で自動的に保温に移行させるようになっている。
【0074】
したがって、図12の保温移行時点で上述した熱量積算値maのクリアを行わないと、保温用の低い温調温度To′に移行する時に、実際には深鍋1があるのに鍋なしと誤検知してしまう恐れがある。
【0075】
そこで、この実施の形態では、ステップS15に示すように、保温に移行する場合には、上述のステップS11の熱量積算値maをクリアするようにしている。
【0076】
(サーモスタットの取付位置)
ところで、上記のような構成の場合、ヒータプレート13上に異物が存在することになる可能性がある。「揚げ」、「焼き強火」などのコースが選択された場合、ヒータプレート13上に3点状態で異物があると、深鍋1に伝わる筈のヒータ14の熱が深鍋1に伝わらず、ヒータ14およびヒータプレート13の温度が上昇しすぎる可能性がある。
【0077】
そこで、この実施の形態では、上記遮熱板12部分に位置して、上記ヒータ14の通電状態をコントロールするサーモスタット34が設けられている。
【0078】
しかし、上記異物がある場合(1点、2点、3点異物)でも、時間を延ばせば調理を行うことができる。したがって、この実施の形態では、上記サーモスタット34の電力値のON,OFF(出力制御)を行い、ヒータ14の温度が上がりすぎないようにしつつも、見かけ上は動作しているようにする(揚げや焼きのLEDランプは点灯状態のままとする)。そして、そのようにするサーモスタット34の取付位置は、異物調理時に適切に異物を検知できる図6のような3時の時計位置とした。
【0079】
種々の実験結果、この位置が、上記条件でサーモスタット34を動作させるのに最も最適であった。
【0080】
このような構成の場合、異物がある時でも直ちに電源をOFFにして異常警報音かエラー表示を表示させるのではないので、使い勝手が良くなる。
【0081】
図6中、14aはヒータ14の電源端子、36は電源ヒューズである。
【0082】
(オートオフ機能について)
この実施の形態における調理器は、上述のように、揚げ、焼き(強火、中火、弱火)、煮もの、鍋もの、蒸しもの等5つのメニューがあるが、中でも揚げ、焼きは、他のメニューに比べて温調温度Toが高い。
【0083】
したがって、これらの場合には、調理を開始してから所定時間(2時間)が経過すると、自動的に電源をOFFにするようにしている。
【0084】
このようにすると、タイマー制御がない場合やタイマーの設定を忘れた場合に有効となる。
【0085】
(焼きメニューの場合の報知制御)
焼きメニューの場合には、蒸気が出るわけでもないので、深鍋の温度が、焼き調理に適した温度になったことがわかりにくい。
【0086】
そこで、深鍋1が同温度になったことを例えばブザーなどで報知するようにする。この場合、もちろん設定された強火、中火、弱火の別に応じて適切に報知できるようにする。
【0087】
(他の実施の形態)
以上の実施の形態では、調理開始後、昇温工程を経て昇温した主たる調理容器(深鍋1)の温度Tが、温調温度Toに低下するまでの間のオーバーシュート分の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにしたが、これは、また調理開始後、昇温工程を経て昇温した主たる調理容器(深鍋1)の温度Tが、所定の温度に到達した時から所定の時間が経過するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにし、所定の温度を温調温度To、所定の時間を上述したオーバーシュート期間tとすると、上述の実施の形態の場合と全く同様のソフト的な方法で深鍋1の有無を検知することができる。
【符号の説明】
【0088】
1は深鍋、2は蒸しプレート、3は揚げガード、14はヒータ、30はマイコン制御ユニット、Aは調理器本体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的な加熱手段を有する調理器本体と、該調理器本体に対してセットされ、上記加熱手段によって加熱されて所定の調理を行う主たる調理容器と、該主たる調理容器の温度を検出する温度検出手段と、上記主たる調理容器に対してセットされ、当該主たる調理容器に対する加熱力を利用して他の調理を行う従たる調理容器を備え、複数の調理メニューの調理を可能としてなる調理器であって、調理開始後、昇温工程を経て昇温した上記主たる調理容器の温度が、温調温度に低下するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにしたことを特徴とする調理器。
【請求項2】
電気的な加熱手段を有する調理器本体と、該調理器本体に対してセットされ、上記加熱手段によって加熱されて所定の調理を行う主たる調理容器と、該主たる調理容器の温度を検出する温度検出手段と、上記主たる調理容器に対してセットされ、当該主たる調理容器に対する加熱力を利用して他の調理を行う従たる調理容器を備え、複数の調理メニューの調理を可能としてなる調理器であって、調理開始後、昇温工程を経て昇温した上記主たる調理容器の温度が、所定の温度に到達した時から所定の時間が経過するまでの間の熱量の積算値によって調理容器の有無を検知するようにしたことを特徴とする調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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