説明

貝類取外し装置

【課題】長い海産物や、貝類付きロープを海中から、スリップせず確実かつ容易に引上げ可能な貝類取外し装置を提供する。
【解決手段】船から突出する強制回転式の回転コンベアを設けた。回転コンベアの表面に滑り止め突起と滑り止め空間の双方又はいずれか一方を設けた。回転コンベアの海側への下り傾斜角又は/及び船の外への突出長を調節可能とした。回転コンベアを船上に収容可能とした。回転コンベアで引上げた貝類付きロープのロープから貝類を取外す貝類除去具と、ロープを引込み可能な引込み装置を船上に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ロープに係止して、ロープごと海中に吊下げて養殖した帆立貝、あこや貝、牡蠣など(これらをまとめて「貝類」という。)をロープから取外すのに使用される貝類取外し装置に関するものであり、貝類付きロープを海中から引上げながら貝類を取外すことができるのは勿論の事、船に引上げて船上で取外したり、陸上で使用したりすることもできるものである。
【背景技術】
【0002】
貝類は吊下げ養殖(帆立貝の養殖では「耳吊り養殖」といわれている。)されることがある。耳吊り養殖はロープに差込んだ樹脂製の貝類係止具K(図1)又はテグスを、貝類に開けた孔に通して貝類をロープに取付け、この貝類付きロープを海中に吊下げて養殖する方法である。
【0003】
従来の耳吊り養殖では、図9(a)に示すように、ロープ2に貝類1が係止されている貝類付きロープ3を、船Aの上に設置された引上げ回転体Bの外周に掛け、その下流側(図では右側)に設けた引込み装置6(図9(a)の場合は引込み回転体4と押し具7で構成されている)で船Aの上へ引込んで海上から引上げ、このとき、貝類1が引上げ回転体Bと引込み回転体4の間に配置された貝類除去具5によって貝類付きロープ3から取外される。引上げ回転体Bや引込み回転体4はモータなどの駆動装置によって回転するものである。
【0004】
前記貝類除去具5は一部が開口しているリング状であり、その内側の通路5aは、ロープ2は通過可能な内径であるが貝類1は通過できない内径となっている。そのため、貝類付きロープ3のロープ2を通路5a内に引込むと貝類1が貝類除去具5に引っ掛かってロープ2から離脱する。場合によっては貝類1をロープに係止する貝類係止具Kと共にロープ2から離脱する。
【0005】
貝類除去具5は図9(a)に示すU字状貝のものであってもよい。U字状の貝類除去具5にも通路5aがあり、この通路5aの幅は、ロープ2は通過可能な広さであるが貝類1は通過できない広さとなっていて、ロープ2を引くことによって貝類1が貝類除去具5に引っ掛かって貝類付きロープ3から離脱するものである。
【0006】
図9(a)に示すように、貝類1が外れたロープ2は引込み回転体4によって、下流(船Aのデッキ)に引かれる。このとき、ロープ2を円滑に下流に案内し、貝類1が貝類除去具5に引っ掛かる際の抵抗でロープ2が引戻されないようにするため、引込み回転体4の外側にローラ状の押し具7を配置して、引込み回転体4により引込まれるロープ2を押し具7により引込み回転体4に押し付けると共に引込み回転体4の回転と押し具7の回転でロープ2が下流へ引出されるようにしてある。図9(a)の例では引込み回転体4が時計回りに回転し、押し具7は反時計回りに回転する。引込み回転体4は図9(b)に示すように2枚の円盤4a、4bが連結軸8で対向連結されており、ロープ2は円盤4a、4b間の引込み通路4cに押し具7で押し付けられながら引込まれる。押し具7は図示しないバネにより引込み通路4c側に引かれてロープ2をスリップしないように引込み通路4cに押し付けるようにしてある。押し具7はない場合もある。
【0007】
押し具7の下にはロープ弾き9が設けられている。このロープ弾き9は引込み回転体4と押し具7の間に引込まれるロープ2が引込み通路4cに必要以上に押し込まれない(巻き付かない)ようにロープ2の食い込みを防止するものであり、先端部9aが尖鋭な楔状になっており、その先端部9aが引込み回転体4の引込み通路4c内に配置されている。
【0008】
前記貝類除去具5に引っ掛かって貝類付きロープ3から離脱した貝類1は、船内側に下り傾斜の受け具Cで受けられ、この受け具Cの上を滑って船内の収容カゴDに収容される。収容された貝類1は、この後、洗浄され、必要に応じて表面の汚れが落とされて、大きさごとに選別されて出荷される。
【0009】
以上のように、従来の吊下げ養殖において貝類1を水揚げする場合に利用される貝類取外し装置には、ドラム状の引上げ回転体Bが利用されていた。この引上げ回転体は、特許文献1にも記載されているように、広く利用されているものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−136833号公報
【0011】
従来は、ドラム状の引上げ回転体Bに代えて、図10に示す滑り台Eを利用する場合もあった。図10に示す滑り台Eは貝類付きロープ3が円滑に通過できるように表面Fを平滑面にすると共に、表面Fの幅方向両側面に貝類付きロープ3が表面Fから脱落(滑落)しないように側壁G(図11)を備えている。この滑り台Eの表面Fは貝類付きロープ3が海中に吊るされた鉛直姿勢から船内での水平姿勢に円滑に移行できるように、側面視曲線状に湾曲している。この表面Fの曲線形状と平滑面によって貝類付きロープ3は円滑に船内に引上げられるようにしてある。
【0012】
図10は、引込み回転体4と押し具7が水平面上で回転するように設置された例を示している。この設置姿勢は図9(a)とは異なるが、その作用は図9(a)と同じであり、図9(a)において引込み回転体4と押し具7を水平姿勢に設置してもよく、あるいは、図10の引込み回転体4と押し具7を鉛直姿勢に設置(図11)してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
貝類1を係止して海中に吊下げられた貝類吊下げロープ2(通常6〜8mm径程度)の場合、その長さと取付ける貝類1の枚数にもよるが、例えば、海中に投入後半年程度で貝類1や貝類付きロープ3にザラボヤなどが大量に付着して、見かけ上100〜200mmの径となり、その重量も1本当たり30〜50kgとなることがある。このように重くなった貝類付きロープ3を引上げると、貝類付きロープ3が引上げ回転体B(図9(a))の胴体外周面でスリップしてスムースに引上げられないとか、貝類1が引上げ回転体Bと擦れてロープ2から落下するといった問題があった。図10、図11の滑り台Eは貝類付きロープ3を引上げる力がないため、引込み回転体4だけで貝類付きロープ3を引上げることとなり、スムースに貝類付きロープ3を引上げにくいという問題があった。
【0014】
本願発明の課題は、養殖・天然物、特に、昆布等のように長い海産物や、雑物が大量に付着している貝類付きロープを海中から引上げるときに、それらがスリップせずに確実にかつ容易に引上げられる貝類取外し装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明の貝類取外し装置は、貝類を係止した貝類係止具が取付けられた貝類付きロープを海中や水中(以下これらをまとめて「海水」という)から引上げて、貝類除去具により貝類付きロープから貝類を取外す貝類取外し装置において、貝類除去具よりも海側に配置固定された強制回転式の回転コンベアと、回転コンベアで引上げた貝類付きロープから貝類を取外す貝類除去具と、貝類が取外されたロープを引く引込み装置を備えたものであり、前記回転コンベアは先端側が海に向けて斜め下向きとしたものである。
【0016】
本願発明の貝類取外し装置は、回転コンベアの表面に滑り止め突起と滑り止め空間の双方又はいずれか一方が設けられたものである。
【0017】
本願発明の貝類取外し装置は、回転コンベアの海側への下り傾斜角又は/及び船の外への突出長が調節可能なものである。
【0018】
本願発明の貝類取外し装置は、回転コンベアを船上に収容可能なものである。
【0019】
本願発明の貝類取外し装置は、回転コンベアと、貝類除去具と、引込み装置が船上に設置されたものである。
【発明の効果】
【0020】
本願発明の貝類取外し装置は次のような効果がある。
(1)回転コンベアの回転によって貝類付きロープを海中から容易且つ確実に引上げ可能であり、引上げ中の貝の脱落も減少する。
(2)回転コンベアの海側が、海に向けて斜め下向きであるため、海中(又は水中)からの引上げスムースになり、引上げ中の貝の脱落も減少する。
(3)回転コンベアは搬送長が、従来のドラム状の引上げ回転体に比べて長く、貝類付きロープとの接触長が長くなるため、従来に比べて貝類付きロープと回転コンベアの摩擦力が大きくなるので、貝類付きロープがスリップし難くなって円滑に引上げることができる。
(4)回転コンベアの海側への下り傾斜角度、下り長(船から海側への突出長)が可変であるため、作業し易い角度、長さに等に調節可能であり、引上げ作業がし易くなる。
(5)回転コンベアを船上に収容可能であるため、船の移動時には船上に収容して船の外に突出しないようにすることができ、船の走行の邪魔にならない。
(6)回転コンベアの表面に、貝類が係止可能な滑り止め突起と滑り止め空間の双方、又はいずれか一方を設けているので、貝類付きロープが確実に係止されて確実に引上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本願発明の貝類取外し装置を船上に搭載した状態を示す側面図。
【図2】(a)は本願発明の貝類取外し装置を船上に搭載し、引込み回転体を水平姿勢で配置した状態を示す側面図、(b)は回転コンベアを船上に起立させた(収容した)状態の一例を示す説明図。
【図3】回転コンベアの無端搬送体を波状網とした例の斜視図。
【図4】(a)は波状網の平面図、(b)は波状網を構成する波板の波山、波谷とその連結状態を示す部分斜視図。
【図5】(a)は滑り止め突起と滑り止め凹部を備えたシートを無端搬送体に使用した一例を示す斜視図、(b)は(a)のシートの一例を説明する説明図。
【図6】(a)は滑り止め突起と滑り止め凹部を備えたシートを無端搬送体に使用した他例を示す斜視図、(b)は(a)のシートの一例を説明する説明図。
【図7】(a)は無端搬送体の表面にV字状の滑り止め突起を取付けた例を示す斜視図、(b)はV字状の滑り止め突起の斜視図。
【図8】(a)は無端搬送体の表面にL字状の滑り止め突起を取付けた例を示す斜視図、(b)はL字状の滑り止め突起の斜視図。
【図9】(a)は従来の貝類取外し装置を船上に搭載した状態を示す側面図、(b)は引込み回転体とロープ弾きを説明する詳細図。
【図10】従来の貝類取外し装置で滑り台を備えた例を示す側面図。
【図11】従来の貝類取外し装置で滑り台を備えた例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態)
本願発明の貝類取外し装置の実施形態を図1に基づいて説明する。この貝類取外し装置は耳吊り養殖された貝類1をロープ2から取外すものであり、船上に貝類取外し装置を搭載した場合について説明する。
【0023】
(全体概要)
図1は本願発明の貝類取外し装置を船上に搭載した状態を示す側面図である。この図に示すものは、海側から順に、回転コンベア10、貝類除去具5、引込み回転体4を備えている。貝類1は貝類係止具Kによってロープ2に取付けられた状態で海中に吊下げられて養殖され、貝類1が十分成長すると貝類付きロープ3は海中から引上げられる。このとき、貝類付きロープ3は回転コンベア10によって海中から引上げられ、さらにロープ2を引込み可能な引込み装置6によって船Aのデッキ内に引上げられる。貝類付きロープ3の貝類1は、回転コンベア10と引込み回転体4の間に設けられた貝類除去具5によって貝類付きロープ3から取外され、デッキ上に設置された収容カゴDに収容される。収容された貝類1は、洗浄され、大きさごとに選別されて出荷される。貝類除去具5の下方に、デッキ側に向けて下り傾斜の受体(例えばシート、網、板等)Cを配置して、貝類付きロープ3から落下した貝類1が一旦受け台Cで受けられ、その受け台Cの上を滑って収容カゴDに確実に収容されるようにしてある。
【0024】
(回転コンベア)
回転コンベア10は図1に示すように起点側(下方:海側)回転体10aと、終点側(上方:船側)回転体10bと、これら両回転体の外周に巻いて両回転体の外周を回転する無端搬送体10cとを備えている。この回転コンベア10は起点側回転体10aを海面に向けて下向き傾斜にして船Aに取付けられており、一例として船Aのカイシング11に支持材12によって取付けられている。支持材12は剛性のアームとして回転コンベア10を下向き傾斜に支持できるようにしてあり、その傾斜角度や起点側回転体10aの位置を上げたり下げたりすることができるようにしてある。
【0025】
図1では起点側回転体10aが海面よりも上方に位置しているが、起点側回転体10aを海中に配置することもできる。起点側回転体10aが海面に近づく(あるいは海中に深く潜る)ほど、無端搬送体10cの長さが長くなって、貝類付きロープ3と無端搬送体10cとの接触面積(長さ)が大きく(長く)なり、摩擦力が大きくなって貝類付きロープ3がスリップし難くなる。起点側回転体10aが海面から上方に離れるほど無端搬送体10cの長さが短くなって回転コンベア10が小型化する。起点側回転体10aの位置、すなわち無端搬送体10cの延長は、作業状況や経費などを考慮して適宜設計することができる。無端搬送体10cの長さが長くなる場合には、起点側回転体10a及び終点側回転体10bとは別に、両回転体の間に中間回転体(図示しない)を設けて無端搬送体10cの回転を補助することもできる。
【0026】
起点側回転体10aと終点側回転体10bの双方又は一方はモータなどの駆動装置による強制回転とし、一方を強制回転としたときは他方は自由回転とすることができる。無端搬送体10cは起点側回転体10aと終点側回転体10bを両端にしてこれらの外周を循環回転するものである。終点側回転体10bの回転方向は貝類付きロープ3を海中から引上げる方向、つまり図では時計回りに回転するものであるが、貝類付きロープ3が引込み回転体4に絡まるなど不測の事態に備えて、必要時には反転(図では反時計回り)可能とするのが望ましい。
【0027】
回転コンベア10は起点側回転体10a、終点側回転体10bの各回転体をそれぞれスプロケットとし、これらの外周を回転する無端搬送体10cをチェーンベルトとし、それに金網等を張ったチェーンコンベアとすることもできる。スプロケットとした場合はチェーンベルトを掛けずに、無端搬送体10cに後に説明する波状網のベルトを使用し、その波状網の空間をスプロケットに掛けて、スプロケットの回転により波状網が回転するようにすることもできる。前記回転体10a、10bの夫々をローラとし、それにベルトコンベアを巻回することもできる。
【0028】
起点側回転体10aは、アーム13によって回転可能に支持されている。このアーム13は一端が起点側回転体10aの回転軸又は回転軸受けに取付けられ、他端が終点側回転体10bの回転軸又は回転軸受けに取付けられて、起点側回転体10aと終点側回転体10bの両外側(図1の手前側と奥側)に設置されている。アーム13は起点側回転体10aを支持できればどちらか一方の側面にのみ(図1の手前側か奥側)設置しても構わない。
【0029】
アーム13は終点側回転体10bの回りに回転可能に取付けられ、図2(b)のように回転コンベア10が終点側回転体10bの軸10dを回転軸として回転することが可能で、引上げ作業を行わないときは回転コンベア10を略鉛直姿勢となるまで回転(この場合時計回り)させて船内に収納することもできる。
【0030】
(無端搬送体)
図1の無端搬送体10cは略への字状に曲げてあるが、直線状にしてもよい。貝類付きロープ3が海中に吊るされた鉛直姿勢から船内での水平姿勢に円滑に移行できるように、図1に示すような曲線形状で回転させることもできる。無端搬送体10cを曲線形状で回転させると、直線形の場合より無端搬送体10cの延長が長くなり、貝類付きロープ3と無端搬送体10cとの摩擦力が向上し貝類付きロープ3がスリップし難くなるという効果も生じる。
【0031】
無端搬送体10cを曲線形状で回転させる場合、海側(図では左側)における無端搬送体10cの回転方向を貝類付きロープ3の鉛直姿勢に近づける目的で、図1のように下側に折れる曲線形状とする。具体的には、無端搬送体10cは起点側回転体10aと終点側回転体10bの間を往復するが、曲線形状で回転させた場合、往路(便宜上、「上側面」という。)と復路(便宜上、「下側面」という。)では、曲率(曲線半径rの逆数1/rで曲がり具合をあらわすもの)が異なり、上側面の曲率を下側面の曲率よりも小さくする(緩いカーブとする)と、図1のように側に折れる曲線形状となる。換言すれば、上側面をいわゆる外カーブとし、下側面を内カーブとすれば図1のようになる。
【0032】
無端搬送体10cの下側面は重力によって垂下しようとするため、無端搬送体10cがたわみ張力が失われた状態で回転することになる。これを防止するため、図1に示す支持体14を設ける。この支持体14は無端搬送体10cの下側面の曲率に合わせた形状となっており、無端搬送体10cの下側面の下方に配置され、例えば、船Aのカイシング11の上で支持材(図示しない)によって固定される。なお、支持体14と無端搬送体10cの下側面が接触するように支持体14を配置してもよいが、支持体14の設置目的は下側面の垂下によるたわみを防止するためであるため、支持体14と無端搬送体10cの間に若干の隙間を設けて支持体14を配置してもよい。支持体14は樹脂製、金属製など種々の材料を用いて形成することができるが、無端搬送体10cの下側面の弛み防止を目的とするものであるため、剛性のものが適する。
【0033】
(無端搬送体の滑り止め突起等)
無端搬送体10cの表面には滑り止め突起、滑り止め空間を設けるのが良く、それらの一例として図3に示すものは、回転コンベア10の無端搬送体10cを波状網15とし、その波状網15が起点側回転体10aと終点側回転体10bの外周にスリップしないように巻いてある。この波状網15は図4(b)に示すような細幅板をコの字形に曲げて波山と波谷を有する波板16にし、繰り返し形成された波山と波谷を滑り止め突起18a、山の内側部分と谷の内側部分を滑り止め空間18bとし、多数本の波板16を図4(a)のように波山、波谷を同じ向きに揃えて多数列並べ、連結軸19で回転自在に連結されて網状にして、図3に示すように回転コンベア10の曲面部(回転部)に対しても追随して屈曲可能となる。波状網15を構成する波板16及び連結軸19は金属製や樹脂製等とすることができるが、金属製とする場合は海中使用するため防錆加工を施すかステンレス製とすることが望ましい。前記滑り止め突起18aと滑り止め空間18bの形状はコの字形に限らず半円形、三角形、五角形といった形状にすることができる。波状網15は板材のほか棒材やパイプ材、特に角棒や角パイプで成形することもできる。
【0034】
波状網15は、回転コンベア10の無端搬送体10cがベルトコンベアの場合はそのベルトの表面に取付けることもできるし、回転コンベア10がチェーンコンベアの場合にはチェーンベルトに取付けて、前記滑り止め空間18bがスプロケットに噛み合うようにすることもできる。
【0035】
従来のドラム式の引上げ回転体B(図9(a))では、ザラボヤなどの雑物が大量に付着した貝類付きロープ3の場合は、引上げ回転体Bの胴体でスリップして貝類付きロープ3を引上げることができない場合があったが、本願発明の回転コンベア10は例えば図3に示すように波山と波谷による多数の滑り止め突起18aと、波山の内側と波谷の内側の滑り止め空間18bを備えた波状網15が使用されて滑り止め構造にしてあるので、貝類付きロープ3の貝類1やロープ2に付着している雑物等が、滑り止め空間18b内に入って(落ち込んで)貝類付きロープ3が滑り止め突起18aに係止し易くなり、確実に引上げ可能となる。
【0036】
無端搬送体10cの表面に設ける滑り止め突起、滑り止め空間の他例として図5(a)に示すものは、無端搬送体10cの表面に図5(b)に示すような凸状滑り止め突起20を千鳥配列で固定して凸状滑り止め突起20の間に凸間滑り止め空間21を設けてある。凸状滑り止め突起20はビス、釘、接着剤等の止め具で無端搬送体10cの表面に固定することができる。この凸状滑り止め空間21も貝類、雑物等が落ち込んで、貝付き吊下げロープが凸状滑り止め突起20に係止し易くするためのものである。
【0037】
凸状滑り止め突起20及び凸状滑り止め空間21は、図5(b)に示すようにシートや薄板22の上に形成することもできる。また、図6(b)に示すように、多数の凸状滑り止め突起20と凸状滑り止め空間21が連続して設けられたシートや薄板22を、ベルトやチェーンベルトに取付けて図6(a)のように無端搬送体10cを形成することもできる。
【0038】
無端搬送体10cの表面に設ける滑り止め突起、滑り止め空間の他例として図7(a)に示すものは、図7(b)のようにV形滑り止め突起23を無端搬送体10cの表面に千鳥配列で取付け、それらV形滑り止め突起23の間にV形滑り止め空間24を設けたものである。この場合、V形滑り止め突起23の開口側23aを回転体の回転方向先方(図7(a)の矢印Y方向)に向けて取付けると、貝類付きロープ3がV形滑り止め突起23に係止し易くなる。V形滑り止め突起23は、図7(b)に示すように、裾に取付け片23bを備えており、この取付け片23bをビス、くぎ、接着剤などの固定具で無端搬送体10cの表面に固定することができる。V形滑り止め突起23は図7(a)とは逆向きに取付けてもよい。
【0039】
無端搬送体10cの表面に設ける滑り止め突起、滑り止め空間の他例として図8(a)に示すものは、図8(b)のようにL形滑り止め突起25を無端搬送体10cの表面に間隔を開けて取付け、それらL形滑り止め突起25の間にL形滑り止め空間26を設けたものである。L形滑り止め突起25は、図8(b)に示すように、裾に取付け片25aを備えており、この取付け片25aをビス、くぎ、接着剤などの固定具で無端搬送体10cの表面に固定することができる。
【0040】
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(貝類除去ストッパ)
図1の回転コンベア10の終点側回転体10bよりも下流側(貝類付きロープ3の移動方向の下流側:図では右側)には、貝類除去具5が配置されている。貝類除去具5は閉合しない(一部開口の)リング状であり、このリング状の内側に設けられた通路5aは、ロープ2は通過できる大きさの内径であるが、貝類1は通過できない大きさの内径となっている。そのため、貝類1を付けた貝類付きロープ3がこの貝類除去具5を通過する際、貝類1にとっては通路5aが妨げとなって(引っ掛かって)これより下流側には進めないが、ロープ2は引き続き下流側へ移動するため、貝類1はロープ2に差込んである貝類係止具Kから引外されてロープ2から離脱する。貝類1は場合によっては貝類係止具Kとともにロープ2から離脱する。
【0041】
貝類除去具5は図1に示すようにU字状であっても、他の形状であってもよい。U字状の貝類除去具5にも通路5aがあり、この通路5aの幅はロープ2が通過できる広さであるが、貝類1は通過できない広さとなっている。これによって、貝類除去具5と同様に貝類1を貝類付きロープ3から離脱させることができる。
【0042】
(引込み回転体)
図1に示すように貝類除去具5よりも下流(船上)側には、貝類1が取外されたロープ2を引込み可能な引込み装置6が配置されている。図1の引込み装置6は引込み回転体4と押し具7を備えているが、押し具7はない場合もある。引込み装置6はロープ2を引いて貝類1を貝類除去具5で貝類付きロープ3から外し、貝類1の外れた空のロープ2を下流方向、即ち、船Aのデッキ上に引込むものである。引込み回転体4は図9(b)に示すように、二枚の円盤4a、4bが対向配置されて連結軸8で連結されて、二枚の円盤4a、4b間にロープ2をガイドする引込み通路4cが形成されている。引込み通路4cは二枚の円盤4a、4bの中心部(連結軸8側)が狭く、外周側が広くなっている。この引込み回転体4のみではロープ2を引込むことができないため、ロープ2を確実に引込みできるようにするため、引込み回転体4の引込み通路4cに対向させて押し具7を設けて、引込み通路4c内に引込まれるロープ2を引込み回転体4と押し具7で挟むことができるようにしてある。この場合、図1ではロープ押し具7は貝類付きロープ3を船上へ引込むように回転(時計回りに回転)し、押し具7は反時計回りに回転するようにしてある。前記貝類除去具5(図1)はこの引込み回転体4の上に設置することもできる。引込み装置6の引込み回転体4、押し具7の形状、構造等は図1に示す以外のものであってもよい。
【0043】
押し具7の下方にはロープ2が引込み回転体4に食い込むのを防止するロープ弾き9が設けられている。このロープ弾き9は引込み回転体4と押し具7に挟まれて引込まれる貝類付きロープ3が引込み回転体4に食い込み過ぎないように弾くものである。引込み回転体4の引込み通路4は図9(b)のように二枚の円盤4a、4bの外周側から中心側に向けて狭くなっているため、引込み通路4c内に引き込まれるロープ2は引込み通路4cの中心側に食い込む。深く食い込むとロープ2が動きにくくなって引き込まれなくなることがあるため、ロープ弾き9は過度の食い込みを防止して適度の押し込みにして、ロープ2が連続してスムースに引込まれるようにするためのものである。ロープ弾き9は図9(b)に示すように先端部9aを先細りの楔状にして、その先端部9aを引込み通路4c内に配置してある。このような構成とすることにより図9(b)に示すように、引込み通路4cの上部ではロープ2が引込み通路4c内を通過しているが、引込み通路4cの下部であって本来であればロープ2が通過する位置にロープ弾き9が配置されているので、ロープ2は引込み回転体4の引込み通路4cの中心側に入り込むことができず、連結軸8に巻き付くことなく、引込み通路4cの外に送り出される。
【0044】
引込み回転体4は図2に示すように水平面上で回転するように設置することもできる。この場合は押し具7も同様に水平面上で回転するように配置し、ロープ弾き9は押し具7よりも下流側(ロープ2の移動方向先方:図2では右側)に設置される。
【0045】
(使用例)
1.本願発明の貝類取外し装置を船Aに搭載して固定する。
2.回転コンベア10を図2(b)のように、略鉛直姿勢となるまで回転させて船内に収納した状態で、船Aを海上の目的地まで走行させる。
3.回転コンベア10を所定角度となるまで終点側回転体10b回りに回転させて、起点側回転体10aを海上近くに、又は海中にセットする。
4.貝類付きロープ3を手作業で海中から引上げて回転コンベア10の外周に掛ける。
5.モータなどの駆動装置によって終点側回転体10bを強制回転させて、無端搬送体10cを回転させる。
6.貝類付きロープ3を無端搬送体10cによって順次引き上げ、ロープ2を引込み回転体4で引込んで、貝類付きロープ3を貝類除去具5へ送り込む(引込む)。
7.貝類除去具5によって貝類1が貝類付きロープ3から取外され、船Aのデッキ上に設置された収容カゴDに収容される。
8.収容された貝類1は、洗浄され、大きさごとに選別される。
9.貝類の取外し作業が終わると、回転コンベア10を図2(b)のように、略鉛直姿勢に戻し、船内に収納させた状態で、海上を走行して帰港する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明の貝類取外し装置は、海上で吊下げ養殖する貝類を船上に引上げてそのまま出荷する場合に限らず、船上或いは陸で洗浄する場合や海岸など海に面した場所、湖上や河上で作業する場合などにも利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 貝類
2 ロープ
3 貝類付きロープ
4 引込み回転体
4a、4b 円盤
4c 引込み通路
5 貝類除去具
5a (貝類除去具の)通路
6 引込み装置
7 押し具
8 連結軸
9 ロープ弾き
9a (ロープ弾きの)先端部
10 回転コンベア
10a (回転コンベアの)起点側回転体
10b (回転コンベアの)終点側回転体
10c (回転コンベアの)無端搬送体
10d (終点側回転体の)軸
11 カイシング
12 支持材
13 アーム
14 支持体
15 波状網
16 波板
18a 滑り止め突起
18b 滑り止め空間
19 連結軸
20 凸状滑り止め突起
21 凸状滑り止め空間
22 シートや薄板
23 V形滑り止め突起
23a (V形滑り止め突起の)開口側
23b (V形滑り止め突起の)取付け片
24 V形滑り止め空間
25 L形滑り止め突起
25a (L形滑り止め突起の)取付け片
26 L形滑り止め空間
A 船
B 引上げ回転体
C 受け具
D 収容カゴ
E 滑り台
F (滑り台の)表面
G (滑り台の)側壁
K 貝類係止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝類付きロープを海中又は水中から引上げて、貝類除去具により貝類付きロープから貝類を取外す貝類取外し装置において、貝類除去具よりも海側に配置固定された強制回転式の回転コンベアと、回転コンベアで引上げた貝類付きロープから貝類を取外す貝類除去具と、貝類が取外されたロープを引く引込み装置を備え、前記回転コンベアは先端側が海に向けて斜め下向きであることを特徴とする貝類取外し装置。
【請求項2】
請求項1記載の貝類取外し装置において、回転コンベアの表面に滑り止め突起と滑り止め空間の双方又はいずれか一方が設けられたことを特徴とする貝類取外し装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の貝類取外し装置において、回転コンベアの海側への下り傾斜角又は/及び船の外への突出長を調節可能であることを特徴とする貝類取外し装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の貝類取外し装置において、回転コンベアが船上に収容可能であることを特徴とする貝類取外し装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の貝類取外し装置において、回転コンベアと、貝類除去具と、引込み装置が船上に設置されたことを特徴とする貝類取外し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−229442(P2011−229442A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102022(P2010−102022)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(398000288)株式会社むつ家電特機 (17)
【Fターム(参考)】