説明

貨物搬送車両

【課題】航空機の搬出入ゲートにプラットホームの先端部を近付けた位置に停車すれば、停車位置の変更を要することなく、プラットホーム上における左右一対のガイドレールの位置や離間寸法を微調整することによって貨物の搬送処理をスムーズに行うことが可能な汎用性に優れた貨物搬送車両を提供する。
【解決手段】自走可能な車両と、車両に設けられ且つ貨物Cを移動させる前部プラットホーム3、後部プラットホームとを備え、車両の前方に駐機されている航空機の胴体Bに設けられた搬出入用ドアの開口ゲートDを介して機体内の貨物室Rとの間で貨物Cの搬出入を行う貨物搬送車両において、前部プラットホーム3上において前後方向Xに延び、相互に接離する方向にスライド移動可能且つ水平面内で首振り動作可能な左右一対の可動ガイドレール3Gを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空港などで使用され、航空機内の貨物室との間で貨物を搬出入可能な貨物搬送車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、航空機と貨物トレーラとの間においてコンテナやパレットなどの航空貨物(以下では、単に「貨物」と称する場合がある)の搬出入を行う場合に、専用の貨物搬送車両が使用されている。貨物搬送車両は、自走可能な車両と、車両に設けられて貨物を所定方向に移動させるプラットホームとを備えており、機体の胴部に設けられた搬出入用ドア(後部搬出入用ドアや前部搬出入用ドア)にプラットホームの先端部(貨物搬出入端)を接近させた位置に停車した状態で、搬出入用ドアによって開閉可能な開口ゲートを通じて、プラットホーム上と機体内の貨物室(貨物積載室)との間で貨物を搬出入するものである。
【0003】
このような貨物搬送車両のプラットホームには、プラットホーム上を移動する貨物の落下を防止するとともに、貨物を搬送方向に適切に案内するために、貨物の搬送方向に沿って延伸する左右一対のガイドレールが設けられている。本出願人は、搬出入用ドアによって開閉可能な開口ゲートの開口幅や貨物の幅寸法に応じてガイドレール同士を相互に近付けたり、離反させる方向に平行にスライド移動させることで、ガイドレール同士の間隔を適宜調整可能な構成を採用した貨物搬送車両を案出し、特許出願している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−269440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、左右一対のガイドレールを相互に平行移動させる機能を備えた貨物搬送車両であっても、駐機中の航空機に対して、前後方向に長尺なプラットホームの長手方向が直角となる位置に正確に停車(横付け)させることができなければ、貨物の搬送をスムーズに行うことができない場合があるため、高い運転技術(操作技術)が要求され、航空機に対してプラットホームの長手方向が直角ではなく斜めの姿勢となった状態で貨物搬送車両を停車させた場合には、停車位置を適切な位置に変更する操作を再度行う必要があり、貨物の搬送処理に要する時間の延長化、ひいては貨物搬送処理効率の低下を招来し得る。
【0006】
また、近年就航している航空機や近い将来に就航が予定されている航空機の多くは、エネルギー効率向上などの観点から軽量化や貨物室の省スペース化が図られており、それに伴って、機種毎に搬出入用ドアの開口ゲートに対する貨物室の搬出入ゲートの相対位置が異なっていたり、搬出入ゲートの開口幅自体が所定規格の貨物の通過を許容する最小限の寸法に設定されるようになってきている。したがって、たとえ駐機中の航空機の開口ゲートにプラットホームの先端部を近付け、且つプラットホームの長手方向を航空機に対して直角となる位置に貨物搬送車両を停車させた場合であっても、開口ゲートに対する貨物室の搬出入ゲートの相対位置や搬出入ゲートの開口幅に応じて、左右一対のガイドレール同士の相対位置を微調整しなければならない場面が多くなることが想定される。そして、左右一対のガイドレールをスライド移動させるという機能のみでは機種毎の仕様に好適に対応することができず、結局、貨物搬送車両の停車位置を変更する操作が必要となり、この停車位置の変更操作に伴う貨物搬送処理の効率低下を招来し得ることになる。
【0007】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、機種毎に異なる開口ゲートに対する貨物室の搬出入ゲートの相対位置や搬出入ゲートの開口幅に応じて、左右一対のガイドレールの位置や離間寸法を微調整することができるとともに、航空機の搬出入ゲートにプラットホームの先端部を近付けた位置に停車しさえすれば、停車位置の変更を要することなく、プラットホーム上における左右一対のガイドレールの位置や離間寸法を微調整することによって貨物の搬送処理をスムーズに行うことが可能な汎用性に優れた貨物搬送車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、自走可能な車両と、車両に設けられ且つ貨物を移動させるプラットホームとを備え、車両の前方に駐機されている航空機の胴体に設けられた搬出入用ドアの開口ゲートを介して機体内の貨物室との間で貨物の搬出入を行う貨物搬送車両に関するものである。そして、本発明の貨物搬送車両は、車両の前後方向に対し長尺なプラットホーム上において前後方向に延び、相互に接離する方向に移動可能且つ水平面内で首振り動作可能な左右一対の可動ガイドレールを備えていることを特徴としている。
【0009】
ここで、左右一対の可動ガイドレールは、相互に接離する方向への移動(以下、「接離移動」と称する場合がある)や水平面内での首振り動作をそれぞれ別々に行うものであってもよいし、接離移動や首振り動作を相互に同期して行うものであってもよい。
【0010】
このようなものであれば、左右一対の可動ガイドレールをプラットホーム上で相互に接離する方向に移動可能に設定しているため、機体との間で搬送される貨物の搬送通路幅を規定する可動ガイドレール同士の離間寸法を微調整したり、プラットホーム上における可動ガイドレールの位置を微調整することができることに加えて、左右一対の可動ガイドレールを水平面内で首振り動作可能に設定しているため、プラットホーム上における可動ガイドレールの平面視における傾斜角度も微調整することができることから、貨物の搬送先または搬送元である貨物室のゲートの開口幅が貨物の通過を許容する最小限の大きさに設定されている場合であっても、貨物搬送路の搬出入端として機能する可動ガイドレールの前端部の位置をそのゲートの開口両側縁部の位置に応じて高精度に調節することによって、機体の貨物室内との間で貨物を搬送する作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明の貨物搬送車両であれば、機種毎に機体の胴体に設けられた搬出入用ドアの開口ゲートに対する貨物室の搬出入ゲートの相対位置が異なっている実情にも好適に対応することができ、プラットホームの前端部を機体の搬出入用ドア(開口ゲート)に接近させる位置に貨物搬送車両を停車しさえすれば、あとは可動ガイドレールの位置や首振り角度を貨物室の搬出入ゲートの幅や位置に応じて適宜調節することによって、搬出入ゲートを通じて貨物を貨物室内にスムーズに搬送することができる。
【0012】
さらに、本発明の貨物搬送車両であれば、可動ガイドレールを首振り動作可能に構成しているため、例えば駐機中の航空機に対してプラットホームの長手方向が直角となる位置に正確に停車させることができない場合であっても、停車位置を変更することなく、そのままの停車位置で可動ガイドレールを搬出入ゲートの位置に応じて首振り動作させて可動ガイドレールの長手方向をプラットホームの長手方向に対して適宜の角度に傾斜させることで、これら可動ガイドレールを介した貨物の搬送処理をスムーズに行うことができる。したがって、本発明の貨物搬送車両であれば、駐機中の航空機に対してプラットホームの長手方向が直角となる位置に車両を例えば数センチ単位で正確に停車させるというような高い運転技術(操作技術)が要求されることはなく、航空機に対してプラットホームの長手方向が直角ではなく、斜めの姿勢となった状態で貨物搬送車両を停車させた場合であっても、停車位置を適切な位置に変更する操作が不要であり、この停車位置の変更操作に伴う貨物の搬送処理効率の低下を防止・抑制することができる。
【0013】
また、本発明の貨物搬送車両は、車両の前部に設けられ且つプラットホームの一部として機能する前部プラットホームと、車両の後部に設けられ且つプラットホームの一部として機能する後部プラットホームとを備え、何れのプラットホームにもそれぞれ左右一対の可動ガイドレールを設ける態様も含むものであるが、これら前部プラットホーム及び後部プラットホームのうち相対的に貨物の受け渡し先に近いプラットホームである前部プラットホームに設けたガイドレールの位置や首振り角度を、貨物の受け渡し先の開口幅や位置に合わせて調整すれば十分であるという事情に着目すれば、貨物の搬出入処理時に機体に接近する前部プラットホームにのみ可動ガイドレールを設け、後部プラットホーム上のガイドレールは前後方向に延びる左右一対の固定ガイドレールに設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラットホーム上に設けた左右一対の可動ガイドレールを、相互に接離動作可能に構成するとともに、水平面内で首振り動作可能に構成しているため、機種毎に異なる開口ゲートに対する貨物室の搬出入ゲートの相対位置や搬出入ゲートの開口幅に応じて、可動ガイドレール同士の離間寸法や可動ガイドレールの旋回角度を微調整することができ、貨物室との間で貨物の搭載や荷卸しを正確且つスムーズに行うことが可能になる。また、本発明によれば、航空機の搬出入ゲートにプラットホームの先端部を近付けた位置に停車しさえすれば、停車位置の変更操作を要することなく、プラットホーム上における左右一対のガイドレール同士の離間寸法や旋回角度を微調整することによって貨物の搬送処理をスムーズに行うことができ、貨物搬送処理に要する時間の短縮化を図ることができ、汎用性及び実用性に優れた貨物搬送車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る貨物搬送車両の側面模式図。
【図2】同実施形態に係る貨物搬送車両の平面模式図。
【図3】同実施形態に係る貨物搬送車両の可動ガイドレールの動作説明図。
【図4】同実施形態に係る貨物搬送車両の可動ガイドレールの動作説明図。
【図5】同実施形態に係る貨物搬送車両の可動ガイドレールの動作説明図。
【図6】同実施形態に係る貨物搬送車両の可動ガイドレールの動作説明図。
【図7】同実施形態に係る貨物搬送車両の可動ガイドレールの動作説明図。
【図8】同実施形態に係る貨物搬送車両の一変形例を図3に対応させて示す図。
【図9】同作用説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る貨物搬送車両1は、図1及び図2に示すように、自走可能な車両2と、車両2の前部に設けた前部プラットホーム3と、車両2の後部に設けた後部プラットホーム4とを備え、前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4によって、駐機中の機体との間で貨物C(図2に想像線で示す)を搬出入可能に構成したものである。
【0018】
本実施形態では、車両2として、前輪を有する前部車両21と、後輪を有する後部車両22とを備えたものを適用し、前部車両21の上部に前部プラットホーム3を配置するとともに、後部車両22の上部に後部プラットホーム4を配置している。以下の説明では、車両2の前後方向X(車両2の進退方向と同じ方向)に直交する方向を「幅方向W」とする。
【0019】
後部プラットホーム4は、車両2の幅寸法とほぼ同じ幅寸法を有し、車両2の後部車両22との間に介在させたリフトシザースリンク機構5の伸縮(起伏)動作に伴って昇降動作可能なものである。なお、図1では、降下位置にある後部プラットホーム4を実線で示し、上昇位置にある後部プラットホーム4を想像線で示している。この後部プラットホーム4は、縦フレーム及び横フレームを一体的に組み付けた後部フレーム構造体41を主体としてなり、この後部フレーム構造体41の平面視外縁形状が後部プラットホーム4の平面視外縁形状とほぼ一致する。後部フレーム構造体41には、軸方向を幅方向Wに一致させた後部搬送ローラ41aを前後方向Xに所定ピッチで複数配置し、後部搬送ローラ41a上の貨物Cを前後方向Xに円滑に移動させることができるように構成している。また、本実施形態の貨物搬送車両1は、後部プラットホーム4の上面、具体的には後部フレーム構造体41の上面に左右一対の固定ガイドレール4Gを設けている。

【0020】
固定ガイドレール4Gは、後部プラットホーム4上において移動する貨物Cの落下を防止するとともに、後部プラットホーム4上での貨物Cの移動を案内するためのものである。各固定ガイドレール4Gは、後部プラットホーム4の前後方向X(奥行き方向であり、車両2の進退方向と一致する方向)に延び、図2に示すように、例えば後部プラットホーム4の両側縁部近傍の位置に固定されている。
【0021】
前部プラットホーム3は、車両2の幅寸法とほぼ同じ幅寸法を有し、車両2の前部車両21との間に介在させたリフトシザースリンク機構5の伸縮(起伏)動作に伴って昇降動作可能なものである。なお、図1では、降下位置にある前部プラットホーム3を実線で示し、上昇位置にある前部プラットホーム3を想像線で示している。この前部プラットホーム3は、縦フレーム及び横フレームを一体的に組み付けた前部フレーム構造体31と運転席32とを主体としてなり、これら前部フレーム構造体31及び運転席32の平面視外縁形状が前部プラットホーム3の平面視外縁形状とほぼ一致する。前部フレーム構造体31には、軸方向を幅方向Wに一致させた前部搬送ローラ31aを前後方向Xに所定ピッチで複数配置し、前部搬送ローラ31a上の貨物Cを前後方向Xに円滑に移動させることができるように構成している。
【0022】
このような搬送ローラ(前部搬送ローラ31a、後部搬送ローラ41a)を備えた各プラットホーム(前部プラットホーム3、後部プラットホーム4)の上面部は貨物Cを移動させるための搬送路として機能する。
【0023】
そして、本実施形態の貨物搬送車両1は、前部プラットホーム3の上面、具体的には前部フレーム構造体31の上面に左右一対の可動ガイドレール3Gを設けている。可動ガイドレール3Gは、前部プラットホーム3上において移動する貨物Cの落下を防止するとともに、前部プラットホーム3上での貨物Cの移動を案内するためのものである。各可動ガイドレール3Gは、車両2の前後方向Xに延び、図2に示すように、例えば前部フレーム構造体31の側縁部近傍に位置付けられる最外位置(P)と、前部フレーム構造体31の幅方向W中央部近傍に位置付けられる最内位置(Q)との間でスライド移動可能に構成されている。なお、図2では最外位置(P)に位置付けた一方の可動ガイドレール3Gと、最内位置(Q)に位置付けた他方の可動ガイドレール3Gをそれぞれ実線で示し、最内位置(Q)に位置付けた一方の可動ガイドレール3Gと、最外位置(P)に位置付けた他方の可動ガイドレール3Gをそれぞれ想像線で示している。
【0024】
本実施形態では、例えば各可動ガイドレール3Gの前端部側の所定部分同士を跨ぐ位置に前方スライドバー機構(固定レールと固定レールに沿って往復動可能なスライダとを備えた機構)を配置するとともに、各可動ガイドレール3Gの後端部側の所定部分同士を跨ぐ位置にも後方スライドバー機構を配置し、これらスライドバー機構に関連付けて設けた送りねじ機構を油圧モータなどの駆動源で駆動させることによって、各スライドバー機構を相互に同期させながら作動させて、可動ガイドレール3Gを幅方向Wにスライド移動させることができる。なお、例えば油圧シリンダ(シリンダ、アクチュエータ)のロッドの突没動作に連動して可動ガイドレール3Gを互いに接近・離隔する方向(幅方向W)にスライドするように構成することもできる。
【0025】
さらに、本実施形態の貨物搬送車両1では、各可動ガイドレール3Gが、水平面内において所定角度範囲内で旋回動作(首振り動作)できるように構成している。本実施形態では、各可動ガイドレール3Gの後端部(後部プラットホーム4側の端部)を中心(基点)に可動ガイドレール3G全体を旋回することで、各可動ガイドレール3Gを前後方向Xに対して所望の角度に傾斜させた姿勢に設定することができるように構成している。なお、左右一対の可動ガイドレール3Gは、常に平行な関係を維持した状態で同期して旋回動作させるように設定してもよいし、別々に旋回動作可能に設定することもできる。本実施形態では、前者の構成(同期して相互に平行な関係を維持したまた旋回移動させる構成)を採用している。
【0026】
運転席32には、車両2を運転するための操作部(ハンドルHやアクセル、ブレーキなど)に加えて、各プラットホーム3,4を昇降動作させるための操作部や可動ガイドレール3Gの位置や旋回角度を変更する操作部(ボタンやレバーなど)も設けている。
【0027】
車両2の前部や後部には、図1に示すように、高さ方向に突没動作可能な接地部23を設けており、接地部23を地面に接触させることにより、貨物Cの搬出入時に車両2を安定した状態で支持するようになっている。
【0028】
さらに、本実施形態に係る貨物搬送車両1は、前部プラットホーム3に、貨物Cを下方から持ち上げて貨物Cを前部フレーム構造体31及び前部搬送ローラ31aから離間した状態で支持可能なリフトアップ位置と、貨物Cを前部フレーム構造体31及び前部搬送ローラ31aに優先して接触させた状態にする非リフトアップ位置との間で移動可能なリフトアップ装置6を設けている。リフトアップ装置6は、車両2の高さ方向に柱状に延びる昇降可能な支持部と、この支持部の上端部に幅方向Wに回転自在に設けたリフトアップ用ローラとを備え、支持部の昇降動作に伴って、リフトアップ用ローラを前部搬送ローラ31aよりも上方に位置付けたリフトアップ位置と、リフトアップ用ローラを前部搬送ローラ31aよりも下方に位置付けた非リフトアップ位置との間で突没動作可能に構成されている。このようなリフトアップ装置6は、前部フレーム構造体31のうち前部搬送ローラ31aと干渉しない領域において、前後方向X及び幅方向Wに所定ピッチで複数設けることができる。
【0029】
次に、本実施形態における貨物搬送車両1による航空貨物C(以下、貨物Cと称する)の搬送方法について説明する。
【0030】
ここでは、貨物トレーラ(ドーリー車)から搬送されてきた貨物Cを航空機に搬入する場合について説明する。なお、航空機から貨物Cを搬出する場合には、車両2の停車後は以下と逆の手順によるものであるため、その説明は省略する。
【0031】
まず、駐機している航空機に対して胴体Bに設けられた搬出入用ドアに前部プラットホーム3の先端部を接近させるようにして貨物搬送車両1を機体の側方から近付け、所定の位置に停車する。なお、車両2の走行中は、前部プラットホーム3及び後部プラットホーム4をそれぞれ車両2の前部車両21及び後部車両22に近接させた降下位置に設定している。停車後に、接地部23を地面に密着させて、車両2を安定した状態で停車位置に固定する。
【0032】
次いで、降下位置にある前部プラットホーム3を上昇させて、前部プラットホーム3の床面と、機体内の貨物室Rに通じる貨物搬送路の床面とを面一にする。ここで、貨物室Rの搬出入ゲートR1は、搬出入用ドアの開口ゲートDよりも機体の内側に設けられており、搬出入ゲートR1と開口ゲートDとの間の通路が貨物搬送路として機能する。また、なお、機体の胴体Bに設けられた搬出入用ドアは、降下位置にある前部プラットホーム3を上昇させる時点よりも前の時点で開放され、開口ゲートDが外部に露出した状態となっている。
【0033】
引き続いて、停車している貨物搬送車両1の後方に、貨物Cを搭載した貨物トレーラを止めて、貨物トレーラ上の貨物Cを後部プラットホーム4に移載する。この際、後部プラットホーム4は降下位置にある。そして、後部プラットホーム4に設けた後部搬送ローラ41aを回転させて貨物Cを前方に向かって所定距離移動させた時点で、後部搬送ローラ41aの回転を一旦停止し、降下位置にある後部プラットホーム4を上昇させて、後部プラットホーム4と前部プラットホーム3とを面一に設定する。
【0034】
次いで、後部搬送ローラ41a及び前部搬送ローラ31aを回転させて、後部プラットホーム4上の貨物Cを前部プラットホーム3に向けて移動させる。そして、後部プラットホーム4から前部プラットホーム3に移載された貨物Cが非リフトアップ位置にある複数のリフトアップ装置6の上方に到達した時点で、後部搬送ローラ41a及び前部搬送ローラ31aの回転を停止し、貨物Cの搬送処理を一旦停止する。次に、リフトアップ装置6を非リフトアップ位置からリフトアップ位置に切り替える(上昇させる)と、貨物Cは前部プラットホーム3の前部搬送ローラ31aから離間し、リフトアップ装置6にのみ接触した(支持された)状態になる。
【0035】
この状態で例えば最外位置(P)にある可動ガイドレール3Gを幅方向W中心側に向かって移動させると、ある時点で少なくとも貨物Cの一方の側面に何れか一方の可動ガイドレール3Gが接触し、さらにその可動ガイドレール3G(貨物Cに接触している可動ガイドレール3G)を幅方向W中心側に向かって移動させると、リフトアップ装置6を構成する幅方向Wに回転自在なリフトアップ用ローラが貨物Cの移動に従動して回転し、貨物Cを幅方向Wに移動させることができる。この際、貨物Cはリフトアップ用ローラのみによって支持されているため、貨物Cを可動ガイドレール3Gで押しながら幅方向Wへスムーズに移動させることができる。そして、所定位置まで可動ガイドレール3Gを幅方向Wに移動させた時点で、可動ガイドレール3Gの移動を停止すれば、左右一対の可動ガイドレール3G同士の間に貨物Cを挟んだ状態(貨物Cの両側面にそれぞれ可動ガイドレール3Gが接触または近接している状態)になる。
【0036】
次に、リフトアップ装置6をリフトアップ位置から非リフトアップ位置に切り替えて(降下させて)、貨物Cを前部搬送ローラ31aに接触させた状態にし、この状態で前部搬送ローラ31aを回転させることによって、貨物Cを可動ガイドレール3Gに沿って搬送することができ、前部プラットホーム3から機体の開口ゲートDを通じて貨物搬送路に移載し、そのまま搬出入ゲートR1を通過して貨物室R内に移動させることができる。
【0037】
なお、本実施形態の貨物搬送車両1は、可動ガイドレール3Gを幅方向Wに移動させたり、後述する可動ガイドレール3Gを水平面内で旋回させる操作や、前部搬送ローラ31a,後部搬送ローラ41aを回転させる操作、リフトアップ装置を昇降させる操作を、前部フレーム構造体31と一体に昇降移動する運転席32で行うことができるため、前部フレーム構造体31よりも下方の位置から上記各操作を行う態様と比較して、可動ガイドレール3Gや各搬送ローラ31a,41aなどの動きを運転手(オペレータ)自身が容易に目視することができ、操作性で有利である。
【0038】
このような手順により、本実施形態の貨物搬送車両1は、後部プラットホーム4及び前部プラットホーム3を搬送路として貨物Cを車両2の前方、つまり機体内へ搬送することができる。特に好適な使用方法(操作手順)としては、図3乃至図6に示す態様を挙げることができる。
【0039】
すなわち、後部プラットホーム4上の貨物Cを一方の固定ガイドレール4Gに接触または近接させた状態でこの固定ガイドレール4Gに沿って前方へ移動させ(図3参照)、そのまま前部プラットホーム3上に移載する(図4参照)。この際、前部プラットホーム3の左右一対の可動ガイドレール3Gのうち、貨物Cが接触または近接している固定ガイドレール4Gと同じ側の可動ガイドレール3Gをその固定ガイドレール4Gと同一直線上となる位置に位置付けておき、他方の可動ガイドレール3Gを、一方の可動ガイドレール3Gからの離間寸法が貨物Cの幅寸法よりも大きくなる位置に設定しておく。本実施形態では、最外位置(P)に位置付けた可動ガイドレール3Gが固定ガイドレール4Gと同一直線上となるように設定している(図3及び図4参照)。したがって、後部プラットホーム4上で貨物Cを搬送する際に可動ガイドレール3Gを最外位置(P)に位置付けておけば、後部プラットホーム4上で一方の固定ガイドレール4Gに沿って前方へ移動した貨物Cを前部プラットホーム3に移載した際に、貨物Cが接触または近接する対象を固定ガイドレール4Gから最外位置(P)に位置付けた可動ガイドレール3Gにスムーズに引き継ぐことができる。
【0040】
そして、この時点では貨物Cに接触または近接していない他方の可動ガイドレール3Gを貨物Cに接触または近接する位置まで幅方向Wにスライド移動させ、貨物Cを左右一対のガイドレールで挟み得る状態(図5参照、なお図5及び図6では後部プラットホーム4を省略している)で、可動ガイドレール3Gのスライド移動を一旦停止し、リフトアップ装置6を非リフトアップ位置からリフトアップ位置に切り替え、可動ガイドレール3G同士の間に挟んでいる貨物Cを貨物室Rの搬出入ゲートR1に搬入可能な位置まで可動ガイドレール3Gをスライド移動させる(図6参照)。次いで、リフトアップ装置6をリフトアップ位置から非リフトアップ位置に切り替えて前部搬送ローラ31aを駆動させれば、可動ガイドレール3Gに沿って前方へ移動させた貨物Cを搬出入ゲートR1に搬入することができる。
【0041】
さらに、本実施形態の貨物搬送車両1は、左右一対の可動ガイドレール3Gを水平面内で旋回動作(首振り)可能に構成しているため、図7に示すように、左右一対のガイドレールで貨物Cを挟み得る状態で、リフトアップ装置6を非リフトアップ位置からリフトアップ位置に切り替えた時点で、可動ガイドレール3G同士の間に挟んでいる貨物Cを貨物室Rの搬出入ゲートR1に搬入可能な位置まで可動ガイドレール3Gを旋回させる。なお、図7では、旋回後の可動ガイドレール3Gを実戦で示し、旋回前の可動ガイドレール3Gを想像線で示している。本実施形態では、可動ガイドレール3Gの後端部を中心として可動ガイドローラ全体が首振り動作するように構成しているため、例えば可動ガイドレール3Gの長手方向中央部を中心として可動ガイドローラ全体が首振り動作するように構成した態様と比較して、可動ガイドレール3Gの長手方向延長線上に搬出入ゲートR1の開口側縁が一致し得るように可動ガイドレール3Gの前端部の位置を調整する際の旋回角度を小さくすることができ、省エネルギー化及び旋回作業効率の向上を図ることができる。可動ガイドレール3G同士の間に挟んでいる貨物Cを貨物室Rの搬出入ゲートR1に搬送可能な位置まで可動ガイドレール3Gを旋回させた後は、リフトアップ装置6をリフトアップ位置から非リフトアップ位置に切り替えて前部搬送ローラ31aを駆動させれば、可動ガイドレール3Gに沿って前方へ移動した貨物Cを貨物室Rの搬出入ゲートR1に搬入することができる。
【0042】
なお、搬出入ゲートR1の開口幅や位置に応じて可動ガイドレール3Gを水平面内で旋回させる操作と幅方向Wにスライド移動させる操作の両方が必要である場合には、何れか一方の操作を先に行った後に他方の操作を行えばよい。具体的には、可動ガイドレール3Gを水平面内で旋回させた後に、その旋回角度を維持したまま可動ガイドレール3Gを幅方向Wに移動させてもよいし、可動ガイドレール3Gを幅方向Wにスライド移動させた後に、少なくとも旋回時の回転中心となる部分(本実施形態であれば後端部)同士の離間寸法を維持したまま首振り動作させてもよい。また、可動ガイドレール3Gを水平面内で旋回させる操作と幅方向Wに移動させる操作とを複数回ずつ交互に行うことも可能である。
【0043】
このように、本実施形態に係る貨物搬送車両1は、プラットホームとして機能する前部プラットホーム3に設けた左右一対の可動ガイドレール3Gを、相互に接離する方向(幅方向W)にスライド移動可能且つ水平面内で旋回動作可能に設定しているため、幅方向Wのスライド移動のみが可能なガイドレールを備えた貨物搬送車両1と比較して、機体との間で搬送される貨物Cの搬送通路の搬出入端として機能する可動ガイドレール3Gの前端部同士の離間寸法や幅方向Wにおける相対位置を微調整することができるとともに、前部プラットホーム3の長手方向(前後方向X)に対する可動ガイドレール3Gの水平面内の旋回角度を微調整することができる。したがって、搬出入ゲートR1の開口幅が貨物Cの通過を許容する最小限の大きさに設定されている場合にも、搬出入ゲートR1の開口両側縁部の位置に応じて可動ガイドレール3Gの位置を高精度に微調整することによって、機体の貨物室R内との間で貨物Cを搬送する作業を迅速かつ容易に行うことができる。
【0044】
また、このような貨物搬送車両1は、機種毎に機体の胴体Bに設けられた搬出入用ドアの開口ゲートDに対する貨物室Rの搬出入ゲートR1の相対位置が異なっている実情にも好適に対応することができ、前部プラットホーム3の前端部を機体の搬出入用ドア(開口ゲートD)に接近させる位置に貨物搬送車両1を停車しさえすれば、あとは可動ガイドレール3Gの位置や傾斜角度を搬出入ゲートR1の幅や位置に応じて適宜調節することによって、貨物Cを搬出入ゲートR1にスムーズに搬送することができる。
【0045】
さらに、本実施形態の貨物搬送車両1は、可動ガイドレール3Gを首振り動作可能に構成しているため、例えば駐機中の航空機に対してプラットホーム3,4の長手方向が直角となる位置に正確に停車させることができない場合であっても、停車位置を変更することなく、そのままの停車位置で可動ガイドレール3Gを搬出入ゲートR1の位置に応じて適宜の角度に傾斜させることで、これら可動ガイドレール3Gを介した貨物Cの搬送処理をスムーズに行うことができる。したがって、本実施形態の貨物搬送車両1であれば、駐機中の航空機に対してプラットホーム3,4の長手方向が直角となる位置に貨物搬送車両1を例えば数センチ単位で正確に停車させるというような高い運転技術(操作技術)が要求されることはなく、航空機に対してプラットホーム3,4の長手方向が直角ではなく、斜めの姿勢となった状態で貨物搬送車両1を停車させた場合であっても、停車位置を適切な位置に変更する操作が不要であり、この停車位置の変更操作に伴う貨物Cの搬送処理効率の低下を防止・抑制することができる。
【0046】
さらに、本実施形態に係る貨物搬送車両1は、プラットホームとして機能する後部プラットホーム4及び前部プラットホーム3のうち、貨物Cを受け渡す対象の搬出入ゲートR1に接近するプラットホームが前部プラットホーム3であり、この前部プラットホーム3に設けたガイドレールの位置や旋回角度を搬出入ゲートR1の開口幅や位置に合わせて調整すれば十分であるという事情に着目して、貨物Cの搬出入処理時に機体に接近する前部プラットホーム3にのみ可動ガイドレール3Gを設けている。したがって、後部プラットホーム4にも可動ガイドレール3Gを設ける態様と比較して過剰スペックになる事態を避けるとともに、車両2の前方に止められている航空機の搬出入ゲートR1に連続し得る前部プラットホーム3上にある貨物Cを可動ガイドレール3Gに案内させながら搬出入ゲートR1に向かって搬送することができる。
【0047】
これと同様の趣旨で、本実施形態の貨物搬送車両1では、リフトアップ装置6を前部プラットホーム3にのみ設けている。そして、リフトアップ装置6をリフトアップ位置に設定することによって、前部プラットホーム3に設けた前部搬送ローラ31aと貨物Cとの間における移動方向と交差する方向の摩擦を低減させた状態で、可動ガイドレール3Gを互いに接近する方向に移動させたり、首振り動作させることによって、前部プラットホーム3上の貨物Cを可動ガイドレール3Gで押しながら移動方向と異なる方向(交差する方向)へスムーズに移動させることができ、搬出入ゲートR1の位置やサイズに合わせて貨物Cの位置を高精度に調整することが可能であり、リフトアップ装置6及びガイドレールを介して前部プラットホーム3上における貨物Cの位置決めをスムーズ且つ高精度に行うことができ、迅速且つ容易に搬出入作業を行うことができる。
【0048】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、左右一対の可動ガイドレールが後端部を回転中心として首振り動作する態様を例示したが、後端部以外の所定部分を回転中心として首振り動作するように構成することもできる。
【0049】
このような態様であれば、以下のような作用効果を奏する。例えば、図8に示すように、前部プラットホーム3に設けた可動ガイドレール3Gの後端部が、後部プラットホーム4に設けた固定ガイドレール4Gの前端部よりも幅方向W中央側に寄った位置にある場合、この固定ガイドレール4Gに添接しながら前方に移動してきた貨物Cは可動ガイドレール3Gの後端部に衝突するおそれがある。この際、可動ガイドレール3Gを、後端部以外の所定部分(図示例では長手方向中央部分)を中心として図9に示すように水平面内で旋回移動させれば、可動ガイドレール3Gの後端部が幅方向Wにおいて固定ガイドレール4Gの前端部と同じ位置か、または固定ガイドレール4Gの前端部よりも幅方向W外側に寄った位置に変更することができ、この固定ガイドレール4Gに添接しながら前方に移動してきた貨物Cが可動ガイドレール3Gの後端部に衝突する事態を回避することができる。なお、図9では、旋回後の可動ガイドレール3Gを実線で示し、旋回前の可動ガイドレール3Gを想像線で示している。
【0050】
また、可動ガイドレールを幅方向に移動させる機構やその駆動源、あるいは可動ガイドレールを水平面内で旋回させる機構やその駆動源は周知のものを適宜適用することができる。
【0051】
また、可動ガイドレールをそれぞれ個別に幅方向に移動させたり、首振り動作させてもよい。
【0052】
また、後部プラットホームに設けるガイドレールを、前部プラットホームに設けるガイドレールと同様に可動ガイドレールに設定することもできる。
【0053】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1…貨物搬送車両
2…車両
3…前部プラットホーム
3G…可動ガイドレール
4…後部プラットホーム
4G…固定ガイドレール
C…貨物
D…開口ゲート
R…貨物室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車両と、前記車両に設けられ且つ貨物を移動させるプラットホームとを備え、前記車両の前方に駐機されている航空機の胴体に設けられた搬出入用ドアの開口ゲートを介して機体内の貨物室との間で貨物の搬出入を行う貨物搬送車両であって、
前記車両の前後方向に対し長尺な前記プラットホーム上において前記前後方向に延び、相互に接離する方向に移動可能且つ水平面内で首振り動作可能な左右一対の可動ガイドレールを備えていることを特徴とする貨物搬送車両。
【請求項2】
前記車両の前部に設けられ且つ前記プラットホームの一部として機能する前部プラットホームと、
前記車両の後部に設けられ且つ前記プラットホームの一部として機能する後部プラットホームとを備え、
前記前部プラットホームに前記可動ガイドレールを設け、
前記後部プラットホームに、前記前後方向に延びる左右一対の固定ガイドレールを設けている請求項1に記載の貨物搬送車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107520(P2013−107520A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254672(P2011−254672)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)