説明

貯湯タンク

【課題】貯湯缶体と成型断熱材との隙間からの放熱を防ぎ、保温・断熱性能を向上させた貯湯タンクを提供する。
【解決手段】湯水を貯める貯湯缶体4と、貯湯缶体4に接続された配管9と、貯湯缶体4の外郭を覆う成形断熱材132、135と、成形断熱材132、135に開口され、配管9を通す配管取り出し口20とを備えた貯湯タンク1において、成型断熱材132、135の貯湯缶体4側内面の配管取り出し口20の周囲に貯湯缶体4に当接するリブ19を設けたことで、前記リブ19が貯湯缶体4に密着し、貯湯缶体4と成型断熱材132、135との隙間と外気との連通を遮断でき、配管取り出し口20からの放熱を防いで保温・断熱性能を向上することができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気温水器やヒートポンプ給湯機などの貯湯式給湯機の貯湯タンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の貯湯式給湯装置の貯湯タンクに於いては、ヒートポンプ等の外部加熱手段により加熱した温水を貯める貯湯缶体の保温・断熱を目的として貯湯缶体外郭を囲繞する成型断熱材を設けていたものがあった。この成型断熱材は、図4に示すように貯湯缶体21外郭に沿った形状の缶体用窪部を有し、天部断熱材22前面上部断熱材23と前面下部断熱材24と底部断熱材25と背面断熱材26とに分割構成され、これら断熱材の缶体用窪部を貯湯缶体21に密着させたものであった。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2002−310511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この従来のものは図4に示すように、貯湯缶体21外郭を囲繞する成型断熱材24、25、26と貯湯缶体21との間に各部品精度のバラツキ等により隙間が生じてしまい、断熱材24、25、26に開口された配管取り出し口27を通して前記隙間の熱気が漏れて冷気が進入してしまうため保温性が悪いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は前記課題を解決するため、請求項1では、湯水を貯める貯湯缶体と、該貯湯缶体に接続された配管と、前記貯湯缶体の外郭を覆う成形断熱材と、該成形断熱材に開口され、前記配管を通す配管取り出し口とを備えた貯湯タンクにおいて、前記成型断熱材の前記貯湯缶体側内面の前記配管取り出し口の周囲に前記貯湯缶体に当接するリブを設けたものとした。
【0005】
また、請求項2では、前記リブは、前記貯湯缶体に前記成型断熱材を組み付けると潰れて前記貯湯缶体に密着する大きさとした。
【発明の効果】
【0006】
請求項1によれば、前記成型断熱材の前記貯湯缶体側内面の前記配管取り出し口の周囲に前記貯湯缶体に当接するリブを設けたので、前記成型断熱材と前記貯湯缶体との隙間と外気を遮断して前記配管取り出し口部分からの放熱を防ぎ、また、脱着作業や製造組立にかかる工数も増やさず作業性がよく、容易にかつ安価に前記貯湯缶体の保温・断熱性能を向上できるものである。
【0007】
また、請求項2によれば、前記リブは、前記貯湯缶体に前記成型断熱材を組み付けると潰れて前記貯湯缶体に密着する大きさとしたので、前記リブが前記貯湯缶体に隙間なく確実に密着し、保温・断熱性能を簡単な構成で確実に向上できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。1は温水を貯湯する貯湯タンク、2はヒートポンプ式の加熱器で、加熱器2で加熱した温水を貯湯タンク1に貯湯し、給湯要求があった時に給湯栓3から給湯するものである。
【0009】
次に、前記貯湯タンク1について図2の分解斜視図に基づいて説明すると、4は第一貯湯缶体、5は第二2貯湯缶体、6は第一貯湯缶体4を支える第一缶体支持脚、7は第二貯湯缶体5を支える第二缶体支持脚、8は第二貯湯缶体5下部に接続された給水管、9は第一貯湯缶体4上部と第二貯湯缶体5下部とを接続する缶体接続管、10は第一貯湯缶体4上部と給湯栓3を接続する給湯管、11は第二貯湯缶体5下部と加熱器2の流入側を接続する加熱器往管、12は第一貯湯缶体4上部と加熱器2の流出側を接続する加熱器復管であり、給水管8から給水され第一貯湯缶体4と第二貯湯缶体5に貯められた水は、循環ポンプ(図示せず)の駆動により第二貯湯缶体5下部の加熱器往管11を流れて加熱器2に流入し、高温に加熱された後に加熱器復管12を流れて第一貯湯缶体4の上部から徐々に貯湯され、そして給湯栓3が開かれれば給水圧により第一貯湯缶体4の上部に貯められた温水が第一貯湯缶体4の上部の給湯管10を流れて給湯栓3から給湯されるものである。
【0010】
13は第一貯湯缶体4及び第二貯湯缶体5の外郭のほぼ全面を覆い保温・断熱を行う耐熱性発泡ポリスチレンを成型加工した複数の成型断熱材で、底部断熱材131、前下部断熱材132、前上左部断熱材133、前上右部断熱材134、後部断熱材135、天部断熱材136より分割構成され、それぞれ第一貯湯缶体4及び第二貯湯缶体5に接する部分には第一貯湯缶体4および第二貯湯缶体5の外郭に沿った形状の缶体用窪部14を有しており、これらの缶体用窪部14を第一貯湯缶体4及び第二貯湯缶体5の外郭に密着し、それぞれ隣り合う成型断熱材13同士が互いに接する面を密着して取り付けられるものである。
【0011】
このように貯湯缶体4、5を複数の成型断熱材13で覆って保温・断熱を行うようにしたので、製造組立時にはこの複数の成型断熱材13を適切な位置にはめ込むように取り付けるだけで良く、効率的な作業を行うことができ製造組立の工数がかからずコストを抑えることができると共に、メンテナンス時の脱着作業も非常に容易になり作業性が向上するものである。
【0012】
また、複数の成型断熱材13のそれぞれ互いに接する面にはそれぞれ位置決め用の嵌合凹凸部15を設けているので、複数の成型断熱材13の位置決めが正確になると共に、複数の成型断熱材13相互の密着度も高くなり複数の成型断熱材13間の隙間を空気が流動することによる放熱を防ぐことができ、特に前上左部断熱材133と前上右部断熱材134と後部断熱材135の上面と、天部断熱材136の底面を嵌合凹凸15によって確実に密着させたことによって、垂直方向の分割面(前上左部断熱材133と前上右部断熱材134と後部断熱材135の互いに接する面)および水平方向の分割面(前上左部断熱材133と前上右部断熱材134と後部断熱材135の上面と、天部断熱材136の底面の接する面)の隙間の発生を確実に防ぎこの隙間や缶体用窪部14から温度差により対流が発生して空気が流動して放熱してしまうのを確実に防止することができ、保温・断熱性能が大きく向上する。
【0013】
また、前記複数の成型断熱材13の互いに接する面に前記第一貯湯缶体4及び第二貯湯缶体5に接続された給水管8、給湯管10等の複数の配管を収める配管用溝部16を設けてこれら配管の保温・断熱を行っており、具体的に説明すると、前記底部断熱材131には、その前下部断熱材132または後部断熱材135に接する上面に前記第二貯湯缶体5の下部に接続された給水管8と加熱器往管11と第一貯湯缶体4下部に接続された缶体接続管9が収められる複数の配管用溝部16が設けられ、前記後部断熱材135には、その前上左部断熱材133または前上右部断熱材134に接する面に第一貯湯缶体4と第二貯湯缶体5とを連通する缶体連通管9および第一貯湯缶体4上部に接続された加熱器復管12が収められる複数の配管用溝部16が設けられ、前記天部断熱材136には、第一貯湯缶体4と第二貯湯缶体5とを連通する缶体連通管9と第一貯湯缶体4上部に接続された給湯管10が収められる複数の配管用溝部16が設けられている。
【0014】
これにより、貯湯缶体4、5を保温・断熱するための複数の成型断熱材13を適切な位置にはめ込むように取り付けるだけで、貯湯缶体4、5の保温・断熱だけでなく、それぞれの貯湯缶体4、5に接続された複数の配管8、9、10、11、12も複数の成型断熱材13の互いに接する面に設けられた配管用溝部16にそれぞれはまり込んで収められて保温・断熱が行われるため、配管専用の断熱材が必要なくなると共に脱着作業も容易で作業性が良く製造組立時の工数も減りかつメンテナンス時の作業性も大幅に向上し、配管の保温・断熱にかかるコストを大幅に下げることができる。
【0015】
また、第一貯湯缶体4の下部には缶体連通管9、第二貯湯缶体5の下部には給水管8と加熱器往管11がそれぞれ接続されているので、貯湯缶体下部には配管を取り出すために前下部断熱材132に半円形の溝部18と後部断熱材135にも半円形の溝部18とがそれぞれ設けられている。各溝部18の貯湯缶体側の外周には、貯湯缶体側に突出し、成型断熱材13の組み付け時に貯湯缶体4、5に当接するリブ19が設けられている。
【0016】
そして、前記前下部断熱材132と前記後部断熱材135を前記貯湯缶体4、5に組み付けることにより前記前下部断熱材132の半円形の溝部18と前記後部断熱材135の半円形の溝部18とが組合わさって円形の配管取り出し口20が形成される。同時に、配管取り出し口20の貯湯缶体側では、前記前下部断熱材132の半円形のリブ19と前記後部断熱材135の半円形のリブ19とが組合わさって円形のリブ19が形成されることとなる。この円形のリブ19は配管取り出し口20の貯湯缶体側の外周部に位置することとなる。
【0017】
なお、前記リブ19は、前記貯湯缶体4、5に前記成型断熱材13を組み付けると潰れて前記貯湯缶体4、5に密着する大きさとしているため、前記リブ19の全周が前記貯湯缶体4、5に隙間なく確実に密着し、保温・断熱性能を簡単な構成で確実に向上できるものである。
【0018】
このように、貯湯缶体4、5に前記前下部断熱材132と前記後部断熱材135を組み付けると、前記リブ19が貯湯缶体4、5に当接して密着するので、貯湯缶体4、5と成型断熱材13との隙間と外気とを遮断し、貯湯缶体4、5の熱が漏れることを防ぎ、保温・断熱性能が向上する。また、配管取り出し口20専用の断熱材を必要としないので容易に保温・断熱を行えて、保温・断熱にかかるコストを大幅に下げることができる。さらに、従来のものに比べ、脱着作業や製造組立も工数を増やさず作業性が良いものである。
【0019】
17は底板171、前板172、後板173、天板174から構成された貯湯タンク1の外装体である。
【0020】
この外装体17の内面には前記複数の成型断熱材13の外面の少なくとも一部が当接しており、外装体17をしっかりと組み付けることにより前記複数の成型断熱材13が内側に押しつけられて互いに接する面がより密着して保温・断熱性能が向上すると共に、缶体支持脚6、7にかかる貯湯缶体4、5の荷重の一部を支え、外装体17内部での貯湯缶体4、5の傾き・転倒防止を行う。
【0021】
尚、ここで前記複数の成型断熱材13は、少なくとも底部断熱材と天部断熱材と前面断熱材と背面断熱材の4つに分割構成されていれば、脱着作業性よくコスト安に保温・断熱性能を向上することができるもので、メンテナンス時に取り外すことの多い前面断熱材をさらに上下に分割することで、さらにメンテナンス性を向上することができるものである。
【0022】
尚、本発明はこの一実施形態に限られることなく、その要旨を変更しない範囲で他の実施形態に適用可能であるもので、例えば、ヒートポンプ式加熱器ではなく貯湯缶体内部に設けた電熱ヒータによって温水を作るものでも良く、また、貯湯缶体も一つでも良い。また、外装体を円筒型にしたものでも成型断熱材13の外周を円筒型の外装体に沿った形にすれば良いものである。さらに、成型断熱材13は貯湯缶体に合うようにかつ作業性を考慮して適当に分割されていれば良いものである。
【0023】
また、前記配管取り出し口20を形成する溝部18を組合わさる隣同士の断熱材のそれぞれに設けているが、一方のみに溝部18を設けるようにしても良い。この場合、溝部18のない方の断熱材の前記溝部18に対応する部分に前記リブ19を設け、配管取り出し口20の全周を前記リブ19で囲うようにすれば良いものである。また、断熱材としては前下部断熱材132と後部断熱材135を例示し、配管の一例として給水管8、缶体接続缶9および加熱器往管11を例示したが、これに限られるものでなく、その要旨を変更しない範囲で他の実施形態に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の貯湯式給湯機の概略構成図。
【図2】同一実施形態の貯湯タンクの分解斜視図。
【図3】同一実施形態の貯湯タンクの要部縦断面図。
【図4】従来の貯湯タンクの要部縦断面図。
【符号の説明】
【0025】
1 貯湯タンク
4 第一貯湯缶体(貯湯缶体)
9 缶体接続管(配管)
132 前下部断熱材(成型断熱材)
135 後部断熱材(成型断熱材)
19 リブ
20 配管取り出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を貯める貯湯缶体と、該貯湯缶体に接続された配管と、前記貯湯缶体の外郭を覆う成形断熱材と、該成形断熱材に開口され、前記配管を通す配管取り出し口とを備えた貯湯タンクにおいて、前記成型断熱材の前記貯湯缶体側内面の前記配管取り出し口の周囲に前記貯湯缶体に当接するリブを設けたことを特徴とする貯湯タンク。
【請求項2】
前記リブは、前記貯湯缶体に前記成型断熱材を組み付けると潰れて前記貯湯缶体に密着する大きさとしたことを特徴とする請求項1に記載の貯湯タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−349321(P2006−349321A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179568(P2005−179568)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】