説明

貯湯式給湯システム

【課題】 貯湯タンク内の温度成層が壊れ難い貯湯式給湯システムであって、簡易な構成を有する貯湯式給湯システムを提供する。
【解決手段】 給湯システム2では、貯湯タンク10内に、上下方向に沿ったガイド配管30が備えられている。ガイド配管30は、下端が貯湯タンク10の往き口12と間隔を隔てて対向し、上端が貯湯タンクの戻り口14と間隔を隔てて対向するように備えられている。コントローラ70は、循環復路44から戻り口14を通って貯湯タンク10内に供給される水が低温である場合における単位時間当りの循環ポンプ60の回転数を、循環復路44から戻り口14を通って貯湯タンク10内に供給される水が高温である場合における単位時間当りの循環ポンプ60の回転数よりも高くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯式給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、貯湯式給湯システムの例が開示されている。この貯湯式給湯システムは、貯湯槽と、瞬間式湯沸器と、循環ポンプとを循環パイプで接続した循環経路を備える。循環パイプの先端には流速減衰体が取り付けられており、貯湯槽に概略垂直に設けた両端開放の冷水導管内に挿入されている。この貯湯式給湯システムでは、貯湯槽内には、上部に高温の水の層が形成され、下部に低温の水の層が形成される。貯湯槽内に高温の層と低温の層が形成されている状態を温度成層という(以下、本明細書において同じ)。
【0003】
特許文献1の貯湯式給湯システムでは、循環パイプから供給される水は、流速減衰体を通過して冷水導管内に供給される。冷水導管内に供給された水が高温の場合、供給された水は、周囲の水との密度差によって上向きの力を受け、冷水導管の上端から貯湯槽内へと流れ出て、貯湯槽内の上部の高温の層の水と混合される。一方、冷水導管内に供給された水が低温の場合、供給された水は、周囲の水との密度差によって下向きの力を受け、冷水導管の下端から貯湯槽内へと流れ出て、貯湯槽内の下部の低温の層の水と混合される。その結果、貯湯槽内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。従って、貯湯槽の蓄熱量が少ない場合でも高温の水を供給可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭59−63446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、特許文献1の貯湯式給湯システムは、循環パイプの先端が貯湯槽内の冷水導管内に挿入され、循環パイプの先端には流速減衰体が備えられている複雑な構成を有している。そのため、清掃や点検に伴う分解及び組立作業の負担が大きい。
【0006】
本明細書で開示する技術は、上記の課題を解決するために創作されたものである。本明細書では、貯湯タンク内の温度成層が壊れ難い貯湯式給湯システムであって、簡易な構成を有する貯湯式給湯システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書が開示する貯湯式給湯システムは、貯湯タンクと、加熱手段と、循環ポンプと、循環ポンプを作動させることにより貯湯タンクと熱源機との間で水を循環させるための循環経路と、制御手段とを備えている。貯湯タンク内には、上下方向に沿ったガイド配管が備えられている。ガイド配管は、下端が貯湯タンク内の水を循環経路に送るための往き口と間隔を隔てて備えられ、上端が循環経路内の水を貯湯タンクに戻すための戻り口と間隔を隔てて対向するように備えられている。往き口は貯湯タンクの底部近傍に設けられ、戻り口は貯湯タンクの頂部近傍に設けられている。制御手段は、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水が低温である場合における単位時間当りの循環ポンプの回転数を、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水が高温である場合における単位時間当りの循環ポンプの回転数よりも高くする。
【0008】
上記の貯湯式給湯システムでは、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水が低温である場合の水の流速は、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水が高温である場合の水の流速より速くなる。そのため、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される低温の水の大部分は、戻り口からの下向きの流れに乗って、対向するガイド配管の上端からガイド配管内に送り込まれる。ガイド配管内に送り込まれた水は、周囲の水との密度の差により下向きの力を受け、ガイド配管内を下方に向けて流れ、ガイド配管の下端から貯湯タンク下部近傍に流れ出る。貯湯タンク下部近傍に流れ出た水は、貯湯タンク内の下部に存在する低温の水と混合される。その結果、ガイド配管の外側には殆ど低温の水が流れないので、貯湯タンクの上部の高温の水と、貯湯タンク内に供給される低温の水とが混合され難くなる。従って、貯湯タンク内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。
【0009】
一方、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水が高温である場合の水の流速は、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水が低温である場合の水の流速より遅くなる。そのため、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される高温の水の一部はガイド配管の上端からガイド配管内に送り込まれるが、残りはガイド配管に送り込まれることなく、直接貯湯タンク内の上部近傍に供給され、貯湯タンク内の上部の高温の水と混合される。ガイド配管内に送り込まれた水は、周囲の水との密度の差により上向きの力を受け、ガイド配管内を上方に向けて流れ、ガイド配管の上端から貯湯タンク上部近傍に流れ出る。貯湯タンク上部近傍に流れ出た水は、貯湯タンク内の上部に存在する高温の水と混合される。従って、貯湯タンク内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。
【0010】
上記の貯湯式給湯システムにおける貯湯タンクは、内部にガイド配管のみを備える簡易な構成を有する。従来の貯湯式給湯システムのように、貯湯タンク内に、循環経路の一部が挿入されていない。また、流速減衰体も備えられていない。そのため、従来よりも構成が簡易となり、清掃や点検に伴う分解及び組立作業の負担も少なく済む。
【0011】
上記の貯湯式給湯システムにおける加熱手段は、ヒートポンプ、コージェネレーションシステムにおける排熱交換器、ガスバーナ、太陽熱、地熱等、任意の加熱手段とすることができる。
【0012】
制御手段は、加熱手段を作動させながら循環経路内で水を循環させる第1運転と、加熱手段を作動させずに循環経路内で水を循環させる第2運転とを切換え可能であり、第1運転時には、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水は高温であり、第2運転時には、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水は低温であるようにすることが好ましい。例えば、上記の第1運転及び第2運転は、それぞれ、貯湯運転及び凍結防止運転であってもよい。この構成によると、貯湯タンク内に高温の水が供給される第1運転時には、貯湯タンク内に供給された高温の水は、貯湯タンク内の上部に存在する高温の水と混合される。貯湯タンク内に低温の水が供給される第2運転時には、貯湯タンク内に供給された低温の水は、貯湯タンク内の下部に存在する低温の水と混合される。従って、第1運転時と第2運転時のいずれの場合も、貯湯タンク内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。
【0013】
あるいは、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水の温度を検出する温度センサをさらに備え、制御手段は、温度センサが検出する水の温度に応じて、単位時間当りの循環ポンプの回転数を変えるようにすることが好ましい。この構成によると、温度センサによって実際に検出される水の温度に応じて、単位時間当りの循環ポンプの回転数を変えることができる。即ち、実際にタンクに供給される水の温度に応じて、単位時間当りの循環ポンプの回転数を最適な値に設定することができる。
【0014】
ガイド配管は、その内径が戻り口の開口径と略同じかそれより大きくなるように形成されることが好ましい。この構成によると、戻り口から貯湯タンク内に低温の水が供給される場合に、戻り口から供給される低温の水の大部分が、ガイド配管内に送り込まれ易くなる。その結果、貯湯タンク内の温度成層が壊れ難くなる。
【0015】
ガイド配管の下端は、往き口と間隔を隔てて対向するように備えられていることが好ましい。この構成によると、戻り口から貯湯タンク内に低温の水が供給される場合に、ガイド配管内を通過した低温の水が、循環経路に送り出され易くなる。貯湯タンク内の低温の水の量が増え難くなり、貯湯タンク内の蓄熱量が減少し難くなる。
【0016】
加熱手段がヒートポンプであることが好ましい。ヒートポンプは、ガスバーナ等の燃焼を伴う加熱手段と比較して熱効率が良いという利点がある。従って、加熱手段をヒートポンプとすることにより、水を加熱する際の熱効率が良くなる。
【0017】
ガイド配管は、貯湯タンク内を仕切ることによって形成される複数本の細管を備えるハニカム体であって、複数本の細管は、それぞれ、下端が往き口側に備えられ、上端が戻り口側に備えられていることが好ましい。この構成によると、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に低温の水が供給される場合に、流速の速い低温の水の大部分は戻り口近傍の細管内に送り込まれ、戻り口から離れた位置の細管内には送り込まれ難くなる。そのため、貯湯タンク内に低温の水が供給される場合であっても、戻り口から離れた位置の細管内に形成された温度成層が壊れ難くなる。一方、循環復路から戻り口を通って貯湯タンク内に高温の水が供給される場合に、流速の遅い高温の水は、各細管内に送り込まれる。その結果、貯湯タンク内に低温の水が供給される場合と高温の水が供給される場合のどちらの場合であっても、貯湯タンク内全体の温度成層が壊れ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施例の給湯システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】貯湯運転中の給湯システムの動作を模式的に示す図である。
【図3】凍結防止運転中の給湯システムの動作を模式的に示す図である。
【図4】第3実施例の給湯システムの貯湯タンク部分を模式的に示す図である。
【図5】図4に示す貯湯タンクのV―V断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施例)
第1実施例に係る貯湯式給湯システムについて、図面を参照しながら説明する。図1に示すように、第1実施例の給湯システム2は、貯湯タンク10と、循環経路40と、ヒートポンプ(HP)ユニット50と、循環ポンプ60と、コントローラ70とを備えている。
【0020】
貯湯タンク10は、上記HPユニット50によって加熱された高温の水を貯える。貯湯タンク10の底部近傍には往き口12が開口している。往き口12には循環往路42が接続している。また、貯湯タンク10の頂部近傍には戻り口14が開口している。戻り口14には循環復路44が接続している。貯湯タンク10内の水は、往き口12を通って循環往路42内へと送り込まれる。循環復路44内の水は、戻り口14を通って貯湯タンク10内へと供給される(戻される)。
【0021】
貯湯タンク10の底部近傍にはタンク給水路20が接続されており、貯湯タンク10の頂部近傍にはタンク出水路22が接続されている。タンク給水路20は上水道に接続しており、貯湯タンク10の下部に低温の水(水道水)を供給する。タンク出水路22は、貯湯タンク10の上部の水(高温の水)を給湯箇所(例えば、蛇口、浴槽、シャワー等)に送り出す。
【0022】
貯湯タンク10内には温度成層が形成される。本例では、図1に示すように、貯湯タンク10の上部に高温の水の層(以下高温層と呼ぶ)100、貯湯タンク10の下部に低温の水の層(以下低温層と呼ぶ)80が形成されている。さらに、高温層100と低温層80の間には、高温層100の水と低温層80の水の中間の温度(中温)の水の層(以下中温層と呼ぶ)90が形成されている。
【0023】
貯湯タンク10内には上下方向に沿ってガイド配管30が備えられている。ガイド配管30は、下端が往き口12と間隔を隔てて対向し、上端が戻り口14と間隔を隔てて対向するように備えられている。ガイド配管30は、その内径が戻り口14の開口径とほぼ同径になるように形成された直管状部材である。
【0024】
循環経路40は、貯湯タンク10とHPユニット50との間で水を循環させるための経路である。循環経路40は、循環往路42と循環復路44と循環ポンプ60とを備えている。循環往路42は、往き口12を通って貯湯タンク10から送り出された水をHPユニット50に供給する。循環復路44は、HPユニット50から送り出された水を戻り口14から貯湯タンク10内に戻す。循環復路44は、さらに、内部を流れる水の水温を検出するための温度センサ110を備える。循環ポンプ60を作動させることにより、循環経路40内で水が循環する。循環ポンプ60の単位時間当りの回転数を変えることで、循環経路40を流れる水の単位時間当りの流量を変えることができる。
【0025】
HPユニット50は、水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器を備える。熱交換器は、水が流れる水管と、冷媒が流れる冷媒管とを備えている(図示省略)。水管の両端部は、それぞれ、循環往路42と、循環復路44に接続されている。冷媒管内を流れる冷媒には、二酸化炭素、R410A等のガスを用いることができる。本実施例では、貯湯タンク10から送り出されて循環往路42を流れてきた水は、熱交換器の水管を通過する間に冷媒管内の冷媒(高温高圧)と熱交換を行う(冷媒から熱を受け取る)ことによって加熱される。熱交換を終えた高温の水は、循環復路44へと送り出され、循環復路44から貯湯タンク10内へと戻される。水管内の水と、冷媒管内の冷媒は、互いに逆方向に流れる(カウンターフロー)ことが、効率よく熱交換を行う上では好ましい。
【0026】
コントローラ70は、HPユニット50、循環ポンプ60、温度センサ110と電気的に接続されており、HPユニット50の各構成要素及び循環ポンプ60の動作を制御する。本実施例では、コントローラ70は、所定のタイミング毎に貯湯運転と凍結防止運転の2つの運転モードを切換えて実行させることができる。貯湯運転は、HPユニット50を作動させながら循環経路40内で水を循環させる運転モードである。凍結防止運転は、HPユニット50を作動させずに循環経路40内で水を循環させる運転モードである。
【0027】
以上、本実施例の給湯システム2の構成を説明した。続いて、貯湯運転と凍結防止運転のそれぞれの運転モードにおける、給湯システム2の各構成要素の動作について説明する。
【0028】
(貯湯運転)
まず、図2を参照して貯湯運転を実行する場合の例を説明する。コントローラ70によって貯湯運転の実行が指示されると、HPユニット50の熱交換器が作動するとともに、循環ポンプ60が回転する。循環ポンプ60が回転すると、貯湯タンク10の下部(低温層80)の水が、往き口12から循環往路42内へと送り込まれる。循環往路42に送り込まれた水は、HPユニット50内の熱交換器の水管を通過する間に、冷媒管内の冷媒(高温高圧)と熱交換を行うことによって加熱される。熱交換を終えた高温の水は、循環復路44へと送り出され、循環復路44から貯湯タンク10内へと戻される。
【0029】
貯湯運転では、循環ポンプ60は、単位時間当たりの回転数が低い状態(低回転)で回転する。そのため、貯湯運転では、循環経路40内を流れる水の単位時間当りの流量は比較的少ない(例えば0.3L/min)。そのため、図2に示すように、貯湯運転では、循環復路44から戻り口14を通って貯湯タンク10内に供給される水の一部は、ガイド配管30の上端からガイド配管30内に送り込まれるが、残りはガイド配管30に送り込まれることなく、直接貯湯タンク10内の上部近傍に供給され、貯湯タンク内の上部の高温層100の水と混合される。ガイド配管30内に送り込まれた水は、周囲の水との密度の差により上向きの力を受け、ガイド配管30内を上方に向けて流れ、上端から貯湯タンク10上部近傍に流れ出る。貯湯タンク10上部近傍に流れ出た水は、高温層100の水と混合される。従って、本実施例の給湯システム2では、貯湯運転時において、貯湯タンク10内に形成されている温度成層が壊れ難い。
【0030】
(凍結防止運転)
続いて、図3を参照して、凍結防止運転を実行する場合の例を説明する。コントローラ70によって凍結防止運転の実行が指示されると、循環ポンプ60が回転する。このとき、HPユニット50は作動しない。循環ポンプ60が回転すると、貯湯タンク10の下部(低温層80)の水が、往き口12から循環往路42内へと送り込まれる。循環往路42に送り込まれた水は、HPユニット50内の熱交換器の水管を通過し、循環復路44へと送り出される。循環復路44に送り出された水は、戻り口14を通って貯湯タンク10内に戻される。凍結防止運転では、HPユニット50が作動しないため、熱交換器の冷却管内を高温高圧の冷媒が循環していない。そのため、水が水管を通過する際に熱交換(加熱)が行われない。そのため、凍結防止運転では、循環復路44から貯湯タンク10内に戻される水の温度は低温となる。
【0031】
凍結防止運転では、循環ポンプ60は、単位時間当りの回転数が高い状態(高回転)で回転する。そのため、凍結防止運転では、循環経路40内を流れる水の単位時間当りの流量は比較的多い(例えば4.0L/min)。そのため、図3に示すように、凍結防止運転では、循環復路44から戻り口14を通って貯湯タンク10内に供給される水の大部分は、戻り口14からの下向きの流れに乗って、対向するガイド配管30の上端からガイド配管30内に送り込まれる。さらに、ガイド配管30内に送り込まれた水は、周囲の水との密度の差により下向きの力を受け、ガイド配管30内を下方に向けて流れ、ガイド配管30の下端から貯湯タンク10下部近傍に流れ出る。貯湯タンク10下部近傍に流れ出た水は、低温層80の水と混合される。従って、本実施例の給湯システム2では、凍結防止運転時においても、ガイド配管30の外側には殆ど低温の水が流れないので、貯湯タンク10内に形成されている温度成層が壊れ難い。
【0032】
以上、本実施例の給湯システム2について詳しく説明した。上記の通り、本実施例では、貯湯タンク10は、内部にガイド配管30のみを備える簡易な構成を有する。従来の貯湯式給湯システムのように、貯湯タンク内に循環経路の一部が挿入されていない。また、従来の貯湯式給湯システムのような流速減衰体も装着されていない。そのため、従来よりも構成が簡易となり、清掃や点検に伴う分解及び組立作業の負担も少なく済む。
【0033】
上記の通り、本実施例では、貯湯タンク10内に高温の水が供給される貯湯運転時には、貯湯タンク10内に供給された高温の水は、貯湯タンク10内の上部の高温層100の水と混合される。貯湯タンク10内に低温の水が供給される凍結防止運転時には、貯湯タンク10に供給された低温の水は、貯湯タンク10内の下部の低温層80の水と混合される。従って、貯湯運転時と凍結防止運転時のいずれの場合も、貯湯タンク10内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。
【0034】
上記の通り、本実施例では、ガイド配管30は、その内径が戻り口14の開口径と略同じになるように形成されている。そのため、戻り口14から貯湯タンク10内に低温の水が供給される凍結防止運転時に、戻り口14から供給される低温の水の大部分が、ガイド配管30内に送り込まれ易い。従って、貯湯タンク10内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。また、ガイド配管30の下端は、往き口12と間隔を隔てて対向する。そのため、凍結防止運転時に、ガイド配管30内を通過した低温の水が、循環経路40に送り出され易くなる。貯湯タンク10内の低温の水の量が増え難くなり、貯湯タンク10内の蓄熱量が減少し難くなる。
【0035】
(第2実施例)
第2実施例について、第1実施例と異なる点を中心に説明する。本実施例では、コントローラ70は、貯湯運転中であるか凍結防止運転中であるかに関わらず、温度センサ110によって検出される循環復路44内の水の水温に応じて、循環ポンプ60の単位時間当りの回転数を変化させる。具体的には、温度センサ110が検出する水温が低温である場合、コントローラ70は、循環ポンプ60の単位時間当りの回転数を高くする。そのため、例えば、凍結防止運転中のみならず、貯湯運転の開始直後のように、循環復路44内に低温の水が存在し、貯湯タンク10内に低温の水が供給される場合においても、貯湯タンク10内に供給される水の単位時間当りの流量を多く(例えば4.0L/min)することができる。一方、温度センサ110が検出する水温が高温である場合、コントローラ70は、循環ポンプ60の単位時間当りの回転数を低くする。そのため、例えば、貯湯運転中のみならず、貯湯タンク10の下部まで高温の水が貯まっている場合に凍結防止運転が行われる場合のように、循環復路44内に高温の水が存在し、貯湯タンク10内に高温の水が供給される場合においても、貯湯タンク10内に供給される水の単位時間当りの流量を少なく(例えば0.3L/min)することができる。その結果、貯湯タンク10内に形成されている温度成層が壊れ難くなる。
【0036】
ここで、温度センサ110が検出する循環復路44内の水温が「低温である」とは、温度センサ110が検出する水温が、貯湯タンク10内の低温層80の水の水温に近いことを意味する。一方、温度センサ110が検出する循環復路44内の水温が「高温である」とは、温度センサ110が検出する水温が、貯湯タンク10内の高温層100の水の水温に近いことを意味する。
【0037】
上記の通り、本実施例では、貯湯タンク10内に供給される水温を、温度センサ110で実際に検出し、検出された水温に応じて、循環ポンプ60の単位時間当りの回転数を変えることができる。そのため、単位時間当りの循環ポンプの回転数を最適な値に設定することができる。
【0038】
(第3実施例)
第3実施例について、第1実施例と異なる点を中心に説明する。図4、図5に示すように、本実施例では、貯湯タンク10内に備えられるガイド配管130の構造が第1実施例と異なる。本実施例では、ガイド配管130は、貯湯タンク10内を仕切り板150によって格子状に仕切ることによって形成される複数本の細管140を密に備えるハニカム体である。複数本の細管140は、それぞれ、下端が往き口12側に備えられ、上端が戻り口12側に備えられている。本実施例でも、細管140の下端は往き口12と間隔を隔てて備えられ、上端は戻り口14と間隔を隔てて備えられている。各細管140内には温度成層が形成されている。
【0039】
本実施例では、ガイド配管130が上記の構成を備えるため、循環復路44から戻り口14を通って貯湯タンク10内に低温の水が供給される場合に、単位時間当りの流量の多い低温の水の大部分は戻り口14近傍の細管140内に送り込まれ、戻り口14から離れた部分の細管140内には送り込まれ難くなる。そのため、貯湯タンク10内に低温の水が供給される場合であっても、戻り口14から離れた位置の細管140内に形成された温度成層が壊れ難くなる。一方、循環復路44から戻り口14を通って貯湯タンク10内に高温の水が供給される場合に、単位時間当りの流量の少ない高温の水は、各細管140内に送り込まれる。その結果、貯湯タンク10内に低温の水が供給される場合と高温の水が供給される場合のどちらの場合であっても、貯湯タンク10内全体の温度成層が壊れ難くなる。
【0040】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
【0041】
上記の実施例では、ガイド配管30の下端は、往き口12と間隔を開けて対向するように設けられているが、ガイド配管30の下端は、往き口12と対向していなくてもよい。
【0042】
上記の実施例では、循環経路40内を循環する水を加熱する加熱手段として、HPユニット50を用いている。HPユニット50は、水と冷媒を熱交換することによって水を加熱する熱交換器を備えている。循環経路40内を循環する水を加熱する加熱手段は、これには限られず、任意の加熱手段を用いてもよい。例えば、加熱手段として、コージェネレーションシステムにおける排熱交換器、ガスバーナ、太陽熱、地熱等を用いてもよい。
【0043】
上記の第3実施例において、貯湯タンク10内を格子状に仕切る仕切り板150には、複数個の通孔が開口されていてもよい。この場合、隣り合う2本の細管140内の水が通孔を通って混合される。各細管140の間の水の垂直方向の温度分布の差を小さくすることができる。貯湯タンク10内の場所による水の温度差を小さくすることができる。
【0044】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
2 給湯システム
10 貯湯タンク
20 タンク給水路
22 タンク出水路
30 ガイド配管
40 循環経路
42 循環往路
44 循環復路
50 ヒートポンプ(HP)ユニット
60 循環ポンプ
70 コントローラ
80 低温層
90 中温層
100 高温層
110 温度センサ
130 ガイド配管
140 細管
150 仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
加熱手段と、
循環ポンプと、
循環ポンプを作動させることにより貯湯タンクと加熱手段との間で水を循環させるための循環経路と、
制御手段とを備えており、
貯湯タンク内には、上下方向に沿ったガイド配管が備えられており、
ガイド配管は、下端が貯湯タンク内の水を循環経路に送るための往き口と間隔を隔てて備えられ、上端が循環経路内の水を貯湯タンクに戻すための戻り口と間隔を隔てて対向するように備えられており、
往き口は貯湯タンクの底部近傍に設けられ、戻り口は貯湯タンクの頂部近傍に設けられており、
制御手段は、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に低温の水が供給される場合における単位時間当りの循環ポンプの回転数を、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に高温の水が供給される場合における単位時間当りの循環ポンプの回転数よりも高くすることを特徴とする貯湯式給湯システム。
【請求項2】
制御手段は、加熱手段を作動させながら循環経路内で水を循環させる第1運転と、加熱手段を作動させずに循環経路内で水を循環させる第2運転とを切換え可能であり、
第1運転時には、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に高温の水が供給され、
第2運転時には、循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に低温の水が供給されることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項3】
循環経路から戻り口を通って貯湯タンク内に供給される水の温度を検出する温度センサをさらに備え、
制御手段は、温度センサが検出する水の温度に応じて、単位時間当りの循環ポンプの回転数を変えることを特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯システム。
【請求項4】
ガイド配管は、その内径が戻り口の開口径と略同じかそれより大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項5】
ガイド配管の下端は、往き口と間隔を隔てて対向するように備えられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項6】
加熱手段がヒートポンプであることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の貯湯式給湯システム。
【請求項7】
ガイド配管は、貯湯タンク内を仕切ることによって形成される複数本の細管を備えるハニカム体であって、
複数本の細管は、それぞれ、下端が往き口側に備えられ、上端が戻り口側に備えられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の貯湯式給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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