説明

貯湯式給湯装置

【課題】高温水が圧力調整用の膨張水として、過圧逃がし弁から排水されることを極力防止した貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】給水管14と出湯管12が接続され湯水を貯湯する貯湯タンク16と、前記貯湯タンク16内の湯水を加熱する加熱手段1と、前記出湯管12からの高温水と給水管14からの給水とをミキシングして設定温度の給湯を行う給湯ミキシング弁27とを備えたもので、前記給湯ミキシング弁27と貯湯タンク16との間には出湯管12からの高温水と貯湯タンク16中間部の中温水とをミキシングする中温水ミキシング弁34を備えると共に、この中温水ミキシング弁34の出湯側には過圧逃がし弁36を設け、沸き上げ加熱中には中温水取り出し管35側の連通から出湯管12側への連通に切換るようにしたので、膨張水として排水されるのはまだ加熱されていない中温水となり、無駄がなく効率の良い圧力調整が行われるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヒートポンプ給湯機や電気温水器等の貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものに於いては、出湯管途中に過圧逃がし弁を備え、貯湯タンク内の湯水の沸き上げ加熱時に、該貯湯タンク内に発生する膨張水を逃がし、貯湯タンク内を常に所定圧力状態に維持するものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開平7−103569号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、折角高温に加熱した湯水が膨張水として排水されてしまうので、無駄が多く効率が極めて悪いものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明はこの点に着目し上記課題を解決する為、特にその構成を、請求項1では、給水管と出湯管が接続され湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記出湯管からの高温水と給水管からの給水とをミキシングして設定温度の給湯を行う給湯ミキシング弁とを備えたものに於いて、前記給湯ミキシング弁と貯湯タンクとの間には出湯管からの高温水と貯湯タンク中間部の中温水とをミキシングする中温水ミキシング弁を備えると共に、この中温水ミキシング弁の出湯側には過圧逃がし弁を設け、沸き上げ加熱中には中温水取り出し管側の連通から出湯管側への連通に切換るようにしたものである。
【0005】
又請求項2では、前記中温水ミキシング弁の過圧逃がし弁との連通切換は、沸き上げ加熱時間或いは沸き上げ湯温によって行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、貯湯タンクの沸き上げ中は過圧逃がし弁に中温水取り出し管を連通させるので、膨張水として排水されるのはまだ加熱されていない中温水となり、無駄がなく効率の良い圧力調整が行われるものであり、更に貯湯タンク内の上部に溜まった空気を抜く時には、出湯管側に切換れば良いもので、従来と変わることなく安心して使用出来るものである。
又上記の切換を沸き上げ時間や沸き上げ温度で行えば、的確で確実な制御が行え極めて使用勝手が良くなるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次にこの発明の一実施形態を図1〜図4に基づき説明する。
1は加熱手段を構成するヒートポンプユニット、2は貯湯タンクユニット、3は給湯混合水栓、4は床暖房パネル等の暖房負荷端末である。
【0008】
前記ヒートポンプユニット1は、圧縮機5と凝縮器としての冷媒−水熱交換器6と減圧器7と蒸発器8で構成されたヒートポンプ回路9と、被加熱水を冷媒−水熱交換器6に循環させるヒーポン循環ポンプ10と、それらの駆動を制御するヒーポン制御部11とを備えており、ヒートポンプ回路9内には冷媒として二酸化炭素が用いられて超臨界ヒートポンプサイクルを構成しているものである。なお、冷媒に二酸化炭素を用いているので、低温水を電熱ヒータなしで約90℃の高温まで沸き上げることが可能なものである。
【0009】
ここで、前記冷媒−水熱交換器6は冷媒と被加熱水とが対向して流れる対向流方式を採用しており、超臨界ヒートポンプサイクルでは熱交換時において冷媒は超臨界状態のまま凝縮されるため効率良く高温まで被加熱水を加熱することができ、被加熱水の冷媒−水熱交換器6入口温度と冷媒の出口温度との温度差が一定になるように前記減圧器7または圧縮機5を制御することで、被加熱水の冷媒−水熱交換器6の入口温度が5〜20℃程度の低い温度であるとCOP(エネルギー消費効率)が3.0以上のとても良い状態で被加熱水を加熱することが可能なものである。
【0010】
前記貯湯タンクユニット2は、上端に出湯管12と連なる出湯口13を有し、下端に給水管14と連なる給水口15を有した貯湯タンク16を備えている。この貯湯タンク16の下部にはヒーポン往き口17が、上部にはヒーポン戻り口18が設けられ、前記ヒートポンプユニット1の冷媒−水熱交換器6に連通するヒーポン循環回路19によって貯湯タンク16内の湯水が循環可能に接続されている。なお、この貯湯タンク16は約370L程度の容量を保有しているものである。
【0011】
20は前記床暖パネル4の加熱源としての熱交換器で、その一次側には貯湯タンク16上部に連通する高温水取出し口21と貯湯タンク16下部の中温水戻り口22とを熱利用循環ポンプ23を備えた熱利用循環回路24で貯湯タンク16内の湯水が循環可能に接続されており、また、二次側には床暖パネル4と循環可能に接続する二次側回路25と二次側循環ポンプ26が備えられているものである。
【0012】
次に27は出湯管12からの湯水と給水管14からの低温水を混合する給湯ミキシング弁であり、その下流の給湯管28に設けた給湯温度センサ29で検出した湯温がリモコン30でユーザーが設定した給湯設定温度になるように混合比率を制御するものである。このリモコン30は給湯温度設定スイッチ31を有しており、給湯温度を35〜60℃の範囲で任意に設定可能としていると共に、暖房を開始させる暖房スイッチ32を有しているものである。
【0013】
33は貯湯タンク16の中間高さ位置に設けた中温水取り出し口で、出湯管12の出湯口13と給湯ミキシング弁27との間に設けた中温水ミキシング弁34の入力側に中温水取り出し管35を介して接続されている。この中温水取り出し口33および中温水取り出し管35は前記熱交換器20で二次側と熱交換して温度低下した中温水を貯湯タンク16から出湯するもので、この中温水を前記中温水ミキシング弁34にて出湯管12を流れる高温水と混合して給湯ミキシング弁27の供給するものである。
【0014】
36は中温水ミキシング弁34と給湯ミキシング弁27を連通する出湯管12途中に備えられた過圧逃がし弁で、出湯管12側が100%で貯湯タンク16上部と連通する状態と、中温水取り出し管35側が100%で貯湯タンク16の中間と連通する状態に、中温水ミキシング弁34で切換られるもので、この切換は貯湯タンク16の沸き上げ加熱中に高温水を膨張水として排水しない為のものである。
【0015】
37は貯湯タンク16の上下方向に複数個配置された貯湯温度センサで、この貯湯温度センサ37がどの高さ位置まで所定温度(例えば50℃)以上を検出しているかによって、貯湯タンク16内にどれだけの熱量が残っているかを検知するものであり、又沸き上げ加熱中はこの貯湯温度センサ37の検知温度で中温水ミキシング弁34の流路切換を行うもので、沸き上げ当初は中温水取り出し管35側で、中間部のも高温となることで出湯管12側に切換るものである。
【0016】
38は貯湯タンクユニット内のセンサの入力を受けアクチュエータの駆動を制御するマイコンを有した給湯制御部である。この給湯制御部38に前記リモコン30が無線または有線により接続されユーザーが任意の給湯設定温度を設定できるようにしているものである。
【0017】
なお、39は給水の温度を検出する給水温度センサ、40は給水の圧力を減圧する減圧弁、41は給湯する温水の量をカウントする流量カウンタである。
【0018】
次にこの実施形態の作動を説明する。
まず、図2に示す沸き上げ加熱運転について説明すると、深夜電力時間帯になって貯湯温度センサ37が貯湯タンク16内に翌日に必要な熱量が残っていないことを検出すると、給湯制御部38はヒーポン制御部11に対して沸き上げ開始指令を発する。指令を受けたヒーポン制御部11は圧縮機5を起動した後にヒーポン循環ポンプ10を駆動開始し、貯湯タンク16下部のヒーポン往き口17から取り出した5〜20℃程度の低温水を冷媒−水熱交換器6で70〜90℃程度の高温に加熱し、ヒーポン循環回路19を介して貯湯タンク16上部のヒーポン戻り口18から貯湯タンク16内に戻してやり、貯湯タンク16の上部から順次積層して高温水を貯湯していく。貯湯温度センサ37が必要な熱量が貯湯されたことを検出すると、給湯制御部38はヒーポン制御部11に対して沸き上げ停止指令を発し、ヒーポン制御部11は圧縮機5を停止すると共にヒーポン循環ポンプ10も停止して沸き上げ動作を終了するものである。
【0019】
そして、この沸き上げ加熱運転時に過圧逃がし弁36では、沸き上げ開始当初は貯湯タンク16内の湯水温度は低温であるので、中温水ミキシング弁34が中温水取り出し管35と過圧逃がし弁36とを連通させ、貯湯タンク16内の湯水の温度上昇による膨張水の排水を、中温水取り出し管35からのまだ温度上昇していない低温水とするものであり、又沸き上げが進んで貯湯タンク16の中温水取り出し口33部分の湯水温度も高温となって来た時には、貯湯温度センサ37がこの温度を検知し、中温水ミキシング弁34を中温水取り出し管35と過圧逃がし弁36の連通から、出湯管12と過圧逃がし弁36の連通に切換て、貯湯タンク16内の上部に形成される空気を過圧逃がし弁36から排出するものである。
【0020】
これによって、折角高温に加熱された高温水が膨張水として排水されることがなく、無駄がなく効率の良い圧力調整が行われるものであり、更に貯湯タンク内の上部に溜まった空気を抜く時には、出湯管側に切換れば良いもので、従来と変わることなく安心して使用出来るものである。
【0021】
次に図3に示す暖房運転について説明すると、リモコン30の暖房スイッチ32をONすると、給湯制御部38は熱利用循環ポンプ23および二次側循環ポンプ26を駆動開始し、高温水取出し口21から取り出した70〜90℃程度の高温水を熱交換器20に流入させ、二次側回路25の温水と熱交換させ、熱交換により30〜50℃程度に温度低下した中温水が中温水戻り口22から貯湯タンク16下部に戻り、高温水と入れ替わる形で高温水と中温水の境界面を押し上げるようにして中温水が貯湯されるものである。二次側では、熱交換器20にて加熱された温水が床暖房パネル4に流入し、被暖房空間を暖房して再度熱交換器20に循環するものである。そして、リモコン30の暖房スイッチ32をOFFすると、給湯制御部38は熱利用循環ポンプ23および二次側循環ポンプ26を駆動停止して暖房運転を停止する。
【0022】
そして、図4に示す給湯運転について説明すると、給湯混合水栓3を開くと、給水管14からの給水圧により貯湯タンク16内の高温水が上端部の出湯口13から押し出されると同時に中温水が中温水取り出し口33より押し出される。押し出された70〜90℃程度の高温水および30〜50℃程度の中温水はそれぞれ出湯管12および中温水取り出し管35を介して中温水ミキシング弁34へ流入し、約65℃の温水に混合される。混合された温水は給湯ミキシング弁27へ流入し、給水管14からの5〜20℃程度の低温水と混合されてユーザーがリモコン30で設定した給湯設定温度に調節され、給湯混合水栓3から給湯される。
【0023】
この時、前記中温水戻り口22は貯湯タンク16最下端の給水口15および下部のヒーポン往き口17よりも高い位置の貯湯タンク16に設けているため、暖房運転により中温水戻り口22から中温水が貯湯タンク16の下部に戻されても、給湯の使用により貯湯タンク16下端から給水管からの低温水が流入することで貯湯タンク16の最下端には低温水が確保されることとなり、次回の沸き上げの際には必ず低温水から沸き上げることができるという効果がある。また、前記高温水取出し口21は出湯口13から連なる出湯管12途中に設けられていて、貯湯タンク16の開口部を減らすことができるものである。
【0024】
又中温水取り出し口33が中温水戻り口22よりも高い位置に設けられているので、中温水戻り口22と中温水取り出し口33との間にある程度の容量を確保でき、熱交換器20で温度低下した中温水をその容量分だけ一時的に貯めておくことができることとなり、中温水取り出し口33より高い位置に貯められてしまう中温水の量を少なくすることができる。詳しくは、中温水取り出し口33が貯湯タンク16の中間高さ位置程度にあるので中温水戻り口22と中温水取り出し口33との間に約90〜120L程度の容量を確保でき、熱交換器20で温度低下した中温水をその容量分だけ一時的に貯めておくことができることとなり、中温水取り出し口33より高い位置に貯められてしまう中温水の量を少なくすることができる。すなわち中温水取り出し口33から取り出すことができない中温水を極力少なくすることができるものである。
【0025】
ここで、もし中温水戻り口22と中温水取り出し口33とが同じ高さにあった場合には、中温水が中温水戻り口22より高い位置に貯められてしまう場合があり、これを中温水戻り口22と同じ高さにある中温水取り出し口33から取り出すことができないため、中温水が発生すると同時にこの中温水を給湯に用いる必要があり、さもなければ多量に給湯を行って中温水が貯湯タンク16上端部の中温水取り出し口13にまで押し上げられるまで貯湯タンク16内に中温水が貯湯されてしまうこととなる。しかし、この実施形態では上記のように中温水戻り口22よりも高い位置に中温水取り出し口33が設けられているため、この高さの差分の容量だけ中温水の発生から利用までの容量的あるいは時間的余裕ができ、中温水をある程度の容量分発生させてから時間的間隔をおいて給湯を行っても中温水を給湯に用いることができる効果がある。
【0026】
このように、給湯の際に暖房熱源として利用された中温水を高温水よりも優先して貯湯タンク16の途中から取り出して給湯するので、高温水を給湯しきるまで中温水を給湯できないと行った不具合がなく、給湯を行う度に貯湯タンク16内の中温水が減って給水管14からの低温水に入れ替わって、深夜の沸き上げ動作を行う時には沸き上げ効率の悪い中温水ではなく、温度の低い低温水をヒートポンプ回路9で沸き上げることとなり、沸き上げの効率が向上しヒートポンプ式給湯装置としてのCOP(エネルギー消費効率)が良くなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明一実施形態の概略構成図。
【図2】同沸き上げ加熱運転の作動の説明図。
【図3】同暖房運転の作動の説明図。
【図4】同給湯運転の作動の説明図。
【符号の説明】
【0028】
1 加熱手段
12 出湯管
14 給水管
16 貯湯タンク
27 給湯ミキシング弁
34 中温水ミキシング弁
35 中温水取り出し管
36 過圧逃がし弁
37 貯湯温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水管と出湯管が接続され湯水を貯湯する貯湯タンクと、前記貯湯タンク内の湯水を加熱する加熱手段と、前記出湯管からの高温水と給水管からの給水とをミキシングして設定温度の給湯を行う給湯ミキシング弁とを備えたものに於いて、前記給湯ミキシング弁と貯湯タンクとの間には出湯管からの高温水と貯湯タンク中間部の中温水とをミキシングする中温水ミキシング弁を備えると共に、この中温水ミキシング弁の出湯側には過圧逃がし弁を設け、沸き上げ加熱中には中温水取り出し管側の連通から出湯管側への連通に切換るようにした事を特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記中温水ミキシング弁の過圧逃がし弁との連通切換は、沸き上げ加熱時間或いは沸き上げ湯温によって行うようにした事を特徴とする請求項1記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−64344(P2006−64344A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250437(P2004−250437)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)