赤レタス
本発明は、芯を含めた結球全体にわたって赤い葉を有する、ラクチュカ・サチヴァ種の結球性レタス植物に関する。芯における赤い葉は、波長が400nmより短い光線が存在しなくても赤く、その際、播種から観測時までの全期間の生育環境で、400nmより短い波長の光線が存在しない。アントシアニンとクロロフィルとの間の比率は、4から50の間、好ましくは9から27の間である。本発明は上記植物の子孫にも関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤レタス植物と、それから得ることができるレタスの結球と、上記レタスの赤色の原因である遺伝子複合体とに関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式の変化、ならびに色彩が豊かで興味深い飾りを求めるレストランおよび配膳業者による需要、そしてすぐに使用できる加工済みサラダを求める主婦による需要さえ上昇し続けている。その結果、育種会社は際立った色、より良い風味、そして多彩な食感を有する品種を探求している。レタス市場は、3つの群、すなわち結球全体まるごと、結球全体をプレカットしたもの、およびベビーリーフに分けることができる。
【0003】
現在、プレカットレタス混合物中の魅力的な赤色は、しばしば、現在利用可能な「赤」レタス(ラクチュカ・サチヴァ(Lactuca sativa))によって、あるいはラデッキオロッソ(チコリウム・インティブス(Cichorium intybus))、赤キャベツまたは赤フダンソウによって提供されている。今までに知られている「赤」レタスは、本当に葉全体が赤いわけではない。特に、結球型は、葉縁に沿ってのみ赤いものか、赤が斑入りしているものである。それらは、芯まで完全に赤いことは決してない。これは、結球における、日光、より詳細には紫外線にさらされている部分のみでそれらの赤色が発現されるという事実によって引き起こされる。したがって、いわゆる「赤」レタスの葉は、その大部分が緑色であり、それらの赤色はプレカットレタス混合物の赤色印象にはほとんど寄与しない。
【0004】
葉の赤い部分と緑色の部分との間の移行段階で茶色を呈することが多い。この茶色は、視覚的に魅力ないものと考えられている。赤い斑入りのレタスは、植物疾患または血痕斑(bloodstain)と関連している。現在のところ、植物育種家は、茶色のものも、赤い斑入りのものも不可として選択する。加えて、斑入りまたは茶色のレタスの葉は、レタス包装産業および消費者の両方において廃棄されるのが多く見られることさえある。
【0005】
レタス以外の他の植物の葉を用いることの不都合は、これらの他の植物の異なった風味がしばしば望ましくないものとして経験されることである。例えば、ラデッキオロッソは、にがみを有するチコリウム・インティブスである。赤キャベツの食感は、それよりはるかに柔らかいレタスの食感とは完全に異なっている。
【0006】
レタスにおけるアントシアニン合成は紫外線によって誘導される(例えば、VoipioおよびAutio、1995年、「Responses of red−leaved lettuce to light intensity、UV−A radiation and root zone temperature.」、Acta Horticulturae 399、「Greenhouse environmental control and automation.」、BJ Bailey、T Takakura編集、日本国京都所在、183〜187頁;Benoitら、1998年、「Effect of a photoselective greenhouse film on a few vegetable crops in the Belgian North Sea climate.」、第14回「プラスチックを利用した農業」の国際会議、イスラエル国テルアビブ、1997年3月、Laser Pages Publishing社、イスラエル国エルサレム所在、81〜92頁;Krizekら、1998年、「Inhibitory effects of ambient levels of solar UV−A and UV−B radiation on growth of cv. New Red Fire lettuce.」、Physiologia Plantarum 103(1)、1〜7頁;Kleinhenzら、2003年、「Variety、shading、and growth stage effects on pigment concentrations in lettuce grown under contrasting temperature regimens.」、Hortechnology 13(4)、677〜683頁を参照)。多くの植物における赤色の発生は、アントシアニンの産生に依存している。
【0007】
レタスの多くの様々な品種は、しばしば3つのタイプに分類される。最も一般的なのはヘッドレタスであり、それにはクリスプヘッド(またはアイスバーグ)およびバターヘッドがある。ローメインレタス(またはコスレタス)は、直立したゆるい結球を形成する。「葉」レタスタイプは、非結球性であり、葉がばらばらである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結球性レタスタイプでは、結球の芯は、多かれ少なかれ閉鎖されており、光は到達できない。したがって、アイスバーグレタスおよびバターレタスなどの閉じた結球、または緩く閉じた結球を有するローメインレタスではアントシアニン産生を有することができない。
【0009】
関連した問題は、ガラス温室、ビニールトンネル、または密閉容器内で栽培された赤レタスの赤色化の不足である。紫外線は、ガラスまたはプラスチックの覆いによって反射され、または人工の同化光スペクトルで欠如しており、紫外線の不足のため、アントシアニンの発現は屋外条件よりはるかに少ない。これは、屋内条件下で赤レタスを産生する可能性を低減し、したがって、寒気、熱、およびあらゆる種類の降水など、有害な天気から保護された赤レタスを産生する可能性を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この度、芯を含めた結球全体にわたって赤い葉を有する赤レタスを提供する。本発明の赤レタスの芯葉は、本質的に完全に赤く、これは、それらが独特な高アントシアニン/クロロフィル比を含有することを意味する。これは、アントシアニンの合成に必要であると考えられている光、より詳細にはUV光が結球の芯にまで透過できないので、極めて驚くべきことである。これは、本発明のレタスでは、光非依存性の機構がアントシアニン産生の原因となっていることを実証する。
【0011】
この光非依存性は、ガラスもしくはプラスチックの下、または密閉容器内における、結球性または非結球性の赤レタスの栽培を可能にする。後者では人工的同化照明を使用し、これは通常、赤色の発色に問題を与える。これは、通常、アントシアニン合成を誘導するのに必須であるUV波長(280〜400nm)が多かれ少なかれこの光スペクトルで不足しているという事実による。
【0012】
ガラスまたはプラスチックの下では、覆いの強度なUV遮断によって、紫外線の同様な不足が通常引き起こされる。しかし、そのUV非依存性のアントシアニン発現のため、本発明の赤レタスは、ガラス温室、ビニールハウス、および密閉容器内での栽培に適している。これは、本発明の光非依存性作用機序のためであり、それは、「UV非依存性アントシアニン発現」または「UV非依存性赤色化」とも表されるであろう。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、アントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間、好ましくは9から27の間である。
【0014】
本発明におけるアントシアニン発現が紫外線に完全に非依存性であるか、または通常の赤レタス植物におけるアントシアニン発現に通常必要とされるよりはるかに低いレベルの紫外線によってそれが引き起こされるのかどうかは、いまだ完全には知られていない。しかし、本発明の実用的な有用性には、この相違は重要ではない。
【0015】
本発明は結球性レタス型に特に有用であるが、本発明の光非依存性の赤色化は、葉レタスなどの他のレタス型、およびベビーリーフ生産でも使用できる。ベビーリーフ生産は、小さくて未熟な葉を採取するための若いレタス植物の生産である。
【0016】
本発明の赤レタスの系図を実施例1に示す。
【0017】
本発明は、結球の芯に赤い葉を有する元の親、および芯葉におけるクロロフィルとアントシアニンとの間の比率など、本発明の他の要件のうち1つまたは複数を満たす元の親のすべての子孫に関する。
【0018】
加えて、本発明のUV非依存性赤色化を有する非結球性植物、分離葉植物、またはベビーレタス植物は、完全に赤い結球性レタス植物の子孫であると考えられ、したがって、本発明の一部である。
【0019】
既に本発明のレタス植物であるレタス植物、またはそれをもたらしうるレタス植物の選択は、赤色化した幼植物の肉眼選抜に基づいて行うことができる(ステップ1)。それに続いて、それらをガラスまたはプラスチックの下で生育させることによって、UV依存性のアントシアニン発現、すなわち、弱い赤色化と、UV非依存性のアントシアニン発現、すなわち、比較的強い赤色化とを識別することができる。後者の植物を植え、それらが結球するまで生育させる。その後、各植物の上端を切ることによって、赤い芯葉を有する植物の肉眼選抜を行う。その後、芯が赤い植物を選択して、子孫の種子を生産する。
【0020】
赤色化のレベルを増強させるため、および/または成熟植物における要求されているレベルの結球性を獲得するために、交雑株を選択する。
【0021】
本明細書で使用される場合、レタス植物は、特徴的な「結球」に関するUPOVのガイドライン(「TG/13/9.Lettuce(Lactuca sativa L.) Guidelines for the conduct of tests for distinctness, uniformity and stability.」、International Union for the Protection of New Varieties of Plants、スイス国ジュネーブ所在、2004年)に従って、それが「オープンヘッド」または「クローズドヘッド」を有する場合に、結球性であると定義される。
【0022】
本発明のレタスの芯は、好ましくは9より高い、より好ましくは13以上の、クロロフィルとアントシアニンの吸光度比A523/A665を有する。通常の赤レタスでは、この比率が3より高いことは決してなかった。本発明の比率を決定するのに使用するクロロフィル濃度およびアントシアニン濃度は、分光光度法によって測定する。試料の調製および分析は実施例2に示す。
【0023】
本発明の芯葉と同程度に高いアントシアニンレベルが、非結球性の他のレタス品種で見出される可能性に留意するべきである。そのような非結球性の品種の一部の例が、40−0203103−B(Knerr LD、2005年、レタス栽培品種40−0203103−B、米国特許出願第2005/0144672A1号)、ガラクティック(Galactic)、ニューレッドファイヤー(New Red Fire)、ロリナ(Rolina)(Kleinhenzら、2003年、「Variety、shading、and growth stage effects on pigment concentrations in lettuce grown under contrasting temperature regimens.」、Horttechnology 13(4)、677〜683頁)、レッドサラダボール(Red Salad Bowl)、およびセサム(Sesam)(Voipio I.およびAutio J.、1995年、「Responses of red−leaved lettuce to light intensity、UV−A radiation and root zone temperature.」、Acta horticulturae 399、183〜187頁)である。
【0024】
しかし、これらの品種は、非結球性の特性による高度な光曝露の結果、本発明の芯葉と比較して、クロロフィルレベルが非常に高い芯葉を有する。一方、結球性品種は、芯葉に、本発明の芯葉に類似した低クロロフィルレベルを有することが見出される可能性がある。しかし、これらの結球性品種の芯葉は、本発明の芯葉と比較して、高アントシアニンレベルを示さない。芯葉の光曝露が弱いため、通常、アントシアニン合成は貧弱にしか誘導されない。本発明では、アントシアニン産生がUV非依存性である。これは、なぜ本発明のアントシアニン/クロロフィル比が前例がないほど高レベルであるかを説明する。
【0025】
UV非依存性であるこの新型の赤色化は、結球性レタス植物で見出され、開発されたものであって、従来技術で提示された赤色化とは異なる。しかし、本発明は、本発明の「UV非依存性赤色化」という特徴を有する、分離葉もしくはベビーリーフレタス植物などの非結球性レタス植物、またはUV量が少ない場所であるガラス温室内もしくはプラスチックの下で栽培されたレタス植物にも関する。
【0026】
芯葉の赤色化は、RHSカラーチャート(王立園芸協会(The Royal Horticultural Society)、英国ロンドン所在)でも評点した。本発明の芯葉、とりわけ葉の頭頂部の葉身色は、183A、184A、または187Bと評点されたが、これらはすべて灰紫色グループに属した。葉身の残りの部分の色は、180B、180C、180D、または181Cと評点されたが、これらはすべて灰赤色グループに属した。
【0027】
ガラスまたはプラスチックの下、すなわち屋外条件での光と比較して紫外線レベルが低減している状態で栽培された植物における赤色化およびアントシアニン発現も評点することが可能である。ここでも、本発明の植物は、通常の赤レタスより、高レベルのアントシアニンおよび濃い赤色を示しうる。特に、本発明の植物の新生葉は、通常の赤レタス植物の新生葉よりはるかに赤い。
【0028】
本発明の赤レタスの遺伝解析は、実施例2に記載の通りに行った。この解析で、少なくとも3つの遺伝子が結球の芯の赤色化に関与していることが見出された。
【0029】
したがって、本発明は、アントシアニンを発現することができて、それに加えて、少なくとも、結球の芯の赤色化に関与する3つの遺伝子を有するレタス植物に関する。本発明の植物は、実施例2に記載の完全な遺伝子複合体を含むことが好ましい。
【0030】
AFLP、RFLP、RAPD、SCAR、CAPS、SSR、またはSNPなど、密接に連鎖したDNAマーカーによって、本発明の赤色化に関与する遺伝子座の存在を評価するのが可能である。例えば、上述の集団およびその子孫におけるマーカー形質連鎖解析によって、そのような密接に連鎖したDNAマーカーを得ることができる。
【0031】
本発明のように、あるレタス植物に、内葉赤色化に関する類似遺伝子構成が存在するかどうか、すなわち、あるレタス植物が本発明による植物であるかどうかの評価は、そのような潜在的な本発明の植物の表現型を、既知の本発明の植物の表現型と比較することによって、容易に評価することができる。例えば、内葉の赤色化、芯葉のアントシアニン/クロロフィル比、および/またはガラスもしくはプラスチックの下で栽培された植物の赤色化によって、表現型を評価することができる。
【0032】
潜在的な本発明の植物と、既知の本発明の植物との間の遺伝子構成の類似性を評価する別の方法は、上記潜在的植物のマーカー遺伝子型を既知の本発明の植物のマーカー遺伝子型と比較することである。上記マーカー遺伝子型は、本発明の赤色発現に関与する遺伝子座と密接に連鎖しているAFLP、RFLP、RAPD、SCAR、CAPS、SSR、またはSNPなどの、1セットのDNAベースマーカーによって定義する。
【0033】
遺伝子構成の類似性を評価する別の方法は、潜在的な本発明の植物の遺伝子型を既知の本発明の植物の遺伝子型と比較することである。この遺伝子型比較は、上記潜在的な植物と、既知の本発明の植物との間の交雑から生じたF1植物を自己受精させることによって得られるF2集団に関して行う。表現型、すなわち内葉の赤色化の分離が存在しないかどうか、F2集団を調査することができる。すべての比較において、例えば、芯葉のアントシアニン/クロロフィル比、またはガラスもしくはプラスチックの下で栽培された植物における赤色化によって、表現型を評価することができる。
【0034】
本発明による赤レタス植物の種子は、アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339の下に、2005年7月18日にNCIMBに寄託した。
【0035】
本発明は、これらの種子の子孫、ならびに本発明による赤色化をもたらす、本発明の植物の遺伝子構成または遺伝子複合体を交雑によって、または分子生物学的技法によって獲得した植物にも関する。本発明は、本発明の赤色化の形質を維持しているか、獲得したこれらの植物の子孫にも関する。
【0036】
赤色の原因となる遺伝子を別の植物に導入するために、戻し交雑育種法を用いることができる。これには、望ましいホモ接合型品種または近交系植物が、反復親となる。導入される形質の供給源は、供与親と呼ばれる。この結果得られる植物は、反復親(例えば栽培品種)の特質と、供与親から導入された望ましい形質とを有すると予測される。最初の交雑の後、供与親の表現型(芯における葉の赤色化)を有する個体を選択し、繰り返して反復親と交雑(戻し交雑)する。この結果得られる植物は、反復親(例えば栽培品種)の特質と、供与親から導入された望ましい形質とを有すると予測される。赤色化の遺伝がもう一方の望ましい形質または形質の組合せの遺伝より複雑である場合、赤色化した芯葉を有する親を反復親として用いることができ、もう一方の望ましい形質または形質の組合せを有する親を供与親として用いることができる。様々な形質および作物に一般的に使用される他の育種法の詳細は、いくつかの参考図書(例えば、「Principles of Plant Breeding」John Wiley and Son社、115〜161頁、1960年;Allard、1960年;Simmonds、1979年;Sneepら、1979年;Fehr、1987年)の1つに見出すことができる。
【0037】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、それらは単なる例示であって、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
本発明の赤レタスの系図
以下の系図に従って、本発明のレタスを獲得した。すなわち、1986年に、品種ピッポ(Pippo)(Rijk Zwaan社;赤色)の植物体と、品種ブロンドマレシェール(Blonde Maraichere)(Caillard社;緑色)の植物体との間で交雑株を作製した。
【0039】
1988年に、この交雑株から得た赤い子孫植物を、品種グリンゴ(Gringo)(Rijk Zwaan社;赤色)の植物体との交雑における父親として用いた。同年に、品種ピエロ(Pierrot)(Rijk Zwaan社;赤色)の植物体と、品種ロクセット(Roxette)(Rijk Zwaan社;緑色)の植物体との間の交雑株を作製した。
【0040】
1989年に、この交雑株から得た赤い子孫植物を、品種クリチェット(Krizet)(Rijk Zwaan社;緑色)の植物体との交雑における父親として用いた。
【0041】
1992年に、上述のクリチェット×(ピエロ×ロクセット)交雑株から赤いF3子孫植物体を選択し、それを、上述のグリンゴ×(ピッポ×ブロンドマレシェール)交雑株から選択された赤い子孫植物体である父親植物体との交雑における母親として用いた。1995年に、この新たに得られた1992年交雑株から赤いF4植物体を選択し、品種ロクセット(Rijk Zwaan社;緑色)の植物体との交雑における母親として用いた。
【0042】
型、結球性、および色に関する選択を、この交雑株から得られたF2、F3、およびF4世代で行い、その結果、1998年に赤いF4植物体(98P.31582)を得た。F5系統は色の分離(赤対緑色)を現したが、次の世代での選択の結果、完全に赤い芯葉を有する3体の結球性F5植物体(99P.38152;99P.38154;99P.30637)が得られた。これらを、その後、増殖させた。
【0043】
子孫は緑色植物の分離を示さなかった。そして、種子は番号02R.2413、01R.1439、02R.2418の下に寄託した。これらのF5植物およびそれらの子孫は、光非依存性の赤色化を有するレタスのさらなる育種のための親株供給源として用いられた。
【0044】
結論として、使用された親品種、すなわち、ピッポ、ブロンドマレシェール、グリンゴ、ピエロ、ロクセット、およびクリチェットのいずれも、結球の芯に特徴的な赤い葉を有していなかったと言うことができる。本発明は、これらの赤色および緑色の親品種に由来する遺伝子の独特かつ新規な組合せを含み、この組合せは、結球の芯に完全に赤い葉を生じさせるものである。
【0045】
(実施例2)
本発明の赤レタスの遺伝解析
本明細書で使用される場合、遺伝子座(locus)(複数形:loci)は、ある遺伝子が位置する染色体上の特定位置と定義される(Griffiths AJF、Miller JH、Suzuki、DT、Lewontin RC、Gelbart,WM、「An introduction to genetic analysis.」、第6版、1996年、WH Freeman and Company社、米国ニューヨーク所在)。所与の植物体の赤色化の原因となっている遺伝子座の数は、この植物体と、緑色品種であるシャープシューター(Sharp Shooter)との交雑株の子孫を遺伝解析することによって確定できる。
【0046】
本発明の赤レタスの遺伝解析を以下の通りに行った。すなわち、F5植物、番号99P.30637、すなわち本発明の植物体の1つの子孫植物体と、明緑色(brilliant green)でないアイスバーグレタス植物である、品種シャープシューター(SVS、Waycottら、1999年:米国特許第5973232号明細書)との交雑を行った。この交雑の子孫から、212系統のランダムなF2植物をF3系統に増殖させた。
【0047】
これら212のF3系統を、オランダ国ファインアールト(Fijnaart)における秘密野外試験で評価した。2002年6月17日に、種子を泥炭塊上に播き、幼植物をガラス温室中で育て、2002年7月5日に野外に移植した。収穫日(観測時)は、2002年8月19日から8月23日までであった。区画サイズは、F3系統あたり24体の植物体、すなわち、6体の植物4列であった。1試行における色形質の発現が非常に安定していたので、系統の複製は行わなかった。F3植物体ごとに観察を行った。
【0048】
観察された形質は以下の通り、すなわち、a)色、そして赤の場合には、外葉におけるその強度、および発現パターン、b)色、そして赤の場合には、内葉におけるその強度、および発現パターン、c)結球の度合い、d)外葉が緑色である場合には、明色(brilliant)または非明色(non−brilliant)の2つのクラスにおける評点であった。
【0049】
赤色化の強度および発現パターンは、弱い順に示されている以下の通りに評点した。すなわち、1)薄く色付いているか、赤らんでいる。すなわち、外葉および内葉の縁、または内葉葉脚が軽く赤色化している。2)赤色の斑点を有する。3)緑色の斑点を有する。すなわち、赤い葉の表面に緑色の斑点がある。4)完全に赤い。すなわち、外葉部の光に曝される部分、および内葉の場合には内葉全体にわたって、斑点のない強い赤色である。
【0050】
結球性は、1)ローメインレタスまたはコスレタスのように、わずかに開いた結球と、2)アイスバーグレタスのように、明確に重なった葉を有する強い結球との間で評点した。
【0051】
この試験における一部の植物体は収穫の前に死んだ。意図されていた5088体、すなわち212×24体の植物体のうち、合計で5007体のF3植物が収穫段階にまで達し、評点を受けた(表1を参照)。
【0052】
すべての植物体が、少なくともローメインレタスまたはコスレタスに匹敵する結球レベルを示した。データは、合計212系統のうち、完全に緑色な55系統が分離したことを示した。少なくとも1体の赤色化した植物体を有していた157系統のうち、28系統は、すべて、外葉でアントシアニン発現を示した植物体からなっていた。これらの28系統のうち、8系統は、すべて、芯葉でアントシアニン発現を示した植物体からなっていた。少なくとも1体の赤色化した植物体を有していた157系統のうち、33系統における赤色化した植物体が、外葉のみでアントシアニン発現を示し、芯葉では示さなかった。上記157系統のうちの別の33系統における赤色化した植物体は、外葉および芯葉の両方で常にアントシアニン発現を示した。残りの91系統における赤色化した植物体は、すべて外葉でアントシアニン発現を示した。しかし、これらの植物体は、芯葉におけるアントシアニン発現の系統内分離を示した。アントシアニン発現のない緑色外葉を有し、かつ芯葉でアントシアニン発現を示す組合せのものは、5007体の植物体のうち1体の植物体もなかった。
【0053】
したがって、外葉におけるアントシアニン発現をもたらす1つまたは複数の遺伝子は、芯葉におけるアントシアニン発現にも必要であると結論される。赤色と緑色との間で分離があった場合、赤色と緑色との間での分離比は、外葉の色に関しては23:1から1:22の範囲であった。内葉に関しては、赤色化と緑色化との間での分離比は、緑色の外葉を有するすべての植物体を除外して、18:1から1:23の範囲であった。表1は、「99P.30637」×品種「シャープシューター」の交雑からランダムに取得した212のF3系統からなる集団に由来する、外葉および内葉の赤色化および緑色化を有する植物体の系統内分布を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
これらの分離データを、独立メンデル分離比の仮定のもとに遺伝モデルを構築するのに用いた。内葉におけるUV非依存性アントシアニン発現を得るのに、少なくとも3箇所の遺伝子座が関与していることが見出された。以下A−aと示す第1の遺伝子座は、既知の赤レタスにも存在し、アントシアニンの発現を得るのに、すべての場合で、優性対立遺伝子であるAが必要である。おそらくこの遺伝子座は、CまたはG遺伝子座である(Robinsonら、1983年、「The genes of lettuce and closely related species.」、Plant Breeding Reviews 1、J Janick編集、267〜293頁)。
【0056】
以下B−bと示す第2の遺伝子座は、モデルのフィッティングを行うことによって見出され、モデルでは、Aとの組合せにおいて、劣性対立遺伝子bがホモ接合型で存在することによって、外葉のアントシアニン発現が起こる。外葉におけるアントシアニン発現には、以下C−cおよびD−dと示すさらに2箇所の遺伝子座も関与していることが見出された。優性対立遺伝子Cが少なくとも1コピー存在するか、劣性対立遺伝子dがホモ接合型で存在することによって、外葉におけるアントシアニン発現が起こる。しかしこれは、対立遺伝子Aも、少なくとも1コピー存在している場合のみである。
【0057】
以下E−e、F−f、およびG−gと示すさらに3箇所の遺伝子座も見出された。内葉におけるUV非依存性アントシアニン発現を得るためには、優性であるE対立遺伝子1コピーの存在、またはf対立遺伝子のホモ接合型での存在、またはg対立遺伝子のホモ接合型での存在と併せて、少なくとも1コピーのA対立遺伝子と2コピーのb対立遺伝子の存在とが必要である。したがって、少なくとも3箇所の遺伝子座、すなわちA−a、B−b、およびE−e、F−f、もしくはG−gにおける、赤色化のための対立遺伝子の存在が、内葉におけるUV非依存性アントシアニン発現に必要である。さらに、上述した遺伝子座のうち少なくとも3箇所、おそらくは7箇所すべての遺伝子座が本発明の赤色化の強度に関与していると想定されている。
【0058】
(実施例3)
レタスの色、アントシアニン、およびクロロフィルの測定
1.試料の調製および分析
以下の仕様を有する分光光度計UltrospecIII(Pharmacia社)を用いた。
−モノクロメーター:ホログラフィック回折格子(1200列/mm)を有するツェルニーターナー分光計
−波長精度:±1nm
−波長再現精度:±0.5nm
−検出器型:単一固体シリコンフォトダイオード
−バンド幅:5nm
【0059】
2.原理
赤色(アントシアニン)および緑色(クロロフィル)は生化学的方法で測定する。1つは総アントシアニンの尺度である523nmの吸光度を測定するためであり、1つは総クロロフィル(クロロフィルaおよびb)の尺度である665nmの吸光度を測定するためである2つの抽出物を調製する。
【0060】
3.試料の調製
結球した成熟レタス植物を採取し、芯が残されるまで、外葉を除去する。レタスの芯は分析に用いる。植物体の頭頂における葉の小さな先端(最大10%)を除いて、収穫前に、芯葉が日光に直接さらされることがないようにするべきである。芯は、長さ1cm以上の葉を少なくとも10枚含有する。芯の最も古い葉は凹面であるべきである。
【0061】
芯をビニール袋に入れ、<−70℃で冷凍する。<−70℃で少なくとも数日の後、冷凍した芯を大ハンマーで粉末化する。細かくされた試料を、液体窒素の存在下で(試料は冷凍状態に保たれるべきである)自由に浮遊するフタを用いたGrindomix(GM200、Retsch社、3000rpmで5秒、その後5000rpmで5秒)中で粉砕して、細粉を得る。
【0062】
その後、上記粉末を管に入れ、粉末の入った管を液体窒素中で冷やし、所望により分析まで<−70℃で保存する。
【0063】
4.分析
3グラムの粉末を、50ml管4本に量り入れる。2本の管をアントシアニンの分析に用い、2本の管をクロロフィルの分析に用いる。
【0064】
アントシアニンの測定には、上記2本の管に、1.0M HClを含有する50%メタノールを直ちに添加する。試料および抽出物の色に応じて、5〜10ml/g試料を用いる。用いた容積(ml)を記録する。手操作で試料溶液を混合し、氷上に置く。溶液の一部を1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、4℃、13000rpm、4分間、遠心分離する。
【0065】
分光光度計を用いて、バンド幅5nmでスペクトルを測定する。1cmキュベットを用いる。
【0066】
360〜900nmのスペクトルを測定し、523nmの吸光度(必要な場合には抽出液で希釈した後)および最大波長(λmax)を決定する。λmaxは、約523nmであるべきである。
【0067】
クロロフィルは、上記2本の管に100%メタノールを直ちに添加することによって測定する。試料および抽出物の色に応じて、5〜10ml/g試料のメタノールを用いる。用いた容積(ml)を記録する。試料溶液は、手操作および「脱気設定(set degas)」の超音波漕で5分間、超音波処理することによって混合する。溶液の一部を1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、4℃、13000rpm、4分間、遠心分離する。
【0068】
360〜900nmのスペクトルを測定し、665nmの吸光度(必要な場合には抽出液で希釈した後)および最大波長(λmax)を決定する。λmaxは、約665nmであるべきである。
【0069】
A523およびA665を、10ml抽出容積中に1g新鮮重を含む溶液の吸光度を表すように補正する。A523およびA665の補正値は、次の数式を使用して、計量された試料(g)、抽出容積(ml)、および必要な場合は希釈率に関する補正を用いて計算する。
補正:
【0070】
【数1】
A523/A665の比率を計算する。
【0071】
表2aは、仏国アラモン(Aramon)におけるレタス(2002年1月10日に播種、2002年2月15日に移植、2002年4月25日に採取)で観測されたクロロフィルおよびアントシアニンの吸光度、ならびにアントシアニン/クロロフィル比を示す。系統01P.80146は、2世代の自家受精によって、植物99P.38154から得られた子孫系統である。ピエロ(Rijk Zwaan社)、ダークランド(Darkland)(Central Valley社)、シェラ(Sierra)(Vilmorin社)、およびロクシー(Roxy)(Enza社)は一般的なレタス品種である。
【0072】
表2bは、オランダ国ファインアールトで栽培されたレタス(2002年5月21日に播種、2002年6月10日に移植、2002年8月20日に採取)で観測されたクロロフィルおよびアントシアニンの吸光度、ならびにアントシアニン/クロロフィル比を示す。系統01P.80146は、2世代にわたる植物99P.38154の自家受精から得られた子孫系統である。ピエロ(Rijk Zwaan社)、ピッポ(Rijk Zwaan社)、レッドロザリータ(Red Rosalita)(Johnny’s Selected & Orsetti社)、ダークランド(Central Valley社)、シェラ(Vilmorin社)、およびロクシー(Enza社)は一般的なレタス品種である。
【0073】
【表2】
【0074】
(寄託情報)
F5植物である01R.1439、02R.2413、および02R.2418は、それぞれ寄託アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で、2005年7月18日に、英国アバディーン(Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen AB21 9YA,United Kingdom)所在のNCIMBに寄託した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】「99P.30637」×品種「シャープシューター」の交雑から取得した212のF3系統からなる集団に関する、外葉および内葉の赤色化の系統内分布を示す図である。この集団に、「赤い外側」、すなわち内葉の色に関係なく赤い外葉を有する植物体の系統内頻度;「赤い外側&赤い内側」、すなわち赤い外葉および赤い内葉を有する植物体の系統内頻度;「赤い内側/赤い外側」、すなわち赤い外葉を有する植物体の系統合計内における赤い内葉を有する植物体の頻度という、赤色化に関する3つの分類を適用した。○=観測値、E=遺伝モデルによる予測値。
【図2】「99P.30637」×品種「シャープシューター」の交雑における分離に基づいたアントシアニン発現に関する遺伝モデルを示す図である。
【図3】図3aは本発明の植物を示す図である。この幼植物は、系統03P82421から得た種子に由来する植物である。この系統は、三代にわたる植物99P38154の自家受精の後に得られた。図3b、3c、および3dは、それぞれ、親系統であるピエロ、ピッポ、およびグリンゴの幼植物を示す図である。図3eおよび3fは、それぞれ、比較品種であるアパッチ(Apache)およびビジュー(Bijou)の幼植物を示す図である。これらすべての幼植物は、16℃、14時間の明期、および12℃、10時間の暗期を有する栽培室中、泥炭塊上で栽培した。光は、植物体の上0.6mの距離にある、0.24平方mあたり1本の管のPhilips TLD 36W 840 REFLEX管によって与えた。
【図4】市販品種であるピッポ、ピエロ、およびグリンゴの幼葉との比較における、「NEW」と示されている本発明の植物の幼葉を示す図である。これらの幼植物は、16℃、14時間の明期、および12℃、10時間の暗期を有する栽培室中、泥炭塊上で栽培した。光は、植物体の上0.6mの距離にある、0.24平方mあたり1本の管のPhilips TLD 36W 840 REFLEX管によって与えた。
【図5】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるダークランド(「99R10044」と示されている;図5a〜5d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【図6】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるピエロ(「95G2237」と示されている;図6a〜6d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【図7】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるロクシー(「99R10283」と示されている;図7a〜7d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【図8】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるシェラ(「95G1986」と示されている;図8a〜8d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤レタス植物と、それから得ることができるレタスの結球と、上記レタスの赤色の原因である遺伝子複合体とに関する。
【背景技術】
【0002】
生活様式の変化、ならびに色彩が豊かで興味深い飾りを求めるレストランおよび配膳業者による需要、そしてすぐに使用できる加工済みサラダを求める主婦による需要さえ上昇し続けている。その結果、育種会社は際立った色、より良い風味、そして多彩な食感を有する品種を探求している。レタス市場は、3つの群、すなわち結球全体まるごと、結球全体をプレカットしたもの、およびベビーリーフに分けることができる。
【0003】
現在、プレカットレタス混合物中の魅力的な赤色は、しばしば、現在利用可能な「赤」レタス(ラクチュカ・サチヴァ(Lactuca sativa))によって、あるいはラデッキオロッソ(チコリウム・インティブス(Cichorium intybus))、赤キャベツまたは赤フダンソウによって提供されている。今までに知られている「赤」レタスは、本当に葉全体が赤いわけではない。特に、結球型は、葉縁に沿ってのみ赤いものか、赤が斑入りしているものである。それらは、芯まで完全に赤いことは決してない。これは、結球における、日光、より詳細には紫外線にさらされている部分のみでそれらの赤色が発現されるという事実によって引き起こされる。したがって、いわゆる「赤」レタスの葉は、その大部分が緑色であり、それらの赤色はプレカットレタス混合物の赤色印象にはほとんど寄与しない。
【0004】
葉の赤い部分と緑色の部分との間の移行段階で茶色を呈することが多い。この茶色は、視覚的に魅力ないものと考えられている。赤い斑入りのレタスは、植物疾患または血痕斑(bloodstain)と関連している。現在のところ、植物育種家は、茶色のものも、赤い斑入りのものも不可として選択する。加えて、斑入りまたは茶色のレタスの葉は、レタス包装産業および消費者の両方において廃棄されるのが多く見られることさえある。
【0005】
レタス以外の他の植物の葉を用いることの不都合は、これらの他の植物の異なった風味がしばしば望ましくないものとして経験されることである。例えば、ラデッキオロッソは、にがみを有するチコリウム・インティブスである。赤キャベツの食感は、それよりはるかに柔らかいレタスの食感とは完全に異なっている。
【0006】
レタスにおけるアントシアニン合成は紫外線によって誘導される(例えば、VoipioおよびAutio、1995年、「Responses of red−leaved lettuce to light intensity、UV−A radiation and root zone temperature.」、Acta Horticulturae 399、「Greenhouse environmental control and automation.」、BJ Bailey、T Takakura編集、日本国京都所在、183〜187頁;Benoitら、1998年、「Effect of a photoselective greenhouse film on a few vegetable crops in the Belgian North Sea climate.」、第14回「プラスチックを利用した農業」の国際会議、イスラエル国テルアビブ、1997年3月、Laser Pages Publishing社、イスラエル国エルサレム所在、81〜92頁;Krizekら、1998年、「Inhibitory effects of ambient levels of solar UV−A and UV−B radiation on growth of cv. New Red Fire lettuce.」、Physiologia Plantarum 103(1)、1〜7頁;Kleinhenzら、2003年、「Variety、shading、and growth stage effects on pigment concentrations in lettuce grown under contrasting temperature regimens.」、Hortechnology 13(4)、677〜683頁を参照)。多くの植物における赤色の発生は、アントシアニンの産生に依存している。
【0007】
レタスの多くの様々な品種は、しばしば3つのタイプに分類される。最も一般的なのはヘッドレタスであり、それにはクリスプヘッド(またはアイスバーグ)およびバターヘッドがある。ローメインレタス(またはコスレタス)は、直立したゆるい結球を形成する。「葉」レタスタイプは、非結球性であり、葉がばらばらである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
結球性レタスタイプでは、結球の芯は、多かれ少なかれ閉鎖されており、光は到達できない。したがって、アイスバーグレタスおよびバターレタスなどの閉じた結球、または緩く閉じた結球を有するローメインレタスではアントシアニン産生を有することができない。
【0009】
関連した問題は、ガラス温室、ビニールトンネル、または密閉容器内で栽培された赤レタスの赤色化の不足である。紫外線は、ガラスまたはプラスチックの覆いによって反射され、または人工の同化光スペクトルで欠如しており、紫外線の不足のため、アントシアニンの発現は屋外条件よりはるかに少ない。これは、屋内条件下で赤レタスを産生する可能性を低減し、したがって、寒気、熱、およびあらゆる種類の降水など、有害な天気から保護された赤レタスを産生する可能性を低減する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この度、芯を含めた結球全体にわたって赤い葉を有する赤レタスを提供する。本発明の赤レタスの芯葉は、本質的に完全に赤く、これは、それらが独特な高アントシアニン/クロロフィル比を含有することを意味する。これは、アントシアニンの合成に必要であると考えられている光、より詳細にはUV光が結球の芯にまで透過できないので、極めて驚くべきことである。これは、本発明のレタスでは、光非依存性の機構がアントシアニン産生の原因となっていることを実証する。
【0011】
この光非依存性は、ガラスもしくはプラスチックの下、または密閉容器内における、結球性または非結球性の赤レタスの栽培を可能にする。後者では人工的同化照明を使用し、これは通常、赤色の発色に問題を与える。これは、通常、アントシアニン合成を誘導するのに必須であるUV波長(280〜400nm)が多かれ少なかれこの光スペクトルで不足しているという事実による。
【0012】
ガラスまたはプラスチックの下では、覆いの強度なUV遮断によって、紫外線の同様な不足が通常引き起こされる。しかし、そのUV非依存性のアントシアニン発現のため、本発明の赤レタスは、ガラス温室、ビニールハウス、および密閉容器内での栽培に適している。これは、本発明の光非依存性作用機序のためであり、それは、「UV非依存性アントシアニン発現」または「UV非依存性赤色化」とも表されるであろう。
【0013】
本発明の特定の実施形態では、アントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間、好ましくは9から27の間である。
【0014】
本発明におけるアントシアニン発現が紫外線に完全に非依存性であるか、または通常の赤レタス植物におけるアントシアニン発現に通常必要とされるよりはるかに低いレベルの紫外線によってそれが引き起こされるのかどうかは、いまだ完全には知られていない。しかし、本発明の実用的な有用性には、この相違は重要ではない。
【0015】
本発明は結球性レタス型に特に有用であるが、本発明の光非依存性の赤色化は、葉レタスなどの他のレタス型、およびベビーリーフ生産でも使用できる。ベビーリーフ生産は、小さくて未熟な葉を採取するための若いレタス植物の生産である。
【0016】
本発明の赤レタスの系図を実施例1に示す。
【0017】
本発明は、結球の芯に赤い葉を有する元の親、および芯葉におけるクロロフィルとアントシアニンとの間の比率など、本発明の他の要件のうち1つまたは複数を満たす元の親のすべての子孫に関する。
【0018】
加えて、本発明のUV非依存性赤色化を有する非結球性植物、分離葉植物、またはベビーレタス植物は、完全に赤い結球性レタス植物の子孫であると考えられ、したがって、本発明の一部である。
【0019】
既に本発明のレタス植物であるレタス植物、またはそれをもたらしうるレタス植物の選択は、赤色化した幼植物の肉眼選抜に基づいて行うことができる(ステップ1)。それに続いて、それらをガラスまたはプラスチックの下で生育させることによって、UV依存性のアントシアニン発現、すなわち、弱い赤色化と、UV非依存性のアントシアニン発現、すなわち、比較的強い赤色化とを識別することができる。後者の植物を植え、それらが結球するまで生育させる。その後、各植物の上端を切ることによって、赤い芯葉を有する植物の肉眼選抜を行う。その後、芯が赤い植物を選択して、子孫の種子を生産する。
【0020】
赤色化のレベルを増強させるため、および/または成熟植物における要求されているレベルの結球性を獲得するために、交雑株を選択する。
【0021】
本明細書で使用される場合、レタス植物は、特徴的な「結球」に関するUPOVのガイドライン(「TG/13/9.Lettuce(Lactuca sativa L.) Guidelines for the conduct of tests for distinctness, uniformity and stability.」、International Union for the Protection of New Varieties of Plants、スイス国ジュネーブ所在、2004年)に従って、それが「オープンヘッド」または「クローズドヘッド」を有する場合に、結球性であると定義される。
【0022】
本発明のレタスの芯は、好ましくは9より高い、より好ましくは13以上の、クロロフィルとアントシアニンの吸光度比A523/A665を有する。通常の赤レタスでは、この比率が3より高いことは決してなかった。本発明の比率を決定するのに使用するクロロフィル濃度およびアントシアニン濃度は、分光光度法によって測定する。試料の調製および分析は実施例2に示す。
【0023】
本発明の芯葉と同程度に高いアントシアニンレベルが、非結球性の他のレタス品種で見出される可能性に留意するべきである。そのような非結球性の品種の一部の例が、40−0203103−B(Knerr LD、2005年、レタス栽培品種40−0203103−B、米国特許出願第2005/0144672A1号)、ガラクティック(Galactic)、ニューレッドファイヤー(New Red Fire)、ロリナ(Rolina)(Kleinhenzら、2003年、「Variety、shading、and growth stage effects on pigment concentrations in lettuce grown under contrasting temperature regimens.」、Horttechnology 13(4)、677〜683頁)、レッドサラダボール(Red Salad Bowl)、およびセサム(Sesam)(Voipio I.およびAutio J.、1995年、「Responses of red−leaved lettuce to light intensity、UV−A radiation and root zone temperature.」、Acta horticulturae 399、183〜187頁)である。
【0024】
しかし、これらの品種は、非結球性の特性による高度な光曝露の結果、本発明の芯葉と比較して、クロロフィルレベルが非常に高い芯葉を有する。一方、結球性品種は、芯葉に、本発明の芯葉に類似した低クロロフィルレベルを有することが見出される可能性がある。しかし、これらの結球性品種の芯葉は、本発明の芯葉と比較して、高アントシアニンレベルを示さない。芯葉の光曝露が弱いため、通常、アントシアニン合成は貧弱にしか誘導されない。本発明では、アントシアニン産生がUV非依存性である。これは、なぜ本発明のアントシアニン/クロロフィル比が前例がないほど高レベルであるかを説明する。
【0025】
UV非依存性であるこの新型の赤色化は、結球性レタス植物で見出され、開発されたものであって、従来技術で提示された赤色化とは異なる。しかし、本発明は、本発明の「UV非依存性赤色化」という特徴を有する、分離葉もしくはベビーリーフレタス植物などの非結球性レタス植物、またはUV量が少ない場所であるガラス温室内もしくはプラスチックの下で栽培されたレタス植物にも関する。
【0026】
芯葉の赤色化は、RHSカラーチャート(王立園芸協会(The Royal Horticultural Society)、英国ロンドン所在)でも評点した。本発明の芯葉、とりわけ葉の頭頂部の葉身色は、183A、184A、または187Bと評点されたが、これらはすべて灰紫色グループに属した。葉身の残りの部分の色は、180B、180C、180D、または181Cと評点されたが、これらはすべて灰赤色グループに属した。
【0027】
ガラスまたはプラスチックの下、すなわち屋外条件での光と比較して紫外線レベルが低減している状態で栽培された植物における赤色化およびアントシアニン発現も評点することが可能である。ここでも、本発明の植物は、通常の赤レタスより、高レベルのアントシアニンおよび濃い赤色を示しうる。特に、本発明の植物の新生葉は、通常の赤レタス植物の新生葉よりはるかに赤い。
【0028】
本発明の赤レタスの遺伝解析は、実施例2に記載の通りに行った。この解析で、少なくとも3つの遺伝子が結球の芯の赤色化に関与していることが見出された。
【0029】
したがって、本発明は、アントシアニンを発現することができて、それに加えて、少なくとも、結球の芯の赤色化に関与する3つの遺伝子を有するレタス植物に関する。本発明の植物は、実施例2に記載の完全な遺伝子複合体を含むことが好ましい。
【0030】
AFLP、RFLP、RAPD、SCAR、CAPS、SSR、またはSNPなど、密接に連鎖したDNAマーカーによって、本発明の赤色化に関与する遺伝子座の存在を評価するのが可能である。例えば、上述の集団およびその子孫におけるマーカー形質連鎖解析によって、そのような密接に連鎖したDNAマーカーを得ることができる。
【0031】
本発明のように、あるレタス植物に、内葉赤色化に関する類似遺伝子構成が存在するかどうか、すなわち、あるレタス植物が本発明による植物であるかどうかの評価は、そのような潜在的な本発明の植物の表現型を、既知の本発明の植物の表現型と比較することによって、容易に評価することができる。例えば、内葉の赤色化、芯葉のアントシアニン/クロロフィル比、および/またはガラスもしくはプラスチックの下で栽培された植物の赤色化によって、表現型を評価することができる。
【0032】
潜在的な本発明の植物と、既知の本発明の植物との間の遺伝子構成の類似性を評価する別の方法は、上記潜在的植物のマーカー遺伝子型を既知の本発明の植物のマーカー遺伝子型と比較することである。上記マーカー遺伝子型は、本発明の赤色発現に関与する遺伝子座と密接に連鎖しているAFLP、RFLP、RAPD、SCAR、CAPS、SSR、またはSNPなどの、1セットのDNAベースマーカーによって定義する。
【0033】
遺伝子構成の類似性を評価する別の方法は、潜在的な本発明の植物の遺伝子型を既知の本発明の植物の遺伝子型と比較することである。この遺伝子型比較は、上記潜在的な植物と、既知の本発明の植物との間の交雑から生じたF1植物を自己受精させることによって得られるF2集団に関して行う。表現型、すなわち内葉の赤色化の分離が存在しないかどうか、F2集団を調査することができる。すべての比較において、例えば、芯葉のアントシアニン/クロロフィル比、またはガラスもしくはプラスチックの下で栽培された植物における赤色化によって、表現型を評価することができる。
【0034】
本発明による赤レタス植物の種子は、アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339の下に、2005年7月18日にNCIMBに寄託した。
【0035】
本発明は、これらの種子の子孫、ならびに本発明による赤色化をもたらす、本発明の植物の遺伝子構成または遺伝子複合体を交雑によって、または分子生物学的技法によって獲得した植物にも関する。本発明は、本発明の赤色化の形質を維持しているか、獲得したこれらの植物の子孫にも関する。
【0036】
赤色の原因となる遺伝子を別の植物に導入するために、戻し交雑育種法を用いることができる。これには、望ましいホモ接合型品種または近交系植物が、反復親となる。導入される形質の供給源は、供与親と呼ばれる。この結果得られる植物は、反復親(例えば栽培品種)の特質と、供与親から導入された望ましい形質とを有すると予測される。最初の交雑の後、供与親の表現型(芯における葉の赤色化)を有する個体を選択し、繰り返して反復親と交雑(戻し交雑)する。この結果得られる植物は、反復親(例えば栽培品種)の特質と、供与親から導入された望ましい形質とを有すると予測される。赤色化の遺伝がもう一方の望ましい形質または形質の組合せの遺伝より複雑である場合、赤色化した芯葉を有する親を反復親として用いることができ、もう一方の望ましい形質または形質の組合せを有する親を供与親として用いることができる。様々な形質および作物に一般的に使用される他の育種法の詳細は、いくつかの参考図書(例えば、「Principles of Plant Breeding」John Wiley and Son社、115〜161頁、1960年;Allard、1960年;Simmonds、1979年;Sneepら、1979年;Fehr、1987年)の1つに見出すことができる。
【0037】
以下の実施例によって本発明をさらに説明するが、それらは単なる例示であって、いかなる意味でも本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
本発明の赤レタスの系図
以下の系図に従って、本発明のレタスを獲得した。すなわち、1986年に、品種ピッポ(Pippo)(Rijk Zwaan社;赤色)の植物体と、品種ブロンドマレシェール(Blonde Maraichere)(Caillard社;緑色)の植物体との間で交雑株を作製した。
【0039】
1988年に、この交雑株から得た赤い子孫植物を、品種グリンゴ(Gringo)(Rijk Zwaan社;赤色)の植物体との交雑における父親として用いた。同年に、品種ピエロ(Pierrot)(Rijk Zwaan社;赤色)の植物体と、品種ロクセット(Roxette)(Rijk Zwaan社;緑色)の植物体との間の交雑株を作製した。
【0040】
1989年に、この交雑株から得た赤い子孫植物を、品種クリチェット(Krizet)(Rijk Zwaan社;緑色)の植物体との交雑における父親として用いた。
【0041】
1992年に、上述のクリチェット×(ピエロ×ロクセット)交雑株から赤いF3子孫植物体を選択し、それを、上述のグリンゴ×(ピッポ×ブロンドマレシェール)交雑株から選択された赤い子孫植物体である父親植物体との交雑における母親として用いた。1995年に、この新たに得られた1992年交雑株から赤いF4植物体を選択し、品種ロクセット(Rijk Zwaan社;緑色)の植物体との交雑における母親として用いた。
【0042】
型、結球性、および色に関する選択を、この交雑株から得られたF2、F3、およびF4世代で行い、その結果、1998年に赤いF4植物体(98P.31582)を得た。F5系統は色の分離(赤対緑色)を現したが、次の世代での選択の結果、完全に赤い芯葉を有する3体の結球性F5植物体(99P.38152;99P.38154;99P.30637)が得られた。これらを、その後、増殖させた。
【0043】
子孫は緑色植物の分離を示さなかった。そして、種子は番号02R.2413、01R.1439、02R.2418の下に寄託した。これらのF5植物およびそれらの子孫は、光非依存性の赤色化を有するレタスのさらなる育種のための親株供給源として用いられた。
【0044】
結論として、使用された親品種、すなわち、ピッポ、ブロンドマレシェール、グリンゴ、ピエロ、ロクセット、およびクリチェットのいずれも、結球の芯に特徴的な赤い葉を有していなかったと言うことができる。本発明は、これらの赤色および緑色の親品種に由来する遺伝子の独特かつ新規な組合せを含み、この組合せは、結球の芯に完全に赤い葉を生じさせるものである。
【0045】
(実施例2)
本発明の赤レタスの遺伝解析
本明細書で使用される場合、遺伝子座(locus)(複数形:loci)は、ある遺伝子が位置する染色体上の特定位置と定義される(Griffiths AJF、Miller JH、Suzuki、DT、Lewontin RC、Gelbart,WM、「An introduction to genetic analysis.」、第6版、1996年、WH Freeman and Company社、米国ニューヨーク所在)。所与の植物体の赤色化の原因となっている遺伝子座の数は、この植物体と、緑色品種であるシャープシューター(Sharp Shooter)との交雑株の子孫を遺伝解析することによって確定できる。
【0046】
本発明の赤レタスの遺伝解析を以下の通りに行った。すなわち、F5植物、番号99P.30637、すなわち本発明の植物体の1つの子孫植物体と、明緑色(brilliant green)でないアイスバーグレタス植物である、品種シャープシューター(SVS、Waycottら、1999年:米国特許第5973232号明細書)との交雑を行った。この交雑の子孫から、212系統のランダムなF2植物をF3系統に増殖させた。
【0047】
これら212のF3系統を、オランダ国ファインアールト(Fijnaart)における秘密野外試験で評価した。2002年6月17日に、種子を泥炭塊上に播き、幼植物をガラス温室中で育て、2002年7月5日に野外に移植した。収穫日(観測時)は、2002年8月19日から8月23日までであった。区画サイズは、F3系統あたり24体の植物体、すなわち、6体の植物4列であった。1試行における色形質の発現が非常に安定していたので、系統の複製は行わなかった。F3植物体ごとに観察を行った。
【0048】
観察された形質は以下の通り、すなわち、a)色、そして赤の場合には、外葉におけるその強度、および発現パターン、b)色、そして赤の場合には、内葉におけるその強度、および発現パターン、c)結球の度合い、d)外葉が緑色である場合には、明色(brilliant)または非明色(non−brilliant)の2つのクラスにおける評点であった。
【0049】
赤色化の強度および発現パターンは、弱い順に示されている以下の通りに評点した。すなわち、1)薄く色付いているか、赤らんでいる。すなわち、外葉および内葉の縁、または内葉葉脚が軽く赤色化している。2)赤色の斑点を有する。3)緑色の斑点を有する。すなわち、赤い葉の表面に緑色の斑点がある。4)完全に赤い。すなわち、外葉部の光に曝される部分、および内葉の場合には内葉全体にわたって、斑点のない強い赤色である。
【0050】
結球性は、1)ローメインレタスまたはコスレタスのように、わずかに開いた結球と、2)アイスバーグレタスのように、明確に重なった葉を有する強い結球との間で評点した。
【0051】
この試験における一部の植物体は収穫の前に死んだ。意図されていた5088体、すなわち212×24体の植物体のうち、合計で5007体のF3植物が収穫段階にまで達し、評点を受けた(表1を参照)。
【0052】
すべての植物体が、少なくともローメインレタスまたはコスレタスに匹敵する結球レベルを示した。データは、合計212系統のうち、完全に緑色な55系統が分離したことを示した。少なくとも1体の赤色化した植物体を有していた157系統のうち、28系統は、すべて、外葉でアントシアニン発現を示した植物体からなっていた。これらの28系統のうち、8系統は、すべて、芯葉でアントシアニン発現を示した植物体からなっていた。少なくとも1体の赤色化した植物体を有していた157系統のうち、33系統における赤色化した植物体が、外葉のみでアントシアニン発現を示し、芯葉では示さなかった。上記157系統のうちの別の33系統における赤色化した植物体は、外葉および芯葉の両方で常にアントシアニン発現を示した。残りの91系統における赤色化した植物体は、すべて外葉でアントシアニン発現を示した。しかし、これらの植物体は、芯葉におけるアントシアニン発現の系統内分離を示した。アントシアニン発現のない緑色外葉を有し、かつ芯葉でアントシアニン発現を示す組合せのものは、5007体の植物体のうち1体の植物体もなかった。
【0053】
したがって、外葉におけるアントシアニン発現をもたらす1つまたは複数の遺伝子は、芯葉におけるアントシアニン発現にも必要であると結論される。赤色と緑色との間で分離があった場合、赤色と緑色との間での分離比は、外葉の色に関しては23:1から1:22の範囲であった。内葉に関しては、赤色化と緑色化との間での分離比は、緑色の外葉を有するすべての植物体を除外して、18:1から1:23の範囲であった。表1は、「99P.30637」×品種「シャープシューター」の交雑からランダムに取得した212のF3系統からなる集団に由来する、外葉および内葉の赤色化および緑色化を有する植物体の系統内分布を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
これらの分離データを、独立メンデル分離比の仮定のもとに遺伝モデルを構築するのに用いた。内葉におけるUV非依存性アントシアニン発現を得るのに、少なくとも3箇所の遺伝子座が関与していることが見出された。以下A−aと示す第1の遺伝子座は、既知の赤レタスにも存在し、アントシアニンの発現を得るのに、すべての場合で、優性対立遺伝子であるAが必要である。おそらくこの遺伝子座は、CまたはG遺伝子座である(Robinsonら、1983年、「The genes of lettuce and closely related species.」、Plant Breeding Reviews 1、J Janick編集、267〜293頁)。
【0056】
以下B−bと示す第2の遺伝子座は、モデルのフィッティングを行うことによって見出され、モデルでは、Aとの組合せにおいて、劣性対立遺伝子bがホモ接合型で存在することによって、外葉のアントシアニン発現が起こる。外葉におけるアントシアニン発現には、以下C−cおよびD−dと示すさらに2箇所の遺伝子座も関与していることが見出された。優性対立遺伝子Cが少なくとも1コピー存在するか、劣性対立遺伝子dがホモ接合型で存在することによって、外葉におけるアントシアニン発現が起こる。しかしこれは、対立遺伝子Aも、少なくとも1コピー存在している場合のみである。
【0057】
以下E−e、F−f、およびG−gと示すさらに3箇所の遺伝子座も見出された。内葉におけるUV非依存性アントシアニン発現を得るためには、優性であるE対立遺伝子1コピーの存在、またはf対立遺伝子のホモ接合型での存在、またはg対立遺伝子のホモ接合型での存在と併せて、少なくとも1コピーのA対立遺伝子と2コピーのb対立遺伝子の存在とが必要である。したがって、少なくとも3箇所の遺伝子座、すなわちA−a、B−b、およびE−e、F−f、もしくはG−gにおける、赤色化のための対立遺伝子の存在が、内葉におけるUV非依存性アントシアニン発現に必要である。さらに、上述した遺伝子座のうち少なくとも3箇所、おそらくは7箇所すべての遺伝子座が本発明の赤色化の強度に関与していると想定されている。
【0058】
(実施例3)
レタスの色、アントシアニン、およびクロロフィルの測定
1.試料の調製および分析
以下の仕様を有する分光光度計UltrospecIII(Pharmacia社)を用いた。
−モノクロメーター:ホログラフィック回折格子(1200列/mm)を有するツェルニーターナー分光計
−波長精度:±1nm
−波長再現精度:±0.5nm
−検出器型:単一固体シリコンフォトダイオード
−バンド幅:5nm
【0059】
2.原理
赤色(アントシアニン)および緑色(クロロフィル)は生化学的方法で測定する。1つは総アントシアニンの尺度である523nmの吸光度を測定するためであり、1つは総クロロフィル(クロロフィルaおよびb)の尺度である665nmの吸光度を測定するためである2つの抽出物を調製する。
【0060】
3.試料の調製
結球した成熟レタス植物を採取し、芯が残されるまで、外葉を除去する。レタスの芯は分析に用いる。植物体の頭頂における葉の小さな先端(最大10%)を除いて、収穫前に、芯葉が日光に直接さらされることがないようにするべきである。芯は、長さ1cm以上の葉を少なくとも10枚含有する。芯の最も古い葉は凹面であるべきである。
【0061】
芯をビニール袋に入れ、<−70℃で冷凍する。<−70℃で少なくとも数日の後、冷凍した芯を大ハンマーで粉末化する。細かくされた試料を、液体窒素の存在下で(試料は冷凍状態に保たれるべきである)自由に浮遊するフタを用いたGrindomix(GM200、Retsch社、3000rpmで5秒、その後5000rpmで5秒)中で粉砕して、細粉を得る。
【0062】
その後、上記粉末を管に入れ、粉末の入った管を液体窒素中で冷やし、所望により分析まで<−70℃で保存する。
【0063】
4.分析
3グラムの粉末を、50ml管4本に量り入れる。2本の管をアントシアニンの分析に用い、2本の管をクロロフィルの分析に用いる。
【0064】
アントシアニンの測定には、上記2本の管に、1.0M HClを含有する50%メタノールを直ちに添加する。試料および抽出物の色に応じて、5〜10ml/g試料を用いる。用いた容積(ml)を記録する。手操作で試料溶液を混合し、氷上に置く。溶液の一部を1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、4℃、13000rpm、4分間、遠心分離する。
【0065】
分光光度計を用いて、バンド幅5nmでスペクトルを測定する。1cmキュベットを用いる。
【0066】
360〜900nmのスペクトルを測定し、523nmの吸光度(必要な場合には抽出液で希釈した後)および最大波長(λmax)を決定する。λmaxは、約523nmであるべきである。
【0067】
クロロフィルは、上記2本の管に100%メタノールを直ちに添加することによって測定する。試料および抽出物の色に応じて、5〜10ml/g試料のメタノールを用いる。用いた容積(ml)を記録する。試料溶液は、手操作および「脱気設定(set degas)」の超音波漕で5分間、超音波処理することによって混合する。溶液の一部を1.5mlエッペンドルフチューブに入れ、4℃、13000rpm、4分間、遠心分離する。
【0068】
360〜900nmのスペクトルを測定し、665nmの吸光度(必要な場合には抽出液で希釈した後)および最大波長(λmax)を決定する。λmaxは、約665nmであるべきである。
【0069】
A523およびA665を、10ml抽出容積中に1g新鮮重を含む溶液の吸光度を表すように補正する。A523およびA665の補正値は、次の数式を使用して、計量された試料(g)、抽出容積(ml)、および必要な場合は希釈率に関する補正を用いて計算する。
補正:
【0070】
【数1】
A523/A665の比率を計算する。
【0071】
表2aは、仏国アラモン(Aramon)におけるレタス(2002年1月10日に播種、2002年2月15日に移植、2002年4月25日に採取)で観測されたクロロフィルおよびアントシアニンの吸光度、ならびにアントシアニン/クロロフィル比を示す。系統01P.80146は、2世代の自家受精によって、植物99P.38154から得られた子孫系統である。ピエロ(Rijk Zwaan社)、ダークランド(Darkland)(Central Valley社)、シェラ(Sierra)(Vilmorin社)、およびロクシー(Roxy)(Enza社)は一般的なレタス品種である。
【0072】
表2bは、オランダ国ファインアールトで栽培されたレタス(2002年5月21日に播種、2002年6月10日に移植、2002年8月20日に採取)で観測されたクロロフィルおよびアントシアニンの吸光度、ならびにアントシアニン/クロロフィル比を示す。系統01P.80146は、2世代にわたる植物99P.38154の自家受精から得られた子孫系統である。ピエロ(Rijk Zwaan社)、ピッポ(Rijk Zwaan社)、レッドロザリータ(Red Rosalita)(Johnny’s Selected & Orsetti社)、ダークランド(Central Valley社)、シェラ(Vilmorin社)、およびロクシー(Enza社)は一般的なレタス品種である。
【0073】
【表2】
【0074】
(寄託情報)
F5植物である01R.1439、02R.2413、および02R.2418は、それぞれ寄託アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で、2005年7月18日に、英国アバディーン(Ferguson Building,Craibstone Estate,Bucksburn,Aberdeen AB21 9YA,United Kingdom)所在のNCIMBに寄託した。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】「99P.30637」×品種「シャープシューター」の交雑から取得した212のF3系統からなる集団に関する、外葉および内葉の赤色化の系統内分布を示す図である。この集団に、「赤い外側」、すなわち内葉の色に関係なく赤い外葉を有する植物体の系統内頻度;「赤い外側&赤い内側」、すなわち赤い外葉および赤い内葉を有する植物体の系統内頻度;「赤い内側/赤い外側」、すなわち赤い外葉を有する植物体の系統合計内における赤い内葉を有する植物体の頻度という、赤色化に関する3つの分類を適用した。○=観測値、E=遺伝モデルによる予測値。
【図2】「99P.30637」×品種「シャープシューター」の交雑における分離に基づいたアントシアニン発現に関する遺伝モデルを示す図である。
【図3】図3aは本発明の植物を示す図である。この幼植物は、系統03P82421から得た種子に由来する植物である。この系統は、三代にわたる植物99P38154の自家受精の後に得られた。図3b、3c、および3dは、それぞれ、親系統であるピエロ、ピッポ、およびグリンゴの幼植物を示す図である。図3eおよび3fは、それぞれ、比較品種であるアパッチ(Apache)およびビジュー(Bijou)の幼植物を示す図である。これらすべての幼植物は、16℃、14時間の明期、および12℃、10時間の暗期を有する栽培室中、泥炭塊上で栽培した。光は、植物体の上0.6mの距離にある、0.24平方mあたり1本の管のPhilips TLD 36W 840 REFLEX管によって与えた。
【図4】市販品種であるピッポ、ピエロ、およびグリンゴの幼葉との比較における、「NEW」と示されている本発明の植物の幼葉を示す図である。これらの幼植物は、16℃、14時間の明期、および12℃、10時間の暗期を有する栽培室中、泥炭塊上で栽培した。光は、植物体の上0.6mの距離にある、0.24平方mあたり1本の管のPhilips TLD 36W 840 REFLEX管によって与えた。
【図5】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるダークランド(「99R10044」と示されている;図5a〜5d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【図6】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるピエロ(「95G2237」と示されている;図6a〜6d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【図7】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるロクシー(「99R10283」と示されている;図7a〜7d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【図8】本発明の植物(01P80146)と、市販品種であるシェラ(「95G1986」と示されている;図8a〜8d)との間の比較を示す図である。a図は採取された結球全体を示し、b図は外葉のない芯を示し、c図は芯の縦断面を示し、d図は切断された芯葉を示す。本発明のレタス植物は、結球の芯が完全に赤いが、その他のレタス植物は異なる。すべての植物は、仏国アラモンで2002年に栽培された。すなわち、2002年1月10日に播種され、2002年2月15日に秘密野外試験地に移植され、2002年4月25日に採取された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯を含めた結球全体にわたって赤い葉を有するラクチュカ・サチヴァ種の結球性レタス植物。
【請求項2】
400nmより短い波長の光線が存在しなくても、芯に赤い葉を有するラクチュカ・サチヴァ種のレタス植物。
【請求項3】
播種から観測時までの全期間の生育環境で、400nmより短い波長の光線が存在しない、請求項2に記載のレタス植物。
【請求項4】
芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項5】
芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項4に記載のレタス植物。
【請求項6】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項7】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項6に記載のレタス植物。
【請求項8】
芯における葉の赤色化をもたらす遺伝子構成であって、アントシアニン発現のための遺伝子座と、結球の芯の赤色化に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座とを含み、赤色化の強度に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座を含んでいてもよい遺伝子構成を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項9】
アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で2005年7月18日に英国NCIMBに寄託された種子から入手可能な、請求項1から8のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項10】
アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で2005年7月18日に英国NCIMBに寄託された種子の遺伝子構成であって、結球の芯における葉の赤色化をもたらす遺伝子構成を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項11】
播種から観測時までの全期間の生育環境で400nmより短い波長の光線が存在しなくても、赤い葉を有するラクチュカ・サチヴァ種のレタス植物。
【請求項12】
アントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項11に記載のレタス植物。
【請求項13】
アントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項11に記載のレタス植物。
【請求項14】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項11または12に記載のレタス植物。
【請求項15】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項14に記載のレタス植物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のレタス植物の子孫。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のレタス植物の種子。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載のレタス植物の結球。
【請求項19】
芯を含めた結球全体にわたる葉の赤色化をもたらす、ラクチュカ・サチヴァ種のレタス植物における遺伝子複合体であって、アントシアニン発現のための遺伝子座と、結球の芯の赤色化に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座とを含み、赤色化の強度に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座を含んでいてもよい遺伝子複合体。
【請求項20】
アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で2005年7月18日に英国NCIMBに寄託された種子に存在する、請求項19に記載の遺伝子複合体。
【請求項1】
芯を含めた結球全体にわたって赤い葉を有するラクチュカ・サチヴァ種の結球性レタス植物。
【請求項2】
400nmより短い波長の光線が存在しなくても、芯に赤い葉を有するラクチュカ・サチヴァ種のレタス植物。
【請求項3】
播種から観測時までの全期間の生育環境で、400nmより短い波長の光線が存在しない、請求項2に記載のレタス植物。
【請求項4】
芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項5】
芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項4に記載のレタス植物。
【請求項6】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項1から3のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項7】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項6に記載のレタス植物。
【請求項8】
芯における葉の赤色化をもたらす遺伝子構成であって、アントシアニン発現のための遺伝子座と、結球の芯の赤色化に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座とを含み、赤色化の強度に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座を含んでいてもよい遺伝子構成を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項9】
アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で2005年7月18日に英国NCIMBに寄託された種子から入手可能な、請求項1から8のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項10】
アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で2005年7月18日に英国NCIMBに寄託された種子の遺伝子構成であって、結球の芯における葉の赤色化をもたらす遺伝子構成を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のレタス植物。
【請求項11】
播種から観測時までの全期間の生育環境で400nmより短い波長の光線が存在しなくても、赤い葉を有するラクチュカ・サチヴァ種のレタス植物。
【請求項12】
アントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項11に記載のレタス植物。
【請求項13】
アントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項11に記載のレタス植物。
【請求項14】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が4から50の間である、請求項11または12に記載のレタス植物。
【請求項15】
1cmより大きい10枚の最も若い芯葉におけるアントシアニンとクロロフィルの吸光度比A523/A665が9から27の間である、請求項14に記載のレタス植物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載のレタス植物の子孫。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載のレタス植物の種子。
【請求項18】
請求項1から16のいずれか一項に記載のレタス植物の結球。
【請求項19】
芯を含めた結球全体にわたる葉の赤色化をもたらす、ラクチュカ・サチヴァ種のレタス植物における遺伝子複合体であって、アントシアニン発現のための遺伝子座と、結球の芯の赤色化に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座とを含み、赤色化の強度に関与する少なくとも2箇所の遺伝子座を含んでいてもよい遺伝子複合体。
【請求項20】
アクセッション番号NCIMB41337、NCIMB41338、およびNCIMB41339で2005年7月18日に英国NCIMBに寄託された種子に存在する、請求項19に記載の遺伝子複合体。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【公表番号】特表2009−508504(P2009−508504A)
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−531614(P2008−531614)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009217
【国際公開番号】WO2007/039137
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(500502222)ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ (19)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/009217
【国際公開番号】WO2007/039137
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(500502222)ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ (19)
【Fターム(参考)】
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