説明

走査光学系制御装置

【課題】 ステッピングモータのステータ極歯の加工精度誤差によって加速時に発生するモータトルクの変動を抑制し、光学系負荷の振動を防止して、円滑かつ良好な画像読取りを行うことが可能な走査光学系制御装置を提供することにある。
【解決手段】 1-2相励磁方式で運転されるステッピングモータ36のロータPPSが1630に達した後に、CPU3611、パルスカウンタ3612、励磁極歯制御情報記憶部3613を備える周波数可変回路361によって、モータを励磁相の循環の一周期毎にA-B相(ステータ極歯L2、L3の中間位置)においてのみ加速励磁する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はステッピングモータを駆動源とする走査光学系制御装置に関し、特にその制御方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】走査光学系制御装置には正確に画像を読み取る動作が要求されるため、一般に駆動源としてモータ類の中で比較的制動性能の高いステッピングモータが使用されている。このステッピングモータの駆動力によって、例えばスキャナや露光ランプ等の光学系負荷およびレンズ系のユニットが、加速、定速、減速、停止等の動作を行われる。したがって、それぞれの異なる動作に応じてモータのトルクと制動効果を設定することが重要になる。
【0003】このことから、走査光学系制御装置にステッピングモータを使用する場合の励磁方式として、画像を読み取る光学系負荷の駆動には微妙な制動が可能な1-2相励磁方式を採用し、一方負荷の大きいレンズ系の駆動にはモータトルクの比較的高い2相励磁方式を採用する対策(特開平2-41698)がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ステッピングモータ内部に設けられるステータの歯を作製する段階で、各歯間に加工精度のばらつきが生じ、このばらつきに起因してステータの歯とロータの歯の間(ギャップ)が部分的に不均一になってしまうことがある。このギャップの不均一性は、各ステータの歯とロータの歯毎のギャップ間に発生される磁束密度の高さを不均一にするので、磁束密度に比例するモータトルクも安定せず、上述のように負荷の種類に応じてモータの励磁方式を変えても十分な効果が望めない場合がある。
【0005】特に、走査光学系の駆動源として使用されるステッピングモータは、光学系の加速時に高トルクを発生して所定速度まで早期に増速する必要があるが、上述の如く、ステータの歯とロータの歯のギャップの不均一性に起因して各瞬時において発生するトルクが変動するため、光学系が加速時に振動を起こすという現象が生じる。この振動現象は光学系が定速走行に移行した後も残存し、このため、原稿の読取り開始部分において読取り性能に影響を及ぼすことがあり、改善が望まれている。
【0006】本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は光学系の加速時においてステッピングモータの発生するトルクの変動を抑制し、光学系負荷の振動を防止して、円滑かつ良好な画像の読取りを行うことが可能な走査光学系制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記問題を解決するために本発明は、原稿面に沿って走行し、原稿画像を読取る走査光学系と、走査光学系を走行駆動するステッピングモータと、ステッピングモータに駆動パルスを供給するパルス供給手段とを備え、パルス供給手段は、ステッピングモータの加速時にパルスレートを漸次高速化するパルスを生成する加速パルス生成部を含み、加速パルス生成部は、ステッピングモータのステータ極歯群のうちの特定の極歯にパルス供給する際に、パルスレートを高速化し、そのパルスレートで生成したパルスを前記極歯に供給する構成であることを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の走査光学系制御装置をアナログ式複写機(以下単に複写機という)に適用した例について説明する。図1は、複写機の全体構成を示す正面断面図である。複写機の構成は原稿自動搬送装置10、原稿読取り部30、プリンタ部50、給紙部70に大別される。
【0009】原稿自動搬送装置10は図のように、原稿搬送方向上流から下流に向かって原稿セットトレー11、繰り出しローラ12、原稿搬送路15、複数のローラ171〜176の周面によって後述のプラテンガラス22表面に平行に張架された原稿搬送ベルト17、当該ベルト17を図示しない機構でZ方向に回動駆動する駆動モータ21、原稿排出トレー19等が、この順に配置されている公知のものである。
【0010】プリンタ部50は、図中a方向に回転駆動される感光体ドラム51と、その周面の下方からa方向に沿って転写チャージャ55、分離チャージャ56、クリーナ52、帯電器53、現像器54等が配されており、このプリンタ部50の構成によって、カールソンプロセスの画像形成が行われるようになっている。給紙部70は、記録紙搬送方向上流側から下流側に沿って、複写機筐体底部に重ねて収納された給紙カセット71、72と、その一端寄り上面に配置された繰り出しローラ711、721と、当該ローラ711、712の下流側にそれぞれ設けられた記録紙先端検出センサSE1、SE2等で構成される。
【0011】この繰り出しローラ711、712からプリンタ部50の転写位置方向には、記録紙Sを案内する記録紙搬送路73が配され、さらに転写位置の下流側に記録紙搬送ベルト57が配置されている。当該記録紙搬送ベルト57は、2本の平行なローラ571、572の周面によって張架されており、X方向に回動駆動される。
【0012】搬送ベルト57の下流側には、定着ローラ61と排出ローラ62が、この順に設けられている。排出ローラ62のさらに下流側には、複写機筐体の側面外部に排出トレー63が取り付けられている。なお原稿画像読取り部30が収められている複写機筐体の上部側面には、ユーザーが使い易い位置(図1の破線)に操作パネル90が設置されている。
【0013】原稿読取り部30は、第1スライダーユニット31、第2スライダーユニット32、第3スライダーユニット33と、変倍用レンズ35等を備える。これらの詳細な構成を、図2の原稿読取り部30の斜視図で説明する。第1スライダーユニット31は、露光ランプ311、第1ミラー312と、これら二つの長手方向を平行にして両端部を掴持するフレーム313とからなる。第1ミラー312はフレーム313によって、ミラー面を上向きに、図中Y'方向に約45度で固定されている。
【0014】第2スライダーユニット32は、第2ミラー321、第3ミラー322と、フレーム323とからなる。フレーム323は、これら二つのミラー321、322の長手方向を平行にし、その両端部をそれぞれこの順に、上下に掴時するものである。より具体的には、第2ミラー321はミラー面を下向きにしてY方向へ約45度にされ、一方第2ミラー322はミラー面を上向きに、Y'方向へ約45度に設定されている。フレーム323の図中奥側の側面には、YY’線上にプーリ40、41が設けられ、この側面に対する図中手前側の側面には、同様にしてプーリ40’、41’が設けられている。
【0015】これら第1、第2スライダーユニット31、32は、互いに長手方向を平行になるようにされている。ステッピングモータ36は図中において、原稿読取り部30手前の右側位置に配置されている。当該ステッピングモータ36のロータ軸端部(不図示)にはピニオン361が装着されている。これに対し、一端に平歯車371を装着されたシャフト37が、前記スライダーユニット31の長手方向とほぼ同長の長さに設定され、かつ同方向と平行にされて、前記ピニオン361と平歯車371が囓合回転できるように配置されている。ここでシャフト37の軸受け部は、説明のため図示を省略している。シャフト37には、図中左側端部にプーリ372、右側端部の前記平歯車371の内側にプーリ372’がそれぞれ装着されている。
【0016】前記各プーリ41’、372’、39’、40’および41、372、39、40には、原稿読取り部30中央に設けられている固定ピン42、42’(42’は不図示)に一端を固定され、ネジリコイルバネ43、43’に他端を固定された2本の同長ワイヤー38、38’が、それぞれこの順に掛けられている。より具体的にワイヤー38の張架状態から説明すると、ワイヤー38’は固定ピン42から延長されて第2スライダーユニット32のプーリ41’を経、第1スライダーユニットの紙面手前側の側面に直接固定され、シャフト37のプーリ372’とプーリ39’を介して第2スライダーユニットのプーリ40’に掛けられ、ネジリコイルバネ43’に固定される。このネジリコイルバネ43’は、ワイヤー38’に適当な張力を与えるものである。ワイヤー38’と同様にして、ワイヤー38も対応する位置に張架または固定される。2本のワイヤー38、38’の張架によって、第1、第2スライダーユニット31、32と、シャフト37は、常に平行になるように保たれている。
【0017】このような構成において、ステッピングモータ36を回転駆動させると、プーリ372、372’を介してワイヤー38、38’が移動し、これに追随して第1スライダーユニット31および第2スライダーユニット32が移動する。このとき、プーリ40、41、40’、41’が動滑車の役目を果たすため、第2スライダーユニット32は、第1スライダーユニット31に対してその1/2の速度で同一方向へ移動される。これは、第1、第2スライダーユニット31、32が移動しても、第1スライダーユニット31から図中中央の変倍用レンズ35までの光路長を一定に保つためである。
【0018】変倍用レンズ35は、光路をYY'方向に向けた状態でレンズ取付台351に固定されている。レンズ取付台351の紙面奥側の側面には、プーリ45と図示しないプーリによってYY'方向に張架されたワイヤー451が固定されており、スライド機構(不図示)によってレンズ取付台351が同方向に移動可能になっている。
【0019】第3スライダーユニット33は、第3ミラー331、第3ミラー332と、フレーム333とから構成される。第1ミラー331、332は、長手方向を平行に、フレーム331にこの順で上下に掴持され、各ミラー面がY'方向に対して45度で対面するようにされている。これら第1、第2、第3スライダーユニット31、32、33によって、原稿画像の光路は図1のように、第1ミラー312、第2ミラー321、第2ミラー322、変倍用ミラー35、第3ミラー331、第3ミラー332、感光体ドラム51の直上に位置するミラー34の順を経て、感光体ドラム51の周面に案内される。
【0020】図2で原稿読取り部30の中央に備えられた駆動モータ44は、前記変倍用レンズ35および前記第3スライダーユニット33の駆動源である。この駆動モータ44の回転駆動力は、公知の動力伝達機構(不図示)を介して、変倍レンズ35の取付台351と第3スライダーユニット33にスライド駆動力として伝えられ、変倍用レンズ35のスライド移動に同期して、第3スライダーユニット33の位置を所定量だけスライドさせる。このスライド調節は、変倍用レンズ35から第3スライダーユニット33を経て、感光体ドラム51に到るまでの光路長を適切に調整するためのものである。なお、上記駆動モータ44の動力伝達機構は本発明と関連が薄いため、より詳細な説明を省略する。
【0021】次に、前記第1、第2スライダーユニット31、32の駆動源であるステッピングモータ36について、その駆動制御を行うステッピングモータ制御回路100の構成を図3に示す。ステッピングモータ制御回路100は、電力増幅部364と、ステッピングモータ制御IC363と、パルス信号生成回路362と、周波数可変回路361等からなる。このうち、周波数可変回路361以外は公知のものである。
【0022】パルス信号生成回路362は、ステッピングモータ制御IC363と接続され、一定周期の励磁パルス信号を発生して、前記IC363に送信する回路である。ステッピングモータ制御IC363は、ステッピングモータ36の起動、停止、正/逆転、変速等の制御を行うものであり、内部に励磁方式切換回路3631、励磁相制御回路3632、正/逆転制御回路3633、起動/停止制御回路3634等の各制御回路を有する。これらの回路は図のように、励磁相制御回路3632を中央部として接続されており、それぞれの回路が出力する各制御信号は、励磁相制御部3632においてステッピングモータ36の各励磁相の通電切換制御に供される。
【0023】電力増幅部364は、ステッピングモータ制御IC363の励磁相制御部3632から出力された前記信号に基づいて、モータの各励磁相(または励磁極歯)に通電するパルス電流を増幅させるためのものである。周波数可変回路361は、一般的にはステッピングモータ36の運転時に励磁方式の変更指示が出された場合に、パルス信号生成回路362がステッピングモータ制御IC363に送信する励磁パルス信号を、所定の励磁方式のパルス信号の周期のものに変化させる。しかし、本実施の形態では従来と異なり、以下に述べる構成と働きを有する。図4は、当該周波数可変回路361の拡大構成図である。
【0024】本実施の形態では、周波数可変回路361の内部は主に、CPU3611、パルスカウンタ3612、励磁極歯制御情報記憶部3613とから構成され、図のように接続されている。パルスカウンタ3612は、パルス信号生成回路362とステッピングモータ制御IC363の線路に接続され、パルス信号生成回路362が出力するパルス信号をカウントする。続いて、そのカウント値を、それに対応する励磁極歯制御情報記憶部3613のアドレス値に変換する。
【0025】CPU3611は、パルスカウンタ3612がカウントした値に対応して変換した励磁極歯制御情報記憶部3613のアドレス値に基づいて、当該記憶部3613のアドレスに格納されている所定のステッピングモータ36加速プログラムを読み込む。それに続いて、プログラムに則したステッピングモータ36の加速制御を行うための励磁パルス信号を、パルス信号生成回路362に生成させる。
【0026】励磁極歯制御情報記憶部3613はROMであり、ステッピングモータ36加速開始時における加速プログラムを格納している。図5は、この加速プログラムが行う制御の加速テーブルである。初めに、各項目について、左側の列から順に説明する。カウント値は、パルス信号生成回路362が生成するパルス数のカウント値である。
【0027】ロータPPSは、ステッピングモータ36の回転数である。なおステッピングモータでは、モータの回転数を表す単位として図中のようにPPS(Pulse Per Second ; パルス/秒)が一般に用いられている。励磁相は、ステッピングモータ36で励磁される相の位置を表す。A、B、A-、B-、AB、A-B、AB-、A-B-は、ステッピングモータ36の励磁相である。
【0028】また本加速テーブルと直接関連しないが、説明のため、加速励磁極歯の位置を右端の縦列に示している。L1〜L4は、ステッピングモータ36のステータ極歯の位置を表している。本実施の形態に使用するステッピングモータ36の正面断面図を図6に示す。ステッピングモータ36は、ここでは説明簡略化のためモノファイラ式4相ステッピングモータとしているが、実際にはより複雑な多相構造のステッピングモータ36が使用されている。また、基本的には前記ステッピングモータ制御IC363によって、1-2相励磁(ハーフステップ)方式で運転されるものとする。図中、極歯L1と極歯L3、および極歯L2と極歯L4は、互いに対向する位置にあり、これらの極歯L1〜L4の位置を基準として、極歯L1をA相、極歯L2をB相、極歯L3をA-相、極歯L4をB-相、また極歯L1、L2の中間位置をAB相、極歯L2、L3の中間位置をA-B相、極歯L3、L4の中間位置をA-B-相、極歯L4、L1の中間位置をAB-相となるように、それぞれ励磁相の設定がなされている。
【0029】再び図5の加速テーブルに戻り、以上の説明に基づいて前述の励磁極歯制御情報記憶部に格納されている加速プログラムの内容を解説する。本加速テーブルは、パルスカウントの1カウント毎に対応する加速プログラムの制御内容を、横1行毎に表している。例えばパルスカウント値が1のとき、すなわちステッピングモータ36を起動するとき、回転数(ロータPPS)が200PPSになるようにステッピングモータ36をAB相(極歯ではL1とL2の中間位置)で加速励磁する。
【0030】パルスカウント値が2のとき、回転数は200PPSに維持するように、B相の極歯L2を励磁する。つまり、このパルスカウント値では、極歯L1〜L4のいずれも加速励磁しない。パルスカウント値が3のとき、回転数を250PPSに加速するため、励磁相A-B(極歯L2とL3の中間位置)を加速励磁する。すなわち加速励磁される極歯は、L2とL3である。
【0031】パルスカウント値が4のとき、回転数は250PPSに維持するよう、A-相の極歯L3を励磁する。このとき、加速励磁する極歯は存在しない。このようにして、一つ生成パルスのカウント値にパルスカウンタ3612が対応するROM3613のアドレス値を算出し、CPU3611が該当するROM3613のアドレスに格納されている加速プログラムを読み出す。この読み出した加速プログラムに従って、CPU3611は所定の励磁パルス信号をパルス信号生成回路362に生成するよう指示する。この一連の動作を1つずつインクリメントする。
【0032】本加速テーブルではパルスカウント値が1〜80までの間、言い換えると回転数が200PPSから1350PPSに達する間は、加速励磁に供する励磁相を極歯と極歯の中間位置、すなわち2相励磁方式におけるロータ安定点に限定する。これはステッピングモータ36が第1、第2スライダーユニット31、32の駆動源として、起動時に高トルクと迅速な加速を確保するべく、基本的に1-2相励磁(ハーフステップ)方式の運転方法を採用しながら、2相励磁(フルステップ)方式の長所を利用するためである。
【0033】上述のような制御に続いてステッピングモータ36の回転数が上昇し、これに伴ってパルスカウント値が83に達したとき、ステッピングモータ36のA-B相(極歯L2とL3の中間位置)において、回転数を1350PPSから1630PPSに加速する。ここまでは、今まで述べたプログラム制御と同様である。しかし、これ以降のパルスカウント値に関し、例えば84〜86において、励磁相はA-→A-B-→B-と順次変化するが、この励磁ではロータPPSの速度変化を行わない。同様に、カウント値が86〜90でも回転速度は一定のままであり、91に達したときに再びA-B相において加速する。本加速テーブルではこの場合、回転数を1630PPSから1750PPSに上昇する。すなわち、加速テーブル全体から見ると、カウント値83以降の加速励磁は励磁相切換の循環の一周期毎にA-B相でのみ行い、他の励磁相では一定パルス間隔の励磁を行うだけのプログラム制御を行う。これは加工精度誤差を持つ個々のステータ極歯が、ロータの極歯との間において形成する磁束密度にばらつきを生じ、そのためロータの回転につれてトルクベクトルの大きさが連続的に一定しなくなる問題に対処するものである。すなわち、不安定な一連のトルクベクトルによってモータを駆動制御せずに、ある特定の極歯のみで生じさせたトルクベクトルだけをモータ駆動制御に使用してトルクを安定させ、これによって第1、第2スライダーユニット31、32の振動を防止する。なお本加速プログラムでは、ステッピングモータ36が起動してカウント値が82に達するまでは、高トルクと高加速を優先するために、このような加速極歯限定制御を行っていない。したがって、多少のモータの振動の発生は否めないが、その振動は上述のモータ制御によって十分減衰されるので問題はない。
【0034】加速極歯限定制御は、パルスカウント値163で、ロータPPSが3300PPSに達するまで行う。この回転数に達すると、本加速プログラムは終了し、これ以降のステッピングモータ36制御は従来通りの1-2相励磁方式によってなされる。なお、パルスカウンタ3612のカウント値は、本加速プログラムの起動時毎にCPU3611によりリセットされる。
【0035】以上のような構成により、次に本アナログ複写機の動作について説明する。まず、ユーザーが原稿トレー11に原稿を載置し、操作パネル90から所定のコピー情報を入力してコピースタートボタンを押すと、原稿トレー11に載置された原稿が繰り出しローラ12によって原稿自動搬送装置10内部の原稿搬送路15に送られ、搬送ベルト17の回動駆動によってプラテンガラス22上まで搬送される。
【0036】これとほぼ同時に、第1、第2、第3スライダーユニット31、32、33が、それぞれのホームポジション(以下HPという)に設定される。各HP位置は、図1において第1スライダーユニット31が原稿搬送ベルト17の往路上流部直下A、第2スライダーユニット32が複写機筐体の上部左側面B、第3スライダーユニット33が上記往路下流部直下Cである。各スライダーユニット31、32、33がHP位置に設定されると、露光ランプ311を搭載する第1スライダーユニット31が、原稿先端部の読取り開始位置まで加速スライドし、原稿端部の読取り開始位置に到達する。これに続き、同位置からは定速走行して、原稿画像を順次読みとる。第1スライダーユニット31の起動と同時にして、第2、第3スライダーユニット32、33が、所定の速度と相対間隔でYY'線上をスライドし、点破線で示した光路の長さを一定に保つ。このはたらきにより、第1スライダーユニット31上の露光ランプ311から前記光路で案内された原稿画像が、最終的にミラー34によって感光体ドラム51の周面に走査される。
【0037】原稿の他端に第1スライダーユニット31が到達し、原稿画像の読取りが終了すると、同スライダーユニット31は移動方向を逆転して、原稿読取り時の数倍の速度でHP方向へリターンし、HP直前で急速に減速しながら停止する。これに伴って、他の2つのスライダーユニット32、33も、それぞれのHP位置にリターンして同様に停止する。
【0038】このような画像読取り部30の動作時期とほぼ同時期に、帯電器53によって感光体ドラム51周面が帯電される。感光体ドラム51がa方向へ回転駆動し、帯電した感光体ドラム51周面にミラー34から原稿画像が走査され、これによって周面上に静電画像が形成される。この静電画像上に、さらに現像器54によってトナー画像が形成される。
【0039】記録紙Sは、プリンタ部50の画像形成と同期して繰り出しローラ711、712のいずれかにより記録紙搬送路に送り出され、感光体ドラム51と、それに対向する転写チャージャ55が形成する転写位置において、表面に原稿画像を転写される。転写を終えた記録紙は、X方向に回動駆動する記録紙搬送ベルト57によって定着器60まで搬送され、定着ローラ61で画像を定着された後、排出ローラ62を経て排紙トレー63に排出される。
【0040】画像形成を終えた感光体ドラム51は、その周面を除電チャージャ56によって除電され、クリーナ52によって周面を清浄にされる。次に、以上の画像形成動作時において、ステッピングモータ36を駆動源とする第1スライダーユニット31が、HP位置から原稿読取り開始位置まで加速スライドする動作を詳細に説明する。
【0041】図8は、第1スライダーユニット31の加速曲線図である。図中、横軸はHP位置から原稿読取り開始位置直前の定速走行開始位置までの距離を表す。また、縦軸はステッピングモータ36のロータPPSである。第1スライダーユニット31は、原稿読取り動作の開始前にHP位置に設定されているが、原稿読取り動作を開始した瞬間に、200PPSの回転速度を持つステッピングモータ36によって、HP位置から図2中のY方向へ急速に加速され始める。このときステッピングモータ36は1-2相励磁(ハーフステップ)方式で通電されるが、起動直後はモータの高トルクと高加速を確保するために、同モータの2相励磁方式で駆動した場合におけるロータ安定点(図6に示すようにAB、A-B、A-B-、AB-の4相の位置)で加速励磁される。ステッピングモータ36は、一度に2つの加速励磁極歯(極歯L1とL2、L2とL3、L3とL4、L4とL1)によって順次加速励磁され、これによって第1スライダーユニット31が急速加速される(加速第1期)。
【0042】第1スライダーユニット31が十分に加速され、ステッピングモータ36のロータPPSが1630PPSに達すると、ステッピングモータ36の制御は、前述の4つの加速励磁相を用いた加速制御から、A-B相一カ所においてのみ加速励磁する制御に移行する。すなわち励磁相切換の循環周期毎に一回、A-B相においてのみ加速励磁する制御に変化する。このときのステッピングモータ36のトルクベクトルの変化を図7に示す。図7は、ステッピングモータ36の駆動時のトルクベクトル変化を、理想・従来・本実施の形態の3様に分け、模式的な矢印で表している。この図から明確なように、理想的なトルクベクトルが、例えばA相とそれに対向するA-相がロータを中心とした点対称の関係にあるのに対して、従来のトルクベクトルにはトルクのばらつきが生じて上述の対称性が失われてしまっている。しかし、このばらつきを生じている各トルクベクトルも、その一カ所だけを限定してみれば(図では本実施の形態で加速励磁に用いるA-B相のトルクベクトルを示している)、他のトルクベクトルに対する相対的な差異に関する問題はなくなる。したがって、このように1つのトルクベクトルだけを利用することによって、本実施の形態ではモータトルクのばらつきを防止している。第1スライダーユニット31は、これによって急速な加速時に生じた振動を減衰され、緩やかに加速を始める(加速第2期)。
【0043】前記加速によってステッピングモータ36が3300PPSに達すると、ステッピングモータ36制御は通常の1-2相励磁方式に移行し、図中の第1スライダーユニット31の加速終了位置から原稿読取り開始位置までそのまま定速走行を維持する。これによって第1スライダーユニット31はさらに緩やかに加速しながら、原稿読取り速度として設定された目標速度に近づく。これが原稿読取り開始位置に達すると、第1スライダーユニット31の加速制御は終了し、前述の原稿読取り動作に移行する。
【0044】なお本実施の形態では、励磁極歯制御情報記憶部3613をパルスカウンタ3611に内蔵されるものとしたが、当然ながら本発明はこれに限定されるものではなく、例えばステッピングモータ制御IC363が内蔵するか、または単独でパルスカウンタ3611に接続してもよい。また実施の形態中で励磁極歯制御情報記憶部3613をROMとしたが、使用するステッピングモータの種類に応じて複数のROMを準備しておき、スイッチングによって適宜それをパルスカウンタ3611に接続させるか、ROMの代わりにEP-ROMを用いて使用ステッピングモータに対応する加速プログラムに情報を書き換えられるようにしてもよい。
【0045】
【発明の効果】以上の説明により、本発明の走査光学系制御装置は、原稿面に沿って走行し、原稿画像を読取る走査光学系と、走査光学系を走行駆動するステッピングモータと、ステッピングモータに駆動パルスを供給するパルス供給手段とを備え、パルス供給手段は、ステッピングモータの加速時にパルスレートを漸次高速化するパルスを生成する加速パルス生成部を含み、加速パルス生成部は、ステッピングモータのステータ極歯群のうちの特定の極歯にパルス供給する際に、パルスレートを高速化し、そのパルスレートで生成したパルスを前記極歯に供給する構成であるので、ステッピングモータのステータ極歯の加工精度誤差によるモータトルク変動を抑制し、走査光学系の加速走行時の振動を防止して、所定の速度まで円滑かつ迅速に加速させることが可能な効果がある。また、このようなステッピングモータの制御を行うための構成は、大がかりな装置の取付や改造等を必要としないので、コストや装置内のスペース確保等の面でも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用したアナログ複写機の全体構成を示す正面断面図である。
【図2】原稿読取り部30の斜視図である。
【図3】ステッピングモータ制御回路100の構成図である。
【図4】周波数可変回路361の構成図である。
【図5】励磁極歯制御情報記憶部3613が格納するステッピングモータ36の加速プログラムの加速テーブルである。
【図6】ステッピングモータ36の正面断面図である。
【図7】ステッピングモータ36のトルクベクトルの変化図である。
【図8】第1スライダーユニット31の加速曲線図である。
【符号の説明】
31 第1スライダーユニット
32 第2スライダーユニット
33 第3スライダーユニット
36 ステッピングモータ
361 周波数可変回路
362 パルス信号生成回路
363 ステッピングモータ制御IC
3611 CPU
3612 パルスカウンタ
3613 励磁極歯制御情報記憶部
L1〜L4 極歯
A、B、A-、B-、AB、A-B、AB-、A-B- 励磁相

【特許請求の範囲】
【請求項1】 原稿面に沿って走行し、原稿画像を読取る走査光学系と、走査光学系を走行駆動するステッピングモータと、ステッピングモータに駆動パルスを供給するパルス供給手段とを備え、パルス供給手段は、ステッピングモータの加速時にパルスレートを漸次高速化するパルスを生成する加速パルス生成部を含み、加速パルス生成部は、ステッピングモータのステータ極歯群のうちの特定の極歯にパルス供給する際に、パルスレートを高速化し、そのパルスレートで生成したパルスを前記極歯に供給する構成であることを特徴とする走査光学系制御装置。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平11−27988
【公開日】平成11年(1999)1月29日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−175586
【出願日】平成9年(1997)7月1日
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)