説明

走査方法及び放射線画像情報撮影装置

【課題】被写体の撮影姿勢に影響されることがなく、高品質な走査処理を簡単且つ経済的に遂行可能にする。
【解決手段】撮影台36は、放射線画像情報を蓄積し、電気信号として出力する固体検出器46と、前記固体検出器46に蓄積記録された放射線画像情報を読み取るために、前記固体検出器46に読取光を照射する読取光源部48と、前記読取光源部48を前記固体検出器46の読取光走査面に略平行な矢印Y方向に移動させる走査部50とを備える。そして、撮影台36の傾斜量に基づいて、走査部50を構成する駆動モータ54の起動パルスパターンが変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の照射によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させる走査方法及び放射線画像情報撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、X線乳房撮影装置(マンモグラフィ装置)においては、放射線の照射により被写体(マンモ)の放射線画像を記録する一方、読取光の走査によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させて、前記放射線画像情報の読み取りを行っている。
【0003】
被写体の撮影方法としては、例えば、上部から放射線を照射して撮影を行う頭尾方向(CC)撮影、側面から前記放射線を照射して撮影を行う側面方向(ML)撮影、及び斜め方向から前記放射線を照射して撮影を行う内外側斜位(MLO)撮影がある。
【0004】
その際、例えば、走査部を構成し読取光源部を移動させる駆動モータでは、撮影方法によって前記読取光源部の重量(自重)による影響を受け易い。特に、読取光源部が水平方向に移動する場合と、前記読取光源部が鉛直上方向に移動する場合とでは、駆動モータに作用する負荷が大きく変動してしまう。
【0005】
そこで、特許文献1に開示されているように、読取光の走査時における読取光源又は放射線画像記録媒体の移動方向の傾斜量を検出し、その検出された傾斜量に基づいて走査手段の駆動力を変更するようにした光走査方法が知られている。これにより、高価な読取光源やモータを使用することによるコストアップを招くことがなく、読取光源又は放射線画像記録媒体を安定して移動させることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2005−62047号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、この種の光走査方法に関連してなされたものであり、被写体の撮影姿勢に影響されることがなく、高品質な走査処理を簡単且つ経済的に遂行することが可能な走査方法及び放射線画像情報撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の照射によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させる走査方法及び放射線画像情報撮影装置に関するものである。
【0009】
そして、本発明は、読取光の走査時における読取光源部又は放射線画像記録部の傾斜量を検出し、前記検出された傾斜量に基づいて、走査部を構成する駆動モータの起動加速度パターン又は起動パルスパターンを含む起動パターンを変更することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、読取光の走査時における読取光源部又は放射線画像記録部の傾斜量を検出し、前記検出された傾斜量に基づいて、前記読取光源部又は前記放射線画像記録部を保持する保持部の保持角度を変更することを特徴としている。
【0011】
さらに、本発明は、読取光の走査時における読取光源部又は放射線画像記録部の傾斜量を検出し、前記検出された傾斜量に基づいて、前記放射線画像記録部から発せられる情報を処理するための補正テーブルを変更することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、検出された傾斜量に基づいて、走査部を構成する駆動モータの起動加速度パターン又は起動パルスパターンを変更するだけでよく、簡単且つ経済的であるとともに、被写体の撮影姿勢に影響されることがなく、高品質な走査処理が確実に遂行可能になる。
【0013】
また、本発明では、検出された傾斜量に基づいて、読取光源部又は放射線画像記録部を保持する保持部の保持角度を変更している。従って、傾斜量により読取光源部や放射線画像記録部の自重変形量及び変形方向が変動しても、これらを確実に調整することができる。これにより、焦点深度が変化することがなく、画像に濃度差が発生することを阻止することが可能になる。
【0014】
さらに、本発明では、検出された傾斜量に基づいて、放射線画像記録部から発せられる情報を処理するための補正テーブルが変更されている。例えば、焦点深度の変化による画像の濃度補正テーブルや、画像寸法の変化による画像の倍率補正テーブル等が変更される。このため、高品質な走査処理が、簡単且つ経済的に遂行可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線画像処理システム10の全体構成図である。
【0016】
放射線画像処理システム10は、被写体の乳房の放射線画像情報を撮影によって取得する放射線画像情報撮影装置であるマンモグラフィ装置12と、このマンモグラフィ装置12によって取得した放射線画像情報に対して、病変部位の自動検出等の画像処理を行う画像処理部及び後述する走査部50を構成する駆動モータ54の起動加速度パターン又は起動パルスパターンを含む起動パターンを変更する制御部を有する画像処理装置であるCAD(Computer Aided Diagnosis)装置14と、医師による診断を行うため、前記CAD装置14によって画像処理された放射線画像情報を表示する画像表示装置(ビューア)16、18と、放射線画像情報をフイルム等に出力する画像出力装置(プリンタ)20と、医師による診断結果が付加された放射線画像情報を蓄積するサーバである放射線画像情報蓄積装置22とを備える。これらの装置は、ネットワーク24によって相互に接続される。
【0017】
図2は、マンモグラフィ装置12の斜視説明図である。マンモグラフィ装置12は、立設状態に設置される基台26と、この基台26の略中央部に配設される旋回軸28に固定されるアーム部材30と、被写体32に対して放射線を照射する放射線源を収納し、前記アーム部材30の一端部に固定される放射線源収納部34と、前記被写体32を透過した放射線を検出して放射線画像情報を取得する固体検出器(後述する)を収納し、前記アーム部材30の他端部に固定される撮影台36と、この撮影台36に対して前記被写体32の撮影部位を押圧して保持する押圧板38とを備える。
【0018】
放射線源収納部34及び撮影台36が固定されたアーム部材30は、旋回軸28を中心として矢印A方向に旋回することで、被写体32の撮影部位に対する撮影方向が調整可能に構成される。押圧板38は、アーム部材30に連結された状態で放射線源収納部34及び撮影台36間に配設されており、矢印B方向に変位可能に構成される。
【0019】
基台26には、マンモグラフィ装置12によって検出された被写体32の撮影部位、撮影方向等の撮影情報、前記被写体32のID情報等を表示するとともに、必要に応じてこれらの情報を設定可能な表示操作部40が配設される。
【0020】
図3は、マンモグラフィ装置12における撮影台36の内部構成図であり、撮影台36及び押圧板38間に被写体32の撮影部位であるマンモ44を設定した状態を示す。図4は、撮影台36の内部構成を示す斜視図である。
【0021】
撮影台36の内部には、放射線源収納部34に内蔵された放射線源から出力された放射線Xに基づく放射線画像情報を蓄積し、電気信号として出力する固体検出器(放射線画像記録部)46と、前記固体検出器46に蓄積記録された放射線画像情報を読み取るために、前記固体検出器46に読取光を照射する読取光源部48と、前記読取光源部48を前記固体検出器46の読取光走査面に略平行な矢印Y方向に移動させる走査部50と、前記固体検出器46に蓄積されている不要電荷を除去するために、固体検出器46に消去光を照射する消去光源部52とを備える。
【0022】
固体検出器46は、直接変換方式且つ光読出方式の放射線固体検出器であって、マンモ44を透過した放射線Xからなる放射線画像情報を静電潜像として蓄積し、読取光源部48からの読取光により走査されることで、静電潜像に応じた電流を発生する。固体検出器46は、放射線画像情報の記録時にはマンモ44に近接する部位に移動し、消去時には消去光源部52に近接する部位に移動するように構成される。
【0023】
固体検出器46は、より具体的には、ガラス基板上に形成され、放射線Xを透過する第1導電層と、放射線Xが照射されることで電荷を発生する記録用光導電層と、第1導電層に帯電される潜像極性電荷に対して略絶縁体として作用する一方、潜像極性電荷と逆極性の輸送極性電荷に対して略導電体として作用する電荷輸送層と、読取光が照射されることで電荷を発生して導電性を呈する読取用光導電層と、放射線Xを透過する第2導電層とを順に積層して構成される。記録用光導電層と電荷輸送層との界面には、蓄電部が形成される。
【0024】
第1導電層及び第2導電層は、それぞれ電極を構成する。第1導電層の電極は、二次元状の平坦な平板電極とされ、第2導電層の電極は、記録される放射線画像情報を画像信号として検出するための所定の画素ピッチからなる多数の線状電極として構成される。線状電極の配列方向が主走査方向、線状電極の延在する方向が副走査方向に対応する。
【0025】
読取光源部48は、例えば、複数のLEDチップを一列に並べて構成されるライン光源と、ライン光源から出力された読取光を固体検出器46上に線状に照射させる光学系とを有する。固体検出器46の第2導電層である線状電極の延在方向と直交する方向にLEDチップが配列されたライン光源を、前記線状電極の延在方向に移動させることで、前記固体検出器46の全面が露光走査される。
【0026】
図4に示すように、走査部50は、ステッピングモータ等の駆動モータ54を備え、この駆動モータ54の出力軸54aに第1ギヤ(ウォームギヤ)56aが軸着される。第1ギヤ56aに第2ギヤ(ウォームホイール)56bが噛合するとともに、前記第2ギヤ56bには、プーリ57aが同軸的に連結される。プーリ57aから所定距離だけ離間してプーリ57bが設けられ、前記プーリ57a、57b間には、タイミングベルト58が装着される。
【0027】
タイミングベルト58に平行して支持ロッド60が設けられる。この支持ロッド60には、読取光源部48のスライダ部48aが矢印Y方向に移動可能に支持されるとともに、前記スライダ部48aにタイミングベルト58が係合する。
【0028】
なお、第1の実施形態では、走査部50が、読取光源部48を固体検出器46に対して矢印Y方向に移動させる構成を採用しているが、これとは逆に、前記固体検出器46を前記読取光源部48に対して矢印Y方向に移動させる構成を採用してもよい。
【0029】
消去光源部52は、短時間で発光/消光し、且つ、残光の非常に小さい光源が好適であり、例えば、読取光源部48を構成するLEDチップの配列方向と直交する方向に延在し、且つ、前記配列方向に配列される複数の外部電極型希ガス蛍光ランプを使用することができる。
【0030】
図5は、マンモグラフィ装置12を構成する制御回路のブロック図である。
【0031】
マンモグラフィ装置12は、固体検出器46と、前記固体検出器46に高電圧を供給する高電圧供給部62と、高電圧が供給された前記固体検出器46から電気信号としての放射線画像情報を読み取る放射線画像情報読取部64と、アーム部材30の基台26に対する旋回角度位置(傾斜量)を検出する旋回角度検出センサ(傾斜量検出部)66と、前記旋回角度検出センサ66からの信号に基づき、放射線画像情報の撮影方向であるポジションを判定するポジション判定部68と、放射線画像情報読取部64から供給される放射線画像情報を、ポジション判定部68から供給される撮影方向情報であるポジション情報とともに記憶する情報記憶部70とを備える。情報記憶部70に記憶された放射線画像情報及びポジション情報は、インタフェース(I/F)72を介してネットワーク24に接続される各装置に送信される。
【0032】
なお、傾斜量検出部としては、アーム部材30の基台26に対する旋回角度位置を検出する旋回角度検出センサ66に代えて、あるいは、前記旋回角度検出センサ66に併用して、例えば、撮影台36の内部に配設される傾斜センサ(図示せず)等を使用することができる。
【0033】
このように構成される放射線画像処理システム10の動作について、以下に説明する。
【0034】
先ず、図示しないコンソール、IDカード等を用いて、被写体32に係るID情報、撮影方法等の設定を行う。この場合、ID情報には、被写体32の氏名、年齢、性別等の情報があり、ネットワーク24に接続された上位の装置、あるいは、被写体32が所持するIDカードから取得することが可能である。また、撮影方法には、医師によって指示された撮影部位、撮影方向等の情報があり、ネットワーク24に接続された上位の装置から取得し、あるいは、コンソールから技師が入力することが可能である。これらの情報は、マンモグラフィ装置12の表示操作部40に表示して確認することができる。
【0035】
次いで、技師は、指定された撮影方法に従ってマンモグラフィ装置12を所定の状態に設定する。例えば、マンモ44の撮影方法としては、上部から放射線Xを照射して撮影を行う頭尾方向(CC)撮影(図3参照)、側面から放射線Xを照射して撮影を行う側面方向(ML)撮影、斜め方向から放射線Xを照射して撮影を行う内外側斜位(MLO)撮影があり、これらの撮影方法に応じてアーム部材30を旋回軸28を中心に旋回させる。
【0036】
この場合、旋回角度検出センサ66は、アーム部材30の旋回角度を検出してポジション判定部68に角度情報、すなわち、傾斜量を供給する。ポジション判定部68は、供給された角度情報に基づいて撮影方向であるマンモグラフィ装置12のポジションを判定する。
【0037】
次に、マンモグラフィ装置12に対して被写体32を指定された撮影状態に設定する。例えば、被写体32の左のマンモ44に対する頭尾方向(CC)撮影を行う場合、図3に示すように、左のマンモ44を撮影台36に載置した後、押圧板38を押し下げ、撮影台36及び押圧板38間にマンモ44を保持させる。
【0038】
そこで、放射線源収納部34に収納されている放射線源を駆動し、放射線画像情報の撮影を行う。押圧板38及び撮影台36間に保持されたマンモ44を透過した放射線Xは、撮影台36に収納されている固体検出器46に照射される。なお、固体検出器46は、撮影に先立ち、消去光源部52からの消去光が全面に照射されて不要電荷が除去された後、図3の二点鎖線で示す位置に配置されている。
【0039】
次いで、高電圧供給部62から第1導電層及び第2導電層間に高電圧を印加した状態において、放射線画像情報を担持した放射線Xが固体検出器46に照射されると、この固体検出器46の記録用光導電層内で正負の電荷対が発生し、その負電荷が記録用光導電層と電荷輸送層との界面に形成された蓄電部に蓄積される。この蓄積された負電荷、すなわち、潜像極性電荷の量は、マンモ44を透過した放射線Xの線量に略比例している。なお、記録用光導電層で発生した正電荷は、第1導電層に引き寄せられ、高電圧供給部62から供給された負電荷と結合して消滅する。
【0040】
放射線画像情報の撮影が行われた後、固体検出器46は、図3の実線で示す読取位置に移動する。さらに、図4に示すように、走査部50を構成する駆動モータ54の回転作用下に、第1ギヤ56a及び第2ギヤ56bを介してタイミングベルト58が周回走行する。このタイミングベルト58には、スライダ部48aが係合しており、読取光源部48は、前記タイミングベルト58と一体に矢印Y方向に移動しながら、固体検出器46に向かって読取光を照射する。
【0041】
このため、読取用光導電層に正負の電荷対が発生し、その正電荷が蓄電部に蓄積されている負電荷(潜像極性電荷)に引きつけられるようにして電荷輸送層内を移動し、蓄電部の負電荷と結合して消滅する。一方、読取用光導電層で発生した負電荷は、高電圧供給部62から第2導電層に供給される正電荷と結合して消滅する。
【0042】
このように、固体検出器46に蓄積されている負電荷が電荷結合によって消滅し、この電荷結合の際の電荷の移動による電流が固体検出器46内に発生する。放射線画像情報読取部64は、第2導電層を構成する複数の線状電極に発生した電流を放射線画像情報として読み取り、情報記憶部70に記憶させる。一方、放射線画像情報の読み取られた固体検出器46には、次の撮影を行うため、消去光源部52から発せられた消去光が照射され、蓄積されている不要電荷が除去される。
【0043】
なお、ネットワーク24に接続されている各装置は、放射線画像情報と、その撮影部位情報及びポジション情報とをネットワーク24を介してマンモグラフィ装置12から取得して所定の処理を行う。
【0044】
ところで、走査部50を構成する駆動モータ54は、ステッピングモータであり、起動時には、図6に示す減衰振動が惹起されて低速時の振動となり易い。その際、周波数fnは、下式から求められる。
【0045】
fn=1/2π・(ZR・TH/J)1/2
ZR:ロータの歯数
TH:ホールディングトルク
J:慣性負荷
【0046】
そこで、セットリングタイムを短縮するために、駆動モータ54の振動抑制方法として、駆動パルス信号の制御が行われる。例えば、周波数の高い部分に逆パルスを付与する逆相励磁ダンピング(逆相制動駆動)法や、駆動パルス信号を遅延させる最終パルス遅延ダンピング法等が採用される。
【0047】
この場合、第1の実施形態では、撮影台36の傾斜量に基づいて、駆動モータ54の起動パルスパターンが変更される。すなわち、図4に示すように、撮影台36が矢印A方向に傾斜すると、上記の式中、慣性負荷Jが変動して周波数fnが変動する。例えば、撮影台36が水平姿勢から鉛直姿勢に変換されると、読取光源部48の自重による駆動モータ54への負荷である慣性負荷Jが増加し、周波数fnが低周波側に変動する。
【0048】
従って、撮影台36の傾斜量に基づいて、駆動モータ54の起動パルスパターン(駆動パルス信号の制御)を変更することにより、簡単且つ経済的な制御で、マンモ44の撮影姿勢に影響されることがなく、高品質な走査処理が確実に遂行可能になるという効果が得られる。
【0049】
なお、第1の実施形態では、撮影台36の傾斜量に基づいて、読取光源部48を移動させるための駆動モータ54の起動パルスパターンを変更する制御を行っているが、これに限定されるものではない。この読取光源部48に代えて、固体検出器46を移動させる走査部(図示せず)を備え、この走査部を構成する駆動モータの起動パルスパターンを変更する制御を行ってもよい。
【0050】
また、駆動モータ54の起動パルスパターンを変更する制御に代えて、例えば、前記駆動モータ54をS字状速度曲線の加速度パターンで起動することができる。このため、通常の台形状の加速度パターンで駆動される場合のように、定速回転に移行する際に加速度が無限大となることがなく、セットリングタイムを良好に短縮することが可能になる。
【0051】
図7は、本発明の第2の実施形態に係る放射線画像情報撮影装置を構成する撮影台80の要部斜視説明図であり、図8は、前記撮影台80の一部側面説明図である。
【0052】
なお、第1の実施形態に係る放射線画像処理システム10を構成する撮影台36と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。ここで、読取光源部48は、第1の実施形態の移動方向とは直交する方向に移動するように構成される。
【0053】
撮影台80内部には、前記撮影台80の傾斜量に基づいて、固体検出器46を保持する保持角度を変更する角度調整部82が設けられる。具体的には、固体検出器46は、走査方向(矢印Y方向)に交差する矢印C方向の両端が保持部84a、84bに把持される。保持部84a、84bは、支持台86a、86bに蝶番88a、88bを介して揺動自在に支持されるとともに、前記支持台86a、86bの上端には、傾斜面90a、90bが形成される。
【0054】
角度調整部82は、各保持部84a、84bに近接して配置されるモータ92a、92bを備える。モータ92a、92bの駆動軸に軸着されるねじ部94a、94bは、保持部84a、84bの揺動側先端部に係合している。
【0055】
このように構成される第2の実施形態では、撮影台80の傾斜量に基づいて、固体検出器46を保持する保持部84a、84bの保持角度が変更される。すなわち、撮影台80の傾斜角度が変更されると、固体検出器46の自重変形量及び変形方向が変化し、読取光源部48を構成する各LEDチップと固体検出器46との距離が変動する。このため、焦点深度が変化して画像濃度が変動し、マンモ44の放射線画像情報を高精度に得ることができないおそれがある。
【0056】
そこで、第2の実施形態では、撮影台80の傾斜量に基づいて、角度調整部82を構成するモータ92a、92bが個別に又は同期して駆動される。例えば、モータ92aが駆動されてねじ部94aが保持部84aの揺動側先端部を押圧すると、この保持部84aは、蝶番88aを介して支持台86aに対し矢印D方向に揺動する。一方、モータ92bは、必要に応じて、上記のモータ92aと同様に駆動される。
【0057】
これにより、固体検出器46を保持する保持角度が調整され、撮影台80の傾斜姿勢に係わらず、読取光源部48を構成する各LEDチップと固体検出器46との距離を一定に維持することが可能になる。このため、焦点深度が変化することがなく、画像濃度が変動することを阻止してマンモ44の放射線画像情報を高精度に得ることができるという効果が得られる。
【0058】
なお、上述した角度調整部82に代えて、読取光源部48を保持する保持部(図示せず)の保持角度を変更する角度調整部を用いてもよい。また、機械的手段に代えて、読取光源部48を構成する各LEDチップの発光分布を変更したり、焦点距離を変更したりすることによっても、焦点深度の変化を阻止することが可能になる。
【0059】
次いで、本発明の第3の実施形態では、撮影台80の傾斜量に基づいて、固体検出器46から発せられる情報を処理するための補正テーブルを変更する制御部を有する。この制御部は、第1の実施形態に使用されるCAD装置14により構成される。
【0060】
この第3の実施形態では、基本的には、第1の実施形態に係る放射線画像処理システム10が用いられ、CAD装置14に複数の補正テーブルが収納される。具体的には、撮影台80の傾斜量が変動すると、焦点深度が変化して固体検出器46の面内の画像濃度が変動するため、濃度補正が必要である。さらに、固体検出器46の面内には、倍率の変動による画像寸法の変動が発生するため、倍率補正が必要である。従って、撮影台80の傾斜量に基づいて設定される濃度補正テーブル及び倍率補正テーブルが、補正テーブルとして設定される。
【0061】
これにより、第3の実施形態では、補正テーブルを変更するだけでよく、経済的な工程及び構成で、高精度な放射線画像情報を確実に得ることができる。
【0062】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る放射線画像処理システムの全体構成図である。
【図2】前記放射線画像処理システムを構成するマンモグラフィ装置の斜視説明図である。
【図3】前記のマンモグラフィ装置における撮影台の内部構成図である。
【図4】前記撮影台の内部構成を示す斜視図である。
【図5】前記マンモグラフィ装置を構成する制御回路のブロック図である。
【図6】ステッピングモータの振動特性の説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る放射線画像情報撮影装置を構成する撮影台の要部斜視説明図である。
【図8】前記撮影台の一部側面説明図である。
【符号の説明】
【0064】
10…放射線画像処理システム 12…マンモグラフィ装置
14…CAD装置 16、18…画像表示装置
20…画像出力装置 22…放射線画像情報蓄積装置
24…ネットワーク 26…基台
30…アーム部材 32…被写体
34…放射線源収納部 36、80…撮影台
40…表示操作部 44…マンモ
46…固体検出器 48…読取光源部
50…走査部 54…駆動モータ
66…旋回角度検出センサ 82…角度調整部
84a、84b…保持部 86a、86b…支持台
92a、92b…モータ 94a、94b…ねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の照射によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させる走査方法において、
前記読取光の走査時における前記読取光源部又は前記放射線画像記録部の傾斜量を検出する工程と、
前記検出された傾斜量に基づいて、前記走査部を構成する駆動モータの起動加速度パターン又は起動パルスパターンを含む起動パターンを変更する工程と、
を有することを特徴とする走査方法。
【請求項2】
放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の照射によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させる走査方法において、
前記読取光の走査時における前記読取光源部又は前記放射線画像記録部の傾斜量を検出する工程と、
前記検出された傾斜量に基づいて、前記読取光源部又は前記放射線画像記録部を保持する保持部の保持角度を変更する工程と、
を有することを特徴とする走査方法。
【請求項3】
放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の照射によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させる走査方法において、
前記読取光の走査時における前記読取光源部又は前記放射線画像記録部の傾斜量を検出する工程と、
前記検出された傾斜量に基づいて、前記放射線画像記録部から発せられる情報を処理するための補正テーブルを変更する工程と、
を有することを特徴とする走査方法。
【請求項4】
放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の走査によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させて前記放射線画像情報の読み取りを行う放射線画像撮影装置において、
前記読取光の走査時における前記読取光源部又は前記放射線画像記録部の傾斜量を検出する傾斜量検出部と、
前記検出された傾斜量に基づいて、前記走査部を構成する駆動モータの起動加速度パターン又は起動パルスパターンを含む複数の起動パターンを有する制御部と、
を備えることを特徴とする放射線画像情報撮影装置。
【請求項5】
放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の走査によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させて前記放射線画像情報の読み取りを行う放射線画像撮影装置において、
前記読取光の走査時における前記読取光源部又は前記放射線画像記録部の傾斜量を検出する傾斜量検出部と、
前記検出された傾斜量に基づいて、前記読取光源部又は前記放射線画像記録部を保持する保持部の保持角度を変更する角度調整部と、
を備えることを特徴とする放射線画像情報撮影装置。
【請求項6】
放射線の照射により被写体の放射線画像を記録する一方、読取光の走査によって前記放射線画像に応じた情報を発する放射線画像記録部に対し、前記読取光を照射する読取光源部を走査部により相対的に移動させて前記放射線画像情報の読み取りを行う放射線画像撮影装置において、
前記読取光の走査時における前記読取光源部又は前記放射線画像記録部の傾斜量を検出する傾斜量検出部と、
前記検出された傾斜量に基づいて、前記放射線画像記録部から発せられる情報を処理するための複数の補正テーブルを有する制御部と、
を備えることを特徴とする放射線画像情報撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−244528(P2007−244528A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−69968(P2006−69968)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】